特許第6376268号(P6376268)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6376268
(24)【登録日】2018年8月3日
(45)【発行日】2018年8月22日
(54)【発明の名称】自動変速機
(51)【国際特許分類】
   B60K 17/08 20060101AFI20180813BHJP
   F16H 61/28 20060101ALI20180813BHJP
   B60K 23/02 20060101ALI20180813BHJP
【FI】
   B60K17/08 M
   F16H61/28
   B60K23/02 K
【請求項の数】4
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-214329(P2017-214329)
(22)【出願日】2017年11月7日
(62)【分割の表示】特願2014-163311(P2014-163311)の分割
【原出願日】2014年8月11日
(65)【公開番号】特開2018-20782(P2018-20782A)
(43)【公開日】2018年2月8日
【審査請求日】2017年11月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001520
【氏名又は名称】特許業務法人日誠国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】竹中 宏光
(72)【発明者】
【氏名】藤峰 卓也
【審査官】 岩本 薫
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−340225(JP,A)
【文献】 特開2005−291461(JP,A)
【文献】 実開昭60−008551(JP,U)
【文献】 国際公開第00/032960(WO,A1)
【文献】 特開2010−255820(JP,A)
【文献】 特開昭60−172758(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 17/08
B60K 23/02
F16H 61/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに連結された第1ケースおよび第2ケースを有し、前記第1ケースと前記第2ケースの内部に入力軸を回転自在に支持する変速機ケースと、
前記第1ケース内の前記入力軸の軸線方向端部に設けられ、内燃機関と前記入力軸との間の動力伝達を断続するクラッチと、
前記第1ケースの半径方向中心部から外周方向に延び、その外端部に作用する操作力により揺動することで前記クラッチを切断するクラッチレバーと、
前記入力軸と交差する方向にその中心軸が向く姿勢で前記第2ケースの上部に配置され、前記中心軸の軸線方向の往復移動と前記中心軸の周りの回動とにより変速を行うシフトアンドセレクト軸と、
前記変速機ケースの外壁に固定されたシフトユニットと、を備え、
前記シフトユニットが、前記クラッチレバーを揺動させるクラッチアクチュエータと、前記シフトアンドセレクト軸を往復移動および回動させる変速アクチュエータと、を有する自動変速機において、
前記第1ケースの外周部における前記入力軸の斜め下方の位置に開口部が形成され、
前記クラッチレバーの前記外端部を前記開口部から前記第1ケースの外部に露出させ、
前記クラッチアクチュエータは、前記クラッチレバーの前記外端部から前記変速機ケースの軸線方向で前記シフトアンドセレクト軸の側に延び、かつ前記シフトアンドセレクト軸の下方に設置され、
前記変速アクチュエータは、前記シフトアンドセレクト軸と前記クラッチアクチュエータとの間に設置されていることを特徴とする自動変速機。
【請求項2】
前記クラッチアクチュエータは、クラッチアクチュエータハウジングと、前記クラッチアクチュエータハウジングから前記クラッチレバーの側に延び、前記クラッチレバーの外端部に連結される連結部材とを備え、
前記クラッチアクチュエータは、前記クラッチの切断時に前記連結部材を前記クラッチアクチュエータハウジング側に移動させるように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の自動変速機。
【請求項3】
前記連結部材は、ケーブルから構成されていることを特徴とする請求項2に記載の自動変速機。
【請求項4】
前記変速アクチュエータは、筐体内に配置されており、
前記変速機ケースの側面にベースプレートが固定されており、
前記筐体および前記クラッチアクチュエータハウジングは、前記ベースプレートに取付けられていることを特徴とする請求項2または請求項3に記載の自動変速機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動変速機に関し、特に、手動変速機において変速操作を自動で行う自動変速機に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、自動車等の車両に搭載される自動変速機にあっては、MT(Manual Transmission)においてアクチュエータにより変速操作とクラッチ操作を自動で行うことで、AT(Automatic Transmission)のような自動変速を可能にしたAMT(Automated Manual Transmission)が知られている。
【0003】
従来のこの種のAMTとしては、例えば、特許文献1に記載されたものが知られている。このAMTは、変速機ケースの上部に、シフトアンドセレクト軸を往復移動および回転させる変速用アクチュエータが設けられており、変速用アクチュエータによって所定の変速段を成立させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−291461号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような従来の自動変速機にあっては、変速機ケースの上部に変速用アクチュエータが設けられている。このため、自動変速機を前輪駆動車のエンジンルーム内に横置き設置する場合は、エンジンルーム内の変速機ケースの上部に変速用アクチュエータを配置する十分な空間があるので、自動変速機を支障なく車両に搭載できる。
【0006】
しかしながら、自動変速機を後輪駆動車のフロアパネルの下方に縦置き設置する場合は、自動変速機の上部とフロアパネルとの間の空間が狭隘であるため、変速機ケースの上部に変速用アクチュエータが設けられていると、車両への自動変速機の搭載性が悪化してしまう。
【0007】
本発明は、上記のような問題点に着目してなされたものであり、シフトユニットを構成する部材を変速機ケースの外部側面の低い位置に効率的に配置でき、車両に対する自動変速機の縦置き配置での搭載性を向上させることができる自動変速機を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の態様は、互いに連結された第1ケースおよび第2ケースを有し、前記第1ケースと前記第2ケースの内部に入力軸を回転自在に支持する変速機ケースと、前記第1ケース内の前記入力軸の軸線方向端部に設けられ、内燃機関と前記入力軸との間の動力伝達を断続するクラッチと、前記第1ケースの半径方向中心部から外周方向に延び、その外端部に作用する操作力により揺動することで前記クラッチを切断するクラッチレバーと、前記入力軸と交差する方向にその中心軸が向く姿勢で前記第2ケースの上部に配置され、前記中心軸の軸線方向の往復移動と前記中心軸の周りの回動とにより変速を行うシフトアンドセレクト軸と、前記変速機ケースの外壁に固定されたシフトユニットと、を備え、前記シフトユニットが、前記クラッチレバーを揺動させるクラッチアクチュエータと、前記シフトアンドセレクト軸を往復移動および回動させる変速アクチュエータと、を有する自動変速機において、前記第1ケースの外周部における前記入力軸の斜め下方の位置に開口部が形成され、前記クラッチレバーの前記外端部を前記開口部から前記第1ケースの外部に露出させ、前記クラッチアクチュエータは、前記クラッチレバーの前記外端部から前記変速機ケースの軸線方向で前記シフトアンドセレクト軸の側に延び、かつ前記シフトアンドセレクト軸の下方に設置され、前記変速アクチュエータは、前記シフトアンドセレクト軸と前記クラッチアクチュエータとの間に設置されているものから構成されている。
【発明の効果】
【0009】
このように上記の第1の態様によれば、シフトユニットを構成する部材を変速機ケースの外部側面の低い位置に効率的に配置でき、車両に対する自動変速機の縦置き配置での搭載性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本発明の自動変速機の一実施形態を示す図であり、車両に搭載された自動変速機の側面図である。
図2図2は、本発明の自動変速機の一実施形態を示す図であり、自動変速機の平面図である。
図3図3は、本発明の自動変速機の一実施形態を示す図であり、クラッチを取り外した状態の自動変速機の正面図である。
図4図4は、本発明の自動変速機の一実施形態を示す図であり、図3のIV−IV方向矢視断面図である。
図5図5は、本発明の自動変速機の一実施形態を示す図であり、自動変速機の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係る自動変速機の実施形態について、図面を用いて説明する。図1〜図
5は、本発明に係る一実施形態の自動変速機を示す図である。
【0012】
まず、構成を説明する。図1において、車両1には自動変速機2が搭載されており、この自動変速機2は、エンジン3に固定された状態で車両1のフロアパネル1Aの下方に縦置きに設置されている。すなわち、本実施形態の車両1は、後輪駆動車両である。
【0013】
ここで、本実施形態では、車両1の運転席に着座した運転者から見た前後方向、左右方向、および上下方向と一致するように、図中で前後、左右、上下の方向を矢印で示している。
【0014】
図1図2図4において、自動変速機2は変速機ケース2Aを備えており、この変速機ケース2Aは、フロントケース4と、フロントケース4に取付けられたリヤケース5と、リヤケース5に取付けられたエクステンションケース6とから構成される。フロントケース4には内燃機関としてのエンジン3が接続されている。ここで、フロントケース4は本発明における第1ケースを構成し、リヤケース5は本発明における第2ケースを構成する。
【0015】
図4において、フロントケース4にはクラッチ7が設けられており、クラッチ7は、エンジン3のクランクシャフト8の軸線方向端部に設けられたフライホイール9に対向している。
【0016】
クラッチ7には入力軸10の軸線方向一端部10aが取付けられている。入力軸10は、軸線方向一端部側でフロントケース4に形成された筒状部4aに回転自在に支持されており、軸線方向他端部10b側で出力軸11に回転自在に支持されている。出力軸11は、リヤケース5およびエクステンションケース6に回転自在に支持されており、入力軸10に対して相対回転する。
【0017】
クラッチ7は、入力軸10に一体回転自在、かつ入力軸10の軸線方向に移動自在に設けられたクラッチディスク12と、クラッチディスク12をフライホイール9に押し付けるプレッシャプレート13と、プレッシャプレート13をフライホイール9側に付勢するダイヤフラムスプリング14とを備えている。
【0018】
フロントケース4の筒状部4aの外周部にはレリーズベアリング15が設けられており、レリーズベアリング15は、入力軸10の軸線方向に移動してダイヤフラムスプリング14の半径方向内方に対して接触および離隔する。
【0019】
レリーズベアリング15は、クラッチレバー16の基端部16aが接触している(図3参照)。クラッチレバー16は、入力軸10の軸線からフロントケース4の開口部4bを通してフロントケース4の外方に突出している。換言すると、クラッチレバー16は、フロントケース4の半径方向中心部から外周方向に延びている。
【0020】
クラッチレバー16のフロントケース4から突出した外端部16bは、クラッチアクチュエータ17に接続されている。クラッチ7は、外端部16bに作用する操作力によりクラッチレバー16が揺動することで切断される。クラッチレバー16の揺動支点16cは、図3図4に示すように、基端部16aと外端部16bの間に配置されている。
【0021】
クラッチアクチュエータ17は、クラッチアクチュエータハウジング18と図示しないピストンを有する。
【0022】
また、クラッチアクチュエータ17は、ピストンとクラッチレバー16の外端部16bとを連結する連結部材21とを備えている。連結部材21はケーブルから構成されている。
【0023】
クラッチアクチュエータハウジング18は、後述するシフトユニット(図1図2図5参照)に取付けられており、作動油の油圧が供給されると、ピストンにより連結部材21が図4中、左方に移動する。連結部材21が図4中、左方に移動すると、クラッチレバー16が時計回転方向に回転してレリーズベアリング15が図4中、右方に移動し、ダイヤフラムスプリング14によるプレッシャプレート13の付勢を解除する。このとき、クラッチディスク12がフライホイール9から離隔してクランクシャフト8の回転が入力軸10に伝達されなくなる。
【0024】
また、クラッチアクチュエータ17は、連結部材21が図4中、右方に移動すると、クラッチレバー16が反時計回転方向に回転してレリーズベアリング15が図4中、左方に移動する。
【0025】
このとき、ダイヤフラムスプリング14がプレッシャプレート13を付勢してクラッチディスク12をフライホイール9に押し付けることにより、クランクシャフト8の回転を入力軸10に伝達する。また、作動油の油圧を除去すると、クラッチディスク12がフライホイール9に押し付けられる位置でピストン19が位置決めされる。
【0026】
このようにクラッチ7は、エンジン3のクランクシャフト8と入力軸10との間で動力を断続する。ここで、付勢とは、勢いが増加されていることを意味する。ここで、クラッチアクチュエータ17は、本発明のクラッチ操作部材を構成する。
【0027】
図4において、フロントケース4およびリヤケース5にはカウンタ軸23が回転自在に設けられており、カウンタ軸23は、入力軸10と平行に延びている。
【0028】
入力軸10には、クラッチ7側から順に、1速入力ギヤ22A、リバース入力ギヤ22B、2速入力ギヤ22C、4速入力ギヤ22Dおよび3速入力ギヤ22Eが設けられている。
【0029】
1速入力ギヤ22A、リバース入力ギヤ22Bおよび2速入力ギヤ22Cは、入力軸10に固定されている。また、4速入力ギヤ22Dおよび3速入力ギヤ22Eは、入力軸10に回転自在に設けられている。
【0030】
出力軸11の一端部には5速クラッチギヤ22Fが設けられており、5速クラッチギヤ22Fは、出力軸11の外周部に形成されたドグから構成される。
【0031】
カウンタ軸23には、クラッチ7側から順に、1速カウンタギヤ24A、リバース出力ギヤ24B、2速カウンタギヤ24C、4速カウンタギヤ24D、3速カウンタギヤ24Eおよびカウンタドライブギヤ24Fが設けられている。
【0032】
1速カウンタギヤ24Aおよび2速カウンタギヤ24Cは、カウンタ軸23に回転自在に配置され、リバース出力ギヤ24Bは、カウンタ軸23の軸線方向に移動自在に設けられている。また、4速カウンタギヤ24D、3速カウンタギヤ24Eおよびカウンタドライブギヤ24Fは、カウンタ軸23に固定されている。
【0033】
カウンタドライブギヤ24Fは、カウンタドリブンギヤ25に噛み合っており、カウンタドリブンギヤ25は、出力軸11と一体回転するように出力軸11に取付けられている。
【0034】
フロントケース4およびリヤケース5にはリバースアイドラ軸が固定されており、リバースアイドラ軸にはリバースアイドラギヤが設けられている。リバースアイドラギヤは、リバースアイドラ軸の軸線方向に移動自在となっており、車両1の後進時にリバース入力ギヤ22Bおよびリバース出力ギヤ24Bに噛み合う。
【0035】
ここで、1速入力ギヤ22A、リバース入力ギヤ22B、2速入力ギヤ22C、4速入力ギヤ22D、3速入力ギヤ22Eは、入力側変速歯車61を構成する。また、1速カウンタギヤ24A、リバース出力ギヤ24B、2速カウンタギヤ24C、4速カウンタギヤ24D、3速カウンタギヤ24Eは、出力側変速歯車62を構成する。自動変速機2において、入力側変速歯車61と出力側変速歯車62が後述する変速機構60により選択的に動力を伝達することで、1速から4速の変速段の何れかが形成される。
【0036】
図4において、フロントケース4およびリヤケース5には3速−4速シフト軸28が設けられており、3速−4速シフト軸28は、入力軸10の軸線方向に移動自在となっている。また、3速−4速シフト軸28にはシフトヨーク28Aおよびシフトフォーク28Bが取付けられている。
【0037】
また、フロントケース4およびリヤケース5には3速−4速シフト軸28と平行に図示しない1速−2速シフト軸および5速−リバースシフト軸が設けられており、1速−2速シフト軸および5速−リバースシフト軸は、入力軸10の軸線方向に移動自在となっている。
【0038】
また、1速−2速シフト軸および5速−リバースシフト軸には夫々図示しないシフトヨークおよびシフトフォーク30、31が取付けられている。
【0039】
シフトフォーク28Bは、シンクロ部材29に接続されており、シンクロ部材29は、入力軸10と一体回転自在で、かつ入力軸10の軸線方向に移動自在に設けられている。シンクロ部材29は、入力軸10の軸線方向一方側に移動することにより、3速入力ギヤ22Eを入力軸10に固定して前進3速段を成立させ、入力軸10の回転を、カウンタ軸23を介して出力軸11に伝達する。
【0040】
また、シンクロ部材29は、入力軸10の軸線方向他方側に移動することにより、4速入力ギヤ22Dを入力軸10に固定して前進4速段を成立させ、入力軸10の回転を、カウンタ軸23を介して出力軸11に伝達する。
【0041】
1速−2速シフト軸のシフトフォーク30は、シンクロ部材32に接続されており、シンクロ部材32は、カウンタ軸23と一体回転自在で、かつカウンタ軸23の軸線方向に移動自在に設けられている。
【0042】
シンクロ部材32は、カウンタ軸23の軸線方向一方側に移動することにより、1速カウンタギヤ24Aをカウンタ軸23に固定して前進1速段を成立させ、入力軸10の回転を、カウンタ軸23を介して出力軸11に伝達する。
【0043】
また、シンクロ部材32は、カウンタ軸23の軸線方向他方側に移動することにより、2速カウンタギヤ24Cをカウンタ軸23に固定して前進2速段を成立させ、入力軸10の回転を、カウンタ軸23を介して出力軸11に伝達する。
【0044】
5速−リバースシフト軸のシフトフォーク31は、シンクロ部材33に接続されており、シンクロ部材33は、入力軸10と一体回転自在で、かつ入力軸10の軸線方向に移動自在に設けられている。
【0045】
シンクロ部材33は、入力軸10の軸線方向において5速クラッチギヤ22F側に移動することにより、出力軸11を入力軸10に直結させて前進5速段を成立させ、入力軸10の回転を、カウンタ軸23を介さずに出力軸11に伝達する。
【0046】
5速−リバースシフト軸には図示しないシフトフォークが設けられており、シフトフォークは、リバースアイドラギヤに接続されている。このシフトフォークは、5速−リバースシフト軸がクラッチ7側に移動することにより、リバースアイドラギヤをリバース入力ギヤ22Bとリバース出力ギヤ24Bとに噛み合わせることで、後進段を成立させ、入力軸10の回転を、前進時と反対方向に回転するカウンタ軸23を介して出力軸11に伝達する。
【0047】
図1図4図5において、リヤケース5の上部にはシフトケース5Aが設けられており、シフトケース5Aは、リヤケース5の上部から上方に膨れ出ている。
【0048】
シフトケース5Aにはシフトアンドセレクト軸34が設けられており、シフトアンドセレクト軸34は、入力軸10の軸線と直交する軸線を有する。
【0049】
シフトアンドセレクト軸34は、シフトケース5Aに回転自在かつ、軸線方向に移動自在に設けられており、コイルスプリング58によって後述するシフトユニット35側に付勢されている。
【0050】
ここで、3速−4速シフト軸28、シフトヨーク28A、シフトフォーク28B、30、31、シンクロ部材29、32、33およびシフトアンドセレクト軸34は変速機構60を構成する。
【0051】
変速機構60は、シフトアンドセレクト軸34の往復移動および回動により、3速−4速シフト軸28、シフトヨーク28A、シフトフォーク28B、30、31、シンクロ部材29、32、33を移動させることで、1速から4速の変速段の何れかに変速を行う。
【0052】
図1図5において、シフトアンドセレクト軸34の軸線方向一端部には操作レバー34Aが設けられており、操作レバー34Aは、シフトアンドセレクト軸34の軸線から半径方向外方に延びている。シフトアンドセレクト軸34の軸線方向一端部および操作レバー34Aは、図5に示すようにシフトケース5Aの外部に突出し、変速機ケース2Aの側壁2a側に位置している。ここで、フロントケース4およびリヤケース5の両側壁のうちの一方の側壁は、変速機ケース2Aの側壁2aである。
【0053】
図1図2図5において、変速機ケース2Aの側壁2aにはシフトユニット35が設けられており、シフトユニット35は、筐体36を有する。操作レバー34Aは、筐体36の形成された不図示の開口部に挿入されている。
【0054】
図1において、筐体36内には変速アクチュエータ64が設けられており、この変速アクチュエータ64は、シフトアクチュエータ37とセレクトアクチュエータ40とを有している。
【0055】
シフトアクチュエータ37は、操作レバー34Aを挿入する凹部を有している。筐体36には図示しないシフト操作ソレノイドが設けられており、シフト操作ソレノイドは、シフトアクチュエータ37に供給する作動油の油圧を調整することにより、シフトアクチュエータ37により操作レバー34Aを押圧して、シフトアンドセレクト軸34をシフト方向に回動させる。
【0056】
セレクトアクチュエータ40は、シフトアンドセレクト軸34の軸線上に設けられている。筐体36には図示しないセレクト操作ソレノイドが設けられており、このセレクト操作ソレノイドは、セレクトアクチュエータ40に供給される作動油の油圧の大きさを調整する。これにより、シフトアンドセレクト軸34は、コイルスプリング58の付勢力に抗して軸線方向に移動し、シフトヨーク28Aを含んだ複数のシフトヨークの位置を選択する。
【0057】
このようにシフトアンドセレクト軸34は、セレクトアクチュエータ40によって駆動させることにより軸線方向に移動することができ、シフトアクチュエータ37によって駆動されることにより軸線周りに回動することができる。
【0058】
また、筐体36には図示しないクラッチ操作ソレノイドが設けられており、このクラッチ操作ソレノイドは、クラッチアクチュエータ17に供給される作動油の油圧を調整する。
【0059】
図1図5において、シフトユニット35は、筐体36、リザーブタンク43、アキュムレータ44、オイルポンプ45、モータ46およびベースプレート47を含んで構成されている。これら筐体36、リザーブタンク43、アキュムレータ44、オイルポンプ45およびモータ46は、ベースプレート47に取付けられて一体化されている。
【0060】
リザーブタンク43は、作動油を貯留している。オイルポンプ45は、モータ46によって駆動されることにより、リザーブタンク43から供給される作動油を昇圧し、昇圧した作動油をベースプレート47に形成される図示しない油路を介してアキュムレータ44に供給する。
【0061】
アキュムレータ44は、作動油の圧力を蓄え、ベースプレート47に形成された図示しない油路を通して高圧の作動油を筐体36に供給する。筐体36に供給される作動油は、シフト操作ソレノイド、セレクト操作ソレノイドおよびクラッチ操作ソレノイドを通してシフトアクチュエータ37、セレクトアクチュエータ40およびクラッチアクチュエータ17に供給される。ここで、リザーブタンク43、オイルポンプ45およびモータ46は、油圧を発生する油圧発生装置63を構成する。
【0062】
図1図4において、カウンタ軸23の軸線上でクラッチ7に最も近い1速カウンタギヤ24Aに対向する変速機ケース2Aの側壁2aには回転センサ48が取付けられており、回転センサ48は、1速カウンタギヤ24Aの回転数を検出する。
【0063】
図1において、筐体36の底部は制御装置49の外箱を構成しており、制御装置49は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等を含んだマイクロコンピュータから構成されている。
【0064】
制御装置49にはワイヤハーネス50を介してモータ46が接続されており、制御装置49は、モータ46に駆動信号を出力してモータ46を駆動する。
【0065】
制御装置49にはワイヤハーネス51を介して回転センサ48が接続されており、制御装置49は、回転センサ48の検出情報に基づいて入力軸10の回転数を検出する。
【0066】
ベースプレート47にはクラッチアクチュエータ17に作動油を供給する油路が形成されている。制御装置49は、例えば、運転席に設けられる図示しないシフトレバーのシフト操作を検出する図示しないシフトポジョンセンサの検出情報、車速を検出する図示しない車速センサの検出情報、アクセルペダルの踏み込み量を検出するアクセルセンサ等からの検出情報に基づいて変速点を判断する。
【0067】
制御装置49は、変速点を判断したときに、クラッチ操作ソレノイドを操作してクラッチアクチュエータ17に作動油を供給することにより、連結部材21を図4中、左方に移動させて、ダイヤフラムスプリング14によるプレッシャプレート13の付勢を解除してクラッチ7を切断する。
【0068】
また、制御装置49は、クラッチ7の切断時に、シフト操作ソレノイドおよびセレクト操作ソレノイドを制御して、シフトアクチュエータ37およびセレクトアクチュエータ40を駆動することにより、シフトアンドセレクト軸34を軸線方向および軸線周りに操作して変速を行う。
【0069】
図1において、シフトユニット35および回転センサ48は、変速機ケース2Aの同一側の側壁2aに取付けられており、シフトユニット35は、回転センサ48を挟んでクラッチ7と反対側に設置されている。
【0070】
ベースプレート47は、変速機ケース2Aの側壁2aに取付けられて上下方向に延びる本体部47Aと、本体部47Aからクラッチレバー16の上方の空間に延びる支持部47Bとを備えている。
【0071】
入力軸10の軸線方向において、筐体36は、筐体36の底部36Aの回転センサ48側の軸線方向一端部36bが底部36Aの軸線方向他端部36cに対して回転センサ48から上方に離れるように傾斜しており、筐体36の底部36Aと回転センサ48との間の空間54にはアキュムレータ44が設置されている。
【0072】
リザーブタンク43は、回転センサ48の上方に設置されており、リザーブタンク43は、ベースプレート47の支持部47Bに取付けられている。オイルポンプ45およびモータ46は、リザーブタンク43と回転センサ48との間で上下方向に重なるように設置されており、オイルポンプ45およびモータ46は、ベースプレート47の支持部47Bに取付けられている。
【0073】
筐体36の底部36Aの軸線方向一端部36bは、リザーブタンク43の下方で、かつオイルポンプ45およびモータ46の側方に形成される空間55に設置されており、筐体 36の軸線方向一端部36bは、上下方向においてリザーブタンク43と重なっている。
【0074】
制御装置49の外箱は、筐体36の底部を構成しており、シフトアクチュエータ37および図2に図示しないセレクトアクチュエータ40に対して回転センサ48側およびモータ46側に位置するように筐体36に取付けられている。
【0075】
また、シフトユニット35において、クラッチアクチュエータ17は、筐体36の下方に設置されており、空間55は、クラッチアクチュエータ17、回転センサ48、オイルポンプ45、モータ46、リザーブタンク43および筐体36によって囲まれる三角形の空間となる。
【0076】
すなわち、アキュムレータ44は、クラッチアクチュエータ17、回転センサ48、オイルポンプ45、モータ46、リザーブタンク43および筐体36によって囲まれる三角形の空間55に設置される。
【0077】
図1図5において、シフトユニット35の底部にはプロテクタ56が取付けられている。プロテクタ56は、車両1の走行中に下方から飛散する石が衝突してクラッチアクチュエータハウジング18等が損傷することを防止している。
【0078】
このような構成を有する本実施形態の自動変速機2によれば、フロントケース4の外周部における入力軸10の斜め下方の位置に開口部4bが形成され、クラッチレバー16の外端部16bを開口部4bからフロントケース4の外部に露出させている。
【0079】
これに加えて、クラッチアクチュエータ17を、クラッチレバー16の外端部16bから変速機ケース2Aの軸線方向である入力軸10と平行にシフトアンドセレクト軸34側へ延びるように配置し、変速アクチュエータ64および制御装置49を、クラッチアクチュエータ17の上方に配置し、油圧発生装置63を、クラッチレバー16の外端部16bの上方に配置している。
【0080】
これにより、クラッチレバー16の外端部16bおよびクラッチアクチュエータ17を、変速機ケース2Aの外周面に沿う方向で入力軸10の斜め下方の低い位置に配置できるので、クラッチレバー16の外端部16bおよびクラッチアクチュエータ17の上方に広い空間を確保できる。
【0081】
そして、クラッチアクチュエータ17を変速機ケース2Aの軸線方向と平行にクラッチレバー16の外端部16bからシフトアンドセレクト軸34側へ延びるように配置し、変速アクチュエータ64および制御装置49をクラッチアクチュエータ17の上方に配置することで、クラッチアクチュエータ17の上方に確保された広い空間の低い位置に変速アクチュエータ64と制御装置49とを効率的に配置できる。
【0082】
また、油圧発生装置63をクラッチレバー16の外端部の上方に配置したため、クラッチレバー16の外端部16bの上方に確保された広い空間の低い位置に油圧発生装置63を構成する部材を効率的に配置できる。
【0083】
したがって、シフトユニット35を構成する部材を変速機ケース2Aの外部側面の低い位置に効率的に配置でき、車両1に対する自動変速機2の縦置き配置での搭載性を向上させることができる。
【0084】
また、本実施形態の自動変速機2によれば、クラッチレバー16の外端部16bの上方に配置される油圧発生装置63は、作動油を貯留するリザーブタンク43と、モータ46と、モータ46により駆動されることで油圧を発生するオイルポンプ45と、を有し、リザーブタンク43、モータ46およびオイルポンプ45をクラッチレバー16の外端部16bの上方に互いに近接して配置した。
【0085】
これにより、油圧発生装置63が有するリザーブタンク43、モータ46およびオイルポンプ45を、クラッチレバー16の外端部16bの上方に互いに近接して配置したので、リザーブタンク43、モータ46およびオイルポンプ45を、クラッチレバー16の外端部16bの上方の空間の低い位置に効率的に配置することができる。
【0086】
また、本実施形態の自動変速機2によれば、シフトユニット35はベースプレート47を備え、このベースプレート47は、上下方向に延びる本体部47Aと、本体部47Aからクラッチレバー16の上方の空間へ延びる支持部47Bとを有する。そして、本体部47Aはリヤケース5の外側面に固定され、支持部47Bにリザーブタンク43、モータ46およびオイルポンプ45が取り付けられる。
【0087】
これにより、ベースプレート47の支持部47Bに、リザーブタンク43、モータ46およびオイルポンプ45を取り付けることで、これらをクラッチレバー16の外端部16bの上方の空間に一体的に支持させることができるので、リザーブタンク43、モータ46およびオイルポンプ45を、クラッチレバー16の外端部16bの上方の空間の低い位置に効率的に配置することができる。
【0088】
本発明の実施形態を開示したが、当業者によっては本発明の範囲を逸脱することなく変更が加えられうることは明白である。すべてのこのような修正および等価物が次の請求項に含まれることが意図されている。
【符号の説明】
【0089】
2...自動変速機、2A...変速機ケース、4...フロントケース(第1ケース)、4b...開口部、5...リヤケース(第2ケース)、7...クラッチ、10...入力軸、16...クラッチレバー、16b...外端部、17...クラッチアクチュエータ、34...シフトアンドセレクト軸、35...シフトユニット、37...シフトアクチュエータ(変速アクチュエータ)、40...セレクトアクチュエータ(変速アクチュエータ)、43...リザーブタンク(油圧発生装置)、45...オイルポンプ(油圧発生装置)、46...モータ(油圧発生装置)、47...ベースプレート、47A...本体部、47B...支持部、49...制御装置、63...油圧発生装置、64...変速アクチュエータ
図1
図2
図3
図4
図5