(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
高分子ポリオール由来の構造単位の総量中のポリエステルポリオール由来の構造単位の含有量が、40質量%以上であることを特徴とする請求項1または2に表刷り用グラビアインキ。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明するが、以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施態様の一例(代表例)であり、本発明はその要旨を超えない限りこれらの内容に限定されない。なお、以下の説明において「表刷り用グラビアインキ」は単に「グラビアインキ」、「インキ」と略記する場合がある。また「部」は「質量部」あるいは「質量%」を示す。
【0020】
本明細書において「表刷り」とはプラスチック基材へ印刷した場合、印刷層から見て印刷模様や絵柄を確認できる印刷方法をいう。なお、積層体あるいは包装袋とした場合に最外面が印刷層となる。表刷り用グラビアインキを印刷して得られる層は「印刷層」、「インキ層」または「インキ被膜」と表記する場合があるが同義である。
【0021】
<ポリウレタン樹脂>
本発明において使用するポリウレタン樹脂は、例えば特開2013−256551号公報や特開2016‐043600号公報に記載の方法により合成することができ、脂肪族ジオールおよび高分子ポリオールを含むポリオール成分と、ポリイソシアネートとの反応で得られるウレタン結合を有するポリウレタン樹脂である。また、必要に応じて残存するイソシアネートとポリアミンにより生成されるウレア結合を介して鎖延長されていても良い。
【0022】
(高分子ポリオール)
高分子ポリオールは、一分子中に水酸基を平均で1.7〜2.3個程度有することが好ましく、平均2個有することがより好ましい。高分子ポリオールとしては、酸化エチレン、酸化プロピレン、テトラヒドロフランなどの重合体または共重合体などのポリエーテルポリオール類、
エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ペンタジオール、メチルペンタジオール、ヘキサジオール、オクタンジオール、ノナンジオール、メチルノナンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコールなどのグリコールと、アジピン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、マレイン酸、フマル酸、こはく酸、しゅう酸、マロン酸、グルタル酸、ピメリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ダイマー酸などの二塩基酸もしくはこれらの無水物との脱水縮合物であるポリエステルポリオール類、
ポリカーボネートポリオール類、ポリブタジエングリコール類、ビスフェノールAの酸化エチレンまたは酸化プロピレンを付加して得られるポリオール類、
ダイマージオール類、ひまし油ポリオール類、水添ひまし油ポリオール類などの各種公知のポリオールが挙げることができる。
【0023】
高分子ポリオールは、単独で用いても、2種以上併用しても良い。また高分子ポリオールの数平均分子量は、ポリウレタン樹脂の溶解性と防曇基材への耐ブロッキング性を保つことができるため300以上であり、500〜6000が好ましく、1000〜3000がより好ましい。中でもポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオールより選ばれる少なくとも一種の高分子ポリオールを使用することが好ましい。
【0024】
本発明においては、高分子ポリオールの中でも、ポリエステルフィルムやポリオレフィンフィルムへの密着性の観点からポリエステルポリオールが好ましい。また、2種以上の高分子ポリオールを併用する場合においては、基材への密着性と耐ブロッキング性の観点から、ポリエステルポリオールを高分子ポリオールの全質量に対して40質量%以上含むことがより好ましい。
【0025】
(脂肪族ジオール)
本明細書において、分子量が180以下の脂肪族ジオール由来の構造単位とは、下記一般式(1)で示される、2つの水酸基がイソシアネート化合物とウレタン結合を形成するものを意味し、ポリエステルポリオール等の高分子ポリオールを構成している脂肪族ジオールを意味するものではない。また、ポリエステルポリオール中には、上記脂肪族ジオールからなる構造単位を含んでいてもよく、そのようなポリエステルポリオールの利用を本発明から除外するものではない。
【0026】
一般式(1)
−NHCOO−R
1−OCONH−
(式中、R
1は置換または無置換のアルキレン基を表す。)
前記脂肪族ジオールは分子量130以下であればより好ましい。より詳しくは、アルキレン基の分子量は140以下であることが好ましく、100以下であることがより好ましい。アルキレン基は置換基としてアルキル基を有していても良い。
【0027】
脂肪族ジオールは例えば、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール等の直鎖状ジオール類、1,2−プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオール、ブチルエチルプロパンジオール、メチルノナンジオール等の分岐ジオール類、シクロヘキサンジメタノール、シクロヘキサンジオール、などの脂環族ジオール類等が挙げられ、複数種併用しても良い。中でも、炭素数1から6のアルキル基を置換基として有する脂肪族ジオールは、ポリオレフィン基材への接着性に優れ、またポリウレタンの溶解性を高めるため印刷適性が向上するため好ましい。より具体的には3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオール、ブチルエチルプロパンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、ネオペンチルグリコールが好ましく使用される。
【0028】
分子量が180以下の脂肪族ジオール由来の構造単位は、ウレタン結合密度を高めて結晶性と凝集力を付与し、高分子ポリオール由来の構造単位は柔軟性と密着性に寄与する。そのため耐ブロッキング性と基材密着性を両立することができ、また、耐油性が良好となる。ポリオール由来の構造単位の総量中の前記脂肪族ジオール由来の構造単位(ただし高分子ポリオール中に含まれる構造単位は除く)の含有量は10〜60質量%であり、20〜40質量%が好ましい。10質量%以上であるとイソシアネートと反応して得られるウレタン結合の凝集力が向上し、防曇フィルムへの耐ブロッキング性に優れる。60質量%以下であると、ポリウレタン樹脂の溶剤に対する溶解性を良好に維持可能である。
【0029】
他のポリオール成分としては、芳香族ジオールや分子量が180を超える脂肪族ジオール等が挙げられ、これらを併用しても良い。
【0030】
ポリイソシアネートとしてはジイソシアネートを使用することが好ましい。例えば、1,5ーナフチレンジイソシアネート、4,4’ージフェニルメタンジイソシアネート、4,4’ージフェニルジメチルメタンジイソシアネート、4,4’ージベンジルイソシアネート、ジアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、テトラアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、1,3ーフェニレンジイソシアネート、1,4ーフェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート、ブタンー1,4ージイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソプロピレンジイソシアネート、メチレンジイソシアネート、2,2,4ートリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート、シクロヘキサン−1,4−ジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンー4、4’ージイソシアネート、1,3ービス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート、mーテトラメチルキシリレンジイソシアネート等の脂環族ジイソシアネート、ダイマー酸のカルボキシル基をイソシアネート基に転化したダイマージイソシアネート等が挙げられる。中でもイソホロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートが好ましい。
【0031】
本発明に使用するポリウレタン樹脂を得るためには、ポリイソシアネート由来のNCOと高分子ポリオールおよび脂肪族ジオールを含むOHの反応モル比(NCOモル当量/OHモル当量)が0.5以上2以下、好ましくは1.05以上3以下となるように反応させ、次いで、必要に応じて上述したポリアミンで鎖延長を行うこともでき、過剰反応を防止するため、更に反応停止剤も使用することもできる。
【0032】
ポリウレタン化反応は、有機溶剤中で行ってもよいし、無溶剤で行ってもよい。有機溶剤を使用する場合は、反応時の温度および粘度、副反応の制御の面から適宜選択して用いるとよい。また無溶剤でポリウレタン化反応を行う場合は、均一なポリウレタン樹脂を得るために、攪拌が十分可能な粘度となるように温度を上げて行うことが望ましい。ウレタン化反応は10分〜5時間行うのが望ましく、反応の終点は粘度測定、IR測定によるNCO由来ピーク、滴定によるNCO%測定等により判断される。
【0033】
鎖延長に用いるポリアミンとしては、エチレンジアミン、1,4−ブタンジアミン、イソホロンジアミン、アミノエチルエタノールアミン等の脂肪族ジアミン類であることが好ましい。また鎖延長剤として、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール等のグリコール類も使用することができる。
また反応停止剤としては、メタノール、エタノール等のモノアルコール類、n−プロピルアミン、n−ブチルアミン、ジ−n−ブチルアミン等のアルキルアミン類、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン等のアルカノールアミン類が挙げられる。
【0034】
ポリウレタン樹脂は、ウレア結合を有していても良いし、有していなくても良い。
ウレア結合を有する場合の製造方法は、特に限定されるものではないが、脂肪族ジオールおよび高分子ポリオール並びにポリイソシアネートを反応させて得られる末端にイソシアネート基を有するプレポリマーの、イソシアネート基の数を1とした場合の鎖延長剤および反応停止剤中のアミノ基の合計数量が0.5〜1.3の範囲内であることが好ましい。
【0035】
ポリウレタン樹脂は、ウレタン結合濃度が1.6mmol/g以上が好ましく、2.0mmol/g以上であるとより好ましい。ウレタン結合濃度が1.6mmol/g以上の場合には、耐ブロッキング性が向上する。またウレア結合濃度は1.6mmol/gは以下が好ましく、1.4mmol/g以下がより好ましい。ウレア結合濃度は1.6mmol/g以下とすることで有機溶剤への溶解性、基材への接着性が向上する。
さらに、ウレタン結合濃度とウレア結合濃度の合計が3.2mmol/g〜4.4mmol/gであると好ましく、3.6mmol/g〜4.0mmol/gであるとより好ましい。防曇フィルムへの耐ブロッキング性と基材密着性が両立するためである。
【0036】
<ウレタン結合濃度>
ウレタン結合濃度は次式で表わされる値をいう。
上記において(NCOモル当量/OHモル当量)>1の場合は以下の式(1)で表される。
式(1)ウレタン結合濃度(mmol/g)=総水酸基モル数(mmol)/総固形分(g)
ここで、総水酸基モル数とはウレタンを形成する反応において用いられる高分子ポリオール、脂肪族ジオールその他ポリオールの有する水酸基の総モル数をいう。また、総固形分とはポリウレタン樹脂となる不揮発成分の総質量をいう。
上記において(NCOモル当量/OHモル当量)<1の場合の場合は以下の式(2)で表される。
式(2)ウレタン結合濃度(mmol/g)=総イソシアネート基モル数(mmol)/総固形分(g)
ここで、総イソシアネート基モル数とはウレタンを形成する反応において用いられるポリイソシアネートの有するイソシアネート基の総モル数をいう。
【0037】
<ウレア結合濃度>
ウレア結合濃度は次式で表わされる値をいう。
上記(NCOモル当量/OHモル当量)>1の条件で末端イソシアネート基を有するプレポリマーを合成した後にポリアミンで鎖延長し、ポリウレタン樹脂の末端にアミノ基を有する場合、以下の式(3)で表される。
式(3)ウレア結合濃度(mmol/g)=[総イソシアネート基モル数(mmol)−総水酸基モル数(mmol)]/総固形分(g)
上記(NCOモル当量/OHモル当量)>1の条件で末端イソシアネート基を有するプレポリマーを合成した後にポリアミンで鎖延長し、ポリウレタン樹脂の末端にイソシアネート基を有する場合、以下の式(4)で表される。
式(4)ウレア結合濃度(mmol/g)=(総アミノ基モル数(mmol))/総固形分(g)
ここで総アミノ基モル数とは、末端イソシアネート基を有するプレポリマーと反応させてウレア結合を生成するために用いられるポリアミンの有するアミノ基の総モル数をいう。
【0038】
<塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂>
塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂は、塩化ビニルモノマーと酢酸ビニルモノマーを共重合して得られる。また、水酸基を有することが好ましく、共重合において更にビニルアルコールを用いる、または酢酸ビニルの一部をケン化することで得られる。塩化ビニル、酢酸ビニルおよびビニルアルコールのモノマー比率は、樹脂被膜の性質や樹脂溶解挙動に影響を与え、例えば、塩化ビニルは樹脂被膜の強靭さや硬さを付与し、酢酸ビニルは接着性や柔軟性を付与し、ビニルアルコールは極性溶剤への良好な溶解性を付与する。塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂の水酸基価は、50〜180mgKOH/gが好ましく、70〜160mgKOH/gがより好ましい。
また、ポリウレタン樹脂と塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂の固形分質量比(ポリウレタン樹脂/塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂)が50/50〜85/15であることが好ましい。印刷された基材を引き延ばした際のインキ被膜の基材への追随性と耐塩ビブロッキング性や防曇フィルムへの耐ブロッキング性が良好となるためである。
【0039】
<有機チタン化合物>
本発明においては有機チタン化合物を用いることが好ましい。インキ被膜における凝集力向上のためである。有機チタン化合物は、1分子中に、Ti−O−C型結合をもつものが好ましい。具体的には、チタンアルコキシド、チタンアシレートなどのチタンキレートなどが挙げられる。
チタンキレートを使用することが好ましく、チタンキレートの代表例としては、テトライソプロピルチタネート、テトラノルマルブチルチタネート、ブチルチタネートダイマー、テトラ(2−エチルヘキシル)チタネート、テトラメチルチタネート、テトラステアリルチタネートなどのチタンアルコキシド、トリエタノールアミンチタネート、チタニウムアセチルアセテート、チタニウムエチルアセトアセテート、チタニウムラクテート、オクチレングリコールチタネート、チタンテトラアセチルアセトナートなどのチタンキレートを挙げることができる。これらのうちチタンキレートであるの有機チタン化合物は、一般に架橋反応完結に加温が必要な反面、常温での加水分解が起り難く、安定性に優れておりインキへの使用に適しており、好適に使用することが出来る。
【0040】
チタンキレートは、1分子中に、アルコキシ基を有することによって樹脂の分子間あるいは分子内架橋結合に寄与する。チタンキレートが、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂の水酸基に対してモル当量比で0.1〜1.0であることが好ましい。0.1モル当量以上の場合、耐塩ビブロッキング性や耐防曇フィルムブロッキング性が向上する。また、1.0モル当量以下の場合、インキの経時安定性が向上する。なおグラビアインキ総量中に0.2〜3質量%で含有することが好ましい。
【0041】
さらに、本発明では、接着性や各種耐性の向上を目的として、各種ハードレジン、ワックスを添加することができる。
【0042】
<ハードレジン>
本発明の表刷り用グラビアインキはハードレジンを含有することが好ましい。なおハードレジンとは融点またはガラス転移温度が50〜250℃であり、有機溶剤に可溶な樹脂をいう。ハードレジンとしては、例えば、ダイマー酸系樹脂、ロジン系樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂、ロジンエステル樹脂、マレイン酸系樹脂、石油樹脂、テルペン樹脂、ケトン樹脂、ダンマー樹脂、コーパル樹脂等が挙げられる。中でもロジン系樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂、ロジンエステル樹脂およびケトン樹脂から選ばれる少なくとも一種の樹脂であることが好ましい。それぞれで同等の効果が得られるためである。これらのハードレジンを利用すると、特に表面処理の行われていないプラスチックフィルムに対して接着性が向上する。ハードレジンの酸価は5〜150mgKOH/gが好ましく、10〜40mgKOH/gがより好ましい。本発明のグラビアインキ総量中におけるハードレジンの含有量は、0.1〜5.0質量%含有することが好適である。
【0043】
また、表刷り用グラビアインキでは、耐熱性、耐油性や耐摩擦性の向上を目的として、架橋剤やワックス成分を含有させることができる。ワックスとしては、ポリオレフィンワックス、パラフィンワックスなどの既知の各種ワックスが利用できる。
【0044】
本発明の表刷り用グラビアインキには脂肪酸アミドを使用することができる。脂肪酸アミドとしては飽和脂肪酸アミド、不飽和脂肪酸アミド、変性脂肪酸アミド等が挙げられ、グラビア印刷インキ組成物中、好ましくは0.1〜5.0質量%、より好ましくは0.5〜3.0質量%である。
本発明はこれらの脂肪酸アミドを使用することによって、耐油性、接着性、耐塩ビブロッキング性や耐防曇フィルムブロッキング性に優れるという効果を奏する。
【0045】
さらに、添加剤として顔料分散剤、レベリング剤、界面活性剤、可塑剤、接着補助剤等の各種インキ用添加剤の添加は任意である。なお接着補助剤としては塩素化ポリオレフィンン樹脂が好ましく、中でも塩素化ポリプロピレン樹脂の使用が好ましい。
【0046】
<顔料>
本発明で利用可能な顔料は特に限定されず、一般に印刷インキや塗料で使用できる各種の無機顔料や有機顔料を好適に使用できる。無機顔料としては、例えば、酸化チタン、ベンガラ、紺青、群青、カーボンブラック、黒鉛などの有色顔料、および、炭酸カルシウム、カオリン、クレー、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、タルク等の体質顔料を挙げることができる。また有機顔料としては、溶性アゾ顔料、不溶性アゾ顔料、アゾキレーキ顔料、縮合アゾ顔料、銅フタロシアニン顔料、縮合多環顔料などが好適である。なおこれらに限らず、前記顔料はカラーインデックスのジェネリックネームで記載のものが適宜使用可能である。これらの顔料の含有量としては、インキ総量中に0.5〜50質量%が好ましい。
【0047】
<有機溶剤>
次に、本発明のインキ組成物で利用する溶剤としては、主に、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、ブタノールなどのアルコール系有機溶剤、アセトン,メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン系有機溶剤、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチルなどのエステル系有機溶剤、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタンなどの脂肪族炭化水素系有機溶剤、および、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタンなどの脂環族炭化水素系有機溶剤が挙げることができ、バインダー樹脂の溶解性や乾燥性などを考慮して、混合して利用することが好ましい。これらの有機溶剤の使用量としては、インキ総量中に30質量%以上含有することが好ましい。なお、印刷時の臭気や環境対応のため、有機溶剤はエステル系有機溶剤とアルコール系有機溶剤の混合溶剤を主成分とすることが好ましく、その質量比(エステル系有機溶剤:アルコール系有機溶剤)が、50:50〜90:10であることが好ましい。
【0048】
<表刷り用グラビアインキの製造>
本発明の表刷り用グラビアインキを製造する方法として、まず、顔料、ポリウレタン樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂および有機溶剤、および必要に応じて顔料分散剤、界面活性剤などを攪拌混合した後、各種練肉機、例えば、ビーズミル、ボールミル、サンドミル、アトライター、ロールミル、パールミル等を利用して分散し、さらに、他の樹脂や添加等を混合する方法がある。
【0049】
<基材>
基材は特に限定されないが、フィルム基材であることが好ましく、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン基材、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリ乳酸などのポリエステル基材、ポリスチレン、AS樹脂、ABS樹脂などのポリスチレン系基材、ナイロン基材、ポリアミド基材、ポリ塩化ビニル基材、ポリ塩化ビニリデン基材、セロハン基材などのフィルム基材、およびこれらの複合材料からなるフィルム基材が挙げられる。プラスチック基材は、シリカ、アルミナ、アルミニウムなどの金属あるいは金属酸化物が蒸着されていても良く、更に蒸着面をポリビニルアルコールなどの塗料でコーティング処理を施されていてもよい。一般的に、印刷される基材表面はコロナ処理などの表面処理が施されている場合が多い。さらに基材は、予め防曇剤の塗工、練り込み、マット剤の表面塗工、練り込みなどプラスチックフィルムを加工して得られるフィルムも使用する事が可能である。
また、基材は、単層でもよいし、2つ以上の基材が積層された積層体(基材層)であってもよい。基材層を構成する基材は、同じでも異なっていてもよい。
【0050】
防曇剤は界面活性剤が好ましく、例えば、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステルなどの多価アルコール脂肪酸エステルやエチレンオキサイド付加物などのイオン系界面活性剤を1種あるいは複数用いられる。
【0051】
<印刷物>
基材上に、本発明のグラビアインキを用いて印刷した後、揮発成分を除去することによって印刷層を形成し、印刷物を得ることができる。印刷方法としてはグラビア印刷方式であり、例えば、グラビア印刷に適した粘度及び濃度にまで希釈溶剤で希釈され、単独でまたは混合されて各印刷ユニットに供給され、塗布される。その後、オーブンによる乾燥によって被膜を定着することで得ることができる。
【実施例】
【0052】
以下、実施例をあげて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、本発明における部および%は、特に注釈の無い場合、質量部および質量%を表す。
【0053】
(アミン価)
アミン価の測定は、JISK0070(1992年)に準じて以下の方法により行った。
・アミン価の測定方法
試料を0.5〜2g精秤する(試料量:Sg)。精秤した試料に中性エタノール(BDG中性)30mLを加え溶解させる。得られた溶液に対して0.2mol/Lエタノール性塩酸溶液(力価:f)を用いて滴定を行う。溶液の色が緑から黄に変化した点を終点とする。この時の滴定量(AmL)を用い、次の(式5)によりアミン価を求める。
(式5)アミン価=(A×f×0.2×56.108)/S
【0054】
(重量平均分子量)
重量平均分子量はGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)法により求めた。昭和電工社製「ShodexGPCSystem−21」を用いて分子量分布を測定し、ポリスチレン換算分子量を求めた。以下に測定条件を示す。
カラム:下記の複数のカラムを直列に連結して使用。
東ソー株式会社製、TSKgel SuperAW2500、
東ソー株式会社製、TSKgel SuperAW3000、
東ソー株式会社製、TSKgel SuperAW4000、
東ソー株式会社製、TSKgel guardcolumn SuperAWH
検出器:RI(示差屈折計)、
測定条件:カラム温度40℃、
溶離液:ジメチルホルムアミド
流速:0.5mL/分
【0055】
<合成例1>(ポリウレタン樹脂A1の合成)
撹拌機、温度計、還流冷却器及び窒素ガス導入管を備えた四ツ口フラスコに数平均分子量(以下Mnという)2000の3−メチル−1,5−ペンタンジオールとアジピン酸の縮合物であるポリエステルポリオール(「PMPA」と略記する)130部、ネオペンチルグリコール18.2部、イソホロンジイソシアネート101.4部、2−エチルヘキシル酸第一錫0.03部及び酢酸エチル62.6部を仕込み、窒素気流下に90℃で3時間反応させ、酢酸エチル125.7部を加え冷却し、末端イソシアネートプレポリマーの溶剤溶液438.0部を得た。次いでイソホロンジアミン43.8部、ジ−n−ブチルアミン1.24部、酢酸エチル301.7部、イソプロピルアルコール210部の混合物に、得られた末端イソシアネートプレポリマー438.0部を室温で徐々に添加、次に50℃で1時間反応させた。その後、イソホロンジイソシアネート5.3部を加えて粘度調整した後、酢酸エチル/イソプロピルアルコール(以下「IPA」と略記する)を質量比で7/3の割合で混合した溶剤で固形分を30%に調整し、質量平均分子量35000のポリウレタン樹脂(A1)を得た。なお、上述した(式1)に従ってウレタン結合濃度を算出すると1.6mmol/g、上述した(式3)に従ってウレア結合濃度を算出すると1.6mmol/gであった。
【0056】
<合成例2〜14>(ポリウレタン樹脂A2〜A14の合成)
表1に示した配合および原料を使用した以外は合成例1と同様の方法でポリウレタン樹脂(A2)〜(A14)を合成した。なお、表1中の略称は以下を示す。
PPG:ポリプロピレングリコール(数平均分子量2000)
BEPG:2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール
MPD:3−メチル−1,5−ペンタンジオール
NPG:ネオペンチルグリコール
1,4BD:1,4−ブタンジオール
【0057】
<比較合成例1〜6>(ポリウレタン樹脂B1〜B6の合成)
表2に示した配合および原料を使用した以外は合成例1と同様の方法でポリウレタン樹脂(B1)〜(B6)を合成した。なお、表1中の略称は以下を示す。
TPG:トリプロピレングリコール
【0058】
<塩化ビニル−酢酸ビニル共重樹脂溶液の調製>
塩化ビニル−酢酸ビニル共重樹脂(日信化学社製 製品名ソルバインTA5R)24部を、酢酸エチル76部に混合溶解させて、固形分24%の塩化ビニル−酢酸ビニル共重樹脂溶液(塩酢ビワニスと略記する場合がある)を得た。なお、ソルバインTA5Rの水酸基価は140mgKOH/gである。
<ロジン変性マレイン酸樹脂溶液の調製>
ロジン変性マレイン酸樹脂(製品名マルキード5 荒川化学社製、酸価:25mgKOH/g)50部を酢酸エチル50部に混合溶解させて、ロジン変性マレイン酸樹脂溶液を得た。固形分50%。
【0059】
<実施例1>
酸化チタン(チタニックスJR―808、テイカ社製)20部、ポリウレタン樹脂(A1)24部、塩酢ビワニス10部、ロジン変性マレイン酸樹脂溶液6部、テトライソプロピルチタネート(チタンキレート)1部、ラウリン酸アミド1部、酢酸n−プロピル:酢酸エチル:イソプロピルアルコール:メシルシクロヘキサン=35:30:20:15(重量比)からなる混合溶剤38部をサンドミル(アイガーミル)で混練し、表刷り用グラビアインキ(インキ1)を調製した。
【0060】
<実施例2〜17>
表3に記載した原料および配合比を使用した以外は実施例1と同様の方法で表刷り用グラビアインキ組成物(インキ2〜17)を得た。
なお表中のフタロシアニン系青色顔料は、トーヨーカラー社製 リオノールブルーFG4330(C.I.ピグメントブルー15:4)を表す。
なお、本明細書において実施例1、6〜9は参考例である。
【0061】
<比較例1〜6>
表3に記載した原料および配合比を使用した以外は実施例1と同様の方法でグラビアインキ組成物(インキ18〜23)を得た。
【0062】
<表刷りグラビア印刷物の製造(印刷)>
実施例1で得られたグラビアインキを希釈溶剤(ノルマルプロピルアセテート:酢酸エチル:イソプロピルアルコール:メシルシクロヘキサン=35:30:20:15(重量比))で希釈し、ザーンカップNo.3で15秒に調整し、印刷用の希釈インキとした。
次にコロナ放電処理したポリプロピレンフィルム(D−SHNY01、28μm、DIC(株)社製)または防曇フィルム(AF−CV2C 30μm、(フタムラ化学社製)にグラビア校正印刷機を利用して版深30ミクロンの腐蝕版で印刷(乾燥温度50℃、印刷速度50m/分)を行い、印刷物を得た。
【0063】
実施例2〜17で得られたグラビアインキを使用した以外は、上記と同様の方法でポリプロピレンフィルム印刷物および防曇フィルム印刷物をそれぞれ得た。
【0064】
比較例1〜6で得られたグラビアインキを使用した以外は、上記と同様の方法でポリプロピレンフィルム印刷物および防曇フィルム印刷物をそれぞれ得た。
【0065】
実施例1〜17および比較例1〜6で得られたグラビアインキおよびその印刷物を用いて以下に記載の評価を行った。結果を表4に示す。
【0066】
<接着性>
実施例1〜17、比較例1〜6のポリプロピレンフィルムに印刷した印刷物のインキ被膜面に粘着テープ(製品名セロハンテープ)を貼り付け、これを急速に剥がしたときのインキ被膜がフィルムから剥離する度合いから、接着性を評価した。なお、評価は印刷後に25℃で24時間静置後に行った。
A.インキ被膜がフィルムから剥離した面積が5%未満であるもの(優秀)
B.インキ被膜がフィルムから剥離した面積が5%以上25%未満であるもの(良)
C.インキ被膜がフィルムから剥離した面積が25%以上50%未満であるもの(可)
D.インキ被膜がフィルムから剥離した面積が50%以上75%未満であるもの(不良)
E.インキ被膜がフィルムから剥離した面積が75%以上であるもの(極めて不良)
なお、A、B、Cは実用上問題がない範囲である。
【0067】
<耐塩ビブロッキング性>
実施例1〜17、比較例1〜6のポリプロピレンフィルムに印刷した印刷物を4cm角に切り、同じ大きさに切った軟質塩化ビニルシートと印刷物のインキ被膜面とを重ね合わせて、0.5kg/cm
2の荷重をかけ、50℃80%RHの雰囲気で24時間放置後、印刷面と塩化ビニルシートを引き剥がし、インキ被膜の剥離の程度から耐塩ビブロッキング性を評価した。
A.インキ被膜がフィルムから剥離した面積が10%未満であるもの(優秀)
B.インキ被膜がフィルムから剥離した面積が10%以上30%未満であるもの(良)
C.インキ被膜がフィルムから剥離した面積が30%以上50%未満であるもの(可)
D.インキ被膜がフィルムから剥離した面積が50%以上75%未満であるもの(不良)
E.インキ被膜がフィルムから剥離した面積が75%を超えるもの(極めて不良)
なお、A、B、Cは実用上問題がない範囲である。
【0068】
<耐油性>
実施例1〜17、比較例1〜6のポリプロピレンフィルムに印刷した印刷物を2cm×20cmの大きさに切り、印刷面に溶融した市販のマーガリン(商品名:ネオソフト雪印乳業(株)製)を全面に塗布し、25℃環境下で6時間静置した後、テスター産業(株)製学振型摩擦堅牢度試験器(対カナキン3号、荷重200g)で10回擦り、インキ被膜の剥離度合いを目視で判定した。尚、判定基準はつぎの通りとした。
A.印刷面が変化なく、非常に優秀であるもの(優秀)
B.インキ被膜の取られる面積が5%未満であるもの(良)
C.インキ被膜の取られる面積が5%以上10%未満であるもの(可)
D.インキ被膜の取られる面積が10%以上50%未満であるもの(不良)
E.インキ被膜の取られる面積が50%以上であるもの(極めて不良)
なお、A、B、Cは実用上問題がない範囲である。
【0069】
<耐防曇フィルムブロッキング性>
実施例1〜17、比較例1〜6の防曇フィルムに印刷した各表刷りグラビア印刷物を4cm角に切り、各印刷面と非印刷面を合わせて、20kg/cm
2の荷重をかけ、60℃の雰囲気で24時間放置後、印刷面を引き剥がし、インキの剥離の程度から耐ブロッキング性を評価した。
A.インキ被膜がフィルムから剥離した面積が10%未満のもの(優秀)
B.インキ被膜がフィルムから剥離した面積が10以上25%未満であるもの(良)
C.インキ被膜がフィルムから剥離した面積が25以上50%未満であるもの(可)
D.インキ被膜がフィルムから剥離した面積が50%75%未満であるもの(不良)
E.インキ被膜がフィルムから剥離した面積が75%以上であるもの(極めて不良)
なお、A、B、Cは実用上問題がない範囲である。
【0070】
<版かぶり適性>
実施例1〜17および比較例1〜6で得られたグラビアインキについて希釈溶剤(ノルマルプロピルアセテート:酢酸エチル:イソプロピルアルコール:メシルシクロヘキサン=35:30:20:15(重量比)にて、粘度をザーンカップNo.3で15秒(25℃)に調整し、印刷機における版の空転90分後の、版かぶり部分の面積を目視判定し、評価を行った。
A.版かぶり面積が目視で確認できない(優秀)
B.版かぶり面積が0%以上5%未満であるもの(良)
C.版かぶり面積が5%以上10%未満であるもの(可)
D.版かぶり面積が10%以上25%未満であるもの(不良)
E.版かぶり面積が25%以上であるもの(極めて不良)
なお、A、B、Cは実用上問題がない範囲である。
【0071】
【表1】
【0072】
【表2】
【0073】
【表3】
【0074】
【表4】
【0075】
実施例1〜17および比較例1〜6で得られたグラビアインキの防曇フィルム印刷物を用いて接着性、耐塩ビブロッキング性および耐油性の評価を行ってもポリプロピレンフィルム印刷物の場合と同様の評価結果が得られた。
【0076】
特に本発明の表刷り用グラビアインキはその防曇フィルム印刷物における耐ブロッキング性は圧力20kg/cm
2、温度60℃といった従来に無い厳しい条件でも良好であるという特有な効果を奏した。
【0077】
本発明により、インキの保存安定性が良好であり、酸化防止剤由来の変色が低減され、塩化ビニルシートおよび防曇基材に対する耐ブロッキング性が良好であり、更に耐熱性と印刷適性と両立することのできる表刷り用グラビアインキを提供することができた。
【課題】本発明は、インキの保存安定性が良好であり、酸化防止剤由来の変色が低減され、塩化ビニルシートおよび防曇基材に対する耐ブロッキング性が良好であり、更に耐熱性と印刷適性と両立することのできる表刷り用グラビアインキを提供することを課題とする。
【解決手段】ポリウレタン樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂、顔料および有機溶剤を含有する表刷り用グラビア印刷インキであって、前記ポリウレタン樹脂は、ポリオール由来の構造単位として、高分子ポリオール由来の構造単位と、分子量が180以下の脂肪族ジオール由来の構造単位(ただし前記高分子ポリオール中に含まれる構造単位は除く)とを含有し、ポリオール由来の構造単位の総量中の前記脂肪族ジオール由来の構造単位の含有量が、10〜60質量%であることを特徴とする表刷り用グラビア印刷インキ。