特許第6376293号(P6376293)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6376293
(24)【登録日】2018年8月3日
(45)【発行日】2018年8月22日
(54)【発明の名称】装置、特定方法
(51)【国際特許分類】
   G01M 11/00 20060101AFI20180813BHJP
【FI】
   G01M11/00 R
【請求項の数】10
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2017-524628(P2017-524628)
(86)(22)【出願日】2016年6月17日
(86)【国際出願番号】JP2016002929
(87)【国際公開番号】WO2016208169
(87)【国際公開日】20161229
【審査請求日】2017年12月8日
(31)【優先権主張番号】特願2015-128091(P2015-128091)
(32)【優先日】2015年6月25日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109313
【弁理士】
【氏名又は名称】机 昌彦
(74)【代理人】
【識別番号】100124154
【弁理士】
【氏名又は名称】下坂 直樹
(72)【発明者】
【氏名】中濱 昌彦
【審査官】 藤田 都志行
(56)【参考文献】
【文献】 特開平9−200132(JP,A)
【文献】 特開平10−51401(JP,A)
【文献】 特公昭55−10855(JP,B2)
【文献】 中国特許出願公開第101964682(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 11/00
JSTPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光を一定量反射する光反射素子が挿入された光ファイバに接続された装置であって、
前記光ファイバに光を送出し、前記送出を停止する送出手段と、
前記光反射素子から反射される反射光の強さを測定する測定手段と、
前記送出手段が前記光の送出を停止してから、前記測定手段により測定される前記反射光の強さが所定値以下となるまでの時間を計測する時間測定手段と、
前記時間測定手段により計測された前記時間に対応する距離を算出する距離測定手段と、
前記距離を示す信号を出力する出力手段と、を備え、
前記所定値は、前記光を送出していないときの前記反射光の強さ以上で、且つ、前記光を送出したときに、最も遠くに挿入されている前記光反射素子から受光する前記反射光の強さよりも小さい値である、
ことを特徴とする装置。
【請求項2】
前記所定値は、前記光を送出していないときの前記反射光の強さである、
ことを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記送出手段は、秒単位の所定時間、前記光を送出する、
ことを特徴とする請求項1乃至2のいずれか1項に記載の装置。
【請求項4】
前記距離測定手段は、前記時間の半分と、光ファイバ内を光が進む所定の速度と、の積に対応する値を前記距離として算出する、
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の装置。
【請求項5】
入力された信号の示す情報を表示する表示手段を備えた監視装置に接続され、
前記出力手段は、前記距離を示す信号を前記監視装置に出力する、
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の装置。
【請求項6】
光を一定量反射する光反射素子が挿入された光ファイバに光を送出し、
前記光反射素子から反射される反射光の強さを測定し、
前記光の送出を停止し、
前記光の送出を停止してから、測定される前記反射光の強さが所定値以下となるまでの時間を計測し、
計測された前記時間に対応する距離を算出し、
前記距離を示す信号を出力し、
前記所定値は、前記光を送出していないときの前記反射光の強さ以上で、且つ、前記光を送出したときに、最も遠くに挿入されている前記光反射素子から受光する前記反射光の強さよりも小さい値である、
ことを特徴とする特定方法。
【請求項7】
前記所定値は、前記光を送出していないときの前記反射光の強さである、
ことを特徴とする請求項6に記載の特定方法。
【請求項8】
前記送出をするときにおいては、秒単位の所定時間、前記光を送出する、
ことを特徴とする請求項6乃至7のいずれか1項に記載の特定方法。
【請求項9】
前記距離を算出するときにおいては、前記時間の半分と、光ファイバ内を光が進む所定の速度と、の積に対応する値を前記距離として算出する、
ことを特徴とする請求項6乃至8のいずれか1項に記載の特定方法。
【請求項10】
入力された信号の示す情報を表示する、
ことを特徴とする請求項6乃至9のいずれか1項に記載の特定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、装置、特定方法に関し、特に、光ファイバの障害区間を特定する装置、特定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、光ファイバの障害区間を特定する技術が知られている。光ファイバの障害区間を特定する技術は、以下の特許文献1に開示されている。図1は、特許文献1の光パルス試験機の構成と動作を説明する為の図である。
【0003】
特許文献1の光パルス試験器は、図1の上図に示されるように、光ファイバ線路に接続される。光ファイバ線路には、特定波長信号のみを一定量反射する光反射素子P1、P2、…Pnが複数挿入される。特許文献1の光パルス試験器は、図1の下図に示されるように、光ファイバ線路に特定波長信号(特定波長λ1の光信号)を送出し、各光反射素子からの反射光が到達する所定の時間其々において、反射光のレベルを測定する。各光反射素子からの反射光は、各々、同じ波長λ1の反射光である。特許文献1の光パルス試験器は、光ファイバに障害があり、所定レベルの反射光が検出されない時間については、該時間に対応する光反射素子が挿入された位置までに障害が生じたと特定する。また、特許文献1の光パルス試験器は、所定レベルの反射光が検知された時間については、該時間に対応する光反射素子が挿入された位置までは障害がないものとする。
【0004】
上述の構成や動作の通り、特許文献1の光パルス試験器は、光ファイバの障害区間を特定することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−200132号公報
【特許文献2】国際公開第2007/108330号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1の光パルス試験器は、光ファイバの障害区間を特定するにあたり、製造コストを十分低減することができないという課題があった。
【0007】
その理由を以下に説明する。
【0008】
まず、特許文献1の光パルス試験器は、光信号を長時間送出したときには、各光反射素子から同じ波長の反射光が重なって帰ってくる。同じ波長の反射光が重なって帰ってきたとき、特許文献1の光パルス試験器は、どの光反射素子からの反射光か区別する手段がないので、光ファイバ線路の障害区間を特定することができない。例えば、特許文献1の光パルス試験器は、光反射素子P3とP4の間に障害が発生しているときに、光信号を長時間送出すると、光反射素子P1、P2、P3各々から同じ波長の反射光を受光することとなる。しかし、特許文献1の光パルス試験器は、どの光反射素子からの反射光か区別する手段がない。その為、特許文献1の光パルス試験器は、光反射素子P4からの反射光が到達する時間において、光反射素子P1、P2、P3から受光する反射光を光反射素子P4からの反射光として検出し、光反射素子P4まで障害がないものと判別をしてしまう。特許文献1の光パルス試験器は、同じ波長の反射光が重なって帰ってきたとき、光ファイバ線路の障害区間を特定できない。障害区間を特定する為には、特許文献1の光パルス試験器は、各反射光が重ならないように光信号の送出時間を厳密に制御する必要がある。その結果、特許文献1の光パルス試験器は、光信号の送出時間を厳密に制御する為の回路(例えば、パルス信号生成器等)を備えなければならず、製造コストを十分低減することができないという課題があった。
【0009】
本発明は、上記課題を解決する装置、特定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明の装置は、光を一定量反射する光反射素子が挿入された光ファイバに接続された装置であって、前記光ファイバに光を送出し、前記送出を停止する送出手段と、前記光反射素子から反射される反射光の強さを測定する測定手段と、前記送出手段が前記光の送出を停止してから、前記測定手段により測定される前記反射光の強さが所定値以下となるまでの時間を計測する時間測定手段と、前記時間測定手段により計測された前記時間に対応する距離を算出する距離測定手段と、前記距離を示す信号を出力する出力手段と、を備え、前記所定値は、前記光を送出していないときの前記反射光の強さ以上で、且つ、前記光を送出したときに、最も遠くに挿入されている前記光反射素子から受光する前記反射光の強さよりも小さい値である。
【0011】
上記目的を達成するために、本発明の特定方法は、光を一定量反射する光反射素子が挿入された光ファイバに光を送出し、前記光反射素子から反射される反射光の強さを測定し、前記光の送出を停止し、前記光の送出を停止してから、測定される前記反射光の強さが所定値以下となるまでの時間を計測し、計測された前記時間に対応する距離を算出し、前記距離を示す信号を出力し、前記所定値は、前記光を送出していないときの前記反射光の強さ以上で、且つ、前記光を送出したときに、最も遠くに挿入されている前記光反射素子から受光する前記反射光の強さよりも小さい値である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、装置は、光ファイバの障害区間を特定するにあたり、製造コストを十分低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】特許文献1の光パルス試験機の構成と動作を説明する為の図である。
図2】本発明の第1の実施の形態における光送受信装置に接続される機器について説明する為の図である。
図3】本発明の第1の実施の形態における光送受信装置に接続される光反射素子について説明する為の図である。
図4】本発明の第1の実施の形態における光送受信装置の構成例を示す図である。
図5】本発明の第1の実施の形態における光送受信装置の動作を示すフローチャートである。
図6】本発明の第1の実施の形態における光送受信装置の効果について説明する為の図である。
図7】本発明の第2の実施の形態における装置の構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0015】
≪第1の実施の形態≫
[概要]
本実施形態の光送受信装置は、光を一定量反射する光反射素子が複数挿入された光ファイバに光を適当な時間送出する。光の送出は光ファイバに障害があるときに行われる。光の送出により、本実施形態の光送受信装置は、各光反射素子から同じ波長の反射光を重畳して受光する。その後、光送受信装置は、光の送出を停止し、反射光を全て受光しなくなるまでの時間を計測する。計測した時間は、障害後も接続する、最も遠い光反射素子との間を光が往復する時間に相当する。光送受信装置は、計測した時間を基に、障害後も接続する最も遠い光反射素子までの距離を算出する。算出された距離は、それ以上の区間で障害があることを示す情報、すなわち、障害区間を特定する情報である。本実施形態の光送受信装置は、障害区間を特定するのに、反射光が重ならないよう光の送出時間を厳密に制御する必要なく、その為の回路も必要ないので、製造コストを十分低減できる。
【0016】
[構成の説明]
図2は、本発明の第1の実施の形態における光送受信装置に接続される機器について説明する為の図である。図3は、本発明の第1の実施の形態における光送受信装置に接続される光反射素子について説明を行う為の図である。
【0017】
(1)光送受信装置1に接続される機器について
まず、本実施形態の光送受信装置1には、図2に示されるように、光ファイバ2が接続される。光ファイバ2には、複数の光反射素子3_1、3_2、…、3_n(n=1〜光反射素子の数)が一定距離毎に挿入されている。上述の光反射素子3_1、3_2、…、3_nは、図3に示されるように、光送受信装置1から光が入射されると、その一部を一定量反射し、残りを透過光として透過する素子であり、具体的には、光ファイバグレーティングである。光ファイバグレーティングは、周知の位相マスク法により、光ファイバ2に設けられてもよい。光ファイバグレーティングの反射率は1%〜10%程度であってもよい。光送受信装置1は、一定距離毎に光ファイバグレーティングが設けられた光ファイバ2に接続される。
【0018】
なお、光ファイバ2の一端は、図2に示されるように、他の光送受信装置4に接続されてもよい。
【0019】
(2)光送受信装置1の構成
図4は、本発明の第1の実施の形態における光送受信装置1の構成例を示す図である。
【0020】
光送受信装置1は、図4に示される通り、送信回路11と、ビームスプリッター12と、測定回路13と、を備える。
【0021】
送信回路11は、光ファイバ14とビームスプリッター12を介して、光ファイバ2に接続される。さらに、測定回路13は、光ファイバ15とビームスプリッター12を介して、光ファイバ2に接続される。また、図示していないが、送信回路11は、測定回路13と導線を介して接続される。
【0022】
(3)光送受信装置1の各部位の機能
(3−1)光送出機能
送信回路11は、送出開始を示す信号が入力されると、光(すなわち、一定レベルの光信号)を光ファイバ2に送出する。
【0023】
上述の送出開始を示す信号は、送信回路11に接続する監視装置(図示せず)から入力されてもよい。監視装置のオペレータは、光ファイバ2に障害が発生したときに、送出開始を示す信号を監視装置から送信回路11に入力する。
【0024】
(3−2)送出停止機能
送信回路11は、光を送出し、所定時間経過した後、光の送出を停止する。送信回路11は、光の送出を停止すると、送出停止を示す信号を測定回路13に出力する。
【0025】
上述の所定時間は、本実施形態の光送受信装置1のユーザによって送信回路11に設定される。本実施形態の光送受信装置1のユーザは、任意の時間(例えば、3秒)を送信回路11に設定してよい。
【0026】
(3−3)計時機能
測定回路13は、計時機能を備える。測定回路13は、送出停止を示す信号が入力されると、計時機能により時間の計測を開始する。送出停止してからの時間を計測する為である。
【0027】
(3−4)反射光測定機能
測定回路13は、ビームスプリッター12を介して反射光を受光する。
【0028】
測定回路13は、所定のタイミングになると、受光する反射光の強さを測定する。
【0029】
上述の所定のタイミングは、一定間隔毎のタイミングであり、本実施形態の光送受信装置1のユーザによって測定回路13に設定される。所定のタイミングは、より短い間隔のタイミングであることが望ましく、本実施形態の光送受信装置1のユーザは、所定のタイミングとして、数十マイクロ秒毎のタイミングを測定回路13に設定してもよい。
【0030】
反射光の強さを測定する為に、測定回路13は、一般的な受光素子とAD(Analog to Digital)変換器を備えてもよい。その場合、受光素子は、反射光を受光する位置に備えられる。また、AD変換器は、受光素子から出力される電気信号(アナログ信号)の強さを所定のタイミング(例えば、数十マイクロ秒)毎に読み取り、読み取った値を測定回路13内のメモリに書き込んでいく。測定回路13内のメモリ(以下、「記憶メモリ」という)に書き込まれる値は、反射光の強さを示す値である。測定回路13は、受光素子とAD変換器により、所定のタイミング毎に反射光の強さを測定することができる。
【0031】
反射光測定機能は、他の機能(例えば、計時機能)と並行して動く。
【0032】
(3−5)計時停止機能
測定回路13は、反射光を受光しなくなると、時間の計測を停止する。具体的には、測定回路13は、反射光測定機能により直近に測定された反射光の強さ(直近に記憶メモリに書き込まれた値)が所定値以下となると、計時機能を停止し、時間の計測を停止する。
【0033】
上述の所定値は、反射光を受光していないときの反射光の強さであり、本実施形態の光送受信装置1のユーザによって予め測定回路13に設定される。光送受信装置1のユーザは、光ファイバ2に障害がなく、送信回路11が光を送出していないときに、反射光測定機能により測定される反射光の強さを、所定値として測定回路13に設定してもよい。
【0034】
(3−6)計時機能停止までに計測された時間について
計時機能停止までに計時機能によって計測された時間は、光の送出を停止してから、反射光を受光しなくなるまでの時間である。当該時間は、光の送出を停止したことが、接続されている最も遠い光反射素子まで光として伝わり、反射して帰ってくるまでの時間であり、接続されている最も遠い光反射素子との間を光が往復する時間に相当する。
【0035】
(3−7)距離算出機能
測定回路13は、計測した時間を基に、接続されている最も遠い光反射素子までの距離を算出する。
【0036】
具体的には、測定回路13は、計測した時間(すなわち、接続されている最も遠い光反射素子との間で光が往復する時間)の半分と、光ファイバ内を光が進む速度と、の積を算出する。光ファイバ内を光が進む速度は、光速を光ファイバの屈折率で除算して求めることができる。光ファイバ内を光が進む速度は、本実施形態の光送受信装置1のユーザによって予め算出され、測定回路13に設定される。
【0037】
例えば、一般的な石英ガラスを使った光ファイバの場合、屈折率は1.458であり、光速は29973.458[km/s]であるので、該光ファイバ内を光が進む速度は20557.927[km/s]である。本実施形態の光送受信装置1のユーザは、一般的な石英ガラスを使った光ファイバを光送受信装置1に接続するときには、測定回路13に20557.927[km/s]を設定する。
【0038】
(3−8)出力機能
測定回路13は、算出した、接続されている最も遠い光反射素子までの距離を信号として出力する。
【0039】
(4)各部位の実現手段について
送信回路11は、レーザダイオードと、光ファイバと、電子回路と、を用いて実現することができる。測定回路13は、電子回路と、RAM(Randam Access Memory)等のメモリと、受光素子と、AD変換器と、光ファイバと、光アダプタと、を用いて実現することができる。
【0040】
[動作の説明]
図5は、本発明の第1の実施の形態における光送受信装置1の動作を示すフローチャートである。図5を用いて、本実施形態の光送受信装置1の詳細な動作を以下に説明する。
【0041】
(1)光の送出と停止
まず、光ファイバ2に障害が発生し、正常に通信できなくなったとする。光ファイバ2の何れかの箇所が断線したことが想定される。そのとき、監視装置(図示せず)のオペレータが、送出開始を示す信号を監視装置(図示せず)から送信回路11に出力したとする。送出開始を示す信号が送信回路11に入力される。
【0042】
光送受信装置1の送信回路11は、送出開始を示す信号が入力されると、図5に示されるように、光を光ファイバ2に送出する(S1)。光は、一定レベルの光信号である。
【0043】
S1の処理により、光送受信装置1には、各光反射素子3_1、3_2、…、3_nから、同じ波長の反射光が帰ってくる。光送受信装置1の測定回路13は、各光反射素子3_1、3_2、…、3_nからの反射光を重畳して受光する。このとき、測定回路13は、上述の「(3−4)反射光測定機能」で説明した通りに、受光する反射光の強さを一定間隔毎に繰り返し測定している。
【0044】
送信回路11は、上述のS1により光を送出し、所定時間(例えば、3秒)経過した後、光の送出を停止し、さらに、送出停止を示す信号を測定回路13に出力する(S2)。
【0045】
(2)光の送出停止後、反射光を受光しなくなるまでの時間の計測
次に、測定回路13は、送出停止を示す信号が送信回路11から入力されると、自身に備わる計時機能により、時間の計測を開始する(S3)。光の送出を停止してからの時間を計測する為である。
【0046】
次に、測定回路13は、直近に測定した反射光の強さが所定値以下であるか否かを判別する(S4)。反射光を受光しなくなったか否かを判別する為である。
【0047】
測定回路13は、直近に測定した反射光の強さが所定値以下でない場合(S4でNoの場合)には、反射光を受光し続けているとみなし、S4に戻り、再度、直近に測定した反射光の強さが所定値以下であるか否かを判別する。
【0048】
その後、測定した反射光の強さが所定値以下となった場合(S4でYesの場合)には、測定回路13は、反射光を受光しなくなったとみなし、時間の計測を停止する(S5)。
【0049】
計測した時間は、光の送出を停止してから反射光を受光しなくなるまでの時間である。その時間は、上述の(3−6)で説明した通り、障害発生後も正常に接続されている、最も遠い光反射素子との間で光が往復する時間に相当する。
【0050】
(3)接続する最も遠い光反射素子までの距離の算出と出力
次に、測定回路13は、計測した時間を基に、正常に接続されている最も遠い光反射素子までの距離を算出する(S6)。
【0051】
具体的には、測定回路13は、計測した時間(障害発生後も正常に接続されている最も遠い光反射素子との間を光が往復する時間)の半分と、光ファイバ内を光が進む速度と、の積を算出する。光ファイバ内を光が進む速度は、上述の「(3−7)距離算出機能」で説明した通り、本実施形態の光送受信装置1のユーザによって算出され、予め測定回路13に設定されている。
【0052】
次に、測定回路13は、S6で算出した距離(障害発生後も正常に接続されている最も遠い光反射素子までの距離)を信号として出力する(S7)。
【0053】
(4)上述のS1〜S7の処理の纏め
本実施形態の光送受信装置1は、光ファイバに障害があるとき、上述のS1〜S7の処理を実施することで、障害発生後も正常に接続されている最も遠い光反射素子までの距離を出力する。本実施形態の光送受信装置1が出力する距離は、その距離までは障害がないが、それ以上の区間で障害があることを示す情報、すなわち障害区間を特定する情報である。本実施形態の光送受信装置1は、障害区間を特定することができる。
【0054】
(5)構成及び動作の変形例
(5−1)出力先を監視装置とする動作
測定回路13は、正常に接続されている最も遠い光反射素子までの距離を出力するが、その出力先は、監視装置(図示せず)であってもよい。その場合、監視装置は、入力された距離を自身に備わる画面に表示する。光送受信装置1のユーザは、監視装置を介して、障害区間を知ることができる。
【0055】
(5−2)測定回路13に設定される所定値について
上記では、測定回路13に設定される所定値は、反射光を受光していないときの反射光の強さ(以下、「未受光レベル」という)であるものとしたが、これに限らない。上述の所定値は、最も遠くに挿入されている光反射素子3_nから受光する反射光の強さ(以下、「最遠からの反射光レベル」という)より小さく、未受光レベル以上の任意の値であってもよい。
【0056】
上述の最遠からの反射光レベルを求める為には、光送受信装置1のユーザは、まず、光ファイバ2に光を送出し、その後、送出を停止する。ここで、光送受信装置1のユーザは、光反射素子3_nまでの距離を分かっているので、光反射素子3_nからの反射光を受光する時間帯も予め分かる。光送受信装置1のユーザは、光の送出を停止した後、光反射素子3_nからの反射光を受光する時間帯において、反射光測定機能により測定される反射光の強さを、最遠からの反射光レベルとして求める。
【0057】
上述の未受光レベルや最遠からの反射光レベルは、光ファイバ2が接続され、該光ファイバに障害がない状態で求められる。
【0058】
(5−3)S4〜S6を繰り返し実施する動作
測定回路13は、動作のバリエーションとして、S3の後、所定時間が経過するまで、S4〜S6を繰り返し実施してもよい。その場合、測定回路13は、S5において、時間の計測を停止せず、その時、計測していた時間を記憶する。また、測定回路13は、S6においては、S5で記憶した時間の半分と、光ファイバ内を光が進む速度との積を算出する。測定回路13は、所定時間が経過したときは、時間の計測を停止してS7を実施する。上述の所定時間は、秒単位の時間であってもよい。所定時間は、本実施形態の光送受信装置1のユーザによって測定回路13に設定される。
【0059】
[効果の説明]
本実施形態によれば、光送受信装置1は、光ファイバの障害区間を特定するにあたり、製造コストを十分低減することができる。
【0060】
その理由を以下に説明する。
【0061】
まず、本実施形態の光送受信装置1は、障害区間を特定するにあたって、光の送出を停止してから反射光を受光しなくなるまでの時間を計測し、計測した時間を基に、障害発生後も正常に接続されている最も遠い光反射素子までの距離を算出する。上述の時間や距離は、光反射素子からの反射光が重なっていたとしても計測又は算出できるので、本実施形態の光送受信装置1は、反射光が重ならないように光の送出時間を厳密に制御する必要はない。本実施形態の光送受信装置1は、光の送出時間を厳密に制御する必要がないので、その為の回路(例えば、パルス信号生成器等)を備える必要もなく、製造コストを十分低減することができる。
【0062】
さらに、図6は、光送受信装置1の効果について追加で説明する為の図である。本実施形態の光送受信装置1は、図6に示されるように、送信回路11から送出されている光が何らかの理由により測定回路13に漏れていたとしても、十分正しく光ファイバの障害区間を特定することもできる。なぜなら、本実施形態の光送受信装置1は、光の送出が停止し、漏れがなくなってから計測を開始するからである。
【0063】
≪第2の実施の形態≫
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。
【0064】
図7は、本発明の第2の実施の形態における装置100の構成例を示す図である。以下に、第2の実施の形態の装置100の構成と動作について説明する。
【0065】
[構成の説明]
(1)第2の実施形態の装置100の構成
本実施形態の装置100には、図7に示されるように、光を一定量反射する光反射素子110、111、112が挿入された光ファイバ120が接続される。本実施形態の装置100は、送出部101と、測定部102と、時間測定部103と、距離測定部104と、出力部105と、を備える。
【0066】
送出部101と測定部102は、図示していないが、一般的な光スプリッタを介して、光ファイバ120に接続される。測定部102は、時間測定部103と導線を介して接続される。距離測定部104は、時間測定部103及び出力部105と導線を介して接続される。
【0067】
(2)装置100の各部位の機能
送出部101は、光ファイバ120に光を送出し、光の送出を停止する。
【0068】
送出部101は、光ファイバ120に障害が発生したことを示す電気信号が入力されたときに、光を送出してもよい。さらに、送出部101は、光を送出した後、所定時間経過後に光の送出を停止してもよい。所定時間は、本実施形態の装置100のユーザによって送出部101に設定される任意の時間である。
【0069】
測定部102は、光反射素子110、111、112から反射される反射光の強さを測定する。
【0070】
時間測定部103は、送出部101が光の送出を停止してから、測定部102により測定される反射光の強さが所定値以下となるまでの時間を計測する。光の送出を停止してから、反射光を受光しなくなるまでの時間を計測する為である。
【0071】
上述の所定値は、送出部101が光の送出を行っていないときに、すなわち、反射光を受光していないときに、測定部102で測定される反射光の強さ(第1の実施形態と同様、以下、「未受光レベル」という)であってもよい。所定値は、本実施形態の装置100のユーザによって時間測定部103に設定される。
【0072】
なお、装置100のユーザは、未受光レベル以上であっても、光を送出したときに、最も遠くに挿入されている光反射素子3_nから受光する反射光の強さよりも小さい値であれば、どのような値でも所定値として設定することができる。該反射光レベルは、各光反射素子からの反射光の強さの中で最も小さく、反射光が受光しなくなったことを必ず検出できるからである。
【0073】
距離測定部104は、時間測定部103により計測された時間に対応する距離を算出する。
【0074】
出力部105は、距離測定部104により算出された距離を示す信号を出力する。
【0075】
[動作の説明]
次に、本実施形態の装置100の動作を説明する。
【0076】
まず、光ファイバ120の障害を認識した本実施形態の装置100のユーザが、装置100に備わるボタンを押下し、ボタンを押下された装置100が、光ファイバ120に障害が発生したことを示す電気信号を送出部101に出力したとする。送出部101に、障害が発生したことを示す電気信号が入力される。
【0077】
(1)光の送出と停止
送出部101は、光ファイバ120に障害が発生したことを示す電気信号が入力されたときに、光ファイバ120に光を送出する。
【0078】
送出後、送出部101には、光ファイバ120上の光反射素子110、111、112各々から同じ波長の反射光が重なって帰ってくる。このとき、測定部102は、受光する反射光の強さを繰り返し測定している。
【0079】
送出部101は、光を送出した後、光の送出を停止する。
【0080】
(2)反射光を受光しなくなるまでの時間の計測
時間測定部103は、送出部101が光の送出を停止してから、測定部102により測定される反射光の強さが所定値(未受光レベル)以下となるまでの時間を計測する。すなわち、時間測定部103は、光の送出を停止してから、反射光を受光しなくなるまでの時間を計測する。
【0081】
計測された時間は、障害発生後も正常に接続されている、最も遠い光反射素子との間で光が往復する時間である。
【0082】
(3)接続する最も遠い光反射素子までの距離の算出と出力
次に、距離測定部104は、時間測定部103により計測された時間に対応する距離を算出する。
【0083】
具体的には、距離測定部104は、計測された時間(障害発生後も正常に接続されている最も遠い光反射素子との間で光が往復する時間)の半分と、光ファイバ内を光が進む速度と、の積を計算する。光ファイバ内を光が進む速度は、光速を、光ファイバの屈折率で除算して求めることができ、一般的な石英ガラスを使った光ファイバの場合、20557.927[km/s]である。光ファイバ内を光が進む速度は、装置100のユーザによって予め距離測定部104に設定される。
【0084】
次に、出力部105は、距離測定部104により算出された距離(すなわち、障害発生後も正常に接続されている最も遠い光反射素子までの距離)を示す信号を出力する。
【0085】
出力された信号が示す距離は、それ以上の区間で障害があることを示す情報、すなわち障害区間を特定する情報である。本実施形態の光送受信装置1は、障害区間を特定できる。
【0086】
上記では、光ファイバ120に挿入される光反射素子が、光反射素子110、111、112の3つの場合を説明したが、3つに限らない。光ファイバ120には、光反射素子が3つ以上挿入されてもよいし、2つ以下挿入されてもよい。
【0087】
[効果の説明]
本実施形態によれば、装置は、光ファイバの障害区間を特定するにあたり、製造コストを十分低減することができる。
【0088】
その理由を以下に説明する。
【0089】
まず、本実施形態の装置は、障害区間を特定するにあたって、光の送出を停止してから反射光を受光しなくなるまでの時間を計測し、計測した時間を基に、障害発生後も正常に接続されている最も遠い光反射素子までの距離を算出する。上述の時間や距離は、光反射素子からの反射光が重なっていたとしても計測又は算出できるので、本実施形態の装置は、反射光が重ならないように光の送出時間を厳密に制御する必要はない。本実施形態の装置は、光の送出時間を厳密に制御する必要がないので、その為の回路(例えば、パルス信号生成器等)を備える必要もなく、製造コストを十分低減することができる。
【0090】
さらに、上記の各実施形態の一部又は全部は、以下の付記のようにも記載されうるが、以下には限られない。
(付記1)
光を一定量反射する光反射素子が挿入された光ファイバに接続された装置であって、
前記光ファイバに光を送出し、前記送出を停止する送出手段と、
前記光反射素子から反射される反射光の強さを測定する測定手段と、
前記送出手段が前記光の送出を停止してから、前記測定手段により測定される前記反射光の強さが所定値以下となるまでの時間を計測する時間測定手段と、
前記時間測定手段により計測された前記時間に対応する距離を算出する距離測定手段と、
前記距離を示す信号を出力する出力手段と、を備え、
前記所定値は、前記光を送出していないときの前記反射光の強さ以上で、且つ、前記光を送出したときに、最も遠くに挿入されている前記光反射素子から受光する前記反射光の強さよりも小さい値である、
ことを特徴とする装置。
(付記2)
前記所定値は、前記光を送出していないときの前記反射光の強さである、
ことを特徴とする付記1に記載の装置。
(付記3)
前記送出手段は、秒単位の所定時間、前記光を送出する、
ことを特徴とする付記1乃至2のいずれか1項に記載の装置。
(付記4)
前記距離測定手段は、前記時間の半分と、光ファイバ内を光が進む所定の速度と、の積に対応する値を前記距離として算出する、
ことを特徴とする付記1乃至3のいずれか1項に記載の装置。
(付記5)
入力された信号の示す情報を表示する表示手段を備えた監視装置に接続され、
前記出力手段は、前記距離を示す信号を前記監視装置に出力する、
ことを特徴とする付記1乃至4のいずれか1項に記載の装置。
(付記6)
光を一定量反射する光反射素子が挿入された光ファイバに光を送出し、
前記光反射素子から反射される反射光の強さを測定し、
前記光の送出を停止し、
前記光の送出を停止してから、測定される前記反射光の強さが所定値以下となるまでの時間を計測し、
計測された前記時間に対応する距離を算出し、
前記距離を示す信号を出力し、
前記所定値は、前記光を送出していないときの前記反射光の強さ以上で、且つ、前記光を送出したときに、最も遠くに挿入されている前記光反射素子から受光する前記反射光の強さよりも小さい値である、
ことを特徴とする特定方法。
(付記7)
前記所定値は、前記光を送出していないときの前記反射光の強さである、
ことを特徴とする付記6に記載の特定方法。
(付記8)
前記送出をするときにおいては、秒単位の所定時間、前記光を送出する、
ことを特徴とする付記6乃至7のいずれか1項に記載の特定方法。
(付記9)
前記距離を算出するときにおいては、前記時間の半分と、光ファイバ内を光が進む所定の速度と、の積に対応する値を前記距離として算出する、
ことを特徴とする付記6乃至8のいずれか1項に記載の特定方法。
(付記10)
入力された信号の示す情報を表示する、
ことを特徴とする付記6乃至9のいずれか1項に記載の特定方法。
(付記11)
前記光反射素子は、光ファイバグレーティングである、
ことを特徴とする付記1乃至5のいずれか1項に記載の装置。
【0091】
以上、実施形態を参照して本願発明を説明したが、本願発明は上記実施形態に限定されるものではない。本願発明の構成や詳細には、本願発明のスコープ内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。
【0092】
この出願は、2015年6月25日に出願された日本出願特願2015−128091を基礎とする優先権を主張し、その開示の全てをここに取り込む。
【符号の説明】
【0093】
1 光送受信装置
2、14、15 光ファイバ
3_1、110、111、112 光反射素子
4 光送受信装置
11 送信回路
12 ビームスプリッター
13 測定回路
100 装置
101 送出部
102 測定部
103 時間測定部
104 距離測定部
105 出力部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7