(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
車両ドアを開く制御信号を出力する車載機と、該車両ドアを開く予約に係る予約信号を該車載機に送信する携帯機とを備え、前記車載機は、該予約信号を受信した場合に該携帯機と所定の通信を行うことで前記制御信号を出力する車両用通信システムであって、
前記携帯機は、
前記予約信号を送信する携帯送信部と、
前記予約信号の送信に係る操作を受け付ける受付部と、
該受付部が操作を受け付けた場合、前記携帯送信部に前記予約信号を反復的に送信させる送信制御部と
を備え、
前記車載機は、
前記予約信号を受信する車載受信部と、
該車載受信部が前記予約信号を受信した場合、前記携帯機の位置の検出に係る位置検出用信号を送信する車載送信部と
を備え、
前記携帯機は、前記車載送信部から送信された前記位置検出用信号を受信する携帯受信部を備え、
前記送信制御部は、前記携帯受信部が前記位置検出用信号を受信した場合、前記携帯送信部に前記予約信号を送信させない車両用通信システム。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[本発明の実施形態の説明]
最初に本発明の実施態様を列記して説明する。また、以下に記載する実施形態の少なくとも一部を任意に組み合わせてもよい。
【0013】
(1)本発明の一態様に係る車両用通信システムは、車両ドアを開く制御信号を出力する車載機と、該車両ドアを開く予約に係る予約信号を該車載機に送信する携帯機とを備え、前記車載機は、該予約信号を受信した場合に該携帯機と所定の通信を行うことで前記制御信号を出力する車両用通信システムであって、前記携帯機は、前記予約信号を送信する携帯送信部と、前記予約信号の送信に係る操作を受け付ける受付部と、該受付部が操作を受け付けた場合、前記携帯送信部に前記予約信号を反復的に送信させる送信制御部とを備える。
【0014】
本願にあっては、携帯機は、携帯送信部にて予約信号を送信する。携帯機は、予約信号の送信に係る操作を受付部にて受け付ける。携帯機は、受付部が操作を受け付けた場合、送信制御部にて携帯送信部に予約信号を反復的に送信させる。携帯機は使用者が受付部に対する操作を行わなかった場合に予約信号を送信しない。そのため、使用者が意図せず車両ドアを開くことを防止することができ、本態様に係る車両用通信システムは防犯性を損なうことがない。また、車載機は、仮に使用者が誤って受付部に操作を受け付けさせたことに起因して携帯機から送信された予約信号を受信した場合でも、所定の通信を行うことで車両ドアを開く制御信号を出力するため、本態様に係る車両用通信システムは防犯性を損なうことがない。所定の通信は例えば、携帯機が車載機と対応関係にあるか否かの認証に係る通信、携帯機の所在位置の検出に係る通信等である。更に、携帯機は反復的に予約信号を送信するため、車載機に対してより確実に予約信号を受信させることができる。従って、携帯機を所持する使用者は、予約信号の到達距離よりも車載機から離れた位置で受付部に操作を受け付けさせた場合であっても、その後、車両に乗込むために当該到達距離内に移動することで車載機に予約信号を受信させることができる。そのため、受付部が操作を受け付けたことにより予約信号が送信されたにも関わらず、車両ドアが自動で開かないことを防止することができ、本態様に係る車両用通信システムは利便性を損なうことがない。
【0015】
(2)前記携帯機は、前記予約信号を反復的に送信している時間を計時する計時部を備え、前記送信制御部は、前記計時部が計時した時間が所定時間以上である場合、前記携帯送信部に前記予約信号を送信させない構成が好ましい。
【0016】
本願にあっては、携帯機は、予約信号を反復的に送信している時間を計時部にて計時する。携帯機の送信制御部は、計時部が計時した時間が所定時間以上である場合携帯送信部に予約信号を送信させない。従って、携帯機は予め設定された時間だけ予約信号を送信することで、電池、バッテリ等からなる自機の電源の消費電力を抑制することができる。
【0017】
(3)前記車載機は、前記予約信号を受信する車載受信部と、該車載受信部が前記予約信号を受信した場合、前記携帯機の位置の検出に係る位置検出用信号を送信する車載送信部とを備え、前記携帯機は、前記車載送信部から送信された前記位置検出用信号を受信する携帯受信部を備え、前記送信制御部は、前記携帯受信部が前記位置検出用信号を受信した場合、前記携帯送信部に前記予約信号を送信させない構成が好ましい。
【0018】
本願にあっては、車載機は、予約信号を車載受信部にて受信する。車載機は、車載受信部が予約信号を受信した場合、携帯機の位置の検出に係る位置検出用信号を車載送信部にて送信する。携帯機は、車載機の車載送信部から送信された位置検出用信号を携帯受信部にて受信する。携帯機の送信制御部は、携帯受信部が位置検出用信号を受信した場合、携帯送信部による予約信号の送信を停止させる。従って、携帯機は、位置検出用信号を受信することによって車載機が予約信号を受信したことを検出し、検出後に予約信号を送信しないことで、無駄な予約信号を行わないようにすることができる。そのため、携帯機は、電池、バッテリ等からなる自機の電源の消費電力を抑制することができる。
【0019】
(4)前記送信制御部は、前記携帯受信部が受信した前記位置検出用信号に応じた応答信号を前記携帯送信部に送信させ、前記車載受信部は前記応答信号を受信するようにしてあり、前記車載機は、該車載受信部が前記応答信号を受信した場合、受信した前記応答信号に基づいて前記携帯機及び自機を搭載する車両の位置関係を検出する検出部と、該検出部が検出した位置関係が、前記携帯機及び車両間の距離が所定距離以下である場合に前記車両ドアを開く制御信号を出力する出力部とを備える構成が好ましい。
【0020】
本願にあっては、携帯機の送信制御部は、携帯受信部が受信した位置検出用信号に応じた応答信号を携帯送信部に送信させる。車載機は、応答信号を車載受信部にて受信する。車載機は、車載受信部が応答信号を受信した場合、受信した応答信号に基づいて携帯機と、自機、即ち車載機を搭載する車両との位置関係を検出部にて検出する。車載機は、検出部が検出した位置関係が、携帯機及び車両間の距離が所定距離以下である場合に車両ドアを開く制御信号を出力部にて出力する。従って、車載機は、検出部によって検出された車両及び携帯機の位置関係が、携帯機を所持する使用者が車両に対して少なくとも所定距離以下の位置に所在する関係を示すことを条件に車両ドアを開く制御を行うことができる。そのため、単に、携帯機が所定の通信範囲内に所在するか否かにより車両ドアを開く制御よりも柔軟な制御を行うことができる。
【0021】
(5)前記携帯送信部は、前記車載機を設けてある車両の駆動源を起動する起動信号を該車両に送信する構成が好ましい。
【0022】
本願にあっては、携帯機の携帯送信部は、車載機を設けてある車両の駆動源を起動する起動信号を当該車両に送信する。従って、携帯機は例えば、予約信号の送信に際して起動信号を送信するための電波を用いることで、既存の車両用の通信機器を用いて本願の携帯機を構成することができる。
【0023】
(6)本発明の一態様に係る携帯機は、車両ドアを開く制御信号を出力する車載機に、該車両ドアを開く予約に係る予約信号を送信する携帯機であって、前記予約信号を送信する携帯送信部と、該予約信号の送信に係る操作を受け付ける受付部と、該受付部が操作を受け付けた場合、前記携帯送信部に前記予約信号を反復的に送信させる送信制御部とを備える。
【0024】
本願にあっては、携帯送信部は予約信号を送信する。受付部は、予約信号の送信に係る操作を受け付ける。送信制御部は、受付部が操作を受け付けた場合、携帯送信部に予約信号を反復的に送信させる。従って、携帯機は使用者が受付部に操作を受け付けさせなかった場合に予約信号を送信しない。そのため、使用者が意図せず車両ドアを開くことを防止することができ、本態様に係る車両用システムは防犯性を損なうことがない。また、携帯機は反復的に予約信号を送信するため、車載機に対してより確実に予約信号を受信させることができる。従って、携帯機を所持する使用者は、予約信号の到達距離よりも車載機から離れた位置で受付部に操作を受け付けさせた場合であっても、その後、車両に乗込むために当該到達距離内に移動することで車載機に予約信号を受信させることができる。そのため、受付部が操作を受け付けたことにより予約信号が送信されたにも関わらず、車両ドアが自動で開かないことを防止することができ、本態様に係る車両用通信システムは利便性を損なうことがない。
【0025】
(7)前記予約信号を受信した前記車載機から送信された信号を受信する携帯受信部を備え、前記送信制御部は、前記携帯受信部が前記信号を受信した場合、前記携帯送信部に前記予約信号を送信させない構成が好ましい。
【0026】
本願にあっては、携帯受信部は、予約信号を受信した車載機から送信された信号を受信する。送信制御部は、携帯受信部が当該車載機からの信号を受信した場合、携帯送信部に予約信号を送信させない。従って、携帯機は、携帯受信部が車載機からの信号を受信することによって車載機が予約信号を受信したことを検出し、検出後に予約信号を送信しないことで、無駄な予約信号を行わないようにすることができる。そのため、携帯機は、電池、バッテリ等からなる自機の電源の消費電力を抑制することができる。
【0027】
(8)前記携帯送信部は、前記車載機を設けてある車両の駆動源を起動する起動信号を該車両に送信する構成が好ましい。
【0028】
本願にあっては、携帯機の携帯送信部は、車載機を設けてある車両の駆動源を起動する起動信号を当該車両に送信する。従って、携帯機は例えば、予約信号の送信に際して起動信号を送信するための電波を用いることで、既存の車両用の通信機器を用いて本願の携帯機を構成することができる。
【0029】
[本発明の実施形態の詳細]
本発明の実施形態に係る車両用通信システム及び携帯機の具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0030】
図1は本実施形態に係る車両用通信システムの一構成例を示す模式図である。本実施形態に係る車両用通信システムは、車両Cに設けられた複数のLF送信アンテナ3及びRF受信アンテナ4を用いて各種信号を送受信する車載機1と、当該車載機1との間で当該信号を送受信する携帯機2とを備える。車載機1は、携帯機2から後述の予約信号をRF受信アンテナ4にて受信した場合に、車両C及び携帯機2の位置関係を検出し、検出した位置関係に基づいて車両Cに設けられたスライドドアDを自動で開く。スライドドアDは、例えば車両Cの助手席側後部に設けられている。スライドドアDは、更に運転席側後部に設けられていてもよく、設けられる位置、数は特に限定されない。なお、車両Cは、進行方向左側が助手席側であり、進行方向右側が運転席側である。
複数のLF送信アンテナ3は、例えば、運転席側のピラーに配された第1LF送信アンテナ31、助手席側のピラーに配された第2LF送信アンテナ32、車両Cの後部に配された第3LF送信アンテナ33及び前部に配された第4LF送信アンテナ34等である。各LF送信アンテナ3は例えば、30kHz〜300MHzのLF(Low Frequency)帯の電波を用いて信号を送信する。
【0031】
図2は車載機1の一構成例を示すブロック図である。車載制御部11は、例えば一又は複数のCPU(Central Processing Unit)、マルチコアCPU、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、入出力インタフェース、計時部11a等を有するコンピュータである。車載制御部11のCPUは入出力インタフェースを介して車載送信部12、車載受信部13、記憶部14、及び出力部15に接続している。車載制御部11は記憶部14に記憶されている後述の制御プログラムを実行することにより、各構成部の動作を制御し、車両C及び携帯機2の位置関係の検出を行い、検出した位置関係に基づいてスライドドアDを開くことを指示する。
【0032】
記憶部14は、EEPROM(Electrically Erasable Programmable ROM)、フラッシュメモリ等の不揮発性メモリである。記憶部14は、車載制御部11が車載機1の各構成部の動作を制御することにより、車両C及び携帯機2の位置関係を検出し、スライドドアDを開くことを指示するための制御プログラムを記憶している。
また、記憶部14は、スライドドアDを開くことを指示する条件となる車両Cに対する携帯機2の所定の位置関係が記憶されている。所定の位置関係は例えば、車両Cから携帯機2までの距離、車両Cに対する携帯機2の方向等を含む。例えば、記憶部14には、スライドドアDの外面から対向方向に3m以内の範囲を表す情報が所定の位置関係を表す情報として記憶されている。本実施形態においては、当該位置関係が予め記憶部14に記憶されている例を説明するが、使用者が任意の位置関係を記憶部14に記憶させる構成でもよい。なお、
図2では車載制御部11及び記憶部14を別体の構成部として図示しているが、車載制御部11の内部に記憶部14を備えても良い。
【0033】
車載送信部12は複数のLF送信アンテナ3に接続されており、車載制御部11の制御に従って、車両C及び携帯機2の位置関係を検出するための位置検出用信号を各LF送信アンテナ3から送信する。位置検出用信号は例えば携帯機2に受信信号強度を検出させ、検出された受信信号強度を含む応答信号の送信を要求するための信号等である。位置検出用信号は要求信号に相当する。
【0034】
車載受信部13はRF受信アンテナ4に接続されており、携帯機2から例えば300MHz〜3GHzのUHF(Ultra High Frequency)帯の電波を用いて送信された予約信号及び応答信号を含む各種信号を受信し、車載制御部11へ出力する。UHF帯の電波で通信可能な領域は広いため、車両CにおけるRF受信アンテナ4の配置は特に限定されない。
【0035】
出力部15にはドアECU6が接続されており、出力部15は、車載制御部11の制御に従って、スライドドアDを開閉するための制御信号を出力する。具体的には出力部15は、スライドドアDを開くことを指示する開扉指示信号又はスライドドアDを閉じることを指示する閉扉指示信号をドアECU6へ出力する。ドアECU6は、車載機1の出力部15から出力された開扉指示信号に従って、スライドドア駆動部61を駆動させ、スライドドアDを開扉させる。同様にして、ドアECU6は、車載機1の出力部15から出力された閉扉指示信号に従って、スライドドア駆動部61を駆動させ、スライドドアDを閉扉させる。スライドドアDは、スライドドア部と、該スライドドア部を開扉方向又は閉扉方向へ移動させるスライド機構とを備えており、スライドドア駆動部61は、該スライド機構を駆動させるモータ等の動力源を備える。スライドドア駆動部61は該モータによって前記スライド機構を駆動させ、前記スライドドア部を開扉方向又は閉扉方向へ移動させる。
【0036】
また、車載制御部11には、スライドドアスイッチ5が接続されており、当該スライドドアスイッチ5の操作状態に対応したドア信号が車載制御部11に入力する。車載制御部11はスライドドアスイッチ5のドア信号に基づいて、スライドドアスイッチ5の操作状態を認識することができる。車載制御部11には、スライドドアスイッチ5が操作された場合、開扉指示信号又は閉扉指示信号を出力部15にてドアECU6へ出力し、スライドドアDを開扉又は閉扉させる。
【0037】
図3は携帯機2の一構成例を示すブロック図である。携帯機2は、該携帯機2の各構成部の動作を制御する携帯制御部21を備える。携帯制御部21は、例えば一又は複数のCPU、マルチコアCPU、計時部21a等を有するマイコンである。携帯制御部21のCPUは入出力インタフェースを介して、携帯受信部22、携帯送信部23、記憶部24及び受信信号強度測定部25、及び予約スイッチ26が接続されている。携帯機2は例えば、図示しない電池を電源として動作する。
【0038】
携帯制御部21は、記憶部24に記憶されている後述の制御プログラムを読み出し、各構成部の動作を制御することにより、予約信号及び応答信号を含む各種信号を送信する処理を実行する。
【0039】
記憶部24は、記憶部14と同様の不揮発性メモリである。記憶部24は、携帯制御部21が携帯機2の各構成部の動作を制御することにより、予約信号及び応答信号を含む各種信号を送信する処理を実行するための制御プログラムを記憶している。
【0040】
携帯受信部22はLF受信アンテナ22aに接続されており、車載機1からLF帯の電波を用いて送信された位置検出用信号を受信し、携帯制御部21へ出力する。LF受信アンテナ22aは例えば3軸アンテナであり、車両Cに対する携帯機2の向き又は姿勢に拘わらず、一定の受信信号強度が得られる。
【0041】
受信信号強度測定部25は、複数のLF送信アンテナ3から送信され、LF受信アンテナ22aが受信した各位置検出用信号の受信信号強度を検出し、検出した受信信号強度を携帯制御部21へ出力する回路である。
【0042】
携帯送信部23はRF送信アンテナ23aに接続されており、携帯制御部21の制御に従って、携帯機2から送信された信号に応じた信号を送信する。具体的には、後述の予約スイッチ26が操作された場合、携帯制御部21の制御に従って携帯送信部23は、UHF帯の電波を用いて周期的に予約信号を送信する。予約信号は、車載機1に車両C及び携帯機2の位置関係の検出を開始させるための信号である。
また、位置検出用信号を携帯機2が受信した場合、携帯制御部21の制御に従って携帯送信部23は、UHF帯の電波を用いて応答信号を送信する。応答信号には、車両C及び携帯機2の位置関係を当該車載機1に検出させるための情報として、受信信号強度測定部25が測定した受信信号強度が含まれる。
更に、携帯制御部21の指示に従って携帯送信部23は、車両Cのエンジン、走行用モータ等の駆動源(図示略)を起動するための起動信号を車両Cに送信する。起動信号は例えば、UHF帯の電波を用いて送信される。
【0043】
ここで、携帯送信部23は、予約信号及び応答信号を送信するに際して、起動信号と同様の電波にて送信することとする。起動信号と同様とは例えば、起動信号と同様の周波数、強度、変調方式等を表す。なおUHF帯は信号を送信する電波帯域の一例であり、必ずしもこれに限定されない。なお、携帯制御部21は、予約信号又は応答信号の送信に係る処理を携帯送信部23に行わせるときにおいて制御プログラムを実行することにより、送信制御部として機能する。
【0044】
携帯制御部21には、予約スイッチ26が接続されている。予約スイッチ26は、使用者からの操作を受け付けた場合に操作信号を携帯制御部21に入力する。携帯制御部21は操作信号が入力された場合、携帯送信部23に予約信号を送信させる制御を行う。より具体的には、携帯制御部21は、操作信号が入力された場合、携帯送信部23に所定の送信周期が到来する都度、予約信号を送信させる制御を行う。所定の送信周期は特に限定を意図しないが、1秒〜10秒の範囲内にあることが好ましく、5秒程度がより好ましい。予約スイッチ26は、受付部に相当する。
【0045】
次に、以上のように構成された車両用通信システムの使用例について説明する。
図4は、車両用通信システムの使用例を示す概念図である。携帯機2を所持する使用者は車両Cから離れた位置、例えば家屋等の建物B内にて予約スイッチ26を操作後、携帯機2を所持した状態で車両Cに向かって移動する。このとき使用者は携帯機2及び車両Cの位置関係が所定の位置関係となるように移動することで、スライドドアDを車載機1に開扉させる。所定の位置関係は例えば、スライドドアDの外面から対向方向に3m以内の範囲内であり、
図4中の一点鎖線にて囲われた範囲内である。
【0046】
以上の使用例において、携帯機2は予約スイッチ26が操作されたことを検出し、所定の送信周期が到来する都度、予約信号を送信する。仮に建物B及び車両C間の距離が予約信号の到達距離よりも長い場合には、携帯機2は予約信号を車載機1に受信させることができない。しかしながら、携帯機2は送信周期が到来する都度、予約信号を送信するため、使用者が車両Cに向かって移動することで当該到達距離内の地点、例えば
図4中においては地点Pにて送信周期が到来した場合に車載機1に予約信号を受信させることができる。従って、携帯機2は、予約スイッチ26が操作されたときにおける車両Cまでの距離に依存せず、車載機1に予約信号を受信させることができる。
また、本実施形態の携帯機2は、予約信号の送信を開始してから所定時間が経過した場合、或いは車載機1から送信された位置検出用信号を受信した場合に予約信号の送信を停止する。所定時間は例えば5分等の数分間である。
【0047】
また、以上の使用例において、車載機1は、予約信号をRF受信アンテナ4にて受信した場合に、反復的に位置検出用信号を送信する。車載機1は、携帯機2を所持する使用者が位置検出用信号の到達範囲内に進入した場合、携帯機2との間で通信が行い、車両C及び携帯機2の位置関係を検出する。車載機1は、検出した位置関係が記憶部14に記憶された所定の位置関係にあるか否かを判定する。車載機1は、所定の位置関係にないと判定した場合には位置検出用信号を再度送信し、使用者の移動により携帯機2が車両Cに対して所定の位置関係となったか否かを判定する。車載機1は、所定の位置関係にあると判定した場合には、開扉指示信号を出力部15に出力させ、スライドドアDを開扉させる。即ち、車載機1は携帯機2から送信された予約信号を受信した場合、当該携帯機2が車両Cに対して所定の位置関係となるまで携帯機2及び車両Cの位置関係を逐次検出し、所定の位置関係となった場合にスライドドアDを開扉させる。
【0048】
以上のように車載機1及び携帯機2夫々が動作することにより、使用者は、スライドドアスイッチ5を操作することなくスライドドアDを開くことができるため、例えば両手がふさがっている場合にでもスライドドアDを簡便に開くことができる。以下、携帯機2及び車載機1夫々の処理手順について詳述する。
【0049】
図5は、携帯機2の処理手順を示すフローチャートである。携帯機2の携帯制御部21は、使用者によって予約スイッチ26が操作されたか否かを判定することによって、予約スイッチ26の操作状況を監視している。携帯制御部21は例えば、予約スイッチ26から操作信号が入力されたか否かにより判定する。
【0050】
予約スイッチ26が操作されたと判定した場合、携帯制御部21は、予約信号送信処理を実行する(ステップS1)。予約信号送信処理は、上述のように周期的に予約信号を送信する処理であり、処理手順については後述する。
【0051】
次いで、携帯制御部21は、車載機1から送信される位置検出用信号を受信し、受信した位置検出用信号の受信信号強度を含む応答信号を送信する応答信号送信処理を実行する(ステップS2)。応答信号送信処理は、車載機1からの上述の位置検出用信号に応じた応答信号を送信する処理であり、処理手順については後述する。なお、携帯機2による応答信号送信処理は、予約スイッチ26の操作時のみならず、常時実行されている。
図1は、予約スイッチ26操作時の予約信号送信処理及び応答信号送信処理の一連の流れを概念的に示したものである。予約スイッチ26をトリガとして実行される予約信号送信処理に引き続いて応答信号送信処理が実行され、当該応答信号送信処理が終了することを意味するものでは無い。
【0052】
図6は、予約信号送信処理のサブルーチンを示すフローチャートである。携帯機2の携帯制御部21は、計時部21aに指示を出し、計時を開始する(ステップS11)。次いで、携帯制御部21は、計時を開始してから所定時間が経過したか否かを判定する(ステップS12)。所定時間は例えば、上述のように5分等の数分間である。所定時間が経過したと判定した場合(S12:YES)、携帯制御部21は予約信号送信処理を終える。即ち、携帯制御部21は、計時部21aが計時した時間が所定時間以上である場合、携帯送信部23に予約信号を送信させない。なお、携帯制御部21は、計時部21aが反復的に予約信号を送信している時間を計時できるように指示を出すようにすれば、計時部21aの計時開始タイミングは、必ずしもステップS11のタイミングでなくともよい。
【0053】
所定時間が経過していないと判定した場合(S12:NO)、携帯制御部21は位置検出用信号を受信したか否かを判定する(ステップS13)。携帯制御部21は例えば、携帯受信部22から入力される情報に基づいて判定を行う。位置検出用信号を受信したと判定した場合(S13:YES)、携帯制御部21は予約信号送信処理を終える。即ち、携帯制御部21は、携帯受信部22が位置検出用信号を受信した場合、携帯送信部23に予約信号を送信させない。
【0054】
位置検出用信号を受信していないと判定した場合(S13:NO)、携帯制御部21は予約信号の送信周期が到来したか否かを判定する(ステップS14)。携帯制御部21は、計時部21aの計時結果に基づいて当該送信周期が到来したか否かを判定する。送信周期が到来していないと判定した場合(S14:NO)、携帯制御部21はステップS12に処理を戻す。
【0055】
送信周期が到来したと判定した場合(S14:YES)、携帯制御部21は携帯送信部23に指示を出し、予約信号を送信させる(ステップS15)。その後、携帯制御部21はステップS12に処理を戻す。
【0056】
携帯制御部21は、以上の予約信号送信処理の処理手順を実行することにより、所定時間が経過するか或いは位置検出用信号を受信するまで、送信周期が到来する都度、携帯送信部23に指示を出し、反復的に予約信号を送信させる。
【0057】
図7は、応答信号送信処理のサブルーチンを示すフローチャートである。携帯機2の携帯制御部21は、車載機1から送信された位置検出用信号を受信したか否かを判定する(ステップS21)。位置検出用信号を受信していないと判定した場合(S21:NO)、携帯制御部21は応答信号送信処理を終える。
【0058】
位置検出用信号を受信したと判定した場合(S21:YES)、携帯制御部21は、受信信号強度測定部25に指示を出し、受信した位置検出用信号の受信信号強度を測定させる(ステップS22)。次いで、携帯制御部21は、位置検出用信号の受信を完了したか否かを判定する(ステップS23)。携帯制御部21は、第1乃至第4LF送信アンテナ31、32、33、34から夫々送信された位置検出用信号の全てを受信したか否かを判定する。携帯制御部21は例えば、受信した位置検出用信号の数を計数するように構成され、計数値がLF送信アンテナ3の数と同数であるか否かにより位置検出用信号の受信を完了したか否かを判定する。受信を完了していないと判定した場合(S23:NO)、携帯制御部21はステップS21に処理を戻す。
【0059】
受信を完了したと判定した場合(S23:YES)、携帯制御部21は携帯送信部23に指示を出し、応答信号を送信させる(ステップS24)。具体的には携帯制御部21は、第1乃至第4LF送信アンテナ31、32、33、34から夫々送信された位置検出用信号の全ての受信信号強度を含めて携帯送信部23に応答信号を送信させる。その後、携帯制御部21は応答信号送信処理を終える。
【0060】
携帯制御部21は、以上の応答信号送信処理の処理手順を実行することにより、車載機1に自機と車両Cとの位置関係を検出させることができる。
【0061】
次に車載機1の処理手順について説明する。
図8は、携帯機2からの予約信号に基づいてスライドドアDを開くときにおける車載機1の処理手順を示すフローチャートである。車載機1の車載制御部11は、携帯機2から送信された予約信号を車載受信部13が受信したか否かを判定する(ステップS31)。車載制御部11は例えば、車載受信部13から出力された情報に予約信号を示す情報が含まれているか否かに基づいて判定する。予約信号を受信していないと判定した場合(S31:NO)、車載制御部11は、予約信号を受信するまで処理を待つ。
【0062】
予約信号を受信したと判定した場合(S31:YES)、車載制御部11は計時部11aに指示を出し、計時を開始させる(ステップS32)。次いで、車載制御部11は、車載送信部12にて第1乃至第4LF送信アンテナ31、32、33、34から位置検出用信号を順次送信させる(ステップS33)。各第1乃至第4LF送信アンテナ31、32、33、34から送信される位置検出用信号の強度は略同一である。車載送信部12は、第1LF送信アンテナ31から位置検出用信号を送信し、次いで第2LF送信アンテナ32から該位置検出用信号と同強度の位置検出用信号を送信する。以下同様にして、車載送信部12は、第3LF送信アンテナ33から位置検出用信号を送信し、次いで、第4LF送信アンテナ34から位置検出用信号を送信する。
【0063】
次いで、車載制御部11は、位置検出用信号に対する携帯機2からの応答信号を車載受信部13が受信したか否かを判定する(ステップS34)。応答信号を受信していないと判定した場合(S34:NO)、車載制御部11は、予約信号を受信してから所定時間が経過したか否かを判定する(ステップS35)。車載制御部11は例えばステップS32で計時部11aに計時を開始させてから所定時間が経過したか否かにより判定を行う。所定時間は例えば10分である。所定時間を経過したと判定した場合(S35:YES)、車載制御部11は処理を終え、所定時間を経過していないと判定した場合(S35:NO)、車載制御部11はステップS33に処理を戻す。
ステップS32〜ステップS35の処理によって、位置検出用信号は、予約信号受信時から所定時間が経過するまで、又は車両C及び携帯機2の位置関係が所定の位置関係になるまでの間、車載機1から反復的に送信される。
【0064】
一方、応答信号を受信したと判定した場合(S34:YES)、車載制御部11は、受信した応答信号に基づいて、車両C及び携帯機2の位置関係を検出する(ステップS36)。車載制御部11は例えば、応答信号に含まれる受信信号強度に基づいて、携帯機2と、各LF送信アンテナ3との位置関係を検出することにより、車両C及び携帯機2の位置関係を検出する。車載制御部11はステップS36において記憶部14に記憶された制御プログラムを実行することにより、検出部として機能する。
【0065】
次いで、車載制御部11は、検出した車両C及び携帯機2の位置関係が所定の位置関係であるか否かを判定する(ステップS37)。車載制御部11は例えば、携帯機2がスライドドアDの外面から対向方向に3m以内の範囲に所在するか否かにより、所定の位置関係であるか否かを判定する。所定の位置関係でないと判定した場合(S37:NO)、車載制御部11はステップS33に処理を戻す。所定の位置関係であると判定した場合(S37:YES)、車載制御部11は、出力部15に開扉指示信号をドアECU6へ出力させ(ステップS38)、その後処理を終える。
【0066】
なお、車載制御部11は、ステップS35又はステップS37の処理からステップS33に処理を戻す際に、ステップS33に処理を戻した直後に位置検出用信号を送信してもよいし、先のステップS33の処理から所定時間経過時に信号を送信してもよい。所定時間は例えば2秒等の数秒である。更に、車載制御部11は、ステップS35の処理からステップS33に処理を戻したときと、ステップS37の処理からステップS33に処理を戻したときとで位置検出用信号の送信間隔を変えてもよい。
【0067】
以上の構成及び処理によって、携帯機2は使用者が予約スイッチ26に対する操作を行わなかった場合に予約信号を送信しない。そのため、使用者が意図せずスライドドアDを開くことを防止することができ、本実施形態に係る車両用通信システムは防犯性を損なうことがない。また、車載機1は、仮に使用者が誤って予約スイッチ26を操作したことに起因して携帯機2から送信された予約信号を受信した場合であっても、携帯機の位置に応じてスライドドアDを開く制御信号を出力するため、本態様に係る車両用通信システムは防犯性を損なうことがない。
【0068】
また、携帯機2は反復的に予約信号を送信するため、車載機1に対してより確実に予約信号を受信させることができる。従って、携帯機2を所持する使用者は、予約信号の到達距離よりも車載機1から離れた位置で予約スイッチ26を操作した場合であっても、その後、車両Cに乗込むために当該到達距離内に移動することで車載機1に予約信号を受信させることができる。そのため、予約スイッチ26の操作により予約信号が送信されたにも関わらず、スライドドアDが自動で開かないことを防止することができ、本態様に係る車両用通信システムは利便性を損なうことがない。更に使用者はスライドドアDを開く意思がない場合には、予約スイッチ26を操作しないことで、当該所定の位置関係に移動した場合であってもスライドドアDを開かず、スライドドアDの無駄な開扉を防止することができる。
【0069】
また、携帯機2は、予め設定された時間だけ予約信号を送信することで、電池、バッテリ等からなる自機の電源の消費電力を抑制することができる。
【0070】
また、携帯機2は、位置検出用信号を受信することによって車載機1が予約信号を受信したことを検出し、検出後に予約信号を送信しないことで、無駄な予約信号を行わないようにすることができる。そのため、携帯機2は、電池、バッテリ等からなる自機の電源の消費電力を抑制することができる。
【0071】
また、携帯機2は、予約信号及び応答信号を起動信号と同様の電波にて送信するため、車両Cの駆動源を起動可能な所謂リモートエンジンスタータ等の携帯機を用いて構成することができる。そのため、本実施形態の携帯機2は、所謂キーレスエントリーシステム用の携帯機を用いて構成するよりも各信号の到達距離を伸長することができる。なお、携帯機2は、所謂キーレスエントリーシステム用の携帯機を用いて構成してもよいし、スライドドアD開扉用の専用の携帯機として構成してもよい。また、携帯機2は、予約信号及び応答信号を送信するに際して、起動信号と同様の電波を必ずしも用いる必要はない。
【0072】
また、車載機1は、検出した車両C及び携帯機2の位置関係に応じてスライドドアDを開く制御を行うことができる。具体的には車載機1は、スライドドアDから3m以内に携帯機2が所在している場合であっても、スライドドアDの外面の対向方向に所在していない場合にはスライドドアDを開扉させない。車載機1は例えば、助手席側の車両ドアの対向方向に使用者が所在する場合にはスライドドアDが開かない。そのため、使用者がスライドドアDを開く意思がなく、助手席側の車両ドアを開く意思がある場合に誤ってスライドドアDを開くことを防止することができ、防犯性を損なうことがない。従って、車載機1は、単に、携帯機2が所定の通信範囲内に所在するか否かによりスライドドアDを開く制御よりも柔軟な制御を行うことができる。
【0073】
また、車載機1は、車両Cに設けられた複数のLF送信アンテナ3から位置検出用信号を送信する。従って、携帯機2は、一の位置検出用信号を受信したときよりも複数の位置検出用信号を受信したときの方が送信する応答信号に含める情報量を多くすることができるため、車載機1は精度よく車両C及び携帯機2の位置関係を検出することができる。また、車載機1は、応答信号に含まれる受信信号強度に基づいて当該位置関係を精度よく検出することができる。
【0074】
なお、本実施形態においては、携帯機2は、予約信号の送信に係る操作を受け付ける予約スイッチ26備えることを説明したが、を予約信号の送信に係る操作を受け付ける構成を設けてあれば、予約信号送信用の専用の構成を設けなくともよい。例えば、携帯機2は、車両Cの車両ドアを施錠又は解錠するスイッチを備え、当該スイッチを受付部に相当する構成としてもよい。この場合、携帯機2は、当該スイッチに対して長押し等の所定の操作を受け付けた場合に予約信号を送信することで、当該スイッチを受付部に相当する構成として実現することができる。
【0075】
また、本実施形態においては、車載機1は、予約信号を受信した場合に携帯機2の所在位置の検出に係る通信を携帯機2との間で行うことで、開扉指示信号を出力することを説明したが、携帯機2との間でその他の通信が行うことで当該信号を出力してもよい。その他の通信とは例えば、携帯機2が車載機1に対応しているか否かの認証に係る通信、当該認証及び所在位置の検出に係る通信等である。即ち、当該その他の通信は、車載機1及び携帯機2における一又は複数の関係性を特定するための通信であればよい。
【0076】
また、本実施形態においては、車両C及び携帯機2の位置関係をスライドドアDの対向方向への携帯機2の離隔距離であることを説明したが、その他の位置関係であってもよい。例えば、車両Cに対する携帯機2の所在位置の座標、方向等の種々の位置関係を採用し得る。例えば、車載機1は、車両Cを原点座標としたときの携帯機2の3次元座標、携帯機2の水平面における2次元座標等を検出するようにしてもよい。また、所定の位置関係は、距離、座標、方向等の種々の位置を示す指標を組み合わせてもよい。
【0077】
また、本実施形態においては、車載機1は車両C及び携帯機2の位置関係に応じてスライドドアDを開くことを説明したが、車両Cに設けられた車両ドアであれば何れであってもよい。例えば、車載機1は、当該位置関係に応じて車両Cのトランクに設けられた車両ドアを開く制御を行ってもよい。