(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6376323
(24)【登録日】2018年8月3日
(45)【発行日】2018年8月22日
(54)【発明の名称】オーバーヘッド型車両用空調ユニットの取付け構造
(51)【国際特許分類】
B60H 1/00 20060101AFI20180813BHJP
【FI】
B60H1/00 102S
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-266104(P2013-266104)
(22)【出願日】2013年12月24日
(65)【公開番号】特開2015-120456(P2015-120456A)
(43)【公開日】2015年7月2日
【審査請求日】2016年9月23日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000176811
【氏名又は名称】三菱自動車エンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101236
【弁理士】
【氏名又は名称】栗原 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100166914
【弁理士】
【氏名又は名称】山▲崎▼ 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】神谷 康優
(72)【発明者】
【氏名】馬場 一成
(72)【発明者】
【氏名】本間 靖
(72)【発明者】
【氏名】蔵本 隆充
(72)【発明者】
【氏名】鳥谷 貴信
【審査官】
佐藤 正浩
(56)【参考文献】
【文献】
特開2000−094930(JP,A)
【文献】
特開昭49−050634(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60H 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車室の天井部位に取付き部が固定されるベース部材と、
前記ベース部材に支持される空調機器と、
一端が前記空調機器に固定され、他端が前記ベース部材の取付き部と共に前記天井部位に固定されるブラケットとを備え、
前記ブラケットは形状が維持され、
前記ブラケットは、前記一端と前記他端の間に、前記一端と前記他端の相対的な移動を吸収する少なくとも一つU字部を設けた吸収部を有し、
前記ブラケットの一端は車幅方向に延びて形成され、前記一端から前記U字部が車両前方側に延びると共に、前記U字部から上方に向けて前記他端が延びている
ことを特徴とするオーバーヘッド型車両用空調ユニットの取付け構造。
【請求項2】
請求項1に記載のオーバーヘッド型車両用空調ユニットの取付け構造において、
前記ブラケットは金属製である
ことを特徴とするオーバーヘッド型車両用空調ユニットの取付け構造。
【請求項3】
請求項1もしくは請求項2に記載のオーバーヘッド型車両用空調ユニットの取付け構造において、
前記ベース部材は、前記車室の車幅方向にわたり配されている
ことを特徴とするオーバーヘッド型車両用空調ユニットの取付け構造。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のオーバーヘッド型車両用空調ユニットの取付け構造において、
前記空調機器の車幅方向の一方側からは車両のエネルギー供給源から延びる長尺状部材が配され、
前記ブラケットは前記空調機器の車幅方向の他方側に配されている
ことを特徴とするオーバーヘッド型車両用空調ユニットの取付け構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オーバーヘッド型車両用空調ユニットの取付け構造に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、ワンボックスカーやRV車等では、第2列目、第3列目等の後部座席用の空調ユニットが設けられている。後部座席用の空調ユニットは、車室内の居住空間を確保するため、天井部に設置されるオーバーヘッド型車両用空調ユニットが多く採用されている(例えば、特許文献1)。
【0003】
オーバーヘッド型車両用空調ユニットは、ファンやモータ等の機器(空調機器)が、例えば、樹脂製のベース部材に支持され、ベース部材が車両の構成部材(天井部材)に取り付けられている。
【0004】
オーバーヘッド型車両用空調ユニットを備えた車両では、車両に外力が加わり、車体が変形した場合、ベース部材の天井部への取付き部(取付き座面)が破断する虞があった。取付き座面が破断すると、取付き座面を残してベース部材が空調機器と共に車室内に脱落する虞があるため、空調機器の脱落を防止する必要があるのが現状である。
【0005】
ベース部材の剛性を高めたり、ベース部材に補強部材を設けたりすることが考えられる。しかし、ベース部材の剛性を高めると空調ユニットが重くなってコストが嵩む問題がある。また、補強部材を設けた場合、他の場所が破断する虞が生じる問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−309218号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記状況に鑑みてなされたもので、重量やコストを高くすることなく、衝突時の空調機器の脱落をなくすことができるオーバーヘッド型車両用空調ユニットの取付け構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための請求項1に係る本発明のオーバーヘッド型車両用空調ユニットの取付け構造は、車室の天井部位に取付き部が固定されるベース部材と、前記ベース部材に支持される空調機器と、一端が前記空調機器に固定され、他端が前記ベース部材
の取付き部と共に前記天井部位に固定されるブラケットとを備え、前記ブラケットは形状が維持され、前記ブラケットは、前記一端と前記他端の間に、前記一端と前記他端の相対的な移動を吸収する
少なくとも一つU字部を設けた吸収部を有し、
前記ブラケットの一端は車幅方向に延びて形成され、前記一端から前記U字部が車両前方側に延びると共に、前記U字部から上方に向けて前記他端が延びていることを特徴とする。
【0009】
請求項1に係る本発明では、車体の変形により、ベース部材の天井部位への取付き部が破断して、ブラケットの他端が天井部位に固定された状態で、ブラケットの一端と他端の間の位置が変わった場合、吸収部により一端と他端の相対的な移動が吸収され、天井部位と空調機器がつながれた状態が維持される。
そして、吸収部はU字部が設けられているので、U字部が延びることで一端と他端の相対的な移動が吸収される。
【0010】
このため、重量やコストを高くすることなく衝突時の空調機器の脱落をなくすことができる。
【0011】
そして、請求項2に係る本発明のオーバーヘッド型車両用空調ユニットの取付け構造は、請求項1に記載のオーバーヘッド型車両用空調ユニットの取付け構造において、前記ブラケットは金属製で
あることを特徴とする。
【0012】
請求項2に係る本発明では、ブラケットが金属製であるため、空調機器にブラケットの一端を固定した状態で、ブラケットの形状が維持され、ベース部材の取付き部と共に天井部位に取り付けられる他端の姿勢が維持されて天井部位への固定が容易に行え
る。
【0013】
U字部は空調ユニットの配置スペースの隙間の部位に沿って延びるように配することができる。ブラケットの一端と他端を結ぶ方向に対して交差する方向に一つのU字部を設けることが可能である。また、一端と他端を結ぶ方向に沿って、二つ以上のU字部を折りかえし状態に設けることが可能である。
【0014】
また、請求項3に係る本発明の本発明のオーバーヘッド型車両用空調ユニットの取付け構造は、請求項1もしくは請求項2に記載のオーバーヘッド型車両用空調ユニットの取付け構造において、前記ベース部材は、前記車室の車幅方向にわたり配されていることを特徴とする。
【0015】
請求項3に係る本発明では、車室の車幅方向にわたって配される空調ユニットの脱落をなくすことができる。
【0016】
また、請求項4に係る本発明の本発明のオーバーヘッド型車両用空調ユニットの取付け構造は、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のオーバーヘッド型車両用空調ユニットの取付け構造において、前記空調機器の車幅方向の一方側からは車両のエネルギー供給源から延びる長尺状部材が配され、前記ブラケットは前記空調機器の車幅方向の他方側に配されていることを特徴とする。
【0017】
請求項4に係る本発明では、空調機器の車幅方向の一方側から車両のエネルギー供給源から延びる長尺状部材、即ち、車体側に取り付けられる配線や冷媒配管等が配されているので、車体が変形した場合であっても、長尺状部材により空調機器の車幅方向の一方側が支えられる。このため、空調機器の車幅方向の他方側にブラケットを備えることで、空調機器の脱落をなくすことができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明のオーバーヘッド型車両用空調ユニットの取付け構造は、車体が変形した場合であっても、重量やコストを高くすることなく空調機器の脱落をなくすことが可能になる。
【0019】
本発明のオーバーヘッド型車両用空調ユニットの取付け構造は、重量やコストを高くすることなく、衝突時の空調機器の脱落をなくすことが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】オーバーヘッド型車両用空調ユニットの説明図である。
【
図2】オーバーヘッド型車両用空調ユニットの外観図である。
【
図3】オーバーヘッド型車両用空調ユニットの取付け構造を説明する車室側から見た状態の一部破断外観図である。
【
図4】ブラケットが取り付けられた側の外観図である。
【
図6】ベース部材の天井部位への取付き部が破断した状態の外観図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1には本発明の一実施例に係る取付け構造により取り付けられたオーバーヘッド型車両用空調ユニットを説明する車両の概略側面視、
図2にはオーバーヘッド型車両用空調ユニットを後席側から見た概観状況を示してある。
【0022】
図3にはオーバーヘッド型車両用空調ユニットを車室側から見上げた状態の外観であり、カバーの一部を破断して示してある。また、
図4にはブラケットが取り付けられた側(後席側から見て車両の左側)の外観、
図5にはハーネスが延びている側(後席側から見て車両の右側)の外観を示してある。
【0023】
図1、
図2に示すように、車両1の前席2の上部の天井部位には、車両の幅方向に沿ってオーバーヘッド型車両用空調ユニット(空調ユニット)3が取り付けられている。空調ユニット3のカバー4(中央部カバー)には、前部に空気を吸い込む吸入口7(
図3参照)が設けられ、後部に後席5側に空気を送風する吹き出し口6が備えられている。
【0024】
本実施形態では、空調ユニット3は、例えば、送風機であり、前部の吸入口7から取り入れた車室前方の空気を車室後方に送風する設備である。
【0025】
そして、具体的には後述するが、空調ユニット3は、送風機器が、例えば、樹脂製のベース部材11に支持され、ベース部材11が車両1の車体構成部材(ルーフレール、天井板材等)に複数箇所(例えば、端部がそれぞれ2箇所、中央部が1箇所)で固定されることにより車室内の天井部位に取り付けられる。
【0026】
図3に示すように、例えば、樹脂製の板状のベース部材11には、送風機器12が一体に支持され、送風機器12には、ブロアファン13、ブロアファン13の駆動モータ14等が備えられている。送風機器12は、機器カバー15で支えられ、機器カバー15がベース部材11に取り付けられることで、送風機器12がベース部材11に一体に支持される。
【0027】
ベース部材11の両端部には、車両の前後方向にボルト穴21がそれぞれ2箇所形成され、ボルト穴21にボルト22が挿入され、車体構成部材にボルト22が締結されることで、ベース部材11が車体構成部材に固定される。送風機器12はカバー4で覆われ、カバー4はクリップ等でベース部材11に固定されている。
【0028】
図2、
図3に示すように、カバー4は、ベース部材11の中央部で送風機器12を覆い、前後に吸入口7と吹き出し口6が備えられた中央部カバー4aとベース部材11の両端部を覆う両端部カバー4bで構成されている。
【0029】
図4に示すように、空調ユニット3の車両1の左側の端部側(車幅方向の他方側)では、機器カバー15と、ベース部材11のボルト穴21とにわたり、金属製のブラケット25が設けられている。
【0030】
ブラケット25の一端26が機器カバー15に固定され、ブラケット25の他端27が、ベース部材11の取付き部(取付き座)17のボルト穴21の部位でボルト22を介して車体構成部材に固定されている。つまり、ブラケット25(他端27)は、ベース部材11の取付き座17と共に天井部位である車体構成部材に固定されている。
【0031】
図5に示すように、空調ユニット3の車両1の右側の端部側(車幅方向の一方側)では、駆動モータ14の配線31(長尺状部材)が電源(エネルギー供給源)から延びて配されている。
【0032】
図4に示すように、ブラケット25の一端26と他端27との間には、一端26と他端27の相対的な移動を吸収するU字状の吸収部28(U字部)が設けられている。ブラケット25の一端26は車幅方向に延びて形成され、一端26から吸収部28であるU字部が車両1の前方側に延びると共に、U字部から上方に向けて他端27が延びている。
【0033】
つまり、ブラケット25の一端26と他端27を結ぶ方向(上下方向)に対して、交差する方向に一つのU字部(吸収部28)が設けられている。このため、限られたスペースにU字部(吸収部28)を的確に配置することができる。
【0034】
尚、吸収部28として、ブラケット25の一端26と他端27を結ぶ方向沿って(上下方向に)、二つ以上のU字部を折りかえし状態に設けることも可能である。また、吸収部28として、蛇腹状の部位を設けたり、材質の異なる部材を介在させたりすることも可能である。
【0035】
空調ユニット3を車両1に搭載する場合、例えば、ベース部材11を車体構成部材に固定する。送風機器12の機器カバー15にブラケット25の一端26を固定して予め送風機器12とブラケット25を一体化しておく。この状態で、送風機器12をベース部材11に位置合わせし、ベース部材11の取付き座17の位置にブラケット25の他端27を位置合わせする。ボルト穴21の部位でブラケット25の他端27と一緒にボルト22で固定する。
【0036】
ブラケット25は金属製(鉄製)であるため、一端26が機器カバー15に固定された状態で、他端27の姿勢、位置が維持される。このため、送風機器12をベース部材11に位置合わせすることで、ブラケット25の他端27がそのまま位置合わせされ、ボルト22をそのまま挿入して固定することができる。つまり、ブラケット25の他端27を位置合わせする作業が必要ないので、作業工数が増加することがなく、ブラケット25の天井部位への固定の容易に行える。
【0037】
例えば、衝突等により車体が変形した場合、ベース部材11の取付き座17が移動し、ブラケット25の一端26と他端27の間の位置が変化する。車体の変形が大きい場合、ベース部材11が樹脂製で、ボルト22により固定されているため、取付き座17が破断する虞がある。
【0038】
図6に示すように、万一、ベース部材11の取付き座17が破断してブラケット25の一端26と他端27の間の位置がずれた場合、吸収部28のU字部が延びることで一端26と他端27の相対的な移動が吸収部28で吸収される。このため、天井部位と送風機器12がつながれた状態が維持される。
【0039】
このため、車体が変形してベース部材11が破断した場合であっても、送風機器12の脱落をなくすことができる。
【0040】
空調ユニット3の車幅方向の一方側は、配線31(長尺状部材)が配されているので(
図5参照)、衝突等により車体が変形した場合、車幅方向の一方側が配線31で支えられ、空調ユニット3が配線31等で車体側につながれた状態が維持される。このため、送風機器12の車幅方向の他方側にブラケット25を備えることで、送風機器12の脱落を確実になくすことができる。
【0041】
このように、本発明のオーバーヘッド型車両用空調ユニットの取付け構造であれば、重量やコストを抑えた構造で、車両の衝突等における空調ユニット3の脱落を確実に防止することができる。
【0042】
尚、本実施形態の空調ユニット3は、ブロアファン13のみを備えた送風機であるが、冷房用熱交換器等を備えた冷房装置であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明は、オーバーヘッド型車両用空調ユニットの取付け構造の産業分野で利用することができる。
【符号の説明】
【0044】
1 車両
2 前席
3 オーバーヘッド型空調ユニット(空調ユニット)
4 カバー
5 後席
6 吹き出し口
7 吸入口
11 ベース部材
12 送風機器
13 ブロアファン
14 駆動モータ
15 機器カバー
17 取付き部(取付き座)
21 ボルト穴
22 ボルト
25 ブラケット
26 一端
27 他端
28 吸収部
31 配線