特許第6376341号(P6376341)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6376341
(24)【登録日】2018年8月3日
(45)【発行日】2018年8月22日
(54)【発明の名称】研磨パッド
(51)【国際特許分類】
   B24B 37/24 20120101AFI20180813BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20180813BHJP
【FI】
   B24B37/24 Z
   H01L21/304 622F
【請求項の数】5
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-199888(P2014-199888)
(22)【出願日】2014年9月30日
(65)【公開番号】特開2016-68194(P2016-68194A)
(43)【公開日】2016年5月9日
【審査請求日】2017年8月31日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005359
【氏名又は名称】富士紡ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100082108
【弁理士】
【氏名又は名称】神崎 真一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100156199
【弁理士】
【氏名又は名称】神崎 真
(72)【発明者】
【氏名】岩尾 智浩
(72)【発明者】
【氏名】永瀬 友博
【審査官】 亀田 貴志
(56)【参考文献】
【文献】 特開平07−142430(JP,A)
【文献】 特表2007−530297(JP,A)
【文献】 特開2014−079877(JP,A)
【文献】 米国特許第06364749(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B 37/20 − 37/26
H01L 21/304
DWPI(Derwent Innovation)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被研磨物を研磨するための研磨面を有する研磨シートを備えた研磨パッドにおいて、
上記研磨面に、親水性の異なる第1の領域および第2の領域を有し、且つ、上記第1の領域がパターン状に形成されており、
さらに上記研磨シートは上記研磨面から研磨面と反対面側まで立体網目状に連通し、上記第1の領域は立体網目状内に浸透して上記研磨シートの研磨面側から厚み方向に少なくとも1/2以上浸透されて形成されていることを特徴とする研磨パッド。
【請求項2】
上記第1の領域が撥水処理により形成されていることを特徴とする請求項1に記載の研磨パッド。
【請求項3】
上記第1の領域が親水処理により形成されていることを特徴とする請求項1に記載の研磨パッド。
【請求項4】
上記第1の領域は撥水処理により形成された部分と親水処理により形成された部分とを備えることを特徴とする請求項1に記載の研磨パッド。
【請求項5】
上記研磨面に設けられた上記パターンは、放射状、同心状、又は格子状であることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の研磨パッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は研磨パッドに関し、より詳しくは、半導体ウエハやハードディスク用ガラス基板およびアルミニウム基板等の表面を化学的機械研磨法(CMP)によって研磨するのに好適な研磨パッドに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体ウエハやハードディスク用ガラス基板およびアルミニウム基板等の被研磨物を研磨する研磨パッドは周知である。
この種の研磨パッドにおいては、研磨パッドの研磨面にスラリの保持性や排出性を制御するために、様々な形状の溝が形成されている(特許文献1)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−267961号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記溝の形状を種々の形状に設定することにより、スラリの保持性を高めたり、或は排出性を高めたりすることができるが、その反面、溝を形成することによる凹凸面によっては被研磨物の平坦性に悪影響を及ぼすことがあった。
本発明はそのような事情に鑑み、被研磨物の平坦性に悪影響を及ぼすことを防止しながら、スラリの保持性や排出性を制御することが可能な研磨パッドを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、被研磨物を研磨するための研磨面を有する研磨シートを備えた研磨パッドにおいて、上記研磨面に、親水性の異なる第1の領域および第2の領域を有し、且つ、上記第1の領域がパターン状に形成されており、
さらに上記研磨シートは上記研磨面から研磨面と反対面側まで立体網目状に連通し、上記第1の領域は立体網目状内に浸透して上記研磨シートの研磨面側から厚み方向に少なくとも1/2以上浸透されて形成されていることを特徴とするものである。
上記第1の領域は、撥水処理により形成されていてもよく、親水処理により形成されていても良い。また、研磨面に設けられた上記パターンは、放射状、同心状、又は格子状であってもよい。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、上記研磨面に親水性の異なる第1の領域および第2の領域を有し、且つ、上記第1の領域がパターン状に形成されているので、そのパターンによってスラリの保持性や排出性を制御することが可能となり、研磨面におけるスラリ分布の制御や、研磨レート向上の効果を得ることができる。
この際、第1の領域が研磨シートの厚み方向に1/2以上浸透して形成されているため、研磨シート内部に浸透したスラリは研磨シート内部において第1の領域のパターンによってスラリの保持性や排出性が制御される。これにより研磨面のみに第1の領域が形成されている場合と比較して、スラリの保持性や排出性の効果が高まり好ましい。そして上記研磨面が摩耗されても第1の領域のパターンを維持することができるため、発明の効果を持続させることができる。
らに、従来の溝を設けることなくスラリの保持性や排出性を制御することができるため、溝由来の凹凸による被研磨物の平坦性の低減を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】(a)、(b)はそれぞれ本発明の実施例を示す断面図。
図2】本発明の第1実施例の撥水性パターンP1と第2実施例の親水性パターンP1’とを示す平面図。
図3】本発明の第3実施例の撥水性パターンP2と第4実施例の親水性パターンP2’とを示す平面図。
図4】本発明の第5実施例の撥水性パターンP3と第6実施例の親水性パターンP3’とを示す平面図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下図示実施例について本発明を説明すると、図1(a)において、本発明に係る研磨パッド1aは、その厚さ方向に縦長の多数の気泡2aが形成された研磨シート3aを備えており、該研磨シート3aの一方の表面が図示しない被研磨物を研磨する研磨面4aとなっている。
また研磨シート3aの他方の表面には剛性を有する基材5aが設けられ、基材5aの研磨シート3aとの反対側の面には両面テープ6aが設けられている。研磨パッド1aはこの両面テープ6aによって、図示しない研磨装置の研磨定盤に接着固定されるようになっている。
そして上記研磨面4aによって被研磨物を研磨する際には、図示しないスラリ供給装置によって、研磨面4aと被研磨物の被研磨面との間にスラリが供給され、両者が相対的に反対方向に回転することで研磨加工を行うことができる。
また、図1(b)における本発明に関わる研磨パッド1bは、内部に多数の気泡2bが形成された研磨シート3bを備えており、該研磨シート3bの一方の表面が図示しない被研磨物を研磨する研磨面4bとなっており、その他の構成は図1(a)と同様になっている。
【0009】
上記研磨面4a、4bには、図2に示すように、撥水処理された第1の領域としての撥水性パターンP1が設けられており、図示実施例では上記撥水性パターンP1は45度間隔の放射状に形成されている。他方、放射状に形成された上記撥水性パターンP1以外の研磨面4a、4bは、上記第1の領域とは親水性の異なる第2の領域P0となっている。
なお、上記研磨シート3a、3bは例えば図1(a)、図1(b)に記載したようなポリウレタンシート等の軟質ウレタンシートを使用することができ、また上記撥水性パターンP1は撥水剤を使用することができる。撥水剤は特に限定されないがフッ素系やシリコン系の撥水剤を用いることができる。このため上述の構成により本実施例では、第1の領域である撥水性パターンP1の親水性は、第2の領域P0の親水性よりも小となるように設定することができる。
【0010】
また上記気泡2a、2bは、上記研磨面4a、4bから研磨面と反対面側まで立体網目状に連通しているので、上記撥水剤は気泡2a、2b内の厚み方向に浸透することができる。これにより上記撥水性パターンP1は研磨シート3a、3bの厚さ方向に形成可能であり、上記研磨面4a、4bが摩耗されても撥水性パターンP1を維持することができるため、発明の効果を持続させることができる。
また、研磨シート3a、3bは、研磨面と反対面側まで立体網目状に連通しているので必然的に研磨シートの厚み方向と垂直な方向に対しても連通している。このため研磨シート3a、3b内部に浸透したスラリは研磨シート3a、3bの厚み方向と垂直な方向にも移動することができる。このとき、撥水性パターンP1が研磨シート厚み方向に浸透しているため、研磨シート3a、3b内部に浸透したスラリはその撥水性パターンによって移動が制御される。この結果、研磨シート3a、3b内部においてスラリの保持性や排出性を制御することができる。これにより研磨面のみに撥水性パターンP1が形成されている場合と比較して、スラリの保持性や排出性の効果が高まり好ましい。
このとき、撥水性パターンP1は上記研磨シート3a、3bの研磨面4a、4b側から厚み方向に少なくとも1/2以上形成されていることが必要である。
【0011】
上述した第1実施例では撥水性パターンP1が放射状に形成されているため、研磨面4a、4bと被研磨物との間に供給されたスラリは、研磨面4a、4bの回転に伴う遠心力により撥水パターンP1の放射状の線上に接近すると、撥水パターンP1を伝って研磨パッド1a、1bの半径方向外方に排出されやすくなる。つまり、撥水パターンP1が撥水性を有するため、スラリがその線上を乗り越えて隣接するより親水性の領域に移動することが難しく、放射状の線を伝ってスラリが円の半径方向に排出される。
このスラリの排出性の大小については、撥水性パターンP1を形成する放射方向の形成角度つまり形成本数や線幅の大小による撥水剤の塗布面積、或は撥水性パターンP1を形成するための撥水剤の種類等を適宜調整することにより、制御することが可能となり、これにより研磨面におけるスラリ分布を制御することができる。
なお、上記スラリの排出性の制御は、研磨面4a、4bに形成された溝によるものではないため、研磨面4a、4bに溝由来の凹凸が存在しない。したがって凹凸による平坦性の低減を抑制することが可能となる。
【0012】
上述した第1実施例においては、研磨面4a、4bに撥水性を有する放射状の撥水性パターンP1を第1の領域として設けているが、その代わりに、同一形状の親水処理された親水性パターンP1’を第1の領域として設けてもよい。つまり第2実施例では、第1の領域である親水性パターンP1’の親水性は、第2の領域P0の親水性よりも大となるように設定されている。
第2実施例においては、上記親水性パターンP1’を形成するための親水剤として、例えばカルボン酸塩、スルホン酸塩、硫酸エステル塩、燐酸エステル塩、アルキルカルボン酸、アミン塩、第4級アンモニウム塩、親水性のエステル系、エーテル系、エステル・エーテル系、アミド系等の化合物等の親水性化合物を用いることができるが、特に静電相互作用や水素結合により水分子と相互作用する非水溶性の親水性化合物が好ましい。非水溶性の親水性化合物であればスラリの主成分である水に溶解し難いため、親水剤がスラリに溶解して研磨面4a、4bから排出されることを抑制でき、発明の効果が長時間維持できるため好ましい。
上記第2実施例においても、上記研磨シート3a、3bは気泡2a、2bが上記研磨面4a、4bから研磨面と反対面側まで立体網目状に連通しているので、上記親水剤は研磨シートの厚み方向に浸透することができる。これにより研磨加工によって研磨面4a、4bが摩耗しても親水性パターンP1’を維持することができるため、発明の効果を長時間持続させることができる。
また、研磨シート3a、3bは、研磨面と反対面側まで立体網目状に連通しているので必然的に研磨シートの厚み方向と垂直な方向に対しても連通している。これにより研磨シート3a、3b内部に浸透したスラリは研磨シート3a、3bの厚み方向と垂直な方向にも移動することができる。このとき、親水性パターンP1’が研磨シート厚み方向に浸透しているため、研磨シート3a、3b内部に浸透したスラリは親水性パターンP1’によって移動が制御される。この結果、研磨シート3a、3b内部においてスラリの保持性や排出性を制御することができる。これにより、研磨面のみに親水性パターンP1’が形成されている場合と比較して、スラリの保持性や排出性の効果が高まり好ましい。
【0013】
上記第2実施例では親水性パターンP1’は親水剤により形成されているので、研磨面4a、4bと被研磨物との間に供給されたスラリは、定盤の回転に伴う遠心力により親水性パターンP1’の放射状の線上に接近すると、水を主成分とするスラリはその親和性から放射状の線上に留まりやすい。このため、親水性パターンP1’を形成しない場合に比較して、スラリが研磨パッド1a、1bの外部に排出され難くなり、保持性が高まる。
このスラリの保持性の大小については、親水性パターンP1’を形成する放射方向の形成本数やその線幅の大小による親水剤の塗布面積、或は親水性パターンP1’を形成するための親水剤の種類等を適宜調整することによって、制御することが可能となる。これにより研磨面4a、4bにおけるスラリ分布の制御や、研磨レート向上の効果を得ることができる。
また第2実施例においても、スラリの保持性の制御は研磨面に形成された溝によるものではないため、研磨面4a、4bに溝由来の凹凸が存在しない。したがって凹凸による平坦性の低減を抑制することができる。
【0014】
なお、上記撥水性パターンP1を有する研磨パット1a、1bも親水性パターンP1’を有する研磨パッド1a、1bも、同様な製造方法によって製造することができる。
製造方法の概略を述べれば、先ず従来公知の湿式凝固法によって軟質ウレタンのシートを作成する。
すなわち、平坦な基材上にジメチルホルムアミド(DMF)を含む、ポリウレタン樹脂溶液を塗布し、ポリウレタン樹脂溶液が塗布された基材を、水を主成分とする凝固液に浸漬させる。そしてポリウレタン樹脂をシート状に凝固再生させた後、残留しているポリウレタン樹脂溶液内のDMFの脱溶媒を行う。次いで、乾燥機を用いてウレタン樹脂内に含まれる水分蒸発させることで乾燥を行う。そして樹脂の空間内の水分が蒸発すると、樹脂内に厚み方向に図1(a)のような縦長の多数の気泡2aが形成され、且つ、気泡2aが厚み方向に立体網目状に連通した軟質ウレタンシート製の研磨シート3aを得ることができる。
また、ポリウレタン樹脂溶液に酢酸エチル等の水に対する溶解度がDMFより小さい有機溶媒を5質量%〜25質量%添加させると、図1(b)に記載の多数の微細孔2bが形成され、且つ、気泡2bが厚み方向に立体網目状に連通した軟質ウレタンシート製の研磨シート3bを得ることができる。
次に、研磨シート3a、3b上に上記パターンが形成されたPET製のマスクを乗せ、その上から撥水性溶剤又は親水性溶剤をスプレーで塗布する。
その後、上記PET製のマスクを取り除き、軟質ウレタンシートを80〜150℃の環境下において乾燥させて撥水剤又は親水剤を固着させる。さらに軟質ウレタンシートの撥水剤の塗布面と反対面側に接着剤を介して基材を貼り付け、PET基材の軟質ウレタンシートと反対面側に研磨定盤に研磨パッドを固定するための両面テープを貼り合わせて研磨パッド1a、1bを作製する。
【0015】
図3は本発明の第3実施例と第4実施例を示したもので、第3実施例においては撥水処理された第1の領域としての撥水性パターンP2が研磨面4a、4bに設けられており、第4実施例においては親水処理された第1の領域としての親水性パターンP2’が研磨面4a、4bに設けられている。上記第3実施例と第4実施例のいずれのものにおいても、上記パターンP2、P2’以外の研磨面4a、4bは、上記第1の領域とは親水性の異なる第2の領域P0となっている。
上記第3実施例、第4実施例と第1実施例、第2実施例との相違点は、各パターンを放射状とするか同心状とするかであって、第3実施例、第4実施例におけるその他の構成は、第1実施例、第2実施例と同様に構成してある。
第3実施例の撥水性パターンP2によれば、撥水性パターンP2が同心状に形成されているため、研磨面4a、4bと被研磨物との間に供給されたスラリは、定盤の回転に伴う遠心力により同心状の撥水性パターンP2を構成する円形の線に接近すると、線の内周部分で滞留し易くなる。つまり、撥水パターンP2が撥水性を有するため、スラリがその同心状の線上を乗り越えて隣接するより親水性の高い領域に流れることが阻害されるため、研磨面の外周にスラリが流出しにくく、スラリの保持性が高まる。この結果、研磨面4a、4bにおけるスラリ分布の制御や、研磨レート向上の効果を得ることができる。
他方、第4実施例の親水性パターンP2’によれば、親水性パターンP2’は親水剤により形成されているため、研磨面4a、4bと被研磨物との間に供給されたスラリは、定盤の回転に伴う遠心力により同心状の親水性パターンP2’ の同心状の線上に接近すると水を主成分とするスラリはその親和性から同心状の線上に留まりやすい。このため、親水性パターンP2’を形成しない場合に比較して、スラリが留まりやすい。このため、親水性パターンP1’を形成しない場合に比較して、研磨面の外周にスラリが流出し難くなり、スラリの保持性が高まる。
この結果、研磨面4a、4bにおけるスラリ分布の制御や、研磨レート向上の効果を得ることができる。
【0016】
図4は本発明の第5実施例と第6実施例を示したもので、第5実施例においては撥水処理された第1の領域としての撥水性パターンP3が研磨面4a、4bに設けられており、第6実施例においては親水処理された第1の領域としての親水性パターンP3’が研磨面4a、4bに設けられている。
これら第5実施例、第6実施例においても、上記パターンP3、P3’以外の研磨面4a、4bは、上記第1の領域とは親水性の異なる第2の領域P0となっており、これらパターンP3、P3’以外の構成は、上述した実施例と同様に構成してある。
いずれの実施例においても、各パターンP3、P3’を格子状に形成してあり、第5実施例の撥水性パターンP3によれば、撥水性パターンP3が同心状に形成されているため、研磨面4a、4bと被研磨物との間に供給されたスラリは、定盤の回転に伴う遠心力により格子状の撥水性パターンP2を構成する格子状の線に接近すると、格子状で区画された領域内部に戻り、区画内で滞留しやすくなる。つまり、格子状の撥水性パターンP3においては、それを構成する区画に囲まれた領域を超えて隣接するより親水性の高い領域に流出されることが阻害されるので、研磨面の外周にスラリが流出しにくく、スラリの保持性が高まり、研磨面におけるスラリ分布の制御や、研磨レート向上の効果を得ることができる。
また第6実施例の親水性パターンP3’によれば、親水性パターンP3’は親水剤により形成されているため、研磨面4a、4bと被研磨物との間に供給されたスラリは、定盤の回転に伴う遠心力により格子状の線上に接近すると水を主成分とするスラリは線上に留まりやすく、研磨面の外周にスラリが流出し難くなる。これにより、スラリの保持性が高まり、研磨面におけるスラリ分布の制御や、研磨レート向上の効果を得ることができる。
【0017】
上述した各実施例から理解されるように、撥水性パターンP1〜P3や親水性パターンP1’〜P3’によってスラリの排水性や保持性を得ることができるので、各パターンの形状や形成位置、形成本数、線幅、或は撥水剤や親水剤の種類などに基づく親水性の大小を適宜に設定することによって、好適な排水性或は保持性を有する研磨パッド1a、1bを製造することができる。
なお、上記パターンは図示したものに限定されるものではなく、渦巻き状やS字状など種々の形状としたり、不規則なパターンとしてもよく、さらには撥水性パターンと親水性パターンとを組み合わせてもよいことは勿論である。
いずれにしても本発明においては、上記研磨面4a、4bに、親水性の異なる第1の領域および第2の領域を有し、且つ、上記第1の領域がパターン状に形成されていればよい。
お、研磨面4a、4bへの撥水剤および親水剤への塗布方法については、実施例ではスプレーによる方法を記載したが、これに限定されない。スクリーン印刷機やグラビア印刷を用いたコーティング方法でも良い。
【符号の説明】
【0018】
1a、1b 研磨パッド 2a、2b 気泡
3a、3b 研磨シート 4a、4b 研磨面
P0 第2の領域
P1〜P3 撥水性パターン(第1の領域)
P1’〜P3’ 親水性パターン(第1の領域)
図1
図2
図3
図4