(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6376345
(24)【登録日】2018年8月3日
(45)【発行日】2018年8月22日
(54)【発明の名称】電源装置
(51)【国際特許分類】
H02M 3/155 20060101AFI20180813BHJP
【FI】
H02M3/155 X
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-260632(P2014-260632)
(22)【出願日】2014年12月24日
(65)【公開番号】特開2016-123166(P2016-123166A)
(43)【公開日】2016年7月7日
【審査請求日】2017年9月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003757
【氏名又は名称】東芝ライテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100062764
【弁理士】
【氏名又は名称】樺澤 襄
(74)【代理人】
【識別番号】100092565
【弁理士】
【氏名又は名称】樺澤 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100112449
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 哲也
(72)【発明者】
【氏名】加藤 剛
(72)【発明者】
【氏名】大武 寛和
【審査官】
木村 励
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2013/046259(WO,A1)
【文献】
特開2004−135442(JP,A)
【文献】
特開平3−235658(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 3/155
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源電圧を所定の出力電力に変換して負荷に出力する電力変換部と;
動作電圧が異なる複数の動作部を備えた制御部と;
一の出力端子と、他の出力端子となる少なくとも1つの中間タップとを有する巻線を備え電源電圧を変換する降圧チョッパ回路であり前記一の出力端子からの出力電圧および他の出力端子からの前記出力電圧より低い出力電圧を前記制御部の各動作部に出力する補助電源部と;
前記他の出力端子から前記動作部へと出力される出力電圧を降圧する電圧レギュレータと;
を具備していることを特徴とする電源装置。
【請求項2】
電源電圧を所定の出力電力に変換して負荷に出力する電力変換部と;
動作電圧が異なる複数の動作部を備えた制御部と;
一の出力端子を有する一次巻線およびこの一次巻線と異なる巻数に設定されこの一次巻線と磁気結合され他の出力端子を有する二次巻線を備え電源電圧を変換する降圧チョッパ回路であり前記一の出力端子からの出力電圧および前記他の出力端子からの前記出力電圧より低い出力電圧を前記制御部の各動作部に出力する補助電源部と;
前記他の出力端子から前記動作部へと出力される出力電圧を降圧する電圧レギュレータと;
を具備していることを特徴とする電源装置。
【請求項3】
電圧レギュレータの入力端子側と出力端子側との電圧差は、補助電源部の一の出力端子からの出力電圧と前記補助電源部の他の出力端子からの出力電圧との差よりも小さい
ことを特徴とする請求項1または2記載の電源装置。
【請求項4】
制御部は、
電力変換部を制御する一の動作部である変換制御部と、
この変換制御部よりも動作電圧が低く、この変換制御部を制御する他の動作部である状態制御部とを備え、
補助電源部は、電源電圧の供給が継続しているときには前記状態制御部に対する出力を維持する
ことを特徴とする請求項1ないし3いずれか一記載の電源装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、動作電圧が異なる複数の動作部を備えた制御部を有する電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えばLEDなどの固体光源を負荷とする電源装置は、交流または直流電源を整流回路で整流し、整流した電源電圧を電力変換部で所定の直流電圧に変換して固体光源に供給し、この固体光源を点灯させている。
【0003】
このような電源装置の電力変換部として、この電力変換部の動作を制御する駆動回路(制御IC)と、この駆動回路の動作を制御して電源装置全体の動作と待機とを設定する制御回路(マイコン)とを備えるものがある。これら駆動回路と制御回路とは、電源となる電圧が異なっているため、補助電源部から出力される出力電圧を、例えば駆動回路用との電圧とし、制御回路用にはこの出力電圧を電圧レギュレータなどによって降圧することで供給している。そのため、駆動回路と制御回路との動作電圧差が大きいほど、電圧レギュレータでの電力損失が大きくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012−99334号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、電力損失を抑制した電源装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態の電源装置は、電源電圧を所定の出力電力に変換して負荷に出力する電力変換部を有する。また、この電源装置は、動作電圧が異なる複数の動作部を備えた制御部を有する。さらに、この電源装置は、一の出力端子と、他の出力端子となる少なくとも1つの中間タップとを有する巻線を備え電源電圧を変換する降圧チョッパ回路であり一の出力端子
からの出力電圧および他の出力端子
からの前記出力電圧より低い出力電圧を制御部の各動作部に出力する補助電源部を有する。
また、この電源装置は、他の出力端子から動作部へと出力される出力電圧を降圧する電圧レギュレータを有する。
【0007】
また、実施形態の電源装置は、電源電圧を所定の出力電力に変換して負荷に出力する電力変換部を有する。また、この電源装置は、動作電圧が異なる複数の動作部を備えた制御部を有する。さらに、この電源装置は、一の出力端子を有する一次巻線およびこの一次巻線と異なる巻数に設定されこの一次巻線と磁気結合され他の出力端子を有する二次巻線を備え電源電圧を変換する降圧チョッパ回路であり一の出力端子
からの出力電圧および他の出力端子
からの前記出力電圧より低い出力電圧を制御部の各動作部に出力する補助電源部を有する。
また、この電源装置は、他の出力端子から動作部へと出力される出力電圧を降圧する電圧レギュレータを有する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、補助電源部から互いに異なる複数の出力電圧を制御部の各動作部に出力することで
、電圧レギュレータなどによる降圧率を下げることができ、電力損失を抑制することが期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】第1の実施形態の電源装置を示す回路図である。
【
図2】第2の実施形態の電源装置を示す一部の回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、第1の実施形態の構成を
図1を参照して説明する。
【0011】
図1において、10は電源装置であり、この電源装置10は、負荷11として例えば直列に接続された複数の固体光源であるLED12を点灯させるものである。この電源装置10は、直流または交流の外部電源、本実施形態では交流電源eが入力されるフィルタ回路14、フィルタ回路14に接続されて交流電源eを整流する整流平滑回路15、整流平滑回路15で整流平滑された電源電圧を、LED12を点灯させる所定の出力電力に変換する電力変換部としての主回路である電力変換回路16、この電力変換回路16の出力部であってLED12が接続される出力部17、電力変換回路16の動作を制御する一の動作部としての変換制御部である第1の制御回路18およびこの第1の制御回路18の動作を制御する他の動作部としての状態制御部である第2の制御回路19を有する制御部20、および、この制御部20に電力を供給する補助電源部としての補助電源回路21を備えている。
【0012】
フィルタ回路14は、ノイズフィルタ回路、すなわち雑音防止回路(雑防回路)とも呼ばれるもので、例えばヒューズ、コンデンサ、コモンモードチョークおよびコンデンサによって構成された既知のラインフィルタである。
【0013】
整流平滑回路15は、全波整流器などの整流素子および平滑コンデンサなどの平滑素子を備えている。
【0014】
電力変換回路16は、例えばスイッチング素子を備えた降圧チョッパ回路であり、出力部17のLED12と電気的に接続されている。
【0015】
第1の制御回路18は、電力変換回路16のスイッチング素子のスイッチングを制御することで電力変換回路16から負荷11への出力電力を制御するもので、動作電圧が例えば一の(第1の)動作電圧である例えば15Vの制御ドライバICなどが用いられる。
【0016】
第2の制御回路19は、第1の制御回路18の動作と停止とを制御することで、電源装置10全体の状態、すなわち動作と停止とを切り換えるように制御するものである。すなわち、この第2の制御回路19により第1の制御回路18を停止させた状態では、電源装置10が待機モードとなるように設定されている。本実施形態では、この第2の制御回路19は、動作電圧が一の動作電圧よりも低い他の(第2の)動作電圧である例えば5V以下のマイコンなどが用いられる。
【0017】
補助電源回路21は、制御部20へと互いに異なる複数、本実施形態では2つの出力電圧を出力するもので、整流平滑回路15の高電位側の出力端に接続されており、本実施形態では制御素子25を備えた降圧チョッパ回路である。すなわち、制御素子25に対して、巻線であるトランスTが接続され、このトランスTの一端T1および他端T2にダイオードD1のカソードと電解コンデンサC1とが接続され、ダイオードD1のアノードと電解コンデンサC1の他端とが接地されている。また、トランスTの一の出力端子である他端T2には、第1の制御回路18が接続されているとともに、制御素子25との間に、ツェナダイオードZDとダイオードD2とを備えた定電圧フィードバック回路FBが接続されている。さらに、トランスTには、少なくとも1つ、本実施形態では1つの他の出力端子である中間タップCTが設けられ、この中間タップCTには、電解コンデンサC2が接続され、この電解コンデンサC2と並列に電圧調整部26を介して制御部20の第2の制御回路19が接続されている。そして、電解コンデンサC2と電圧調整部26とがそれぞれ接地されている。
【0018】
制御素子25は、例えば高耐圧のIPD(インテリジェント・パワー・デバイス)であり、内部にスイッチング素子を備えており、このスイッチング素子のスイッチング動作により制御素子25に入力された電源電圧を所定の一の(第1の)出力電圧(例えば15V)に変換し第1の制御回路18に供給する。
【0019】
トランスTは、本実施形態ではチョークトランスであり、他端T2が第1の制御回路18への出力端子となっているとともに、このトランスTの中間タップCTが第2の制御回路19への出力端子となっている。この中間タップCTは、補助電源回路21からの互いに異なる出力電圧の数をnとしたとき、(n−1)個設けられる。また、この中間タップCTは、トランスTの他端T2から出力される一の出力電圧に対する他の(第2の)出力電圧(例えば5V)の比率に応じて設けられている。
【0020】
定電圧フィードバック回路FBのツェナダイオードZDは、カソードがトランスTの他端T2と接続され、アノードがダイオードD2のアノードに接続されている。また、定電圧フィードバック回路FBのダイオードD2は、アノードがツェナダイオードZDのアノードと接続され、カソードが制御素子25と接続されている。
【0021】
電圧調整部26は、トランスTの中間タップCTから出力される出力電圧をさらに降圧して、例えば5V以下の電圧を出力するもので、例えば電圧レギュレータ(3端子レギュレータ)Rの入力端子と出力端子とにそれぞれコンデンサC3,C4の一端側が接続されるとともに、これらコンデンサC3,C4の他端側と電圧レギュレータRの共通端子とが互いに接続されて接地されている。なお、この電圧調整部26は、トランスTの他端T2からの出力電圧が第2の制御回路19の動作電圧と等しければ、必須の構成ではない。
【0022】
次に、電源装置10の動作を説明する。
【0023】
入力される交流電源eをフィルタ回路14でフィルタリングするとともに、整流平滑回路15で整流平滑し、この整流平滑した電源電圧を電力変換回路16および補助電源回路21に供給する。
【0024】
電源電圧が供給された補助電源回路21の制御素子25が動作を開始すると、制御素子25のスイッチング素子がスイッチング動作し、第1の制御回路18の動作電圧と略等しい第1の出力電圧(例えば15V)をトランスTの他端T2から第1の制御回路18に供給する。このとき、トランスTの中間タップCTには、第2の制御回路19の動作電圧よりも僅かに大きい、あるいはこの動作電圧と略等しい第2の出力電圧が生じる。この第2の出力電圧(例えば5.5V)は、電圧調整部26の電圧レギュレータRによりさらに降圧され、第2の制御回路19の動作電圧(例えば5V)として、この第2の制御回路19に供給する。なお、この第2の制御回路19への電圧の供給は、電源電圧が継続している(停止していない)ときには維持される。したがって、第2の制御回路19への電圧は、電源装置10の待機モード時も継続される。
【0025】
そして、動作電圧が供給された第2の制御回路19が動作を開始し、第1の制御回路18を動作させると、この第1の制御回路18が動作を開始し、この第1の制御回路18が電力変換回路16のスイッチング素子を高周波スイッチング動作させることで、LED12に電流が流れ、LED12が点灯する。
【0026】
制御素子25は、他端T2から出力する第1の出力電圧を定電圧フィードバック回路FBにより監視し、この第1の出力電圧が一定になるように、自身のスイッチング素子のオンオフをフィードバック制御する。
【0027】
上述したように、上記第1の実施形態によれば、電源電圧を変換して互いに異なる複数の出力電圧を制御部20の第1の制御回路18および第2の制御回路19に補助電源回路21から出力することで、例えば補助電源回路からの出力電圧を1種類としてその電圧をレギュレータなどによって電圧変換(降圧)して他の出力電圧を作る場合と比較して、レギュレータなどによる降圧率を下げることができ、電力損失を抑制でき、電源装置10を高効率化できる。
【0028】
具体的に、補助電源回路21を降圧チョッパ回路とし、そのトランスTに、少なくとも1つの中間タップCTを設けることで、互いに異なる複数の出力電圧を、他端T2と、中間タップCTとから出力でき、簡単な構成で容易に複数の出力電圧を補助電源回路21から出力できるとともに、中間タップCTを出力電圧比率に応じた巻数位置に設けることで、所望の出力電圧を容易に得ることができる。
【0029】
すなわち、例えば第1の制御回路18の動作電圧が15V、第2の制御回路19の動作電圧が5Vである場合、補助電源回路から15Vの電圧を第1の制御回路18の出力し、その電圧をレギュレータなどによって5Vに降圧して第2の制御回路19に供給する場合には、15V−5V=10Vの電圧差が生じ、この電圧差に対応した電力損失が生じるのに対して、本実施形態によれば、補助電源回路21から15Vの電圧と5.5Vなどの電圧とを出力することで、電圧調整部26においては、5.5V−5V=0.5Vの電圧差分の電力損失しか生じず、電力損失を大幅に抑制できる。
【0030】
また、補助電源回路21が、電源電圧の供給が継続しているときには、第1の制御回路18よりも動作電圧が低く設定されている第2の制御回路19への出力を維持するので、例えば第1の制御回路18を停止させつつ、第2の制御回路19を動作させ続ける待機モードでの消費電力、すなわち待機電力が、第2の制御回路19用の、より低い電圧分に対応する電力のみで済み、待機電力を抑制できる。
【0031】
なお、上記第1の実施形態において、
図2に示す第2の実施形態のように、トランスTを、一次巻線L1と、この一次巻線L1と磁気結合された二次巻線L2とにより構成し、一次巻線L1の一の出力端子である出力端子LT1から第1の制御回路18に一の出力電圧を出力し、二次巻線L2の他の出力端子である出力端子LT2から第2の制御回路19(電圧調整部26)に他の出力電圧を出力するようにしても同様の作用効果を奏することができる。このとき、二次巻線L2の巻数n2を一次巻線L1の巻数n1と異ならせ、巻数比n1:n2を、一の出力電圧と他の出力電圧との比に設定することで、大きな構成変更を伴うことなく、巻数比に応じた複数の異なる所望の出力電圧を簡単な構成で容易に補助電源回路21から出力できる。
【0032】
また、電圧調整部26を介して第2の制御回路19へと出力される出力電圧は、例えば5Vに限らず、5V未満の3.3Vや1.8Vなど、第2の制御回路19の動作電圧の仕様に応じて任意に設定できる。この場合でも、電圧レギュレータRの入力端子側と出力端子側との電圧差は、一の出力電圧と他の出力電圧との電圧差よりも小さい、5V未満に抑制されるため、損失が大きくなることはない。
【0033】
さらに、上記各実施形態において、固体光源は、LEDに限らず、例えば有機ELや半導体レーザなどを用いてもよい。
【0034】
そして、負荷としては、固体光源に限らず、抵抗など、任意の負荷を用いることができる。
【0035】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0036】
10 電源装置
11 負荷
16 電力変換部としての電力変換回路
18 一の動作部としての変換制御部である第1の制御回路
19 他の動作部としての状態制御部である第2の制御回路
20 制御部
21 補助電源部としての補助電源回路
CT 他の出力端子である中間タップ
L1 一次巻線
L2 二次巻線
LT1 一の出力端子である出力端子
LT2 他の出力端子である出力端子
R 電圧レギュレータ
T 巻線であるトランス
T2 一の出力端子である他端