(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
芝生面を覆って配置される芝養生カバーは、たとえば下記特許文献1に記載されたものが知られている。
【0003】
特許文献1には、板状体と、該板状体の前記芝生面と対向する面(裏面)から突出して脚部となるリブとを備え、該板状体とリブとがプラスチック材料から構成されたものが開示されている。
【0004】
また、特許文献1には、板状体の表面に粗面となるコーティングを施す記載がある。
【0005】
しかし、上述した芝養生カバーは、熱膨張によって変形し易くなっている。そのため、太陽光等で加熱された際の熱膨張によって、隣接して配置される他の芝養生カバーとの間隔が詰まって互いに圧接されることで、その接触位置にて芝養生カバーが盛り上がってしまうなど、芝養生カバーの整列が乱れる不都合が生じていた。
【0006】
また、雨が降った場合に表面が滑り易くなり、それを解消するため、上述のコーティングでは充分でなく、さらに手間がかかるという不都合を有するものであった。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の芝養生カバーを4個互いに隣接して配置させた平面図である。
【
図2】本発明の芝養生カバーを1個示した斜視図である。
【
図3】本発明の芝養生カバーの裏面を示した平面図である。
【
図4】本発明の芝養生カバーの裏面の一部を示した斜視図である。
【
図5】(a)、(b)は、本発明の芝養生カバーの貫通孔が形成される位置を説明する図である。
【
図6】(a)は、本発明の芝養生カバーの貫通孔の作用を示す断面図、(b)、(c)は、貫通孔の他の構成例を示す断面図である。
【
図7】本発明の芝養生カバーの接合部材のうち摺動部材が取り付けられる溝部を示す断面図である。
【
図8】前記溝部の側壁面に形成される刻み目を示す図である。
【
図9】本発明の芝養生カバーの接合部材のうち係合溝部を示す断面図である。
【
図10】本発明の芝養生カバーの溝部に取り付けられる手動部材の平面図である。
【
図12】隣接して配置されるべく各芝養生カバーの接合部材の裏面図である。
【
図13】
図12に対応する図であり、摺動部材の摺動によって、その先端部が係合溝部に係合されることによって、各芝養生カバーが互いに接合されていることを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための形態(以下、実施形態)について詳細に説明する。なお、実施形態の説明の全体を通して同じ要素には同じ番号を付している。
(実施形態1)
図1は、本発明の芝養生カバーを示す平面図である。本発明の芝養生カバーは、例えば、射出成形によって成形され、複数の芝養生カバーを互いに隣接させて接合させることによって用いられる。
【0017】
図1においては、芝生面を覆って配置される複数の芝養生カバー10のうち、4個の芝養生カバー10を互いに接合させて配置させた状態で図示している。このため、これら4個の芝養生カバー10からはみ出す部分は芝生面20となっている。
【0018】
各芝養生カバー10は、板状体11と、後に説明するように、該板状体11の芝生面20と対向する面(裏面)に該板状体11から突出するリブ(
図3にて符号12で示す)とを有し、板状体11とリブ12は、樹脂材の一体成形によって形成されている。リブ12は、板状体11を芝生面20に対して浮かして配置させるための脚部としての機能を有するようになっている。
【0019】
ここで、前記樹脂材は微細紙粉が含有されている。微細紙粉は、
図6の一点鎖線枠Pの拡大図において、符号13にて示している。樹脂材は、たとえば、少なくともポリプロピレンを含んで構成され、微細紙粉13は100μm以下の平均粒径を有するとともに、樹脂材に対して重量比で20%以上含有されている
【0020】
芝養生カバー10を構成する樹脂材に微細紙粉13を含有させることにより、芝養生カバー10の熱による膨張を抑制させることができ、雨が降った場合に表面が滑り易くなるのを回避できる効果を奏するようになる。
【0021】
各芝養生カバー10は、4辺のそれぞれにおいて、隣接して配置される他の芝養生カバー10との接合を図るための接合部材30が設けられている。この接合部材30は、各辺においてたとえば2個ずつ設けられている。これら接合部材30は、後に詳述するが、一方の芝養生カバー10側に形成され該芝養生カバー10の一辺から先端が突出し得る摺動部材30Aと、該芝養生カバー10と隣接する他方の芝養生カバー10側に形成され前記摺動部材30Aの先端を係合する係合溝部30Bと、から構成されるようになっている。これにより、複数の芝養生カバー10は、それらが結合された状態で、互いに隣接させて配置させることができる。
図1では、各芝養生カバー10において、隣接して直交配置される各辺のそれぞれに2個の摺動部材30Aを有し、他の隣接して直交配置される各辺のそれぞれに2個の係合溝部30Bを有するようになっている。これら接合部材30の説明は後に詳述する。
【0022】
また、各芝養生カバー10は、複数の貫通孔40がほぼ均等に散在されて設けられている。この貫通孔40は太陽光を通過させる孔であり、該貫通孔40を通して太陽光を芝養生カバー10の下方の芝生面20に照射させるようになっている。なお、この貫通孔40は、芝養生カバー10の表面の滑り止めの効果をも奏するようになる。
【0023】
図2は、1個の芝養生カバー10を示した斜視図である。
図2において、芝養生カバー10の周辺にはリブ12Aが形成され、このリブ12Aは前述したリブ12のうちの一部となっている。これにより、複数の芝養生カバー10を互いに隣接して配置させた場合、各芝養生カバー10の側壁面に相当する前記リブ12Aが互いに面接触された状態で配置されるようになる。
【0024】
図3は、
図2に示した芝養生カバー10の芝生面20と対向する面(以下、裏面と称する)を示した平面図である。板状体11の裏面に形成されるリブ12は、板状体11の周辺に形成された前記リブ12Aと、このリブ12Aに囲まれた領域内に形成されるたとえば格子状のリブ12Bによって構成されている。これにより、リブ12は、板状体11の裏面において、隣接する4角形(たとえば正方形)の領域を画するようにして形成されている。
【0025】
また、芝養生カバー10の裏面には、他の芝養生カバー10との接合を図る複数の接合部材30が形成され、隣接して直交配置される各辺には図示しない摺動部材30A(
図1参照)が取り付けられる溝部30Dと、他の隣接して直交配置される各辺には、他の芝養生カバーの摺動部材30Aが突出して係合される係合溝部30Bが形成されている。溝部30Dおよび係合溝部30Bは、それぞれ芝養生カバー10の各辺に直交して延在するように形成されている。なお、前述した格子状のリブ12Bは、溝部30Dおよび係合溝部30Bの形成領域を回避して形成されたものとなっている。
【0026】
図4は、
図3の一点鎖線枠Aの部分を拡大して示した斜視図である。
図4に示すように、リブ12は、板状体11に対して高さの高い部分と高さの低い部分とを有している。すなわち、たとえば、板状体11の周辺のリブ12Aにおける角部の近傍(図中αで示す)と格子状のリブ12Bとの一つ置きのT字状の交差部の近傍(図中βで示す)、および格子状のリブにおける一つ置きの十字状の交差部の近傍(図中γで示す)は、高さを高くし、それ以外は、高さを低くするように形成されている。このようにすることにより、リブ12の芝生面20との当接面積を小さくし、芝生面20に損傷を与える部分をできるだけ少なくするようにしている。
【0027】
図5(a)は、リブ12によって画される4角形の領域(図中Tで示す)内において、貫通孔40が形成される位置を示した図である。一つの4角形の領域Tに、貫通孔40はたとえば4個形成されており、それぞれの貫通孔40は、4角形の領域Tの各頂点Sの近傍である領域(この明細書において第1の領域という)に形成されている。
図5(b)は、リブ12で囲まれた4角形の領域のうちの前記第1の領域を示した図であり、該第1の領域は、該4角形の頂点Sから該4角形の中心Oまでの距離をXとした場合に、該4角形の頂点SからX/2の距離の範囲内の領域(図中斜線の領域)となっている。4個の貫通孔40は、それぞれ、リブ12で囲まれた4角形の領域Tの各頂点Sの近傍に形成される第1の領域に配置されて形成されるようになっている。
【0028】
図5(a)、(b)の場合、リブ12によって画される4角形の領域Tにおいて、貫通孔40は第1の領域にのみ形成されたものとしたものである。しかし、これに限定されることはなく、第1の領域以外の領域にも形成されていてもよい。この場合、前記4角形の領域Tに複数の貫通孔40が形成されたとき、第1の領域の貫通孔40が、4角形の領域に配置された複数の貫通孔のうち数において70%以上の割合で形成されているようにするのが好ましい。また、80%以上、あるいは90%以上であってもよいことはもちろんである。このような関係は、リブ12で囲まれる領域が4角形のみならず多角形であっても同様である。
【0029】
このようにして形成される各貫通孔40は、板状体11の機械的強度の強いリブ12の交差部に近接させて形成することから、該貫通孔40の形成によって板状体11の機械的強度が低下する憂いがなくなる。このため、貫通孔40をたとえば4角形の領域のほぼ中央(機械的強度の弱い部分に相当)に形成する場合と比較した場合、径を大きくした貫通孔40を形成することができ、これにより、該貫通孔40を通して芝生面20に導く太陽光の量を増大させる効果を奏する。
【0030】
図6(a)は、
図5のC−C線における断面図であり、芝養生カバー10を芝生面20に配置した際の、該貫通孔40を通して太陽光が芝生面20に至るまでの光路を示している。貫通孔40は、上述したように、リブ12Bで囲まれた4角形の頂点Sの近傍である第1の領域に形成されていることから、貫通孔40を通して直接に芝生面に入射される光(図中点線矢印Q1で示す)のほかに、貫通孔40に近接して配置されたリブ12Bの側面12Sに反射かつ拡散されて芝生面20に至る光(図中点線矢印Q2で示す)も大きく存在することになる。このため、芝生面20に至る太陽光の量を増大させる効果を奏する
【0031】
また、貫通孔40は、
図6(a)に示すように、板状体11のリブ12Bの形成されていない側の表面において小さな径D1を有し、板状体11のリブ12Bの形成されている側の裏面において大きな径D2を有し、表面から裏面にかけて、最初、径の増加が小さく、途中の段階から径の増加が大きくなるように形成されている。
【0032】
このような断面形状の貫通孔40を形成することによって、板状体11の表面における機械的強度の減少を抑制できるとともに、太陽光の芝生面20への照射量を増加させることができる。
【0033】
このような観点から、貫通孔の断面形状は、たとえば、
図6(b)に示すように、板状体11の表面から裏面にかけて、最初、径がほぼ等しく、途中の段階から径の増加が大きくなるように形成するようにしてもよい。また、
図6(c)に示すように、板状体11の表面から裏面にかけて、貫通孔の径の増大を同じ比率にすることによって、表面において小さな径を、裏面において大きな径を有するように形成するようにしてもよい。
【0034】
図7は、
図3のD−D線における断面図である。また、
図8は、
図7のE−E線における断面図である。
【0035】
図7は、隣接して配置される他の芝養生カバー10との接合を図る接合部材30のうち、図示しない摺動部材30A(
図10参照)が取り付けられる溝部30Dを示している。摺動部材30Aは、芝養生カバー10の裏面に形成された溝部30Dに配置した後に底板30Eを宛がうことによって該溝部30D内に取り付けられるようになっている。また、溝部30Dの互いに対向する側壁面の一部には、
図8に示すように、図示しない摺動部材30Aの摺動方向に沿って刻み目部30Fが形成されている。この刻み目部30Fは、摺動部材30Aを溝部30D内に配置させたときに、摺動部材30Aの後端部の両側面に形成された突起(
図10にて符号30Gで示す)が当接されるようになっている。これにより、摺動部材30Aは溝部30Dの長手方向に摺動できるとともに該溝部30D内において定位置を維持できるようになっている。
【0036】
図9は、
図3のF−F線における断面図である。
図9は、隣接して配置される他の芝養生カバー10との接合を図る接合部材30のうち、該他の芝養生カバー10の摺動部材30Aの先端を係止する係合溝部30Bを示している。この係合溝部30Bの天井面には凸部30Hが形成され、他の芝養生カバー10の摺動部材30Aが、当該芝養生カバー10側へ摺動されたときに、摺動部材30Aの先端部の上面に形成された突起(
図10にて符号30Iで示す)が係止され、摺動部材30Aの後方への摺動が容易になされないようになっている。すなわち、摺動部材30Aを後方へ摺動させる際には、所定以上の力を要するようになっている。
【0037】
図10は、摺動部材30Aの平面図である。また、
図11は、
図10のG−G線における断面図である。摺動部材30Aは、上述したように、後端部の両側面において突起30Gが形成され、先端部の上面において突起30Iが形成されている。そして、摺動部材30Aは、そのほぼ中央部の上面に突出部30Jが形成されている。この突出部30Jは、摺動部材30Aを摺動させる際のつまみとして機能し、摺動部材30Aを溝部30D(
図7参照)に配置させたときに、板状体11に形成された長孔からなるスリット(
図12、
図13にて符号11Sで示す)から突出するようになっている。
【0038】
また、摺動部材30Aは、
図11に示すように、その後端部において、その上面が抉られる形状をなすことによって肉厚が薄く形成され、この肉薄部30Kの後端において下面側から突出する突出部30Lが形成されている。この突出部30Lは、摺動部材30Aの溝部30D(
図7参照)内の摺動によって該摺動部材30Aの先端部の当該芝養生カバー10からの突出が所定の距離だけなされたときに、前記底板30Eの一端辺として形成されたストッパ30P(
図14参照)に当接され、摺動部材30Aのそれ以上の摺動を規制するようになっている。
【0039】
図12は、隣接して配置されるべく各芝養生カバー10の接合部材30の裏面図である。一方の芝養生カバー10には溝部30Dに取り付けられた摺動部材30Aが示され、他方の芝養生カバー10には係合溝部30Bが示されている。また、
図13は、
図12に対応して描いた図であり、摺動部材30Aの摺動によって、その先端部が係合溝部30Bに係合されることによって、各芝養生カバー10が互いに接合されていることを示す図である。また、
図14は、
図13のH−H線における断面図である。
【0040】
図12に示すように、摺動部材30Aの突起(つまみ)30Jが板状体11のスリット11Sの一端(板状体11の中央側)にあることによって、摺動部材30Aの全部が溝部30D内に収まっており、摺動部材30Aの先端部は板状体11の周辺から突出されていない状態となっている。
【0041】
そして、
図13に示すように、摺動部材30Aの突起(つまみ)30Jが板状体11のスリット11Sの他端(板状体11の辺側)に移動させることにより、摺動部材30Aは、その先端部が板状体11の周辺から突出されるように摺動され、摺動部材30Aの先端部は、他方の芝養生カバー10の係合溝部30Bに係合されるようになっている。
【0042】
この場合、
図14に示すように、摺動部材30Aは、その突出部30Lがストッパ30Pに当接し、それ以上の摺動が規制され、この際に、摺動部材30Aの突起30Iが板状体11に形成された凸部30Hを越えて位置付けられ、一方の芝養生カバー10の摺動部材30Aが他方の芝養生カバー10の係合溝部30Bから容易に離脱されるのを回避できるようになる。
【0043】
このように形成された芝養生カバーによれば、熱膨張により変形し難く、簡単な構成にも拘わらず滑り止めの機能を充分にもたせることのできるようになる。
【0044】
(実施形態2)
実施態様1では、リブ12Bは格子状に形成され、このリブによって囲まれた領域は4角形(たとえば、正方形)となっているものである。しかし、これに限定されることはなく、リブ12Bによって囲まれる領域は、たとえば5角形、6角形等の他の多角形であってもよいことはもちろんである。すなわち、リブ12Bは、隣接する多角形の領域を画するように形成されていればよい。
【0045】
(実施形態3)
実施形態1では、板状体11に形成する貫通孔40は、板状体11の表面における機械的強度の減少を抑制し、太陽光の芝生面20への照射量を増加させるために、その形成する位置を限定するようにしたものである。しかし、該貫通孔40に滑り止めの機能をもたせるようにする場合には、その形成する位置を上述したように限定する必要がないことはもちろんである。
【0046】
以上、実施形態を用いて本発明を説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されないことは言うまでもない。上記実施形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。また、その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。