【実施例】
【0056】
本発明は下記の実施例によって更に詳細に説明されるが、これら実施例は本発明を限定するものではなく、また、本発明の範囲を逸脱しない範囲で変化させてもよい。
【0057】
実施例中記載の各機器データは以下の測定機器で測定した。
MSスペクトル:Agilent 6150/Agilent 1290Infinity
NMRスペクトル:[
1H-NMR]JNM−ECA600(日本電子)
実施例中で使用した略語を以下に示す。
MS(質量分析)、APCI(大気圧化学イオン化)、ESI(エレクトロスプレーイオン化)。
【0058】
実施例A−1:N−tert−ブチル−2−[2−(3−
11C−メトキシフェニル)−6−[3−(モルホリン−4−イル)プロポキシ]−4−オキソピリド[2,3−d]ピリミジン−3(4H)−イル]アセトアミド(A−1)の合成
【0059】
【化6】
【0060】
(1)2−[6−ブロモ−2−(3−メトキシフェニル)−4−オキソ−1,4−ジヒドロピリド[2,3−d]ピリミジン−3(2H)−イル]−N−tert−ブチルアセトアミド(A−1−1)の合成
【0061】
【化7】
【0062】
窒素気流下、2−アミノ−5−ブロモ−N−[2−(tert−ブチルアミノ)−2−オキソエチル]ニコチンアミド(25.0g)、3−メトキシベンズアルデヒド(31.0g)、酢酸(22.8g)のEtOH(500mL)懸濁液をディーン・スターク装置で脱水しながら5時間加熱還流した。放冷後、減圧下で反応溶媒を留去し、得られた残渣にEtOAcを加え、生じた固体をろ取、乾燥し表題化合物(33.4g、無色固体)を得た。
MS (ESI neg.) m/z : 445([M-H]
-).
【0063】
(2)2−[6−ブロモ−2−(3−メトキシフェニル)−4−オキソピリド[2,3−d]ピリミジン−3(4H)−イル]−N−tert−ブチルアセトアミド(A−1−2)の合成
【0064】
【化8】
【0065】
窒素気流下、実施例A−1(1)で得られた化合物A−1−1(33.0g)、MnO
2(32.1g)のTHF(512mL)、CHCl
3(130mL)懸濁液を5時間加熱還流した。熱時セライト(登録商標)を用いてろ過後、THF(600mL)にて洗浄し、ろ液を減圧下で濃縮した。得られた残渣にEtOAcを加え、生じた固体をろ取、乾燥し表題化合物(28.7g、無色固体)得た。
MS (ESI pos.) m/z : 445([M+H]
+).
【0066】
(3)N−tert−ブチル−2−[6−ヒドロキシ−2−(3−メトキシフェニル)−4−オキソピリド[2,3−d]ピリミジン−3(4H)−イル]アセトアミド(A−1−3)の合成
【0067】
【化9】
【0068】
窒素気流下、実施例A−1(2)で得られた化合物A−1−2(4.45g)、4,4,4’,4’,5,5,5’,5’−オクタメチル−2,2’−ビ−1,3,2−ジオキサボロラン(5.08g)、PdCl
2(dppf)・CH
2Cl
2(408mg)及びAcOK(2.94g)のDMSO(45mL)溶液を100℃にて2時間加熱攪拌した。放冷後、水(200mL)を加え、生じた固体をろ取、乾燥し固体(9.91g、茶褐色固体)を得た。得られた固体(9.91g)のTHF(25mL)及びEtOH(25mL)溶液にNaHCO
3水溶液(1.68g/水 15mL)を加えた後に氷冷し、反応液温度8℃以下を保ちながら、30%過酸化水素水(3.40mL)を加えた後、2時間攪拌した。反応液に亜硫酸ナトリウム水溶液(3.78g/水 50mL)を加えた後、15分間攪拌した。CHCl
3(100mL)、飽和食塩水(100mL)を加え分液後、水層をCHCl
3(50mL)で2回抽出した。有機層を合わせてNa
2SO
4で乾燥後に乾燥剤をろ別し、ろ液を減圧下で濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(SNAP Cartridge HP−Sphere、移動相:CHCl
3/MeOH=100/0〜90/10;v/v)にて精製し表題化合物(3.69g、灰色固体)を得た。
MS (ESI pos.) m/z : 383([M+H]
+).
【0069】
(4)N−tert−ブチル−2−[2−(3−メトキシフェニル)−6−[3−(モルホリン−4−イル)プロポキシ]−4−オキソピリド[2,3−d]ピリミジン−3(4H)−イル]アセトアミド(A−1−4)の合成
【0070】
【化10】
【0071】
実施例A−1(3)で得られた化合物A−1−3(3.65g)、4−(3−クロロプロピル)モルホリン 塩酸塩(2.29g)、炭酸セシウム(15.6g)及びヨウ化カリウム(0.792g)のDMF(36mL)懸濁液を外温85℃で4時間攪拌した。反応液を放冷後、飽和NaHCO
3水溶液(120mL)、EtOAc(120mL)及びトルエン(20mL)を加え分液後、有機層を飽和食塩水(120mL)で洗浄した。水層をEtOAc(120mL)及びトルエン(20mL)で2回抽出し、有機層を合わせてNa
2SO
4で乾燥した。乾燥剤をろ別後、ろ液を減圧下で濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(SNAP Cartridge HP−Sphere、移動相:CHCl
3/MeOH=99/1〜90/10;v/v)にて精製し表題化合物(4.55g、褐色アモルファス)を得た。
MS (ESI pos.) m/z : 510([M+H]
+).
1H-NMR (600 MHz, CDCl
3) δ (ppm) ; 1.35 (9 H, s), 2.01 - 2.08 (2 H, m), 2.48 (4 H, br. s.), 2.55 (2 H, t, J=7.0 Hz), 3.73 (4 H, t, J=4.5 Hz), 3.83 (3 H, s), 4.19 (2 H, t, J=6.4 Hz), 4.52 (2 H, s), 5.45 (1 H, s), 7.02 - 7.05 (1 H, m), 7.23 (1 H, d, J=7.4 Hz), 7.25 - 7.26 (1 H, m), 7.37 (1 H, t, J=7.8 Hz), 7.95 (1 H, d, J=3.3 Hz), 8.72 (1 H, d, J=3.3 Hz).
【0072】
(5)N−tert−ブチル−2−[2−(3−ヒドロキシフェニル)−6−[3−(モルホリン−4−イル)プロポキシ]−4−オキソピリド[2,3−d]ピリミジン−3(4H)−イル]アセトアミド(プレカーサーA)の合成
の合成
【0073】
【化11】
【0074】
実施例A−1(4)で得られた化合物A−1−4(1.00g)をCHCl
3(20mL)に溶解し、氷冷下でBBr
3(1mmol/Lジクロロメタン溶液、9.81mL)を滴下し室温で24時間攪拌した。反応液に氷冷下でMeOHを加えた後に、CHCl
3(80mL)、飽和NaHCO
3水溶液(100mL)を加え分液後、有機層を飽和食塩水(100mL)で洗浄した。水層をCHCl
3(100mL)で2回抽出し有機層を合わせてNa
2SO
4で乾燥した。乾燥剤をろ別後、ろ液を減圧下で濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(SNAP Cartridge KP-NH、移動相:CHCl
3/MeOH=100/0〜90/10;v/v)にて精製した。得られた粗精製物にEtOAc(1.5mL)及びn−ヘキサン(1.5mL)を加え、10分間加熱還流後に、室温まで冷却し、12時間攪拌した。固体をろ取、乾燥し、表題化合物(400mg、淡褐色固体)を得た。
MS (ESI pos.) m/z : 496([M+H]
+).
1H-NMR (600 MHz, CDCl
3) δ (ppm) ; 1.32 (9 H, s), 2.01 - 2.07 (2 H, m), 2.42 - 2.51 (4 H, m), 2.54 (2 H, t, J=6.8 Hz), 3.73 (4 H, t, J=4.3 Hz), 4.15 - 4.20 (2 H, m), 4.51 (2 H, s), 5.48 (1 H, s), 6.89 - 6.93 (1 H, m), 7.06 (1 H, d, J=7.4 Hz), 7.12 - 7.15 (1 H, m), 7.24 (1 H, t, J=7.8 Hz), 7.93 - 7.97 (1 H, m), 8.39 (1 H, br. s.), 8.66 (1 H, d, J=3.3 Hz).
【0075】
(6)N−tert−ブチル−2−[2−(3−
11C−メトキシフェニル)−6−[3−(モルホリン−4−イル)プロポキシ]−4−オキソピリド[2,3−d]ピリミジン−3(4H)−イル]アセトアミド(A−1)の合成
【0076】
【化12】
【0077】
化合物A−1は、プレカーサーAのフェノール部分の酸素原子をサイクロトロン装置により製造した[
11C]ヨウ化メチルを用いてアルキル化することにより合成した。
【0078】
18.0MeVの陽子を用いて
14N(P,α)
11C反応に従って窒素を20μAのビームカレントを用いて15分照射することにより炭素−11を製造した。標的ガス中の少量の酸素(5ppm)の存在により炭素−11は[
11C]二酸化炭素に変換された。得られた[
11C]二酸化炭素を水素化リチウムアルミニウムを用いて還元し、続いてヨウ化水素酸と反応させることにより[
11C]ヨウ化メチルを合成した。
【0079】
プレカーサーA(1.0mg)、水酸化ナトリウム水溶液(0.5mol/L、5μL)及び無水N,N−ジメチルホルムアミド(300μL)の混合物をよく振り混ぜて混和した。反応混合物を−20℃に冷却し、[
11C]ヨウ化メチルを吹き込み、その後80℃で5分間加熱した。反応混合物にアセトニトリル/水/トリエチルアミン(40/60/0.1)溶液(1mL)を加え、分取HPLCカラム(SHISEIDO CAPCELL PAC C−18 250×10 mm)に注入し、5mL/分の流量でアセトニトリル/水/トリエチルアミン(40/60/0.1)溶液により溶出した。8〜9分後に溶出され丸底フラスコに集められた化合物Aを含む放射活性フラクションを、減圧下エアヒーターで100℃に加熱して蒸発乾固させた。残渣を生理食塩水(3mL)に溶解し、滅菌したバイアル瓶に集めた。品質管理はアセトニトリル/水/トリエチルアミン(40/60/0.1)溶液を移動相として、1mL/分の流量で分析的HPLC(SHISEIDO CAPCELL PAC C−18 250×4.6 mm)を用いて行った。当該標識体の保持時間と非標識体の保持時間が同等であることを確認した。
【0080】
本製造により、収量2.10GBq〜3.24GBq、放射化学的純度98%以上、比放射能45〜89GBq/μmolの化合物A−1が得られた。HPLC精製および調剤を含む平均全合成時間は、照射の終了から約28分であった。
【0081】
実施例B−1:N−tert−ブチル−2−[2−(6−
11C−メチルオキシピリジン−2−イル)−6−[3−(モルホリン−4−イル)プロポキシ]−4−オキソピリド[2,3−d]ピリミジン−3(4H)−イル]アセトアミド(B−1)の合成
【0082】
【化13】
【0083】
(1)2−[6−ブロモ−2−(6−メトキシピリジン−2−イル)−4−オキソ−1,4−ジヒドロピリド[2,3−d]ピリミジン−3(2H)−イル]−N−tert−ブチルアセトアミド(B−1−1)の合成
【0084】
【化14】
【0085】
実施例A−1(1)と同様の手法にて、6−メトキシピリジン−2−カルバルデヒド(5.0g)から表題化合物(8.28g)を得た。
【0086】
(2)2−[6−ブロモ−2−(6−メトキシピリジン−2−イル)−4−オキソピリド[2,3−d]ピリミジン−3(4H)−イル]−N−tert−ブチルアセトアミド(B−1−2)の合成
【0087】
【化15】
【0088】
実施例A−1(2)と同様の手法にて、実施例B−1(1)で得られた化合物B−1−1(8.28g)から表題化合物(6.86g、無色固体)を得た。
MS (ESI pos.) m/z : 446([M+H]
+).
【0089】
(3)N−tert−ブチル−2−[6−ヒドロキシ−2−(6−メトキシピリジン−2−イル)−4−オキソピリド[2,3−d]ピリミジン−3(4H)−イル]アセトアミド(B−1−3)の合成
【0090】
【化16】
【0091】
実施例A−1(3)と同様の手法にて、実施例B−1(2)で得られた化合物B−1−2(6.22g)から表題化合物(3.85g、灰色固体)を得た。
MS (ESI pos.) m/z : 384([M+H]
+).
【0092】
(4)N−tert−ブチル−2−[2−(6−メトキシピリジン−2−イル)−6−[3−(モルホリン−4−イル)プロポキシ]−4−オキソピリド[2,3−d]ピリミジン−3(4H)−イル]アセトアミド(B−1−4)の合成
【0093】
【化17】
【0094】
実施例A−1(4)と同様の手法にて、実施例B−1(3)で得られた化合物B−1−3(1.80g)から表題化合物(1.31g、黄色アモルファス)を得た。
MS (ESI pos.) m/z : 511([M+H]
+).
1H-NMR (600 MHz, CDCl
3) δ (ppm) ; 1.24 (9 H, s), 2.01 - 2.09 (2 H, m), 2.48 (4 H, br. s.), 2.55 (2 H, t, J=7.0 Hz), 3.70 - 3.77 (4 H, m), 3.94 (3 H, s), 4.20 (2 H, t, J=6.2 Hz), 5.08 (2 H, s), 5.39 (1 H, s), 6.87 (1 H, d, J=8.3 Hz), 7.67 - 7.71 (1 H, m), 7.72 - 7.77 (1 H, m), 7.96 (1 H, d, J=3.3 Hz), 8.73 (1 H, d, J=3.3 Hz).
【0095】
(5)N−tert−ブチル−2−[2−(6−ヒドロキシピリジン−2−イル)−6−[3−(モルホリン−4−イル)プロポキシ]−4−オキソピリド[2,3−d]ピリミジン−3(4H)−イル]アセトアミド(プレカーサーB)の合成
【0096】
【化18】
【0097】
実施例B−1(4)で得られた化合物B−1−4(700mg)、ヨウ化ナトリウム(1.44g)をアセトニトリル(20mL)に懸濁し、クロロトリメチルシラン(1.21mL)を加えた。15分間室温で攪拌後、外温85℃で1時間攪拌した。反応液を放冷後、氷冷下で水(20mL)を加えた後、飽和NaHCO
3水溶液(100mL)及びCHCl
3(100mL)を加え分液後、有機層を飽和食塩水(100mL)で洗浄した。水層をCHCl
3(100mL)で3回抽出し、有機層を合わせてNa
2SO
4乾燥後、乾燥剤を濾別し、溶媒を減圧下留去した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(SNAP Cartridge HP-Sphere、移動相:CHCl
3/MeOH=98/2〜85/15;v/v)にて精製した。得られた粗精製物にEtOAc(6mL)及びn−ヘキサン(3mL)を加え、析出物をろ取、乾燥し、表題化合物(290mg、淡褐色アモルファス)を得た。
MS (ESI pos.) m/z : 497([M+H]
+).
1H-NMR (600 MHz, CDCl
3) δ (ppm) ; 1.41 (9 H, s), 1.99 - 2.09 (2 H, m), 2.48 (4 H, br. s.), 2.55 (2 H, t, J=6.8 Hz), 3.69 - 3.76 (4 H, m), 4.20 (2 H, t, J=6.2 Hz), 4.61 (2 H, s), 6.09 (1 H, s), 6.73 (1 H, d, J=8.3 Hz), 6.96 (1 H, d, J=6.6 Hz), 7.48 - 7.54 (1 H, m), 7.87 - 7.93 (1 H, m), 8.74 (1 H, d, J=3.3 Hz), 10.54 - 11.09 (1 H, m).
【0098】
(6)N−tert−ブチル−2−[2−(6−
11C−メチルオキシピリジン−2−イル)−6−[3−(モルホリン−4−イル)プロポキシ]−4−オキソピリド[2,3−d]ピリミジン−3(4H)−イル]アセトアミド(B−1)の合成
【0099】
【化19】
【0100】
(方法1)
実施例B−1−(5)で得られたプレカーサーB (1.0 mg)と炭酸セシウム(10.0 mg)をジメチルスルホキシド(300 μL)に懸濁し、35.5 GBqの[
11C]CO
2から誘導した[
11C]CH
3Iを室温にて吹き込んだ。次いで100℃にて3分間加熱した。反応物を放冷後、溶媒 (50 mmol/L リン酸水溶液:アセトニトリル=4:1) を1 ml加え、HPLCを用いて精製した。HPLCカラムはX-Terra C18 (250×10 mm)を用い、移動相は50 mmol/Lリン酸水溶液とアセトニトリルの体積比が4:1である溶媒を用い、流速は4 ml/minで行った。11分から12分に溶出したフラクションを25% アスコルビン酸 (100 μL)とTween 80/エタノール混合溶媒 (100 μL)を加えたなすフラスコに分取した後、減圧濃縮を行った。次いで0.5 mMリン酸ナトリウム補正液(1 ml)と注射用水(2 ml)の混合溶液にて再溶解を行い、0.81 GBqの表題化合物を含む溶液を得た。分析HPLCにて当該標識体の保持時間と非標識体の保持時間が同等であることを確認した。HPLCカラムはX-Terra C18 (150×4.6 mm)を用い、移動相は50 mmol/Lリン酸水溶液とアセトニトリルの体積比が4:1である溶媒を用い、流速は1 ml/minで行った。
(方法2)
実施例B−1−(5)で得られたプレカーサーB (1.0 mg)と炭酸カリウム(10.3 mg)をジメチルホルムアミド(300 μL)に懸濁し、19.2 GBqの[
11C]CO
2から誘導した[
11C]CH
3Iを室温にて吹き込んだ。次いで100℃にて3分間加熱した。反応物を放冷後、溶媒 (50 mmol/L リン酸水溶液:アセトニトリル=4:1) を1 ml加え、HPLCを用いて精製した。HPLCカラムはSunfire C18 (250×10 mm)を用い、移動相は50 mmol/Lリン酸水溶液とアセトニトリルの体積比が4:1である溶媒を用い、流速は5 ml/minで行った。10分から12分に溶出したフラクションを25% アスコルビン酸 (100 μL)とTween 80/エタノール混合溶媒 (100 μL)を加えたなすフラスコに分取した後、減圧濃縮を行った。次いで0.5 mMリン酸ナトリウム補正液(1 ml)と注射用水(2 ml)の混合溶液にて再溶解を行い、1.91 GBqの表題化合物を含む溶液を得た。分析HPLCにて当該標識体の保持時間と非標識体の保持時間が同等であることを確認した。HPLCカラムはX-Terra C18 (150×4.6 mm)を用い、移動相は50 mmol/Lリン酸水溶液とアセトニトリルの体積比が4:1である溶媒を用い、流速は1 ml/minで行った。
【0101】
試験例1
・V1b受容体結合試験
ヒトV1b受容体を一過性に発現させた293FT細胞を回収し、15mmol/L トリス塩酸緩衝液(pH7.4、2mmol/L 塩化マグネシウム、0.3mmol/L エチレンジアミン四酢酸、1mmol/L グリコールエーテルジアミン四酢酸を含む)中でホモジナイズした。得られたホモジネートを50,000×g、4℃で20分間遠心分離し、沈殿物を75mmol/L トリス塩酸緩衝液(pH7.4、12.5mmol/L 塩化マグネシウム、0.3mmol/L エチレンジアミン四酢酸、1mmol/L グリコールエーテルジアミン四酢酸、250mmol/L ショ糖を含む)に再懸濁して粗膜標品とし、結合試験実施前まで−80℃にて保存した。結合試験の際は、この粗膜標品を50mmol/L トリス塩酸緩衝液(pH7.4、10mmol/L 塩化マグネシウム、0.1% ウシ血清アルブミンを含む)にて希釈し、各被検化合物、及び[
3H]AVP(最終濃度0.4〜1nmol/L)と混合し、室温で60分間インキュベーションした。被検化合物はDMSOにて段階的に希釈し、混合時の被検化合物の最終濃度は、0.01nmol/L〜1μmol/Lである。インキュベーション後、混合溶液を0.3% ポリエチレンイミンを浸透させたGF/Cフィルターへと吸引濾過した。このGF/Cフィルターを乾燥させてシンチレーターを加えた後、トップカウント(パーキンエルマー社)を用いてフィルター上に残存する放射能を測定した。10μmol/Lの未標識AVP存在下での放射能を0%とし、未標識AVP非存在下での放射能を100%とした。各濃度の被検化合物存在下での放射能より用量反応曲線を作成し、被検化合物の50%阻害濃度(IC
50値)を算出した。化合物A−1−4及びB−1−4のIC
50値を表1に示す。
【0102】
【表1】
【0103】
試験例2
・PETイメージング
方法
PET撮像には雄性アカゲザルを用いた。サルはイソフルラン(1.5% v/v)によって持続的に麻酔し、伏在静脈に放射性標識化合物および薬液投与のための留置針を設置した。PET撮像は小動物用PET Focus 220 (Siemens)を使用し、イソフルラン麻酔下のサルを同機器に測定用の姿勢にて固定した。PET撮像中は、動物を保温マットにて覆い体温の維持を行い、パルスオキシメータで状態を管理した。
【0104】
放射性標識化合物A−1(388 MBq/サル個体)を静脈内投与し、投与直後から90分間のPET撮像を行った。撮像はリストモードで実施し、0.5 mm Hanningフィルターを用いて画像再構成を行った。得られたPETイメージデータは、PMOD software (PMOD Technology)を使用し、放射性標識化合物分布の三次元マップの構築、および下垂体に設定したregion of interest(ROI)での放射能濃度の時間変化の解析に用いた。
【0105】
放射性標識化合物A−1の下垂体での放射能集積の低下を確認するため、同じ個体のサルを使用し、非標識化合物A−1―4を前投与(10 mg/kg、伏在静脈より投与)し、直後に放射性標識化合物A−1(352 MBq/サル個体)を投与し、放射性標識化合物投与直後から90分間のPET撮像を行った(Blocking試験)。
【0106】
放射性標識化合物B−1(341 MBq/サル個体)を静脈内投与し、投与直後から90分までの間のPET撮像を行った。また、下垂体での放射能集積の低下は、非標識化合物B−1―4を前投与(10 mg/kg、伏在静脈より投与)し、直後に放射性標識化合物B−1(303 MBq/サル個体)を投与し、放射性標識化合物投与直後から90分間のPET撮像を行った。PET撮像、画像再構成およびPETイメージデータの解析は、放射性標識化合物A−1と同様の方法を用いた。
【0107】
試験結果
試験結果を
図1及び2に示す。
【0108】
図1に示されている通り、放射性標識化合物A−1を使用した試験において、放射性標識化合物A−1の投与直後より、V1b受容体の高い発現を認める下垂体において放射能濃度の上昇を確認した。下垂体への放射能の取り込みは投与2分後にピークに達し、そのピークの取り込み量は0.11%Injected dose (ID)/mLであった。ピークに達した後は徐々にその放射能は低下し、投与90分後での取り込み量は0.044%ID/mLであった。下垂体以外の頭部内の組織において、下垂体と同様の放射能の取り込みは認められなかった。
【0109】
非標識化合物A−1を前投与することにより、下垂体での放射能取り込みは、投与1分後でピークに達し、そのピーク値の取り込み量は0.085%ID/mLであった。ピークに達した後、放射能は低下し、投与90分後での取り込み量は0.012%ID/mLであった。放射性標識化合物A−1単独投与での試験結果と比較し、下垂体での放射能の取り込みは低下した。
【0110】
図2に示されている通り、放射性標識化合物B−1を使用した試験において、放射性標識化合物B−1の投与直後より下垂体において放射能濃度の上昇を確認した。下垂体への放射能の取り込みは投与2分後にピークに達し、そのピークの取り込み量は0.13%Injected dose (ID)/mLであった。ピークに達した後は徐々にその放射能は低下し、投与90分後での取り込み量は0.068%ID/mLであった。下垂体以外の頭部内の組織において、下垂体と同様の放射能の取り込みは認められなかった。
【0111】
非標識化合物B−1−4を前投与することにより、下垂体での放射能取り込みは、投与2分後でピークに達し、そのピーク値の取り込み量は0.078%ID/mLであった。ピークに達した後、放射能は低下し、投与90分後での取り込み量は0.008%ID/mLであった。放射性標識化合物B−1単独投与での試験結果と比較し、下垂体での放射能の取り込みは低下した。
【0112】
同じ個体のサル脳の核磁気共鳴画像と重ね合わせた放射性標識化合物A−1投与30から90分の間のPET加算画像を
図1に示す。(a) 放射性標識化合物A−1のみ投与したサル(冠状断面図)、(b) 放射性標識化合物A−1のみ投与したサル(矢状断面図)、(c) 非標識化合物A−1−4を前投与後、放射性標識化合物A−1を投与したサル(冠状断面図)、(d) 非標識化合物A−1−4を前投与後、放射性標識化合物A−1を投与したサル(矢状断面図)。同じ個体のサル脳の核磁気共鳴画像と重ね合わせた放射性標識化合物B−1投与30から90分の間のPET加算画像を
図2に示す。(a) 放射性標識化合物B−1のみ投与したサル(冠状断面図)、(b) 放射性標識化合物B−1のみ投与したサル(矢状断面図)、(c) 非標識化合物B−1−4を前投与後、放射性標識化合物B−1を投与したサル(冠状断面図)、(d) 非標識化合物B−1−4を前投与後、放射性標識化合物B−1を投与したサル(矢状断面図)。各図中の右上埋め込み図は矢印部分(下垂体に相当)の拡大図。