特許第6376383号(P6376383)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 信越ポリマー株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6376383-基板収納容器 図000002
  • 特許6376383-基板収納容器 図000003
  • 特許6376383-基板収納容器 図000004
  • 特許6376383-基板収納容器 図000005
  • 特許6376383-基板収納容器 図000006
  • 特許6376383-基板収納容器 図000007
  • 特許6376383-基板収納容器 図000008
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6376383
(24)【登録日】2018年8月3日
(45)【発行日】2018年8月22日
(54)【発明の名称】基板収納容器
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/673 20060101AFI20180813BHJP
   B65D 85/30 20060101ALI20180813BHJP
【FI】
   H01L21/68 T
   B65D85/30 500
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-161530(P2014-161530)
(22)【出願日】2014年8月7日
(65)【公開番号】特開2016-39248(P2016-39248A)
(43)【公開日】2016年3月22日
【審査請求日】2017年8月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】000190116
【氏名又は名称】信越ポリマー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100144048
【弁理士】
【氏名又は名称】坂本 智弘
(74)【代理人】
【識別番号】100186679
【弁理士】
【氏名又は名称】矢田 歩
(74)【代理人】
【識別番号】100189186
【弁理士】
【氏名又は名称】大石 敏弘
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 晃裕
(72)【発明者】
【氏名】藤本 康大
【審査官】 杢 哲次
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−251422(JP,A)
【文献】 特開2010−270823(JP,A)
【文献】 特開2003−128180(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/673
B65D 85/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口を有する容器本体と、前記開口を塞ぐ蓋体と、前記容器本体の内側壁に設けられ基板を支持する一対の支持部材と、気体導入用の開閉弁と、気体排気用の開閉弁とを備えた基板収納容器であって、
前記一対の支持部材は、それぞれ内部に中空で前記気体導入用の開閉弁に接続された通気部と、前記支持部材の外表部の少なくとも一部を形成する発泡部材とを備え、
前記気体導入用の開閉弁から注入される気体が、前記支持部材の前記通気部と前記発泡部材とを介して、前記基板収納容器内部の気体と置換されることを特徴とする基板収納容器。
【請求項2】
前記支持部材が、下部に前記気体導入用の開閉弁と接続される接続口を備えることを特徴とする、請求項1記載の基板収納容器。
【請求項3】
前記支持部材全体が、前記発泡部材から形成されていることを特徴とする、請求項1または2に記載の基板収納容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウェーハやマスクガラスなどの基板を収納し、基板の保管、運搬などに使用される基板収納容器に関し、特に基板収納容器内部の気体を置換可能な基板収納容器に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体ウェーハやマスクガラスなどを収納する基板収納容器は、開口部を有する容器本体と開口部を密閉する蓋体とからなり、容器本体の対向する内側壁に形成された支持部材に複数枚の基板を収納する。基板収納容器は内部を密閉状態とされ、基板の保管や搬送に使用されている。従来このような基板収納容器では、容器内部の気体によって基板が酸化されたり汚染されたりすることがないよう、容器本体に気体の導入口と排気口を設け、容器内を窒素、不活性ガス、乾燥空気などの置換ガスで置換することが行われている。
【0003】
特許文献1には、容器の底面にガス導入弁とガス排気弁を設け、容器内への置換ガスの導入と容器内部の排気を行う基板収納容器が開示されている。また、特許文献2には置換ガスの吹出孔を備えた柱状のノズル部材を容器内部に取り付け、収納した基板の両面に柱状のノズル部材から置換ガスを吹き付けることにより、容器内の気流の流れを円滑にした基板収納容器が開示されている。
【0004】
しかし、従来の基板収納容器では、収納された基板によって容器内部が細かな空間に仕切られるため、容器内部の気体を完全に置換するには長時間を要する。また、気体の澱み部分に置換されずに残留する気体により、基板の表面が酸化されたり汚染されたりするという問題がある。
【0005】
特許文献2のように柱状のノズル部材を容器内に設け、基板間にノズル部材から置換ガスを流す構造は容器内の気流の流れを円滑にするが、基板収納容器の部品点数が増加する上に、基板との干渉を考慮してノズル部材を配置しなければならず、容器本体の構造が複雑になり小型化が難しくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第4201583号
【特許文献2】特許第3960787号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明は容器内の気体の置換を効率良く均一に行うことができ、構造が簡単で小型化が可能な基板収納容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の基板収納容器は、開口を有する容器本体と、前記開口を塞ぐ蓋体と、前記容器本体の内側壁に設けられ基板を支持する一対の支持部材と、気体導入用の開閉弁と、気体排気用の開閉弁とを備えた基板収納容器であって、前記支持部材は、内部に中空で前記気体導入用の開閉弁に接続された通気部と、前記支持部材の外表部の少なくとも一部を構成する発泡部材とを備え、前記気体導入用の開閉弁から注入される気体が、前記支持部材の前記通気部と前記発泡部材とを介して、前記基板収納容器内部の気体と置換されることを特徴とする。
また、前記支持部材が、下部に前記気体導入用の開閉弁と接続される接続口を備えることを特徴とする。
さらに、前記支持部材全体が、前記発泡部材から形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、容器内の気体の置換を効率良く均一に行うことができ、構造が簡単で小型化が可能な基板収納容器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施形態に係る基板収納容器の斜視図である。
図2】本発明の実施形態に係る基板収納容器の底面図である。
図3】実施例1の支持部材の正面図である。
図4】実施例1の支持部材の上面図である。
図5図4に示された支持部材のI−I断面図である。
図6】実施例2の支持部材の正面図である。
図7】実施例2の支持部材の上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の一実施形態を添付図面に基づいて説明する。図1は本発明の実施形態の基板収納容器の斜視図であり、図2は容器本体の底面に設けられた開閉弁の配置を示す図である。
【0012】
図1に示す本発明の実施形態の基板収納容器1は、容器本体2の前面に開口部4を有し複数の基板を水平にして垂直方向に並べて収納する容器であって、容器本体2と開口部4を塞ぐ蓋体11とからなる。容器本体2には、その対向する内側壁に一対の支持部材3が設けられ、支持部材3には基板(図1では図示せず)の周縁部を水平に保持する支持部が、垂直方向に一定間隔で形成されている。蓋体11の内面には、基板の端縁部を押圧保持する押さえ部材12が取り付けられる。
【0013】
容器本体2の天井にはロボティックハンドル7が着脱自在に装着され、このハンドル7が自動の天井搬送機に保持され、基板収納容器は工程内及び工程間を搬送される。さらに、容器本体2には、基板収納容器を基板の加工装置に位置決めするための位置決め部材、把持するためのグリップなどを設けることができる。
蓋体11の周壁には容器本体2との間を密閉するリング形状のシール部材が取り付けられ、容器本体2と蓋体11とを嵌合させて係止機構により閉鎖することにより、開口部4は密閉される。
【0014】
容器本体2の底面には複数の貫通孔6が形成され、それぞれの貫通孔に開閉弁5が設けられる(図1では1つの開閉弁5のみ図示する。)。図2に示すように、容器本体の奥側の貫通孔6には気体導入用の開閉弁5aが、また開口側の貫通孔6には気体排気用の開閉弁5bが設けられ、気体導入用の開閉弁5aから置換ガスを注入し、気体排気用の開閉弁5bから内部の気体を排気することにより、基板収納容器内部の気体が置換可能となっている。置換が完了した後、気体導入用および気体排気用の開閉弁は閉じられ、収納されている基板は置換ガス雰囲気中で保管される。気体導入用および気体排気用の開閉弁には、塵挨除去用フィルタ、各種ケミカルフィルタ(活性炭、アニオン、カチオン)などを設けることができる。
【0015】
容器本体2と蓋体11は、例えばポリカーボネート、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルイミド、ポリブチレンテレフタレート、ポリアセタール、液晶ポリマー、シクロオレフィンポリマーなどの合成樹脂から形成することができる。また、これらの樹脂に、カーボンパウダー、カーボン繊維、カーボンナノチューブなどを添加して、導電性を付与することもできる。
【0016】
図3〜5に本発明の実施例1における支持部材3の構造を示す。図3は容器本体の対向する内側壁に設けられた一対の支持部材3の一方を、容器の内側から見た正面図であり、図3において左側が容器本体2の開口部4となる。図4は対向して配置された一対の支持部材3を上面から見た図であり、図5図4に示した支持部材3のI-I断面図である。
【0017】
支持部材3は基部3aと、この基部3aから容器の内側に突出する複数の開口側支持部3bおよび奥側支持部3cとから構成される。開口側支持部3bと奥側支持部3cは基部3aの垂直方向に一定間隔で設けられ、基板は開口側支持部3bと奥側支持部3cに載置され水平に支持される。
【0018】
実施例1では図3、4に示すように、基部3aの奥側支持部3cが配置される方向に沿った部分が発泡部材8で形成されている。発泡部材の表面8aは基部3aの表面に露出し基部3aの外表部の一部となっている。基部3aの内部には、図5に示すように中空の通気部9が形成されている。通気部9は支持部材3の下部側に設けられた接続口10を介して気体導入用の開閉弁5aに接続される。通気部に接する発泡部材8の内部は連泡した網目状の空間となっており、気体は通気部9から発泡部材8を通って基板収納容器内に流れることができる。なお、発泡部材は、成形時に連泡するように形成しても良いし、成形後に発泡部が連通するように穿孔処理や押圧処理、あるいは熱処理等を施して用いても良い。
【0019】
本発明における発泡部材8は、内部に気体流路となる網目状の空間を形成した多孔質部材であり、例えば熱可塑性樹脂を発泡成形することで作製することができる。熱可塑性樹脂としては、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリカーボネート、エチレンαオレフィン共重合体、エチレン‐環状オレフィン共重合体などが使用できる。
発泡部材8を設けた支持部材3は、予め発泡成形しておいた発泡部材8を金型内に配置して支持部材3を成形するインサート成型により製造できる。
支持部材3は、係止構造により容器本体2へ着脱可能に取り付けることも可能であるが、インサート成型などによって容器本体2と一体化することもできる。
【0020】
次に、本発明の基板収納容器内部の気体の置換について説明する。気体の置換は容器本体2に設けられた気体導入用の開閉弁5aに、ドライクリーンエアーや窒素などの不活性な置換ガスの供給源に連通したガス注入口を接続し、置換ガスを基板収納容器の内部に供給して行われる。気体導入用の開閉弁5aから注入された置換ガスは、中空の通気部9から発泡部材8の内部を流れて発泡部材の表面8aに達し容器内に放出される。
【0021】
図3〜5に示す実施例1では、奥側支持部3cの上下にある発泡部材の表面8aから置換ガスが放出され、置換ガスは支持部上に整列して載置されている基板間に充満しながら開口部4の方向に広がる。一方、容器本体2の開口部4側に設けられた気体排気用の開閉弁5bからは、容器内部の気体が排気され置換が行われる。容器内部の気体が置換されたら、開閉弁5a、5bが閉じられる。
【0022】
実施例1の基板収納容器では、発泡部材の表面8aから放出される置換ガスは、収納された基板の上下両面から拡散するため、多数の基板によって細かく区切られた容器内部の隅々まで、澱み無く流れ効率よく置換ができる。
また、容器内に別途ノズル部材などを配置する必要がないため、基板収納容器の小型化が図れる。
【0023】
さらに、気体導入用の開閉弁5aから不活性ガスを常時供給し、気体排気用の開閉弁5bから容器内部の排気を続ければ、奥側支持部3cの上下に隣接する発泡部材の表面8aから容器に収納した基板表面に、不活性ガスを常に吹き付け続けることができる。不活性ガスが吹き出す発泡部材の表面8aは基板表面に近接しており、不活性ガスの純度を低下させることなく基板に吹き付けられるため、保管中に発生する揮発性ガスによる基板汚染などを防止できる。
【0024】
図6、7は本発明の実施例2における支持部材3を示すものである。実施例2は図6に示すように支持部材3の外表部を形成する発泡部材の表面8aが、基部3aの開口側にも設けられている点が実施例1とは異なる。実施例2では置換ガスが開口側支持部3bと奥側支持部3cに隣接する発泡部材の表面8aから、基板の上下両面に放出されるため気体の置換がより短時間で行われる。
さらに、実施例3として支持部材全体を発泡材料で形成し、置換ガスを支持部材全面から放出する構造とすることもできる。実施例3では支持部材全面から置換ガスが放出されるため、多量の置換ガスを供給でき置換効率が向上する。また、発泡材料のみで支持部材が形成されるため、発泡部材を支持部材とインサート成形することなどが不要となり支持部材の製造工程を簡略化することができる。
【0025】
以上、本発明を実施の形態に基づき説明したが、本発明は実施の形態例に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更が可能である。
例えば、実施の形態では支持部材3に開口側支持部3bと奥側支持部3cとを設けたが、基板の形状や重さに応じて中間支持部を設ける、または一体の支持部とするなど形状変更することができる。また、発泡部材の材料として熱可塑性樹脂を発泡成形する例を示したが、多孔質体を形成できるのであれば、発泡部材の材料、製造方法は特に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0026】
1 基板収納容器
2 容器本体
3 支持部材
3a 基部
3b 開口側支持部
3c 奥側支持部
5a 気体導入用の開閉弁
5b 気体排気用の開閉弁
8 発泡部材
8a 発泡部材の表面
9 通気部
10 接続口
11 蓋体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7