(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
請求項1または2において、前記保持器は、前記複数のポケットを周方向に並べて配置した環状の本体と、前記本体の径方向に関して各前記ポケットの外方で前記本体の外周に設けられた補強突起と、を含むステアリング装置。
請求項1において、前記保持器は、前記複数のポケットが周方向に並べて配置された環状の本体と、前記本体の外周に設けられ前記第2部材に対する前記保持器の回転が規制されるように前記第2部材の係合溝に係合した係合突起と、を含み、
前記周方向に関する前記係合突起の幅である周方向幅が、前記係合突起の突起高さよりも大きくされているステアリング装置。
請求項2において、前記保持器は、前記複数のポケットが周方向に並べて配置された環状の本体と、前記本体の外周に設けられ前記第1部材と一体回転するように前記第1部材の係合溝に係合した係合突起と、を含み、
前記周方向に関する前記係合突起の幅である周方向幅が、前記係合突起の突起高さよりも大きくされているステアリング装置。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下には、図面を参照して、本発明の実施形態を具体的に説明する。
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態に係る位置調整式のステアリング装置1の概略構成を示す模式図である。
図1を参照して、ステアリング装置1は、ステアリングホイール等の操舵部材2と、操舵部材2の操舵に連動して転舵輪(図示せず)を転舵する転舵機構3とを備えている。転舵機構3として、例えばラックアンドピニオン機構が用いられている。
【0017】
操舵部材2と転舵機構3とは、操舵軸としてのステアリングシャフト4および中間軸5等を介して機械的に連結されている。操舵部材2の回転は、ステアリングシャフト4および中間軸5等を介して転舵機構3に伝達される。また、転舵機構3に伝達された回転は、図示しないラック軸の軸方向移動に変換される。これにより、転舵輪が転舵される。
ステアリングシャフト4は、例えばスプライン嵌合やセレーション嵌合によって相対摺動可能に嵌合された筒状のアッパーシャフト6およびロアーシャフト7を有している。操舵部材2は、アッパーシャフト6の一端に連結されている。また、ステアリングシャフト4は、その軸方向X1に伸縮可能である。ステアリングシャフト4は、筒状のステアリングコラム8内に挿通されており、複数の軸受9,10を介してステアリングコラム8によって回転可能に支持されている。
【0018】
ステアリングコラム8は、アッパーチューブとしてのアウターチューブ11と、ロアーチューブとしてのインナーチューブ12とを有している。両チューブ11,12は、軸方向に相対摺動可能に嵌合されている。これにより、ステアリングコラム8は、その軸方向に伸縮可能となり、後述するテレスコピック調整が可能となっている。
アウターチューブ11は、軸受9を介してアッパーシャフト6を回転可能に支持している。また、アウターチューブ11は、軸受9を介してステアリングシャフト4の軸方向X1に同行移動可能にアッパーシャフト6に連結されている。
【0019】
また、インナーチューブ12の外周には、ロアーコラムブラケット13が固定されている。ロアーコラムブラケット13は、車体14に固定されたロアー固定ブラケット15に、チルト中心軸16を介して回動可能に支持されている。ステアリングコラム8およびステアリングシャフト4は、チルト中心軸16の回りに回動可能である。
チルト中心軸16の回りに、ステアリングシャフト4およびステアリングコラム8を回動させることで、操舵部材2の高さ位置が調整可能である(いわゆるチルト調整)。また、ステアリングシャフト4およびステアリングコラム8を軸方向X1に伸縮させることで、操舵部材2の高さ位置および前後方向位置が調整可能である(いわゆるテレスコピック調整)。
【0020】
ステアリング装置1は、高さ調整された操舵部材2の位置を固定するべくチルトロックおよびテレスコロックを達成するための締付機構17を備えている。具体的には、アウターチューブ11には、可動ブラケットとしてのアッパーコラムブラケット18が固定されている。アッパーコラムブラケット18が、車体14に固定されたアッパー固定ブラケット19に、締付機構17によって連結されることで、チルトロックおよびテレスコロックが達成される。その結果、ステアリングコラム8の位置が車体14に対して固定されて操舵部材2の位置が固定される。
【0021】
また、締付機構17は、テレスコロックされた両チューブ11,12間のガタつきを抑制する機能を有している。具体的には、締付機構17は、操作レバー20の回転操作に伴って回転するスリーブ21と、スリーブ21の外周に同伴回転可能に設けられた、カム状突起からなる押圧部22とを備えている。操作レバー20の操作によってスリーブ21が回転することで、押圧部22がインナーチューブ12を押し上げる。これにより、インナーチューブ12がアウターチューブ11に径方向に押し付けられて、アウターチューブ11に対するインナーチューブ12の径方向のガタつきが抑制される。
【0022】
図2は、
図1におけるII−II線に沿うステアリング装置1の図解的な断面図である。
図2を参照して、アッパーコラムブラケット18は、上向きに開放する溝形の部材であり、左右対称に形成されている。すなわち、アッパーコラムブラケット18は、それぞれの一端がアウターチューブ11の外周に固定された一対のコラム側板23,24と、一対のコラム側板23,24の他端間を連結した連結板25とを備えている。
【0023】
アッパー固定ブラケット19は、下向きに開放する全体として溝形の部材であり、左右対称に形成されている。すなわち、アッパー固定ブラケット19は、左右方向に相対向する一対の固定側板26,27と、一対の固定側板26,27の上端同士を連結する連結板28と、この連結板28の上面に固定され概ね上記左右方向に延びる板状の取付ステー29とを含む。
【0024】
ステアリングシャフト4、ステアリングコラム8およびアッパーコラムブラケット18は、
図2において、アッパー固定ブラケット19の一対の固定側板26,27の間に配置されている。また、アッパー固定ブラケット19は、取付ステー29に連結された一対の取付体30を介して車体14に固定されている。
各取付体30と取付ステー29とは、それぞれ取付ステー29を上下方向に貫通する破断可能な連結部材としての樹脂製のピン31によって連結されており、各取付体30は、固定ボルト32によって車体14に固定されている。
【0025】
アッパー固定ブラケット19の各固定側板26,27の内側面に、アッパーコラムブラケット18の対応するコラム側板23,24の外側面が沿わされている。アッパーコラムブラケット18の一対のコラム側板23,24には、紙面と直交する方向(軸方向X1に相当)に延びる、締付軸挿通溝としての横長のテレスコ溝33が形成されている。アッパー固定ブラケット19の一対の固定側板26,27には、締付軸挿通溝としての縦長のチルト溝34が形成されている。
【0026】
締付機構17は、固定側板26,27のチルト溝34およびコラム側板23,24のテレスコ溝33に挿通された締付軸35と、締付軸35の一端35aに設けられた頭部351と一体回転可能に連結された操作レバー20とを備えている。
また、締付機構17は、締付軸35の他端35bに形成されたねじ部に螺合するナット36と、締付軸35の他端35bの近傍の軸部35cに嵌合しナット36と他方の固定側板27との間に介在する第1介在部材61および第2介在部材62とを備えている。
【0027】
また、締付機構17は、締付軸35の一端35aの近傍の軸部35cに軸方向移動不能に嵌合し操作レバー20と一体回転する第1部材37と、締付軸35の一端35aの近傍の軸部35cに相対回転可能に且つ軸方向移動可能に嵌合し固定側板26のチルト溝34によって回転規制された第2部材38とを備えている。
また、締付機構17は、第1部材37と第2部材38との間に介在する第3部材70と、第2部材38と第3部材70との間に介在する摩擦低減機構としてのスラストベアリング80と、カム機構40とを備えている。スラストベアリング80は、図示のようなスラストワッシャであってもよいし、また、スラスト玉軸受やスラストころ軸受であってもよい。
【0028】
図4に示すように、カム機構40は、第1部材37および第3部材70にそれぞれ設けられ互いに締付軸35の軸方向Y1に対向する軸方向対向面37a,70aと、第1部材37の軸方向対向面37aに形成されたカム面44とを備えている。また、カム機構40は、軸方向対向面37a,70a間を転動する複数の転動体としてのボール41と、ボール41を保持し第2部材38によって中心軸線C1の回りの回転が規制された保持器90とを含んでいる。
【0029】
操作レバー20は、締付軸35の中心軸線C1の回りに回転操作される。カム機構40は、操作レバー20の回転に伴う第1部材37の回転を第3部材70の軸方向移動に変換して各固定側板26,27を対応するコラム側板23,24に圧接する運動変換機構として機能する。
ここで、カム機構とは、カムの表面形状(本実施形態ではカム面44の形状に相当)に従って,従動部(本実施形態では第3部材70に相当)に所定の運動(本実施形態では締付軸35の軸方向Y1への直線運動)を与える機械的な連動機構である。
【0030】
図2に示すように、スリーブ21の内周21aには、締付軸35の軸方向Y1の中間部に設けられたスプライン39と係合するスプライン(図示せず)が設けられている。スリーブ21および締付軸35はスプライン結合されており、両者21,35は一体回転する。
スリーブ21の外周21bには、前述したようにカム状突起からなる押圧部22が設けられている。ロック時において、押圧部22は、スリーブ21の回転に伴って、アウターチューブ11に設けられた挿通孔11aを挿通して、インナーチューブ12の外周12aを押圧する。
【0031】
次いで、第1部材37の構成および機能を説明する。
図3に示すように、第1部材37は孔空き円板からなる。
図5に示すように、第1部材37の軸方向対向面37aには、それぞれボール41を保持する複数の円弧状の保持溝43が、周方向Z1に等間隔離隔して形成されている。
図5、
図5のVI−VI線に沿う断面図である
図6、および第1部材37の周方向断面図である
図7に示すように、第1部材37において、保持溝43の底に、周方向Z1に進むにしたがって軸方向Y1に起伏するカム面44が形成されている。
【0032】
図7に示すように、カム面44は、ロック時にボール41を保持するロック保持部44Rと、ロック解除時にボール41を保持する解除保持部44Kとを備えている。ロック保持部44Rと解除保持部44Kとは周方向Z1に離隔している。また、カム面44は、ロック保持部44Rと解除保持部44Kとを接続する斜面部44Sを備えている。
軸方向対向面37aからの深さに関して、解除保持部44Kは、ロック保持部44Rよりも深く形成されている。斜面部44Sは、ロック保持部44Rから解除保持部44Kへ向かうにしたがって、軸方向対向面37aからの深さが深くなるように傾斜している。
【0033】
図4および
図6に示すように、第1部材37の軸方向対向面37aの裏面には、例えば矩形の嵌合凸部45が設けられている。
図4に示すように、嵌合凸部45が操作レバー20の基端の嵌合孔46に嵌合されることで、第1部材37が操作レバー20に一体回転可能に連結されている。
図5に示すように、第1部材37の周縁部には、軸方向対向面37aから第2部材38側へ突出する複数の円弧状突起からなる第1ストッパ47が、周方向Z1に等間隔離隔して形成されている。各第1ストッパ47は、周方向Z1に対向する一対のストッパ面としての周方向端面47aを有している。
【0034】
第1部材37の第1ストッパ47において、
図16に示すように、保持器90の本体92の外周92aに対向する径方向対向面47bには、保持器90の本体92の外周92aの補強突起93に対して、第1部材37の回転を許容するための凹部47cが形成されている。
次いで、第2部材38の構成および機能を説明する。
【0035】
図4、
図8および
図8のIX−IXに沿う断面図である
図9に示すように、第2部材38は、固定側板26の外側面に沿う環状の締付面48aと締付面48aの反対側でスラストベアリング80を受ける平坦な環状の座面48bとを有する孔空き円板状の本体48を備えている。
また、第2部材38は、締付面48aに形成された筒状の嵌合凸部49と、座面48bの周縁から嵌合凸部49側の反対方向(第1部材37側)に立ち上がる周側壁50とを備えている。
【0036】
図4に示すように、第2部材38の嵌合凸部49は、アッパー固定ブラケット19の一方の固定側板26のチルト溝34およびアッパーコラムブラケット18の一方のコラム側板23のテレスコ溝33に、各溝34,33の延びる方向に沿って移動可能に嵌合されている。
嵌合凸部49は、固定側板26のチルト溝34に嵌合する部分に、例えば互いの間に二面幅を形成する一対の平坦面(図示せず)を設けている。嵌合凸部49がチルト溝34に係合することによって、第2部材38の回転が規制されている。
【0037】
図8および
図9に示すように、第2部材38の周側壁50の軸方向の端面には、周方向に等間隔に配置された複数の突起51が設けられている。各突起51には、保持器90の本体92の外周92aに設けられた対応する係合突起94(
図13参照)に係合する係合溝53が形成されている。
図16に示すように、保持器90の各係合突起94が、回転規制された第2部材38の対応する係合溝53に係合することにより、保持器90の中心軸線C1回りの回転が規制されている。
【0038】
第2部材38の各突起51は、第1部材37の第1ストッパ47と共同して第2部材38に対する第1部材37の回転量を規制する第2ストッパとして機能する。すなわち、概略図である
図15および
図16に示すように、第1ストッパ47と第2ストッパ(突起51)とは、周方向Z1の交互に配置されている。
第1ストッパ47の周方向端面47a(ストッパ面)と、その周方向端面47aに対向する、第2ストッパ(突起51)の周方向端面51a(ストッパ面)とが当接することにより、第2部材38に対する第1部材37の回転量の最大値が規制される。
【0039】
次いで、保持器90の構成および機能を説明する。
図13に示すように、保持器90は、例えばPOM(ポリアセタール樹脂)等の樹脂製の環状板である。保持器90は、それぞれ対応するボール41を転動可能に収容する複数のポケット91が周方向に並べて配置された環状の本体92を備える。
また、保持器90は、本体92の径方向に関して各ポケット91の外方で本体92の外周92aに設けられた補強突起93と、本体92の径方向に関して各ポケット91(欠如部に相当)外方を避けた位置で、本体92の外周92aに設けられた1または複数の係合突起94とを備える。
【0040】
補強突起93は、凸湾曲状に突出する形状をなしている。例えば、補強突起93は、ポケット91の周縁の一部のなす円弧と略相似の円弧状に突出する山形突起である。補強突起93によって、ポケット91の径方向外方において、径方向に関する樹脂の肉量(径方向幅Nに比例する量)が確保されている。
係合突起94は、
図15に示すように、第2部材38に対する保持器90の回転が規制されるように第2部材38の対応する突起51の係合溝53に係合する。
【0041】
係合突起94は、回転規制に寄与するときの強度を確保するために、
図13に示すように、周方向Z1に関する係合突起94の幅である周方向幅Wが、係合突起94の突起高さHよりも大きくされている(W>H)。係合突起94は、第2部材38の全ての係合溝53に対応して設けられていてもよいし、一部の係合溝53に対応して設けられていてもよい。
【0042】
次いで、第3部材70の構成および機能を説明する。
図10および
図10のXI−XI線に沿う断面図である
図11に示すように、第3部材70は、孔空き円板からなる。第3部材70は、軸方向に対向する一対の軸方向対向面70a,70b(軸方向端面に相当)を有している。
図4に示すように、一方の軸方向対向面70aが第1部材37の軸方向対向面37aに対向し、他方の軸方向対向面70bがスラストベアリング80と対向している。一方の軸方向対向面70aには、転動するボール41を周方向Z1(回転方向に相当)に案内する環状の案内溝71が形成されている。
【0043】
次いで、摩擦低減機構(スラストベアリング80)の構成および機能を説明する。
図4および
図12に示すように、摩擦低減機構としてのスラストベアリング80は、例えばスラストワッシャである。スラストベアリング80としてのスラストワッシャは、孔空き円板からなり、環状をなす一対の軸方向端面80a,80bを有している。
一方の軸方向端面80aが、第3部材70の他方の軸方向対向面70bに摺接する。他方の軸方向端面80bは、第2部材38の本体48の座面48bに摺接する。
【0044】
スラストベアリング80の少なくとも一方の軸方向端面80aが、例えばフッ素樹脂等の低摩擦材により形成されている。ただし、両軸方向端面80a,80bが低摩擦材により形成されていてもよい。低摩擦材は、所要の軸方向端面に被覆された被覆層を構成していてもよいし、スラストベアリング80の全体が低摩擦材により形成されていてもよい。 なお、スラストベアリング80として、スラストワッシャに代えて、図示しない、スラスト玉軸受やスラストころ軸受を用いることができる。例えば、保持器ところにより構成されるスラストニードルローラベアリングを用いてもよいし、軸方向に対向する一対の軌道板間に、保持器により保持されたころが介在するスラストニードルローラベアリングを用いてもよい。
【0045】
摩擦低減機構としてのスラストベアリング80は、第2部材38に対する第3部材70の回転抵抗を、ボール41の転がり抵抗により第3部材70が受ける反力よりも小さくするように機能する。
再び
図2を参照して、締付軸35の一端部に螺合されたナット36とアッパー固定ブラケット19の他方の固定側板27との間には、第1介在部材61と第2介在部材62とが介在している。第1介在部材61は、第1部分611と第2部分612とを有している。第1介在部材61の第1部分611は、アッパー固定ブラケット19の他方の固定側板27の外側面に沿わされている。
【0046】
第1介在部材61の第2部分612は、アッパー固定ブラケット19の他方の固定側板27のチルト溝34およびアッパーコラムブラケット18の他方のコラム側板24のテレスコ溝33に、各溝34,33の延びる方向に沿って移動可能に嵌合されている。また、第2部分612は、固定側板27のチルト溝34に嵌合する部分に、例えば二面幅を形成する一対の平坦面を設けられることで、チルト溝34によって、その回転が規制されている。
【0047】
第2介在部材62は、第1介在部材61の第1部分611とナット36との間に介在するスラストワッシャ63と、スラストワッシャ63と第1介在部材61の第1部分611との間に介在するスラスト用の針状ころ軸受64とを備えている。針状ころ軸受64を含む第2介在部材62の働きで、ナット36が締付軸35とともにスムーズに回転できるようになっている。
【0048】
操作レバー20の回転に伴って、第1部材37が第2部材38に対して回転することにより、カム機構40の働きにより、第2部材38が締付軸35の軸方向Y1に移動される。移動した第2部材38と第1介在部材61との間で、アッパー固定ブラケット19の一対の固定側板26,27が挟持されて締め付けられるので、アッパー固定ブラケット19の各固定側板26,27が、アッパーコラムブラケット18の対応するコラム側板23,24を締め付けて、チルトロックおよびテレスコロックが達成される。
【0049】
本実施形態によれば、カム機構40の保持器90が樹脂製であるので、保持器90のポケット91の縁部とボール41(転動体)との衝突による打音の発生を抑制することができる。
例えば、ロック解除時に,操作レバー20をロック解除方向に回転させると、模式図である
図17(a),(b)および(c)に順次に示すように、カム面44が形成された第1部材37が、回転方向K1へ移動する。
【0050】
一方、ポケット91にボール41を保持した保持器90は、回転規制された第2部材38によって回転規制されている。このため、第1部材37のカム面44が、ボール41を転動させながら、ボール41に対して回転方向K1へ移動する。
図17(c)に示すように、ボール41が、カム面44のロック保持部44Rから解除保持部44Kへ向かう斜面部44Sを転がり落ち始めるときに、ボール41が保持器90のポケット91の縁部91eと衝突する。このとき、保持器90が樹脂製であるので、衝突打音の発生が抑制される。
【0051】
第1部材37が回転方向K1に移動するとき、回転が規制された第2部材38によってスラストベアリング80を介して回転可能にスラスト支持された第3部材70は、
図17(a),(b)および(c)に順次に示すように、ボール41を転動させながら第1部材37の回転方向K1の反対方向K2に移動する。
また、摩擦低減機構としてのスラストベアリング80は、第2部材38に対する第3部材70の回転抵抗を、ボール41の転がり抵抗により第3部材70が受ける反力よりも小さくするように機能する。したがって、操作レバー20を回転させると、ボール41が、第1部材37および第3部材70に対して確実に転動する。その結果、操作レバー20の操作力が低減される。
【0052】
しかしながら、操作力が軽いと、特にロック解除時に、運転者による操作レバー20の操作速度が速くなる傾向にある。このため、保持器90のポケット91の縁部91eとボール41とが強く衝突する場合も想定され得る。このような場合にも、樹脂製の保持器90であれば、衝突打音を抑制することができる。
また、
図13に示すように、保持器90において、補強突起93が、ポケット91の径方向外方(本体92の径方向に関してポケット91の外方)で、径方向に関する樹脂の肉量(径方向幅Nに相当)を増加させることにより、樹脂製の保持器90の強度を確保することができる。
【0053】
また、第2部材38の係合溝53に係合して第2部材38に対して保持器90を回転規制する係合突起94が、その突起高さHよりも周方向幅Wを大きくしている。これにより、樹脂製の保持器90において、係合突起94の強度を確保することができる。
また、保持器90において、回転規制用の係合突起94が、欠如部であるポケット91の径方向外方(本体92の径方向に関してポケット91の外方)を避けた位置に設けられるので、係合突起94の強度低下が抑制される。
【0054】
仮に、保持器90の本体92に、欠如部である肉抜き孔(図示せず)を設ける場合には、その肉抜き孔は、係合突起94の径方向内方(本体92の径方向に関して係合突起94の内方)を避けた位置に配置される。
(第2実施形態)
次いで、
図18は本発明の第2実施形態を示している。
図18の第2実施形態が
図4の第1実施形態と主に異なるのは、下記である。すなわち、第1実施形態では、摩擦低減機構として、スラストベアリング80を用いている。これに対して、本第2実施形態では、摩擦低減機構として、第3部材70(の軸方向対向面70b)と、第2部材38(の本体48の座面48b)との間に介在する、潤滑剤LUBを用いている。潤滑剤LUBとしては、グリースの他、第3部材70(の軸方向対向面70b)と第2部材38(の本体48の座面48b)との少なくとも一方に固着された固体潤滑剤(例えばPTFE)を用いることができる。
【0055】
図18の第2実施形態の構成要素のうち、
図4の第1実施形態の構成要素と同じ構成要素には、
図4の第1実施形態の構成要素と同じ構成要素の参照符号と同じ参照符号を付してある。本第2実施形態においても、第1実施形態と同じ効果を奏することができる。
(第3実施形態)
次いで、
図19は本発明の第3実施形態を示している。
図19の第3実施形態が
図4の第1実施形態と主に異なるのは、下記である。すなわち、第1実施形態では、摩擦低減機構として、スラストベアリング80を用いている。これに対して、本第3実施形態では、摩擦低減機構として、第3部材70(の軸方向対向面70b)と、第2部材38(の本体48の座面48b)との何れか一方に被覆された例えばフッ素樹脂等の低摩擦材の被覆層CTLを用いている。図示していないが、第3部材70(の軸方向対向面70b)と、第2部材38(の本体48の座面48b)との双方に、低摩擦材の被覆層CTLを設けてもよい。
【0056】
図19の第3実施形態の構成要素のうち、
図4の第1実施形態の構成要素と同じ構成要素には、
図4の第1実施形態の構成要素と同じ構成要素の参照符号と同じ参照符号を付してある。本第3実施形態においても、第1実施形態と同じ効果を奏することができる。
(第4実施形態)
図20は、本発明の第4実施形態において第1部材37のカム面44の断面を示している。本第4実施形態では、ロック時に、ボール41が、カム面44の解除保持部44Kから斜面部44Sを経て、山の頂部44R1を乗り越えて、浅い谷となるロック保持部44R2に移動して保持される。これにより、ロック保持力が高められる。
【0057】
図20の第4実施形態の構成要素のうち、
図7の第1実施形態の構成要素と同じ構成要素には、
図7の第1実施形態の構成要素と同じ構成要素の参照符号と同じ参照符号を付してある。本第4実施形態においても、第1実施形態と同じ効果を奏することができる。
本発明は前記第2〜第4実施形態に限定されるものではなく、例えば、カム機構40によるロック時に、第1部材37と第2部材38との相対回転を規制する相対回転規制機構として、第1部材37および第2部材38の何れか一方に設けられた係合部(凸部または凹部)と、第1部材37および第2部材38の他方に設けられた被係合部(凹部または凸部)とを設けてもよい。
(第5実施形態)
また、
図21は、本発明の第5実施形態を示している。
図21の第5実施形態が、
図4の第1実施形態、
図18の第2実施形態、
図19の第3実施形態と主に異なるのは、下記である。
【0058】
すなわち、第1〜第3実施形態では、締付機構17において、カム機構40の保持器90が、回転不能な第2部材38によって回転規制されており、摩擦低減機構(スラストベアリング80、潤滑剤LUB、被覆層CTL)が、第2部材38と第3部材70との間に介在している。また、カム面44が、第1部材37に設けられている。
これに対して、
図21の第5実施形態では、締付機構17Pにおいて、カム機構40Pの樹脂製の保持器90が、操作レバー20と一体回転する第1部材37Pと一体回転し、スラストベアリング80P(摩擦低減機構)が、第1部材37Pと第3部材70Pとの間に介在している。また、カム面44P(
図7または
図20のカム面44と同じ形状)が、第2部材38Pの本体48Pの締付面48Pa側とは反対側の軸方向対向面48Pbに設けられている。
【0059】
具体的には、第1部材37Pの外周縁から嵌合凸部45側とは反対方向(第2部材38P側)に向けて延びる周側壁50Pが設けられている。保持器90の係合突起94が、周側壁50Pの係合溝53Pに係合している。第1部材37Pの平坦な環状の座面37Paがスラストベアリング80P(摩擦低減機構)を受けている。
図21の第5実施形態の構成要素において、
図4の第1実施形態の構成要素と同じ構成要素には、
図4の第1実施形態の構成要素の参照符号と同じ参照符号を付してある。
【0060】
本第5実施形態においても、保持器90とボール41との衝突打音の発生を抑制することができる。
また、ボール41(転動体)を保持した保持器90が、第1部材37Pと一体回転し、第2部材38Pのカム面44Pに対して、ボール41が転動する。また、スラストベアリング80P(摩擦低減機構)は、第1部材37Pに対する第3部材70Pの回転抵抗を、ボール41の転がり抵抗により第3部材70Pが受ける反力よりも小さくするように機能する。
【0061】
したがって、操作レバー20を回転させると、操作レバー20と共に第1部材37Pが回転する一方、第1部材37Pと第3部材70Pとの間に介在するスラストベアリング80P(摩擦低減機構)が第1部材37Pと第3部材70Pの相対回転を許容することで、ボール41を第1部材37Pおよび第3部材70Pに対して確実に転動させることができる。その結果、操作レバー20の操作力を低減することができる。
【0062】
本第5実施形態において、摩擦低減機構として、スラストベアリング80Pに代えて、潤滑剤や、低摩擦材の被覆層を用いてもよい。
第5実施形態において、例えば、カム機構40Pによるロック時に、第1部材37Pと第2部材38Pとの相対回転を規制する相対回転規制機構として、第1部材37Pおよび第2部材38Pの何れか一方に設けられた係合部(凸部または凹部)と、第1部材37Pおよび第2部材38Pの他方に設けられた被係合部(凹部または凸部)とを設けてもよい。
【0063】
また、各前記実施形態では、アッパーコラムブラケット18の一対のコラム側板23,24が、ステアリングコラム8のアッパー側のアウターチューブ11に固定されているが、これに限定されない。例えば、図示していないが、ステアリングコラムにおいて弾性的に縮径可能なスリット付きの例えばロアー側のアウターチューブに、スリット両側に配置された一対のコラム側板を単一の材料で一体に形成してもよい。この場合、一対の固定側板が、ステアリングコラムと一体に設けられた一対のコラム側板を締め付けることにより、チルトロックが達成される。また、アウターチューブが縮径されることにより、インナーチューブが伸縮方向にロックされてテレスコロックが達成される。
【0064】
その他、本発明において、転動体として、ボールに代えてころを用いる等、本発明は、特許請求の範囲記載の範囲内で種々の変更を施すことができる。