特許第6376412号(P6376412)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6376412
(24)【登録日】2018年8月3日
(45)【発行日】2018年8月22日
(54)【発明の名称】レーザシート光源装置
(51)【国際特許分類】
   H01S 5/022 20060101AFI20180813BHJP
   G01P 5/20 20060101ALI20180813BHJP
   G02B 3/06 20060101ALI20180813BHJP
【FI】
   H01S5/022
   G01P5/20
   G02B3/06
【請求項の数】5
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2016-26927(P2016-26927)
(22)【出願日】2016年2月16日
(65)【公開番号】特開2017-146406(P2017-146406A)
(43)【公開日】2017年8月24日
【審査請求日】2018年5月29日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000102212
【氏名又は名称】ウシオ電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】特許業務法人 ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森本 俊一
【審査官】 高椋 健司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−140528(JP,A)
【文献】 特開2015−125013(JP,A)
【文献】 特開2007−102121(JP,A)
【文献】 特開2011−180028(JP,A)
【文献】 米国特許第6088098(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01S 5/00−5/50
G01P 5/00−5/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ光を射出する複数のエミッタを含む半導体レーザアレイと、
前記レーザ光を、第一の方向からみたとき平行に進行し、且つ、前記第一の方向に直交する第二の方向からみたとき前記第一の方向に発散して進行する平行光に変換する第一のレンズと、
前記平行光が入射する入射面を含み、前記平行光の前記第一の方向における発散角を拡大する第二のレンズと、を有し、
前記第二のレンズは、前記入射面の少なくとも一部が、隣り合う前記エミッタからの前記平行光が重なり合う領域に位置するように配置されていることを特徴とするレーザシート光源装置。
【請求項2】
複数の前記エミッタは、前記第一の方向に並び、
前記第一のレンズは、前記レーザ光が入射する入射面と、前記平行光を射出する射出面と、を含み、
前記第一のレンズの前記入射面は、前記エミッタと対向し、
前記第二のレンズの前記入射面は、前記第一のレンズの前記射出面と対向し、
前記エミッタから前記第二のレンズまでの距離をZ、前記平行光の前記第二のレンズによる拡大前の発散角をθ、前記エミッタが並ぶ間隔をdとしたとき、下記の式、
(d/2)・{1/tan(θ/2)}<Z
を満たしていることを特徴とする請求項1に記載のレーザシート光源装置。
【請求項3】
前記エミッタの個数をN、前記第二のレンズの前記入射面の前記第一の方向における幅をLとしたとき、下記の式、
(N−1)・d+2・Z・tan(θ/2)<L
を満たしていることを特徴とする請求項2に記載のレーザシート光源装置。
【請求項4】
前記半導体レーザアレイは、前記第一の方向を遅軸方向とし、前記第二の方向を速軸方向とする端面発光型の半導体レーザアレイであり、
前記第一のレンズから射出された前記平行光が前記第二のレンズの前記入射面に入射するとき、前記平行光の前記遅軸方向の幅は、前記速軸方向の幅に比べて大きいことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のレーザシート光源装置。
【請求項5】
前記第二のレンズは、平凹シリンドリカルレンズ又は両凹シリンドリカルレンズであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のレーザシート光源装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザシート光源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、流体の流れや速度を計測する方法として、PIV(Particle Image Velocimetry)と呼ばれる技術が知られている。PIVとは、流体にトレーサ粒子と呼ばれる微小粒子を混入し、当該トレーサ粒子にシート状のレーザ光(以下、レーザシート)を照射して得られる散乱光を撮影することで、流体の流動を二次元的に計測する技術である。
【0003】
上記のPIVにおいて、従来、光源として高出力を得られる固体レーザやガスレーザが用いられていた。例えば特許文献1には、PIVの光源にNd:YAGレーザを使用することが記載されている。また特許文献2には、PIVの光源にアルゴンレーザを使用することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−085784号公報
【特許文献2】特開2010−117190号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、固体光源技術の進歩に伴い、PIVの光源として固体レーザやガスレーザに代わり半導体レーザを利用することが検討されてきている。特に、高出力を実現する観点から、レーザ光を射出するエミッタを複数備える半導体レーザアレイを利用することが検討されてきている。
【0006】
ところで、本発明者の鋭意研究によれば、PIVの光源に半導体レーザアレイを利用すると、レーザシートの幅が十分に拡がらず、多数のトレーサ粒子を照射することができないことが分かった。
【0007】
そのため、本発明者は、各エミッタからのレーザ光の発散角を拡大可能なレンズを用いて、レーザシートの幅を拡げることを検討した。すると、当該レンズの配置位置によっては、レーザシートの強度が均一とならず、バラつきが生じることが分かった。
【0008】
レーザシートの強度にバラつきが生じると、各トレーサ粒子が、異なる強度のレーザ光によって照射される虞がある。即ち、比較的高い強度のレーザ光によって照射されるトレーサ粒子や、比較的低い強度のレーザ光によって照射されるトレーサ粒子が混在する。その結果、トレーサ粒子からの散乱光の強度が変動し、計測結果の精度が低下するという問題があった。そのため、レーザシートの強度を不均一にすることなく、当該レーザシートの幅を拡大可能な技術が求められる。
【0009】
上記の要望は、PIVに限らず、半導体レーザアレイを光源に使用してレーザシートを形成する場合に共通する。例えば、レーザシートを照射する照明装置や、レーザシートを利用して物体の形状等を計測する計測装置においても同様に求められる。
【0010】
本発明は、半導体レーザアレイを光源に使用してレーザシートを形成する場合において、レーザシートの強度が不均一となることを抑制しつつ、当該レーザシートの幅を拡大可能な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明のレーザシート光源装置は、
レーザ光を射出する複数のエミッタを含む半導体レーザアレイと、
前記レーザ光を、第一の方向からみたとき平行に進行し、且つ、前記第一の方向に直交する第二の方向からみたとき前記第一の方向に発散して進行する平行光に変換する第一のレンズと、
前記平行光が入射する入射面を含み、前記平行光の前記第一の方向における発散角を拡大する第二のレンズと、を有し、
前記第二のレンズは、前記入射面の少なくとも一部が、隣り合う前記エミッタからの前記平行光が重なり合う領域に位置するように配置されていることを特徴とする。
【0012】
上記構成によれば、平行光の第一の方向における発散角が第二のレンズによって拡大される。これにより、平行光の第一の方向の幅を拡大できる結果、レーザシートの第一の方向の幅を拡大できる。また、上記構成によれば、隣り合うエミッタからの平行光は、互いに重なり合って第二のレンズに入射する。これにより、第二のレンズに入射する光の強度のバラつきを抑制できるため、第二のレンズから射出される光の強度のバラつきも抑制できる。以上のように、上記構成によれば、レーザシートの幅を拡大可能であるとともに、レーザシートの強度が不均一になることを抑制できる。
【0013】
また、上記構成において、
複数の前記エミッタは、前記第一の方向に並び、
前記第一のレンズは、前記レーザ光が入射する入射面と、前記平行光を射出する射出面と、を含み、
前記第一のレンズの前記入射面は、前記エミッタと対向し、
前記第二のレンズの前記入射面は、前記第一のレンズの前記射出面と対向し、
前記エミッタから前記第二のレンズまでの距離をZ、前記平行光の前記第二のレンズによる拡大前の発散角をθ、前記エミッタが並ぶ間隔をdとしたとき、下記の式、
(d/2)・{1/tan(θ/2)}<Z
を満たしているものとしても構わない。
【0014】
上記構成によれば、半導体レーザアレイ、第一のレンズ、及び第二のレンズが当該順番に並んで配置される場合に、隣り合うエミッタからの平行光を互いに重なり合った状態で第二のレンズに入射させることができる。
【0015】
また、上記構成において、
前記エミッタの個数をN、前記第二のレンズの前記入射面の前記第一の方向における幅をLとしたとき、下記の式、
(N−1)・d+2・Z・tan(θ/2)<L
を満たしているものとしても構わない。
【0016】
上記構成によれば、各エミッタからの全ての平行光が、第二のレンズの入射面に入射する。これにより、各エミッタからの全ての平行光がレーザシートを形成するため、レーザシートの出力低下を抑制できる。
【0017】
また、上記構成において、
前記半導体レーザアレイは、前記第一の方向を遅軸方向とし、前記第二の方向を速軸方向とする端面発光型の半導体レーザアレイであり、
前記第一のレンズから射出された前記平行光が前記第二のレンズの前記入射面に入射するとき、前記平行光の前記遅軸方向の幅は、前記速軸方向の幅に比べて大きいものとしても構わない。
【0018】
上記構成によれば、第一のレンズから射出された平行光は、遅軸方向の幅が速軸方向の幅に比べて大きい状態で第二のレンズの入射面に入射する。これにより、遅軸方向の幅が速軸方向の幅に比べて小さい状態で平行光が第二のレンズの入射面に入射する場合に比べ、平行光の遅軸方向の幅をより大きくことができる。その結果、遅軸方向の幅が十分大きいレーザシートを形成できる。
【0019】
また、上記構成において、前記第二のレンズは、平凹シリンドリカルレンズ又は両凹シリンドリカルレンズであるものとしても構わない。
【発明の効果】
【0020】
本発明のレーザシート光源装置によれば、半導体レーザアレイを光源に使用してレーザシートを形成する場合において、レーザシートの強度が不均一となることを抑制しつつ、当該レーザシートの幅を拡大することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】PIVの概要を説明するための模式図である。
図2】実施形態のレーザシート光源装置を説明するための模式図である。
図3】実施形態の半導体レーザアレイを示す模式的な斜視図である。
図4】実施形態のレーザシート光源装置を説明するための模式図である。
図5】実施形態の平行光の速軸方向の幅及び遅軸方向の幅について説明するための模式図である。
図6】実施形態の平凹シリンドリカルレンズを説明するための模式図である。
図7】参考例のレーザシート光源装置を説明するための模式図である。
図8】実施形態のレーザシート光源装置の作用効果を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
実施形態のレーザシート光源装置につき、図面を参照して説明する。なお、各図において図面の寸法比と実際の寸法比は必ずしも一致しない。
【0023】
[PIVの概要]
実施形態におけるレーザシート光源装置1は、PIV(Particle Image Velocimetry)の光源に使用される。まず初めに図1を参照してPIVの概要について説明する。
【0024】
図1に示すように、レーザシート光源装置1は、シート状のレーザ光LSを射出する。以下、シート状のレーザ光LSを「レーザシートLS」と呼ぶ。
【0025】
図1では、レーザシート光源装置1に含まれる半導体レーザアレイ(詳細は後述)の長手方向をy方向とし、短手方向をz方向とし、y方向及びz方向に直交する方向をx方向としている。なお、x方向が「第二の方向」に対応し、y方向が「第一の方向」に対応する。
【0026】
レーザシートLSは、x方向に一定の幅を有し、y方向に拡がりつつ進行する光である。なお図1では、レーザシートLSのx方向の幅の図示を省略している。一例として、レーザシートLSのx方向の幅は、1mmである。またレーザシートLSは、レーザシート光源装置1からz方向に少なくとも1〜2m離れた領域において、y方向に0.5m〜2m程度の幅を有している。すなわち、この領域においては、レーザシートLSのy方向の幅はx方向の幅と比較して極めて大きい。
【0027】
計測対象の流体には、トレーサ粒子12が混入されている。なお、図1では、流体自体は図示していないが、所定の流体内に多数のトレーサ粒子12が混入されており、この流体に対してレーザシートLSが照射された状況において、当該レーザシートLSが照射された領域内に位置しているトレーサ粒子12の一部のみが図示されている。トレーサ粒子12は、一例として、ポリスチレン等の樹脂からなる微小粒子、水及びオイルを噴霧化した微小な液滴、プラスチック製の微小粒子、煙等である。レーザシート光源装置1から射出されたレーザシートLSが、流体内のトレーサ粒子12を照射すると、散乱光が生成される。
【0028】
撮影装置14は、トレーサ粒子12からの散乱光を撮影し、撮影した画像を画像処理装置16に出力する。なお、一例として撮影装置14は1秒間に1000フレームの画像を撮影する。画像処理装置16は、入力された画像を基に、流体の速度を算出する。なお、流体の速度の算出方法は既知の技術であるため(例えば上記の特許文献1及び特許文献2を参照)、本明細書では説明を省略する。
【0029】
[構成]
続いて、レーザシート光源装置1の構成について説明する。図2は、レーザシート光源装置1を−x方向にみたときの模式図である。なお図2では、レーザシート光源装置1の内部の構成を示している。
【0030】
図2に示すように、レーザシート光源装置1は、半導体レーザアレイ3、平凸シリンドリカルレンズ5、及び平凹シリンドリカルレンズ7を有する。なお、平凸シリンドリカルレンズ5が「第一のレンズ」に対応し、平凹シリンドリカルレンズ7が「第二のレンズ」に対応する。以下、各構成について具体的に説明する。
【0031】
半導体レーザアレイ3は、端面発光型の半導体レーザ素子がアレイ状に複数配置されて構成されている。図3を参照して半導体レーザアレイ3について説明する。図3は、半導体レーザアレイ3の模式的な斜視図である。図3に示すように、半導体レーザアレイ3の長手方向がy方向に対応し、短手方向がz方向に対応している。
【0032】
半導体レーザアレイ3は、z方向に垂直な面(図面上はxy平面に対応する)である側面30を含み、この側面30からレーザ光を射出する。半導体レーザアレイ3は、側面30上にy方向に複数配置されたエミッタ31を含む。エミッタ31aは、y方向に関して側面30の中央に位置するエミッタである。エミッタ31bは、y方向に関して側面30の一方の端部(即ち、+y方向側の端部)に位置するエミッタであり、エミッタ31cは、y方向に関して側面30の他方の端部(即ち、−y方向側の端部)に位置するエミッタである。一例として、半導体レーザアレイ3は、200μmのピッチで並ぶ20個のエミッタ31を含む。なお図3では、便宜的に、5個のエミッタ31を図示している。
【0033】
以下では、エミッタ31aを「中央のエミッタ31a」と呼び、エミッタ31b、31cをそれぞれ「端部のエミッタ31b」、「端部のエミッタ31c」と呼ぶことがある。
【0034】
各エミッタ31は、x方向及びy方向の双方に拡がりつつ進行するレーザ光を射出する。図3に半導体レーザアレイ3の中央のエミッタ31aから射出されるレーザ光Lを示す。図3に示すように、レーザ光Lは、x方向及びy方向の双方に発散する。またレーザ光Lは、y方向に比べてx方向に大きく発散する。即ち、レーザ光Lのx方向における発散角は、y方向における発散角に比べて大きい。つまり、x方向が「速軸方向」に対応し、y方向が「遅軸方向」に対応する。他のエミッタ31から射出されるレーザ光も、レーザ光Lと同様に進行する。なお図3では、レーザ光Lのy方向における発散角を角度θとしている。
【0035】
本明細書において、「x方向における発散角」とは、x方向において最も外側を進行する光同士がなす角である。また「y方向における発散角」とは、y方向において最も外側を進行する光同士がなす角である。
【0036】
続いて、図2及び図4を参照して平凸シリンドリカルレンズ5について説明する。図4は、レーザシート光源装置1の半導体レーザアレイ3、平凸シリンドリカルレンズ5、及び平凹シリンドリカルレンズ7を−y方向にみたときの模式図である。
【0037】
図4に示すように、平凸シリンドリカルレンズ5は、各エミッタ31(図示略)から射出されたレーザ光Lが入射する入射面51、及び、光を射出する射出面53を含む。平凸シリンドリカルレンズ5は、入射面51が半導体レーザアレイ3の側面30と対向するように配置されている。
【0038】
平凸シリンドリカルレンズ5は、入射面51に入射したレーザ光Lを、x方向に一定の幅(一例として、1mm)を有するように変換する。換言すると、平凸シリンドリカルレンズ5は、レーザ光Lをx方向に発散しない光に変換する。
【0039】
一方、平凸シリンドリカルレンズ5は、図2に示すように、レーザ光Lのy方向の発散を保持する。即ち、平凸シリンドリカルレンズ5は、レーザ光Lのy方向における発散角θ(図3参照)を保持する。
【0040】
このように、平凸シリンドリカルレンズ5は、各エミッタ31から射出されるレーザ光Lを、x方向に一定の幅(一例として、1mm)を有し、y方向に拡がりつつ進行する光に変換する。即ち、平凸シリンドリカルレンズ5は、レーザ光Lを、y方向からみたとき平行に進行し、且つ、x方向からみたときy方向に発散して進行する平行光LPに変換する。
【0041】
本明細書において「平行光」とは、特定の方向(本実施形態では、x方向)に一定の幅を有し、当該特定の方向に直交する方向(本実施形態では、y方向)に拡がりつつ進行する光である。換言すると、「平行光」とは、特定の平面(本実施形態では、yz平面)に平行に進行する光である。
【0042】
なお、図2では便宜的に中央のエミッタ31a(図示略)、及び、端部のエミッタ31b、31c(図示略)から射出されるレーザ光L、及び当該レーザ光Lが変換された後の光である平行光LPを示している。また、図2において、端部のエミッタ31c(図示略)から射出されるレーザ光Lには右斜線を付し、当該レーザ光Lが変換された後の光である平行光LPには左斜線を付している。同様に、図4において、各エミッタ31から射出される各レーザ光Lには右斜線を付し、当該レーザ光Lが変換された後の光である各平行光LPには左斜線を付している。
【0043】
以下、エミッタ31から射出されたレーザ光Lが変換された後の光である平行光LPを、「エミッタ31からの平行光LP」と呼ぶことがある。
【0044】
続いて、図2及び図4を参照して平凹シリンドリカルレンズ7について説明する。
【0045】
図4に示すように、平凹シリンドリカルレンズ7は、平凸シリンドリカルレンズ5の射出面53から射出された平行光LPが入射する入射面71を含む。平凹シリンドリカルレンズ7は、入射面71が平凸シリンドリカルレンズ5の射出面53と対向するように配置されている。
【0046】
図4に示すように、平凹シリンドリカルレンズ7は、平凸シリンドリカルレンズ5の射出面53から射出された平行光LPのx方向の幅(一例として、1mm)を保持する。即ち平凹シリンドリカルレンズ7は、平行光LPのx方向における発散角(本実施形態では、0度)を拡大しない。
【0047】
一方、図2に示すように、平凹シリンドリカルレンズ7は、平行光LPのy方向における発散角θを、角度θよりも大きい角度θ’に変換する。即ち、平凹シリンドリカルレンズ7は、平行光LPのy方向における発散角を拡大する。なお、図2では、端部のエミッタ31cからの平行光LPについて、y方向における拡大前の発散角θ、及び、拡大後の発散角θ’を図示している。図示を省略するが、他のエミッタ31からの平行光LPについても同様に、y方向における発散角は、角度θから角度θ’に拡大される。
【0048】
続いて、図5を参照して、平行光LPの速軸方向(即ち、x方向)の幅、及び、遅軸方向(即ち、y方向)の幅について説明する。
【0049】
図5(a)は、エミッタ31からの平行光LPを、図4のA−A線で切断したときの模式的な断面図である。即ち図5(a)は、平行光LPが平凸シリンドリカルレンズ5から射出された直後における平行光LPの断面を示した図である。なお図5(a)では、1つのエミッタ31からの平行光LPの断面を示している。
【0050】
図5(a)に示すように、平行光LPの遅軸方向(即ち、y方向)の幅Dsは、速軸方向(即ち、x方向)の幅Dfに比べて長い。即ち、Ds>Dfである。一例として、Dsは5mm、Dfは1mmである。
【0051】
図5(b)は、エミッタ31からの平行光LPを、図4のB−B線で切断したときの模式的な断面図である。即ち図5(b)は、平行光LPが平凹シリンドリカルレンズ7に入射する直前における平行光LPの断面を示した図である。なお図5(b)では、図5(a)と同様に、1つのエミッタ31からの平行光LPの断面を示している。
【0052】
上述のように平行光LPは、速軸方向(即ち、x方向)に一定の幅を有する。そのため、図5(b)において、平行光LPの速軸方向(即ち、x方向)の幅Dfは、図5(a)の速軸方向の幅Dfと同じである。
【0053】
図5(b)に示すように、平行光LPの遅軸方向(即ち、y方向)の幅Ds’は、速軸方向(即ち、x方向)の幅Dfに比べて長い。即ち、Ds’>Dfである。一例として、Ds’は10mm、Dfは1mmである。
【0054】
このように、平行光LPが平凸シリンドリカルレンズ5から射出された直後、及び、平行光LPが平凹シリンドリカルレンズ7に入射する直前の双方において、平行光LPの遅軸方向(即ち、y方向)の幅(Ds、Ds’)は、速軸方向(即ち、x方向)の幅Dfに比べて長い。平行光LPは、遅軸方向に発散するのに対し、速軸方向には発散しないためである。
【0055】
以上説明したように、レーザシート光源装置1によれば、各エミッタ31から射出されたレーザ光Lは、x方向に一定の幅(本実施形態では、Df)を有し、y方向に比較的大きい発散角(本実施形態では、θ’)を有して拡がる平行光LPに変換される。そして図2に示すように、各平行光LPは互いに重なり合うことによりレーザシートLSを形成する。これにより、レーザシート光源装置1によれば、x方向に一定の幅を有し、y方向に比較的大きい幅を有するレーザシートLSを形成できる。即ち、レーザシート光源装置1によれば、レーザシートLSの照射範囲をより拡大することができるため、多数のトレーサ粒子12を照射することが可能となり、より広範囲に流体の速度を計測できる。
【0056】
また、図5(b)を参照して説明したように、各エミッタ31からの平行光LPが平凹シリンドリカルレンズ7に入射するとき、平行光LPの遅軸方向の幅は速軸方向の幅に比べて大きい。これにより、遅軸方向における幅が十分大きいレーザシートLSを形成できる。
【0057】
[平凹シリンドリカルレンズ]
続いて、図6を参照して平凹シリンドリカルレンズ7が配置される位置について説明する。図6は、半導体レーザアレイ3及び平凹シリンドリカルレンズ7を−x方向にみたときの模式図である。なお、図6では平凸シリンドリカルレンズ5の図示を省略している。また図6では、説明の便宜上、半導体レーザアレイ3が5個のエミッタ31を含む場合を例に説明する。
【0058】
図6において、Daは、半導体レーザアレイ3の側面30(図3参照)から、隣り合うエミッタ31からの平行光LPが重なり始める位置Pまでの距離である。より具体的には、半導体レーザアレイ3の側面30のz座標と、上記の位置Pのz座標との差である。また、Zは、半導体レーザアレイ3の側面30から、平凹シリンドリカルレンズ7の入射面71の端部Qまでの距離である。より具体的には、半導体レーザアレイ3の側面30のz座標と、上記の位置Qのz座標との差である。dは、隣り合うエミッタ31のy方向における距離である。θは、上述のように、レーザ光Lのy方向における発散角(即ち、平行光LPの拡大前の発散角)である。
【0059】
図6に示すように、平凹シリンドリカルレンズ7は、Da<Zを満たすように配置されている。換言すると、平凹シリンドリカルレンズ7は、隣り合うエミッタ31からの平行光LPが重なり合う領域に入射面71の少なくとも一部が位置するように配置されている。即ち、各エミッタ31からの各平行光LPは、隣り合うエミッタ31からの平行光LPと重なり合った状態で平凹シリンドリカルレンズ7の入射面71に入射する。ここで、Daをθ及びdを用いて表すと、下記の式(1)のようになる。
Da=(d/2)・{1/tan(θ/2)} ・・・(1)
【0060】
よって、平凹シリンドリカルレンズ7は、Zが下記の式(2)を満たすように配置されている。
(d/2)・{1/tan(θ/2)}<Z ・・・(2)
【0061】
平凹シリンドリカルレンズ7を上記の式(2)を満たすように配置することによる作用効果については後述する。
【0062】
続いて、図6を参照して平凹シリンドリカルレンズ7のy方向の幅Lについて説明する。
【0063】
図6において、Dbは、各エミッタ31からの各平行光LPをC−C線で切断したときのy方向における幅である。なお、C−C線は、平凹シリンドリカルレンズ7の入射面71の端部(Q、Q)を通り、y方向に平行な線である。ここで、エミッタ31の個数をN(図5では5個)とし、DbをN、d、Z及びθ用いて表すと、下記の式(3)のようになる。
Db=(N−1)・d+2・Z・tan(θ/2) ・・・(3)
【0064】
図6に示すように、平凹シリンドリカルレンズ7のy方向の幅Lは、Dbに比べて大きい。即ち平凹シリンドリカルレンズ7は、Db<Lを満たしている。よって、平凹シリンドリカルレンズ7は、下記の式(4)を満たす。
(N−1)・d+2・Z・tan(θ/2)<L ・・・(4)
【0065】
以下、平凹シリンドリカルレンズ7が上記の式(4)を満たすことによる作用効果について説明する。仮に平凹シリンドリカルレンズ7が上記の式(4)を満たさない場合、各エミッタ31からの平行光LPのうち最もy方向側を進行する平行光LP(即ち、エミッタ31bからの平行光LPのうち最もy方向側を進行する平行光LP)が、平凹シリンドリカルレンズ7の入射面71に入射しない。また、各エミッタ31からの平行光LPのうち最も−y方向側を進行する平行光LP(即ち、エミッタ31cからの平行光LPのうち最も−y方向側を進行する平行光LP)が、平凹シリンドリカルレンズ7の入射面71に入射しない。そのため、両端の平行光LPがレーザシートLSを形成せず、レーザシートLSの出力が低下してしまう。
【0066】
これに対し、実施形態のレーザシート光源装置1によれば、平凹シリンドリカルレンズ7が上記の式(4)を満たすことにより、両端の平行光LPが平凹シリンドリカルレンズ7の入射面71に確実に入射する。即ち、各エミッタ31からの全ての平行光LPが、平凹シリンドリカルレンズ7の入射面71に入射する。これにより、各エミッタ31からの全ての平行光LPがレーザシートLSを形成するため、レーザシートLSの出力低下を抑制できる。
【0067】
なお、図6に示すように、平凹シリンドリカルレンズ7の位置が半導体レーザアレイ3からz方向に向かって離れるほど、Dbは大きな値になる。即ち、Zが大きな値になるほど、Dbも大きな値となる。その結果、y方向の幅Lが比較的大きい平凹シリンドリカルレンズ7を準備する必要が生じる。本実施形態では、一例として、y方向の幅Lが5mm〜30mmの範囲にある平凹シリンドリカルレンズ7を使用可能なように、平凹シリンドリカルレンズ7の位置(即ち、Z)を調整する。
【0068】
[作用効果]
続いて、図7及び図8を参照して、平凹シリンドリカルレンズ7を上記の式(2)を満たすように配置することによる作用効果について説明する。即ち、平凹シリンドリカルレンズ7を、隣り合うエミッタ31からの平行光LPが重なり合う領域に入射面71の少なくとも一部が位置するように配置することによる作用効果について説明する。
【0069】
初めに、参考例のレーザシート光源装置について図7を参照して説明する。参考例のレーザシート光源装置は、実施形態のレーザシート光源装置1と、平凹シリンドリカルレンズ7の位置のみ異なっており、他の構成は同様である。
【0070】
図7(a)を参照して、参考例のレーザシート光源装置における平凹シリンドリカルレンズ7の位置について説明する。なお図7(a)では、平凸シリンドリカルレンズ5の図示を省略している。図7(a)に示すように、参考例のレーザシート光源装置では、平凹シリンドリカルレンズ7は、平行光LPが互いに重ならない領域に入射面71が位置するように配置されている。即ち、図示を省略するが、参考例のレーザシート光源装置では、平凹シリンドリカルレンズ7は、Z(図示略)<Da(図示略)となるように配置されている。
【0071】
図7(a)に示すように、参考例のレーザシート光源装置では、各平行光LPは互いに重なり合うことなく平凹シリンドリカルレンズ7の入射面71に入射する。即ち、各平行光LPは、他の平行光LPの影響を受けることなく平凹シリンドリカルレンズ7の入射面71に入射する。そのため、平凹シリンドリカルレンズ7の入射面71に入射する光の強度は、y座標に応じて大きく変動する。図7(b)に、図7(a)のD−D線で各平行光LPを切断したときの各平行光LPの強度を示す。なお、D−D線は、平凹シリンドリカルレンズ7の入射面71の端部(Q、Q)を通り、y方向に平行な線である。図7(b)に示すように、エミッタ31の個数分(本実施形態では、5個)、強度に鋭いピークが現れる。その結果、平凹シリンドリカルレンズ7から射出される平行光LPの強度も、y座標に応じて大きく変動する。図7(c)に、図7(a)のE−E線で各平行光LPを切断したときの各平行光LPの強度を示す。図7(c)に示すように、平行光LPが平凹シリンドリカルレンズ7から射出された後においても、強度の変動は大きい。
【0072】
以上のように、参考例のレーザシート光源装置では、y座標に応じて強度が大きく変動する平行光LPが平凹シリンドリカルレンズ7の入射面71に入射する。その結果、平凹シリンドリカルレンズ7から射出される平行光LPの強度も、y座標に応じて大きく変動する。そのため、y座標に応じて強度にバラつきが生じたレーザシートLSが形成される。発明が解決しようとする課題の欄で説明したように、レーザシートLSの強度にバラつきが生じると、PIVの測定結果の精度が低下するという問題がある。
【0073】
これに対し、実施形態のレーザシート光源装置1によれば、図6を参照して説明したように、各平行光LPは、隣り合うエミッタ31からの平行光LPと重なり合った状態で平凹シリンドリカルレンズ7の入射面71に入射する。そのため、実施形態のレーザシート光源装置1では、参考例に比べ、平凹シリンドリカルレンズ7の入射面71に入射する光の強度の変動が小さい。図8(a)に、図6のC−C線で各平行光LPを切断したときの各平行光LPの強度を示す。なお図8(a)では、各平行光LPが重なり合った状態の強度を実線で示し、1つのエミッタ31からの平行光LPの強度を破線で示している。図8(a)に示すように、強度の変動は、参考例の図7(b)に比べて小さい。このように、実施形態のレーザシート光源装置1によれば、強度の変動が比較的小さい状態で平行光LPが平凹シリンドリカルレンズ7の入射面71に入射する。そのため、平凹シリンドリカルレンズ7から射出される平行光LPにおいても、強度の変動が小さくなる結果、レーザシートLSの強度のバラつきを抑制できる。図8(b)に、図6のF−F線でレーザシートLSを切断したときのレーザシートLSの強度を示す。なお図8(b)では、レーザシートLSの強度を実線で示し、1つのエミッタ31からの平行光LPの強度を破線で示している。図8(b)に示すように、レーザシートLSの強度の変動は、参考例の図7(c)に比べて小さい。以上のように、実施形態のレーザシート光源装置1よれば、参考例に比べて強度が均一なレーザシートLSを形成できる。
【0074】
[別実施形態]
なお、レーザシート光源装置は、上記の実施形態の構成に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。例えば、以下の別実施形態に係る構成を任意に選択して、上記の実施形態に係る構成に採用してもよいことは勿論である。
【0075】
〈1〉実施形態では、平凸シリンドリカルレンズ5は、入射面51がエミッタ31に対向するように配置され、平凹シリンドリカルレンズ7は、入射面71が平凸シリンドリカルレンズ5の射出面53に対向するように配置されていると説明したが、これに限らない。即ち、半導体レーザアレイ3、平凸シリンドリカルレンズ5、及び平凹シリンドリカルレンズ7の配置位置は、光を反射するミラーを使用して自由に変更しても構わない。
【0076】
〈2〉また、実施形態の式(2)において、距離Zは、半導体レーザアレイ3の側面30のz座標と、平凹シリンドリカルレンズ7の入射面71の端部Qにおけるz座標との差であると説明したが、これに限らない。即ち、距離Zは、半導体レーザアレイ3の側面30のz座標と、平凹シリンドリカルレンズ7の入射面71上の任意の位置におけるz座標との差であっても構わない。以上を一般的に表現すると、距離Zとは、エミッタ31から平凹シリンドリカルレンズ7までの距離と言える。
【0077】
〈3〉また、実施形態では、平行光LPのy方向における発散角を拡大するレンズとして、平凹シリンドリカルレンズ7を使用したが、両凹シリンドリカルレンズを使用しても構わない。また、複数の平凹シリンドリカルレンズからなる平凹シリンドリカルレンズアレイを使用しても構わない。また、z方向に平凹シリンドリカルレンズ7を複数配置しても構わない。
【0078】
〈4〉また、レーザ光Lは、x方向に大きな発散角を有し、y方向に小さな発散角を有して進行すると説明したが、これに限らない。即ちレーザ光Lは、x方向及びy方向に同程度の発散角を有して進行しても構わない。またレーザ光Lは、x方向に小さな発散角を有し、y方向に大きな発散角を有して進行しても構わない。
【0079】
〈5〉また、実施形態の半導体レーザ光源装置では、エミッタ31からのレーザ光Lを平行光LPに変換するレンズとして平凸シリンドリカルレンズ5を使用したが、これに限らない。即ち、平行光LPに変換可能なレンズであれば何れのレンズを使用しても構わない。
【0080】
〈6〉また、実施形態の半導体レーザ光源装置は、PIVの光源に使用されると説明したが、これに限らず、例えばレーザシートLSを照射する照明装置や、レーザシートLSを利用して物体の形状等を計測する計測装置にも使用可能である。
【0081】
〈7〉また、レーザシートLSは、全てのエミッタ31からの平行光LPが重なり合って形成される必要はなく、少なくとも複数のエミッタ31からの平行光LPが重なり合うことで形成されるものであればよい。
【0082】
〈8〉また、図5(a)を参照して、平行光LPが平凸シリンドリカルレンズ5から射出された直後において、平行光LPの遅軸方向(即ち、y方向)の幅Dsは、速軸方向(即ち、x方向)の幅Dfに比べて長いと説明したが、これに限らない。即ち、Ds<Dfでも構わない。より一般的に言うと、平凸シリンドリカルレンズ5から射出された平行光LPが平凹シリンドリカルレンズ7に入射するとき、平行光LPの遅軸方向の幅が、速軸方向の幅に比べて大きければよい。
【符号の説明】
【0083】
1 : 実施形態のレーザシート光源装置
3 : 半導体レーザアレイ
30 : 側面
31 : エミッタ
5 : 平凸シリンドリカルレンズ
51 : 入射面
53 : 射出面
7 : 平凹シリンドリカルレンズ
71 : 入射面
L : レーザ光
LP : 平行光
LS : レーザシート
Ds : 平行光LPの遅軸方向の幅
Df : 平行光LPの速軸方向の幅
Z : エミッタから平凹シリンドリカルレンズまでの距離
θ : レーザ光の遅軸方向における発散角
d : エミッタが並ぶ間隔
L : 平凹シリンドリカルレンズの入射面のy方向の幅
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8