(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の植栽ルーバーの場合、建築物の壁面の手前側に設置されるので、羽根板を支持する支柱が必要であり、その支柱の製造コストおよび設置コストがかかる。その上、建築物の建築資材とは全く関係のない支柱が露出することになり、建築物と植栽ルーバーとの一体感がなく、建築物の外観が損なわれてしまう。さらに、従来の植栽ルーバーを建築物の複数階に亘るように設置した場合、背が高くなり、倒れる危険性が増加することになる。また、万が一、倒れた場合、植栽ルーバー付近にいる人や周囲の建築物に、甚大な被害を及ぼす可能性がある。
【0005】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであり、その主たる目的は、建築物に複数階に亘って設けられる植栽ルーバの構造であって、建築物の外観を損なうことがなく、安全で経済的な植栽ルーバ構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための本発明に係る植栽ルーバ構造は、植物を載置可能な複数のルーバ材を備え、前記複数のルーバ材は、建築物の外壁を複数階に亘って窪ませた凹部の互いに対向する左右の壁面それぞれ
から突出するよう基端部が前記左右の壁面の屋内側の前記建築物の躯体に支持されて前記建築物の高さ方向に互いに離隔して設けられる複数の支持片を介して、前記左右の壁面間に、前記建築物の高さ方向に互いに離隔して架け渡されており、前記各ルーバ材は、前記植物を載置可能な受け部と、前記受け部を下方から覆うカバーとを備え、前記受け部は、前記支持片を介して前記左右の壁面間に架け渡され
るアングルであり、前記カバーは、上方へ開口した中空容器状で、前壁が下方へ行くに従って後方へ延出して形成されており、前記受け部に対して着脱可能とされていることを特徴とする。
【0007】
また、本発明に係る植栽ルーバ構造は、前記凹部の奥側の壁面には窓が設けられており、前記複数のルーバ材の内、一部が前記窓と対応して配置されることを特徴とする。
【0009】
さらに、本発明に係る植栽ルーバ構造は、前記植物は、プランタに栽培されて前記複数のルーバ材に載置されており、前記植物へ水分を供給する供給機構をさらに備え、前記供給機構は、前記凹部内に上下方向へ沿って配置される配管と、前記配管から分岐して前記プランタへ至る分岐管とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る植栽ルーバ構造によれば、ルーバの羽根板であるルーバ材が、建築物の外壁に形成された凹部の互いに対向する壁面間に架け渡されるので、建築物との一体感があり、建築物全体のデザイン性を向上させることができる。また、ルーバ全体が倒れることがなく、別途ルーバを設置する場合と比較して、安全性の向上を図ることができる。さらに、ルーバ材を支持する支柱を別途必要としないので、支柱の製造コストおよび設置コストがかからない。
【0011】
また、本発明に係る植栽ルーバ構造によれば、窓の手前側にルーバ材が設けられるので、ルーバ材に植物が載置された場合、植物を通過したより涼しい風を屋内へ取り入れることができ、また窓を介した屋内への日射を抑制することができる。
【0012】
また、本発明に係る植栽ルーバ構造によれば、カバーの前壁が下方へ行くに従って後方へ延出して形成されているので、ルーバ材の奥側への通風を円滑に行うことができる。また、上下に離隔して配置されるルーバ材の下側のルーバ材に設けられる植物への日射が、上側のルーバ材によって妨げられるのを抑制することができる。さらに、カバーの前壁部分において、上下に離隔して配置されるルーバ材の上下の隙間を大きくすることができ、ルーバ材に設けられる植物を高く成長させることができる。
【0013】
さらに、本発明に係る植栽ルーバ構造によれば、供給機構を備えるので、プランタに栽培された植物への水やりを容易に行うことができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の植栽ルーバ構造の具体的実施例を図面に基づいて詳細に説明する。
【0016】
図1は、本発明の植栽ルーバ構造の一実施例が適用された建築物の一例を示す概略正面図である。また、
図2から
図6は、
図1の植栽ルーバ構造を示す図であり、
図2は一部を省略して示す側面視の概略拡大縦断面図、
図3は
図2の一部拡大図、
図4は一部を省略して示す平面視の概略拡大横断面図、
図5は
図4の概略A−A断面図、
図6は
図4の概略B−B断面図である。本実施例の植栽ルーバ構造1は、植物を載置可能な複数のルーバ材2を備えており、建築物3の外壁に複数階に亘って窪ませた凹部4に設置される。たとえば、
図1に示されるように、4階建ての住宅の2階から3階に亘って形成される二箇所の凹部4に設置される。
【0017】
各凹部4は、奥側に配置される壁面W1と互いに対向する左右の壁面W2,W3から、内方へ凹んだ凹形状に形成されている。
図2および
図4に示されるように、奥側の壁面W1には、窓5が設けられている。また、
図3および
図4に示されるように、左右の壁面W2,W3にはそれぞれ、ルーバ材2を支持する支持片6が複数設けられる。
【0018】
各支持片6は、壁面W2,W3から突出する部分が略矩形に形成された金属板状とされ、その板状部の基端部が壁面W2,W3の屋内側の建築物3の躯体に支持される。この際、各支持片6は、板面が上下方向へ沿うようにして配置される。このようにして、左右の壁面W2,W3にはそれぞれ、上下に互いに離隔して複数の支持片6が設けられる。左側の壁面W2に設けられる複数の支持片6と右側の壁面W3に設けられる複数の支持片6とは、互いに対応するように配置される。なお、本実施例では、支持片6は、凹部4の上端から下端に亘って516mmのスパンで設けられる。
【0019】
支持片6を介して、凹部4の互いに対向する左右の壁面W2,W3間に、複数のルーバ材2が建築物3の高さ方向に互いに離隔して架け渡される。各ルーバ材2は、前後一対の端部固定アングル7,7と、端部固定アングル7に架設される2本の受け部8,8と、植物を載置可能な受け部8を下方から覆うカバー9とを備える。
【0020】
前後一対の端部固定アングル7,7はそれぞれ、板状に形成されており、略矩形の板状の鉛直部10と、鉛直部10に設けられる略矩形の板状の水平部11とを有する。具体的には、前側に配置される端部固定アングル7は、起立した状態で配置される鉛直部10と、鉛直部10の下端部から前方へ延出して設けられる水平部11とを有する。一方、後側に配置される端部固定アングル7は、起立した状態で配置される鉛直部10と、鉛直部10の下端部から後方へ延出して設けられる水平部11とを有する。
【0021】
前後一対の端部固定アングル7,7は、左右の壁面W2,W3に設けられる各支持片6に固定される。具体的には、前後一対の端部固定アングル7,7は、支持片6の板状部を挟むように配置されて、支持片6に固定される。すなわち、前側の端部固定アングル7の鉛直部10の後面と支持片6の前面とが当接されると共に、後側の端部固定アングル7の鉛直部10の前面と支持片6の後面とが当接されて、ボルト12およびナット13で固定される。このようにして、前後一対の端部固定アングル7,7は、支持片6に対して、背合わせに固定される。
【0022】
受け部8は、前後方向へ互いに離隔して平行に架設される2本の板状のアングルであり、それぞれが、左右方向を長手方向とする略長方形の板状の起立部14と、左右方向を長手方向とする略長方形の板状の底部15とを有する。具体的には、前側に配置される受け部8は、起立した状態で配置される起立部14と、起立部14の下端部から後方へ延出して設けられる底部15とを有する。一方、後側に配置される受け部8は、起立した状態で配置される起立部14と、起立部14から前方へ延出して設けられる底部15とを有する。
【0023】
前後に配置される受け部8,8はそれぞれ、左右に配置される端部固定アングル7を架け渡すようにして、端部固定アングル7にボルト16およびナット17で固定される。前側の受け部8は、底部15の左端部が左側の前後一対の端部固定アングル7,7の前側の端部固定アングル7の水平部11に載せ置かれると共に、底部15の右端部が右側の前後一対の端部固定アングル7,7の前側の端部固定アングル7の水平部11に載せ置かれ、それぞれボルト16およびナット17で固定される。一方、後側の受け部8は、底部15の左端部が左側の前後一対の端部固定アングル7,7の後側の端部固定アングル7の水平部11に載せ置かれると共に、底部15の右端部が右側の前後一対の端部固定アングル7,7の後側の端部固定アングル7の水平部11に載せ置かれ、それぞれボルト16およびナット17で固定される。
【0024】
カバー9は、上方へ開口した中空容器状に形成されており、受け部8を覆うことができるように左右長さが受け部8の左右長さよりも長い。本実施例では、カバー9は、側面視の縦断面が略舟形の中空部を有する容器状に形成されている。カバー9の前壁18は、下方へ行くに従って後方へ延出して形成されており、本実施例では、緩やかな凸湾曲面状に形成されている。カバー9の後壁19は、下方へ行くに従って前方へ延出して形成されており、本実施例では、緩やかな凸湾曲面状に形成されている。
【0025】
カバー9の前壁18および後壁19にはそれぞれ、上壁部20が設けられる。上壁部20は、薄板状の長延出片21と、長延出片21よりも幅狭の薄板状の短延出片22とを有する。具体的には、カバー9の前壁18の上端部には、後方へ延出して長延出片21が形成され、この長延出片21の後端部に下方へ延出して短延出片22が形成されている。一方、カバー9の後壁19の上端部には、前方へ延出して長延出片21が形成され、この長延出片21の前端部に下方へ延出して短延出片22が形成されている。そして、前壁18に形成される上壁部20と後壁19に形成される上壁部20との間が、カバー9の上方への開口部とされている。また、カバー9の左右両側壁には、上方へ開口する切欠き23が形成されている。
【0026】
図3などに示されるように、カバー9は、板状のカバー固定プレート24を介して、前後の受け部8,8に設けられる。カバー固定プレート24は、前後の受け部8,8の起立部14それぞれに、起立部14から上方へ延出するようにボルト25およびナット26で固定される。前側に配置されるカバー固定プレート24の上端部に、カバー9の前壁18側の上壁部20の長延出片21と短延出片22とで形成されたフック状部が引っ掛けられると共に、後側に配置されるカバー固定プレート24の上端部に、カバー9の後壁19側の上壁部20の長延出片21と短延出片22とで形成されたフック状部が引っ掛けられる。この際、カバー9の左側壁に形成された切欠き23に左側の壁面W2に固定された支持片6が貫通されると共に、カバー9の右側壁に形成された切欠き23に右側の壁面W3に固定された支持片6が貫通される。このようにして、カバー9は、受け部8に対して着脱可能とされている。
【0027】
なお、カバー9の左右両端部には、カバー9の上部を覆う端部覆いカバー27が設けられる。端部覆いカバー27は、円弧状に湾曲した可撓性を有する板材からなる被覆部28と、被覆部28の前後両端部に下方へ延出して形成される縦片29と、前後の縦片29の下端部に前後方向へ互いに離隔するように延出して形成される横片30とを有する。
図3に示されるように、端部覆いカバー27の後端部には、被覆部28、縦片29および横片30によって、コ字形状部が形成される。端部覆いカバー27の前端部にも、同様にして、コ字形状部が形成される。従って、端部覆いカバー27は、前端部に形成されたコ字形状部内にカバー9の前側の上壁部20の短延出片22が差し込まれると共に、後端部に形成されたコ字形状部内にカバー9の後側の上壁部20の短延出片22が差し込まれて、カバー9に着脱可能に設けられる。
【0028】
このようにして、複数のルーバ材2は、建築物3の外壁を複数階に亘って窪ませた凹部4の互いに対向する壁面W2,W3間に、建築物3の高さ方向に互いに離隔して架け渡される。前述したように奥側の壁面W1には窓5が設けられているので、複数のルーバ材2の内、一部が窓5と対応して配置されることになる。ところで、
図5および
図6に示されるように、本実施例の植栽ルーバ構造1は、植物へ水分を供給する供給機構31と、ルーバ材2内に溜まった水分を外部へ排水する排水機構32とをさらに備える。
【0029】
供給機構31は、建築物3の外壁に形成された凹部4内に上下方向へ沿って配置される筒状の配管33と、配管33から分岐する複数の筒状の分岐管34とを有する。配管33は、ルーバ材2のカバー9の左右方向略中央部に形成された貫通穴35を通って、上下方向へ沿って配置される。配管33の上端部は、蛇腹ホースなどを介して水道の蛇口に接続される。分岐管34は、可撓性を有するチューブからなり、各ルーバ材2に対して設けられる。すなわち、分岐管34は、ルーバ材2と同数設けられる。分岐管34の中途部と先端部には、複数の小さい穴が形成されている。
【0030】
排水機構32は、ルーバ材2のカバー9の左端部に形成された貫通穴36を通って、上下方向へ沿って配置される鎖37を有する。鎖37は、上端部が最も上側に配置されるルーバ材2のカバー9に設けられて吊るされる。
【0031】
次に、本実施例の植栽ルーバ構造1の使用について説明する。
図7および
図8は、本実施例の植栽ルーバ構造の使用状態を示す図であり、
図7は一部を省略して示す概略拡大正面図、
図8は
図7の概略C−C断面図である。
【0032】
本実施例では、植物38は、プランタ39に栽培されてルーバ材2に載置される。
図7に示されるように、植物38が栽培されたプランタ39は、前述した配管33を挟んで左右両側に配置される。
図8に示されるように、各プランタ39は、底壁の前端部が前側の受け部8の底部15に載置されると共に、底壁の後端部が後側の受け部8の底部15に載置される。このようにしてルーバ材2に載置されたプランタ39には、前述した供給機構31の分岐管34が這わせられる。この際、分岐管34は、穴が形成された中途部が一方のプランタ39に対応すると共に、穴が形成された先端部が他方のプランタ39に対応するようにして、両プランタ39,39に這わせられる。すなわち、分岐管34は、配管33から分岐してプランタ39に至るものであり、本実施例では、左右のプランタ39,39に連続して至る長さを有している。
【0033】
このような構成であるので、配管33内に上方から下方へ向けて水を流すことで、分岐管34を介して、プランタ39に栽培された植物38に水を与えることができる。分岐管34の中途部および先端部には前述したように小さい穴が複数形成されているので、それらの穴から、分岐管34の中途部が這わせられた一方のプランタ39および分岐管34の先端部が這わせられた他方のプランタ39へ、水を与えることができる。また、ルーバ材2の底部に溜まった水は、カバー9に形成された貫通穴36から、鎖37を伝って下方へ排水することができる。
【0034】
本実施例の植栽ルーバ構造1の場合、ルーバ材2に植物38が載置されるので、建築物3を緑化することができ、窓5を介して屋内へ入る日光を抑制することができる。また、植物38を通過したより涼しい風を、窓5を介して屋内へ取り入れることができる。また、本実施例の植栽ルーバ構造1の場合、建築物3の外壁に複数階に亘って形成されるので、建築物3をより緑化することができる。
【0035】
また、本実施例の植栽ルーバ構造1の場合、ルーバ材2が凹部4の左右の壁面W2,W3間に架け渡されるので、建築物3との一体感を生じさせることができ、建築物3全体のデザイン性を向上させることができる。また、本実施例の植栽ルーバ構造1の場合、建築物3と一体的に構成されているので、ルーバ全体を壁面に取り付ける従来の場合と異なり、ルーバ全体が倒れることがなく、安全性を高めることができる。また、本実施例の植栽ルーバ構造1の場合、ルーバ全体を壁面に取り付ける従来の場合と異なり、羽根板を支持する支柱を別途必要としないので、支柱に関するコストがかからない。
【0036】
また、本実施例の植栽ルーバ構造1の場合、カバー9の前壁18が凸湾曲面状に形成されているので、
図8の矢印Xに示されるように、カバー9の前壁18が垂直面状の場合と比較して、ルーバ材2の奥側への通風を円滑に行うことができる。また、
図8の矢印Yに示されるように、カバー9の前壁18が垂直面状の場合と比較して、上下のルーバ材2,2の下側のルーバ材2に載置される植物38への日射が、上側のルーバ材2の前壁18によって妨げられるのを抑制することができる。
【0037】
また、カバー9の前壁18が垂直面状の場合と比較して、カバー9の前壁18部分の上下の隙間を大きくすることができる。従って、カバー9の前壁18部分の上下の隙間に伸びる背の高い植物38をルーバ材2に載置することができ、また、カバー9の前壁18部分の上下の隙間において植物38を高く成長させることができる。なお、本実施例では、カバー9の後壁19も凸湾曲面状に形成されているので、カバー9の後壁19部分の上下の隙間に伸びる背の高い植物38をルーバ材2に載置することができ、また、カバー9の後壁19部分の上下の隙間において植物38を高く成長させることができる。このようにして、本実施例では、屋外側の下方から見た場合に、植物38を大きく見せることができ、意匠性の向上と視線の遮断とをより一層図ることができる。
【0038】
また、本実施例の植栽ルーバ構造1の場合、植物38に水分を供給する供給機構31を備えるので、プランタ39に栽培された植物38へ容易に水を与えることができ、ルーバ材2に載置される植物38の世話を容易に行うことができる。また、本実施例の植栽ルーバ構造1の場合、カバー9内の水を外部へ排水する排水機構32を備えるので、ルーバ材2に溜まった水を容易に排水することができる。従って、カバー9にカビが繁殖するのを抑制したり、カバー9の腐食を抑制したりすることができる。
【0039】
また、本実施例の植栽ルーバ構造1の場合、ルーバ材2のカバー9が着脱可能とされているので、カバー9を容易に取り替えることができる。さらに、カバー9が汚れたり損傷したりした場合、ルーバ材2全体を取り替える必要がなく、コストの低減を図ることができる。
【0040】
本発明の植栽ルーバ構造は、前記実施例の構成に限らず、適宜変更可能である。たとえば、前記実施例では、植物38は、プランタ39に栽培されるものであったが、造花などの人工的な植物であってもよい。この場合、植物は、プランタ39を介さずに直接ルーバ材2に載置することができる。さらに、前記実施例では、カバー9の前壁18および後壁19は、凸湾曲面状に形成されたが、これに限定されるものではなく、たとえば、カバー9の前壁は、下方へ行くに従って後方へ延出して形成される傾斜面であってもよい。