特許第6376436号(P6376436)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6376436
(24)【登録日】2018年8月3日
(45)【発行日】2018年8月22日
(54)【発明の名称】肩装具
(51)【国際特許分類】
   A61F 5/01 20060101AFI20180813BHJP
   A61F 5/02 20060101ALI20180813BHJP
【FI】
   A61F5/01 G
   A61F5/02 G
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-74548(P2014-74548)
(22)【出願日】2014年3月31日
(65)【公開番号】特開2015-195870(P2015-195870A)
(43)【公開日】2015年11月9日
【審査請求日】2017年1月11日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000151380
【氏名又は名称】アルケア株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504157024
【氏名又は名称】国立大学法人東北大学
(74)【代理人】
【識別番号】100112874
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 薫
(72)【発明者】
【氏名】川原 あい
(72)【発明者】
【氏名】萩原 嘉廣
【審査官】 山口 賢一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−261531(JP,A)
【文献】 特開2005−245611(JP,A)
【文献】 特表2007−505651(JP,A)
【文献】 特開2005−245612(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/086315(WO,A1)
【文献】 国際公開第2013/102472(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 5/01
A61F 5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
体幹周囲の少なくとも一部に配置される湾曲部と、
前記湾曲部から前腕側に延び、前腕を支持した状態で、少なくとも肩関節の内旋及び外旋方向に可動な可動部と、
前記可動部と前記湾曲部との間に配置され、前腕の回旋時に肩関節に負荷を与える負荷部材と、を有し、
前記湾曲部及び前記可動部は、前記体幹又は前記前腕と接触する部分が変形性のない材料によって構成され、前記湾曲部と前記可動部との接続部分のみが撓み、
使用者が前記可動部を肩関節の内旋方向に動かしたときに前記負荷部材によって前記可動部に外旋方向の復元力がかかり、前記復元力に抗する力で内旋動作を行うことによって、リハビリを行う肩装具。
【請求項2】
前記負荷部材は、弾性によって前記負荷を与える請求項に記載の肩装具。
【請求項3】
胴に巻かれる胴ベルトを更に備え、
前記胴ベルトは、前記湾曲部と着脱可能である請求項1又は2に記載の肩装具。
【請求項4】
前記胴ベルトは、前記湾曲部と略同一の幅方向の寸法を有し、前記湾曲部の一部が挿入されるポケットを有する請求項に記載の肩装具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、肩装具に関する。より詳しくは、治療肢位を保持する肩装具に関する。
【背景技術】
【0002】
肩関節治療のために手術を実施した場合、術後は装具による安静な固定が行われる。特許文献1では、固定板、前腕固定手段、胴ベルト及び保持ベルトを備えた上肢固定装具が、特許文献2では、パッド、胴ベルト、前腕固定部及び肩ベルトを備えた肩関節固定装具が、それぞれ提案されている。
【0003】
このような肩疾患の術後の早期回復には、適切な肢位での患部の支持や固定と共に、早期にリハビリを行うことが重要であり、また、肩疾患の再発防止のためにも、適時リハビリを行うことが望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−245612号公報
【特許文献2】特開2005−245611号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
肩装具は、患部の支持や固定と、リハビリとを両立可能であることが望ましい。
本開示は、患部の支持や固定と、リハビリとを両立させる肩装具を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る肩装具は、体幹周囲の少なくとも一部に配置される湾曲部と、前記湾曲部から前腕側に延び、前腕を支持した状態で、少なくとも肩関節の内旋及び外旋方向に可動な可動部と、を有する。
肩装具は、前記可動部を肩関節の内旋方向に動かしたときに、前記可動部に外旋方向の復元力がかかってもよい。
また、肩装具は、前記可動部と前記湾曲部との間に配置され、前腕の回旋時に肩関節に負荷を与える負荷部材を更に備えてもよい。
この場合、前記負荷部材は、弾性によって前記負荷を与えてもよい。
また、肩装具は、胴に巻かれる胴ベルトを更に備え、前記胴ベルトは、前記湾曲部と着脱可能であってもよい。
この場合、前記胴ベルトは、前記湾曲部と略同一の幅方向の寸法を有し、前記湾曲部の一部が挿入されるポケットを有してもよい。
【発明の効果】
【0007】
本開示により、患部の支持や固定と、リハビリとを両立させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】Aは第1の実施形態の肩装具の構成例を示す斜視図であり、Bは第1の変形例、Cは第2の変形例、Dは第3の変形例、Eは第4の変形例を示す斜視図である。
図2】Aは第2の実施形態の肩装具の構成例を示す斜視図であり、Bは前腕袋の仮止め動作を示す正面図であり、Cは前腕袋の本装着動作を示す正面図である。
図3】Aは第3の実施形態の肩装具の構成例を示す斜視図であり、Bは胴ベルトの展開正面図である。
図4】Aは胴ベルトへの湾曲部の装着動作を示す正面図であり、Bは可動部が内外旋中間位に位置された状態を示す正面図であり、Cは可動部が内旋位に位置された状態を示す正面図である。
図5】Aは第3の実施形態の第1の変形例、Bは第2の変形例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示を実施するための好適な実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、以下に説明する実施形態は、あくまで一例であって本開示の範囲を狭く解釈するものではない。各実施形態において、互いに対応する構成部については同一の符号を付して重複した説明を省略する。
【0010】
<1.第1の実施形態>
[構成例]
図1Aは、本実施形態の肩装具1の構成例を示す斜視図であり、より詳しくは、肩装具1を正面すなわち前方から見下ろした斜視図である。図1Aに示すように、肩装具1は、湾曲部11と可動部12とを有する。
【0011】
[湾曲部11]
図1Aに示すように、湾曲部11は、前方に向かって略円弧状に湾曲されている。湾曲部11は、肩装具1の使用状態において、使用者の体幹周囲の少なくとも一部に配置される。湾曲部11が体幹周囲のどの程度の範囲に配置されるかは、湾曲部11の周方向の長さに応じて適宜決定することができる。湾曲部11は、使用者の胴部の周囲の一部または全部に配置されてもよい。湾曲部11を、その周方向の長さを調整可能にする構成も本開示の範囲内である。湾曲部11は、体幹周囲の少なくとも側部に配置され得る形状、大きさを備えていることが好ましい。湾曲部11の材質も限定されず、例えば、湾曲部11は、その内部が樹脂(例えば、プラスチック)や金属などによって形成され、また、図1Aに示すように、その外部が編布、織布、不織布等の布帛などによって形成された内部を被覆するカバー材110であってもよい。
好ましい湾曲部11の態様は、硬質で可撓性がなく、装着時に体幹周囲と接触する部分が変形性のない材料によって構成される。このように、湾曲部11を硬質で可撓性がない材料で構成することで、リハビリ中も変形することがないので、リハビリ時に湾曲部11をしっかりと体幹に固定でき、所定の肢位で安定したリハビリを行うことができる。
【0012】
[可動部12]
図1Aに示すように、可動部12は、湾曲部11の一端(図1Aにおける左端)から前方に延びている。可動部12は、肩装具1の使用状態において、湾曲部11から前腕側に延びるように配置される。可動部12は、湾曲部11に対して可動な構成である。可動部12の可動方向は、肩装具1の使用状態を基準に考えると、少なくとも肩関節の内旋方向及び外旋方向(図1A矢印参照)を含む。可動部12の移動は、湾曲部11と可動部12との接続部を回転中心とした回転を含んでもよい。この場合、肩装具1の使用状態における可動部12の回転軸は、体幹軸に平行であってもよいが、これに限定されない。可動部12の移動は、使用者の前腕を支持した状態で行われる。前腕の支持は、可動部12の構造によって具現化してもよいし、または、使用者が可動部12の一部(例えば前端部)を把持することによって具現化してもよい。可動部12は、外力の付与による内旋方向への移動時に外旋方向への抗力を発揮してもよく、または、外力の付与による外旋方向への移動時に内旋方向への抗力を発揮してもよい。可動部12の可動は、可動部12の材質によって具現化してもよく、または、可動部12と湾曲部11との接続部に蝶番、ねじりバネ等のヒンジ部を設けるなどといった機械的な構造によって具現化してもよいが、これらに限定されない。可動部12の材質も限定されず、例えば、可動部12は、その内部が樹脂や金属などによって形成され、また、図1Aに示すように、その外部が編布、織布、不織布等の布帛などによって形成された内部を被覆するカバー材120であってもよい。可動部12の内部は、湾曲部11の内部と同一材料によって一体的に形成してもよい。この場合、部品点数および製造工数を削減することができる。また、可動部12のカバー材120は、湾曲部11のカバー材110と同一材料によって一体的に形成してもよい。この場合も、部品点数および製造工数を削減することができる。カバー材120の少なくとも一部は、ループ状またはフック状に起毛されていてもよいが、これに限定されない。
好ましい可動部12の態様は、硬質で可撓性がなく、装着時に前腕と接触する部分が変形性のない材料によって構成される。このように、可動部12を硬質で可撓性がない材料で構成することで、リハビリ中も変形することがないので、リハビリ時に前腕をしっかりと支持・固定し、所定の肢位で安定したリハビリを行うことができる。
より好ましい肩装具1の態様は、湾曲部11と可動部12が、硬質で可撓性がなく、体幹又は前腕と接触する部分が変形性のない材料によって構成される。このような構成にすることで、リハビリ時は、湾曲部11と可動部12の接続部分のみが変形し(撓み)、それ以外の部分は変形しないので、リハビリ中でも前腕をしっかりと所定の位置で支持することができ、正しい肢位で安定したリハビリを行うことができる。
【0013】
[動作例]
本実施形態の肩装具1を使用する際には、湾曲部11を体幹の側面にあてがい、前腕を可動部12の外側面にあてがうことで、肩関節などの患部が治療肢位に支持または固定される。また、可動部12に支持した前腕を内旋方向および外旋方向に回旋させることで、患部のリハビリが行われる。
【0014】
ここで、肩関節や上腕・前腕部骨折、膝関節の障害等は頻繁に見られるものであり、保存的にも観血的にも数週間の治療期間が必要である。そして、術後は、所望の治療肢位で安定的に固定することが重要である。その一方で、術後の早期回復には早期リハビリが重要であり、術後固定を安定して行いつつ、症状に応じて簡便にリハビリができることが望ましい。この点について、本実施形態の肩装具1によれば、可動部12と湾曲部11とを備えることで、患部の固定とリハビリとを両立させることができる。また、本実施形態の肩装具1によれば、肩ベルトを備える肩装具に比べて、肩関節周囲の凝りや、長時間装着による肩関節の拘縮や疼痛などを低減することができる。また、本実施形態の肩装具1によれば、肩ベルトを備える肩装具に比べて、操作および装着などの取り扱いの容易性を向上させることができる。
【0015】
<2.第1の実施形態の変形例>
図1B〜Eは、本実施形態の変形例の肩装具1の構成例を示す斜視図である。より詳しくは、図1Bは、第1の変形例を、図1Cは、第2の変形例を、図1Dは、第3の変形例を、図1Eは、第4の変形例を示す斜視図である。
【0016】
図1Bに示すように、第1の変形例の肩装具1は、図1Aの肩装具1に対して、可動部12が腕置き可能に湾曲されている点が異なる。具体的には、可動部12は、本体部121と、この本体部121に接続された腕置き部122とを有する。腕置き部122は、本体部121の下端から外旋方向に張り出されているとともに下方に湾曲されている。
図1Cに示すように、第2の変形例の肩装具1は、図1Aの肩装具1に対して、可動部12が筒状である点が異なる。
図1Dに示すように、第3の変形例の肩装具1は、図1Aの肩装具1に対して、可動部12が、ベルト123によって前腕を本体部121に固定可能とされている点が異なる。
図1Eに示すように、第4の変形例の肩装具1は、図1Aの肩装具1に対して、可動部12の前端部が把持可能なリング状に形成されている点が異なる。
上記各変形例の肩装具1によれば、前腕を簡易な構成によって安定的に支持することができる。
【0017】
<3.第2の実施形態>
[構成例]
図2Aは、本実施形態の肩装具1の構成例を示す斜視図であり、より詳しくは、肩装具1を左側方から見下ろした斜視図である。図2Aに示すように、本実施形態の肩装具1は、図1Aの肩装具1に対して、前腕固定部材13を更に備える点が異なる。
【0018】
[前腕固定部材13]
前腕固定部材13は、可動部12の外側面に取り付けられた構成である。前腕固定部材13は、可動部12に前腕を固定する構成である。より具体的には、図2Aに示すように、前腕固定部材13は、前腕袋131、前腕ベルト132および仮止め用ベルト133を有する。
【0019】
[前腕袋131]
図2Aに示すように、前腕袋131は、その上端および前端が開口され、その下端および後端が閉塞された袋状に形成されている。前腕袋131には、上端開口1311を介して屈曲状態の前腕を上方から挿入可能とされている。前腕袋131の材質は限定されず、化学繊維を使用した生地などによって柔軟な材質に形成されていてもよい。前腕袋131は、その内側面131aを介して可動部12に着脱可能とされていてもよい。この場合、前腕袋131を可動部12に着脱するための構成は特に限定されないが、好ましい態様の一例として、面ファスナを採用してもよい。面ファスナを用いることで、着脱を簡便に行うことができるとともに、装着状態を安定的に維持することができる。前腕袋131を可動部12に着脱するための他の構成例としては、スナップボタンなどが挙げられる。
【0020】
[前腕ベルト132]
図2Aに示すように、前腕ベルト132は、前腕袋131の外側面131bの下端部に取り付けられている。前腕ベルト132は、肩装具1の使用時において、上端開口1311の両端縁を近接又は接触させた状態で可動部12に装着される。なお、図2Aの前腕ベルト132は、上端開口1311の長手方向における中央の一定範囲の領域に下方において対応する位置に配置されているが、前腕ベルト132の構成はこれに限定されない。前腕ベルト132の材質は限定されず、例えば、前腕ベルト132は、化学繊維を使用した織りベルトなどであってもよい。前腕ベルト132は、前腕袋131に着脱可能とされていてもよく、前腕袋131の外表面の任意の位置に着脱自在に取り付けることができる。この場合、前腕ベルト132を前腕袋131に装着するための構成は限定されず、例えば、面ファスナやスナップボタンなどであってもよい。前腕ベルト132を可動部12に装着するための構成も限定されず、例えば、面ファスナ、バックルまたはスナップボタンなどであってもよい。
【0021】
[仮止め用ベルト133]
図2Aに示すように、仮止め用ベルト133は、前腕袋131の外側面131bの上端部前端に取り付けられている。仮止め用ベルト133は、前腕ベルト132よりも帯幅が細く形成されている。仮止め用ベルト133は、肩装具1の使用時に、上端開口1311の両端縁における前端部を近接又は接触させた状態で可動部12に装着される。仮止め用ベルト133の材質は限定されず、例えば、仮止め用ベルト133は、化学繊維を使用した織りベルトなどであってもよい。仮止め用ベルト133は、前腕袋131に着脱可能とされていてもよい。この場合、仮止め用ベルト133を前腕袋131に装着するための構成は限定されず、例えば、面ファスナやスナップボタンなどであってもよい。仮止め用ベルト133を可動部12に装着するための構成も限定されず、例えば、面ファスナ、バックルまたはスナップボタンなどであってもよい。
【0022】
[動作例]
本実施形態の肩装具1を使用する際には、図2Bに示すように、前腕袋131に前腕を挿入した上で、仮止め用ベルト133を、前腕袋131の上端開口1311における前端部を跨ぐようにして可動部12側に架け渡して、可動部12に装着する。このようにして、前腕袋131を可動部12に仮止めする。
【0023】
次いで、図2Cに示すように、前腕ベルト132を、前腕袋131の上端開口1311を跨ぐようにして可動部12側に架け渡して、可動部12に装着する。このようにして、前腕袋131を可動部12に本装着する。このとき、仮止めがなされていることにより、本装着を簡便に行うことができる。なお、前腕ベルト132は、可動部12の側から、前腕袋131の上端開口1311を跨ぐようにして前腕袋131の側面側に架け渡して固定しもよい。
【0024】
本実施形態の肩装具1によれば、図1Aの肩装具1と同様の効果を奏することができ、また、前腕の支持の安定性および取扱いの容易性を更に向上させることができる。
【0025】
<4.第3の実施形態>
[構成例]
図3Aは、本実施形態の肩装具1の構成例を示す斜視図であり、より詳しくは、肩装具1を正面から斜めに見下ろした斜視図である。図3Aに示すように、本実施形態の肩装具1は、図2Aの肩装具1に対して、負荷部材14および胴ベルト15を更に備えた点が異なる。
【0026】
[負荷部材14]
図3Aに示すように、負荷部材14は、可動部12と湾曲部11との間に配置されている。負荷部材14は、前腕の内旋時に肩関節に負荷を与える構成である。負荷部材14は、弾性によって負荷を与える構成である。すなわち、図3Aの肩装具1は、可動部12を肩関節の内旋方向に動かしたときに、可動部12に外旋方向の復元力がかかる構成である。ただし、外旋方向の復元力がかかる構成は、図3Aの構成に限定されない。詳細は後述の<5.第3の実施形態の変形例>に説明を譲る。
【0027】
図3Aに示すように、負荷部材14は、可動部12と湾曲部11との接続部付近の空隙を埋めるように略三角柱形状に形成されている。このような形状によれば、負荷をコンパクトな構成によって効率的に作用させることができる。ただし、負荷部材14の形状は、図3Aに示す形状に限定されない。負荷部材14の個数および配置の態様も、図3Aに示すような上下2段重ねの態様に限定されない。負荷部材14の材質も限定されず、例えば、発泡体、気体又は液体の封入体、ばね、ゴムおよび合成樹脂などの弾性回復する種々の部材を選択することができる。負荷部材14は、可動部12および湾曲部11に着脱可能に固定されていてもよく、または、着脱不能に固定されていてもよい。負荷部材14が単に可動部12と湾曲部11との間に挟持される態様も本開示の範囲内である。負荷部材14を可動部12および湾曲部11の少なくとも一方に装着するための構成は限定されず、例えば、面ファスナやスナップボタンなどであってもよい。
負荷部材14の好ましい態様としては、リハビリの程度の調整し易さ、取扱い性の簡便さから、可動部12及び/又は湾曲部11と着脱可能で、リハビリによる肩関節の内旋方向への圧縮による体積変化(減少)とともに抗力を発し、圧縮解除後に弾性回復により元の形状に復元する部材である。
【0028】
[胴ベルト15]
胴ベルト15は、使用者の胴に巻かれる構成である。胴ベルト15は、湾曲部11と着脱可能な構成である。より具体的には、図3Bの展開正面図に示すように、胴ベルト15は、その表面における長手方向の一方の端部上にポケット151を有しており、このポケット151は、長手方向の他方の端部が開口されている。ポケット151には、胴ベルト15への湾曲部11の装着時に、湾曲部11の一部が挿入されるようになっている。また、胴ベルト15は、湾曲部11と略同一(同一を含む)の幅方向の寸法を有している。このように、胴ベルト15が広い幅をもつことで、装着時にベルトがよじれることなく簡便に装着できる。胴ベルト15の材質は限定されず、例えば、非伸縮性又は難伸縮性のベルト材によって形成してもよい。また、胴ベルト15は、外部がカバー材であってもよく、このカバー材の外表面は、ループ状またはフック状に起毛されていてもよい。胴ベルト15を固定するための構成も限定されず、例えば、面ファスナ、バックルまたはスナップボタンなどであってもよい。
【0029】
[動作例]
本実施形態の肩装具1を使用する際には、図4Aに示すように、湾曲部11を、その一端から胴ベルト15のポケット151に挿し込んだ後に、胴ベルト15を胴に巻き付けることで、肩装具1を装着する。肩装具1の装着初期状態すなわち負荷がかけられていない状態においては、前腕は、図4Bに示すような内外旋中間位をとる。
【0030】
次いで、内外旋中間位から、使用者がリハビリ運動すなわち内旋動作を行うと、負荷部材14が圧縮され、その反作用として、外旋方向への復元力が発揮される。この復元力に抗する力で内旋動作を継続することで、使用者の肩関節には適度な負荷が作用する。
【0031】
次いで、前腕が図4Cに示すような内旋位をとった時点で、1回分の内旋動作を終了させる。使用者は、内旋方向に発揮させていた筋力を脱力することで、負荷部材14の復元力によって前腕を内外旋中間位に容易に戻すことができる。その後は、次回以降の内旋動作を繰り返す。
【0032】
本実施形態の肩装具1によれば、図2Aの肩装具1と同様の効果を奏することができ、また、負荷部材14を備えることで、リハビリ効果を更に高めることができる。負荷部材14が着脱可能であれば、患部の回復にともなって負荷部材14だけをより負荷が大きいものに変更していくことも可能であるので、簡易な構成によって更なる早期回復効果を期待することができる。また、本実施形態の肩装具1は、胴ベルト15を備えることで、前腕の支持安定性を更に高めることができる。また、ポケット151に湾曲部11を挿入してベルト15を巻き付けることによって湾曲部11を簡便かつ安定的に装着することができる。
【0033】
<5.第3の実施形態の変形例>
図5は、本実施形態の変形例の肩装具1の構成例を示す斜視図である。より詳しくは、図5Aは、第1の変形例を、図5Bは、第2の変形例を示す斜視図である。
図5Aに示すように、第1の変形例の肩装具1は、図3Aの肩装具1に対して、胴ベルト15および前腕固定部材13を有しない点が異なる。本変形例の肩装具1によれば、部品点数およびコストを削減することができる。
図5Bに示すように、第2の変形例の肩装具1は、図3Aの肩装具1に対して、負荷部材14が、ねじりコイルばねなどのばねである点が異なる。本変形例の肩装具1によっても、リハビリ効果を高めることができる。
【0034】
上記実施形態および変形例は、これらを適宜組み合わせてもよい。上記実施形態および変形例に記載の作用効果はあくまで一例であって限定されるものではなく、上記以外の作用効果を奏してもよい。
【符号の説明】
【0035】
1 肩装具
11 湾曲部
12 可動部
13 前腕固定部材
14 負荷部材
15 胴ベルト
図1
図2
図3
図4
図5