特許第6376441号(P6376441)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6376441
(24)【登録日】2018年8月3日
(45)【発行日】2018年8月22日
(54)【発明の名称】蓄電素子及び蓄電素子の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/058 20100101AFI20180813BHJP
   H01M 10/04 20060101ALI20180813BHJP
   H01M 4/70 20060101ALI20180813BHJP
   H01M 4/02 20060101ALI20180813BHJP
   H01M 4/13 20100101ALI20180813BHJP
   H01G 11/22 20130101ALI20180813BHJP
【FI】
   H01M10/058
   H01M10/04 Z
   H01M4/70 A
   H01M4/02 Z
   H01M4/13
   H01G11/22
【請求項の数】6
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2014-106141(P2014-106141)
(22)【出願日】2014年5月22日
(65)【公開番号】特開2015-222632(P2015-222632A)
(43)【公開日】2015年12月10日
【審査請求日】2017年4月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】507151526
【氏名又は名称】株式会社GSユアサ
(74)【代理人】
【識別番号】100074332
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 昇
(74)【代理人】
【識別番号】100114432
【弁理士】
【氏名又は名称】中谷 寛昭
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 丈
【審査官】 松村 駿一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−020974(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/058
H01M 10/04
H01M 4/02
H01M 4/70
H01G 11/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート状に形成された正極および負極を電極として備え、
前記正極および前記負極は、積層され、
前記各電極は、集電基材と該集電基材の両面側に配された活物質層とを含み、
前記各集電基材の少なくとも一部は、前記各電極の端部まで延び、該端部にて積層方向の一方側へ向けて曲がっており、
前記正極および前記負極は、前記端部に、前記集電基材が曲がった屈曲端部をそれぞれ有し、
互いに隣り合う前記正極および前記負極の前記端部では、前記集電基材が曲がる積層方向の各向きが、互いに反対であり、
前記正極の屈曲端部と前記負極の屈曲端部とは、互いに隣りあっており、
各屈曲端部において、前記集電基材が曲がる方向側の活物質層の密度は、逆方向側の活物質層の密度よりも高い、蓄電素子。
【請求項2】
積層方向に交互に並んだ前記正極および前記負極の端部では、前記集電基材としての正極集電基材が同じ方向に曲がり、前記集電基材としての負極集電基材が前記端部の前記正極集電基材と反対方向に曲がっている請求項1に記載の蓄電素子。
【請求項3】
前記正極および前記負極の各厚みは、一定である請求項1又は2に記載の蓄電素子。
【請求項4】
前記電極の少なくとも一方は、矩形状に形成され、該矩形状の一方の電極の少なくとも2辺に沿った端部にて前記集電基材が曲がる方向は、同じである請求項1乃至3のいずれか1項に記載の蓄電素子。
【請求項5】
各屈曲端部は、前記集電基材の端縁が活物質層の端縁よりも外側にはみ出すように形成されている、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の蓄電素子。
【請求項6】
シート状の切断前集電基材の両面側に切断前活物質層がそれぞれ配されてなる電極原板を作製する電極原板作製工程と、
前記電極原板の厚み方向の一方側へ向けて切断力を加えることによって前記電極原板を切断して正極および負極を電極として作製する切断工程と、
前記切断によって作製された前記正極および前記負極とセパレータとを厚み方向に積層することにより電極体を作製する電極体作製工程と、
前記電極体および電解液をケース内に収容する収容工程と、を備え、
前記切断工程では、各電極原板の前記切断によって、前記集電基材が各電極の端部まで延び且つ厚み方向の一方側へ曲がった屈曲端部を各電極において形成し、
前記電極体作製工程では、前記正極の屈曲端部と前記負極の屈曲端部とが厚み方向に互いに隣り合うように、且つ、互いに隣り合う前記正極および前記負極の前記屈曲端部において集電基材が曲がる積層方向の各向きが、互いに反対となるように、前記正極と前記負極とを積層する、蓄電素子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄電素子及び蓄電素子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、蓄電素子としては、様々なものが知られている。例えば、蓄電素子としては、それぞれシート状に形成された正極および負極を電極として備え、正極および負極が、互いに向き合ったものが提案されている。
この種の蓄電素子においては、例えば、正極および負極の各電極が互いに厚み方向に積層されている。また、各電極が、例えば、シート状の集電基材と、該集電基材の両面側にそれぞれ配された活物質層とを含んでいる。
【0003】
この種の蓄電素子の一例は、例えば、特許文献1に記載されている。特許文献1に記載された蓄電素子は、互いに積層された正極および負極を巻回した電極体と、電極体を内部に収容するケースとを備えている。
【0004】
また、特許文献1に記載された蓄電素子において、負極は、シート状の集電基材の両面側に活物質層が配されてなる負極原板を厚み方向に切断することによって形成されている。即ち、負極は、端部の少なくとも一部に、切断によって集電基材が曲がった屈曲端部を有する。
負極の屈曲端部は、負極原板が厚み方向に切断されることによって形成されたものであることから、屈曲端部における集電基材の端部は、負極の端縁へ延びつつ、負極の厚み方向の一方側へ向けて曲がっている。即ち、負極の屈曲端部においては、集電基材は、切断時の切断力によって、負極の一方の活物質層側へ曲がっている。
さらに、特許文献1に記載された蓄電素子においては、積層された正極および負極を巻回することによって電極体が形成されている。電極体においては、負極の屈曲端部において集電基材が曲がる方向が、電極体の巻回中心方向に揃っている。
【0005】
斯かる蓄電素子においては、充電によって、負極の活物質層が膨張する。この膨張によって電極体が外側へ膨張する。
斯かる蓄電素子においては、負極の屈曲端部において集電基材が負極の端縁へ延びつつ曲がる方向が、電極体の巻回中心方向である。従って、電極体が外側へ膨張しても、集電基材が電極体の巻回中心方向へ曲がっている分、集電基材の端縁がケースの内面と接触しにくい。これにより、斯かる蓄電素子においては、充放電に伴う電極体の膨張によって、例えば、集電基材の端縁とケースとが接触することが抑制されている。
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載された蓄電素子は、屈曲端部を有する負極を含み、屈曲端部にて曲がっている集電基材の向きを単に所定の方向へ揃えただけのものである。従って、斯かる蓄電素子は、充放電時において不均一な充放電反応が屈曲端部において生じるという問題を有する。
詳しくは、斯かる蓄電素子においては、切断されることによって負極の屈曲端部が形成されているため、負極の屈曲端部が、切断時に少なくとも厚み方向の一方の方向へ切断力を受けている。従って、斯かる蓄電素子においては、例えば、集電基材の一方の面側に配された活物質層の密度が切断力によって高くなっている分、集電基材の他方の面側に配された活物質層の密度が低くなっている。各活物質層において密度差が生じていると、充放電時に不均一な充放電反応が起こる。斯かる蓄電素子がリチウムイオン二次電池であれば、不均一な充放電反応によって、例えば、負極の屈曲端部においてリチウムが析出することとなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開第2011/016243号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記の問題点等に鑑み、電極の端部にて集電基材が曲がっているにも関わらず、不均一な充放電反応が抑制されている蓄電素子、及び、その製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決すべく、本発明に係る蓄電素子は、
シート状に形成された正極および負極を電極として備え、
正極および負極は、積層され、
各電極は、集電基材と該集電基材の両面側に配された活物質層とを含み、
各集電基材の少なくとも一部は、各電極の端部まで延び、該端部にて積層方向の一方側へ向けて曲がっており、
正極および負極は、端部に、集電基材が曲がった屈曲端部をそれぞれ有し、
互いに隣り合う正極および負極の端部では、集電基材が曲がる積層方向の各向きが、互いに反対であり、
正極の屈曲端部と負極の屈曲端部とは、互いに隣りあっており、
各屈曲端部において、集電基材が曲がる方向側の活物質層の密度は、逆方向側の活物質層の密度よりも高い
【0010】
本発明に係る蓄電素子の1つの態様としては、積層方向に交互に並んだ正極および負極の端部では、集電基材としての正極集電基材が同じ方向に曲がり、集電基材としての負極集電基材が端部の正極集電基材と反対方向に曲がっている態様が採用される。
【0011】
本発明に係る蓄電素子の他の態様としては、正極および負極の各厚みが、一定である態様が採用される。
【0012】
本発明に係る蓄電素子の他の態様としては、電極の少なくとも一方は、矩形状に形成され、該矩形状の一方の電極の少なくとも2辺に沿った端部にて集電基材が曲がる方向は、同じである態様が採用される。
本発明に係る蓄電素子の他の態様としては、各屈曲端部は、前記集電基材の端縁が活物質層の端縁よりも外側にはみ出すように形成されている態様が採用される。
本発明に係る蓄電素子の製造方法は、シート状の切断前集電基材の両面側に切断前活物質層がそれぞれ配されてなる電極原板を作製する電極原板作製工程と、
電極原板の厚み方向の一方側へ向けて切断力を加えることによって電極原板を切断して正極および負極を電極として作製する切断工程と、
切断によって作製された正極および負極とセパレータとを厚み方向に積層することにより電極体を作製する電極体作製工程と、
電極体および電解液をケース内に収容する収容工程と、を備え、
切断工程では、各電極原板の切断によって、集電基材が各電極の端部まで延び且つ厚み方向の一方側へ曲がった屈曲端部を各電極において形成し、
電極体作製工程では、正極の屈曲端部と負極の屈曲端部とが厚み方向に互いに隣り合うように、且つ、互いに隣り合う正極および負極の屈曲端部において集電基材が曲がる積層方向の各向きが、互いに反対となるように、正極と負極とを積層する。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る蓄電素子は、電極の端部にて集電基材が曲がっているにも関わらず、不均一な充放電反応が抑制されているという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図3に示す電極体のII−II断面の一例を模式的に表した断面図。
図2図3に示す電極体のII−II断面の他の例を模式的に表した断面図。
図3】扁平状の電極体の一例を一方の面側から見たときの様子を模式的に表した模式図。
図4】電極体の積層構造の一例を模式的に表した模式図。
図5】蓄電素子としての非水電解液二次電池(リチウムイオン二次電池)の一例の内部構造を模式的に表した模式図。
図6】電極体の一例の断面を模式的に表した模式図。
図7】巻回型の電極体の一例の構造の一部を分解して模式的に表した模式図。
図8図9に示す電極体のIV−IV断面を模式的に表した模式図。
図9】蓄電素子としての非水電解液二次電池(リチウムイオン二次電池)の他の例の外観を表した図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係る蓄電素子の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。蓄電素子の実施形態としては、一次電池、二次電池、キャパシタ等がある。本実施形態では、蓄電素子の一例として、充放電可能な二次電池について説明する。
【0016】
本実施形態の蓄電素子1は、図1および図2に示すように、
シート状に形成された正極10および負極20を電極として備え、
正極10および負極20は、積層され、
各電極は、集電基材11,21と該集電基材11,21の両面側に配された活物質層12,22とを備え、
各集電基材11,21の少なくとも一部は、各電極の端部まで延び、該端部にて積層方向の一方側へ向けて曲がっており、
互いに隣り合う正極10および負極20の端部では、集電基材11,21が曲がる積層方向の各向きが、互いに反対である。
詳しくは、本実施形態の蓄電素子1において、積層方向に交互に並んだ正極10および負極20の端部では、集電基材としての正極集電基材11同士が、同じ方向に曲がり、集電基材としての負極集電基材21同士が、上記端部の正極集電基材11と反対方向に曲がっている。
【0017】
本実施形態の蓄電素子は、非水電解質二次電池である。具体的には、本実施形態の蓄電素子1としては、例えば、図5図9に示す非水電解質二次電池1(リチウムイオン二次電池)が挙げられる。
この種の蓄電素子は、電気エネルギーを供給する。蓄電素子は、単一又は複数で使用される。具体的に、蓄電素子は、要求される出力および要求される電圧が小さいときには、単一で使用される。一方、蓄電素子は、要求される出力および要求される電圧の少なくとも一方が大きいときには、他の蓄電素子と組み合わされて蓄電装置に用いられる。蓄電装置では、該蓄電装置に用いられる蓄電素子が電気エネルギーを供給する。
【0018】
<第1実施形態>
第1実施形態の蓄電素子1は、例えば、複数の正極10および複数の負極20が積層された電極体2を備える。
さらに、第1実施形態の蓄電素子1は、例えば図5に示すように、電極体2を内部に収容するケース40を備える。
また、第1実施形態の蓄電素子1は、ケース40内に貯留された電解液を含む。
【0019】
第1実施形態の蓄電素子1は、複数のシート状のセパレータ3を備える。
図1および図2に示すように、セパレータ3は、正極10と負極20との間に配されている。セパレータ3は、図1に示すように、電極体2の積層方向の最も外側にそれぞれ配され得る。一方、セパレータ3は、図2に示すように、電極体2の積層方向の最も外側に配置されていなくてもよい。
【0020】
電極体2は、扁平形状(板状)に形成されている。
電極体2は、例えば、図4および図5に示すように、複数の正極10および複数の負極20を含み、正極10および負極20が厚み方向に交互に積層されることによって形成されている。
なお、電極体2は、後述するように、例えば、帯状の正極10および帯状の負極20が重ねられ、さらに巻回されることによって形成されていてもよい。
【0021】
詳しくは、電極体2は、例えば図1および図2に示すように、シート状の正極10とシート状の負極20とを電極として備える。正極10および負極20の少なくとも一方は、矩形状に形成されている。
各電極は、シート状の集電基材と、活物質を含み集電基材の両面側にそれぞれ配された活物質層とを含む。
即ち、正極10は、シート状の正極集電基材11と、正極活物質を含み正極集電基材11の両面側にそれぞれ配された正極活物質層12とを含む。
同様に、負極20は、シート状の負極集電基材21と、負極活物質を含み負極集電基材21の両面側にそれぞれ配された負極活物質層22とを含む。
例えば、矩形状の各電極では、少なくとも2辺に沿った端部にて集電基材が曲がり、集電基材が曲がった端部での集電基材の曲がる方向は、同じである。
【0022】
具体的には、電極としての正極10および負極20は、端部の少なくとも一部に、厚み方向に切断されることによって集電基材が曲がった屈曲端部6をそれぞれ有する。
屈曲端部6では、集電基材11、21の両面側に活物質層12、22が配されている。また、集電基材11、21が電極の端縁へ延びつつ電極(正極10、負極20)の一方の表面側へ曲がっている。
また、例えば図1および図2に示すように、正極10および負極20のそれぞれの屈曲端部6は、厚み方向(積層方向)にそれぞれ互いに隣り合うように配されている。
さらに、互いに隣り合う正極10および負極20の屈曲端部6では、集電基材11、21が電極(正極10、負極20)の一方の表面側へ曲がる厚み方向の向きが、それぞれ互いに反対方向である。
【0023】
第1実施形態の蓄電素子1においては、正極10および負極20が、厚み方向の切断によって集電基材が曲がった屈曲端部6をそれぞれ有する。従って、それぞれの屈曲端部6における一方の活物質層の密度が切断によって高くなった分、他方の活物質層の密度が低くなっている。即ち、正極10および負極20それぞれの屈曲端部6においては、集電基材の一方の面側に配された活物質層の密度が切断によって高くなっている分、他方の面側に配された活物質層の密度が低くなっている。また、屈曲端部6では、密度が高くなった活物質層側の電極表面側へ集電基材が曲がっている。
ところが、正極10および負極20の屈曲端部6が互いに隣り合っており、且つ、各屈曲端部6において集電基材が各電極の一方の表面側へ曲がる厚み方向の向きが、それぞれ互いに反対方向である。即ち、互いに隣り合う正極10および負極20の屈曲端部6において、密度が高くなった活物質層同士が隣り合っているか、又は、密度が低くなった活物質層同士が隣り合っている。
従って、密度が高くなった活物質層同士が隣り合っている分、又は、密度が低くなった活物質層同士が隣り合っている分、正極10および負極20の屈曲端部6において、互いに向かい合う活物質層同士の間における充放電反応は、より均一なものとなる。
従って、上記の蓄電素子1においては、電極の端部にて集電基材が曲がっているにも関わらず、不均一な充放電反応が抑制されている。即ち、上記の蓄電素子1においては、切断によって集電基材が曲がり集電基材の両側の各活物質層の密度差が大きくなった電極を備えているにも関わらず、不均一な充放電反応が抑制されている。
【0024】
正極10は、例えば図1および図2に示すように、シート状の正極集電基材11と、粒子状の正極活物質を含む正極活物質層12とを含む。正極活物質層12は、正極集電基材11の両面側に配されている。
正極10の形状は、例えば図4に示すように、矩形シート状である。
正極10の厚みは、通常、35〜250μmである。また、正極集電基材11の厚みは、通常、5〜50μmであり、正極活物質層12の厚みは、通常、15〜100μmである。
正極10の厚みは、通常、一定である。
【0025】
負極20は、シート状の負極集電基材21と、該負極集電基材21の両面側に配され粒子状の負極活物質を含む負極活物質層22とを含む。
負極20の形状は、例えば図4に示すように、矩形シート状である。
負極20の厚みは、通常、35〜250μmである。また、負極集電基材21の厚みは、通常、5〜50μmであり、負極活物質層22の厚みは、通常、15〜100μmである。
負極20の厚みは、通常、一定である。
【0026】
電極体2においては、例えば図1および図2に示すように、正極活物質層12と負極活物質層22とが厚み方向に互いに向き合うように、正極10と負極20とがセパレータ3を介して重ね合わされている。
また、電極体2においては、例えば図4に示すように、複数の正極10および複数の負極20が厚み方向に積層され、正極10および負極20が積層方向に交互に並んでいる。また、正極10の正極活物質層12と、負極20の負極活物質層22とが、セパレータ3を介して互いに向き合っている。
【0027】
各電極(正極10および負極20)は、端部の少なくとも一部に、厚み方向に切断されることによって形成された屈曲端部6を有する。
屈曲端部6は、切断前の集電基材と、該切断前の集電基材の両面側にそれぞれ配された切断前の活物質層とを含む電極原板が厚み方向に切断されることによって形成されている。電極原板の詳細については、後述する。
【0028】
屈曲端部6は、電極原板が厚み方向に切断されることによって形成されているため、屈曲端部6では、集電基材が電極の端縁へ延びつつ電極の一方の活物質層側へ(電極の厚み方向の一方側へ)向けて曲がっている。例えば、図1および図2に示すように、屈曲端部6では、集電基材が電極の端縁まで延びている。屈曲端部6では、活物質層が集電基材の両面側にそれぞれ配されている。
例えば、屈曲端部6は、集電基材が電極の端縁に向かうほど電極の一方の表面側へ近づくように形成されている。
【0029】
屈曲端部6は、各電極の端部において、電極の端縁へ向けて延びる集電基材が電極の一方の表面側へ近づき始める部位から、電極の端縁までの部分である。
【0030】
屈曲端部6は、少なくとも厚み方向の一方向側から他方向側へ向けて切断力が加わることによって、電極原板が切断されて形成されている。従って、屈曲端部6においては、一方の活物質層の密度が切断力によって高くなった分、他方の活物質層の密度が低くなっている。即ち、各電極の屈曲端部6においては、集電基材の一方の面側に配された活物質層の密度が高くなった分、他方の面側に配された活物質層の密度が低くなっている。
【0031】
電極体2においては、正極10および負極20の屈曲端部6は、セパレータ3を介して、積層方向(厚み方向)にそれぞれ互いに隣り合うように配されている。
各電極の屈曲端部6が“隣り合う”とは、例えば図1および図2に示すように、一方の屈曲端部6の少なくとも一部が、他方の屈曲端部6の少なくとも一部と互いに向き合っていることを意味する。即ち、電極の厚み方向(積層方向)の一方側から他方側へ各屈曲端部6を見たときに、一方の屈曲端部6の少なくとも一部が、他方の屈曲端部6の少なくとも一部と重なり合っていることを意味する。
【0032】
電極体2においては、互いに隣り合う正極10および負極20の屈曲端部6にて、集電基材が正極10又は負極20の端縁へ延びつつ一方の活物質層側へ曲がる厚み方向の向きが、それぞれ互いに反対方向である。即ち、正極10の屈曲端部6において正極集電基材11が曲がる方向と、この正極10の屈曲端部6と隣り合う負極20の屈曲端部6において負極集電基材21が曲がる方向とが、反対方向である。
【0033】
電極体2が上記のように構成されているため、上述したように、互いに隣り合う屈曲端部6において、切断力によって密度が高くなった正極活物質層12と負極活物質層22とが隣り合っているか、又は、密度が低くなった正極活物質層12と負極活物質層22とが隣り合っている。
従って、密度が高くなった活物質層同士が隣り合っている分、又は、密度が低くなった活物質層同士が隣り合っている分、互いに隣り合う正極10および負極20の屈曲端部6間において、正極活物質層12と負極活物質層22との間における充放電反応は、より均一なものとなる。
【0034】
電極体2においては、図1および図2に示すように、正極10および負極20が交互に積層方向に並んでいる。詳しくは、正極10の屈曲端部6が積層方向に並び、且つ、負極20の屈曲端部6が積層方向に並んでいる。積層方向に並んだ複数の正極10の屈曲端部6では、各集電基材の曲がる方向が同じである。また、積層方向に並んだ複数の負極20の屈曲端部6では、各集電基材の曲がる方向が同じである。
【0035】
屈曲端部6は、例えば図1に示すように、集電基材の端縁と各活物質層の端縁とが面一となるように形成されている。又は、屈曲端部6は、例えば図2に示すように、集電基材の端縁が活物質層の端縁よりも外側にはみ出すように形成されていてもよい。
【0036】
屈曲端部6は、各電極(正極10および負極20)の端部の少なくとも一部に形成されている。好ましくは、電極の少なくとも一方が、矩形状に形成され、矩形状の電極の少なくとも2辺に沿った端部に屈曲端部6が形成されている。
具体的には、屈曲端部6は、例えば、矩形状の電極の3辺に沿って形成されている。後述する集電タブは、屈曲端部6が形成されていない端部であって、電極の残りの1辺に沿った端部の一部に配され得る。
屈曲端部6は、各電極(正極10および負極20)の端部全てに形成されていてもよい。具体的には、屈曲端部6は、例えば、電極原板を打ち抜くことにより、端部すべてに形成されていてもよい。電極原板の打ち抜きにより、セパレータ3よりも外側へ突出する集電タブを形成することができる。
電極体2が後述する巻回型である場合、屈曲端部6は、通常、矩形状の電極の対向する2辺に沿って形成されている。この場合、電極体2では、巻回軸の両側にて巻回方向に沿って、屈曲端部6がそれぞれ配されることとなる。
【0037】
なお、各電極の屈曲端部6における集電基材11、21は、通常、同じ方向に曲がっている。例えば、矩形状の電極の少なくとも2辺に沿って形成された屈曲端部6では、集電基材11、21が同じ方向に曲がっている。
【0038】
屈曲端部6においては、集電基材11、21の曲がり幅(図1に示すAの長さ)が、通常、0μmを超え100μm以下である。曲がり幅は、屈曲端部6における集電基材の最大幅(厚み方向長さ)である。
【0039】
電極体2においては、積層方向の一方側から見たときに、例えば、正極活物質層12の面積よりも負極活物質層22の面積が大きい。しかも、正極活物質層12が負極活物質層22の内側に配されている。
斯かる構成により、充電時に正極活物質層12から負極20側へ移動してきたLiイオンを負極活物質層22に確実に吸蔵できる。
【0040】
正極集電基材11は、通常、矩形シート状に形成されている。正極集電基材11の端部の一部は、外側へ突出して集電タブ11aを形成していてもよい。
正極集電基材11の厚みは、特に限定されないが、通常、1〜500μmである。
【0041】
正極集電基材11の材質としては、例えば、アルミニウム、チタン、ステンレス鋼、ニッケルなどの金属が挙げられる。
正極集電基材11の材質としては、金属以外にも、例えば、焼成炭素、導電性高分子等が挙げられる。
正極集電基材11としては、例えば、金属箔が挙げられる。
【0042】
正極活物質層12の形状は、一方の面側から見たときに、例えば、矩形状である。
【0043】
正極活物質は、正極10において充電反応および放電反応の電極反応に寄与し得る金属化合物を含むものである。
正極活物質は、通常、粒子状に形成されている。
【0044】
正極活物質に含まれる金属化合物としては、特に限定されず、例えば、ニッケル酸リチウム(LiNiO)、スピネルマンガン酸リチウム(LiMn)、コバルト酸リチウム(LiCoO)等のリチウム複合酸化物などが挙げられる。
また、斯かる金属化合物としては、リン酸鉄リチウムなどのオリビン型リン酸金属リチウム等が挙げられる。
【0045】
正極活物質層12は、構成成分として、導電剤、結着剤、増粘剤、フィラー等を必要に応じて含有する。
【0046】
導電剤としては、特に限定されず、例えば、天然黒鉛(鱗状黒鉛、鱗片状黒鉛、土状黒鉛等)、人造黒鉛、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、カーボンウイスカー、炭素繊維、金属(銅、ニッケル、アルミニウム、銀、金等)粉、金属繊維、導電性セラミックスなどが挙げられる。
導電剤としては、例えば、上記の1種単独物、又は2種以上の混合物が採用される。
【0047】
結着剤としては、特に限定されず、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリエチレン、ポリプロピレン等の熱可塑性樹脂、エチレン−プロピレン−ジエンターポリマー(EPDM)、スルホン化EPDM、スチレンブタジエンゴム(SBR)、フッ素ゴムなどが挙げられる。
結着剤としては、例えば、上記の1種単独物、又は2種以上の混合物が採用される。
【0048】
増粘剤としては、特に限定されず、例えば、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース等の多糖類等が挙げられる。
増粘剤としては、例えば、上記の1種単独物、又は2種以上の混合物が採用される。
【0049】
フィラーとしては、特に限定されず、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン等のオレフィン系ポリマー、無定形シリカ、アルミナ、ゼオライト、ガラス等が挙げられる。
【0050】
負極集電基材21は、通常、矩形シート状に形成されている。負極集電基材21の端部の一部は、外側へ突出して集電タブ21aを形成していてもよい。
負極集電基材21の厚みは、特に限定されないが、通常、5〜50μmである。
【0051】
負極集電基材21の材質としては、例えば、銅、ニッケル、鉄、ステンレス鋼、チタン、アルミニウムなどの金属が挙げられる。
負極集電基材21の材質としては、金属以外にも、焼成炭素、導電性高分子、導電性ガラス等が挙げられる。
負極集電基材21としては、例えば、上記金属の金属箔が挙げられる。
【0052】
負極活物質層22の形状は、一方の面側から見たときに、例えば、矩形状である。
【0053】
負極活物質は、負極20において充電反応および放電反応の電極反応に寄与し得る物質である。
負極活物質としては、例えば、炭素質材料、リチウム金属、リチウムイオンを吸蔵および放出可能な合金(リチウム合金等)、一般式MOz(Mは、W、Mo、Si、Cu、およびSnから選ばれる少なくとも1種の元素を示し、zは、0<z≦2の範囲を数値を示す)で表される金属酸化物、リチウム金属酸化物(LiTi12等)、および、ポリリン酸化合物のうちの少なくとも1種が挙げられる。
【0054】
炭素質材料としては、例えば、黒鉛(グラファイト)および非晶質炭素の少なくとも1種が挙げられる。
非晶質炭素としては、難黒鉛化性炭素(ハードカーボン)や易黒鉛化性炭素(ソフトカーボン)などが挙げられる。
【0055】
リチウムイオンを吸蔵および放出可能な合金としては、例えば、リチウム―アルミニウム合金、リチウム―鉛合金、リチウム―錫合金、リチウム―アルミニウム―錫合金、およびリチウム―ガリウム合金のうちの少なくとも1種のリチウム合金、又は、ウッド合金等が挙げられる。
【0056】
負極活物質層22は、正極活物質層12と同様に、構成成分として、上述した結着剤、増粘剤、フィラー等を必要に応じて含有する。
【0057】
セパレータ3は、電極間の充放電反応を確保させつつ電極間の短絡を防ぐものである。
セパレータ3は、正極10の正極活物質層12と、負極20の負極活物質層22との間に配されている。
【0058】
セパレータ3としては、例えば、多孔膜や不織布等によって構成されたものが挙げられる。セパレータ3は、例えば、多孔膜や不織布の単独物、又は、これらが組み合わされたもので構成されている。
【0059】
セパレータ3の材質としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂、および、フッ素系樹脂のうちの少なくとも1種などが挙げられる。
【0060】
電解液は、ケース40内に収容されている。電解液の少なくとも一部は、ケース40内に収容された電極体2に含浸されている。
【0061】
電解液は、通常、非水溶媒と、電解質塩とを含む。
電解液は、通常、電解質塩を0.5〜2.0mol/Lの濃度で含む。
【0062】
非水溶媒としては、一般的に蓄電素子等において用いられているものが採用される。
具体的には、非水溶媒としては、例えば、環状炭酸エステル類、ラクトン類、鎖状カーボネート類、鎖状エステル類、エーテル類、ニトリル類などが挙げられる。
環状炭酸エステル類としては、例えば、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ブチレンカーボネート、クロロエチレンカーボネート等が挙げられる。
ラクトン類としては、例えば、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン等が挙げられる。
鎖状カーボネート類としては、例えば、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート等が挙げられる。
鎖状エステル類としては、例えば、ギ酸メチル、酢酸メチル、酪酸メチル等が挙げられる。
エーテル類としては、例えば、1,3−ジオキサン、1,4−ジオキサン、1,2−ジメトキシエタン、1,4−ジブトキシエタン、メチルジグライム等が挙げられる。
ニトリル類としては、例えば、アセトニトリル、ベンゾニトリル等が挙げられる。
さらに、非水溶媒としては、例えば、テトラヒドロフラン若しくはその誘導体、ジオキソラン若しくはその誘導体、エチレンスルフィド、スルホラン、スルトン若しくはその誘導体等が挙げられる。
非水溶媒としては、上記の単独物、又は、上記の2種以上の混合物等が採用されるが、これらに限定されるものではない。
【0063】
電解質塩としては、例えば、LiPF、LiClO、LiBF、LiAsF、LiCFSO、LiN(SOCF、LiN(SO、LiN(SOCF)(SO)、LiSCN、LiBr、LiI、LiSO、Li10Cl10等のリチウム塩が挙げられる。
電解質塩としては、上記の単独物、又は2種以上の混合物等が採用されるが、これらに限定されるものではない。
【0064】
図5および図6に示すように、上記の非水電解液二次電池1は、さらに、電極体2を内部に収容するケース40と、充放電のときに電池外部との電気経路となる端子とを備える。端子としては、例えば、平板状の平板端子51が用いられる。
【0065】
図5に示すように、ケース40は、一対のケース片41を有する。
各ケース片41は、一方向に向けて開口し電極体2を収容する収容部41aと、収容部41aの開口縁から外側に向けて延びるフランジ部41bとを有する。
ケース40は、各ケース片41の収容部41aの開口が互いに向き合いつつ、各ケース片41のフランジ部41bの面が互いに接合することによって、接合後の2つの収容部41a内部の空間に電極体2と電解液とを収容するように構成されている。
各ケース片41は、例えば、アルミ箔と樹脂フィルムとが積層されたラミネート材料で形成されている。
【0066】
ケース40内には、例えば、上述したような電極体2が収容されている。電極体2は、複数の正極10および複数の負極20が厚み方向に交互に並ぶように積層されることによって形成されている。
【0067】
電極体2は、一対のケース片41が上記のごとく互いに接合することによって、外側からケース40によって取り囲まれ、ケース40内に収容されている。
【0068】
平板端子51としては、正極用の平板端子51a、および、負極用の平板端子51bがある。
正極用の平板端子51aは、例えば溶接処理によって、電極体2における各正極集電基材11の集電タブ11aと、接続されている。なお、集電タブ11aの外側部分は、互いに重ねられたうえで、平板端子51aに接続されている。
同様に、負極用の平板端子51bは、例えば溶接処理によって、電極体2における各負極集電基材21の集電タブ21aと、接続されている。集電タブ21aの外側部分は、互いに重ねられたうえで、平板端子51bに接続されている。
平板端子51の一部は、他の蓄電素子又は外部機器と電気的に接続されるように、ケース40外に配されている。
【0069】
第1実施形態の蓄電素子1は、例えば、上記のように複数の正極10と複数の負極20とが厚み方向に交互に複数回積層された電極体2を備えたものであったが、本発明の実施形態の蓄電素子1は、1枚の帯状の正極10と1枚の帯状の負極20とが重ね合わされ、さらに巻回されることによって形成された電極体2(以下、巻回型の電極体ともいう)を備えたもの(以下、第2実施形態の蓄電素子ともいう)であってもよい。
【0070】
<第2実施形態>
第2実施形態の蓄電素子1は、第1実施形態の蓄電素子1と同様に、シート状に形成された正極10および負極20を電極として備えている。
第2実施形態の蓄電素子1においては、図7図9に示すように、1つの正極10および1つの負極20とが積層され、さらに巻回されることにより電極体2(巻回型の電極体)が形成されている。
【0071】
巻回型の電極体2では、端部の少なくとも一部が、図1又は図2に示すような構造となっている。
巻回型の電極体2は、例えば図7に示すように、巻回された状態で扁平な矩形板状である。
巻回型の電極体2では、矩形状の各電極の対向する2辺に沿って、屈曲端部6が形成されている。具体的には、帯状の電極の長手方向の両端部に、屈曲端部6が形成され、帯状の正極10の長手方向の両端側に配された屈曲端部6と、帯状の負極20の長手方向の両端側に配された屈曲端部6とが、積層方向に交互に並んでいる。
第2実施形態の蓄電素子1は、第1実施形態の蓄電素子1と同様に、電極の端部にて集電基材が曲がっているにも関わらず、不均一な充放電反応が抑制されている。即ち、第2実施形態の蓄電素子1は、切断によって集電基材が曲がり集電基材の両側の各活物質層の密度差が大きくなった電極を備えているにも関わらず、不均一な充放電反応が抑制されている。
なお、第2実施形態の蓄電素子1は、特に言及しない限り、第1実施形態が有する構成と同様の構成を有する。
【0072】
第2実施形態の蓄電素子1(巻回型の電極体2を備えた蓄電素子1)は、図7図9に示すように、巻回型の電極体2と、電極体2を収容するケース40と、ケース40の外側に配置される端子であって電極体2と導通する外部端子55と、を備える。また、蓄電素子1は、電極体2、ケース40、および外部端子55の他に、電極体2と外部端子55とを導通させる集電体5等を有する。
【0073】
巻回型の電極体2の正極10は、図7に示すように、帯形状の短手方向である幅方向の一方の端縁部に、正極活物質層12に覆われていない非被覆部10a(正極集電基材11が露出した部分)を有する。
巻回型の電極体2の負極20は、帯形状の短手方向である幅方向の他方(正極の非被覆部と反対側)の端縁部に、負極活物質層22に覆われていない非被覆部20a(負極集電基材21が露出した部分)を有する。負極活物質層22の幅は、正極活物質層12の幅よりも大きい。
巻回型の電極体2では、図7に示すように、正極10と負極20とがセパレータ3によって絶縁された状態で巻回されている。絶縁性を有する部材であるセパレータ3によって、電極体2において、正極10と負極20とが互いに絶縁されている。また、セパレータ3は、ケース40内において、電解液を保持する。これにより、蓄電素子1の充放電時において、リチウムイオンが、セパレータ3を挟んで交互に積層された正極10と負極20との間を移動する。
【0074】
セパレータ3の幅(帯形状の短手方向の寸法)は、負極活物質層22の幅より僅かに大きい。正極10と負極20とは、幅方向に位置ずれした状態で重ね合わされ、この正極10とこの負極20との間にセパレータ3が配置されている。正極10の非被覆部10aと負極20の非被覆部20aとは重なっていない。即ち、正極10の非被覆部10aは、正極10と負極20とが重なる領域から幅方向に突出し、且つ、負極20の非被覆部20aは、正極10と負極20とが重なる領域から幅方向(正極の非被覆部の突出方向と反対の方向)に突出している。積層された状態の正極10、負極20、およびセパレータ3が巻回されることによって、電極体2が形成されている。
【0075】
正極10の非被覆部10aが積層された部分によって、電極体2の非被覆積層部26が形成され、負極20の非被覆部20aが積層された部分によって、電極体2の非被覆積層部26が形成されている。
非被覆積層部26は、集電体5と導通される部分である。非被覆積層部26は、巻回された正極10、負極20、およびセパレータ3の巻回中心方向視において、例えば、中空部9(図8参照)を挟んで、二つの部分(二分された非被覆積層部26a,26a)に区分けされる。
上記の非被覆積層部26は、電極体2の各極に設けられている。即ち、正極10の非被覆部10aのみが積層された非被覆積層部26が電極体2における正極10の非被覆積層部を構成し、負極20の非被覆部20aのみが積層された非被覆積層部26が電極体2における負極20の非被覆積層部を構成する。
【0076】
ケース40は、開口を有するケース本体45と、ケース本体45の開口を塞ぐ(閉じる)蓋板46と、を有する。ケース40は、電極体2および集電体5等の他、電解液を内部空間に収容している。ケース40は、電解液に耐性を有する金属によって形成されている。ケース40は、例えば、アルミニウム、又は、アルミニウム合金等のアルミニウム系金属材料によって形成されている。ケース40は、ステンレス鋼およびニッケル等の金属材料、又は、アルミニウムにナイロン等の樹脂を接着した複合材料等によって形成されていてもよい。
ケース40は、ケース本体45の開口周縁部と、蓋板46の周縁部とを重ね合わせた状態で接合することによって形成されている。また、ケース40は、ケース本体45と蓋板46とによって画定される内部空間を有する。ケース本体45の開口周縁部と蓋板46の周縁部とは、例えば、溶接によって接合されている。
【0077】
蓋板46は、ケース本体45の開口を塞ぐ板状の部材である。具体的には、蓋板46がケース本体45の開口を塞ぐように、蓋板46の周縁部がケース本体45の開口周縁部に重ねられ、開口周縁部と蓋板46とが重ねられた状態で、蓋板46とケース本体45との境界部が溶接されることにより、ケース40が構成されている。
蓋板46は、ケース本体45の開口周縁部に対応する輪郭形状を有する。即ち、蓋板46は、長方形状の板材である。また、蓋板46の四隅は、円弧状となっている。
【0078】
蓋板46は、ケース40内のガスを外部に排出可能なガス排出弁46aを有する。ガス排出弁46aは、ケース40の内部圧力が所定の圧力まで上昇したときに、該ケース40内から外部にガスを排出するように構成されている。ガス排出弁46aは、蓋板46の中央部に設けられている。
蓋板46には、電解液を注入するための注液孔が設けられている。注液孔は、蓋板46を厚さ方向に貫通している。
蓋板46は、注液孔を密閉する(塞ぐ)注液栓46bを備える。注液栓46bは、溶接によってケース40(蓋板46)に固定されている。
【0079】
外部端子55は、他の蓄電素子の外部端子又は外部機器等と電気的に接続される部分である。外部端子55は、導電性を有する部材によって形成されている。例えば、外部端子55は、アルミニウム又はアルミニウム合金等のアルミニウム系金属材料、銅又は銅合金等の銅系金属材料等の溶接性の高い金属材料によって形成されている。
外部端子55は、バスバ等が溶接可能な面56を有する。斯かる面56は、平面である。
【0080】
集電体5は、ケース40内に配置され、電極体2と通電可能に直接又は間接に接続されている。集電体5は、クリップ部材を介して電極体2と通電可能に接続されている。即ち、蓄電素子1は、電極体2と集電体5とを通電可能に接続するクリップ部材を備える。
集電体5は、導電性を有する部材によって形成されている。集電体5は、ケース40の内面に沿って配置されている。
集電体5は、蓄電素子1の正極10と負極20とにそれぞれ接続されている。本実施形態の蓄電素子1では、集電体5は、ケース40内において、電極体2の正極10の非被覆積層部26と、負極20の非被覆積層部26とにそれぞれ接続するように配置されている。
正極10に接続する集電体5と、負極20に接続する集電体5とは、異なる材料によって形成されている。具体的には、正極10に接続する集電体5は、例えば、アルミニウム又はアルミニウム合金によって形成され、負極20に接続する集電体5は、例えば、銅又は銅合金によって形成されている。
【0081】
本実施形態の蓄電素子1は、電極体2とケース40とを絶縁する絶縁部材8を備える。絶縁部材8は、例えば、ケース40(詳しくはケース本体45)と電極体2との間に配置されている。絶縁部材8は、絶縁性を有するシート状の部材によって形成されている。絶縁部材8は、例えば、ポリプロピレン、ポリフェニレンスルフィド等の樹脂によって形成されている。
【0082】
次に、上記の蓄電素子1としての非水電解液二次電池1(リチウムイオン二次電池)の製造方法について説明する。
【0083】
非水電解液二次電池1は、一般的な方法によって製造される。
例えば、非水電解液二次電池1は、
シート状の切断前集電基材の両面側に切断前活物質層がそれぞれ配されてなる電極原板を作製する電極原板作製工程と、
電極原板を厚み方向に切断することによって電極としての正極10および負極20を作製する切断工程と、
切断によって作製された正極10および負極20とセパレータ3とを厚み方向に積層することにより電極体2を作製する電極体作製工程と、
電極体2および電解液をケース40内に収容する収容工程とを行うことによって製造することができる。
【0084】
電極原板作製工程では、電極原板としての正極原板と負極原板とをそれぞれ作製する。
【0085】
正極原板の作製においては、例えば、上述した粒子状の正極活物質、導電剤、結着剤、および増粘剤と、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)等の有機溶媒とを混合し、正極合剤を調製する。次いで、正極合剤をシート状の切断前正極集電基材の両面側に塗布する。続いて、乾燥によって正極合剤から有機溶媒を揮発させることによって、切断前正極集電基材の両面側に正極活物質層12が配されてなる正極原板を作製する。
なお、切断前正極集電基材としては、上述した正極集電基材11と同じ材質のものが採用される。
【0086】
正極原板の作製において正極活物質、導電剤、結着剤、増粘剤等を混合する方法としては、例えば、V型混合機、S型混合機、擂かい機、ボールミル、遊星ボールミルなどの粉体混合機を用いて混合する方法が採用される。
【0087】
正極原板の作製において正極集電基材原板に正極合剤を塗布する方法としては、特に限定されず、例えば、アプリケーターロールなどのローラーコーティング、スクリーンコーティング、ブレードコーティング、スピンコーティング、パーコーティング等が採用される。
【0088】
負極原板は、例えば、正極原板と同様にして作製する。
詳しくは、負極原板は、粒子状の正極活物質に代えて、粒子状の負極活物質を用いる点以外は、例えば、上述した正極原板の作製方法と同様の方法によって、作製する。
即ち、負極原板の作製においては、例えば、上述した粒子状の負極活物質、結着剤、および増粘剤と、有機溶媒とを混合して負極合剤を調製した後、負極合剤をシート状の切断前負極集電基材の両面側に塗布する。次に、乾燥によって、負極合剤から有機溶媒を揮発させる。そして、切断前負極集電基材の両面側に負極活物質層が配されてなる負極原板を作製する。
なお、切断前負極集電基材としては、上述した負極集電基材21と同じ材質のものが採用される。
【0089】
切断工程においては、正極原板および負極原板を一般的な方法によって切断する。
切断方法としては、例えば、トムソン打ち抜き機に取り付けられたトムソン刃によって原板を切断する方法などを採用することができる。また、切断においては、ギャング方式、シャー方式、レザー式、スコア式などを採用することができる。
【0090】
切断工程における切断によって、上述したように電極に屈曲端部6が形成されることとなる。切断においては、正極原板および負極原板のいずれにも、少なくとも厚み方向の一方向側へ向けて切断力が加わる。従って、切断工程における切断によって、屈曲端部6においては、集電基材の一方の面側に配された活物質層の密度が高くなる分、他方の面側に配された活物質層の密度が低くなる。また、集電基材が、密度が高くなった活物質層側へ曲がる。
【0091】
電極体作製工程においては、例えば、図3図5に示す平板状の電極体2を作製する。
電極体2は、例えば、シート状の正極10、シート状のセパレータ3、シート状の負極20、および、シート状のセパレータ3をそれぞれ厚み方向にこの順序で積層することによって、作製する。このとき、正極10の屈曲端部6と、負極20の屈曲端部6とが少なくとも隣り合うように、且つ、隣り合う屈曲端部6の正極集電基材11の向きと負極集電基材21の向きとが反対となるように、正極10と負極20とを積層する。また、正極10の屈曲端部での集電基材の曲がる向きが同じ方向となるように、複数の正極10を積層方向に並べ、負極20の屈曲端部での集電基材の曲がる向きが同じ方向となるように、複数の負極20を積層方向に並べる。さらに、同様にして、正極10、セパレータ3、および負極20を積層することもできる。複数の正極10および複数の負極20の1つずつを交互に積層して電極体2を形成する場合には、例えば、各正極10と各負極20とは、電気的に並列に接続される。
また、電極体作製工程においては、例えば、図7に示す巻回型の電極体2を作製することができる。
巻回型の電極体2の作製においては、例えば、帯状の正極10、帯状のセパレータ3、帯状の負極20、および、帯状のセパレータ3をそれぞれ厚み方向にこの順序で積層した積層物を作製する。このとき、正極10の屈曲端部6と、負極20の屈曲端部6とが少なくとも隣り合うように、且つ、各屈曲端部6での集電基材の曲がる向きが互いに反対方向となるように、正極10と負極20とを積層する。さらに、積層物の幅方向に延びる軸を巻回軸として、積層物を巻回する。このようにして、巻回型の電極体2を作製する。
【0092】
収容工程においては、作製された電極体2と電解液とを、ケース40内に収容する。また、各電極の集電タブ11aの外側部分と、平板端子51とを溶接することによって、平板端子51を電極体2に接続する。
具体的には、上述したケース片41のフランジ部41bを互いに接合させることによって、ケース40内に電極体2を配置する。このとき、予め調製しておいた電解液をケース40内に収容する。このとき、正極用の平板端子51と、束ねた正極10の集電タブ11aとを接続し、且つ、負極用の平板端子51と、束ねた負極20の集電タブ21aとを接続する。また、このとき、正極用の平板端子51の一部、および、負極用の平板端子51の一部をそれぞれケース40外に配する。
【0093】
一方、巻回型の電極体2を製造する場合、収容工程においては、例えば、まず、正極10、セパレータ3、負極20、およびセパレータ3を、この順で重ね合わせ、その後、巻回して電極体2を形成する。続いて、ケース本体45に電極体2を入れる。その後、正極10および負極20にそれぞれ集電体5を接続する。さらに、外部端子55が装着された蓋板46でケース本体45を覆うとともに、集電体5と外部端子55とを接続する。この状態でケース本体45と蓋板46とを溶接する。注液口を通して電解液を注入する。最後に、注液口を注液栓46bで塞ぐ。
【0094】
以上のようにして、蓄電素子としての非水電解質二次電池1を製造することができる。
【0095】
なお、本発明の蓄電素子は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。例えば、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を追加することができ、また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることができる。さらに、ある実施形態の構成の一部を削除することができる。
【0096】
また、上記実施形態においては、蓄電素子が充放電可能な非水電解質二次電池(例えばリチウムイオン二次電池)として用いられる場合について説明したが、蓄電素子の種類や大きさ(容量)は任意である。また、上記実施形態において、蓄電素子の一例として、リチウムイオン二次電池について説明したが、これに限定されるものではない。例えば、本発明は、種々の二次電池、その他、一次電池や、電気二重層キャパシタ等のキャパシタの蓄電素子にも適用可能である。
【0097】
上記実施形態の蓄電素子(例えば電池)は、蓄電装置(蓄電素子が電池の場合は電池モジュール)に用いられてもよい。蓄電装置は、少なくとも2つの蓄電素子1と、2つの(異なる)蓄電素子1同士を電気的に接続するバスバ部材と、を有する。この場合、上記の蓄電素子1の少なくとも1つが蓄電素子1に適用されていればよい。
【符号の説明】
【0098】
1:蓄電素子(リチウムイオン二次電池)、
2:電極体、
3:セパレータ、
5:集電体、
6:屈曲端部、
10:正極、 11:正極集電基材、 12:正極活物質層、
20:負極、 21:負極集電基材、 22:負極活物質層、
40:ケース、
41:ケース片、 41a:収容部、 41b:フランジ部、
45:ケース本体、 46:蓋板、
51:平板端子、 51a:正極用の平板端子、 51b:負極用の平板端子、
55:外部端子。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9