(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記設置環境には、前記電池パックの内部における前記電池モジュールの設置位置の温度が含まれるよう構成されていることを特徴とする請求項4に記載の電池管理システム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような電池モジュール毎にCMUが設けられる電池管理システムでは、BMUにおいて、CMUから送信されるはずの情報が何らかの原因により途絶えると、適切な電池の使用に支障をきたすことになる。このような場合は、例えば、車両に搭載される電池パックなどの電池を管理する電池管理システムでは、電池自体は実際には正常であったとしても、BMUはそのことを知ることができないので、電池への過剰な充電などを未然に防止するためのフェールセーフ(例えば、走行中の回生や外部からの充電機能を停止するなど)を実行せざるを得ないことになる。
【0005】
しかし、このようなフェールセーフの実行は、電池を使用するユーザに大きな影響を及ぼす可能性がある。例えば、車両においては、フェールセーフの実行により電池の使用が制限されるので、ユーザには迅速な車両整備が要求されることになる。このため、フェールセーフの実行は可能な限り回避することが望ましい。
【0006】
上述の事情に鑑みて、本発明の少なくとも一実施形態は、フェールセーフの実行を回避させ、信頼性を向上させた電池管理システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本発明の少なくとも一実施形態に係る電池管理システムは、
電池状態を監視するセルモニタユニットを複数備える電池管理システムであって、
前記セルモニタユニットは、
前記電池状態を監視するよう構成されている電池監視部を複数と、
前記セルモニタユニットの正常性を診断し、該診断によって異常を検出するよう構成されている診断部と、
前記電池状態を監視させるための監視指示を複数の前記電池監視部のうちの少なくとも1つに対して行うよう構成されている監視起動部と、を含み、
複数の前記電池監視部のうちの少なくとも1つは、前記セルモニタユニットが設置される前記電池状態を監視するよう構成されており、
他の前記電池監視部は、前記監視指示に基づいて、他のセルモニタユニットであって前記異常の通知である異常通知をする異常セルモニタユニットが設置される他の電池状態を監視するよう構成されている。
【0008】
上記(1)の構成によれば、電池モジュール毎に設置されるセルモニタユニットに異常が検出された場合であっても、その電池モジュールの電池状態は他のセルモニタユニットにより継続して監視されることになる。このように、同一の電池モジュールの電池状態の監視は電池モジュール毎に設置されるセルモニタユニットの複数によって多重化される。このため、従来行わざるを得なかったフェールセーフの実行を回避することができ、信頼性を向上させた電池管理システムを提供することができる。また、新たなセルモニタユニットを導入することなく電池モジュールの電池状態の監視が多重化されるため、設置スペースによる制約を満足するとことができると共に、コストの面でも有利となる信頼性を向上させた電池管理システムを提供することができる。
【0009】
(2)幾つかの実施形態では、上記(1)の構成において、
前記セルモニタユニットの複数の組合せを含む監視グループを備え、
前記異常通知は、前記監視グループに基づいて特定される、該異常通知をする前記異常セルモニタユニット以外の少なくとも1つの前記他のセルモニタユニットに届けられるよう構成されている。
【0010】
上記(2)の構成によれば、監視グループに属するセルモニタユニット同士で電池モジュールの電池状態の監視を多重化するため、任意のセルモニタユニット間における迅速な監視の切替えを行うことができ、電池管理システムの信頼性を向上させることができる
【0011】
(3)幾つかの実施形態では、上記(1)〜(2)の構成において、
前記セルモニタユニットの前記電池監視部の複数は、第1電池監視部と第2電池監視部の2つであり、
前記監視グループに属する前記セルモニタユニットの数は2であり、
前記セルモニタユニットの前記第1電池監視部は、該セルモニタユニットが設置される前記電池モジュールの前記電池状態を監視するよう構成されており、
一方の前記セルモニタユニットの第2電池監視部は、他方の前記セルモニタユニットの第1電池監視部が監視する前記電池モジュールの前記電池状態を監視するよう構成されている。
【0012】
上記(3)の構成によれば、1つの監視グループに属する2つのセルモニタユニットによって、この2つのセルモニタユニットがそれぞれ設置される電池モジュールの電池状態がそれぞれ監視される(監視の二重化)。これによって、既存の電池管理システムに対する影響を抑えつつ、電池管理システムの信頼性を向上させることができる。
【0013】
(4)幾つかの実施形態では、上記(3)の構成において、
車両に搭載される電池パックと、
複数の前記電池モジュールとを備え、
前記複数の電池モジュールは、前記電池パックの幅方向と該幅方向に直交する前後方向に並べられており、
前記監視グループに含まれる前記組合せは、前記電池モジュールが設置される前記電池パックにおけるそれぞれの設置環境に基づいて決定されるよう構成されている。
【0014】
上記(4)の構成によれば、同一の監視グループに含まれる複数のセルモニタユニットは、各セルモニタユニットの電池パック内におけるそれぞれの設置環境に基づいて決定されるので、監視グループ間で設置環境の違いを平準化することができ、電池管理システムの信頼性を向上させることができる。例えば、他の監視グループと比較して早期に電池状態の監視を継続することができなくなるような監視グループの発生を抑止することができ、このような不良の監視グループの存在によってフェールセーフが実行される可能性を抑制することができる。
【0015】
(5)幾つかの実施形態では、上記(4)の構成において、
前記設置環境には、前記電池パックの内部における前記電池モジュールの設置位置の温度が含まれるよう構成されている。
【0016】
上記(5)の構成によれば、同一の監視グループに属する複数のセルモニタユニットは、電池パック内におけるそれぞれの設置位置での温度環境に基づいて決定される。これによって、設置環境の違いを監視グループ間で平準化することができ、電池管理システムの信頼性を向上させることができる。
【0017】
(6)幾つかの実施形態では、上記(4)〜(5)の構成において、
前記電池パックは、冷却媒体が通る冷却通路を含み、
前記設置環境には、前記冷却媒体が流れる前記冷却通路における相対的な設置位置が含まれるよう構成されている。
【0018】
上記(6)の構成によれば、同一の監視グループに含まれる複数のセルモニタユニットは、各セルモニタユニットが設置される電池パック内部の冷却通路との関係において決定される。これによって、設置環境の違いを監視グループ間で平準化することができ、電池管理システムの信頼性を向上させることができる。
【0019】
(7)幾つかの実施形態では、上記(1)〜(6)の構成において、
第1通信ラインと、
第2通信ラインと、
前記電池状態または前記セルモニタユニットの動作情報の少なくとも一方を含む管理情報を管理するよう構成されているバッテリ管理ユニットを備え、
前記管理情報は、第1通信ラインにより前記バッテリ管理ユニットに届けられるよう構成されており、
前記異常通知は、第2通信ラインにより前記他のセルモニタユニットに届けられるよう構成されている。
【0020】
上記(7)の構成によれば、診断部により検出される異常の通知は、既存の第1通信ラインとは異なる第2通信ラインにより行われる。これによって、セルモニタユニットに機能を集約することができると共に、既存の電池管理システムへの影響を局在化させることができる。また、第1通信ラインを介した通信に異常が発生した場合であっても、第2通信ラインを介して異常の通知が行えるので、電池管理システムの信頼性をさらに向上させることができる。さらに、第2通信ラインは第1通信ラインとは異なるので、第1通信ラインでの通信のような複雑な制御を不要とするなど、システムに即した通信ラインによって異常の通知をすることができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明の少なくとも一実施形態によれば、電池モジュール毎に設置されるセルモニタユニットに異常が検出された場合であっても、その電池モジュールの電池状態は他のセルモニタユニットにより継続して監視されることになる。このように、同一の電池モジュールの電池状態の監視は電池モジュール毎に設置されるセルモニタユニットの複数によって多重化される。このため、従来行わざるを得なかったフェールセーフの実行を回避することができ、信頼性を向上させた電池管理システムを提供することができる。また、新たなセルモニタユニットを導入することなく電池モジュールの電池状態の監視が多重化されるため、設置スペースによる制約を満足するとことができると共に、コストの面でも有利となる信頼性を向上させた電池管理システムを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、添付図面を参照して本発明の幾つかの実施形態について説明する。ただし、実施形態として記載されている又は図面に示されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、本発明の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
例えば、「ある方向に」、「ある方向に沿って」、「平行」、「直交」、「中心」、「同心」或いは「同軸」等の相対的或いは絶対的な配置を表す表現は、厳密にそのような配置を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している状態も表すものとする。
例えば、「同一」、「等しい」及び「均質」等の物事が等しい状態であることを表す表現は、厳密に等しい状態を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の差が存在している状態も表すものとする。
例えば、四角形状や円筒形状等の形状を表す表現は、幾何学的に厳密な意味での四角形状や円筒形状等の形状を表すのみならず、同じ効果が得られる範囲で、凹凸部や面取り部等を含む形状も表すものとする。
一方、一の構成要素を「備える」、「具える」、「具備する」、「含む」、又は、「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。
【0024】
図1は、本発明の一実施形態に係る電池管理システム1の構成を示す図である。
図1に示されるように、電池管理システム1は、電池モジュール3の電池状態(電圧、電流、温度など)を監視するセルモニタユニット2(CMU2)を複数備えている。そして、少なくとも2つのCMU2(CMU2AとCMU2B)からなる監視グループ5が形成されており、同一の監視グループ5に属する少なくとも2つのCMU2によって、これらのCMU2がそれぞれ設置される電池モジュール3の電池状態がそれぞれ多重化されて監視されるよう構成されている。一方、電池モジュール3は、リチウム電池等の二次電池(電池セル31)の複数により構成されており、CMU2は、電池モジュール3の電池状態を電池セル31毎に監視している。なお、
図1には、CMU2AとCMU2Bからなる監視グループ5が1つ図示されているが、電池管理システム1は少なくとも1つの監視グループ5を含んでいればよく、複数の監視グループ5を含んでいてもよい。
また、電池管理システム1は、各CMU2の動作および電池モジュール3の電池状態を電池セル31毎に管理するバッテリ管理ユニット4(BMU4)を備えている。そして、複数のCMU2とBMU4は第1通信ライン8(例えば、Controller Area Network(CAN)など)で相互に接続されている。
【0025】
このCMU2には、
図1に示されるように、複数の電池監視部21が設けられている。そして、そのうちの少なくとも1つの電池監視部21は、CMU2が設置される電池モジュール3(自電池モジュール3)の電池状態を電池監視ライン36を介して監視するよう構成されおり、その他の電池監視部21は、このCMU2が設置されているのとは異なる他の電池モジュール3の電池状態を他の電池監視ライン36を介して監視するよう構成されている。
【0026】
すなわち、
図1に例示されるCMU2には、第1電池監視部21Aと第2電池監視部21Bの2つの電池監視部21が設けられている。そして、CMU2Aにおいては、第1電池監視部21Aは、自身が設置(すなわち、CMU2Aが設置)される自電池モジュール3Aの電池状態を第1電池監視ライン36Aを介して監視し、第2電池監視部21Bは、自身が設置されているのとは異なる他の電池モジュール3Bの電池状態を第2電池監視ライン36Bを介して監視するよう設定されている。他方、CMU2Bにおいては、第1電池監視部21Aは、自身が設置(すなわち、CMU2Bが設置)される電池モジュール3Bの電池状態を第1電池監視ライン36Aを介して監視し、第2電池監視部21Bは、自身が設置されているのとは異なる他の電池モジュール3Aの電池状態を第2電池監視ライン36Bを介して監視するよう設定されている。
【0027】
そして、同一の監視グループ5に属するCMU2のいずれかに異常が発生し、自電池モジュール3の電池状態の監視や、BMU4に対する自電池モジュール3の電池状態の適切な送信ができないような異常状態に陥ったとしても、異常状態にあるCMU2(異常CMU2)が監視する電池モジュール3は、異常CMU2に代わって他のCMU2により継続して監視されるよう構成されている。例えば、
図1の例示では、CMU2Bに異常が発生すると、CMU2Bが監視する電池モジュール3Bは、CMU2Bに代わって同一の監視グループ5に属するCMU2Aによって継続して監視される。逆に、CMU2Aに異常が発生すると、CMU2Aが監視する電池モジュール3Aは、CMU2Aに代わってCMU2Bによって継続して監視される。このように、
図1に示される例では、同一の電池モジュール3(3A、3B)の電池状態の監視が2つのCMU2(2A、2B)によって二重化されている。
【0028】
このような、多重化された電池モジュール3の電池状態の監視は、幾つかの実施形態では、CMU2の異常が検出されたことを契機に切替えられるよう構成してもよい。
すなわち、CMU2には、
図1に例示されるように、自身が設けられたCMU2の正常性を診断するよう構成された診断部22と、異常CMU2によって監視されている他の電池モジュール3を監視するように設定されている電池監視部21に対して監視指示29を行うよう構成された監視起動部23が設けられている。そして、CMU2は、診断部22による診断によって異常が検出されると、異常検出(異常発生)を異常CMU2の外部に知らせるための異常通知28を送信するよう構成されている。一方、CMU2の監視起動部23は、異常通知28の受信に基づいて、異常CMU2にとっての自電池モジュール3を監視するよう設定された電池監視部21に監視指示29を行うよう構成されている。この監視指示29に応じて、他の電池モジュール3の電池状態の電池監視部21による監視が開始される。
言い換えると、CMU2は、自己診断により異常状態にあることを検出すると、同一の監視グループ5に属する他のCMU2による自電池モジュール3の代理監視が行われるために異常通知28を行い、逆に、異常通知28を受けた場合には、代理監視を行うために異常CMU2に対応する電池監視部21を起動させることで電池状態の監視を継続するように構成されている。
【0029】
この診断部22による正常性の診断(正常/異常の判断)は、例えば、電池監視部21を含む電池監視機能や、第1通信部24・第2通信部25・第1通信ライン8・第2通信ライン9(後述)などの少なくとも1つの通信機能、CMU2に含まれる図示しないメモリ(ROMやRAM、記憶媒体など)や、CPU・MPUなどの演算機能などに対して行われるよう構成されてもよい。
【0030】
そして、正常性の診断は、幾つかの実施形態では、診断項目が正常ではないと判断される場合には、同一の監視グループ5内の他のCMU2へ異常を通知する(
図2)。すなわち、
図2に例示されるように、ステップ1においてメモリの正常性が診断され、正常と判断される場合には次の診断項目に移る。ステップ2において演算機能の正常性が診断され、正常と判断される場合には、次の診断項目に移る。ステップ3において電池監視機能が診断され、正常と判断される場合には、次の診断項目に移る。ステップ4において通信機能の正常性が診断され、正常と判断される場合には、次の診断項目に移る。そして、全ての診断項目が正常と判断されれば、そのまま診断を終了する。一方、いずれかの診断項目(例えば、ステップ1〜ステップ4)で異常が検出される場合には、その後の診断項目の診断をすることなく、他のCMU2に異常を通知し、診断を終了する。
なお、診断の頻度は任意であり、周期的に行ってもよいし、BMU4への電池状態の送信後などの何らかのイベントに関連付けて行ってもよい。
【0031】
一方、監視指示29されるべき電池監視部21の選択は、異常通知28に基づいて決められる。幾つかの実施形態では、CMU2への異常通知28の入力信号が該当する電池監視部21に届けられるように配線されている。他の幾つかの実施形態では、CMU2は、メモリ(図示せず)などに格納された監視グループ5の設定情報52を参照し、監視指示29がなされるべき電池監視部21を特定するよう構成されている。例えば、監視グループ5の設定情報52には、異常通知28の送信元となり得る同一の監視グループ5に含まれるCMU2に対応させて、その送信元CMU2が設置される電池モジュール3を監視するよう設定された電池監視部21を示す情報が含まれていてもよい。そして、監視起動部23やCMU2に含まれるCPUなどの演算機能(図示せず)によって、異常通知28(通信制御情報も含む)に基づいて送信元のCMU2が特定されると共に、監視グループ5の設定情報52に基づいて監視指示29がされるべき電池監視部21が特定されてもよい。
なお、監視グループ5の設定情報52をCMU2が備える場合には、監視グループ5の設定情報52は、同一の監視グループ5に属する全てのCMU2が同じ送信元CMUの情報を含むように構成してもよいし、個々のCMU2とって必要な送信元CMU2の情報のみを含むよう構成してもよい。前者では設定が容易になり、後者ではメモリの節約・処理速度の向上が望める。
【0032】
その他、CMU2は、第1通信ライン8を介した通信をするための第1通信部24を備えている。また、異常通知を送信するための第2通信部25を備えていてもよい。診断部22による異常検出は、第1通信部24または第2通信部25の少なくとも一方を介して行われるよう構成してもよい。
【0033】
なお、電池監視部21は、A/D変換部(図示せず)を含んでいてもよい。そして、電池モジュール3の電池状態のうち電圧・電流をA/D変換することで監視してもよい。また、各電池セル31の温度の監視についてはサーミスタを用いてもよく、電池セル31の端子(正極32や負極)にサーミスタを接続し、サーミスタからの出力値(抵抗値)をA/D変換することで監視してもよい。
【0034】
図3は、本発明の一実施形態に係るCMU2による電池監視の二重化構成を模式的に表した図である。
図1と同様に、CMU2AとCMU2Bとによって監視グループ5が形成されていると共に、各CMU2は、それぞれ第1電池監視部21Aと第2電池監視部21Bを備えている。そして、
図3に示されるように配線されることで、電池モジュール3の監視が二重化されている。
【0035】
すなわち、CMU2Aの自電池モジュール3Aに含まれる複数の電池セル31の正極32A及び負極33AとCMU2Aの第1電池監視部21Aとの間は第1電池監視ライン36Aにより物理的に接続されており、CMU2Aからみて他の電池モジュール3Bに含まれる複数の電池セル31の正極32B及び負極33BとCMU2Aの第2電池監視部21Bとの間も第2電池監視ライン36Bにより物理的に接続されている(負極の接続は省略)。同様に、CMU2Bの自電池モジュール3Bに含まれる複数の電池セル31の正極32B及び負極33BとCMU2Bの第1電池監視部21Aとの間は第1電池監視ライン36Aにより物理的に接続されており、CMU2Bから見て他の電池モジュール3Aに含まれる複数の電池セル31の正極32A及び負極33AとCMU2Bの第2電池監視部21Bの間も第2電池監視ライン36Bにより物理的に接続されている(負極の接続は省略)。なお、
図3の例示では、電池モジュール3に含まれる電池セル31の数は4であるが、電池セル31の数は任意である。
【0036】
また、
図3に示されるように、CMU2AとCMU2Bとは第2通信ライン9(異常通知28のための信号線)で相互に接続されている。そして、CMU2からの異常通知28は、第2通信ライン9によって接続される同一の監視グループ5に属する他のCMU2へ行われるよう構成されている。すなわち、例えば、CMU2Bにおいて異常が検出されると、異常通知28は、第2通信ライン9により接続されたCMU2Aに直接届けられる。同様に、CMU2Aにおいて異常が検出された場合も、異常通知28は、第2通信ライン9により接続されたCMU2Bに直接届けられる。
このようなCMU2を直接的に接続する第2通信ライン9により異常通知28をすることで、信頼性向上のための機能をCMU2に集約することができ、既存の電池管理システム1への影響を局在化することができる。また、第1通信部24や第1通信ライン8の一部に発生した異常について異常通知28を行うよう構成されている場合、第2通信ライン9経由で異常通知28を行えるので、信頼性をさらに向上させることができる。なお、第2通信ライン8は電気信号の接続線であってもよく、CMU2を構成するLSI(マイコンなど)の信号の入出力ポート同士を直接的に接続してもよく、この場合には、第2通信部25を簡易に構成できる。
【0037】
上記で説明した通り、
図3に示される実施形態では、第2通信ライン9を介して異常通知28がなされている。他の幾つかの実施形態では、異常通知28は、CMU2とBMU4が接続される第1通信ライン8を用いて送信されてもよい。
第1通信ライン8がCANの場合には、例えば、データフレームのデータフィールドに異常通知(異常発生した旨や異常の具体的な内容の少なくとも一方)を載せてデータフレームを送信してもよい。そして、これを受信したCMU2は、同一監視グループ5に属するCMU2からの異常通知28であることを、データフレームのIDフィールドやデータフィールドから認識してもよく、これによって、異常通知28は同一の監視グループ5に属する適切なCMU2に届けられる。例えば、データフレームに監視グループ5を識別する識別情報や、CMU2を識別する識別子を含めてもよい。一方、同一の監視グループ5に属していないCMU2からのデータフレームなど、受信(処理)すべきでない異常通知28と判断される場合には、CMU2はそのような異常通知28を廃棄してもよい。
【0038】
また、他の幾つかの実施形態では、CMU2間で直接的に異常通知28を交換せずに、異常通知28は、BMU4を介してCMU2に届けられるよう構成してもよい。つまり、BMU4は、電池管理システム1に含まれる全ての監視グループ5についての設定情報52を備えると共に、異常CMU2は、BMU4に異常通知28を送信するよう構成されている。そして、BMU4は、異常通知28を受信すると、異常CMU2が属する監視グループ5の設定情報52に基づいて、異常通知28を届けるべき他のCMU2を特定し、その特定されたCMU2に対して異常通知28を送信する。これによって、BMU4から送信された異常通知28は、異常CMU2にとっての自電池モジュール3を監視するよう設定された他のCMU2に届けられる。
このような構成によれば、BMU4によって異常通知28を届けるべきCMU2が特定されるので、CMU2においては第2通信ライン9を介した異常通知28の交換と同様に異常通知28を処理でき、CMU2における処理を簡易にすることができる。
【0039】
なお、この場合の監視グループ5の設定情報52のそれぞれは、異常通知28の送信元となり得るCMU2に対応させて、異常通知の宛先(届け先)となるCMU2を示す情報が含まれていてもよい。また、BMU4による異常通知28の送信元やその送信元が属する監視グループ5の特定は、BMU4が管理情報を管理するのと同様な方法により送信元を特定することで監視グループ5の特定を行ってもよいし、上述のようなデータフレームに含まれる情報に基づいて送信元や監視グループ5を特定してもよい。
【0040】
上記で説明した幾つかの実施形態(
図1、3)では、2つの電池監視部2を備えるCMU2の2つで監視グループ5が形成されており、2つの電池モジュール3のそれぞれの電池状態の監視は2つのCMU2により二重化されている。
他の幾つかの実施形態では、
図4に示されるように、同一の監視グループ5に属する3つのCMU2より、3つの電池モジュール3のそれぞれの電池状態の監視が二重化されている。
すなわち、監視グループ5は、2つの電池監視部2を備えるCMU2の3つ(CMU2A、CMU2B、CMU2C)で形成されている。そして、各CMUの第1電池監視部21Aは、それぞれが設置される電池モジュール3の電池状態を監視している。他方、各CMU2の第2電池監視部21Bは、自電池モジュール3以外の他の電池モジュールを重複なく監視するよう構成されている。例えば、CMU2Aの第2電池監視部21BはCMU2Bが設置される電子モジュール3Bを監視し、CMU2Bの第2電池監視部21BはCMU2Cが設置される電子モジュール3Cを監視し、CMU2Cの第2電池監視部21BはCMU2Aが設置される電子モジュール3Aを監視している。このように監視グループ5内の各CMU2は、各電池モジュール3を連環するように代理監視するよう構成されている。
【0041】
また、他の幾つかの実施形態では、
図5に示されるように、3以上の複数のCMU2により同一の電池モジュール3の電池状態が監視されるよう構成された多重化構成となっている。すなわち、
図5に示される例では、監視グループ5は3つのCMU2(CMU2A、CMU2B、CMU2C)で形成されており、各CMU2は3つの電池監視部2(第1電池監視部2A、第2電池監視部2B、第3電池監視部2C)を備える。
そして、各CMU2の第1電池監視部21Aは、それぞれが設置される電池モジュール3の電池状態を監視している。他方、各CMU2の第2電池監視部21Bと第3電池監視部21Cは、それぞれ自電池モジュール3以外の他の電池モジュール3を重複なく監視するよう構成されている。例えば、CMU2Aの第2電池監視部21Bは、CMU2Bが設置される電子モジュール3Bを監視し、CMU2Aの第3電池監視部21Cは、CMU2Cが設置される電子モジュール3Cを監視するよう構成されている。同様に、CMU2Bの第2電池監視部21Bは、CMU2Aが設置される電子モジュール3Aを監視し、CMU2Bの第3電池監視部21Cは、CMU2Cが設置される電子モジュール3Cを監視するよう構成されている。また、CMU2Cの第2電池監視部21Bは、CMU2Aが設置される電子モジュール3Aを監視し、CMU2Cの第3電池監視部21Cは、CMU2Bが設置される電子モジュール3Bを監視するよう構成されている。
【0042】
このように、同一の電池モジュール3の電池状態の監視が3重以上に多重化されている構成においては、異常CMU2から異常通知28を受信することが可能な複数の候補が存在する場合がある。このような場合には、異常通知28をすべき適切なCMU2の選択が行われてもよい。この異常通知28が届けられるCMU2の複数の候補からの選択は、予め設定された優先順位に基づいて決定してもよく、ランダムに決定してもよい。こうして選択されたCMU2に異常通知28が届けられる。
【0043】
この複数のCMU2の候補からの選択は、異常通知28を送信しようとする異常CMU2で行ってもよい。あるいは、BMU4を介して異常通知28を他のCMU2に届ける場合など、BMU4で行ってもよい。
【0044】
また、この複数のCMU2の候補からの選択は、その選択時における同一の監視グループ5に属する各CMU2の動作状況を加味して行ってもよい。すなわち、同一の監視グループ5内において既に異常CMU2が存在する場合には、その異常CMU2へ異常通知28が送られることを回避することができる。
例えば、BMU4は、全てのCMU2の動作を管理しているので、異常通知28に対応した代理監視を行うよう設定されたCMU2の少なくとも1つが既に異常状態にある場合であっても、異常通知28が届けられるべき適切なCMU2を選択することができる。このCMU2の動作状況は、第1通信ライン8を介して行われる異常通知28をモニタリングして取得してもよい。
また、例えば、CMU2は、同一の監視グループ5に属する他のCMU2からの異常通知28を、第1通信ライン8をモニタすることで取得してもよい。これによって、他のCMU2の動作状況を取得できるので、この情報を管理することにより異常状態にある他のCMU2を識別できる。あるいは、他のCMU2が既に異常CMU2となっていることを、異常通知28の送信に対する応答に基づいて判別するようにCMU2を構成してもよい。そして、この応答(無応答を含む)に基づいて、再度、同一の監視グループ5に属するその他のCMU2に対して異常通知28を行うようCMU2を構成してもよい。
【0045】
このように、
図1〜5の構成によれば、各電池モジュール3の電池状態の監視が複数のCMU2により多重化されているため、CMU2が異常状態に陥った場合であっても、他のCMU2によって継続した監視がなされる。このため、従来せざるを得なかったフェールセーフの実行を回避することができ、電池管理システム1の信頼性を向上することができる。また、新たなCMU2を導入することなく電池モジュール3の電池状態の監視が多重化できるため、設置スペースによる制約を満足するとことができると共に、コストの面でも有利となる。
なお、
図1〜5では、1の監視グループ5に属するCMU2のみが記載されているが、電池管理システム1に含まれる監視グループ5の数は任意であるし、同一の監視グループ5に属するCMU2の数も任意である。
【0046】
このように、同一の監視グループ5に属するCMU2のそれぞれは任意に選択(設定)されてもよいが、他の幾つかの実施形態では、
図6A、6Bに例示されるように、同一の監視グループ5に属するCMU2のそれぞれは、各CMU2が設置される設置環境に基づいて選択される。例えば、電池管理システム1が、電池パック6などの複数の電池モジュール3を内部に含む電池を管理する場合、電池パック6は一定の大きさ(容積)を有するので、電池パック6内部での設置位置によっては、各電池モジュール3を取り巻く設置環境が異なる場合がある。
【0047】
より詳細に説明すると、電池パック6は、例えば、幅方向、前後方向、深さ方向に広がる一定の容積を有しており、複数の電池モジュール3は、電池パック6の内部において幅方向と前後方向にそれぞれ多数並べられている(
図6A、6B)。
そして、この電池パック6が、例えば車両用のバッテリとして用いられた場合には、車両内側の熱源(モータ、エンジンや排気系など)との距離や車両外部(車両ボディの外側)との距離によって、電池パック6の内部において温度差が生じる可能性がある。
【0048】
例えば、電池パック6内部において、電池モジュール3がより熱源に近い位置に設置されると、この電池モジュール3に設置されるCMU2も同様に熱源に近い位置に設置されることになる。このようなCMU2は、その熱源の影響を受けて相対的に高温に曝されることになり、逆に、熱源から遠い位置のCMU2は相対的に低温の温度環境となる場合がある。また、電池パック6内部において、車両外部との距離が近い設置位置では、走行風などによる冷却効果を得ることで相対的に低温となるが、逆に、車両外部からの距離が相対的に遠い設置位置では、走行風などによる冷却効果を得られず相対的に高温となる場合がある。
【0049】
そこで、電池パック6内部の設置位置における温度環境に基づいて、相対的(比較的)に温度が高い設置環境にあるCMU2と、相対的(比較的)に温度が低い設置環境にあるCMU2とを組み合わせて同一の監視グループ5を形成してもよい。
【0050】
例えば、
図6Aに示される幾つかの実施形態では、電池パック6は、その前後方向が車両側面のボディに面し、その幅方向がその前後方向と直交するように設置されている。そして、電池パック6の内部においては、5つの電池モジュール3が電池パック6の前後方向に沿って並べられている。また、これらの5つの電池モジュール3のそれぞれには、電池パック6の幅方向に沿って1つの電池モジュール3が配置されている。つまり、電池パック6の内部には、10の電池モジュール3が含まれている。
【0051】
そして、このような電池パック6の内部においては、監視グループ5は、車両側面のボディ側に並べられた電池モジュール3のそれぞれと、その幅方向で隣り合う電池モジュール3のそれぞれとが組み合わされて形成されてもよい。これによって、
図6Aの例示では、合計で5つの監視グループ5が形成されている。なお、車両内部の熱源と電池パック6とが幅方向で隣接するような場合にも、同様な監視グループ5が形成されてもよい。また、後述するように同一の監視グループ5に属する複数のCMU2は互いに隣接していなくてもよい。
【0052】
また、電池パック6の幾つかの実施形態では、
図6Bに示されるように、電池パック6には、空気等の冷却媒体が通る冷却通路62が内部に設けられている。そして、電池パック6に設けられた冷却通路62の入口63から入った冷却媒体は、電池モジュール3や電池セル31の間を通って、同じく電池パック6に設けられた冷却通路62の出口64へ達する。
【0053】
このような冷却通路62を有する電池パック6の内部においては、CMU2の設置位置における設置環境は、冷却通路62の上流側と下流側という相対的な位置で異なる場合がある。例えば、電池パック6の内部において、冷却通路62の入口63に近い位置(上流側)に設置されるCMU2は相対的(比較的)に温度の低い冷却媒体に接することになり、逆に、冷却通路62の出口64に近い位置(下流側)に設置されるCMU2は、冷却通路6の通過において冷却媒体が熱を吸収するため相対的に温度の高い冷却媒体に接する場合がある。そこで、電池パック6内部における、冷却通路62の上流側に設置されたCMU2と下流側に設置されたCMU2とを組み合わされたた監視グループ5が形成されてもよい。
【0054】
具体的には、
図6Bに例示される電池パック6は、
図6Aと同様に、電池パック6の幅方向に並べられた2つの電池モジュール3が、前後方向に5つ並べられることで、10の電池モジュール3を含んでいる。また、電池パック6には、冷却媒体を導入するための冷却通路62の入口63と、冷却媒体を排出するための冷却通路62の出口64が設けられており、入口63と出口64との距離が長くなるように前後方向で対面する面に接するように設けられている。なお、
図6の例示では、冷却通路62の入口63と出口64は電池パック6の前後方向で対面する電池パック6の面に接するように設けられているが、これに限定されず、電池パック6の内部や、電池パックの幅方向や深さ方向に対面する面に近い位置に設けられていてもよい。
【0055】
このような冷却通路62を含む電池パック6において、例えば、監視グループ5−1は、冷却通路62の出口64に最も近いCMU2(下流側)と、その前後方向において互いに接する上流側のCMU2とで形成されていてもよい。また、この監視グループ5−1に前後方向で接するCMU2と、このCMU2と前後方向において互いに接する上流側のCMU2とで監視グループ5−2が形成されていてもよい。
【0056】
これらの同一の監視グループ5−1、5−2に属するCMU2は互いに隣接しているが、隣接していないCMU2同士が監視グループを形成してもよい。例えば、監視グループ5−3は、冷却通路62の出口64に最も近いCMU2(下流側)と、その前後方向において3つの電池モジュール分だけ離れたCMU2とで形成されてもよい。
【0057】
このように、相対的に厳しい設置環境にあるCMU2と相対的に緩やかな設置環境にあるCMU2との組合せによって同一の監視グループ5を形成することで、設置環境による影響を監視グループ5の間で平準化することができ、電池管理システム1の信頼性をさらに向上することができる。例えば、厳しい設置環境におかれる機器の故障の可能性は比較的高まることが予想されるが、このような場合でも比較的緩やかな設置環境におかれる他のCMU2によって代理監視が適切に行われる可能性を高めることができる。このように、電池管理システム1の信頼性をより向上させることができる。
【0058】
本発明は上述した実施形態に限定されることはなく、上述した実施形態に変形を加えた形態や、これらの形態を適宜組み合わせた形態も含む。
例えば、電池管理システム1に含まれる複数の監視グループ5のそれぞれに属するCMU2の数は、全て同じであってもよいし、少なくとも一部が異なっていてもよい。例えば、電池管理システム1に含まれる監視グループ5の数が3である場合には、第1監視グループ5に属するCMU2は2つであり、第2監視グループ5に属するCMU2は3つであり、第3監視グループ5に属するCMU2は4つなどであってもよい。CMU2が備える電池監視部2の数は、少なくとも多重化の数だけあればよい。
【0059】
また、異常通知28に関しては、第1通信ライン8と第2通信ライン9の両方を異常通知28に用いてもよく、どちらか一方の通信ラインを介した異常通知28が出来ない場合が生じても、他の通信ラインにより異常通知28をするよう構成してもよい。
その他、BMU4がCMU2の異常を検知した場合、BMU4がCMU2による代理監視の指示を行い、この指示の受信に基づいてCMU2は異常通知28の受信時と同様な処理をするよう構成してもよい。
また、同一の監視グループ5に属するCMU2同士が、お互いに定期的に通信を開始し、その応答に基づいて他のCMU2の異常状態を検知するよう構成してもよい。