(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記包材の前記外部表面上の略中央部を通過するように、前記包材の一端部から他端部にわたって前記ハーフカット線が形成されたことを特徴とする請求項1に記載の包装体。
前記基材層がポリエチレンテレフタレート層及び延伸ナイロン層から選択された2層以上の基材層を有し、かつ、前記ハーフカット線の断面方向の前記溝が前記基材層の最上層のみならず下層にも形成されていることを特徴とする請求項4に記載の包装体。
前記ハーフカット線は、連続的に延びた波線、ジグザグ線、及び凹凸線、並びに、断続的に延びた直線、波線、ジグザグ線、及び凹凸線のいずれか及びこれらの組合せから選択された形状を成すように前記包材の前記外部表面に切り込んでいることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の包装体。
前記包材の前記一端部及び前記他端部の少なくとも一方に隣接する前記包材の側壁の断面が、他方の側壁に向かって凹んだ凹形状を成し、かつ、前記ハーフカット線の端部が前記凹形状の最も深くなる位置付近に接続されることを特徴とする請求項2に記載の包装体。
前記ハーフカット線の近傍の前記包装体の断面がV字又はU字を成し、前記ハーフカット線が前記V字又は前記U字の最も深くなる位置付近に設けたことを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の包装体。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで、本発明は、道具を必要とせず、安全に、かつ、簡単に開封でき、開封後の包材の廃棄が容易で異物混入の虞もない、新規の包装体とその開封方法及び製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
すなわち、本発明は以下の特徴・構成を有するものである。
(態様1)
包材の内部に被包装物を収容して該被包装物を密封した包装体であって
、
前記包材の外部表面にハーフカット線が形成され
、
前記外部表面とは反対側から前記包装体を折り曲げる力を付与し、該ハーフカット線の両側に引張力を付与することにより、該ハーフカット線に沿って前記包材を破断して、前記被包装物の密封状態を解く
ものであり、
前記包材の前記内部を脱気してなり、
前記被包装物が多数の米粒又は粒状体で構成され、かつ、
前記米粒又は粒状体の粒同士が密着していることを特徴とする包装体。
(態様2)
前記包材の前記外部表面上の略中央部を通過するように、前記包材の一端部から他端部にわたって前記ハーフカット線が形成されたことを特徴とする態様1に記載の包装体。
(態様3)
前記ハーフカット線が、前記包材の前記外部表面とは反対側の外部表面にも形成されたことを特徴とする態様1又は2に記載の包装体。
(態様4)
前記包材が、
前記被包装物に隣接するシーラント層と、
前記シーラント層の外部表面側に積層され、かつ、ポリエチレンテレフタレート層及び延伸ナイロン層から選択された少なくとも1層以上の基材層と、
を有し、かつ、
前記ハーフカット線の断面方向の溝は、前記基材層の外部表面から該基材層の内部表面に向かって形成される一方、前記シーラント層には形成されていないことを特徴とする態様1〜3のいずれかに記載の包装体。
(態様5)
前記基材層がポリエチレンテレフタレート層及び延伸ナイロン層から選択された2層以上の基材層を有し、かつ、前記ハーフカット線の断面方向の前記溝が前記基材層の最上層のみならず下層にも形成されていることを特徴とする態様4に記載の包装体。
(態様6)
前記基材層と前記シーラント層との間に酸素高遮断性を備えた樹脂層を設けたことを特徴とする態様4
又は態様5に記載の包装体。
(態様7)
前記ハーフカット線は、連続的に延びた直線状を成すように前記包材の前記外部表面に切り込んでいることを特徴とする態様1〜
6のいずれかに記載の包装体。
(態様8)
前記ハーフカット線は、連続的に延びた波線、ジグザグ線、及び凹凸線、並びに、断続的に延びた直線、波線、ジグザグ線、及び凹凸線のいずれか及びこれらの組合せから選択された形状を成すように前記包材の前記外部表面に切り込んでいることを特徴とする態様1〜
7のいずれかに記載の包装体。
(態様9)
前記包材の前記一端部及び前記他端部の少なくとも一方に隣接する前記包材の側壁の断面が、他方の側壁に向かって凹んだ凹形状を成し、かつ、前記ハーフカット線の端部が前記凹形状の最も深くなる位置付近に接続されることを特徴とする態様
2に記載の包装体。
(態様10)
前記ハーフカット線の近傍の前記包装体の断面がV字又はU字を成し、前記ハーフカット線が前記V字又は前記U字の最も深くなる位置付近に設けたことを特徴とする態様1〜
9のいずれかに記載の包装体。
(態様11)
前記ハーフカット線がレーザー加工又は刃物を利用した機械的切断加工により前記包材に形成されていることを特徴とする態様1〜
10のいずれかに記載の包装体。
(態様12)
態様1〜
11のいずれかに記載の包装体の開封方法であって、
破断させようとする前記ハーフカット線が設置された前記外部表面とは反対側から前記包装体を折り曲げ、該ハーフカット線の両側に引張力を付与して該ハーフカット線に沿って前記包材を破断させることにより、前記被包装物の密封状態を解くことを特徴とする包装体の開封方法。
【0006】
(用語の定義)
ここで、本明細書及び特許請求の範囲で使用する「ハーフカット線」の用語は、被包装物を収容・密封する包材の外部表面上の一部分に物理的又は化学的に形成された曲線状又は直線状の溝であり、ハーフカット線付近の包材の断面を観た場合に、内部の被包装物と接する包材の内部表面までは貫通していない溝であることを意味する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の包装体とその開封方法によれば、道具を必要とせず、安全に、かつ、簡単に開封でき、開封後の包材の廃棄が容易で異物混入の虞もない。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の包装体とその開封方法の実施例について、添付した図面を参照しながら説明する。
【実施例1】
【0010】
本発明の包装体の一実施例を示す
図1〜3において、1は包装体であって、包装体1は、包材2と、この包材2に収容された被包装物としての精米3とからなる。なお、実際には包材2の全体に精米3が充填されているが、精米3の一部のみを図示する。
【0011】
包材2は、長方形の正面フィルム4と背面フィルム5からなり、正面フィルム4と背面フィルム5の周辺部の三辺を貼り合せて袋状とし、これに被包装物3を収容した後に残りの一辺を貼り合せることにより、包材2の内部は密封されている。
【0012】
また、包材2の内部は、必須ではないが、脱気されて真空に近い状態になっていることが好ましく、これにより、精米3の米粒同士が強固に密着して、包装体1が保管時や移動の際に容易に変形しないようになる。それだけでなく、被包装物(精米)3が適度な剛性を有するようになり、後述するハーフカット線6に沿った被包装物(精米)3の折り曲げ(へし折り)及び包材2の切断を容易にする。すなわち、ハーフカット線6に沿った開封性を改善する。
【0013】
そして、正面フィルム4の外面側の略中央には、正面フィルム4の端部である2つの長辺4a,4bを結んで、ハーフカット線6が形成されている。このハーフカット線6は、予めレーザー加工により形成されたものである。なお、ハーフカット線6の形成方法は、レーザー加工のほか、カミソリ、ピンなどの刃物を用いた加工によるものであってもよい。
【0014】
図4に示すように、包材2は、外部表面4側となる上層11にポリエチレンテレフタレート(PET)層、その下の中層12に延伸フィルム層としての延伸ナイロン(ON)層、下層13にポリエチレン(PE)からなるシーラント層を有する。ここで、上層のPET層11と中層のON層12とは、これらを併せて基材層とも呼ぶ。
【0015】
なお、シーラント層13とは、熱接着性を有する材質的特徴を持った樹脂層のことを指し、本実施例のようにポリエチレン(PE)のみから形成されてもよいほか、ポリエチレンを主体とし、これにポリプロピレン(PP)、エチレン・酢酸ビニル共重合体(EVA)等の樹脂を単体・単体複層・混合単層・混合複層のフィルムに加工したものから形成されてもよい。例えば、ポリエチレン80%、エチレン・酢酸ビニル共重合体20%の配合でシーラント層を形成することができる。
【0016】
そして、ハーフカット線6は、本実施例のように、上層11を貫通し、中層12にまで達するように形成されていることが好ましい。このように、最下層13にシーラント層、そのすぐ上の層に延伸フィルム層12を有する場合は、延伸フィルム層12にまで達する深さのハーフカット線6が形成されることにより、包装体1の開封がさらに容易になる。なお、包材2は単層であっても多層からなる複合フィルム、ラミネート構成のフィルムであってもよい。また、ハーフカット線6は、後述の実施例に示すように、連続した実線であっても、非連続(断続的な)の点線であってもよい。さらに、ハーフカット線6の幅、形成角度、断面形状等は任意のものとすることができる。
【0017】
この包装体1を開封する場合は、まず、
図5(a)に示すように、ハーフカット線6が形成された面4を下にして、両手で包装体1の両端をそれぞれ握る。つぎに、ハーフカット線6側の面4が山折りになるように、包装体1を折り曲げる力を加える。すると、この面4のフィルムには引っ張られる力が働く。これにより、
図5(b)に示すように、ハーフカット線6が形成されて強度が弱くなっている略中央の部分が破断して包装体1が開封される。そして、精米3は、重力により下方へ排出される。この開封のとき、包装体1の下方に炊飯器の釜などの容器(図示せず)を配置することにより、包装体1から容器に簡単に精米3を移すことができる。
【0018】
以上のように、本実施例の包装体1は、包材2に被包装物である精米3を収容して密封し、好ましくは包材2の内部を脱気してなる包装体1であって、包材2の略中央部において、包材2の外部表面4に、包材2の一端部4aから他端部4bにわたってハーフカット線6が形成されたものである。
【0019】
また、本実施例の包装体の開封方法は、フィルム製の包装体1を折り曲げる力を加えることにより、ハーフカット線6に沿って包材2を破断させるものである。
【0020】
したがって、道具を別途必要とせず、安全に、かつ、簡単に開封でき、開封後の包材2の廃棄が容易で異物混入の虞もない。また、本発明では、従来のように包装体1の一部を切断するのではなく、包装体1全体を二つに折り曲げる力を加えることで開封するものであるので、手に水分や油脂が付着して手が滑りやすい状況であっても、容易に開封することができる。さらに、本実施例のように包材2の一端部4aから他端部4bにわたってハーフカット線6が形成された場合には、包材2の両端部分まで確実に開口することができ、被包装物3を容易に取り出すことができる。
【0021】
以上、本発明の包装体とその開封方法の一実施例について詳述したが、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内で種々の変形実施が可能である。
【0022】
例えば、上述の実施例1では、ハーフカット線6を包材2の一方の外部表面(正面)4のみに形成したが、この面4とは反対側の外部表面(背面)5にも形成するようにしても良い。上述の実施例1の包装体1を開封する場合には、ハーフカット線6の形成面4を確認した上で、この形成面4を山折りできるよう、これとは反対側の面5に対して折り曲げ力を付与すること、つまり、適切な使用方法に対する慎重さがユーザーに求められる。しかしながら、本変形例のように、どちらの面4,5にもハーフカット線6を形成すれば、折り曲げ力を付与する面をユーザーは事前に確認せずとも、包装体1の折り曲げ及びいずれかのハーフカット線6での開封を実行でき、ユーザーの使い勝手が格段に向上する。
【0023】
この他、包材2の形状は長方形に限らず、任意の形状にすることができ、立体的な形状としてもよい。また、1枚のフィルム又は3枚以上のフィルムから包材2を構成してもよく、絞り加工によりチューブ状に形成されたフィルムから包材2を構成してもよい。或いは、一般の包装米飯に見られるような、樹脂製の絞り容器をフィルム製の蓋材で密封した包装形態であってもよい。この場合、フィルム製の蓋材にハーフカット線6を施すことができる。さらに、包材2の密封方法は、実施例1の三方袋加工や上述の絞り包装の包装形態に限定されず、二方袋加工、ピロー包装、合掌袋(背張り)加工など様々な製袋加工を適用可能である。
【0024】
また、包材2の表面には、包装体1の商品名表示、被包装物3の品質表示、意匠性向上などの目的のために、さらに印刷された層が形成されていても良い。具体的には、包材2の基材層11の外部表面4、基材層11,12間の境界面を構成する一方の面、或いは基材層12とシーラント層13との間の境界面を構成する一方の面へ、インキ等を塗布することによって印刷層(図示せず)を形成してもよく、該印刷層が本発明の包装体1の上述した開封機能や包装体1の後述する製造方法の生産性に特段、悪影響を及ぼすことは無い。なお、ハーフカット線6が形成された包材2付近に印刷層が形成されたとしても、印刷部分がにじむなどハーフカット線6が印刷に悪影響を及ぼすことは無い。
【0025】
また、本発明の包材2を包装体1として有効に機能させるためには、基材層11、12の間、又は、基材層11、12とシーラント層13との間の境界面とは貼り合わせられていることが好ましい。これらの層11,12,13を互いに貼り合わせるには、例えば、公知の接着剤を用いた接着方法や溶融した樹脂を利用した公知のラミネート技術を使用できる。なお、これらの公知の接着技術は、本発明の包装体1の開封機能や包装体1の製造方法の生産性に特段、悪影響を及ぼすことは無い。
【0026】
また、ハーフカット線6は、包材2を開口することができるように形成されればよく、種々の変形実施が可能である。例えば、ハーフカット線6は、直線に限定されず、任意の曲線(例えば、実線となるよう包材2の一端部4aから他端部4bまで連続的に延びた波線、ジグザグ線、及び凹凸線、並びに、一端部4aから他端部4bまで断続的に延びた直線、波線、ジグザグ線、及び凹凸線)としてもよい。また、ハーフカット線6が形成される包材2の位置は略中央部に限定されず、任意の位置としてもよい。さらに、ハーフカット線6を包材2の一端部4aから他端部4bにわたって形成しなくともよい。但し、実施例1の構成は、包装体1の折り曲げとハーフカット線6付近での包材2の破断を効果的に達成する最適な構成の一つではある。
【0027】
また、被包装物3は、精米のほか、米穀類、豆類、シリアル等の粒状体、砂糖、塩、小麦粉などの粉体、高粘度液体、又はこれらの混合物であってもよい。なお、高粘度液体を被包装物3とする場合は、開封を容易にする観点から、流動性が極めて低いものに限られる。したがって、本発明の包装体1は、例えば、精米の個包装、混ぜご飯の材料の個包装、ポップコーン用の乾燥トウモロコシの個包装など、多種多様の用途に用いることができる。また、被包装物3は、食品に限られず、洗剤、入浴剤などの生活用品や、プラスチック原料などの工業用品、或いは、タオル、おしぼりなどとすることもでき、特定のものに限定されるものではない。
【0028】
特に、本発明の包装体1を1〜5合などの様に定められた内容量あるいは既定のグラム数ごとの精米の個包装として用いれば、簡単に開封できるほか、炊飯する際の精米を計量する作業を省略することができ、極めて使い勝手がよいものとなる。また、包材2の内部は好ましくは脱気されているので、未開封の状態においては被包装物3の酸化も抑制される。
【実施例2】
【0029】
(基材層とシーラント層との間に酸素高遮断性を備えた樹脂層(バリア層)の追加)
また、本発明の包装体1は、基材層とシーラント層との間に酸素高遮断性を備えた図示しない樹脂層(以下「バリア層」とも呼ぶ。)を追加した構成にすることが好ましい。これにより、包装体1内部に高い酸素遮断性を確保でき、被包装物3の劣化を抑制することができるようになる。
【0030】
バリア層の形成方法には、基材層の内部表面にアルミニウム、アルミナ、シリカ(酸化ケイ素)等を塗布(コーティング)又は蒸着したり、基材層の一部に予め設けられたMXD延伸ナイロンやEVOHを基材層の内部表面上に押し出したり、EVOH単体を別途、基材層の内部表面に貼り合わせたりするなどすれば形成が可能である。
【0031】
基材層にバリア層をコーティング或いは蒸着する場合は、バリア層の厚みが通常1μm以下となるため、基材層の外部表面4から内部に向かってハーフカット線6を設ける加工を施した際に、バリア層を破壊しないように注意が必要である。
【0032】
また、バリア層を押し出す場合には、バリア層の厚みを5μm程度にまで厚くすることができるため、バリア層にも選択的にハーフカット線6の加工を施すことが可能となるが、バリア層形成の為の押し出しの際に高い加工精度が求められることがある。
【0033】
また、EVOH単体を別途、基材層に貼り合わせる場合は、バリア層の厚みを15μm程度にまで厚くすることができるため、バリア層にも問題無く(バリア層の一部を破壊すること無く)ハーフカット線6の加工を施すことが可能となるだけでなく、EVOHはシーラント層の材料と通常、物理的物性(例えば、破断強度やせん断強度)が同等又は近似するため、ハーフカット線6付近での開封性を損なう危険性を減らすことできる。このように、シーラント層と物理的物性が同等又は近似した物性を有する酸素高遮断性の樹脂層を基材層とシーラント層との間に形成することがさらに好ましい。
【0034】
この好適な構成の包装体1に対し酸素遮断性を評価し、その結果を表1及び
図6に示す。
【0035】
【表1】
【0036】
表1に示すように、試験片として2種類の包材を用意した。一種類目は、基材層及びシーラント層に、12μm厚のPET層及び70μm厚の直鎖低密度ポリエチレン(LLDPE 表1中では「LL70」と表記)層を使用し、この基材層とシーラント層との間に酸素遮断性を有するMXD延伸ナイロン(ON)層を形成した。一方、二種類目は、基材層に15μm厚の延伸ナイロン(ON)層を二つ積層したものを使用し、シーラント層に無延伸ポリプロピレン(CPP)層を使用し、この基材層とシーラント層との間に酸素遮断性を有するエチレン・ビニルアルコール共重合体(EVOH)層を形成した。
【0037】
この表1及び
図6に示すように、(1)バリア層の追加により酸素遮断性が長期間、持続できること、(2)ハーフカット線の有無によって性能に変動が余り生じないこと、(3)EVOH層を使用した構成の方が、より高い酸素遮断性を示すことが観察された。
【実施例3】
【0038】
(ハーフカット線の形成パターンが開封のしやすさに及ぼす影響の検討)
次に、実施例1では直線状であったハーフカット線6の形成パターンを種々変更して、形成パターンが包材2の開封のしやすさ(破断強度)に及ぼす影響を検討した。
【0039】
(実施例3の供試材料の仕様及びハーフカット線の形成方法)
後述する各ハーフカット線6を付与する試験片(包材2)として、12μm厚のPET層からなる基材層と、この基材層より下層の15μm厚のMXD延伸ナイロンからなるバリア層と、このバリア層より下層の70μm厚の直鎖低密度ポリエチレン(LLDPE)層からなるシーラント層と、から構成された包材2(全幅15mm)を使用した。なお、いずれの形状のハーフカット線6も共通の断面寸法(溝幅50μm及び溝深さ27μm)を有するようにレーザー加工により包材2上に形成した。
【0040】
試験対象の形成パターンとして、直線、波線、ジグザグ線、包材2の外部表面4上の一端部4aから他端部4bへの長さが6.2mmと比較的短い破線αと、一方8.1mmと比較的長い破線βとを用意した。なお、どちらの破線α,βとも、加工長さ(一つの破線を構成する切れ込み)が同じであるが、切れ込みが入らない未加工の長さが異なるように設定した。また、比較の為に、ハーフカット線6を全く入れない試験片(表2中の「ブランク」を参照)も用意した。
【0041】
ここで、直線のパターンではハーフカット線6の全長(外部表面4上の長さ)が試験片の全幅と同じ15mmであり、試験片の一端部4aから他端部4bまで一直線状に切り込みが入れられている。また、この直線パターンでのハーフカット線6の全長を基準として他の試験片のパターンのハーフカット線6の全長(相対的な加工割合)は表2に示すとおりである。
【0042】
【表2】
【0043】
これらの試験片に対して破断試験を行い、破断荷重をそれぞれ測定した(表2を参照)。この表2に示すように、直線パターンの破断荷重が最も小さく、ブランクパターンが最も高かった。なお、直線パターンの破断荷重を基準値(100%)とした場合に、ブランク、波線、ジグザグ、破線α、及び破線βの各破断荷重の相対割合は、358%、113%、133%、241%、及び225%であった。これにより、ハーフカット線6のパターン形状を適宜選択することによって、破断つまり開封のしやすさを調節できることが分かった。
【0044】
この知見は、例えば、以下の状況に適用することが可能となる。例えば、包材2の材料そのものに機械的強度(破断強度)が比較的低いものや包材2や被包装物3の厚さが比較的小さいものを選択・使用した場合に、包装体1の梱包時や配送時など望ましくないタイミングで、ハーフカット線6付近で破断・開封する危険性が高まることが予想される。しかしながら、ハーフカット線6として、直線とは異なる別のパターン(波線や破線等)を付与することで、破断強度が上がるため、包材2の意図しない開封を抑制することが可能となる。
【0045】
一方で、包材2の材料自体が機械的強度に比較的優れるものやその被包装物3の厚さが比較的大きいものを選択・使用した場合には、意図しない開封やへし折り等の危険が減り、却って開封を容易にすることが望まれる場合もあることから、直線の形成パターンを付与することが有用である。また、直線パターンは、他の形成パターンよりも加工がシンプルで済むことから、本発明の包装体1の製造中に異物が混入する危険性も減らすことができるという利点もある。
【実施例4】
【0046】
次に、包装体1の外形(立体的形状)に関する変形例について説明する。この変形例が必要とされる背景から先ず説明する。
【0047】
被包装物3の分量(つまり、包装体1の収容量)が200cc程度と少ない量であれば、包装体1の外形を実施例1で示したような単純な直方体のままでも開封に支障はないが、収容量を次第に大きくしていくと(例えば、500cc程度を超えるようになると)、包装体1を折り曲げて包材2を開封することが困難となってくる。
【0048】
このような場合には、包装体1に次のような特殊な形状を付与することで折り曲げや開封を容易にすることが可能となる。
【0049】
具体的な一変形例として、
図7(a)に示すように、包材2の一端部4a及び他端部4bの少なくとも一方に隣接する包材2の側壁7a,7bの一部が、他方の側壁に向かって凹んだ凹形状(例えば、V字やU字状、
図7(a)では、U字状の水平方向断面形状)を成し、ハーフカット線6の端部6t
1,6t
2がこの凹形状(V字やU字)の最も深くなる位置付近に接続されるよう構成(「側壁くびれ」(図中符号8)とも呼ぶ。)することが好ましい。これにより、実施例1の場合に比べ、ハーフカット線6の全長が短縮されるために、破断荷重を低くでき、開封を容易にすることが可能となる。
【0050】
また、別の変形例として、
図7(b)に示すように、ハーフカット線6の近傍の外部表面4の断面(図示では垂直方向断面)がV字又はU字の形状を成し、ハーフカット線6がこのV字又はU字の最も深くなる位置6d付近を通過するよう構成(「上下面くびれ」(図中符号9)とも呼ぶ。)することも好ましい。これにより、ハーフカット線6付近の内容物(被包装物)3の量を減らすことで、外部からの折り曲げ力が付与された包装体1内の支点と作用点との距離が短くなり、被包装物3の折り曲げが容易となるとともに、ハーフカット線6での開封性も改善される。さらに、上述の側壁くびれ8と上下面くびれ9とを併用した構成を採用するようにしてもよく、これらの併用により、包材2の開封性がさらに改善することが予想される。
【0051】
(ハーフカット線の加工手法の変形例)
次に、ハーフカット線6を包材2上に形成するための加工方法の詳細について説明する。実施例1ではCO
2レーザー加工を用いて包材2上に形成したが、ダイカット、ロータリーダイカット、ミシン目加工等の刃物を利用した機械的切断加工を施してもよい。
【0052】
レーザー加工による利点は、溝方向に極めて高精度な加工を実現できるため、シーラント層13を変形・破損させることなく、基材層11,12やバリア層のみにハーフカット線6の溝をこれらの断面方向に形成することが可能となる(
図8(a)を参照)。しかしながら、加工速度は5m/分程度までしか高くできないことやロール・ツー・ロール方式を採用して製造する場合には、ロールの進行方向に対してこれに直交する方向(つまりロール幅方向)にレーザー照射装置を移動させながらレーザー照射(加工)を施すことは容易ではなく、レーザー照射装置の移動やレーザー出力に高精度な制御が求められる。
【0053】
一方、ダイカット加工等の刃物を使用した機械的な加工では、ロールの進行方向に略直交する方向(つまりロール幅方向)に沿って刃物を所定距離だけ移動させるだけで、ハーフカット線6を包材2上に容易かつ確実に形成することができ(
図8(b)を参照)、ハーフカット線6の加工速度を極めて高く設定すること(例えば、100m/分程度)ができ、ひいては包装体1の生産性を飛躍的に向上することができる。
【0054】
しかしながら、刃物の押圧力が強すぎる場合は、意図しないシーラント層13の変形や破損(
図8(c)中の丸線で囲んだ部分を参照)が生じ得ることに注意が必要である。
【0055】
ハーフカット線6の形成時のこの意図せぬシーラント層の変形を防止するために、基材層11,12(及びバリア層)のみにハーフカット線6の加工(刃物を利用した機械的切断加工)を施した後に、この基材層11,12の内部表面とシーラント層13の一面とを貼り合わせるようにすることで対処が可能である。この際にハーフカット線6の溝が基材層11,12の外部表面4から内部表面まで貫通しないようにしたり、実線ではなく破線のハーフカット線6を形成したりするようにすることが好ましい。これにより、基材層11,12にダイカット加工等が施されてもハーフカット線6の前後で基材層11,12が分断されることが無くなるために、基材層11,12とシーラント層13とを連続的に貼り合わせることができ、貼り合わせの際に位置ズレが発生する危険を減らすことができるようになる。
【0056】
(包装体の製造方法の一例)
上述の知見から、本発明の包装体1の製造方法は、例えば、以下のように提供される。
すなわち、本発明の包装体1の製造方法は、
包材2の材料となるロール材を用意する工程と、
ロール材をロール・ツー・ロール方式で連続的に移動させる工程と、
ロール材の移動方向に略直交する方向にロール材に対して刃物を利用した機械的切断加工を施すことにより包材2にハーフカット線6を形成する工程と、
を含むことを特徴とする。
【0057】
さらに、好ましくは、本発明の包装体1の製造方法は、
包材2の基材層の材料となるロール材を用意する工程と、
ロール材をロール・ツー・ロール方式で連続的に移動させる工程と、
ロール材の移動方向に略直交する方向にロール材に対して刃物を利用した機械的切断加工を施すことにより包材2の基材層にハーフカット線6を形成する工程と、
基材層の内部表面にシーラント層の一面を貼り合わせる工程と、
を含むことを特徴とする。