(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
[本発明の実施の形態の説明]
最初に本発明の実施形態を列記して説明する。
(1) 本発明の一態様に係るリアクトルは、巻線を巻回してなる巻回部を有するコイルと、前記巻回部内外に配置される部分を有する磁性コアと、リアクトルの物理量を測定するセンサと、前記コイルと前記センサとの双方に接触する発泡樹脂とを備える。
【0013】
センサと発泡樹脂との接触とは、センサと発泡樹脂とが直接接触する場合の他、センサを覆って保護する保護材(例えば、後述の保護部など)といった固体物質を介してセンサと発泡樹脂とが間接的に接触する場合を含む。上記物質は、空気と同等の物理量の伝達性を有すること、更には空気よりも物理量の伝達性(例えば熱伝導性)に優れることが好ましい。
【0014】
上記のリアクトルは、製造過程で、センサの周囲領域であってコイルとの接触箇所近傍の領域に生じ得る隙間を発泡樹脂の体積膨張によって容易に埋められ、センサの周囲に生じ得る隙間を低減できる。発泡樹脂の量によっては、この隙間を実質的に無くすことができる。
【0015】
上記のリアクトルは、体積膨張した発泡樹脂がコイルとセンサとの双方に十分に接することができる、好ましくは密着できることで、コイルとセンサとの接触状態を良好に維持できる。発泡樹脂がある程度の接着力を有する場合には、この接着力によって、上記のリアクトルは、コイルとセンサとの接触状態をより維持し易い。即ち、発泡樹脂の接着力などは、コイルとセンサとの固定に寄与するといえる。このような上記のリアクトルは、封止樹脂を備えていない場合でも、センサにおける外部雰囲気、例えば空気との接触領域を十分に小さくできる。
【0016】
更に上記のリアクトルは、発泡樹脂がコイルとセンサとの双方に接しているため、コイルとセンサとの間に空気よりも物理量の伝達性(例えば熱伝導性)に優れる物質(発泡樹脂の樹脂成分)を介在するといえる。従って、上記のリアクトルは、発泡樹脂の樹脂成分を、コイルからセンサに上記物理量を伝達する伝達経路に利用できる。
【0017】
このような発泡樹脂を備える上記のリアクトルは、コイルからセンサへの物理量の伝達を良好に行えて、測定精度を高められる。また、上記のリアクトルは、封止樹脂及びケースを備えていない場合や車載部品といった振動が付与され得る環境で利用される場合、更にはその双方である場合などであっても、コイルの温度などのリアクトルの物理量を良好に測定できる。
【0018】
その上、上記のリアクトルは、製造過程の発泡樹脂、即ち未発泡の樹脂が薄いため、コイルとセンサとの隙間といった狭い箇所にも未発泡の樹脂を容易に配置できて、製造性に優れる。
【0019】
(2) 上記のリアクトルの一例として、上記コイルは、端面形状が角R部を有する矩形状である上記巻回部を一対備え、一対の巻回部は、各巻回部の軸が平行するように並列されており、上記センサが上記角R部に支持されており、上記発泡樹脂の一部を上記一対の巻回部間に備える形態が挙げられる。
【0020】
上記形態では、センサの一部がコイルの両巻回部のうち少なくとも一方の角R部に接触することで、又は発泡樹脂の一部を介して上記角R部に接触することで、センサが上記角R部に支持される。即ち、上記形態はセンサの配置個所を角R部近傍とする。上記形態では、発泡樹脂の一部が一対の巻回部によって挟まれる領域、即ち非常に狭い領域に存在するため、コイルとセンサとの双方により接触し易い。これらのことから、上記形態は、コイルからセンサへの物理量の伝達性に優れる。特にリアクトルの物理量をコイルの温度とし、センサとして温度センサを含み、この温度センサを角R部によって支持させた形態では、一対の巻回部に挟まれる領域のうちコイルの温度が比較的高くなり易い角R部近傍でコイルの温度を良好に測定できる。更に、未発泡の樹脂は薄いため、巻回部間といった比較的狭い隙間であっても容易に配置でき、上記形態は製造性にも優れる。
【0021】
(3) 上記(2)のリアクトルのより具体的な例として、上記発泡樹脂の一部を上記一対の巻回部間であって上記角R部よりも内側の領域に備える形態が挙げられる。
【0022】
上記形態は、上記(2)の作用効果を奏することに加えて、以下の作用効果を奏する。発泡樹脂の一部が、一対の巻回部によって挟まれる領域のうち、角R部間よりも更に狭い内側の領域に存在する。内側の領域に存在する発泡樹脂によって、角R部に支持されるセンサの周囲に生じ得る隙間を低減しているといえる。更に、センサの周囲に存在する発泡樹脂の樹脂成分によって物理量の伝達経路を良好に構築できる。そのため、上記形態は、リアクトルの物理量を精度よく測定できる。また、未発泡の樹脂は上述のように薄いため、上述の狭い内側の領域に容易に配置できて、上記形態は製造性にも優れる。
【0023】
特にリアクトルの物理量をコイルの温度とし、センサとして温度センサを含み、この温度センサを角R部によって支持させた形態では、上述のように内側の領域に発泡樹脂が充填されて上記隙間が十分に低減されているため、温度センサの周囲に存在する発泡樹脂の樹脂成分による伝熱経路を良好に構築できて、コイルの温度を精度よく測定できる。その結果、この形態は、測定した温度に基づいてコイルへの通電制御などを良好に行えて、リアクトルの熱損失を低減し易いと期待される。
【0024】
(4) 上記(2)又は上記(3)のリアクトルのより具体的な例として、上記センサを覆う保護部と上記一対の巻回部間に配置される仕切り部とが一体に設けられた樹脂成形
部を備え、上記発泡樹脂の一部を上記巻回部と前記樹脂成形部の外周面とで囲まれる空間に備えるが挙げられる。
【0025】
上記形態は、上記(2)又は(3)の作用効果を奏することに加えて、以下の作用効果を奏する。センサが保護部によって機械的に保護されるため、センサの圧損や損傷などに起因する測定不良、例えば測定誤差の増大や測定不可能な事態の発生などを防止できる。また、対向配置される巻回部と、樹脂成形部とで囲まれる空間に発泡樹脂の一部が充填されるため、発泡樹脂と樹脂成形部とによって、センサの周囲に生じ得る隙間を低減できる。例えば、一方の巻回部の外周面と仕切り部の一面との間に発泡樹脂の一部が充填されていれば、この発泡樹脂と仕切り部と角R部との三者によって、センサを所定の位置(角R部近傍)に良好に支持できる。そのため、この形態は、上述の三者によってコイルとセンサとの接触状態を維持し易い。例えば、一方の巻回部の外周面と仕切り部の一面との間、及び他方の巻回部の外周面と仕切り部の他面との間との双方にそれぞれ発泡樹脂が充填されていれば、センサを所定の位置に更に支持し易い。そのため、この形態は、上述の三者によってセンサの周囲に生じ得る隙間を効果的に低減できる上に、コイルとセンサとの接触状態を更に維持し易い。これらの点から、上記形態は、長期に亘り、リアクトルの物理量を適切に測定できる。また、上記形態は、以下の点から、製造性にも優れる。
1.樹脂成形部を備えることで、センサを取り扱い易く、所定の位置への配置作業を行い易い。
2.特許文献1に記載されるようなセンサとセンサホルダとが独立した別部材であって組み付ける必要がある場合に比較して、組み付けが不要であり、製造工程数が少ない。
3.製造過程で仕切り部を未発泡の樹脂の支持部材として利用でき、センサと未発泡の樹脂とを同時に所定の位置に配置できる。
仕切り部によって未発泡の樹脂を支持する場合、未発泡の樹脂として、大きな面積を有するシートなどを利用し易い。大きなシートを利用することで、発泡量を十分に確保でき、センサの周囲空間への発泡樹脂の充填などを良好に行える。
【0026】
(5) 上記のリアクトルの一例として、上記巻回部の端面に対向配置される対向部材を有し、上記センサは上記巻回部の端面と上記対向部材とで挟まれる空間に配置され、上記発泡樹脂の一部が上記巻回部の端面と上記センサとの間に介在される形態が挙げられる。上記対向部材は、例えば、磁性コアに備えるコア片、コア片を被覆する樹脂モールド部、コア片とコイルとの間に介在される介在部材などが挙げられる。
【0027】
上記空間は比較的狭い空間であり、このような空間にセンサが配置されると、センサはコイルの巻回部の端面に接触し易く、センサにおけるコイルとの接触面積(発泡樹脂を介した間接接触を含む)を大きくし易い。発泡樹脂のうち、巻回部の端面とセンサとの間に介在される部分は、コイルとセンサとの双方に密着できる。このような上記形態は、上述のセンサの周囲に生じ得る隙間を低減できる上に、コイルとセンサとの接触状態を維持し易く、樹脂成分による物理量の伝達を良好に行える。更に、巻回部が巻線を螺旋状に巻回して形成されて、上記空間がこの巻回部の端面形状に応じた傾斜空間である場合、特に巻線の巻回方向の一方に沿って先細りする空間である場合には、製造過程で、センサを上記傾斜空間に挿入配置すると、センサを容易に位置決めできる上に、位置ずれし難い。これらのことから、上記形態は、リアクトルの物理量を精度よく測定できる。更に、上記空間はコイルのデッドスペースといえ、センサの存在に起因するリアクトルの大型化を招き難く、上記形態は小型である。その他、センサが位置ずれし難い場合には、センサホルダを省略でき、部品点数が少なく、製造性にも優れる。
【0028】
(6) 上記のリアクトルの一例として、上記コイルと上記磁性コアとを有する組合体を載置する放熱板を備え、上記コイルは端面形状が角R部を有する矩形状である上記巻回部を一対備え、一対の巻回部は各巻回部の軸が平行するように並列されており、上記センサは、上記一対の巻回部における対向配置された上記角R部と、上記放熱板とで形成される台形状の空間に配置され、上記発泡樹脂の少なくとも一部を上記台形状の空間に備える形態が挙げられる。
【0029】
上記形態は、上記台形状の空間に配置されたセンサの一部がコイルの両巻回部の少なくとも一部、例えば角R部に接触し易く、センサにおけるコイルとの接触面積を大きくし易い。また、対向配置される角R部と、放熱板と、センサとで囲まれる閉空間に発泡樹脂の少なくとも一部、更には実質的に全てが充填される。そのため、発泡樹脂は、コイルとセンサとの双方により密着し易く、上述のセンサ周囲に生じ得る隙間をより低減し易い。これらのことから、上記形態は、封止樹脂の有無によらず、リアクトルの物理量をより精度よく測定できる。また、上記台形状の空間はコイルのデッドスペースといえるため、上記形態は、小型にできる。その他、上記形態は、放熱板を備えることで、放熱性に優れる。
【0030】
(7) 上記のリアクトルの一例として、上記磁性コアは、軟磁性材料を含むコア片と、上記コア片を被覆する樹脂モールド部とを備える形態が挙げられる。
【0031】
上記形態は、封止樹脂及びケースを備えていなくても、樹脂モールド部を有することでコア片の機械的保護、外部環境からの保護、コア片の一体化による剛性の向上などの効果を奏する。また、上述のように封止樹脂を備えていなくても、センサの周囲に存在する発泡樹脂によるセンサの周囲に生じ得る隙間の低減(センサにおける空気との接触領域の低減)と、コイルとセンサとの接触状態の維持と、センサの周囲に存在する発泡樹脂の樹脂成分による物理量の伝達経路の構築とによって、リアクトルの物理量を良好に測定できる。従って、上記形態は、封止樹脂及びケースを省略した場合に好適な構成といえる。また、この場合、小型である。その他、上記形態は、樹脂モールド部を有することで、コア片とコイルとの間の絶縁性の向上、組み付け部品点数の削減、組み付け部品の取り扱い性の向上、封止樹脂及びケースの省略による製造性の向上及び軽量化などの効果を有する。
【0032】
(8) 上記のリアクトルの一例として、上記センサがサーミスタを備える形態が挙げられる。
【0033】
上記形態は、感熱素子であるサーミスタを備えることでコイルの温度を測定できる。上述のように封止樹脂を備えていなくても、センサの周囲に存在する発泡樹脂によるセンサの周囲に生じ得る隙間の低減(センサにおける空気との接触領域の低減)と、発泡樹脂によるコイルとセンサとの接触状態の維持と、センサの周囲に存在する発泡樹脂の樹脂成分による伝熱経路の構築とによって、上記形態は、コイルの温度を適切に精度よく測定できる。
【0034】
[本発明の実施形態の詳細]
以下、図面を参照して、本発明の実施形態を具体的に説明する。図中の同一符号は同一名称物を示す。
【0035】
[実施形態1]
図1〜
図3を参照して、実施形態1のリアクトル1Aを説明する。
図1では、発泡樹脂4Aが分かり易いように、コイル2のうち一方の巻回部2aの一部を切欠いて示す。
図1は、リアクトル1Aの設置状態の一例を示し、リアクトル1Aの下面を設置面とする。以下、
図1に示す設置状態において設置側を下側、その対向側を上側と呼ぶことがある(この点は、後述する
図5も同様である)。
【0036】
(リアクトル)
・全体構成
実施形態1のリアクトル1Aは、巻線2wを螺旋状に巻回してなる一対の巻回部2a,2bを有するコイル2と、巻回部2a,2b内外に配置される部分を有する磁性コア3と、リアクトル1Aの物理量を測定するセンサ70(
図2)を有するセンサ部材7Aとを備える。このリアクトル1Aは、コイル2とセンサ部材7Aとの双方に接触する発泡樹脂4Aを備える点を特徴の一つとする。
【0037】
その他、この例に示すリアクトル1Aは、代表的には、その外周が封止樹脂に覆われず、このままの状態でコンバータケースなどの設置対象(図示せず)に取り付けられて使用される。リアクトル1Aは、例えば、液体冷媒が供給されて、リアクトル1Aが液体冷媒に接するような冷却構造を備える設置対象に取り付けられる。そのため、磁性コア3は、軟磁性材料を含み、磁路を構築する複数のコア片31m(
図3),コア片32m,…と、これらのコア片31m,32m,…を被覆する樹脂モールド部(ミドル樹脂モールド部310m,サイド樹脂モールド部320m)とを備える被覆部材としている。以下、各構成要素を順に説明する。
【0038】
・・コイル
コイル2は、
図3に示すように1本の連続する巻線2wを螺旋状に巻回して形成された一対の筒状の巻回部2a,2bと、巻線2wの一部から形成されて両巻回部2a,2bを接続する連結部2rとを備える。一対の巻回部2a,2bは、各巻回部2a,2bの軸が平行するように並列(横並び)されている。この例の巻線2wは、平角線の導体(銅など)と、この導体の外周を覆う絶縁被覆(ポリアミドイミドなど)とを備える被覆平角線(いわゆるエナメル線)であり、巻回部2a,2bはエッジワイズコイルである。
【0039】
この例に示す巻回部2a,2bは、角部を丸めた四角筒状であり、巻回部2a,2bの端面形状はそれぞれ、四つの角R部20を有する矩形状である。そのため、各巻回部2a,2bの外周面は、複数の巻線2wの側面が並べられてつくられる矩形状の平面(
図3では、上下面及び左右面)と、四隅に位置して角R部20をつくる円弧状の湾曲面とを含む。また、
図2のようにコイル2の軸方向に直交する平面で切断した断面に示すように、並列された一対の巻回部2a,2bにおける対向配置された角R部20,20の湾曲面と、各巻回部2a,2bにおける外周面のうち、上述の矩形状の上平面同士又は下平面同士を並列方向に繋ぐ仮想面200とによって、台形状の空間27A,27Cが上下二箇所に形成される(空間27Aについては
図5も参照)。この例のリアクトル1Aは、上側に設けられる下向きの台形状の空間27Aをセンサ70の配置箇所とする点を特徴の一つとする。対向配置された角R部20,20で挟まれる空間を含む上側の台形状の空間27Aは、コイル2が最も高温になり得る領域であり、コイル2の温度の測定箇所に適する領域の一つといえる。また、上側の台形状の空間27Aは、製造過程にあるリアクトル1Aを設置状態に配置した場合、上向きに開口した空間である。そのため、センサ部材7Aを巻回部2a,2bの上方から容易に挿入配置できる。更に、上下二箇所の台形状の空間27A,27Cは、コイル2のデッドスペースである。実施形態1のリアクトル1Aは、台形状の空間27Aをセンサ部材7Aの配置箇所とすることで、デッドスペースを有効活用でき、センサ部材7Aの存在によってリアクトル1Aが嵩高くなることを防止して、小型にできる。台形状の空間27A,27Cの大きさは、角R部20の大きさ(丸め半径)によって変化する。丸め半径が大きくなるにつれて、台形状の空間27A,27Cが大きくなり、大き過ぎるとコイル2の大型、引いてはリアクトル1Aの大型化を招く。そのため、台形状の空間27A,27Cの大きさに対応して、センサ部材7Aを選択すればよい。なお、
図2では、分かり易いように後述する配線78(
図1)を省略している。
【0040】
巻線2wの両端部はいずれも、巻回部2a,2bから適宜な方向に引き出されて、その先端の絶縁被覆が剥されて、導体に端子金具(図示せず)が接続される。コイル2は、端子金具を介して電源などの外部装置(図示せず)に電気的に接続される。
【0041】
・・磁性コア
磁性コア3は、コイル2の巻回部2a,2b内にそれぞれ配置される部分と、コイル2が実質的に配置されず、巻回部2a,2b外に突出するように配置される部分とを備える環状の部材であり、コイル2を励磁したときに閉磁路を形成する。前者のコイル2内の部分は、主として複数のコア片31mを含む積層物で構成され、後者のコイル2外の部分は主としてコア片32mで構成される。
【0042】
この例に示す磁性コア3は、
図3に示す複数の柱状のコア片31m,…と、コア片31m,…を覆うミドル樹脂モールド部310mとを備えるコア部品310と、
図1,
図3に示す一対の柱状のコア片32m,32mと、各コア片32mを覆うサイド樹脂モールド部320m(
図1)とを構成要素とする。この磁性コア3は、横並びされた一対のコア部品310,310を繋ぐように一対のコア片32m,32mが組み付けられ、この状態で各コア片32m,32mを覆うようにサイド樹脂モールド部320mが成形されて、環状体として固定された成形品となっている。
【0043】
・・・コア片
コア片31m,32mは、軟磁性材料を30体積%以上、更に50体積%超含み、磁路を形成する。具体的には、鉄や鉄合金(Fe−Si合金、Fe−Ni合金など)といった軟磁性金属粉末や更に絶縁被覆を備える被覆粉末などを圧縮成形した圧粉成形体、軟磁性粉末と樹脂とを含む複合材料などが利用できる。この例では、圧粉成形体としている。磁性コア3に備えるコア片の個数、形状、大きさ、組成などは適宜変更できる。
【0044】
この例に示すコア片31mは、角部を丸めた直方体状であり、コア片32mは、一対のコア部品310,310が接続される内端面32eがコイル2の軸方向に直交するように設けられた平面であり、上面及び下面が内端面32eから外方に向かって断面積が小さくなるドーム状(変形台形状)である。また、この例では、コイル2と磁性コア3とを組み付けた状態で、コイル2の設置面、即ち巻回部2a,2bの下面と、サイド樹脂モールド部320mの下面とが実質的に面一になるように、コア片32mの下面がコア部品310の下面(コア片31mの下面)よりも突出している。その結果、この例に示すリアクトル1Aの設置面は、主として、2個のコア片32mを覆うサイド樹脂モールド部320mの設置面(下面)と、コイル2の設置面(巻回部2a,2bの下面)とで構成される。このようなリアクトル1Aの外形は、凹凸が少なく、単純な形状となる。
【0045】
・・・樹脂モールド部
各コア部品310に備えるミドル樹脂モールド部310mは、複数のコア片31m,…が等間隔に配列された状態でその外形に沿って、一部を除く外周全体を覆うように設けられたコア被覆部分を有する。この例では、コア部品310の一端部に位置するコア片31mの端面が樹脂モールド部310mに覆われず、露出されている(
図3の左側のコア部品310参照)。また、この例の樹脂モールド部310mは、隣り合うコア片31m,31m間の隙間に充填されてギャップとして機能するギャップ部分310gを有する。
【0046】
サイド樹脂モールド部320mは、コア片32mの外周面を覆うコア被覆部分を有する。また、この例の樹脂モールド部320mは、コア片32mとコア部品310に備えるコア片31m間の隙間に充填されてギャップとして機能するギャップ部分(図示せず)を有する。
【0047】
即ち、この例に示すリアクトル1Aに備える樹脂モールド部310m,320mは、コア片31m,32mの被覆、コイル2内の部分となるコア片31m,31m同士の接合、コア部品310(コア片31m)とコア片32mとの接合による環状体の維持、ギャップの形成、といった種々の機能を有する。なお、樹脂モールド部310m,320mの構成樹脂によるギャップに代えて、コア片31m,32mよりも比透磁率が小さい材料、例えば、アルミナなどの非磁性材からなるギャップ材を備える形態、エアギャップを備える形態、又はギャップを有さない形態とすることができる。
【0048】
その他、この例に示すミドル樹脂モールド部310mは、コイル2の巻回部2a,2bの端面とコア片32mの内端面32eとの間に介在される枠部315を一体に備え、上述のコア被覆部分と枠部315とでL字状の成形体となっている。枠部315は、コア被覆部分に保持されるコア片31mの一端面を覆う部分と、他方のコア部品に備えるコア片31m(コア被覆部分)が挿通される貫通孔315hとを備える。枠部315の一面は、コア片32mの内端面32eに対向配置されて、サイド樹脂モールド部320mの一部が接合される。枠部315の他面は、コイル2の巻回部2a,2bの軸方向に直交するように設けられた平面であり、巻回部2a,2bに対向配置される(
図1,後述の
図4)。
【0049】
枠部315におけるコア片32mとの接触面(一面)には、
図3に示すように、コア片32mの位置決めを行う上下二つの]状の突条316,316、枠部315とコア片32mの内端面32eとの間にサイド樹脂モールド部320mの構成樹脂の導入を促進する隙間を形成するための複数の矩形状の突出部317,…、樹脂モールド部320mの構成樹脂が入り込むことでコア部品310との結合強度を高める機能を有する係止部318を備える。係止部318は、突条316の一部であって断面L字状であり、L字部分のうち枠部315における上記接触面(一面)に平行な片と、上記接触面(一面)との間に上述の構成樹脂の充填空間を形成する。一方、枠部315におけるコイル2との対向面(他面)315cには、巻回部2a,2b間に介在される仕切り板319を備える。
【0050】
その他、この例に示すサイド樹脂モールド部320mは、
図1に示すように、リアクトル1Aを設置対象に固定するためのボルト(図示せず)が取り付けられる取付部325を備える。取付部325は、コア片32mにおいてコイルから離れるように外方に突出する複数の突片であり(ここでは合計四個)、ボルト孔325hを備える。取付部325の個数、取付位置などは適宜変更できる。
【0051】
上述した突条316、突出部317、係止部318、仕切り板319、及び取付部325の少なくとも一つを省略することができる。
【0052】
樹脂モールド部310m,320mの構成樹脂は、ポリフェニレンサルファイド(PPS)樹脂、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)樹脂、液晶ポリマー(LCP)、ナイロン6・ナイロン66・ナイロン10T・ナイロン9T・ナイロン6Tなどのポリアミド(PA)樹脂、ポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン(ABS)樹脂などの熱可塑性樹脂が挙げられる。その他には、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂などの熱硬化性樹脂が挙げられる。上記の樹脂として、アルミナやシリカなどのセラミックスフィラーなどを含有するものを利用すると、熱伝導性に優れる樹脂モールド部310m,320mとなり、放熱性に優れるリアクトル1Aとすることができる。
【0053】
・・センサ部材
リアクトル1Aは、その物理量を測定するセンサ70を備える(
図2)。センサ70には、その感知情報を外部装置に伝達するための配線78が接続される(
図1,
図3)。配線78の端部に外部装置に接続するコネクタ部(図示せず)を設けると、外部装置との接続作業性に優れる。
【0054】
センサ70は、所望の物理量に応じて適宜選択できる。物理量を温度とする場合、センサ70は、サーミスタ、熱電対、焦電素子といった感熱素子が挙げられる。物理量を電流、電圧、磁界などとする場合、センサ70は、ホール素子、磁気抵抗素子(MR素子)、磁気インピーダンス素子(MI素子)、サーチコイルなどのコイル2の磁界を感知可能なものが挙げられる。この例ではセンサ70としてサーミスタを備え、リアクトル1Aはコイル2の温度を測定可能なものとしている。
【0055】
リアクトル1Aは、センサ70を機械的に保護する保護部材を備えることが好ましい。そこで、この例のリアクトル1Aは、センサ70と保護部727とを備えるセンサ部材7Aを備える。詳しくは、センサ部材7Aは、
図2,
図3に示すようにセンサ70を覆う保護部727と、コイル2の一対の巻回部2a,2b間に配置される仕切り部722とが一体に設けられた樹脂成形部72を備える。保護部727は、
図2に示すように円柱状に設けられて、その内部にセンサ70が埋設されている。仕切り部722は、
図2,
図3に示すように円柱状の保護部727の円周面の一部から円柱の直径方向に延設された平板部分である。
【0056】
センサ70を備える保護部727は、上述の台形状の空間27Aに配置される。この保護部727は巻回部2a,2bにおける対向配置される一対の角R部20,20の少なくとも一方、好ましくは双方に接触するように配置される(
図2の一点鎖線円内の拡大図参照)。この接触によって、センサ70は、保護部727を介して角R部20,20に支持される。円柱状の保護部727の直径φ
7が巻回部2a,2bの外周面のうち対向する平面間の間隔W
2よりも大きくなるように、保護部727の大きさが調整されることで、この配置状態が可能である。その他、この例に示す樹脂成形部72は、円柱状の保護部727の円周面のうち、円柱の直径方向にみて仕切り部722とは反対側に、センサ部材7Aを巻回部2a,2b間に押し付け易いように、上面が平面で構成された台座部725を備える。台座部725の上平面の幅を直径φ
7よりも大きくしており、製造過程では容易に押し付けられる。製造過程で台座部725を押し付けると、直径φ
7が巻回部2a,2b間の間隔W
2よりも大きいため、保護部727は、巻回部2a,2bにおける対向配置された角R部20,20間に当て止めされて、台形状の空間27A内に位置決めされる。
【0057】
仕切り部722は、発泡樹脂4Aと共に、センサ70が上述の台形状の空間27Aに配置された状態を維持する機能を有する。仕切り部722の幅W
72は巻回部2a,2b間の間隔W
2よりも小さく(薄く)、仕切り部722と巻回部2a,2b間に介在される発泡樹脂4Aとの合計幅が巻回部2a,2b間の間隔W
2と同等以上となるように、仕切り部722の幅W
72が調整されている。その結果、上記の配置状態の維持を良好に行える。また、このように薄いことで、仕切り部722は、製造過程でセンサ部材7Aの一部を巻回部2a,2b間に挿入する際にガイドとしても機能する。その他、仕切り部722は、巻回部2a,2b間の絶縁機能などを有する。
【0058】
平板状の仕切り部722の面積(巻回部2a,2bの平面に対向する部分の面積)は、適宜選択できる。後述する実施形態2,3に示すように、仕切り部722を省略できるため、仕切り部722の面積は小さくてもよい。一方、
図3に示すように、仕切り部722の面積をある程度大きくすれば、巻回部2a,2bに挟まれる空間を仕切り部722によって十分に埋められる。その結果、角R部20,20に支持されるセンサ70の周囲に生じる隙間を低減できる。更に、仕切り部722がある程度大きければ、巻回部2a,2bと、発泡樹脂4Aと、仕切り部722との三者の接触面積が増大して、コイル2から発泡樹脂4Aを経てセンサ部材7A(仕切り部722⇒保護部727⇒センサ70)への熱伝導を良好に行える。即ち、仕切り部722は、コイル2と発泡樹脂4Aとの間の伝熱経路としての機能も有する。また、製造過程で発泡樹脂4Aの原料に未発泡の樹脂シートを利用する場合、仕切り部722によってこの樹脂シートを支持し易い。特に、大きな樹脂シートを利用する場合に、センサ70(保護部727)の近傍に上記樹脂シートを配置し易い、仕切り部722によって上記樹脂シートを支持した状態で巻回部2a,2b間に同時に挿入できる、といった製造過程での利点がある。発泡樹脂4Aの原料の大きさや膨張率などに応じて、仕切り部722の大きさ(面積)を選択するとよい。なお、仕切り部722の面積が大きければ、巻回部2a,2b間をより確実に区画して、絶縁性を高められる。
【0059】
この例に示す仕切り部722は、平板状といった単純な形状であり、製造性に優れる。その他、特許文献1のセンサホルダのようにフック(図示せず)を備え、枠部315の仕切り板319に上記フックを係止可能な突部などを備える構成とすることができる。この場合、製造過程で、センサ部材7Aの位置決めを容易に、かつ確実に行える上に、樹脂の発泡時にセンサ部材7Aが所定の位置から浮き上がることを防止して、センサ70を所定の位置に維持し易い。フックと突部との係合機構などを有していない場合には、樹脂の発泡時、浮き上がらないようセンサ部材7Aを押し付けていればよい。
【0060】
樹脂成形部72の構成樹脂は、例えば、PPS樹脂、PTFE樹脂、LCP、上述のナイロン6などのPA樹脂、PBT樹脂、ABS樹脂などの熱可塑性樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂などの熱硬化性樹脂が挙げられる。これらの樹脂は、一般に、空気よりも熱伝導率が高い。このような樹脂からなる樹脂成形部72がコイル2とセンサ70との間に介在することで、樹脂成形部72の少なくとも一部がコイル2に直接接触したり、発泡樹脂4Aを介してコイル2に間接的に接触したりすることで、コイル2からの熱をセンサ70に良好に伝達できる。樹脂成形部72は、センサ70を中子として、射出成形などの適宜な樹脂成形法を利用することで容易に形成できる。
【0061】
・・発泡樹脂
発泡樹脂4Aは、複数の気泡及びこれらの気泡を内包する樹
脂で構成されて、センサ部材7Aの周囲空間を埋めるように設けられている。この例に示す発泡樹脂4Aは、その少なくとも一部がコイル2の一対の巻回部2a,2b間に存在する。即ち、リアクトル1Aは、発泡樹脂4Aを、対向配置される上側の角R部20,20の間という狭い空間と、角R部20よりも内側に位置する対向配置される平面間という角R部20,20間よりも更に狭い空間(内側の領域、
図2では角R部よりも下側の領域)とに備える。この例では、巻回部2a,2b間に仕切り部722が挿入されるため、発泡樹脂4Aの存在領域はより狭い空間になっている。より具体的には、発泡樹脂4Aは、一対の巻回部2a,2bにおける対向配置された外周面とセンサ部材7A(樹脂形成部72)の外周面とで囲まれる空間に充填されている。
図2に示すように、一方の巻回部2aと仕切り部722の一面との間、他方の巻回部2bと仕切り部722の他面との間にそれぞれ、即ち仕切り部722の両側にそれぞれ発泡樹脂4A,4Aが設けられている。各発泡樹脂4A,4Aは、主として、コイル2の一方の巻回部2aの外周面又は他方の巻回部2bの外周面のうち、上側の角R部20とこの角R部20に繋がる平面と、センサ部材7Aの樹脂成形部72の外周面のうち、保護部727の外周面の一部と仕切り部722の一面とで囲まれる空間に備える。
【0062】
上記空間は、製造過程では、実質的に閉空間である。このような閉空間で樹脂を発泡させて体積膨張させることで、発泡樹脂4A,4Aはいずれも、主として上記空間に充填される。そのため、発泡樹脂4A,4Aはいずれも、上記空間に実質的に沿った形状である。発泡樹脂4Aの一部が、巻回部2a,2bの角R部20とセンサ部材7Aの保護部727との間に介在したり、巻回部2a,2bのターン間に介在したりすることを許容する。ターン間に介在する発泡樹脂は、巻回部2a,2bの伸縮防止に寄与すると期待される。
【0063】
上述の閉空間内で発泡樹脂が体積膨張することで、発泡樹脂4A,4Aはコイル2(巻回部2a,2b)とセンサ部材7Aとの双方に接触する。膨張量によっては上記空間内でセンサ部材7Aをコイル2(巻回部2a,2b)側に押し付けることも期待できる。発泡樹脂4A,4Aが主として上記空間に充填されることで、センサ70の周囲に隙間が生じ難い上に、コイル2とセンサ部材7Aとの接触状態を維持し易い。特に、この例では、センサ部材7Aの仕切り部722の両側に発泡樹脂4A,4Aを均等に備える。そのため、センサ部材7Aは、均一的に体積膨張した発泡樹脂4A,4Aによって巻回部2a,2bのそれぞれに均一的に接触できる。この例の発泡樹脂4Aは、接着力をある程度有して、コイル2とセンサ部材7Aとに密着しており、コイル2とセンサ部材7Aとの接触状態をより維持し易い。
【0064】
発泡樹脂4Aの大きさ(充填体積、仕切り部722に沿った存在領域など)は、コイル2とセンサ部材7Aとの双方に接触可能であり、センサ70の周囲空間を十分に埋められる範囲で適宜選択できる。この例では、発泡樹脂4A,4Aは、仕切り部722の実質的に全長に至って存在するが、仕切り部722の途中まで存在する形態などとすることができる。上記空間のうち、センサ70を備える保護部727の近傍領域は、コイル2との接触が最も望まれる領域であるため、この近傍領域は少なくとも、発泡樹脂4Aが隙間なく存在することが好ましい。
【0065】
・・・発泡樹脂の構成材料
発泡樹脂4Aの樹脂成分は、コイル2に接することから、電気絶縁性に優れるもの、コイル2の最高到達温度に対する耐熱性に優れるもの(150℃以上、更に180℃以上)が好ましい。この樹脂成分は、液体冷媒などに接触し得ることから、液体冷媒に対する耐性に優れるものが好ましい。具体的な樹脂は、PPS樹脂、ナイロンなどのPA樹脂、エポキシ樹脂などが挙げられる。これらの樹脂は、一般に、空気よりも熱伝導率が高い。このような樹脂からなる発泡樹脂4Aがコイル2とセンサ70(保護部727)とに接触することで、コイル2からの熱をセンサ70に良好に伝達できる。
【0066】
発泡樹脂4Aの原料には、未発泡の樹脂シート400(
図3)が好適に利用できる。樹脂シートは、取り扱い易く、所望の形状に容易に切断できる上に、可撓性に優れるため任意の箇所に配置し易く、作業性に優れる。
【0067】
未発泡の樹脂シートには、市販品や公知のものを利用できる。例えば、発泡後の樹脂の厚さが、発泡前の樹脂の厚さの3倍以上、更に4.5倍以上、更には5倍以上のものであれば、上述のコイル2とセンサ部材7A(センサ70)との接触、センサ70の周囲空間への充填を十分に行えると期待される。具体的には、(発泡後の樹脂の厚さ/発泡前の樹脂の厚さ)で求められる膨張率が3以上、4.5以上、5以上であるものが挙げられる。膨張率が上記の範囲を満たす場合には、未発泡の樹脂シート400の厚さが十分に薄く(例えば、0.2mm以下)、巻回部2a,2b間の隙間W
2(
図2)といった狭い箇所であっても、樹脂シート400,400とセンサ部材7Aの仕切り部722とを同時にかつ容易に挿入でき、作業性に優れる。
【0068】
未発泡の樹脂シートとして、未発泡の樹脂層と接着剤層とを備えるものを利用できる。接着剤層を備える場合には、コイル2及びセンサ部材7Aに強固に接着でき、体積膨張によるコイル2側へのセンサ部材7Aの接触固定に加えて、接着剤層による強固な固定も期待できる。また、接着剤層を備える場合には、未発泡の樹脂層の厚さが薄い場合でも、複数の樹脂シートを接着剤層によって接合して積層することで、所望の体積膨張がなされた発泡樹脂4Aを備えられる。未発泡の樹脂シートの厚さ(接着剤層を備える場合には接着剤層の厚さも含む)は、発泡後の体積が所定の大きさとなるように選択するとよい。未発泡の樹脂シート自体が粘着力を(ある程度)有していれば、接着剤層は無くてもよい。センサ部材7Aをコイル2により強固に固定することが望まれる場合には、別途、接着剤を利用することができる。
【0069】
・・・製造方法
発泡樹脂4Aは、例えば、以下の工程によって形成できる。発泡樹脂4Aの原料である未発泡の樹脂シートを所定の形状に切断し(
図3では長方形)、樹脂シート400,400をセンサ部材7Aの仕切り部722の表裏面にそれぞれ配置する。そして、樹脂シート400,400とセンサ部材7Aの仕切り部722とを一対の巻回部2a,2b間に挿入する。樹脂シート400が粘着力を有したり接着剤層を有したりする場合には、センサ部材7Aから樹脂シート400,400が脱落せず、挿入し易く作業性に優れる。その後、発泡に必要な熱処理を施すことで、発泡樹脂4Aを形成できる。
【0070】
上記熱処理の加熱温度及び保持時間は、樹脂の成分などに応じて適宜選択するとよい。例えば、加熱温度は100℃以上170℃以下程度が挙げられる。加熱温度が低く、保持時間が短くてよい樹脂(シート)を利用すると、熱処理時に、コイル2や磁性コア3(特に、樹脂モールド部310m)の熱損傷を防止できて好ましい。また、低温かつ短時間で発泡可能な樹脂(シート)を用いることで、製造性を向上できる上に、コストの低減にも寄与する。
【0071】
この例では、発泡のための熱処理は、サイド樹脂モールド部320mの固化工程の熱処理と兼用することができる。即ち、樹脂モールド部320mの構成樹脂を成形後固化前の組物に、樹脂シート400,400とセンサ部材7Aとを配置して、樹脂シート400,400の発泡と樹脂モールド部320mの固化とを同時に行うことができる。樹脂モールド部320mを固化して得られた組物に、樹脂シート400,400などを配置して、別途、発泡のための熱処理を行うこともできる。
【0072】
(リアクトルの製造方法)
リアクトル1Aは、例えば、以下の準備工程、コア部品310の作製工程、コイル2と磁性コア(コア部品310,コア片32m)との組み付け工程、サイド樹脂モールド部320mの形成工程、センサ部材7A及び樹脂シート400の配置工程、固化及び発泡工程を備えるリアクトルの製造方法によって製造することができる。各工程の概略は以下の通りである。
【0073】
準備工程では、コイル2、コア片31m,32m、樹脂成形部72を備えるセンサ部材7A、未発泡の樹脂シート400を準備する。
【0074】
コア部品の作製工程では、複数のコア片31mを離間して配置してミドル樹脂モールド部310mで覆うと共に、コア片31m,31m間にも樹脂を充填し、枠部315及びギャップ部分310gを含むコア部品310を作製する。
【0075】
コイルと磁性コアとの組み付け工程では、コイル2の巻回部2a,2b内にコア部品310のコア被覆部分をそれぞれ挿入し、枠部315,315を挟むようにコア片32m,32mを配置して、環状に組み付けて組物を作製する。
【0076】
サイド樹脂モールド部の形成工程では、上述の環状に組み付けた組物のコア片32m,32mの露出部分をサイド樹脂モールド部320mの構成樹脂(未固化)で覆って、被覆中間体を製造する。
【0077】
センサ部材及び樹脂シートの配置工程では、センサ部材7Aの仕切り部722の表裏面にそれぞれ、樹脂シート400,400を配置して、上述の被覆中間体における一対の巻回部2a,2b間に、仕切り部722と樹脂シート400,400とを同時に挿入する。
【0078】
固化及び発泡工程では、上述の被覆中間体のサイド樹脂モールド部320mの構成樹脂を固化すると共に、樹脂シート400,400を発泡させる。
【0079】
その他、リアクトル1Aは、コイル2とセンサ70との間に発泡樹脂4Aを形成した後、コア片32mの組み付け、及びサイド樹脂モールド部320mの固化を行うことができる。即ち、上記準備工程、コア部品310の作製工程、コイル2とコア部品310との組み付け工程、センサ部材7A及び樹脂シート400の配置工程、発泡工程を順に経た後、コイル2が発泡樹脂4Aによって固定されたコア部品310とコア片32mとの組み付け工程、サイド樹脂モールド部320mの形成及び固化工程を行うことができる。
【0080】
(効果)
実施形態1のリアクトル1Aは、製造過程で体積膨張させた発泡樹脂4Aを備えることで、センサ70の周囲に生じ得る隙間を低減できる。また、体積膨張によってコイル2とセンサ部材7Aとの双方に十分に密着できるため、発泡樹脂4Aを、コイル2の熱をセンサ部材7Aのセンサ70に伝達する伝熱経路に利用できる。特に、発泡樹脂が接着力を有していれば、コイル2とセンサ部材7Aとの接触状態を強固に維持できる。発泡樹脂4Aの配置状態や膨張量などによっては、発泡樹脂4Aによって、センサ70をコイル2側に押し付けることがあり、このことからも、リアクトル1Aは、コイル2とセンサ70との接触状態を良好に維持できると期待できる。従って、リアクトル1Aは、封止樹脂及びケースを備えていなくても、振動が付与され得る車載部品などに使用される場合でも、空気よりも熱伝導性に優れる発泡樹脂4Aがセンサ70の周囲に存在することで測定精度を高められて、コイル2の温度を良好に測定できる。封止樹脂を備えておらずセンサ部材7Aの周囲に空気が多く存在する場合に比較して、リアクトル1Aはコイル2の温度を精度よく測定できる。
【0081】
特に、実施形態1のリアクトル1Aは、センサ70の配置箇所を台形状の空間27Aとすることでセンサ70(保護部727)が両巻回部2a,2bの少なくとも一方、好ましくは双方の角R部20に接触できる点(
図2では双方に接触)、巻回部2a,2b間に発泡樹脂4Aの少なくとも一部と仕切り部722とが存在して、センサ70(保護部727)の周囲に生じ得る隙間を低減できる点、及び台形状の空間27Aに維持し易い点からも、リアクトル1Aは、コイル2の温度を精度よく測定できる。その他、リアクトル1Aでは、センサ部材7Aとして、樹脂成形部72を備えるものを利用したことで、センサ70の取り扱い、センサ70のコイル2への配置、樹脂シート400の支持及び配置などが行い易く、製造性にも優れる。
【0082】
[変形例1−1]
実施形態1では、センサ部材7Aの仕切り部722の両側に発泡樹脂4A,4Aを均等に備える構成を説明した。その他、コイル2とセンサ部材7Aとの双方に接することができれば、仕切り部722の片側にのみ発泡樹脂4Aを備える形態とすることができる。この場合、例えば、実施形態1の製造過程で用いた未発泡の樹脂シート400の厚さよりも厚いものを用いることが挙げられる。コイル2の巻回部2a,2bの一方の外周面と仕切り部722の片面との間に発泡樹脂4Aが介在することで、センサ70の周囲に生じ得る隙間を、発泡樹脂4Aが無い場合に比較して低減できる。発泡樹脂の体積膨張によっては、仕切り部722が他方の巻回部に押し付けられることが期待できる。この押し付けによっても仕切り部722と巻回部とが接触し、この接触状態が維持され得る。これらのことから、この形態は、巻回部から樹脂成形部72を介してセンサ70に物理量が伝達されて、物理量の測定を良好に行えると期待される。
【0083】
又は、仕切り部722の両側に発泡樹脂4A,4Aを不均一な大きさで備える形態とすることができる。この場合、センサ70の周囲に生じ得る隙間を、発泡樹脂4Aが無い場合に比較してより低減できる上に、発泡樹脂の体積膨張が大きい側から小さい側に向かって仕切り部722が巻回部に押し付けられることが期待できる。この押し付けによっても上述のように仕切り部722と巻回部との接触が期待できる。従って、この形態も、仕切り部722が接触した巻回部から樹脂成形部72を介してセンサ70に物理量が伝達されることで、物理量の測定を良好に行えると期待される。
【0084】
[変形例1−2]
実施形態1では、センサ部材7Aが、センサ70を覆う保護部727と仕切り部722とを一体に備える樹脂成形部72を備える構成を説明した。その他のセンサ部材として、センサ70を覆う部分のみを備える形態とすることができる。例えば、樹脂のチューブや、実施形態1のように樹脂モールドによる成形品であって仕切り部722を有しておらず、保護部727のみを備える柱状のもの(実施形態2参照)などをセンサ部材に利用できる。更にこの柱状のセンサ部材を保持する以下のセンサホルダを別途備える形態とすることができる。センサホルダは、例えば、特許文献1に記載されるようなセンサ部材の保持箇所と仕切り部とが一体に成形された樹脂成型品などが挙げられる。この形態は、センサホルダに柱状のセンサ部材を組み付けて、所定の位置(実施形態1では台形状の空間27A)に配置する。
【0085】
[変形例1−3]
実施形態1では、ミドル樹脂モールド部310mの形成時期と、サイド樹脂モールド部320mの形成時期とが異なり、段階的に形成する構成を説明した。その他、コア片32mとサイド樹脂モールド部320mとを備えるコア部品とし、一対の(内側)コア部品310,310と、一対の(外側)コア部品との合計4個のコア部品を組み付ける形態とすることができる。この形態は、各コア部品をそれぞれ製造できる上に、被覆対象の形状が単純になり、組付部品の製造性に優れる。この形態では、コア部品同士が相互に係合する係合部などを備えると、組み付け状態を強固に維持できる。
【0086】
この形態では、上述のように合計4個の柱状のコア部品を備える形態の他、一方の巻回部内に収納されるコア片31mを含む積層物と一方のコア片32mとがL状に組み付けられて樹脂モールド部に一体に保持されたL字コア部品を一組備える形態、各巻回部内にそれぞれ収納される2個の積層物と一方のコア片32mとがU状に組み付けられて樹脂モールド部に一体に保持されたU字コア部品と、1個の外側コア部品とを備える形態などとすることができる。
【0087】
[変形例1−4]
実施形態1では、リアクトル1Aがそのまま設置対象に取り付けられる構成を説明した。その他、リアクトル1Aを収納する個別ケースを備える形態とすることができる。又は、個別ケースと、個別ケース内に充填される封止樹脂とを備える形態とすることができる。これらの形態は、個別ケースや封止樹脂によってリアクトル1Aの機械的保護、外部環境からの保護を図ることができる。
【0088】
[変形例1−5]
実施形態1では、磁性コア3がコア片31m,32mを覆う樹脂モールド部310m,320mを備える構成を説明した。その他、樹脂モールド部を備えていない形態、樹脂モールド部に代えて、コイル2と磁性コア3との間に介在される介在部材を備える形態とすることができる。介在部材は、上述の樹脂などの絶縁材料によって構成された成形品を利利用できる。例えば、介在部材は、巻回部2a,2bと複数のコア片31mを含む積層物との間に介在される内側介在部と、巻回部2a,2bの端面とコア片32mの内端面32eとの間に介在される端部介在部とを備えるものが挙げられる。内側介在部は、例えば筒状の部材が挙げられ、端部介在部は、例えば、枠部315のような平板状であり、上記コア片31mを含む積層物が挿通される一対の貫通孔が設けられた枠板部材が挙げられる。介在部材を備えることで、コイル2と磁性コア3との間の絶縁性を高められる。
【0089】
[実施形態2]
図4を参照して、実施形態2のリアクトル1Bを説明する。実施形態2のリアクトル1Bは、一対の巻回部2a,2bを有するコイル2と、巻回部2a,2b内外に配置される部分を有する磁性コア3と、リアクトル1Bの物理量を測定するセンサ部材7Bと、コイル2とセンサ部材7Bとの双方に接触する発泡樹脂4Bとを備える点は、実施形態1のリアクトル1Aと同様である。リアクトル1Bにおける実施形態1との主な相違点は、センサ部材7Bの形態、センサ70の配置箇所にあり、その他の点は概ね同様である。以下、この相違点を中心に説明し、その他の構成は説明を省略する。
【0090】
(リアクトル)
リアクトル1Bに備える磁性コア3は、上述のようにコイル2外に配置されるコア片32mがコイル2内に配置されるコア片31m(
図3)よりも突出しており、コア片32mの内端面32eに平行に、ミドル樹脂モールド部310mの枠部315の対向面315cを備える。枠部315の対向面315cは、巻回部2a,2bの端面に対向配置され、巻回部の軸方向に直交する平面で構成される。一方、コイル2の各巻回部2a,2bの巻線2wは、螺旋状に巻回されている。そのため、リアクトル1Bは、コイル2と磁性コア3とが組み合わされた状態では、各巻回部2a,2bの端面と枠部315の対向面315cとで挟まれる空間、この例では各巻回部2a,2bの端部のターンがつくる傾斜に対応した傾斜空間27Gが設けられる。
【0091】
この例に示すリアクトル1Bでは、合計四か所の傾斜空間27G,…が設けられる。具体的には、各傾斜空間27G,…は、一方の巻回部2aにおける端子金具との接続側であって外側寄りに一か所、連結部2r側であって両巻回部2a,2bが対向する内側寄りに一か所、他方の巻回部2bにおける端子金具との接続側であって両巻回部2a,2bが対向する内側寄りに一か所、連結部2r側であって巻回部2
bの外側寄りに一か所備える。
【0092】
実施形態2のリアクトル1Bでは、傾斜空間27Gをセンサ70の配置箇所とする。ここでは、上記四つの傾斜空間27Gのうち、コイル2の温度が高くなる部分に近いと考えられる箇所、具体的には他方の巻回部2bにおける端子金具との接続側で内側寄りの傾斜空間27Gをセンサ部材7Bの配置箇所としている。その他の三か所から選択した一か所としてもよい。
【0093】
なお、枠部315の対向面315cを巻回部の軸方向に非直交に交差する面などとし、各巻回部2a,2bの端面と枠部315の対向面315cとの間に平行空間などを設けて、この空間をセンサ70の配置箇所とすることができる。
【0094】
実施形態2のリアクトル1Bに備えるセンサ部材7Bは、センサ70と樹脂成形部72とを備える。但し、センサ部材7Bの樹脂成形部72は、仕切り部722を有しておらず、センサ70を覆う保護部727のみを備える。そのため、センサ部材7Bは、円柱状となっている。このようにセンサ部材7Bを、センサ70と保護部727とを備える小型な形態とすることで、上述の傾斜空間に収納可能である。なお、
図4では、分かり易いように配線78(
図1)を省略している。
【0095】
発泡樹脂4Bは、巻回部2bの端面と枠部315の対向面315cとで挟まれる傾斜空間27Gに介在される。より具体的には、
図4に示すように円柱状のセンサ部材7Bの一部が枠部315の対向面315cに接触し、センサ部材7Bの他部を覆うように発泡樹脂4Bが形成されている。即ち、発泡樹脂4Bは、主としてコイル2(巻回部2b)の端面とセンサ部材7Bとの間に介在して、体積膨張によって巻回部2bとセンサ部材7bとの双方に十分に接触できる上に、センサ70の周囲に隙間が生じ難い。発泡樹脂4Bが、センサ部材7Bと枠部315の対向面315cとの間に介在する部分を有する場合には、体積膨張によってセンサ部材7Bを巻回部2b側に押し付けることが期待できる。
【0096】
(リアクトルの製造方法)
実施形態2のリアクトル1Bの製造には実施形態1で説明した製造方法を利用できる。
【0097】
ここで、傾斜空間27Gは、コイル2(巻回部2a,2b)の軸方向、及び巻回部2a,2bの並列方向の双方に直交する方向(
図4では紙面に垂直な方向)に延びる空間であって、その一方の開口部(
図4では紙面手前の開口部)から他方の開口部(同紙面奥の開口部)に向かって先細りする空間である。そのため、センサ部材7Bを上記傾斜空間に挿入配置すると、先細り部分でセンサ部材7Bを挟持でき、センサ部材7Bを容易に位置決めできる。また、この挟持によって、センサホルダなどを有していなくても樹脂の発泡時などにセンサ部材7Bが位置ずれし難く、センサ部材7B(特にセンサ70)が所定の位置に配置されたリアクトル1Bを精度よく製造できて、製造性にも優れる。センサホルダを省略できることからも、部品点数を削減でき、この点からも、リアクトル7Bは、製造性に優れる。
【0098】
(効果)
実施形態2のリアクトル1Bは、実施形態1のリアクトル1Aと同様に、体積膨張させた発泡樹脂4Bがコイル2とセンサ部材7Bとの双方に十分に密着できる上に、センサ70の周囲に生じ得る隙間を低減できる。発泡樹脂が接着力を有していれば、コイル2とセンサ部材7Bとの接触状態を強固に維持できる。また、リアクトル1Bは、発泡樹脂4Bのうち、コイル2の端面とセンサ部材7Bとの間に介在する部分を、コイル2の熱をセンサ70に伝達する伝熱経路に利用できる。従って、リアクトル1Bも、封止樹脂及びケースを備えていなかったり、車載部品などに使用されたりしても、コイル2の温度を良好に、精度よく測定できる。
【0099】
特に、実施形態2のリアクトル1Bは、センサ70の配置箇所を傾斜空間27Gとするため、コイル2と枠部315との間に挟まれた発泡樹脂4Bによってセンサ部材7Bを支持し易く、センサ70を所定の位置に維持し易いことからも、リアクトル1Bは、コイル2の温度を精度よく測定できる。その他、リアクトル1Bは、上述のように製造過程で位置決めが容易な上に、センサホルダを省略できて製造性に優れる上に、コイル2のデッドスペースを有効活用でき、小型にできる。
【0100】
なお、実施形態2のリアクトル1Bは、変形例1−3〜1−5の構成を適用できる。介在部材を備える形態とする場合には、傾斜空間27Gを構成する対向部材として、枠部315に代えて、コア片32mの内端面32eに対向配置される上述の枠板部材の一部を利用することができる。
【0101】
[実施形態3]
図5を参照して、実施形態3のリアクトル1Cを説明する。実施形態3のリアクトル1Cは、並列された一対の巻回部2a,2bを有するコイル2と、巻回部2a,2b内外に配置される部分を有する磁性コア3と、リアクトル1Cの物理量を測定するセンサ部材7Cと、コイル2とセンサ部材7Cとの双方に接触する発泡樹脂4Cとを備える点は、実施形態1のリアクトル1Aと同様である。また、センサ部材7Cは、センサ70と保護部727とを備える円柱状である点は、実施形態2のリアクトル1Bのセンサ部材7Bと同様である。リアクトル1Cにおける実施形態1との主な相違点は、センサ70の配置箇所、放熱板6を備える点にあり、その他の点は概ね同様である。以下、この相違点を中心に説明し、その他の構成は説明を省略する。
【0102】
(リアクトル)
リアクトル1Cは、コイル2と磁性コア3とを有する組合体を載置する放熱板6を備える。放熱板6は、熱伝導性に優れる材料から構成された板を適宜利用できる。放熱板6の構成材料は、熱伝導率が高く、軽量なアルミニウムやアルミニウム合金などが好適に利用できる。その他の金属として、マグネシウムやマグネシウム合金などが挙げられる。その他、アルミナなどの非金属無機材料などとすれば、コイル2との間の絶縁性に優れる。
【0103】
放熱板6は、リアクトル1Cを支持できるように、リアクトル1Cの設置面以上の大きさを有する平板が好適に利用できる。この例のリアクトル1Cの設置面は主としてコイル2の両巻回部2a,2bの設置面(下面)と、磁性コア3のうちコア片32m(
図1)を覆うサイド樹脂モールド部320m(
図1)の設置面(下面)とで構成されるため、これらの合計面積以上の大きさを有する平板が放熱板6に好適である。その他、放熱板6には、設置対象に固定するボルト(図示せず)が挿通されるボルト孔(図示せず)などを備えることができる。また、放熱板6には、コイル2の設置面や磁性コア3の設置面を固定する接着用の樹脂層(図示せず)を備えることができる。
【0104】
リアクトル1Cに備えるコイル2の両巻回部2a,2bは、上述のように角R部20を備えている。そのため、巻回部2a,2bの外周面を並列方向に繋ぐ仮想面200に代えて、放熱板6の一平面が配置されることによって、一対の巻回部2a,2bにおける対向配置された角R部20,20と放熱板6とで、上向きの台形状の空間27Cが形成される(
図2も参照)。リアクトル1Cは、下側に設けられる台形状の空間27Cをセンサ70の配置箇所とする。
【0105】
発泡樹脂4Cは、台形状の空間27Cに介在される。具体的には、発泡樹脂4Cが、
図5に示すように円柱状のセンサ部材7Cの一部が両巻回部2a,2bにおける対向配置される角R部20,20に接することで形成される空間、即ち、角R部20,20と、センサ部材7Cと、放熱板6とで囲まれる閉空間に主として充填されて、コイル2とセンサ部材7Cとの双方に接触する。また、台形状の閉空間に充填された発泡樹脂の体積膨張によって、発泡樹脂4Cがコイル2とセンサ部材7Cとに密着できる。膨張量によっては、発泡樹脂4Cがセンサ部材7C(特にセンサ70)をコイル2側に押し付ける(上側に押し上げる)ことが期待できる。これらのことから発泡樹脂4Cは、コイル2とセンサ部材7Cとの双方に接触した状態を良好に維持できる。その上、発泡樹脂4Cに支持されることで、センサ部材7C(特にセンサ70)は、両巻回部2a,2bのうち少なくとも一方、好ましくは双方の角R部20,20に接触できる。
図5は双方の角R部20,20とセンサ部材7Cとが接触した状態を例示する。なお、発泡樹脂4Cの一部がコイル2とセンサ部材7Cとの間に介在することを許容する。
【0106】
(リアクトルの製造方法)
実施形態3のリアクトル1Cの製造には、実施形態1で説明した製造方法を利用できる。特に、放熱板6上の所定の位置に未発泡の樹脂シートを配置し、更にその上にセンサ部材7Cを配置しておく。センサ部材7Cが巻回部2a,2b間に介在するように、サイド樹脂モールド部の成形工程を経て得られた被覆中間体を載置する。上記樹脂シートが粘着性を有する場合、被覆中間体を載置する際にセンサ部材7Cが位置ずれし難く、かつ別途支持などしなくてもよく、作業性に優れる。被覆中間体の載置の後に、サイド樹脂モールド部の構成樹脂を固化すると共に、樹脂シートを発泡させる。
【0107】
(効果)
実施形態3のリアクトル1Cは、実施形態1のリアクトル1Aと同様に、体積膨張させた発泡樹脂4Cがコイル2とセンサ部材7Cとの双方に十分に密着できる上に、センサ70の周囲に生じ得る隙間を低減できる。特に、発泡樹脂が接着力を有していれば、コイル2とセンサ部材7Cとの接触状態を強固に維持できる。更にリアクトル1Cは、センサ70の配置箇所を放熱板6によって閉空間となる台形状の空間27Cとすることで、上述の閉空間に発泡樹脂が十分に充填されるため、センサ部材7Cにおける発泡樹脂4Cとの接触領域が多くなり易く、センサ70の周囲に発泡樹脂が存在し易い。従って、発泡樹脂4Cを伝熱経路に利用し易い。このようなリアクトル1Cも、封止樹脂及びケースを備えていなかったり、車載部品などに使用されたりしても、コイル2の温度を良好に、精度よく測定できる。
【0108】
なお、センサ部材7Cをセンサホルダ(図示せず)で保持したり、センサ部材7Aのように仕切り部722を備えたりすることができる。仕切り部722を備える形態では、台形状の空間27Cに発泡樹脂4Cを設けることに加えて、例えば実施形態1と同様に、仕切り部722の表裏面の双方に発泡樹脂を備える形態とすることができる。この場合、保護部727のより多くの領域を、発泡樹脂によって覆うことができ、センサ部材7Cの周囲に生じ得る隙間の更なる低減、コイル2からの熱伝導性の向上などを期待できる。仕切り部722を備える形態では、変形例1−1の構成を適用できる。
【0109】
その他、実施形態3のリアクトル1Cは、変形例1−3〜1−5の構成を適用できる。
【0110】
本発明は、これらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。例えば、巻回部が一つのみであるコイルと、E−E型コアやE−I型コアなどと呼ばれる磁性コアとを備えるリアクトルとすることができる。この場合、例えば、コイルの外周面と、磁性コアのうちコイルの外周を囲む部分の内周面との間に、センサと発泡樹脂とが介在する構成、などとすることができる。