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特許6376491連続相中に分散相が微分散した組成物の製造方法およびその装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6376491
(24)【登録日】2018年8月3日
(45)【発行日】2018年8月22日
(54)【発明の名称】連続相中に分散相が微分散した組成物の製造方法およびその装置
(51)【国際特許分類】
   B01F 3/08 20060101AFI20180813BHJP
   B01F 3/04 20060101ALI20180813BHJP
   B01F 5/00 20060101ALI20180813BHJP
   B01F 5/06 20060101ALI20180813BHJP
   B01F 15/02 20060101ALI20180813BHJP
   B01F 15/00 20060101ALI20180813BHJP
   B01J 13/00 20060101ALI20180813BHJP
【FI】
   B01F3/08 A
   B01F3/04 Z
   B01F5/00 G
   B01F5/06
   B01F15/02 A
   B01F15/02 C
   B01F15/00 D
   B01J13/00 A
   B01J13/00 B
【請求項の数】11
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2014-107788(P2014-107788)
(22)【出願日】2014年5月26日
(65)【公開番号】特開2015-223526(P2015-223526A)
(43)【公開日】2015年12月14日
【審査請求日】2017年5月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000229450
【氏名又は名称】日本ニューマチック工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504145342
【氏名又は名称】国立大学法人九州大学
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100075270
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 泰
(74)【代理人】
【識別番号】100101373
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 茂雄
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100129311
【弁理士】
【氏名又は名称】新井 規之
(72)【発明者】
【氏名】下田 満哉
(72)【発明者】
【氏名】杉山 浩之
【審査官】 河野 隆一朗
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−150423(JP,A)
【文献】 特開2013−215634(JP,A)
【文献】 特開2011−115730(JP,A)
【文献】 国際公開第2008/038763(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01F 1/00 − 5/26
B01F 15/00 − 15/06
B01J 13/00
B01D 53/22
B01D 61/00 − 71/82
C02F 1/44
B01D 23/00 − 35/04
B01D 35/08 − 37/08
B01F 17/00 − 17/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)連続相液体中に分散相流体が分散した予備組成物を準備する工程、および
(B)円周面の一部または全部が多孔質膜で構成される円筒体の外周に前記予備組成物を供給して、当該外周に沿って、前記予備組成物の旋回流を発生させ、かつ当該予備組成物を多孔質膜に透過させる工程、を含む、
連続相液体中に分散相流体が微分散した組成物の製造方法。
【請求項2】
前記工程(B)が、円周面の一部または全部が多孔質膜で構成される円筒体、
当該円周面の外側に設けられた貯留部、および
前記予備組成物を前記円筒体の軸に略垂直かつ外壁面の接線方向から前記貯留部に流入できるように、前記貯留部に接続され前記円筒体の軸に対して略垂直かつ前記円筒体の接線方向に延びる導入管、を備える装置を用いて、前記導入管から予備組成物を導入して前記円筒体の外周に沿って旋回流を発生させ、かつ当該予備組成物を多孔質膜に透過させる工程である、
請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記組成物における分散相の平均粒子径が、多孔質膜の平均孔径より小さい、請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記多孔質体の平均孔径が5μm以上である、請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法。
【請求項5】
前記多孔質膜を透過しない予備組成物を回収する工程をさらに含む、請求項1〜4のいずれかに記載の製造方法。
【請求項6】
前記円筒体の内部から外部に向かって流体を流し、多孔質膜孔部の残存物を除去する工程をさらに含む、請求項1〜5のいずれかに記載の製造方法。
【請求項7】
前記連続相液体中に分散相流体が微分散した組成物における分散相流体を固化する工程をさらに含む、請求項1〜6のいずれかに記載の製造方法。
【請求項8】
円周面の一部または全部が多孔質膜で構成される円筒体であって、端部に連続相液体中に分散相流体が微分散した組成物の排出口を有する円筒体、
前記円筒体の円周面の外側に設けられた貯留部、
連続相液体中に分散相流体が分散した予備組成物を前記円筒体の軸に略垂直かつ外壁面の接線方向から流入できるように、前記貯留部に接続され、前記円筒体の軸に対して略垂直かつ前記円筒体の接線方向に延びる導入管、
を具備する、連続相液体中に分散相流体が微分散した組成物の製造装置。
【請求項9】
前記貯留部に接続された、前記予備組成物を回収するための手段をさらに備える請求項8に記載の装置。
【請求項10】
前記多孔質体の平均孔径が5μm以上である、請求項8または9に記載の装置。
【請求項11】
請求項8〜10のいずれかに記載の製造装置を複数含むシステムであって、
連続相液体中に分散相流体が分散した予備組成物を保持するためのタンクをさらに含み、
当該タンクと前記複数の装置とが切換バルブを介して接続されており、
前記装置が、多孔質膜内側から外側へ流体を流して孔部の残存物を除去するための手段をさらに備える、システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は連続相中に分散相が微分散した組成物の製造方法およびその装置に関する。
【背景技術】
【0002】
連続相中に分散相が微分散した組成物として、連続相液体に分散相液体が微分散したエマルションや、連続相液体に分散相気体が微分散したマイクロバブル組成物が知られている。ミクロン領域においてシャープな粒度分布を有する前記組成物を製造する方法として、特許文献1には油溶性液体および水溶性液体を多孔質膜に透過させる方法が開示されている。具体的に特許文献1には、小さな平均粒子径を有するエマルションを得るために、孔径の小さな多孔質膜を使用して、膜透過速度を遅くしてエマルションを製造することが開示されている(段落0021)。実施例1として、平均孔径が2.7μmの多孔質膜を使用し、350cc/10分の膜透過速度でエマルションを製造した例が開示されている。
【0003】
また、特許文献2には、多孔質膜で構成される円筒体内に連続相液体の旋回流を流し、前記多孔質膜を介して分散相流体を前記旋回流に供給する工程を含む、連続相中に分散相が微分散した組成物の製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6−39259号公報
【特許文献2】特開2011−115730号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の方法は、孔径の小さい多孔質膜を用いる必要があり、目詰まりが生じる、膜透過速度を向上できない等の問題があった。特許文献2の方法は、膜透過速度を向上することができるが、分散相の粒子径を小さくするには孔径の小さい多孔質膜を用いる必要があり、目詰まりの発生が懸念される。かかる事情を鑑み、本発明は連続相液体に分散相液体が微分散した組成物を効率よく得る方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
発明者らは、連続相液体に分散相液体が分散した予備組成物を、多孔質膜で構成される円筒体の外周に沿って旋回流として供給し、当該予備組成物を多孔質膜に透過させることにより、前記課題を解決できることを見出し、本発明を完成した。すなわち、前記課題は以下の本発明によって解決される。
【0007】
[1](A)連続相液体中に分散相流体が分散した予備組成物を準備する工程、および
(B)円周面の一部または全部が多孔質膜で構成される円筒体の外周に沿って、前記予備組成物の旋回流を発生させ、かつ当該予備組成物を多孔質膜に透過させる工程、を含む、
連続相液体中に分散相流体が微分散した組成物の製造方法。
[2]前記工程(B)が、円周面の一部または全部が多孔質膜で構成される円筒体、
当該円周面の外側に設けられた貯留部、および
前記予備組成物を前記円筒体の軸に略垂直かつ外壁面の接線方向から前記貯留部に流入できるように、前記貯留部に接続され前記円筒体の軸に対して略垂直かつ前記円筒体の接線方向に延びる導入管、を備える装置を用いて、前記導入管から予備組成物を導入して前記円筒体の外周に沿って旋回流を発生させ、かつ当該予備組成物を多孔質膜に透過させる工程である、[1]に記載の製造方法。
[3]前記組成物における分散相の平均粒子径が、多孔質膜の平均孔径より小さい、[1]または[2]に記載の製造方法。
[4]前記多孔質体の平均孔径が5μm以上である、[1]〜[3]のいずれかに記載の製造方法。
[5]前記多孔質膜を透過しない予備組成物を回収する工程をさらに含む、[1]〜[4]のいずれかに記載の製造方法。
[6]前記円筒体の内部から外部に向かって流体を流し、多孔質膜孔部の残存物を除去する工程をさらに含む、[1]〜[5]のいずれかに記載の製造方法。
[7]前記連続相液体中に分散相流体が微分散した組成物における分散相流体を固化する工程をさらに含む、[1]〜[6]のいずれかに記載の製造方法。
[8]円周面の一部または全部が多孔質膜で構成される円筒体であって、端部に連続相液体中に分散相流体が微分散した組成物の排出口を有する円筒体、
前記円筒体の円周面の外側に設けられた貯留部、
連続相液体中に分散相流体が分散した予備組成物を前記円筒体の軸に略垂直かつ外壁面の接線方向から流入できるように、前記貯留部に接続され、前記円筒体の軸に対して略垂直かつ前記円筒体の接線方向に延びる導入管、
を具備する、連続相液体中に分散相流体が微分散した組成物の製造装置。
[9]前記貯留部に接続された、前記予備組成物を回収するための手段をさらに備える[8]に記載の装置。
[10]前記多孔質体の平均孔径が5μm以上である、[8]または[9]に記載の装置。
[11]前記[8]〜[10]のいずれかに記載の製造装置を複数含むシステムであって、
連続相液体中に分散相流体が分散した予備組成物を保持するためのタンクをさらに含み、
当該タンクと前記複数の装置とが切換バルブを介して接続されており、
前記装置が、多孔質膜内側から外側へ流体を流して孔部の残存物を除去するための手段をさらに備える、システム。
【発明の効果】
【0008】
本発明により連続相液体に分散相液体が微分散した組成物を効率よく製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の製造装置の一態様を示す図である。
図2】本発明の製造装置の別な態様を示す図である。
図3】本発明のシステムを示す図である。
図4】実施例で得た粒子の粒度分布を示す図である。
図5】実施例で得た粒子の電子顕微鏡像である。
図6】実施例で得た組成物のデジタルマイクロスコープ像である。
図7】比較例で使用した製造装置を示す図である。
図8】比較例で得た組成物中の分散相粒子の粒度分布を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を詳細に説明する。本発明において「X〜Y」はその両端の値すなわちXおよびYを含む。
【0011】
本発明の製造方法は、
(A)連続相液体中に分散相流体が分散した予備組成物を準備する工程、および
(B)円周面の一部または全部が多孔質膜で構成される円筒体の外周に沿って、前記予備組成物の旋回流を発生させ、かつ当該予備組成物を多孔質膜に透過させる工程、を含む。
【0012】
(1)工程A
本工程では連続相液体中に分散相流体が分散した予備組成物を準備する。当該予備組成物は、最終生成物である連続相液体に分散相液体が微分散した組成物(以下「本発明の組成物」ともいう)に比べて、分散相粒子の平均粒子径が大きい組成物である。予備組成物における分散相粒子の平均粒子径は限定されないが、連続相液体に分散相液体が著しく分離することなく膜を透過させるという観点から、数十μm〜数百μmが好ましく、30μm〜100μmがより好ましい。
【0013】
1)連続相液体
連続相液体とは連続相となるべき液体をいう。本発明では水系液体および油系液体等の公知の連続相液体を用いることができる。水系液体とは水を主成分とする液体である。油系液体とは有機化合物を主成分とする液体である。連続相液体と分散相流体の相溶性が高いと本発明の組成物が得られないため、連続相液体は用いる分散相流体との相溶性を考慮して選択される。
【0014】
連続相液体は多孔質膜に供される際に液体であればよい。従って、例えば室温では固体であるが、加熱することにより液体となる物質も連続相液体として用いることができる。あるいは、室温で液体であるが、時間の経過とともに固体化する過冷却状態にある液体も使用することができる。作業性を考慮すると、本工程は室温(20〜30℃)で行われることが好ましいため、連続相液体は、室温で液体であることが好ましい。このような液体としては無機物質および有機物質があり、無機物質の例には水、有機物質の例には、各種食用油、石油系燃料油、炭素原子の数が約20以下の鎖状炭化水素、および炭素原子の数が約20以下の芳香族炭化水素等が含まれる。
【0015】
連続相液体は界面活性剤、電解質、粘度調整剤等の添加剤を含んでいてもよい。界面活性剤としては、公知のものを用いてよいが、陰イオン性界面活性剤または非イオン性界面活性剤が好ましい。これらの界面活性剤は陽電荷を含まないため、ガラス製の多孔質膜を用いた場合にシラノール基に起因する陰イオンと静電的に引き合わず、界面活性剤としての活性が低下しないという利点を有する。陰イオン性界面活性剤の例には、カルボン酸塩、スルホン酸塩、ラウリル硫酸ナトリウム等の硫酸エステル塩等が含まれる。陰イオン性界面活性剤はイオン性であるため、例えば後述するようにポリマー微粒子を製造する場合、洗浄により容易に除去できるという利点がある。すなわち、ポリマービーズを製造した後、洗い出し易い。非イオン性界面活性剤の例には、グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、およびポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルが含まれる。界面活性剤の添加量は、通常使用される量としてよいが、連続相液体中、0.01〜5質量%が好ましく0.02〜2質量%がより好ましい。特に陰イオン性界面活性剤の添加量は、0.1〜5質量%が好ましく、0.2〜3質量%がより好ましい。
【0016】
粘度調整剤としては、公知のものを用いてよいが、その好ましい例には、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール、ペクチンおよびゼラチン等の親水性高分子化合物が含まれる。
【0017】
2)分散相流体
分散相流体とは分散相になるべき流体であり、その例には、水系液体、油系液体および気体が含まれる。水系液体は連続相液体で述べたとおりである。分散相流体として水系液体を用いると、本発明の組成物としてW/O型のエマルションが得られる。ただし、多孔質膜中で分散相を連続相中に微分散させるには、多孔質膜が分散相流体で濡れるのを避ける必要がある。この理由から、水系液体を分散相とする場合には疎水性多孔質膜が好適であり、油系液体あるいは気体を分散相とする場合には親水性多孔質膜の使用が好ましい。また、分散相流体が液体の場合、前述の界面活性剤を含んでいてもよい。
【0018】
油系液体とは既に述べたとおり有機化合物を主成分とする液体である。油系液体を用いると本発明の組成物としてO/W型のエマルションが得られる。油系液体としては食用油、脂肪酸エステルが好ましいが、用途によって油系液体は適宜選択できる。例えば、ラウリン酸メチル等の脂肪酸エステルを分散相とするエマルションは、化粧品添加物、食品添加物または塗料添加剤等として有用である。
【0019】
また、油系液体が重合性モノマーを含むと、重合性モノマーを含む分散相粒子が低多分散度で微分散したエマルションが得られる。このエマルションは懸濁重合の原料とすることができる。重合性モノマーとは重合性官能基を有する化合物であるが、本発明においては、ラジカル発生剤の存在下、加熱することにより容易に重合を進行できるラジカル重合性官能基を有するラジカル重合性モノマーが好ましい。その他、油系液体は、有機系染料、および有機系顔料、無機系染料、無機系顔料等の公知の着色剤を含んでいてもよい。この着色剤は、ナノメートルサイズの分散微粒子であることが好ましい。ラジカル発生剤としては、ADVN、過酸化ベンゾイルが好ましいが、用途によって適宜選択できる。
【0020】
重合性モノマーを分散相として含む本発明のエマルションは低多分散度のポリマー粒子、すなわち単分散のポリマー微粒子を与える。このようなポリマー粒子は、液晶ディスプレーのスペーサー、液体クロマトグラフ分離カラム用充填剤、化粧品の原料、トナーの原料として有用である。中でも、重合性モノマーを分散相として含む本発明の組成物は、印刷の解像度を上げるために多分散度が非常に低いポリマー粒子が求められているトナーの分野に好適である。特に、本発明では多孔質膜の平均孔径よりも小さな平均粒子径を有する分散相が分散した組成物を得ることができるので、例えば顔料等により孔が閉塞しない程度に比較的孔径の大きい多孔質膜を使用しても、平均粒子径の小さなポリマー粒子が分散した組成物を得ることが可能である。よって、トナーとして特に有用な組成物を得ることができる。
【0021】
分散相流体が気体の場合は、本発明の組成物として連続相中に微小な気泡が分散したマイクロバブル組成物が得られる。この場合、連続相は水系液体または油系液体であってよい。気体の例には、空気、酸素、窒素、希ガス、二酸化炭素およびオゾンが含まれる。気体として空気あるいは窒素を用いると含気食品の製造に有用なホイップ組成物が得られる。気体として二酸化炭素を用いると、炭酸飲料の製造に有用なマイクロバブル組成物が得られる。また、連続相としての水にオゾンを含む気体を微分散させることは、オゾン水の製造に好適であり、水の殺菌手段として好適である。さらに、この水を用いた洗浄、殺菌も重要な利用方法となる。
【0022】
3)比率
連続相液体と分散相流体の配合比率は、分散相含量が10〜30体積%であることが好ましい。分散相含量は組成物全体に対する分散相の体積分率で定義される。
【0023】
4)調製方法
予備組成物は公知の手段により調製できる。例えば、連続相液体と分散相流体を必要に応じて界面活性剤存在下で撹拌することによって調製できる。
【0024】
(2)工程B
本工程では、円周面の一部または全部が多孔質膜で構成される円筒体の外周に沿って、前記予備組成物の旋回流を発生させ、かつ当該予備組成物を多孔質膜に透過させる。
【0025】
1)円筒体
本発明では、円周面の一部または全部が多孔質膜で構成される円筒体を用いる。円筒体とは内部が空洞の円筒状の部材である。多孔質膜とは多数の微小な貫通孔を有する膜をいう。このような膜として、ガラス製、セラミック製、ニッケル製等の公知の多孔質膜を使用してよい。本発明においてはガラス製の多孔質膜が好ましく、シラス多孔質ガラス製の多孔質膜(Shiras porous glass、以下「SPG膜」ともいう)がより好ましい。本発明で用いる多孔質膜の平均孔径は5μm以上が好ましく、10μm以上がより好ましい。平均孔径を5μm以上とすることで、多孔質膜を破損することなく高速で予備組成物を透過させることができる。本発明ではこれらの流体を高速で透過させるので平均孔径を5μm以上としても、分散相の平均粒子径がこれよりも小さい組成物を製造できる。平均孔径の上限は限定されないが、20μm以下が好ましい。多孔質膜の平均孔径は水銀圧入法(自動ポロシメータ使用)により測定できる。
【0026】
円周面の一部または全部が多孔質膜で構成されるとは、円周面の一部分が多孔質膜で構成されており、他の部分はこれ以外の材料で構成されていてもよいことを意味する。多孔質膜以外の材料で円筒体を構成することで、組成物の製造に有効に使用できる膜面積(以下「有効膜面積」ともいう)を調整できる。
【0027】
得られる組成物が装置内に滞留すると内部での圧力が高まり装置を破損する恐れや、あるいは組成物に過度の圧力がかかることで分散相粒子が再結合したりするなどして粒子径の制御が困難となる恐れがある。このため、製造時に組成物が装置内に滞留することを避けることが好ましい。組成物の滞留を抑制するために円筒体の内径を最適化して高い排出能力を達成することがさらに好ましい。具体的に、有効膜面積を構成する貯留部に面する多孔質膜部分の軸方向の長さ(以下「有効膜長さ」という)をMとし、円筒体の両端の内径すなわち排出口の内径をdとするとき、M/dは0.3〜5.0となることが好ましい。
【0028】
円筒体の寸法は、上記範囲を満足すればよいが、入手容易性等を考慮すると、内径が5〜100mmであることが好ましい。
【0029】
2)旋回流
旋回流とは、円筒体の軸に沿った流れと円周面に沿った流れを持ち合わせた流れをいう。旋回流は公知の方法で発生させることができる。例えば、円筒体の閉じた一方の端にスクリュウを設け、スクリュウを回転させながら予備組成物を円筒体の外周に供給して円筒体の外周に沿って旋回流を流すことができる。しかしながら本発明においては図1に示すような装置を準備して旋回流を流すことが好ましい。このように旋回流を発生させると、旋回速度を制御しやすい等の利点がある。以下、この態様について図を参照しながら説明する。
【0030】
本発明の製造方法を実施するための好ましい装置は、円周面の一部または全部が多孔質膜で構成される円筒体、当該円周面の外側に設けられた貯留部、および前記予備組成物を前記円筒体の軸に略垂直かつ外壁面の接線方向から前記貯留部に流入できるように、前記貯留部に接続され前記円筒体の軸に対して略垂直かつ前記円筒体の接線方向に延びる導入管、を備える装置である。
【0031】
製造装置の好ましい態様を図1に示す。図1Aは当該装置の斜視図であり、図1BはY−Yを通り円筒体の軸に平行な面で当該装置を切断した場合の断面図であり、図1Cは、Y−Yを通り円筒体の底面に平行な面で当該装置を切断した場合の断面図である。図1中、1は製造装置、10は円筒体、12は多孔質膜部、20は貯留部、22は導入管、30は排出口、40は外周部材、42は排出導入管である。図1中、供給手段の図示は省略してある。図1において、排出口30は一方の端部にのみ設けてもよく、両端部に設けてもよい。図示していないが、円筒体10の一方の端を排出口30とし、他方の端部を孔部の残存物を除去するための流体の導入口としてしてもよい。また図2は、回収管50を設けた態様を示す図である。図2中、一部の回収管50の図示は省略してある。以下、主として図1を参照して本発明の装置を説明する。
【0032】
<円筒体10>
円筒体10およびこれを構成する多孔質膜は既に述べたとおりである。多孔質膜部12は後述するように予備組成物を透過する部分である。これ以外の部分は、他の部材で構成されていてもよいし、多孔質膜の内壁面または外壁をコーティングして予備組成物が円筒体外へ漏れないようにしてもよい。外周部材40とは、円筒体の周りに配置される部材であり、その材質はステンレス等の金属、セラミック、またはプラスチックであることが好ましい。図1において、矢印で示す部分が多孔質膜部12であり、この長さが膜有効長さMである。また、図2に示すとおり、外周部材40には透過されなかった予備組成物を回収するための回収管50を配置してもよい。
【0033】
<貯留部20>
貯留部とは予備組成物を旋回流として流す空間であり、多孔質膜部12の外周面に設けられることが好ましい。貯留部20の大きさは限定されないが、半径方向の高さ(以下「貯留部の厚み」ともいう)は、円筒体10の内径dの10〜50%であることが好ましい。略垂直とは、導入管22の軸と円筒体10の軸がなす角度が85〜95°、好ましくは88〜92°、より好ましくは90°(垂直)であることを意味する。
【0034】
<導入部22>
原料液体を導入するための導入管22は、貯留部20に接続され円筒体10の軸に対して略垂直かつ円筒体10の接線方向に延びている。導入管22により、予備組成物を円筒体10の軸に略垂直かつ外壁面の接線方向から貯留部20に流入でき、円筒体10の外周面に沿って旋回流を発生できる。導入管22は図1のように外周部材40を開口することによって設けることが好ましい。設けられる導入部22の断面形状は、限定されないが円であることが好ましく、その断面積は所望の膜透過速度を達成できるように設定される。また、導入部22は、2つ以上設けられることが好ましく、円筒体10の中心軸に対して対称の位置に設けられることがより好ましい。図1では、2つの導入管22が円筒体10の中心軸に対して対称に設けられている。導入部22は、円筒体10の長手方向において中央部に設けることが好ましい。導入部22の直径と円筒体10の直径の比は、0.2〜0.8が好ましい。円筒体10の直径は5〜30mmの範囲から、導入部22の直径は前記比を満たすように1〜20mmが好ましい。
【0035】
<予備組成物の回収管50>
後述するとおり、円筒体10の外周面に沿って旋回流として流れる予備組成物は、多孔質膜部12から円筒体10内部に透過する。予備組成物の全部が膜を透過してもよいが、この場合、圧力が過度に上昇して装置が破損される恐れがある。よって、予備組成物の一部を透過し、透過されなかった部分を回収してもよい。多孔質膜部12の端部に回収管50により、透過されなかった予備組成物を回収することが好ましい。
【0036】
旋回流速は貯留部20の容量すなわち貯留部の厚みにより調整できる。当該容量を小さくすると旋回流速は増大する。また旋回流速は後述する回収率によっても調整でき、回収率を大きくすると旋回流速は増大する。
【0037】
3)透過および回収
透過とは、予備組成物を膜の外側から内側へ通過させることである。前述のとおり円筒体の外周面に沿って予備組成物の旋回流を発生させると、予備組成物の流れは、円筒体の外周面に沿った旋回流と、これとは直交する流れすなわち膜を透過する流れに二分される。よって、この膜を透過する流れにより予備組成物が多孔質膜を透過する。このようにすることで多孔質膜に対して局所的に高い圧力を加えることなく、全体に均一な圧力で予備組成物を透過させることができるので、多孔質膜の目詰まりを低減できる。
【0038】
また前述のとおり、総ての予備組成物を透過させようとすると、圧力が過度に上昇し種々の不具合が生じる。したがって、透過しなかった予備組成物を回収してもよい。このようにすることで、予備組成物を供給するエネルギーを高めることなしに、効率良く最終組成物を製造できる。回収した予備組成物は、再度、旋回流として円筒体に供給できる。通常は、装置内の圧力を0.1〜1MPaに保つことが好ましいので、当該圧力を達成できるように回収率を適宜調整することが好ましい。回収率は、回収した予備組成物の量/供給した予備組成物の量で定義される。例えば、回収率を50%とすると、予備組成物を供給するためのポンプの吐出流量を、回収率が0%のときに比べて2倍とすることができる。
【0039】
得られた本発明の組成物は、繰り返し工程Bに供することができる。繰り返し工程Bを実施することで、分散相の粒子径がより微細になり、かつ粒度分布(スパン)をシャープにすることが可能となる。
【0040】
(3)残存物の除去工程
本発明においては、前記円筒体の内部から外部に向かって流体を流し多孔質膜孔部の残存物を除去する工程をさらに実施してもよい。前述のとおり、本発明によれば多孔質膜の目詰まりを低減できるが、残存物の除去工程を実施することで目詰まりをより一層解消できる。用いる流体は限定されないが、空気、窒素等のガスや、水、有機溶媒等の液体を使用できる。具体的には、円筒体10の内側に流体導入部を接続し、多孔質膜部12の内側から外側へ流体を流すことで、目詰まりを解消できる。
【0041】
(4)その他の工程
分散相流体がモノマー等、固化が可能な材料である場合、得られた組成物を加熱する、あるいは当該組成物に光を照射するなどの工程をさらに行って、連続相液体中に固化した分散相が微分散している組成物とすることができる。
【0042】
2.システム
本発明においては、前述の製造装置を複数組み合わせてシステムとすることができる。当該システムは、連続相液体中に分散相流体が分散した予備組成物を保持するためのタンクをさらに含み、当該タンクと前記複数の装置とが切換バルブを介して接続されており、前記装置が、多孔質膜内側から外側へ流体を流して孔部の残存物を除去するための手段を、さらに備える。以下、図を参照してシステムを説明する。切換バルブとしては三方バルブ、四方バルブ等の多方切換バルブが挙げられる。
【0043】
図3は本発明のシステムの一態様を示す。図3中、1は本発明の製造装置、101は圧力計、102は流量計、103はトグルバルブ、104は三方バルブ、105および106は二方バルブ、107はボールバルブ、108はバルブ制御装置、110は予備組成物タンク、112は組成物タンク、114は残存物タンク、LおよびPはラインである。上記符号において、右のチャンネルに属するものはa、左のチャンネルに属するものはbとの枝番を付した。当該システムにおいて回収管は設けられていない。
【0044】
三方バルブ104を右チャンネルに通じるように切換え、二方バルブ106aを閉、二方バルブ105aを開にして、予備組成物を、予備組成物タンク110からラインL、ラインL1aを経由して、右の製造装置1aに導入する。製造装置1aにおいては二方向から予備組成物が導入され、円筒体の外周面に沿って旋回流を発生し、かつ多孔質膜を透過する。製造装置1aで得られた本発明の組成物を、ラインL3aを介して組成物タンク112に移送する。
【0045】
製造装置1aに目詰まりが生じた場合、二方バルブ106bを閉、二方バルブ105bを開にして、三方バルブ104を切換えて予備組成物をラインL1bに流し、左の製造装置1bに導入し、同様にして本発明の組成物を製造する。一方、右チャンネルにおいて、二方バルブ105aを閉にして、ボールバルブ107aと二方バルブ106aとトグルバルブ103を開にして、ラインPから空気等の流体を導入する。当該流体は、製造装置1aの円筒体の内側から外側へ流れ、多孔質膜の孔内の残存物を除去する。残存物は、ラインL2aとラインP2aを介して、残存物タンク114に移送される。
【0046】
これらの操作を繰り返すことで、一方の製造装置を分解することなく目詰まりを解消しながら、他方の製造装置で本発明の組成物を製造できる。すなわち、定置洗浄(Cleaning in Place)を行うことが可能となる。目詰まりが生じたかどうかは、圧力計101で監視できる。圧力がある一定の値に達したときにバルブ制御装置107を使用して自動的に製造装置を切換えることができる。
【0047】
3.組成物
(1)分散相の粒子径
本発明の組成物は、連続相液体に水系液体、分散相流体に油系液体を用いた場合はO/Wエマルション、連続相液体に油系液体、分散相流体に水系液体を用いた場合はW/Oエマルション、連続相液体に油系液体または水系液体、分散相流体に気体を用いた場合はマイクロバブル組成物となる。
【0048】
分散相粒子の粒子径はレーザー回折散乱法により求められ、粒子積算量が50%となる値の粒子径(d50)で定義される平均粒子径は1〜50μmであることが好ましく、1〜30μmであることがより好ましい。
【0049】
以下の式(1)で定義されるスパン(多分散度または粒度分布ともいう)は、0.6以下であることが好ましく、0.5以下であることがより好ましい。スパンは小さいほど好ましいが、下限値は0.4以上がより好ましく、0.3以上がさらに好ましい。本発明においてはスパンが0.3〜0.6であることを単分散であるという。
【0050】
スパン=(d90−d10)/d50 ・・・(1)
10:分散相粒子の積算分布10%における粒子径
90:分散相粒子の積算分布90%における粒子径
50:分散相粒子の積算分布50%における粒子径
【0051】
(2)分散相含量
本発明の組成物は、分散相含量が10〜30体積%であることが好ましい。分散相含量は組成物に対する体積%で定義され、例えば連続相液体の比重と分散相流体の比重ならびに調製組成物の比重から算出することができる。分散相含量が20体積%超であると、分散相を高濃度で含む組成物となるので、マスターバッチ用組成物として好適である。分散相含量の好ましい下限および上限は、前述のとおりである。
【0052】
(3)用途
本発明のO/WおよびW/Oエマルション組成物は、前述のとおり、食品添加物、塗料添加物、液晶ディスプレーのスペーサー、液体クロマトグラフ分離カラム用充填剤、化粧品の原料またはトナー用原料等として有用である。また、本発明のマイクロバブル組成物は、前述のとおり、ホイップ組成物、炭酸飲料、またはオゾン水の製造に有用である。
【実施例】
【0053】
[実施例1]
(1)分散相
分散相流体として、以下の成分からなる組成物を準備した。
スチレンモノマー 200g
2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル) 6g
ジビニルベンゼン 1.5g
【0054】
(2)連続相
連続相液体として、以下の成分からなる組成物を準備した。
精製水 800ml
ポリビニルアルコール 8g
ヒドロキノン 0.3g
硫酸ナトリウム 0.15g
(3)予備組成物
分散相流体と連続相液体を市販のプロペラ型撹拌機を用いて300rpmで5分間混合して撹拌し、予備組成物を得た。予備組成物における分散相粒子の平均粒子径は100μmであった。
【0055】
(4)装置
円周面の全部が平均孔径10μmのシラス多孔質ガラス製の多孔質膜(SPG膜)で構成され、外径10mm、内径9mm、長さ150mmの円筒体10(SPGテクノ株式会社製、SPG膜)を準備した。このSPG膜円筒体よりも肉厚の部材であって、SPG膜円筒体と同じ内径を有し、かつ一方の端が閉じられたステンレス鋼製の円筒状部材40を準備した。図1に示すように、この部材40をSPG膜円筒体の端をキャップするように配置し、全長が155mmの製造装置1を準備した。部材40に、円筒体10の軸に垂直であって、貯留部20から円筒体10の接線方向に延びる貫通孔を設け、この貫通孔を導入管22とした。導入管の断面は円であり、内径は2.5mmであった。貯留部22の厚み(部材40の内半径と円筒体10の外半径の差)は2.0mmであった。円筒体10の一方の端部を排出口30とした。当該装置の有効膜長さMは30mmであった。本例では回収管50は設けなかった。このように準備した製造装置1を、円筒体の軸が略水平となるように設置した。
【0056】
(5)膜透過
当該装置に予備組成物を以下の条件で導入して、多孔質膜の外周面に沿って旋回流を発生し、予備組成物を多孔質膜に透過した。
透過速度:1170ml/min
透過圧力:0.14MPa
得られた組成物を、同じ条件で、再度、前記装置に導入して多孔質膜を透過し、本発明の組成物を得た。
【0057】
(6)重合
得られた本発明の組成物を、速やかに以下の成分からなる懸濁安定相を充填した撹拌機付きセパラブルフラスコに滴下して75℃で8時間ラジカル重合を行い、分散相を固化した。
精製水 1000ml
ポリビニルアルコール 10g
ヒドロキノン 0.375g
硫酸ナトリウム 0.2g
【0058】
(7)評価
得られたポリスチレン粒子を画像解析式粒度分布測定器(シスメックス社製 FPIA3000)で評価した(図4)。ポリスチレン粒子の電子顕微鏡写真(日立製作所製 SU1510)を図5に、重合前の組成物のデジタルマイクロスコープ(キーエンス社製 VW9000)による像を図6に示す。ポリスチレン粒子のd10は5.34μm、d90は10.11μm、d50は8.13μmであったので、粒度分布(スパン)は0.59であった。
【0059】
得られた粒子の平均粒子径はSPG膜細孔径より小さく、予備組成物を多孔質膜の外側から透過させることで、膜細孔径より小さな単分散ポリスチレン粒子を容易に製造できることを確認した。
【0060】
分散相を固化しない組成物は、気泡等を含み非常に不安定なため正確に粒子径を測定することが困難な場合がある。そのため、本例では、分散相を固化した状態で粒子径等を評価した。固化後の粒子径は固化前の粒子径と同一である。
【0061】
[比較例1]
特開2011−115730の実施例で使用した装置を準備した。当該装置の概要を図7に示す。当該装置は、平均孔径10μmの多孔質膜部分を含む円筒体C10と、当該円筒体の一方の端近傍の円周面に連続相液体の流入口C12と、前記流入口から前記円筒体の軸に対して略垂直かつ前記円筒体の接線方向に延びる導入管C20とを有する。導入管C20から連続相液体を導入することで、円筒体C10内に連続相液体の旋回流を発生できる。
【0062】
分散相として、IPソルベント#2028(出光興産株式会社製)、連続相として、イオン交換水に界面活性剤(ナカライテスク株式会社製 Tween20)を1質量%添加したものを準備した。連続相を導入管C20から3000ml/minで導入して旋回流を発生し、分散相を分散相流体導入管C42から分散相貯留部C40に1170ml/minで導入して、膜に分散相を透過して、当該旋回流に導入し、エマルションを製造した。このときの膜透過圧力は0.16MPaであった。
【0063】
得られたエマルジョン粒度分布をレーザー散乱式粒度分布測定機(マイクロトラック社製MT3000)で測定した結果を図8に示す。平均粒子径d50は膜孔径の約2倍の液滴径17μm、スパンは0.68であった。エマルジョンの粒子形状は真球状であった。実施例と比較例の結果を表1にまとめた。
【0064】
【表1】
【0065】
比較例の方法でケミカルトナーとして必要な平均粒子径d50=5〜6μmのエマルジョンを得るためには、多孔質膜の平均孔径は2〜3μm程度である必要があることが明らかである。以上の比較から、本発明では、平均孔径が比較的大きな多孔質膜を用いても、連続相液体中に分散相流体が微分散した組成物を効率良く製造できることが明らかである。
【符号の説明】
【0066】
1 製造装置
10 円筒体
12 多孔質膜部
20 貯留部
22 導入管
30 排出口
40 外周部材
42 排出導入管
50 予備組成物の回収管

101 圧力計
102 流量計
103 トグルバルブ
104 三方バルブ
105、106 二方バルブ
107 ボールバルブ
108 バルブ制御装置
110 予備組成物タンク
112 組成物タンク
114 残存物タンク
L ライン
P ライン

C10 円筒体
C12 流入口
C20 導入管
C40 分散相貯留部
C42 分散相流体導入管
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8