(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記センサ較正判定部における前記キャリブレーション処理の実行が必要と判定されたとき前記地磁気センサのキャリブレーション処理の実行を促す情報を報知する報知部、及び、前記センサ較正判定部における前記キャリブレーション処理の実行が必要と判定されたとき前記地磁気センサのキャリブレーション処理を実行する較正制御部、の少なくとも何れかを有することを特徴とする請求項1又は2に記載の電子機器。
前記キャリブレーション処理の実行が必要か否かを判定する動作において前記キャリブレーション処理の実行が必要と判定されたときに前記地磁気センサのキャリブレーション処理の実行を促す情報を報知する動作、及び、前記キャリブレーション処理の実行が必要か否かを判定する動作において前記キャリブレーション処理の実行が必要と判定されたときに前記地磁気センサのキャリブレーション処理を実行する動作、の少なくとも何れかを含むことを特徴とする請求項4又は5に記載のセンサ較正判定方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した特許文献1においては、電子機器の省電力モードにおいてユーザがキー操作を行うことを条件として、地磁気センサのキャリブレーション処理を実行する手法が開示されている。すなわち、特許文献1に記載の手法においては、地磁気センサのキャリブレーション処理を実行するタイミングがユーザのキー操作に委ねられている。そのため、長時間キー操作が行われない場合には、地磁気センサのキャリブレーション処理が実行されず、正確な方位が検出されない状態が継続する可能性があった。このような場合、ユーザは地磁気センサにより正確な方位が検出されていない状態になっていることに気づき難く、そのため、誤った地磁気センサの検出結果(方位等)を信じてしまうことになるという問題を有していた。
【0007】
そこで、本発明は、上述した問題点に鑑み、ユーザの判断や操作に委ねることなく、地磁気センサの検出結果が適切であるか否かを判定して、正確な方位を検出することができる電子機器及びセンサ較正判定方法、センサ較正判定プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る一態様の電子機器は、
電子機器であって、当該電子機器は、
地磁気を検出する地磁気センサと、
全地球測位システムに基づいて、地理的な位置を検出する測位センサと、
前記測位センサからの出力に基づいて、当該電子機器の進行方向が一定方向か否かを判定する移動方向判定部と、
前記地磁気センサに対するキャリブレーション処理の実行が必要か否か判定するセンサ較正判定部と、
を備
え、
前記測位センサは、一定時間毎に前記位置を検出して検出結果を出力し、
前記移動方向判定部は、前記測位センサからの前記一定時間毎の複数の前記検出結果に基づいて算出される複数の移動方向を示すデータにおいて、前記一定方向に対する第1の閾値範囲を逸脱している前記移動方向を示すデータの比率が第1の比率未満である場合に、当該電子機器の進行方向が一定方向であると判定し、
前記センサ較正判定部は、前記移動方向判定部により当該電子機器の進行方向が一定方向であると判定されたとき、前記地磁気センサの検出結果に基づいて取得される方位と、当該電子機器の進行方向との比較結果に基づいて前記地磁気センサにおけるキャリブレーション処理の実行が必要か否かを判定することを特徴とする。
本発明に係る他の態様の電子機器は、
電子機器であって、当該電子機器は、
地磁気を検出する地磁気センサと、
全地球測位システムに基づいて、地理的な位置を検出する測位センサと、
前記測位センサからの出力に基づいて、当該電子機器の進行方向が一定方向か否かを判定する移動方向判定部と、
前記地磁気センサに対するキャリブレーション処理の実行が必要か否か判定するセンサ較正判定部と、
を備
え、
前記地磁気センサは、一定時間毎に地磁気を検出して検出結果を出力し、
前記センサ較正判定部は、前記地磁気センサからの前記一定時間毎の複数の検出結果に基づいて取得される複数の方位を示すデータにおいて、前記一定方向に対する第2の閾値範囲を逸脱している前記方位を示すデータの比率が第2の比率以上である場合に、前記地磁気センサにおけるキャリブレーション処理の実行が必要であると判定することを特徴とする。
【0009】
本発明に係る一態様のセンサ校正判定方法は、
地磁気センサにより地磁気を検出するとともに、測位センサにより全地球測位システムに基づいて地理的な位置を検出する電子機器のセンサ較正判定方法であって、
前記測位センサは、一定時間毎に前記位置を検出して検出結果を出力し、
前記測位センサからの前記一定時間毎の複数の前記検出結果に基づいて算出される複数の移動方向を示すデータにおいて、一定方向に対する第1の閾値範囲を逸脱している前記移動方向を示すデータの比率が第1の比率未満である場合に、当該電子機器の進行方向が一定方向であると判定し、
当該電子機器の進行方向が一定方向であると判定されたとき、前記地磁気センサの検出結果に基づいて取得される方位と、当該電子機器の進行方向との比較結果に基づいて前記地磁気センサにおけるキャリブレーション処理の実行が必要か否かを判定することを特徴とする。
本発明に係る他の態様のセンサ校正判定方法は、
地磁気センサにより地磁気を検出するとともに、測位センサにより全地球測位システムに基づいて地理的な位置を検出する電子機器のセンサ較正判定方法であって、
前記地磁気センサは、一定時間毎に地磁気を検出して検出結果を出力し、
前記測位センサからの出力に基づいて、当該電子機器の進行方向が一定方向か否かを判定し、
前記
地磁気センサに対するキャリブレーション処理の実行が必要か否かを判定する動作は、前記地磁気センサからの前記一定時間毎の複数の前記検出結果に基づいて取得される複数の方位を示すデータにおいて、前記一定方向に対する第2の閾値範囲を逸脱している前記方位を示すデータの比率が第2の比率以上である場合に、前記地磁気センサにおけるキャリブレーション処理の実行が必要であると判定することを特徴とする。
【0010】
本発明に係る一態様のセンサ校正判定プログラムは、
地磁気センサにより地磁気を検出するとともに、測位センサにより全地球測位システムに基づいて地理的な位置を検出する電子機器のコンピュータに、
前記測位センサからの出力に基づいて、当該電子機器の進行方向が一定方向か否かを判定する移動方向判定処理と、
前記地磁気センサに対するキャリブレーション処理の実行が必要か否か判定するセンサ較正判定処理と、
を実行させるセンサ較正判定プログラムであって、
前記測位センサは、一定時間毎に前記位置を検出して検出結果を出力し、
前記移動方向判定処理は、前記測位センサからの前記一定時間毎の複数の前記検出結果に基づいて算出される複数の移動方向を示すデータにおいて、前記一定方向に対する第1の閾値範囲を逸脱している前記移動方向を示すデータの比率が第1の比率未満である場合に、当該電子機器の進行方向が一定方向であると判定し、
前記センサ較正判定処理は、前記移動方向判定処理により当該電子機器の進行方向が一定方向であると判定されたとき、前記地磁気センサの検出結果に基づいて取得される方位と、当該電子機器の進行方向との比較結果に基づいて前記地磁気センサにおけるキャリブレーション処理の実行が必要か否かを判定させることを特徴とする。
本発明に係る他の態様のセンサ校正判定プログラムは、
地磁気センサにより地磁気を検出するとともに、測位センサにより全地球測位システムに基づいて地理的な位置を検出する電子機器のコンピュータに、
前記測位センサからの出力に基づいて、当該電子機器の進行方向が一定方向か否かを判定する移動方向判定処理と、
前記地磁気センサに対するキャリブレーション処理の実行が必要か否か判定するセンサ較正判定処理
と、
を実行させるセンサ較正判定プログラムであって、
前記地磁気センサは、一定時間毎に地磁気を検出して検出結果を出力し、
前記センサ較正判定処理は、前記地磁気センサからの前記一定時間毎の複数の検出結果に基づいて取得される複数の方位を示すデータにおいて、前記一定方向に対する第2の閾値範囲を逸脱している前記方位を示すデータの比率が第2の比率以上である場合に、前記地磁気センサにおけるキャリブレーション処理の実行が必要であると判定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ユーザの判断や操作に委ねることなく、地磁気センサの検出結果が適切であるか否かを判定して、正確な方位を検出することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係る電子機器及びセンサ較正判定方法、センサ較正判定プログラムについて、実施形態を示して詳しく説明する。
<電子機器>
図1は、本発明に係る電子機器の例を示す概略構成図である。
図2は、本実施形態に係る電子機器の一構成例を示す機能ブロック図である。
【0014】
本発明は、例えば
図1に示すように、位置情報や地図情報をユーザに提供するための機能を備えた、携帯電話機10やスマートフォン20、スポーツウォッチ30、ナビゲーション端末(図示を省略)等の電子機器に適用される。以下、説明の都合上、これらの機器を「電子機器100」と総称する。
【0015】
本実施形態に係る電子機器100は、例えば
図2に示すように、地磁気センサ110と、GPS受信回路(測位センサ)120と、入力操作部130と、報知部140と、演算回路部(センサ較正判定部、移動方向判定部、較正制御部)150と、メモリ部160と、電源供給部170と、を備えている。
【0016】
地磁気センサ110は、地球の磁場(磁界)を検出して地磁気データ、又は、電子機器100の水平、垂直方向を示す方向データとして出力する。ここで、地磁気センサ110は、直交する2軸方向の地磁気を検出するものであってもよいし、直交する3軸方向の地磁気を検出するものであってもよい。この地磁気センサ110により検出された地磁気データや方向データに基づいて、後述する演算回路部150により電子機器100を基準とする方位が算出される。地磁気センサ110により取得された方位は、後述するメモリ部160の所定の記憶領域に保存される。
【0017】
GPS受信回路120は、複数のGPS衛星からの電波を、GPSアンテナ(図示を省略)を介して受信することにより、緯度、経度情報に基づく地理的な位置情報を取得して、GPSデータとして出力する。電子機器100を携帯したユーザが移動しているとき、このGPS受信回路120により出力されたGPSデータに基づいて、演算回路部150により電子機器100(実質的には電子機器100を携帯したユーザ)の進行方向(移動方向)が算出される。GPS受信回路120により取得された進行方向は、メモリ部160の所定の記憶領域に保存される。
【0018】
入力操作部130は、例えば
図1に示した電子機器100(携帯電話機10やスマートフォン20、スポーツウォッチ30等)の筐体に設けられた操作スイッチ131やタッチパネル132を有している。操作スイッチ131は、例えば筐体の前面や側面に設けられた押しボタン型やスライド型のスイッチであって、電子機器100の動作電源やGPS受信回路120における測位動作のオン、オフ操作や、アプリケーションソフトウェアの操作、後述する報知部140(表示部141や音響部142等)から報知する項目の設定等の、各種の入力操作に用いられる。
【0019】
また、タッチパネル132は、報知部140に設けられる表示部141の前面側(視野側)に設けられ、表示部141に表示された情報に応じた領域をタッチ操作することにより、当該情報に対応する機能が選択的に実行される。ここで、タッチパネル132により実現される機能は、上記の操作スイッチ131により実現される機能と同等であってもよいし、タッチパネル132による入力操作特有の機能を有していてもよい。なお、入力操作部130は、例えば、上記の操作スイッチ131及びタッチパネル132のうちの、いずれか一方のみを備えた構成を有しているものであってもよい。
【0020】
報知部140は、例えば
図1に示した電子機器100(携帯電話機10やスマートフォン20、スポーツウォッチ30等)の筐体に設けられた表示部141や音響部142、振動部(図示を省略)を有している。表示部141は、例えば液晶方式や発光素子方式の表示パネルを有し、少なくとも上述した地磁気センサ110により取得された方位やGPS受信回路120により取得された進行方向に基づいて生成される位置情報や地図情報、地磁気センサ110の検出結果の妥当性(適切か否か)の判定結果や、GPS受信回路120の動作状態等の、各種の情報を表示する。これにより、表示部141は、視覚を通してユーザに各種の情報を提供又は報知する。ここで、表示部141における各種の情報の表示形態は、上述した操作スイッチ131やタッチパネル132を操作することにより任意に設定される。
【0021】
また、音響部142は、ブザーやスピーカ等の音響機器を有し、所定の音色や音パターン、音声メッセージ等の音情報を発生することにより、聴覚を通してユーザに各種の情報を提供又は報知する。また、振動部は、振動モータや振動子等の振動機器(バイブレータ)を有し、所定の振動パターンやその強弱等の振動情報を発生することにより、触覚を通してユーザに各種の情報を提供又は報知する。なお、報知部140は、例えば、上記の表示部141、音響部142、振動部のうちの、少なくともいずれかを備えた構成を有しているものであってもよい。ここで、数値情報等の具体的な情報をユーザに提供する場合には、少なくとも表示部141又は音響部142のうちの、いずれかを備えた構成を有していることが好ましい。
【0022】
演算回路部150は、計時機能を備えたCPU(中央演算処理装置)やMPU(マイクロプロセッサ)等の演算処理装置であって、計時機能により生成される動作クロックに基づいて、所定の制御プログラムやアルゴリズムプログラムを実行する。これにより、演算回路部150は、地磁気センサ110におけるセンシング動作やGPS受信回路120における測位動作、後述するセンサ較正判定動作、報知部140における情報提供動作等の、各種の動作を制御する。なお、演算回路部150において実行される制御プログラムやアルゴリズムプログラムは、予め演算回路部150の内部に組み込まれているものであってもよいし、後述するメモリ部160の所定の記憶領域に保存されているものであってもよい。
【0023】
メモリ部160は、例えばセンサデータ保存用メモリと、プログラム保存用メモリと、作業データ保存用メモリとを有している。
センサデータ保存用メモリは、上述した地磁気センサ110により取得された方位やGPS受信回路120により取得された進行方向を含むデータを、時間データに関連付けて所定の記憶領域に保存する。プログラム保存用メモリは、地磁気センサ110におけるセンシング動作やGPS受信回路120における測位動作や、報知部140における情報提供動作等の、各構成における所定の動作を実行するための制御プログラムを保存する。また、プログラム保存用メモリは、地磁気センサ110により取得された方位やGPS受信回路120により取得された進行方向に基づいて、地磁気センサ110の検出結果が適切か否かを判定するセンサ較正判定動作を実行するためのアルゴリズムプログラムを保存する。作業データ保存用メモリは、上記制御プログラムやアルゴリズムプログラムを実行する際に使用する各種データや、生成される各種データを一時的に保存する。なお、センサデータ保存用メモリは、その一部又は全部が、例えばメモリカード等のリムーバブル記憶媒体としての形態を有し、電子機器100に対して着脱可能に構成されているものであってもよい。
【0024】
電源供給部170は、電子機器100内部の各構成に駆動用電力を供給する。電源供給部170は、電子機器100が携帯型の機器である場合には、例えば市販のコイン型電池やボタン型電池等の一次電池、リチウムイオン電池やニッケル水素電池等の二次電池を適用することができる。また、電源供給部170は、上記の一次電池や二次電池のほか、振動や光、熱、電磁波等のエネルギーにより発電する環境発電(エナジーハーベスト)技術による電源等を単独で、あるいは、併用して適用することもできる。
【0025】
<センサ較正判定方法>
次に、本実施形態に係る電子機器における制御方法(センサ較正判定方法)について、図面を参照して説明する。ここで、以下のフローチャートに示す電子機器のセンサ較正判定方法は、上述した演算回路部150が、メモリ部160に格納された所定の制御プログラム及びアルゴリズムプログラムに従って処理を実行することにより実現される。
【0026】
図3は、本実施形態に係る電子機器における制御方法(センサ較正判定方法)の一例を示すフローチャートである。
図4は、本実施形態に係るセンサ較正判定方法に適用される進行方向判定処理の一例を示すフローチャートであり、
図5は、本実施形態に係るセンサ較正判定方法に適用される方位適否判定処理の一例を示すフローチャートである。
【0027】
本実施形態に係るセンサ較正判定方法においては、地磁気センサ110及びGPS受信回路120を備えた電子機器100において、
図3のフローチャートに示すように、まず、ユーザが入力操作部130を操作することにより、電子機器100を起動させ、地磁気センサ110によるセンシング動作及びGPS受信回路120による測位動作を実行させた状態(GPSオン)に設定する(ステップS101)。そして、この状態で、電子機器100を携帯したユーザは、任意の一定方向に移動(例えば直線道路等を移動)する動作を行う。ここで、本実施形態に係る電子機器100においては、少なくともセンサ較正判定方法の実行時に、地磁気センサ110によるセンシング動作及びGPS受信回路120による測位動作が実行されている状態にあればよく、センサ較正判定方法の実行時以外においては、地磁気センサ110におけるセンシング動作やGPS受信回路120における測位動作が停止した状態にあってもよい。
【0028】
次いで、演算回路部150は、GPS受信回路120により検出されたGPSデータに基づいて、ユーザが携帯する電子機器100が移動しているか否かを判定する(ステップS102)。電子機器100が移動していないと判定した場合には、演算回路部150は、ステップS102の判定動作を繰り返し実行する。
【0029】
一方、上記ステップS102において、電子機器100が移動していると判定した場合には、演算回路部150は、GPS受信回路120により検出されたGPSデータに基づいて電子機器100の進行方向を算出して、メモリ部160の所定の記憶領域に保存する動作を規定回数繰り返す(ステップS103)。ここで、GPS受信回路120における測位動作を、例えば1〜5秒ごとに実行する場合には、上述した規定回数を少なくとも10回程度に設定することが好ましい。
【0030】
また、上記ステップS103における、GPSデータに基づく進行方向の算出、保存動作に並行して、演算回路部150は、地磁気センサ110により検出された地磁気データに基づいて電子機器100を基準とする方位を算出して、メモリ部160の所定の記憶領域に保存する動作を規定回数繰り返す(ステップS104)。ここで、地磁気センサ110におけるセンシング周波数は、例えば100Hz〜200Hz程度に設定される。
【0031】
次いで、演算回路部150は、上記ステップS103においてメモリ部160に保存された、GPSデータに基づく規定回数分の進行方向から、電子機器100が一定方向に移動しているか否かを判定する(以下、便宜的に「進行方向判定処理」と記す;ステップS105)。
【0032】
一般に、GPSを適用した測位動作においては、測定環境によってGPSデータの外れ値(統計において他の値から大きく外れた値)が突然出現する場合がある。また、GPSにおける測位精度は、数m〜10m程度の誤差を有している。また、電子機器100(ユーザ)は移動しているが、その移動経路が曲がっていて一定方向へ(直線的に)進んでいない場合がある。そこで、本実施形態においては、このようなGPSデータの外れ値や誤差等の影響を排除又は抑制するために、次に示すような一連の進行方向判定処理を実行する。
【0033】
ステップS105において実行される進行方向判定処理は、具体的には、
図4のフローチャートに示すように、まず、演算回路部150は、メモリ部160に保存された規定回数分のGPSデータに基づく進行方向の分布(バラツキ)から中央値を選定する(ステップS111)。次いで、演算回路部150は、規定回数分の進行方向のうち、選定した進行方向の中央値に対する差が所定の閾値より大きい(すなわち、中央値を基準として、所定の閾値範囲(第1の閾値範囲)を逸脱する)ものの数を計測する(ステップS112)。ここで適用される閾値は、例えば種々の実験に基づいて算出される適切な値に設定される。
【0034】
次いで、演算回路部150は、計測された進行方向の数(計数値)が、メモリ部160に保存された規定回数分の進行方向に対して、所定の数、又は、所定の比率(第1の比率)よりも小さいか否かを判定する(ステップS113)。計測値が上記の規定回数に対して、所定の数、又は、所定の比率よりも小さい(例えば、30%未満)場合には、演算回路部150は、電子機器100が一定方向に移動していると判定し(ステップS114)、上記のGPSデータに基づく進行方向のうち、選定された中央値を正規の、又は、基準となる進行方向(特定方向)として設定する(ステップS106)。また、このとき、演算回路部150は、上記の正規の進行方向を、報知部140(表示部141や音響部142、振動部)により、人間の視覚や聴覚、触覚を通してユーザに報知(通知)する。
【0035】
一方、上記ステップS113において、計測値が上記の規定回数に対して、所定の数以上、又は、所定の比率以上(例えば、30%以上)と判定した場合には、演算回路部150は、電子機器100が一定方向に移動していないと判定し(ステップS115)、
図3に示したフローチャートのステップS102に戻り、上記のステップS102〜S105の処理動作を繰り返し実行する。
【0036】
このように、本実施形態においては、規定回数分の進行方向の分布の中央値を選定し(ステップS111)、中央値に対する閾値範囲外のデータ数を計測する(ステップS112)ことにより、GPSデータに基づく規定回数分の進行方向に含まれる外れ値による影響を排除又は抑制することができる。また、電子機器100が一定方向へ進んでいない場合には中央値からの誤差が大きくなるものが多数存在するため、その計数値の比率を判定する(ステップS113〜S115)ことにより、一定方向へ進んでいるか否かを判定することができる。
【0037】
次いで、演算回路部150は、上記ステップS104においてメモリ部160に保存された、地磁気データに基づく方位が、上記ステップS105、S106において設定された正規の進行方向に対して妥当か否かを判定する(以下、便宜的に「方位適否判定処理」と記す;ステップS107)。
【0038】
地磁気センサ110により検出された地磁気データが適切である場合、上記ステップS105、S106において設定された正規の進行方向(GPSデータに基づく進行方向)と、地磁気データに基づく規定回数分の方位とは一致又は近似することになる。一方、地磁気センサ110による地磁気の検出動作においても、GPSを適用した測位動作の場合と同様に、周囲の環境の影響を受けるため、地磁気データに外れ値が出現する場合がある。そこで、本実施形態においては、このような地磁気データの外れ値の影響を排除又は抑制するために、次に示すような一連の方位適否判定処理を実行する。
【0039】
ステップS107において実行される方位適否判定処理は、具体的には、
図5のフローチャートに示すように、まず、演算回路部150は、メモリ部160に保存された規定回数分の地磁気データに基づく方位のうち、GPSデータに基づいて設定された上記の正規の進行方向に対する差が所定の閾値より大きい(すなわち、正規の進行方向を基準として、所定の閾値範囲(第2の閾値範囲)を逸脱する)ものの数を計測する(ステップS121)。ここで適用される閾値は、例えば種々の実験により算出される適切な値に設定される。
【0040】
次いで、演算回路部150は、計測された方位の数(計数値)が、メモリ部160に保存された規定回数に対して、所定の数、又は、所定の比率(第2の比率)以上か否かを判定する(ステップS122)。計測値が上記の規定回数に対して、所定の数、又は、所定の比率よりも小さい(例えば、30%未満)と判定した場合には、演算回路部150は、地磁気センサ110により取得された方位は適切であると判定し(ステップS125)、
図3に示したフローチャートのステップS102に戻り、上記のステップS102〜S107の処理動作を繰り返し実行する。
【0041】
一方、上記ステップS122において、計測値が上記の規定回数に対して、所定の数、又は、所定の比率以上(例えば、30%以上)である場合には、演算回路部150は、地磁気センサ110により取得された方位は適切ではないと判定する(ステップS123)。これにより、演算回路部150は、地磁気センサ110のキャリブレーション処理が必要であると判定して(ステップS124)、地磁気センサ110におけるキャリブレーション処理を実行する(ステップS108)。
【0042】
ここで、ステップS108において実行される地磁気センサ110のキャリブレーション処理の手法としては、例えば電子機器100を地平面に対して水平な面内で特定の軌跡(例えば8の字状)を描くように、ユーザが自ら電子機器100をスイング(旋回移動)させる手法を適用することができる。この手法においては、演算回路部150は、まず、ステップS108における判定結果に基づいて、報知部140(表示部141や音響部142、振動部)により、キャリブレーション処理が必要である旨の情報を、人間の視覚や聴覚、触覚を通してユーザに報知(通知)する。そして、ユーザは、報知部140を介して報知されたキャリブレーション処理に関する情報に基づいて、上述したように電子機器100をスイングさせて、地磁気センサ110のキャリブレーション処理を実行する。
【0043】
また、地磁気センサ110が直交する3軸方向の地磁気を検出する3軸型の地磁気センサの場合には、演算回路部150は、3軸方向の各地磁気データを用いた周知の演算処理により、ユーザが電子機器100をスイングさせることなく、地磁気センサ110のキャリブレーション処理を自動的に実行する手法を適用することもできる。
【0044】
そして、ステップS108における地磁気センサ110のキャリブレーション処理の終了後、演算回路部150は、センサ較正判定動作の終了が指示されるまで、上述した一連の処理(ステップS102〜S109)を繰り返し実行する。ここで、演算回路部150は、例えばGPS受信回路120による測位動作が終了や停止された場合(GPSオフ)や、電子機器100の電源が遮断された場合(電源オフ)等に、センサ較正判定動作の終了が指示されたものと判定する。したがって、本実施形態においては、例えばGPS受信回路120による測位動作が実行されている状態では、上述した一連のセンサ較正判定動作が繰り返し実行される。
【0045】
上述した本実施形態に係るセンサ較正判定方法は、次のような特徴を有している。
すなわち、上述した背景技術においても説明したように、地磁気センサを備える電子機器を磁気の強い環境で使用した場合、磁気センサが磁化されてしまうことがある。その場合、電子機器を磁気の強い環境から離しても、地磁気センサにより正確な検出結果(方位)が得られなくなる場合がある。このような場合には、一般に、地磁気センサのキャリブレーション処理を実行する必要があるが、地磁気センサによる検出結果がどのような状態になったときにキャリブレーション処理を実行するかの判定については、ユーザの判断や操作に委ねられており、実効的かつ具体的な手法が提案されていなかった。そのため、ユーザは地磁気センサによる検出結果が正しくない(不正確な)状況になっていることに気づき難く、誤った検出結果(方位)を信用してしまうことになるという問題を有していた。
【0046】
そこで、本実施形態においては、GPSによる測位機能を備えた電子機器を、ある程度の速度で移動させた場合、当該電子機器の進行方向を算出することができる、という特徴に着目した。ここで、GPSにおける測位結果は、一般に数m〜10m程度の誤差を含むものであるため、電子機器の正確な進行方向を算出するために多数のデータを用いることが望ましい。そのため、本実施形態においては、少なくともGPSにより多数(規定回数分)の測位結果を取得する期間中、電子機器を一定方向に移動させる。
【0047】
また、地磁気センサは、一般に強い磁気が存在する環境下では正確な検出結果(方位)が得られない。そのため、本実施形態においては、磁気による影響が及ばないような環境の下で、地磁気センサによる検出動作及びGPSによる測位動作を並行して実行させる。
【0048】
そして、本実施形態においては、地磁気センサ及びGPS受信回路を備えた電子機器において、上記のような前提条件を満たした状態で、地磁気センサにより取得された方位と、GPS受信回路により取得された進行方向とを比較して、地磁気センサによる検出結果(方位)が適切か否かを判定し、地磁気センサのキャリブレーション処理の要否を決定する。
【0049】
このような本実施形態によれば、GPS受信回路により取得された正規の進行方向に対して、地磁気センサにより取得された方位が誤っている(一致又は近似しない)場合には、適切なタイミングで地磁気センサのキャリブレーション(較正)が必要であることを報知してキャリブレーション処理をユーザに実行させたり、演算処理により自動的にキャリブレーション処理を実行したりすることができる。したがって、位置情報や地図情報を利用した種々のサービスにおいて、正確な方位を取得してユーザに的確な情報を提供することができる。
【0050】
なお、本実施形態においては、進行方向判定処理(ステップS105、S111〜S115)において、GPS受信回路120により規定回数分の進行方向を取得し、当該規定回数分の進行方向の分布から中央値を選定する手法を示したが、本発明はこれに限定されるものではない。すなわち、GPSデータに基づいて算出された進行方向のうち、外れ値を排除することができるものであれば、他の手法を適用するものであってもよい。例えば、上述した中央値に替えて、GPSデータに基づいて算出された規定回数分の進行方向の平均値を用いる手法を適用するものであってもよい。さらに他の手法として、例えば、上述したように中央値を選定し、当該中央値に対して所定の閾値範囲を逸脱するデータが存在する(計数値が1以上)場合には、上述した実施形態と同様に、進行方向判定処理(ステップS111〜S115)を実行し、閾値範囲を逸脱するデータが存在しない(計数値が0)場合には、規定回数分の進行方向の平均値を正規の進行方向として設定するものであってもよい。このような手法においても、上述したGPSデータの外れ値や誤差、移動経路の影響を抑制して正確な進行方向を取得するができる。
【0051】
また、本実施形態においては、方位適否判定処理(ステップS107、S121〜S125)において、地磁気センサ110により規定回数分の方位を取得し、当該規定回数分の方位のうち、正規の進行方向に対する差が所定の閾値範囲を逸脱する方位の計数値に基づいて、地磁気センサ110による方位の妥当性(適切か否か)を判定する手法を示した。ここで、方位の妥当性の判定基準となる閾値を算出するための実験を行うことが不可能な場合には、GPS受信回路120により取得された正規の進行方向に対する地磁気センサ110により取得された方位の閾値として、例えば予め設定した理論値(例えば45°等)を適用するものであってもよい。なお、この理論値は、次のような論理に基づいて設定される。すなわち、地磁気センサ110がキャリブレーションを必要としていない場合でも、地磁気センサ110により取得された方位とGPS受信回路120により取得された正規の進行方向とを比較すると、ある程度の誤差が生じている。ここで、上記の閾値として例えば45°のように比較的大きく設定した場合には、この閾値を超える方位は殆ど存在しないと考えられるため、極端に大きな誤差が生じた場合にその影響を排除又は抑制することができる。一方、閾値を極端に小さく(例えば5°)設定すると、方位のほとんどが閾値を超えてしまうため、キャリブレーション処理を頻繁に実行しなければならなくなる。そのため、閾値として適用される理論値は、これらを勘案して適切な数値に設定される。
【0052】
以上、本発明のいくつかの実施形態について説明したが、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲を含むものである。
以下に、本願出願の当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
【0053】
(付記)
[1]
地磁気を検出する地磁気センサと、
全地球測位システムに基づいて、地理的な位置を検出する測位センサと、
前記地磁気センサに対するキャリブレーション処理の実行が必要か否か判定するセンサ較正判定部と、
を備え、
前記センサ較正判定部は、前記測位センサによる位置の検出に基づいて電子機器が一定の特定方向に移動していることが検出されているとき、前記地磁気センサの検出結果に基づいて取得される方位と前記特定方向との比較結果に基づいて前記地磁気センサにおけるキャリブレーション処理の実行が必要か否かを判定することを特徴とする電子機器。
【0054】
[2]
前記測位センサからの出力に基づいて、前記電子機器が前記特定方向へ移動しているか否かを判定する移動方向判定部を有し、
前記測位センサは、一定時間毎に前記位置を検出して検出結果を出力し、
前記移動方向判定部は、前記測位センサからの前記一定時間毎の複数の前記検出結果に基づいて算出される複数の移動方向を示す複数のデータにおいて、前記特定方向に対する第1の閾値範囲を逸脱している前記データの比率が第1の比率未満である場合に、前記複数の移動方向に基づいて選定される前記特定方向に移動していると判定することを特徴とする[1]に記載の電子機器。
【0055】
[3]
前記地磁気センサは、一定時間毎に地磁気を検出して検出結果を出力し、
前記センサ較正判定部は、前記地磁気センサからの前記一定時間毎の複数の検出結果に基づいて取得される複数の方位を示すデータにおいて、前記特定方向に対する第2の閾値範囲を逸脱している前記データの比率が第2の比率以上である場合に、前記地磁気センサにおけるキャリブレーション処理の実行が必要であると判定することを特徴とする[1]又は[2]に記載の電子機器。
【0056】
[4]
前記センサ較正判定部における前記キャリブレーション処理の実行が必要と判定されたとき前記地磁気センサのキャリブレーション処理の実行を促す情報を報知する報知部、及び、前記センサ較正判定部における前記キャリブレーション処理の実行が必要と判定されたとき前記地磁気センサのキャリブレーション処理を実行する較正制御部、の少なくとも何れかを有することを特徴とする[1]乃至[3]のいずれかに記載の電子機器。
【0057】
[5]
移動しているときに、地磁気センサにより地磁気を検出するとともに、測位センサにより全地球測位システムに基づいて地理的な位置を検出し、
前記測位センサによる位置の検出に基づいて一定の特定方向に移動していることが検出されたとき、前記地磁気センサの検出結果に基づいて取得される方位と前記特定方向との比較結果に基づいて前記地磁気センサにおけるキャリブレーション処理の実行が必要か否かを判定することを特徴とするセンサ較正判定方法。
【0058】
[6]
前記測位センサからの出力に基づいて、前記特定方向へ移動しているか否かを判定する動作を含み、
前記測位センサは、一定時間毎に前記位置を検出して検出結果を出力し、
前記特定方向へ移動しているか否かを判定する動作は、前記測位センサからの前記一定時間毎の複数の前記検出結果に基づいて算出される複数の移動方向を示す複数のデータにおいて、前記特定方向に対する第1の閾値範囲を逸脱している前記データの比率が第1の比率未満である場合に、前記複数の移動方向に基づいて選定される前記特定方向に移動していると判定することを特徴とする[5]に記載のセンサ較正判定方法。
【0059】
[7]
前記地磁気センサは、一定時間毎に地磁気を検出して検出結果を出力し、
前記キャリブレーション処理の実行が必要か否かを判定する動作は、前記地磁気センサからの前記一定時間毎の複数の前記検出結果に基づいて取得される複数の方位を示すデータにおいて、前記特定方向に対する第2の閾値範囲を逸脱している前記データの比率が第2の比率以上である場合に、前記地磁気センサにおけるキャリブレーション処理の実行が必要であると判定することを特徴とする[5]又は[6]に記載のセンサ較正判定方法。
【0060】
[8]
前記キャリブレーション処理の実行が必要か否かを判定する動作において前記キャリブレーション処理の実行が必要と判定されたときに前記地磁気センサのキャリブレーション処理の実行を促す情報を報知する動作、及び、前記キャリブレーション処理の実行が必要か否かを判定する動作において前記キャリブレーション処理の実行が必要と判定されたときに前記地磁気センサのキャリブレーション処理を実行する動作、の少なくとも何れかを含むことを特徴とする[5]乃至[7]のいずれかに記載のセンサ較正判定方法。
【0061】
[9]
コンピュータに、
移動しているときに、地磁気センサにより地磁気を検出させるとともに、測位センサにより全地球測位システムに基づいて地理的な位置を検出させ、
前記測位センサによる位置の検出に基づいて一定の特定方向に移動していることが検出されたとき、前記地磁気センサの検出結果に基づいて取得される方位と前記特定方向との比較結果に基づいて前記地磁気センサにおけるキャリブレーション処理の実行が必要か否かを判定させることを特徴とするセンサ較正判定プログラム。