(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
可撓性のシート状フィルムを基材として、当該基材上に導電性インキを用いて塗布もしくは印刷により成膜することで、コンデンサおよびコイル導体とによる共振回路を形成すると共に、前記基材と前記コイル導体との間に、水分を含んで膨張することで、もしくは水分を含んで溶解することで、前記コイル導体を切断するコイル導体破壊層が配置された液体検知センサーを第1検知センサーとして検査対象に取り付け、前記第1検知センサーの共振周波数とは異なる共振周波数を有する共振回路を備えると共に、水分によって共振回路が破壊されない第2検知センサーを検査対象にさらに取り付けた状態で、前記第1検知センサーおよび第2検知センサーの状態を非接触で検知する液体検知装置であって、
前記第1検知センサーおよび第2検知センサーに対して、検知電波の周波数をスイープさせて出射する検知電波出射手段と、前記第1検知センサーおよび第2検知センサーの共振周波数に一致した時の前記検知電波出射手段における送信側電流の変化をそれぞれ検知することで、前記検査対象の有無および前記検査対象の液体による濡れもしくは乾燥状態を判別する判別手段を備えたことを特徴とする液体検知装置。
【背景技術】
【0002】
近年の高齢化の進展に伴い、おむつを必要とする被介護者の人数が増大している。特に認知症などの発症に伴い、被介護者が介護者との間で満足な意思疎通が図れないなどの理由により、尿意を介護者に伝えられない状況も増大している。このような状況下おいては、予め定められた時刻もしくは一定時間ごとに、おむつを交換する必要がある。
しかしながら、おむつの交換直後において被介護者が失禁をする場合もあり、この状態のまま時間が経過すると排尿等による匂いが充満したり、これが重なるうちに被介護者に、いわゆるおむつかぶれを発症させる場合も生ずる。
【0003】
また、介護者にとっても、おむつを開けなれば状態を把握することができないので、失禁をしていない被介護者のおむつを開けて、また付け直すことが頻繁に発生することになる。したがって介護者に不要な労力が発生し、さらに被介護者の睡眠等を妨害することにもなる。
このために、介護者がおむつを開けなくても、失禁を検知することができる失禁検知センサーが開発されている。
【0004】
従来の失禁検知センサーとしては、例えば特許文献1に開示されているように、コイルとコンデンサの組み合わせにより特定の周波数に対して共振特性を持たせた無線タグを用いたものが提案されている。
この無線タグとしては、銅もしくはアルミニウムなどの金属をエッチング処理により作成したものが用いられており、前記コンデンサを形成する一対の電極間に配置された誘電体が、例えば尿を吸水したか否かを検知するように構成されている。
【0005】
すなわち、前記誘電体が尿を吸水したことによる比誘電率の増大により、共振周波数が低下するのを検知装置(リーダー)側で検知する構成が採用されている。
そして、前記した失禁検知センサーは、水洗いして乾燥させることにより、再利用が可能であることを、特許文献1において特徴点として挙げている。
【0006】
また従来の失禁検知センサーとして、パッシブ型のRFIDタグを用いたものが、特許文献2に開示されている。このRFIDタグにはICチップが搭載され、RFIDタグに例えば尿が付着することで、タグのアンテナコイルにおけるインダクタンスが変動するのを検知装置(リーダー)側で検知する構成が採用されている。
【0007】
加えて特許文献2には、このRFIDタグを利用して、被介護者の複数回の失禁を時間経過と共に監視できるようにするために、一度RFIDタグに浸透して付着した尿を、タグから直ちに排出できるように工夫したRFIDタグを包むパッケージの形態も開示している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
この発明は、昨今において注目されているプリンテッドエレクトロニクス製造技術を応用し、可撓性のシート状フィルム上に、導電性インキを用いて塗布もしくは印刷によりコイルならびにコンデンサを含む電気回路を作成する点に特徴を有するものである。したがって、従来のフォトリソグラフィー製造技術を応用したセンサーに比較して、格段に安価な失禁検知センサーを提供することができる。
【0014】
加えて、この発明に係る失禁検知センサーは、失禁による尿等の水分を受けて、印刷された電気回路を壊すことに着目しており、前記電気回路が動作不能になされることで、失禁の状態を検知するものである。したがって失禁検知センサーは、その都度使い捨てとする運用形態が採用される。
【0015】
一方、この発明に係る失禁検知センサーからの情報を得るリーダーにおいては、例えばベッド下にリーダー側のアンテナを配置することで、特許文献1に開示されたようにリーダーを被介護者のおむつのベルト部分に装着することによる被介護者の負担を解消しようとするものである。
しかも、おむつに装着された共振周波数が異なる2つの失禁検知センサーからの情報を取得して、ベッド上での被介護者の存在(おむつの存在)および失禁状態か否かの検証も行うものとなる。
【0016】
この出願の発明は、前記した構想を実現するためになされたものであり、低価格、ならびにおむつに装着した場合の違和感がなく、使い捨ての運用がなし得る液体検知センサーを提供することを課題とするものである。
また、液体検知センサーからの情報を取得するリーダーにおいては、ベッド上の被介護者の存在(おむつの存在)および失禁状態か否かの検証も行うことが可能であり、介護者および被介護者の双方において、その扱いに負担の少ない失禁検知センサーおよび液体検知装置を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
前記した課題を達成するためになされたこの発明に係る
液体検知装置は、可撓性のシート状フィルムを基材として、当該基材上に導電性インキを用いて塗布もしくは印刷により成膜することで、コンデンサおよびコイル導体とによる共振回路を形成すると共に、前記基材と前記コイル導体との間に、水分を含んで膨張することで、もしくは水分を含んで溶解することで、前記コイル導体を切断するコイル導体破壊層が配置され
た液体検知センサーを第1検知センサーとして検査対象に取り付け、前記第1検知センサーの共振周波数とは異なる共振周波数を有する共振回路を備えると共に、水分によって共振回路が破壊されない第2検知センサーを検査対象にさらに取り付けた状態で、前記第1検知センサーおよび第2検知センサーの状態を非接触で検知する液体検知装置であって、前記第1検知センサーおよび第2検知センサーに対して、検知電波の周波数をスイープさせて出射する検知電波出射手段と、前記第1検知センサーおよび第2検知センサーの共振周波数に一致した時の前記検知電波出射手段における送信側電流の変化をそれぞれ検知することで、前記検査対象の有無および前記検査対象の液体による濡れもしくは乾燥状態を判別する判別手段を備えたことを特徴とする。
【0018】
この場合、
前記第1検知センサーには、水分を含んで膨張もしくは溶解する前記コイル導体破壊層が、前記コイル導体の長手方向に沿った複数か所において、前記コイル導体の長手方向に交差するようにして配置されていることが望ましい。
【0019】
そして、
前記第1検知センサーの一つの好ましい形態においては、シート状フィルムによる前記基材上に成膜された前記コンデンサを構成する第1電極と、前記第1電極上に重ね合わされて成膜された誘電体層および前記基材上に成膜された前記コイル導体破壊層と、前記誘電体層上に重ね合わされて成膜された前記コンデンサを構成する第2電極および当該第2電極に接続されて前記コイル導体破壊層に交差するようにして前記基材上に成膜された前記コイル導体とを備えた構成が採用される。
【0020】
なお、前記コンデンサを構成する誘電体層は、水分を含んで膨張もしくは溶解する前記コイル導体破壊層と同一の素材を使う必要はなく、コンデンサとして有用な特性が得られる適宜の材料が利用し得る。
【0021】
さらに、水分を含んで膨張する前記コイル導体破壊層には、好ましくはポリアクリル酸ナトリウムが用いられ、水分を含んで溶解する前記コイル導体破壊層には、好ましくはポリビニルアルコールが用いられる。
【発明の効果】
【0024】
前記したこの発明に係る
液体検知装置に用いる液体検知センサーによると、可撓性のシート状フィルムに、導電性インキによりコンデンサおよびコイル導体による共振回路が形成され、前記基材と前記コイル導体との間には、水分を含んで膨張もしくは溶解するコイル導体破壊層を配置した構成が採用される。
この構成によると、導電性インキ、誘電体材料、膨張材料もしくは溶解材料を用いて、これらを塗布もしくは印刷により順次成膜することで、液体検知センサーを構成することができるので、従来のフォトリソグラフィーの製造技術を応用したセンサーに比較して、格段に安価な液体検知センサーを提供することができる。
【0025】
さらに前記した液体検知センサーは、前記コイル導体破壊層に例えば水分が給水されることで、水分を含んで充分に膨潤するか溶解することで、成膜されたコイル導体を切断するように作用する。これにより共振回路が破壊されるので、前記した共振回路が予め定められた共振周波数に応答するが否かに応じて液体の有無を確実に検知することができる。
【0026】
一方、前記した液体検知センサーを、検査対象としてのおむつに取り付けることにより、前記液体検知センサーを失禁検知センサーとして利用することができる。
その液体検知装置の好ましい第1の形態によれば、おむつに取り付けた液体検知センサーに対して検知電波を送信する送信側の電流変化の有無によって、おむつが乾燥状態にあるか濡れ状態であるかを確実に判別することができる。
【0027】
また、液体検知装置の好ましい第2の形態によれば、液体によって共振回路が破壊される前記した液体検知センサーを第
1検知センサーとし、第
1検知センサーとは異なる共振周波数の共振回路を備えて、水分によって共振回路が破壊されない第
2検知センサーを検査対象としてのおむつに取り付けることにより、検査対象としてのおむつの有無(被介護者がベッド上に居るか否かの判断)およびおむつが乾燥状態にあるか濡れ状態であるかを確実に判別することができる。
【発明を実施するための形態】
【0029】
この発明に係
る液体検知装置について、これを介護施設における失禁検知装置として利用した場合を例にして説明する。
図1に示すように、介護施設における被介護者のベッド1には、リーダー11がベッドごとに個別に設置され、このリーダー11から伸びるアンテナ12が、例えばベッド1とベッド上の敷き布団との間、もしくはベッド1の裏面側に取り付けられる。
【0030】
図2に示すようにベッド1上の被介護者2にはおむつ3が装着され、このおむつ3内には液体検知センサーとしての失禁検知センサー21(以下、単に検知センサーとも言う。)が収容されている。
この検知センサー21には、後で詳細に説明するが、コンデンサCおよびコイルLとにより形成された共振回路が搭載されている。そして、この共振回路が前記リーダー11に接続されたアンテナ12から出射される検知電波に応答するか否かにより、被介護者2のおむつ3の状態、すなわち乾燥状態かもしくは濡れた状態かを前記リーダー11において検知するように作用する。
【0031】
前記リーダー11において、被介護者2のおむつ3が濡れた状態であることを検知した場合には、
図1に示すように前記リーダー11より、介護施設の監視センターに設置されたホストコンピュータ5に対して、例えば無線LANを利用してその情報がベッドのアドレスコードと共に伝送される。なお
図1に示す符号6は、監視センター側に設置された無線LANの送受信装置を示している。
また、ホストコンピュータ5は、設定されたプログラムにしたがって、介護者7が所持する携帯型受信装置8に対して、無線LANの送受信装置6を利用して情報を伝達するように動作する。
【0032】
図3は、検知センサー21とリーダー11とを含む失禁検知装置16の全体構成を示したブロック図である。
被介護者に装着されたおむつ3内には、前記した検知センサー21が装着されており、被介護者のベッドには前記したとおり、リーダー11に接続されたアンテナ12が配置されている。なお、リーダー11には前記アンテナ12に対して検知電波を送信するための検知電波送信装置13と、検知電波送信装置13に接続された判別装置14とが備えられている。前記判別装置14は検知電波送信装置13における送信側電流の変化を検知することでおむつ3に装着された検知センサー21の状態を判別するものであり、その詳細な説明は後述する。
【0033】
図4は、この発明に利用される検知センサー21の具体例を説明するものである。
この検知センサー21には、可撓性のシート状フィルムを基材として、当該基材上に導電性インキを用いて、コンデンサCおよびコイルLとによる共振回路が形成される。この実施の形態においては、導体を形成する導電性インキと共に、コンデンサCには誘電体、またコイル導体に交差するようにして水分を含んで膨張することで、もしくは水分を含んで溶解することで、前記コイル導体を切断するコイル導体破壊層が成膜される。
【0034】
そして前記した導電性インキ、誘電体層、コイル導体破壊層の成膜材料は適当な溶剤に溶かすことにより、またゲル化させるなどで液体状にすることにより、塗布法やスクリーン印刷もしくはインクジェットなどの印刷手法を利用して、基材上に任意の形状に成膜することができる。
また異種の材料を積層して構成することができるので、これから説明するLC共振回路以外に、各種のデバイスを平面的にまたは厚さ方向に形成することも可能となる。
【0035】
図4(A)は、フィルム基材22上に、導電性インキを用いてコンデンサCの第1電極(下部電極)23を形成した例を示している。この例においてはコンデンサCの下部電極23は櫛歯状に形成されている。そして櫛歯状の下部電極23を接続する導体が、フィルム基材22の長辺方向に沿って伸ばされており、その端部23aが後述するコイル導体Lの端部に接続されるように位置決めされている。
【0036】
図4(B)は、前記したコンデンサCの第1電極(下部電極)23の上に重ねて印刷されるコンデンサCの誘電体層24およびコイル導体破壊層25のパターンを示すものである。なお
図4(B)においては図面が繁雑になるために、先に印刷したコンデンサCの下部電極23は、図示を省略している。
コンデンサCの誘電体層24は、
図4(A)に示す櫛歯状の下部電極23の全体を覆うようにして成膜される。この場合、前記した下部電極23の端部23aの成膜位置においては、誘電体層24を成膜(印刷)せずに窓孔24aが形成され、前記した下部電極23の導体端部23aが窓孔24aから露出するように構成される。
【0037】
一方、水分を含んで膨張もしくは溶解するコイル導体破壊層25が、フィルム基材22の長辺方向の両辺に沿って短冊状に成膜されており、図に示す例においては長辺方向の両辺に沿うコイル導体破壊層25は、それぞれ4か所にほぼ等間隔をもって成膜されている。また同じくコイル導体破壊層25が、前記誘電体層24の成膜側を避けたフィルム基材22の短辺方向の一辺に沿って2か所に短冊状に成膜されている。
これらの短冊状に成膜された各コイル導体破壊層25は、このコイル導体破壊層25の上に重ねて成膜される後述するコイルLの導体と交差するように配置される。
なお、前記した誘電体層24とコイル導体破壊層25は、同一材料を1回の印刷で形成しても良く、また別の材料を2回に別けて印刷しても良い。
【0038】
図4(C)は、コンデンサの第2電極(上部電極)26、この上部電極26に接続されたコイル導体27の成膜パターンを示している。
コンデンサの上部電極26は、前記した誘電体層24の上に重ねて成膜されており、またコイル導体27は、短冊状に成膜された各コイル導体破壊層25に交差するようにしてフィルム基材22上に成膜されている。
前記コイル導体27は、矩形状に形成された前記フィルム基材22の四辺に沿って渦巻き状に成膜され、その外周側の端部27aは、前記した誘電体層24の一部に形成された窓孔24a部分に成膜される。
【0039】
したがって、コイル導体27の端部27aは、誘電体層24の前記窓孔24aを介してコンデンサCの下部電極23に接続された導体の端部23aに電気的に接続される。
これにより、下部電極23と上部電極26との間に誘電体層24が挿入されてなるコンデンサCが形成されると共に、このコンデンサCと前記コイル導体27とが閉回路を構成し、コンデンサCとコイルLによる直列共振回路が形成される。
【0040】
前記したコンデンサCとコイルLによる直列共振回路を備えた検知センサー21は、前記したとおりフィルム基材
22とコイル導体27との間に、コイル導体破壊層25がコイル導体27と交差するようにして成膜されている。
そして好ましい1つの形態においては、前記コイル導体破壊層25として、水分を含んで膨張する膨張材料層が利用される。この膨張材料層を用いた検知センサー21によると、検知センサー21に水分が侵入した場合には、コイル導体破壊層25としての膨張材料層は水分を含んで膨張し、この膨張作用によりコイル導体破壊層(膨張材料層)25に重ねて成膜された前記コイル導体27を切断するように作用する。
【0041】
また、好ましい他の1つの形態においては、前記コイル導体破壊層25として、水分を含んで溶解する溶解材料層が利用される。この溶解材料層を用いた検知センサー21によると、検知センサー21に水分が侵入した場合には、コイル導体破壊層25としての溶解材料層は水分を含んで溶解する。これによりコイル導体破壊層(溶解材料層)25に重ねて成膜された前記コイル導体27は、溶解材料層の溶解により効果的に切断される。
前記した水分により膨張もしくは溶解するコイル導体破壊層25を利用することにより、検知センサー21のLC共振回路は確実に破壊され、前記したリーダー11から投射される検知電波には反応しなくなる。
【0042】
前記した液体検知センサー21を構成するフィルム基材22としては、好ましくはPET(ポリエチレンテレフタレート)を用いることができる。このPETは後述する導電性インキの密着性に優れ、低コストで入手し易く、さらに比較的成形性が良好であるという理由で好適に利用することができる。
また、前記導電性インキとしては、低温で導電性を有する銀ペースト、銀銅ナノペースト等が用いられる。
【0043】
また、この実施の形態においては、コンデンサCを構成する誘電体層24と、コイル導体破壊層25とは、同一の素材を利用することができ、コイル導体破壊層25に前記した膨張材料を利用する場合には、例えばポリアクリル酸ナトリウムを好適に用いることができる。このポリアクリル酸ナトリウムを用いた高吸水性ポリマーによると、吸水により自重の数十倍に膨張する性質を有しており、したがって吸水により、導電性インキで成膜されたコイル導体27を確実に破断し、LC共振回路を破壊することができる。
【0044】
また、コイル導体破壊層25に前記した溶解材料を利用する場合には、PVA(ポリビニルアルコール)、オブラートなども利用することができる。これらは、親水性に非常に強く、したがって吸水により、導電性インキで成膜されたコイル導体27を確実に破断し、LC共振回路を破壊することができる。
【0045】
図5は、前記した検知センサー21を無線タグとして利用して、リーダー11側において得られる検知センサーの検知状態を示すものである。
前記検知センサー21に形成されたLC共振回路は、例えば11MHz付近に共振特性を持たせたものが利用される。そして、
図3に示したリーダー11の検知電波送信装置13は、13.56MHzを中心にして±数MHzの範囲で周波数がスイープする検知電波をアンテナ12に供給する。
したがって、ベッド1上の被介護者2のおむつ3に装着された検知センサー21は、ベッド1に敷設された前記アンテナ12より、周波数がスイープする電磁波を受けることになる。
【0046】
図5に示すグラフにおいては、周波数がスイープする電磁波による交流磁界の周波数fGと、この時の検知電波送信装置13からアンテナ12に供給される供給電流IGとの関係が示されている。なお
図5における横軸は時間tを示している。
交流磁界の周波数fGがスイープし、検知センサー21のLC共振回路の共振周波数fR1に一致した場合(fG1=fR1)には、検知センサー21のLC共振回路が共鳴振動を発生する。これにより、アンテナ12は磁場に必要なエネルギーを供給するように作用し、アンテナ12への供給電流IGが増大する。
この状態は、リーダー11の検知電波送信装置13側における発振コイルの電圧の減少(dip)として捕らえることができ、
図3に示す判別装置14において、このdipを検知することができる。
【0047】
したがって、
図5に示すように前記dipが検出される場合においては、検知センサー21のLC共振回路は動作していることが確認され、これはベッド1上の被介護者2のおむつ3は、乾燥状態であると判断することができる。
また、被介護者2のおむつ3が濡れた状態においては、検知センサー21のLC共振回路は破壊されて、LC共振回路は動作不能となるために、前記dipは検出されず、これにより被介護者2は失禁の状態であると判断することができる。
リーダー11が前記dipを検知しない場合には、
図1に示したとおりリーダー11より、介護施設のホストコンピュータ5に対して、例えば無線LANを利用してその情報がベッドのアドレスコードと共に伝送される。
【0048】
ところで、前記した第1の実施の形態においては、比較的元気な被介護者2がベッド1から離れた場合などにおいては、前記dipを検出することはできず、したがって被介護者2のおむつ3が濡れているのか、被介護者2がベッド1から離れているのかを判別することができない。
そこで、第2の実施の形態においては、液体によって壊れる前記した検知センサーを第1検知センサーとして利用すると共に、第1検知センサーの共振周波数とは異なる共振周波数を有し、水分によって共振回路が破壊されない第2検知センサーを備えた液体検知装置が提供される。
【0049】
すなわち、前記第1検知センサーと第2検知センサーとは、共におむつ3に装着されて、リーダー11は、それぞれの検知センサーの共振周波数の有無を検知するように構成される。
この場合、前記第1検知センサーと第2検知センサーとは、1つのフィルム基材22上に構成されていてもよく、また単独に構成された2つの検知センサーが個別におむつ3に装着されていてもよい。
【0050】
なお、第2検知センサーは特に図示しないが、
図4(B)に示すコイル導体破壊層25が成膜されない構成が採用される。加えて、誘電体層24においては、液体によって膨潤しない親水性の弱い素材、例えばウレタン樹脂を用いて印刷するようになされる。
また、第2検知センサーとしては、第1検知センサーと同様に構成し、かつセンサー上に樹脂コートして水分の影響を遮断したものを利用することもできる。
【0051】
図6は、第2の実施の形態において採用される検知特性を示しており、この
図6に示すグラフの縦軸および横軸は、すでに説明した
図5に示すグラフと同様である。
図6に示すグラフは、
図5に示すグラフに加えて、第2検知センサーによるdip(fG2=fR2)を検知するように構成される。
この場合、第2検知センサー21のLC共振回路の共振周波数fR2は、好ましくは14MHzに設定される。
【0052】
図7は、第2の実施の形態において、
図3に示すリーダー11における主に判別装置14によってなされる検知動作を説明するフローチャートである。以下、
図7に基づいて第2の実施の形態における検知動作について説明する。
リーダー11は、ステップS1において検知電波を発信する。これにより
図6に示すように、アンテナ12の周囲に、周波数fGがスイープする交流磁界が形成される。
ステップS2において、リーダー11における判別装置14は、この状態における第1と第2の検知センサーによる前記したdipの有無を検出する。
【0053】
続いてステップS3においては、前記dipがfR2付近に存在するか否かが検証される。このステップS3において、dipがfR2付近に存在しない(No)と判定された場合には、ステップS4に示されたように被介護者2はベッド1に不在であると判断する。またステップS3において、dipがfR2付近に存在する(Yes)と判定された場合には、ステップS5において、dipがfR1付近に存在するか否かが検証される。
【0054】
ステップS5において、dipがfR1付近に存在する(Yes)と判定された場合には、ステップS6に示されたように、被介護者2はベッド1に存在し、おむつ3は乾燥状態であると判断する。
また、ステップS5において、dipがfR1付近に存在しない(No)と判定された場合には、ステップS7に示されたように、被介護者2はベッド1に存在し、おむつ3は濡れた状態であると判断する。
【0055】
前記各ステップS4、S6、S7によるいずれかの判定結果は、前記したとおりリーダー11より、介護施設のホストコンピュータ5に対して、例えば無線LANを利用してベッド1のアドレスコードと共に送信される。
なお、
図7に示す動作フローにおいては、前記したステップS1〜S8の動作が繰り返されて、リアルタイムに検知動作がなされるが、その一巡の最終ステップには、ステップS9で示す所定の待ち時間の処理が挿入され、処理動作のタイミングが調整される。
【0056】
なお、前記した第2の実施の形態においては、例えば施設の出入口や通用口にも、リーダー11およびアンテナ12を設置し、前記したfR2付近のdipを監視することで、おむつ3を装着した被介護者2が無断で外出するような行動を検知することができる。
【0057】
以上説明したこの発明に係
る液体検知装置によると、前記した発明の解決課題の欄において記載した構想を実現することができる。また、安価な液体検知センサーを提供することができると共に、被介護者が装着するおむつの状態を確実に検知することができるなど、前記した発明の効果の欄に記載したとおりの作用効果を得ることができる。
【0058】
なお、この発明に係る液体検知装置は、基本的には検知センサー21とリーダー11との組み合わせにより構成することができるので、前記した介護施設において利用できるだけでなく、在宅介護においても、充分にその機能を発揮することができる。
また、この発明に係る液体検知装置は、前記した機能を生かして介護以外において、例えば漏水の状態を検知するなどの液体検知装置として利用することも可能である。