特許第6376551号(P6376551)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6376551光導波路コア形成用液状感光性樹脂組成物およびそれを用いた光導波路、ならびにフレキシブルプリント配線板
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6376551
(24)【登録日】2018年8月3日
(45)【発行日】2018年8月22日
(54)【発明の名称】光導波路コア形成用液状感光性樹脂組成物およびそれを用いた光導波路、ならびにフレキシブルプリント配線板
(51)【国際特許分類】
   G02B 6/12 20060101AFI20180813BHJP
   C08L 63/00 20060101ALI20180813BHJP
   C08L 71/00 20060101ALI20180813BHJP
   C08L 81/02 20060101ALI20180813BHJP
   C08K 5/00 20060101ALI20180813BHJP
   C08K 5/13 20060101ALI20180813BHJP
   C08K 5/524 20060101ALI20180813BHJP
   C08G 59/68 20060101ALI20180813BHJP
   H05K 1/02 20060101ALI20180813BHJP
【FI】
   G02B6/12 371
   C08L63/00 C
   C08L71/00
   C08L81/02
   C08K5/00
   C08K5/13
   C08K5/524
   C08G59/68
   H05K1/02 T
【請求項の数】6
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-30493(P2014-30493)
(22)【出願日】2014年2月20日
(65)【公開番号】特開2015-155951(P2015-155951A)
(43)【公開日】2015年8月27日
【審査請求日】2016年12月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079382
【弁理士】
【氏名又は名称】西藤 征彦
(74)【代理人】
【識別番号】100123928
【弁理士】
【氏名又は名称】井▲崎▼ 愛佳
(74)【代理人】
【識別番号】100136308
【弁理士】
【氏名又は名称】西藤 優子
(72)【発明者】
【氏名】杉本 直哉
(72)【発明者】
【氏名】平山 智之
【審査官】 奥村 政人
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2012/081375(WO,A1)
【文献】 特開2009−215510(JP,A)
【文献】 特開平09−143222(JP,A)
【文献】 特開2002−088260(JP,A)
【文献】 特開2011−209664(JP,A)
【文献】 特開2006−323244(JP,A)
【文献】 特表2014−530284(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/151050(WO,A1)
【文献】 特開2010−032584(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2001/0048797(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 6/12− 6/14
C08K 3/00−13/08
C08L 1/00−101/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記成分(A)〜(E)を含有し、各成分混合後の液状樹脂組成物全体における水分含有率Xが、0.005重量%以上0.5重量%以下であり、下記成分(C)および(D)の添加比率が、重量基準で、(C):(D)=1:3〜3:1であることを特徴とする光導波路コア形成用液状感光性樹脂組成物。
(A)カチオン重合性化合物
(B)光酸発生剤
(C)ヒンダードフェノール系化合物からなる一次酸化防止剤
(D)亜リン酸エステル系化合物からなる二次酸化防止剤
(E)溶剤
【請求項2】
(A)カチオン重合性化合物が、エポキシ化合物,オキセタン化合物およびエピスルフィド化合物からなる群から選ばれた少なくとも一つである請求項1記載の光導波路コア形成用液状感光性樹脂組成物。
【請求項3】
(B)光酸発生剤が、オニウム塩系化合物である請求項1または2記載の光導波路コア形成用液状感光性樹脂組成物。
【請求項4】
(E)溶剤が、その水分含有率Yが0.001重量%以上1.0重量%以下のものである請求項1〜3のいずれか一項に記載の光導波路コア形成用液状感光性樹脂組成物。
【請求項5】
光導波路のコアが、請求項1〜4のいずれか一項に記載の光導波路コア形成用液状感光性樹脂組成物に紫外線を照射して硬化させた硬化体で形成されていることを特徴とする光導波路。
【請求項6】
請求項5に記載の光導波路を備えることを特徴とするフレキシブルプリント配線板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光通信,光情報処理,その他一般光学等で広く用いられる光信号伝送用フレキシブルプリント配線板における光導波路のコアを構成する液状感光性樹脂組成物、およびそれを用いて形成した光導波路、ならびにフレキシブルプリント配線板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
光信号伝送用のフレキシブルプリント配線板等に使用されるフィルム状の光導波路(ポリマー光導波路)のコアの形成材料には、液状の感光性樹脂組成物(光硬化性樹脂組成物)が用いられる。そして、それを用いたコアの形成は、樹脂組成物に溶剤を加えた液状樹脂組成物(ワニス)を塗布し、所望のパターン形状の開口を有するフォトマスクを介して紫外線(UV)を照射して照射部位を硬化させてコア化し、その後、未硬化の不要部分を除去する「フォトリソグラフィ」が用いられている。
【0003】
上記用途に用いられる光導波路のコアの形成材料(樹脂組成物)は、材料の硬化後の屈折率,透明性,解像パターニング性,耐熱性といった、成形後の硬化物(以下「硬化体」)の諸物性を考慮して配合を設計することが求められており、用途に応じた要求特性を満足するために、組成物を構成する種々の原料の選択や、配合バランスを検討する等の数多くの提案が行われている(特許文献1,2等を参照)。
【0004】
なかでも、上記フレキシブルプリント配線板に用いられる光導波路のコアでは、要求される特性を考慮したうえで、硬化体を形成する材料(感光性樹脂組成物)のベースとして、エポキシ化合物等のカチオン重合性化合物が好適に選定されている。またその際、感光性(光硬化性)を付与する目的で、形成材料には、光酸発生剤等が適宜配合され、さらに、作製した光導波路コアの光学的な経時安定性を確保するために、各種の酸化防止剤等が添加されている。なお、併用による効果の増大(相乗効果)を企図して、2種類以上の酸化防止剤を同時に使用する場合もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−230944号公報
【特許文献2】特開2011−237645号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上記フォトリソグラフィによる光導波路の製造過程(形成プロセス)では、光導波路を構成するコアおよび各クラッド層ともに、形成材料(組成物)を溶剤(溶媒)に分散させることにより粘度を調整した液状の感光性樹脂組成物(ワニスまたは塗布液)を、スピンコートやロールコートのようなウェットコーティングプロセスを用いて層状(または膜状)に塗工し、未硬化の液状樹脂組成物の層(光照射前)を一旦形成している。そのため、組成物の配合によっては、上記塗布液(液状樹脂組成物)の粘性(粘度)が経時により変動(経時増粘)し、塗工後の液状樹脂組成物層(未硬化)の厚みがばらついてしまう場合がある。
【0007】
先に述べたような、2種類の酸化防止剤を添加した液状感光性樹脂組成物を用いた光導波路コアの作製においても、塗布液作製後の貯蔵中あるいは塗工時に、この塗布液(液状樹脂組成物)の粘度が経時で上昇し、硬化後に得られる硬化体(コア)の厚みが、当初の設定値(設計値)より厚くなってしまうという問題があり、その改善が望まれている。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、作用の異なる2つの酸化防止剤を併用した場合においても、液状樹脂組成物の粘度の経時上昇を抑えることのできる光導波路コア形成用液状感光性樹脂組成物と、それを用いた光導波路およびフレキシブルプリント配線板の提供をその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するため、本発明は、下記成分(A)〜(E)を含有し、各成分混合後の液状樹脂組成物全体における水分含有率Xが、0.005重量%以上0.5重量%以下であり、下記成分(C)および(D)の添加比率が、重量基準で、(C):(D)=1:3〜3:1である光導波路コア形成用液状感光性樹脂組成物を、第1の要旨とする。
(A)カチオン重合性化合物
(B)光酸発生剤
(C)ヒンダードフェノール系化合物からなる一次酸化防止剤
(D)亜リン酸エステル系化合物からなる二次酸化防止剤
(E)溶剤
【0010】
また、本発明は、光導波路のコアが、上記第1の要旨の光導波路コア形成用液状感光性樹脂組成物に紫外線を照射して硬化させた硬化体で形成されている光導波路を第2の要旨とし、この第2の要旨の光導波路を備えるフレキシブルプリント配線板を第3の要旨とする。
【0011】
本発明者らは、前記課題を解決するため鋭意研究を重ね、その結果、併用による効果の増大を目的として、パーオキシラジカル捕捉用の一次酸化防止剤(ヒンダードフェノール系化合物)と、一次酸化防止剤から発生するパーオキサイド分解用の二次酸化防止剤(亜リン酸エステル系化合物)とを添加した液状樹脂組成物においては、上記二次酸化防止剤として用いられる亜リン酸エステル化合物が、それ自体は酸性を示さないにも関わらず、水(水分)の存在下において加水分解反応が進行し、酸性化合物である「亜リン酸基」を生じて、これにより、液状樹脂組成物の経時的な粘度上昇が、引き起こされていることがわかった。そして、本発明者らは、上記知見から着想を得て、上記配合の液状樹脂組成物において、酸性化合物の生成の一方の原因である「組成物中の残存水分」を抑制または除去することにより、上記酸性化合物の生成を抑えて経時増粘を抑制できることを見出し、本発明に到達した。
【発明の効果】
【0012】
このように、本発明の光導波路コア形成用の液状感光性樹脂組成物は、(A)カチオン重合性化合物,(B)光酸発生剤,(C)ヒンダードフェノール系化合物からなる一次酸化防止剤,(D)亜リン酸エステル系化合物からなる二次酸化防止剤,(E)溶剤を含有する液状樹脂組成物において、成分混合後の組成全体に占める水分の割合(水分含有率X)が、0.005重量%以上0.5重量%以下であり、(C)ヒンダードフェノール系化合物からなる一次酸化防止剤、および(D)亜リン酸エステル系化合物からなる二次酸化防止剤の添加比率が、重量基準で、(C):(D)=1:3〜3:1である。そのため、この液状感光性樹脂組成物を用いて、ウェットコーティングにより光導波路のコアを形成する場合、貯蔵中または塗工中の液状樹脂組成物の増粘が抑えられ、コアを、当初の設計通りのコア厚みに形成することができる。また、本発明の光導波路コア形成用液状感光性樹脂組成物を用いれば、その性能にロット間のぶれがなく、寸法および品質の揃った高品質な光導波路を、効率(歩留り)良く低コストで製造することが可能になる。
【0013】
なお、本発明の光導波路コア形成用液状感光性樹脂組成物に使用する(E)溶剤は、その水分含有率Yが0.001重量%以上1.0重量%以下のものであることが好ましい。これにより、溶剤由来の水分の混入を、大幅に低減することができ、貯蔵中または塗工中の液状樹脂組成物の増粘を、より確実に抑えることができる。
【0014】
また、上記光導波路コア形成用液状感光性樹脂組成物に紫外線を照射して硬化させた硬化体で形成される光導波路、および、それを備えるフレキシブルプリント配線板も、光導波路に起因するトラブルが少なく、信頼性の高い装置またはシステム等を構築することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
つぎに、本発明の実施の形態について詳しく説明する。ただし、本発明は、この実施の形態に限定されるものではない。
【0016】
《光導波路コア形成用液状感光性樹脂組成物》
本発明の光導波路コア形成用液状感光性樹脂組成物(以下、単に「液状樹脂組成物」という場合もある。)は、(A)カチオン重合性化合物,(B)光酸発生剤,(C)ヒンダードフェノール系化合物,(D)亜リン酸エステル系化合物および(E)溶剤を含有するものであり、各成分混合後の液状樹脂組成物全体における水分含有率Xが、0.005重量%以上0.5重量%以下であり、(C)ヒンダードフェノール系化合物、および(D)亜リン酸エステル系化合物の添加比率が、重量基準で、(C):(D)=1:3〜3:1であることを特徴とする。
以下、各種成分について順に説明する。
【0017】
<カチオン重合性化合物>
上記カチオン重合性化合物としては、エポキシ化合物,オキセタン化合物およびエピスルフィド化合物等があげられる。
エポキシ化合物としては、例えば、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)−1−ブタノールの1,2−エポキシ−4−(2−オキシラニル)シクロヘキサン付加物等の多官能脂肪族エポキシ樹脂、3’,4’−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート等の脂肪族エポキシ樹脂があげられる。さらには、バインダー樹脂としての作用を奏する樹脂として、例えば、芳香環を有さない、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールF型エポキシ樹脂、等があげられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。
【0018】
具体的には、EHPE3150,EHPE3150CE(いずれもダイセル社製)、YX−8040、YX−8000、YX−8034(いずれも三菱化学社製)、ST−4000D(新日鐵化学社製)、セロキサイド2021P(ダイセル社製)等があげられる。なお、本発明においては、脂肪族エポキシ樹脂としては、脂環式エポキシ樹脂を含める趣旨である。そして、上記脂肪族系樹脂としては、固形を示すものであることが好ましく、この場合の固形とは、常温(25℃)の温度下において固体状態を呈することを意味する。
【0019】
つぎに、オキセタン化合物としては、具体的には、OXT−101(3―エチル―3―ヒドロキシメチルオキセタン(オキセタンアルコール)、OXT−212(2―エチルヘキシルオキセタン)、OXT−121(キシリレンビスオキセタン)、OXT−221(3―エチル―3{[(3―エチルオキセタン―3 ―イル)メトキシ]メチル}オキセタン)(いずれも東亞合成社製)、ETERNACOLL OXBP、EHO、OXTP、OXMA(いずれも宇部興産社製)等があげられる。なお、前記エポキシ化合物と上記オキセタン化合物とを混合して用いてもよい。
【0020】
また、カチオン重合性化合物として、エピスルフィド化合物を用いることもできる。エピスルフィド化合物としては、SR100H(日本合成化学工業社製)等があげられる。
【0021】
<光酸発生剤>(光重合開始剤)
上記光酸発生剤は、感光性樹脂組成物に対して光照射(例えば、紫外線照射)による硬化性を付与するために用いられるものである。光酸発生剤としては、例えば、ベンゾイン類、ベンゾインアルキルエーテル類、アセトフェノン類、アミノアセトフェノン類、アントラキノン類、チオキサントン類、ケタール類、ベンゾフェノン類、キサントン類、フォスフィンオキサイド類等の光酸発生剤(光カチオン硬化開始剤)があげられる。
【0022】
具体的には、トリフェニルスルホニウム・6フッ化アンチモン塩、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、1−〔4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル〕−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン、2−ヒドロキシ−1−{4−〔4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル〕フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1,2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−ホスフィンオキサイド、ビス(η5−2,4−シクロペンタジエン−1−イル)−ビス〔2,6−ジフルオロ−3(1H−ピロール−1−イル)−フェニル〕チタニウム、2−ヒドロキシ−1−{4−〔4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル〕フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オン等があげられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。なかでも、速い硬化速度や厚膜硬化性という観点から、トリフェニルスルホニウム・6フッ化アンチモン塩、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、2−ヒドロキシ−1−{4−〔4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル〕フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オンが、好適に使用される。
【0023】
上記光酸発生剤の含有量は、ワニス(液状樹脂組成物)の固形分100重量部に対して0.1〜3重量部に設定することが好ましく、より好ましくは0.1〜1重量部である。光酸発生剤(光重合開始剤)の含有量が少なすぎると、満足のいく光照射(紫外線照射)による光硬化性が得られにくく、多すぎると、光感度が上がり、コアのパターニングに際して、形状異常をきたす傾向がみられ、初期損失等の要求物性が悪化する傾向もみられる。
【0024】
また、上記の光酸発生剤の酸発生効率を向上させる目的で、光増感剤を併用してもよい。光増感剤としては、2−イソプロピルチオキサントン、ジエチルチオキサントン、クロロチオキサントン、アントラセン、ジメトキシアントラセン、ジブトキシアントラセン、ペリレン、フェノチアジン、アセトフェノン、ベンゾフェノン、ミヒラーケトン、ケトクマリン、エオシン等を用いることができる。
【0025】
上記光増感剤の含有量は、ワニス(液状樹脂組成物)の固形分100重量部に対して0.01〜1.0重量部に設定することが好ましく、より好ましくは0.05〜0.5重量部である。なお、光増感剤の含有量が少なすぎると、満足のいく光照射(紫外線照射)による光硬化性が得られにくく、多すぎると、コアのパターニングに際して形状異常をきたす傾向がみられ、初期損失等の要求物性が悪化する傾向もみられる。
【0026】
<ヒンダードフェノール系化合物> 一次酸化防止剤
一次酸化防止剤は、樹脂の酸化反応の初期段階において活性の高いパーオキシラジカルを捕捉し、やや安定なハイドロパーオキサイドを与える化合物である。その目的で、ヒンダードフェノール系化合物が、好適に用いられる。
【0027】
ヒンダードフェノール系化合物としては、具体的には、IRGANOX 1010、IRGANOX 1035、IRGANOX 1076、IRGANOX 1098、IRGANOX 1135、IRGANOX 1330、IRGANOX 1726、IRGANOX 1425 WL、IRGANOX 1520 L、IRGANOX 245、IRGANOX 259、IRGANOX 3114、IRGANOX 565、IRGAMOD 295(以上 BASFジャパン社製)、アデカスタブAO−20、AO−30、AO−40、AO−50、AO−60、AO−80、AO−330(以上 ADEKA社製)、スミライザーGA−80、MDP−S、WX−R、WX−RC(以上 住友化学社製)、Antage BHT、DAH、DBH、W−300、W−400、W−500、SP(川口化学工業社製)等があげられる。
【0028】
また、ヒンダードフェノール系化合物の添加量としては、ワニス(液状樹脂組成物)の固形分に対して0.1〜3.0重量%が好ましく、さらに好ましくは0.2〜1.0重量%である。この範囲よりも低い添加量では、酸化防止効果が低くなるため損失低下防止効果が見込めず、この範囲よりも高い添加量では、酸化防止剤が可塑剤として作用し、コア(樹脂層)の硬化を妨げるため好ましくない。
【0029】
<亜リン酸エステル化合物> 二次酸化防止剤
二次酸化防止剤は、樹脂の酸化反応を防止するために添加された一次酸化防止剤により生じたパーオキサイドを、分解するために添加される化合物である。この二者の併用により、高い酸化防止効果が得られる。二次酸化防止剤としては、リン系化合物やイオウ系化合物があるが、酸化防止効果の観点から、本発明では、リン系化合物のうち特に、亜リン酸エステル化合物を、好適に用いている。
【0030】
亜リン酸エステル化合物としては、具体的には、JP−360(トリフェニルホスファイト)、JP−351(トリスノニルフェニルホスファイト)、JP−3CP(トリクレジルホスファイト)、JP−302(トリエチルホスファイト)、JP−308E(トリス(2−エチルヘキシルホスファイト)、JP−310(トリデシルホスファイト)、JP−312L(トリラウリルホスファイト)、JP−333(トリス(トリデシル)ホスファイト)、JP−318−O(トリオレイルホスファイト)、JPM−308(ジフェニルモノ(2−エチルヘキシル)ホスファイト)、JPM−311(ジフェニルモノデシルホスファイト)、JPM−313(ジフェニルモノ(トリデシル)ホスファイト)、JPS−312(トリラウリルチオホスファイト)、JPP−613M、JA−805、JPP−88、JPE−10(ビス(デシル)ペンタエリスリトールジホスファイト)、JP−318E(トリステアリルホスファイト)、JPP−2000PT(ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト)、JP−650(トリス(2,4−ジ―tert−ブチルフェニル)ホスファイト)、JPH−3800(水添ビスフェノールA・ペンタエリスリトールホスファイトポリマー)、HBP(水添ビスフェノールAホスファイトポリマー)(以上 城北化学工業社製)、SANKO−HCA、SANKO−EPOCLEAN(三光社製)等があげられる。
【0031】
また、亜リン酸エステル化合物の添加量としては、ワニス(液状樹脂組成物)の固形分に対して0.1〜3.0重量%が好ましく、さらに好ましくは0.2〜1.0重量%である。この範囲よりも低い添加量では、酸化防止効果が低くなるため、損失低下防止効果が見込めず、この範囲よりも高い添加量では、酸化防止剤が可塑剤として作用し、コア(樹脂層)の硬化を妨げるため好ましくない。
【0032】
なお、前記ヒンダードフェノール系化合物(一次酸化防止剤)と上記亜リン酸エステル化合物(二次酸化防止剤)の添加比率(重量基準)としては、一次酸化防止剤:二次酸化防止剤が1:3〜3:1になるようにする必要がある
【0033】
<溶剤>
本発明の液状樹脂組成物(ワニス)に用いられる溶剤としては、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル等のグリコールエーテル類、メチルセロソルブアセテート等のエチレングリコールアルキルエーテルアセテート類、ジエチレングリコールモノメチルエーテル等のジエチレングリコール類、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート等のプロピレングリコールアルキルエーテルアセテート類、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルイミダゾリジノン等のアミド類、トルエン等の芳香族炭化水素類、シクロヘキサノン、シクロペンタノン等のケトン類、ガンマブチロラクトン等のラクトン類、2−ヒドロキシプロピオン酸、乳酸エチル等があげられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。
【0034】
上記溶剤の含有量は、ワニス(液状樹脂組成物)の固形分100重量部に対して10〜90重量部に設定することが好ましく、より好ましくは30〜80重量部である。なお、溶剤はワニスの粘度調整用であるため、ワニス調製後に、追加で添加される場合もある。
【0035】
そして、前記光導波路コア形成用液状感光性樹脂組成物の各成分(A)カチオン重合性化合物,(B)光酸発生剤,(C)ヒンダードフェノール系化合物,(D)亜リン酸エステル系化合物と、上記溶剤(E)とを混合した後、例えば、85℃加熱下にて撹拌完溶させ、その後室温(25℃)まで冷却した後、フィルタ等を用いた加熱加圧濾過を行なうことにより、本発明の光導波路のコア形成用材料となる「感光性のワニス」を、調製することができる。
【0036】
なお、上記溶剤添加後の液状樹脂組成物の状態において、含有水分量(水分含有率X)を低く抑えるには、組成中で水分を最も多く含むと考えられる「溶剤」から、混合前に、予め水分を取り除いておくことが望ましい。このようなことから、本発明で用いる溶剤としては、水分含有率Yが0.001重量%(10ppm)以上1.0重量%(10000ppm)以下の溶剤が、好適に用いられる。
【0037】
また、溶剤から水分を取り除く方法としては、例えば、乾燥剤(五酸化二リン、硫酸ナトリウム等)を系中に存在させた状態で減圧蒸留する方法や、乾燥剤(モレキュラーシーブ4A等)を詰めたカラムに通液させる、といった乾燥処理を行うことができる。また、充分に水分除去された(低水分率の)市販の脱水溶剤を用いてもよい。例えば、代表的なものとして、関東化学社製の乾燥DMF、DMAc、NMP(いずれも水分含有率50ppm以下)や、昭和電工社製の電子工業用乳酸エチル(水分含有率100ppm以下)等を用いることができる。
【0038】
<液状感光性樹脂組成物>
そして、先にも述べたように、上記カチオン重合性化合物,光酸発生剤,一次酸化防止剤(ヒンダードフェノール系化合物),二次酸化防止剤(亜リン酸エステル化合物)と、水分含有率Yが0.001重量%以上1.0重量%以下の上記溶剤とを混合した後の液状樹脂組成物全体における水分含有率Xは、0.005重量%以上0.5重量%以下になっている。上記組成物中の水分含有率Xの測定は、カールフィッシャー滴定等で行うことができる。
【0039】
なお、上記組成物中の水分含有率Xが、0.5重量%を上回る場合は、組成物に乾燥処理(加熱乾燥)を施してもよい。乾燥処理は、例えば、10〜20mmHgに減圧した真空乾燥機を用いて、30〜90℃で8〜24時間加熱乾燥する方法、等により行われる。
【0040】
《光導波路》
つぎに、本発明の液状感光性樹脂組成物をコアの形成材料として用いてなる光導波路について説明する。
【0041】
本発明により得られる光導波路は、例えば、基材と、その基材上に、所定パターンで形成されたクラッド層(アンダークラッド層)と、上記クラッド層上に、光信号を伝搬する光路として所定パターンで形成されたコアと、さらに、上記コア(層)上に形成されたクラッド層(オーバークラッド層)の構成からなる。そして、本発明により得られる光導波路では、上記コアが、前述の液状感光性樹脂組成物によって形成されていることが特徴である。
【0042】
また、上記アンダークラッド層形成材料およびオーバークラッド層形成材料に関しては、同じ成分組成からなるクラッド層形成用液状樹脂組成物を用いてもよいし、異なる成分組成の液状樹脂組成物を用いてもよい。なお、本発明により得られる光導波路において、上記クラッド層は、コアよりも屈折率が小さくなるよう形成する必要がある。
【0043】
本発明において、光導波路は、例えば、つぎのような工程を経由することにより製造することができる。すなわち、基材を準備し、その基材上に、クラッド層形成用材料である液状感光性樹脂組成物からなる感光性ワニスW2を塗工する。このワニスW2の塗工面に対して紫外線等の光照射を行い、さらに必要に応じて加熱処理を行なうことにより感光性ワニスW2を硬化させる。このようにしてアンダークラッド層(クラッド層の下方部分)を形成する。
【0044】
ついで、上記アンダークラッド層上に、本発明の液状感光性樹脂組成物からなるコア形成用材料(感光性ワニスW1)を塗工することにより、コア形成用の未硬化の樹脂層を形成する。このとき、上記コア形成用材料(感光性ワニスW1)を塗工した後、有機溶剤(溶媒)を加熱乾燥して除去することにより、未硬化の光導波路コア形成用樹脂層(液状)を、膜状(フィルム状)に形成できる。そして、このコア形成用未硬化層面上に、所定パターン(コアパターン)を露光させるためのフォトマスクを配設し、このフォトマスクを介して紫外線等の光照射を行い、さらに必要に応じて加熱処理を行う。その後、上記コア形成用未硬化層の未露光部分を、現像液を用いて溶解除去することにより、所定パターンのコアが形成される。
【0045】
つぎに、上記コア(層)上に、上述のクラッド層形成材料である液状感光性樹脂組成物からなる感光性ワニスW2を、再び塗工した後、紫外線照射等の光照射を行い、さらに必要に応じて加熱処理を行うことにより、オーバークラッド層(クラッド層の上方部分)を形成する。このような工程を経由することにより、目的とする光導波路を製造することができる。
【0046】
上記光導波路の作製に用いる基材としては、例えば、シリコンウェハ、金属製基板、高分子フィルム、ガラス基板等があげられる。そして、上記金属製基板としては、SUS等のステンレス板等があげられる。また、上記高分子フィルムとしては、具体的には、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリイミドフィルム等があげられる。そして、その厚みは、通常、10μm〜3mmの範囲内に設定される。
【0047】
また、上記光照射では、具体的には紫外線照射が行われる。上記紫外線照射での紫外線の光源としては、例えば、低圧水銀灯,高圧水銀灯,超高圧水銀灯等があげられる。また、紫外線の照射量は、通常、10〜20000mJ/cm2、好ましくは100〜15000mJ/cm2、より好ましくは500〜10000mJ/cm2程度である。
【0048】
上記紫外線照射による露光後、光反応による硬化を完結させるために、さらに加熱処理を施してもよい。上記加熱処理条件としては、通常、80〜250℃、好ましくは、100〜150℃にて、10秒〜2時間、好ましくは、5分〜1時間の範囲内で行われる。
【0049】
また、上記クラッド層形成用の材料としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、フッ素化エポキシ樹脂、エポキシ変性シリコーン樹脂等の各種液状エポキシ樹脂、固形エポキシ樹脂、さらには、前述の各種光酸発生剤を適宜含有する樹脂組成物があげられ、コア形成用材料と比較して、適宜、低屈折率となる配合設計が行われる。さらに、必要に応じてクラッド層形成用の材料をワニス(W2)として調製し塗工するため、塗工に好適な粘度が得られるように従来公知の各種有機溶剤、また、上記コア形成用材料を用いた光導波路としての機能を低下させない程度の、各種添加剤(酸化防止剤、密着付与剤、レベリング剤、UV吸収剤)を適量用いてもよい。
【0050】
上記クラッド層用ワニスW2の調製用に用いられる有機溶剤としては、例えば、乳酸エチル、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、エチルラクテート、2−ブタノン、N,N−ジメチルアセトアミド、ジグライム、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、プロピレングリコールメチルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、テトラメチルフラン、ジメトキシエタン等があげられる。これら有機溶剤は、単独でまたは2種類以上併用して、塗布に好適な粘度が得られるように、適量用いられる。
【0051】
なお、上記基材上における、各層の形成材料を用いての塗工方法としては、例えば、スピンコーター、コーター、円コーター、バーコーター等の塗工による方法や、スクリーン印刷、スペーサを用いてギャップを形成し、そのなかに毛細管現象により注入する方法、マルチコーター等の塗工機により、ロール・トゥ・ロールで連続的に塗工する方法等を用いることができる。また、上記光導波路は、上記基材を剥離除去することにより、フィルム状の光導波路(ポリマー光導波路)とすることも可能である。
【0052】
このようにして得られた光導波路は、本発明の光信号伝送用のフレキシブルプリント配線板用の光導波路として用いられる。
【実施例】
【0053】
つぎに、本発明を実施例にもとづいて説明する。ただし、本発明は、これら実施例に限定されるものではない。なお、例中、「部」とあるのは、断りのない限り重量基準を意味する。
【0054】
[実施例1]
まず、実施例となる光導波路の作製に先立ち、クラッド層形成材料の感光性ワニスW2、および、本発明のコア(層)形成材料である感光性ワニスW1を調製した。
【0055】
(クラッド層形成材料の調製):参考
遮光条件下にて、液状二官能フッ化アルキルエポキシ樹脂(H022、東ソーエフテック社製)50部、液状二官能脂環式エポキシ樹脂(セロキサイド2021P、ダイセル社製)50部、光酸発生剤(アデカオプトマーSP−170、ADEKA社製)4.0部、リン系酸化防止剤(HCA、三光社製)0.54部、シランカップリング剤(KBM−403、信越シリコーン社製)1部を混合し80℃加熱下にて撹拌完溶させ、その後室温(25℃)まで冷却した後、直径1.0μmのメンブランフィルタを用いて加熱加圧濾過を行なうことにより、クラッド層形成材料となる感光性ワニスW2を調製した。
【0056】
<コア形成材料の調製>
同様に、遮光条件下にて、固形多官能脂肪族エポキシ樹脂(EHPE3150、ダイセル社製)80部、固形水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂(YX―8040、三菱化学社製)20部、光酸発生剤(WPI−116、和光純薬工業社製)1.0部、ヒンダードフェノール系酸化防止剤(Songnox1010、共同薬品社製)0.5部、亜リン酸エステル系酸化防止剤(HCA、三光社製)0.5部を、乳酸エチル〔電子工業用 昭和電工社製 水分含有率80ppm(0.0080重量%)〕40部に混合し、85℃加熱下にて撹拌完溶させ、その後室温(25℃)まで冷却した後、直径1.0μmのメンブランフィルタを用い加熱加圧濾過を行なうことにより、コア形成材料となる感光性ワニスW1を調製した。調整後のワニスW1をカールフィッシャー水分滴定で分析したところ、水分含有量Xは0.02重量%であった。
【0057】
(アンダークラッド層の作製)
総厚22μm厚のFPC基材の裏面上に、得られたクラッドワニスW2を、スピンコーターにて塗工し、ホットプレート上で、溶剤を乾燥(130℃×10分)した後、5000mJ/cm2(I線フィルタ)のマスクパターン露光を行った。その後、130℃×10分のプレベーキングを行い、γ−ブチロラクトン中にて現像(室温下、3分)、水洗、ホットプレート上で水分を乾燥(120℃×10分)を順次行うことで、アンダークラッド層(厚み:15μm)を得た。
【0058】
<コアの作製>
ついで、得られたアンダークラッド層上に、コアワニスW1を、スピンコーターにて塗工し、ホットプレート上で、溶剤の乾燥(130℃×5分)を行った。得られた未硬化のコア層(膜状またはフィルム状)に、9000mJ/cm2(I線フィルタ)のマスクパターン露光を行い、130℃×10分のプレベーキングを行った。その後、γ−ブチロラクトン中にて現像(室温下、4分)、水洗、ホットプレート上で水分を乾燥(120℃×10分)を順次行うことにより、アンダークラッド層上に、所定パターン状のコア(厚み:50μm)を得た。
【0059】
[実施例2]
上記「コア形成材料の調整」において、溶剤としてシクロヘキサノン〔脱水処理,脱水処理後の水分含有率80ppm(0.008重量%)〕を使用したこと以外、上記実施例1と同様にして、光導波路のコアを作成した。なお、調整後のワニスW1をカールフィッシャー水分滴定で分析したところ、水分含有量Xは0.02重量%であった。
【0060】
[実施例3]
上記「コア形成材料の調整」において、溶剤としてプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート〔脱水処理,脱水処理後の水分含有率120ppm(0.012重量%)〕を使用したこと以外、上記実施例1と同様にして、光導波路のコアを作成した。なお、調整後のワニスW1をカールフィッシャー水分滴定で分析したところ、水分含有量Xは0.03重量%であった。
【0061】
[比較例1]
上記「コア形成材料の調整」において、溶剤として乳酸エチル(水分含有率1.1重量%)を使用したこと以外、上記実施例1と同様にして、光導波路のコアを作成した。なお、調整後のワニスW1をカールフィッシャー水分滴定で分析したところ、水分含有量Xは0.6重量%であった。
【0062】
[比較例2]
上記「コア形成材料の調整」において、溶剤としてシクロヘキサノン(水分含有率1.1重量%)を使用したこと以外、上記実施例1と同様にして、光導波路のコアを作成した。なお、調整後のワニスW1をカールフィッシャー水分滴定で分析したところ、水分含有量Xは0.6重量%であった。
【0063】
[比較例3]
上記「コア形成材料の調整」において、溶剤としてプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(水分含有率1.6重量%)を使用したこと以外、上記実施例1と同様にして、光導波路のコアを作成した。なお、調整後のワニスW1をカールフィッシャー水分滴定で分析したところ、水分含有量Xは1.0重量%であった。
【0064】
<コア形成材料の経時安定性試験>
各実施例および各比較例のワニスW1を、その作製直後にE型粘度計(東機産業社製 RE−80M)を用いて粘度を測定し、これを初期粘度Biとした。さらに同ワニスW1を室温(20℃)で120時間保管したのち粘度測定を行った。これを経時後粘度Bsとする。ここで、下記式(1)により、ワニスW1の経時粘度上昇率を算出した。
経時粘度上昇率ΔB(%)=(経時後粘度Bs−初期粘度Bi)/初期粘度Bi × 100・・(1)
その結果を下記の「表1」に示す。また、経時粘度上昇率(%)が、105%以下のものを「○」、105%を超えるものを「×」として、評価を記載した。
【0065】
【表1】
【0066】
上記「表1」より、使用する溶剤の水分含有率Yが1.0重量%超え、調整後のワニス(液状樹脂組成物)の水分含有量Xが0.5重量%を超える比較例1〜3の液状感光性樹脂組成物は、保管中または塗布中の経時増粘が進み、コア(層)のウェットコーティングの際に、問題を生じることが分かった。また、得られた光導波路コアの厚みも、設計値より厚くなる傾向がみられた。これに対して、実施例1〜3の光導波路コア形成用液状感光性樹脂組成物は、コア(層)のウェットコーティングに際しても、所定厚みで塗工することができ、得られた光導波路コアの厚みも、設計値どおりであった。
【0067】
<コアの塗布性評価>
前記「コアの作製」工程で、コアワニスW1をスピンコートで塗工して、乾燥(130℃×5分)した後の塗工層(膜)の表面状態を、各サンプルごとに、光学顕微鏡を用いて観察した。上記実施例1〜3の塗工層(膜)においては、ムラの無い、均一な膜面が得られていることが確認できた。これに対して、比較例1〜3の塗工層(膜)は、若干の表面荒れが見られた。
【0068】
<コア形成材料のパターン形成性評価>
前記「コアの作製」工程で得られたパターンコアを、各サンプルごとに、光学顕微鏡を用いて観察した。上記実施例1〜3の光導波路のコア(硬化体)は、設計通りの、矩形性の高い(エッジが鋭い、または、角の立った)シャープな形状であることが確認できた。これに対して、比較例1〜3の塗工層(膜)は、コアパターンのエッジまたは角部が、ややブロードになる傾向が見られた。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明の光導波路コア形成用液状感光性樹脂組成物は、光信号伝送用フレキシブルプリント配線板向けの光導波路のコアの形成材料として、特に有用である。そして、上記光導波路コア形成用液状感光性樹脂組成物を用いて作製される光導波路は、上記フレキシブルプリント配線板等に用いられる。