特許第6376561号(P6376561)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6376561
(24)【登録日】2018年8月3日
(45)【発行日】2018年8月22日
(54)【発明の名称】撮像レンズ
(51)【国際特許分類】
   G02B 13/00 20060101AFI20180813BHJP
   G02B 13/18 20060101ALI20180813BHJP
【FI】
   G02B13/00
   G02B13/18
【請求項の数】20
【全頁数】39
(21)【出願番号】特願2014-220092(P2014-220092)
(22)【出願日】2014年10月29日
(65)【公開番号】特開2016-85431(P2016-85431A)
(43)【公開日】2016年5月19日
【審査請求日】2017年9月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】391014055
【氏名又は名称】カンタツ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】橋本 雅也
【審査官】 堀井 康司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−179228(JP,A)
【文献】 特開2015−132664(JP,A)
【文献】 特開2015−132660(JP,A)
【文献】 特開2015−161871(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2015/0103414(US,A1)
【文献】 中国特許出願公開第104570280(CN,A)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0009843(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 9/00−17/08
G02B 21/02−21/04
G02B 25/00−25/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固体撮像素子上に被写体の像を結像する7枚のレンズで構成される撮像レンズであって、物体側から像側に向かって順に、開口絞りと、物体側に凸面を向けた正の屈折力を有する第1レンズと、負の屈折力を有する第2レンズと、正または負の屈折力を有する第3レンズと、正または負の屈折力を有する第4レンズと、正の屈折力を有する第5レンズと、負の屈折力を有する第6レンズと、物体側および像側に凹面を向けた両面が非球面の第7レンズとが、それぞれ間隔をおいて配置されて構成され、前記第3レンズから前記第6レンズはそれぞれ少なくとも1面に非球面が形成されており、前記第7レンズの像側の非球面上には光軸上以外の位置に変極点が形成されており、以下の条件式(1)、および(9)を満足することを特徴とする撮像レンズ。
(1)−1.0<f1/f2<−0.15
(9)40<νd4<75
ただし、
f1:第1レンズの焦点距離
f2:第2レンズの焦点距離
νd4:第4レンズのd線に対するアッベ数
【請求項2】
固体撮像素子上に被写体の像を結像する7枚のレンズで構成される撮像レンズであって、物体側から像側に向かって順に、開口絞りと、物体側に凸面を向けたメニスカス形状で正の屈折力を有する第1レンズと、負の屈折力を有する第2レンズと、正または負の屈折力を有する第3レンズと、像側に凸面を向けた正または負の屈折力を有する第4レンズと、像側に凸面を向けた負の屈折力を有する第5レンズと、正の屈折力を有し、光軸近傍で物体側に凸面を向けたメニスカス形状の第6レンズと、像側に凹面を向けた両面が非球面の第7レンズとが、それぞれ間隔をおいて配置されて構成され、前記第3レンズから前記第6レンズはそれぞれ少なくとも1面に非球面が形成されており、前記第7レンズの像側の非球面上には光軸上以外の位置に変極点が形成されており、以下の条件式(1)、および(5)を満足することを特徴とする撮像レンズ。
(1) −1.0<f1/f2<−0.15
(5)1.0<f6/f<3.0
ただし、
f1:第1レンズの焦点距離
f2:第2レンズの焦点距離
f:撮像レンズ全系の焦点距離
f6:第6レンズの焦点距離
【請求項3】
以下の条件式(2)を満足することを特徴とする請求項1に記載の撮像レンズ。
(2)0.5<f5/f<1.5
ただし、
f:撮像レンズ全系の焦点距離
f5:第5レンズの焦点距離
【請求項4】
以下の条件式(3)を満足することを特徴とする請求項1に記載の撮像レンズ。
(3)−8.0<f6/f<−1.0
ただし、
f:撮像レンズ全系の焦点距離
f6:第6レンズの焦点距離
【請求項5】
以下の条件式(4)を満足することを特徴とする請求項2に記載の撮像レンズ。
(4)−20<f5/f<−1.0
ただし、
f:撮像レンズ全系の焦点距離
f5:第5レンズの焦点距離
【請求項6】
以下の条件式(6)、(7)、(8)を満足することを特徴とする請求項1または2に記載の撮像レンズ。
(6)20<νd1−νd2<40
(7)40<νd3<75
(8)40<νd7<75
ただし、
νd1:第1レンズのd線に対するアッベ数
νd2:第2レンズのd線に対するアッベ数
νd3:第3レンズのd線に対するアッベ数
νd7:第7レンズのd線に対するアッベ数
【請求項7】
以下の条件式(10)を満足することを特徴とする請求項3またはに記載の撮像レンズ。
(10)20<|νd5−νd6|<40
ただし、
νd5:第5レンズのd線に対するアッベ数
νd6:第6レンズのd線に対するアッベ数
【請求項8】
以下の条件式(11)、(12)を満足することを特徴とする請求項5またはに記載の撮像レンズ。
(11)20<|νd4−νd5|<40
(12)40<νd6<75
ただし、
νd4:第4レンズのd線に対するアッベ数
νd5:第5レンズのd線に対するアッベ数
νd6:第6レンズのd線に対するアッベ数
【請求項9】
以下の条件式(13)、(14)を満足することを特徴とする請求項1または2に記載の撮像レンズ。
(13)1.0<TTL/f<1.35
(14)TTL/2ih<1.0
ただし、
f:撮像レンズ全系の焦点距離
TTL:フィルタ類を取り外した際の最も物体側に位置する光学素子の物体側の面から像面までの光軸上の距離(光学全長)
ih:最大像高
【請求項10】
以下の条件式(15)、(16)を満足することを特徴とする請求項1に記載の撮像レンズ。
(15)0.4<f345/f<1.2
(16)−1.0<f67/f<−0.3
ただし、
f:撮像レンズ全系の焦点距離
f345:第3レンズと第4レンズと第5レンズの合成焦点距離
f67:第6レンズと第7レンズの合成焦点距離
【請求項11】
以下の条件式(17)、(18)を満足することを特徴とする請求項2に記載の撮像レンズ。
(17)2.0<f345/f<8.0
(18)−6.0<f67/f<−2.0
ただし、
f:撮像レンズ全系の焦点距離
f345:第3レンズと第4レンズと第5レンズの合成焦点距離
f67:第6レンズと第7レンズの合成焦点距離
【請求項12】
前記第5レンズは、物体側に凹面を向けたメニスカス形状であることを特徴とする請求項1または2に記載の撮像レンズ。
【請求項13】
以下の条件式(19)を満足することを特徴とする請求項1に記載の撮像レンズ。
(19)0.8<(r9+r10)/(r9−r10)<2.5
ただし、
r9:第5レンズの物体側の面の曲率半径
r10:第5レンズの像側の面の曲率半径
【請求項14】
以下の条件式(20)を満足することを特徴とする請求項2に記載の撮像レンズ。
(20)−20.0<(r9+r10)/(r9−r10)<−4.0
ただし、
r9:第5レンズの物体側の面の曲率半径
r10:第5レンズの像側の面の曲率半径
【請求項15】
以下の条件式(21)を満足することを特徴とする請求項1または2に記載の撮像レンズ。
(21)f/EPD<2.40
ただし、
f:撮像レンズ全系の焦点距離
EPD:入射瞳直径
【請求項16】
前記第1レンズから前記第7レンズは、プラスチック材料で構成されており、全てのレンズ面には非球面が形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の撮像レンズ。
【請求項17】
固体撮像素子上に被写体の像を結像する7枚のレンズで構成される撮像レンズであって、物体側から像側に向かって順に、開口絞りと、物体側に凸面を向けたメニスカス形状で正の屈折力を有する第1レンズと、負の屈折力を有する第2レンズと、正または負の屈折力を有する第3レンズと、正または負の屈折力を有する第4レンズと、正の屈折力を有する第5レンズと、正または負の屈折力を有する第6レンズと、像側に凹面を向けた両面が非球面の第7レンズとが、それぞれ間隔をおいて配置されて構成され、前記第3レンズから前記第6レンズはそれぞれ少なくとも1面に非球面が形成されており、前記第7レンズの像側の非球面上には光軸以外の位置に変極点が形成されており、以下の条件式(1)、(9)、および(10)を満足することを特徴とする撮像レンズ。
(1)−1.0<f1/f2<−0.15
(9)40<νd4<75
(10)20<|νd5−νd6|<40
ただし、
f1:第1レンズの焦点距離
f2:第2レンズの焦点距離
νd4:第4レンズのd線に対するアッベ数
νd5:第5レンズのd線に対するアッベ数
νd6:第6レンズのd線に対するアッベ数
【請求項18】
以下の条件式(6)、(7)、および(8)を満足することを特徴とする請求項17に記載の撮像レンズ。
(6)20<νd1−νd2<40
(7)40<νd3<75
(8)40<νd7<75
ただし、
νd1:第1レンズのd線に対するアッベ数
νd2:第2レンズのd線に対するアッベ数
νd3:第3レンズのd線に対するアッベ数
νd7:第7レンズのd線に対するアッベ数
【請求項19】
以下の条件式(15)、(16)を満足することを特徴とする請求項17に記載の撮像レンズ。
(15)0.4<f345/f<1.2
(16)−1.0<f67/f<−0.3
ただし、
f:撮像レンズ全系の焦点距離
f345:第3レンズと第4レンズと第5レンズの合成焦点距離
f67:第6レンズと第7レンズの合成焦点距離
【請求項20】
以下の条件式(19)を満足することを特徴とする請求項17に記載の撮像レンズ。
(19)0.8<(r9+r10)/(r9−r10)<2.5
ただし、
r9:第5レンズの物体側の面の曲率半径
r10:第5レンズの像側の面の曲率半径
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、小型の撮像装置に使用されるCCDセンサやCMOSセンサの固体撮像素子上に被写体の像を結像させる撮像レンズに関し、特に、小型化、薄型化が進むスマートフォン、携帯電話機、タブレット、PDA(Personal Digital Assistant)等の携帯端末機器、ゲーム機やPC等の情報端末機器、カメラ機能が付加された家電製品等の高機能製品に搭載される撮像装置に内蔵する撮像レンズに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、多くの情報端末機器にカメラ機能が搭載されることが一般的になった。また、カメラ付きの家電製品も広く普及するようになり、例えばスマートフォンと家電製品とを接続させることで、リアルタイムに留守宅の監視をしたり、子供やペットの様子を確認したり、家電製品の運転状況を最適に制御することも可能になった。さらには、カメラ機能を備えたメガネや腕時計のように身体に装着して利用するウェアラブルデバイスも登場している。様々な製品にカメラ機能を融合させることで、今後益々消費者の利便性や満足度を追求した高付加価値商品の開発が発展していくものと考えられる。このような製品に搭載するカメラの性能は、高画素化に対応した高い解像力を備えることはもちろんのこと、小型で、低背であり、明るいレンズ系であることに加えて、広い画角に対応することも求められる。
【0003】
しかしながら、低背で明るく、さらに広画角の撮像レンズを得るには、画面周辺部における収差補正が困難であり、画面全体にわたって良好な結像性能を確保することには課題があった。
【0004】
7枚のレンズから成るレンズ構成は、最近の更なる高画素化に伴い6枚のレンズ構成では補正しきれない画面周辺部の諸収差をより好適に補正することができ、諸収差の良好な補正や撮像レンズの小型化、低F値化、広角化をバランスよく実現できる可能性を秘めている。こうした7枚構成の撮像レンズとしては、例えば、以下の特許文献1のような撮像レンズが知られている。
【0005】
特許文献1には、物体側から順に、両凸形状の第1レンズと、当該第1レンズに接合された両凹形状の第2レンズと、物体側に凸面を向けたメニスカス形状の負の第3レンズと、物体側に凹面を向けたメニスカス形状の正の第4レンズと、物体側に凸面を向けたメニスカス形状の負の第5レンズと、両凸形状の第6レンズと、両凹形状の第7レンズとが配置されて構成された撮像レンズが開示されている。この撮像レンズでは、前記第1レンズないし前記第4レンズで構成される前群の焦点距離と、前記第5レンズないし前記第7レンズで構成される後群の焦点距離との比を一定の範囲内に抑制することによって、光学系のより小型化を図りつつ、諸収差の良好な補正を実現する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2012−155223号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献1に記載の7枚構成の撮像レンズは、諸収差を良好に補正しつつ、F値は2.09から2.35で比較的明るく、また、画角は33°で比較的広い。しかし、光学全長が撮像素子の有効撮像面の対角線の長さよりも長く、小型化、薄型化が強く求められる機器への適用には課題が残る。また、このレンズ系で更なる広角と明るさを得ようとすると、周辺部の収差補正に限界が生じるため、画面全域にわたって結像の乱れを効果的に軽減しながら、高い画質を保つことは困難である。また、接合レンズは、芯出しや貼り合わせ等の難しさから高い精度の製造技術が要求されるため、高い生産性で大量に低コストで製造することは困難である。
【0008】
このように、従来の技術においては、低背化と広角化に対応し、且つ明るく、高解像度の撮像レンズを低コストで得ることは困難であった。
【0009】
本発明は、上述した課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、低背化の要求に十分応え、広い画角に対応し、十分な明るさを有し、諸収差が良好に補正された、小型の撮像レンズを低コストで提供することにある。
【0010】
なお、ここでいう低背とは、光学全長が撮像素子の有効撮像面の対角線の長さよりも短いレベルを指しており、広角とは全画角で70°以上のレベルを指している。なお、撮像素子の有効撮像面の対角線の長さとは、撮像レンズに入射した最大画角からの光線が撮像面に入射する位置の光軸から垂直な高さ、すなわち最大像高を半径とする有効撮像円の直径と同じものとして扱う。
【0011】
また、本発明において、凸面、凹面とは、近軸(光軸近傍)におけるレンズ面の形状を意味するものとする。また、非球面に形成される変極点とは、接平面が光軸と垂直に交わる非球面上の点を意味する。さらに、光学全長やバックフォーカスの値は、IRカットフィルタやカバーガラス等の光学素子を除去したときの光軸上の距離として定義する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するための本発明の第1の形態の撮像レンズは、固体撮像素子上に被写体の像を結像する7枚のレンズで構成される撮像レンズであって、物体側から像側に向かって順に、物体側に凸面を向けた正の屈折力を有する第1レンズと、負の屈折力を有する第2レンズと、正または負の屈折力を有する第3レンズと、正または負の屈折力を有する第4レンズと、正の屈折力を有する第5レンズと、負の屈折力を有する第6レンズと、像側に凹面を向けた両面が非球面の第7レンズとが、それぞれ間隔をおいて配置されて構成され、前記第3レンズから前記第6レンズはそれぞれ少なくとも1面に非球面が形成されており、前記第7レンズの像側の非球面上には光軸上以外の位置に変極点が形成されており、以下の条件式(1)、および(9)を満足する。
(1)−1.0<f1/f2<−0.15
(9)40<νd4<75
ただし、f1は第1レンズの焦点距離、f2は第2レンズの焦点距離、νd4は第4レンズのd線に対するアッベ数である。
また、上記目的を達成するための本発明の第2の形態の撮像レンズは、固体撮像素子上に被写体の像を結像する7枚のレンズで構成される撮像レンズであって、物体側から像側に向かって順に、物体側に凸面を向けた正の屈折力を有する第1レンズと、負の屈折力を有する第2レンズと、正または負の屈折力を有する第3レンズと、正または負の屈折力を有する第4レンズと、負の屈折力を有する第5レンズと、正または負の屈折力を有し、光軸近傍で物体側に凸面を向けたメニスカス形状の第6レンズと、像側に凹面を向けた両面が非球面の第7レンズとが、それぞれ間隔をおいて配置されて構成され、前記第3レンズから前記第6レンズはそれぞれ少なくとも1面に非球面が形成されており、前記第7レンズの像側の非球面上には光軸上以外の位置に変極点が形成されており、以下の条件式(1)を満足する。
(1)−1.0<f1/f2<−0.15
ただし、f1は第1レンズの焦点距離、f2は第2レンズの焦点距離である。
【0013】
上記7枚レンズ構成の撮像レンズは、第1レンズの屈折力を強めることで低背化を図り、第2レンズで球面収差および色収差を良好に補正する。第3レンズ、第4レンズ、第5レンズ、第6レンズはそれぞれ、少なくとも1面に非球面を形成し、適切な正または負の屈折力を与えることによって、低背化と広角化を維持しながら、非点収差、像面湾曲、歪曲収差等の軸外の諸収差を補正する。第7レンズは、像側に凹面を向けた正または負の屈折力を有するレンズであり、両面に形成した非球面によって、球面収差や周辺部の像面湾曲と歪曲収差の補正をする。また、第7レンズの像側の面は変極点を有する非球面形状になっているため、撮像素子への光線入射角度を適切なものとする。
【0014】
また、本発明では、接合レンズを用いずに全てのレンズを間隔を設けて配置することで、非球面数を増やせるよう配慮し、良好な収差補正による高性能化を目指している。
【0015】
条件式(1)は、第1レンズの焦点距離と第2レンズの焦点距離との関係を適切な範囲に規定するものであり、低背化を図りながら色収差を良好に補正するための条件である。条件式(1)の上限値を上回ると、第1レンズの屈折力が強くなりすぎるため、レンズ系全長の短縮化には有利となるが、第1レンズで発生する色収差を第2レンズで良好に補正することが困難となる。一方、条件式(1)の下限値を下回ると、第1レンズの屈折力が弱くなるため、レンズ系の全長を短く抑えることが困難となる。
【0016】
条件式(9)は、第4レンズのd線に対するアッベ数を規定するものであり、良好な色収差補正を行うための条件である。第4レンズに低分散な材料を用いることで倍率色収差の発生を抑制する。
【0017】
また、本発明の撮像レンズは、第5レンズが正の屈折力を有し、第6レンズが負の屈折力を有する場合、以下の条件式(2)を満足することが望ましい。
(2)0.5<f5/f<1.5
ただし、
f:撮像レンズ全系の焦点距離
f5:第5レンズの焦点距離
【0018】
条件式(2)は、第5レンズが正の屈折力、第6レンズが負の屈折力を有する場合において、第5レンズの焦点距離と撮像レンズ全系の焦点距離との関係を適切な範囲に規定するものであり、低背化を図りながら球面収差、コマ収差を良好に補正するための条件である。条件式(2)の上限値を上回ると、第5レンズの屈折力が弱くなり、光学系全長を短縮することが困難となる。一方、条件式(2)の下限値を下回ると、第5レンズの屈折力が強くなりすぎ、光学系全長の短縮化には有利となるものの、球面収差やコマ収差が大きくなり、補正が困難となるため好ましくない。
【0019】
また、本発明の撮像レンズは、第5レンズが正の屈折力を有し、第6レンズが負の屈折力を有する場合、以下の条件式(3)を満足することが望ましい。
(3)−8.0<f6/f<−1.0
ただし、
f:撮像レンズ全系の焦点距離
f6:第6レンズの焦点距離
【0020】
条件式(3)は、第5レンズが正の屈折力、第6レンズが負の屈折力を有する場合において、第6レンズの焦点距離と撮像レンズ全系の焦点距離との関係を適切な範囲に規定するものであり、低背化を図りながら色収差を良好に補正するための条件である。条件式(3)の上限値を上回ると、第6レンズの負の屈折力が強くなりすぎ、光学系全長の短縮が困難となる。一方、条件式(3)の下限値を下回ると、第6レンズの負の屈折力が弱くなりすぎ、色収差の十分な補正が困難になる。
【0021】
また、本発明の撮像レンズは、第5レンズが負の屈折力を有し、第6レンズが正の屈折力を有する場合、以下の条件式(4)を満足することが望ましい。
(4)−20<f5/f<−1.0
ただし、
f:撮像レンズ全系の焦点距離
f5:第5レンズの焦点距離
【0022】
条件式(4)は、第5レンズが負の屈折力、第6レンズが正の屈折力を有する場合において、第5レンズの焦点距離と撮像レンズ全系の焦点距離との関係を適切な範囲に規定するものであり、低背化を図りながら非点収差、像面湾曲を良好に補正するための条件である。条件式(4)の上限値を上回ると、第5レンズの負の屈折力が強くなりすぎ、光学系全長の短縮を図ることが困難となる。一方、条件式(4)の下限値を下回ると、第5レンズの負の屈折力が弱くなりすぎ、非点収差、像面湾曲の補正が困難となる
【0023】
また、本発明の撮像レンズは、第5レンズが負の屈折力を有し、第6レンズが正の屈折力を有する場合、以下の条件式(5)を満足することが望ましい。
(5)1.0<f6/f<3.0
ただし、
f:撮像レンズ全系の焦点距離
f6:第6レンズの焦点距離
【0024】
条件式(5)は、第5レンズが負の屈折力、第6レンズが正の屈折力を有する場合において、第6レンズの焦点距離と撮像レンズ全系の焦点距離との関係を適切な範囲に規定するものであり、低背化を図りながら球面収差、歪曲収差を良好に補正するための条件である。条件式(5)の上限値を上回ると、第6レンズの正の屈折力が弱くなり、光学系全長の短縮が困難となる。一方、条件式(5)の下限値を下回ると、第6レンズの正の屈折力が強くなりすぎ、光学系全長の短縮化には有利であるが、球面収差や歪曲収差が大きくなり、補正が困難となるため好ましくない。
【0025】
また、本発明の撮像レンズは、以下の条件式(6)から(8)を満足することが望ましい。
(6)20<νd1−νd2<40
(7)40<νd3<75
(8)40<νd7<75
ただし、
νd1:第1レンズのd線に対するアッベ数
νd2:第2レンズのd線に対するアッベ数
νd3:第3レンズのd線に対するアッベ数
νd7:第7レンズのd線に対するアッベ数
【0026】
条件式(6)から(8)は、第1レンズから第3レンズ、および第7レンズのd線に対するアッベ数を規定するものであり、良好な色収差補正を行うための条件である。条件式(6)は、第1レンズに低分散な材料を、第2レンズに高分散な材料を用いることで、第1レンズで発生する色収差を良好に補正することを示すものである。また、条件式(7)および条件式(8)は、第3レンズと第7レンズに低分散な材料を用いることで倍率色収差の発生を抑制することを示すものである。
【0027】
また、本発明の撮像レンズは、第5レンズが正の屈折力を有する場合、以下の条件式(10)を満足することが望ましい。
(10)20<|νd5−νd6|<40
ただし、
νd5:第5レンズのd線に対するアッベ数
νd6:第6レンズのd線に対するアッベ数
【0028】
条件式(10)は、第5レンズおよび第6レンズのd線に対するアッベ数を規定するものであり、良好な色収差補正を行うための条件である。第5レンズと第6レンズに低分散な材料と高分散な材料を組み合わせることで、倍率色収差や軸上色収差の発生を抑制する。
【0029】
また、本発明の撮像レンズは、第5レンズが負の屈折力を有する場合、以下の条件式(11)および(12)を満足することが望ましい。
(11)20<|νd4−νd5|<40
(12)40<νd6<75
ただし、
νd4:第4レンズのd線に対するアッベ数
νd5:第5レンズのd線に対するアッベ数
νd6:第6レンズのd線に対するアッベ数
【0030】
条件式(11)は、第4レンズおよび第5レンズのd線に対するアッベ数を規定するものであり、良好な色収差補正を行うための条件である。第4レンズと第5レンズに低分散な材料と高分散な材料を組み合わせることで、倍率色収差や軸上色収差の発生を抑制する。
【0031】
条件式(12)は、第6レンズのd線に対するアッベ数を規定するものであり、良好な色収差補正を行うための条件である。第6レンズに低分散な材料を用いることで倍率色収差の発生を抑制する。
【0032】
なお、条件式(6)から(12)の範囲となる材料は、安価なプラスチック材料の選択が可能であることをも示すものであり、撮像レンズの低コスト化を容易にする。
【0033】
また、本発明の撮像レンズは、以下の条件式(13)および(14)を満足することが望ましい。
(13)1.0<TTL/f<1.35
(14)TTL/2ih<1.0
ただし、
f:撮像レンズ全系の焦点距離
TTL:フィルタ類を取り外した際の最も物体側に位置する光学素子の物体側の面から像面までの光軸上の距離(光学全長)
ih:最大像高
【0034】
条件式(13)は、光学全長と撮像レンズ全系の焦点距離との関係を適切な範囲に規定するものであり、低背化を図りながら諸収差を良好に補正するための条件である。条件式(13)の上限値を上回ると、光学全長が長くなるため、各レンズの形状に対する自由度が向上して諸収差を補正しやすくなるが、低背化が困難となる。一方、条件式(13)の下限値を下回ると、光学全長が短くなりすぎ、各レンズが形状的な制約を受けるとともに、諸収差の補正も困難となる。
【0035】
条件式(14)は、光学全長と最大像高の関係を規定するものであり、撮像レンズの低背化を実現するための条件である。条件式(14)の上限値を下回ると、光学全長が撮像素子の有効撮像面の対角線の長さよりも短くなり、近年の低背化の要求に十分応える撮像レンズを得ることができる。
【0036】
また、本発明の撮像レンズは、第5レンズが正の屈折力を有し、第6レンズが負の屈折力を有する場合、以下の条件式(15)および(16)を満足することが望ましい。
(15)0.4<f345/f<1.2
(16)−1.0<f67/f<−0.3
ただし、
f:撮像レンズ全系の焦点距離
f345:第3レンズと第4レンズと第5レンズの合成焦点距離
f67:第6レンズと第7レンズの合成焦点距離
【0037】
条件式(15)は、第3レンズと第4レンズと第5レンズの合成焦点距離と、撮像レンズ全系の焦点距離との関係を適切な範囲に規定するものであり、低背化を図りながら球面収差、コマ収差を良好に補正するための条件である。条件式(15)の上限値を上回ると、第3レンズと第4レンズと第5レンズの合成屈折力が弱くなり、光学系全長の短縮が困難となる。一方、条件式(15)の下限値を下回ると、第3レンズと第4レンズと第5レンズの合成屈折力が強くなりすぎ、光学系全長の短縮には有利となるものの、球面収差やコマ収差が大きくなり、補正が困難となるため好ましくない。
【0038】
条件式(16)は、第6レンズと第7レンズの合成焦点距離と、撮像レンズ全系の焦点距離との関係を適切な範囲に規定するものであり、低背化を図りながら色収差を良好に補正するための条件である。条件式(16)の上限値を上回ると、第6レンズと第7レンズの負の合成屈折力が強くなりすぎ、光学系全長の短縮が困難となる。一方、条件式(16)の下限値を下回ると、第6レンズと第7レンズの負の合成屈折力が弱くなりすぎ、色収差を良好に補正することが困難となる。条件式(15)、(16)の範囲内にすることで、低背化を維持し、第3レンズと第4レンズと第5レンズで発生する収差を、第6レンズと第7レンズで好適に補正することができる。
【0039】
また、本発明の撮像レンズは、第5レンズが負の屈折力を有し、第6レンズが正の屈折力を有する場合、以下の条件式(17)および(18)を満足することが望ましい。
(17)2.0<f345/f<8.0
(18)−6.0<f67/f<−2.0
ただし、
f:撮像レンズ全系の焦点距離
f345:第3レンズと第4レンズと第5レンズの合成焦点距離
f67:第6レンズと第7レンズの合成焦点距離
【0040】
条件式(17)は、第3レンズと第4レンズと第5レンズの合成焦点距離と、撮像レンズ全系の焦点距離との関係を適切な範囲に規定するものであり、低背化を図りながら球面収差、コマ収差を良好に補正するための条件である。条件式(17)の上限値を上回ると、第3レンズと第4レンズと第5レンズの合成屈折力が弱くなり、光学系全長の短縮が困難となる。一方、条件式(17)の下限値を下回ると、第3レンズと第4レンズと第5レンズの合成屈折力が強くなりすぎ、光学系全長の短縮には有利となるものの、球面収差やコマ収差が大きくなり、補正が困難となるため好ましくない。
【0041】
条件式(18)は、第6レンズと第7レンズの合成焦点距離と、撮像レンズ全系の焦点距離との関係を適切な範囲に規定するものであり、低背化を図りながら色収差を良好に補正するための条件である。条件式(18)の上限値を上回ると、第6レンズと第7レンズの負の合成屈折力が強くなりすぎ、光学全長が長くなるため好ましくない。一方、条件式(18)の下限値を下回ると、第6レンズと第7レンズの負の合成屈折力が弱くなりすぎ、色収差を良好に補正することが困難となる。条件式(17)、(18)の範囲内にすることで、低背化を維持し、光学性能の向上を図ることが出来る。
【0042】
また、本発明の撮像レンズは、第5レンズが物体側に凹面を向けたメニスカス形状であることが望ましい。第5レンズを物体側に凹面を向けたメニスカス形状とすることで、第5レンズから射出する軸外光線の射出角を小さく抑えながら第6レンズに入射させることが容易になるため、軸外の諸収差、主に非点収差、像面湾曲を良好に補正する。
【0043】
また、本発明の撮像レンズは、第5レンズが正の屈折力を有する場合、以下の条件式(19)を満足することが望ましい。
(19)0.8<(r9+r10)/(r9−r10)<2.5
ただし、
r9:第5レンズの物体側の面の曲率半径
r10:第5レンズの像側の面の曲率半径
【0044】
条件式(19)は、第5レンズが正の屈折力を有する場合において、第5レンズの物体側の面と像側の面の曲率半径の関係を適切な範囲に規定するものであり、諸収差を良好に補正するための条件である。条件式(19)の上限値を上回ると、第5レンズの像側の面の屈折力が弱くなりすぎ、像面湾曲等の高次収差を抑えることが困難となる。一方、条件式(19)の下限値を下回ると、第5レンズの像側の面の屈折力が強くなりすぎ、周辺部における歪曲収差を補正することが困難となる。
【0045】
また、本発明の撮像レンズは、第5レンズが負の屈折力を有する場合、以下の条件式(20)を満足することが望ましい。
(20)−20.0<(r9+r10)/(r9−r10)<−4.0
ただし、
r9:第5レンズの物体側の面の曲率半径
r10:第5レンズの像側の面の曲率半径
【0046】
条件式(20)は、第5レンズが負の屈折力を有する場合において、第5レンズの物体側の面と像側の面の曲率半径の関係を適切な範囲に規定するものであり、諸収差を良好に補正するための条件である。条件式(20)の上限値を上回ると、第5レンズの物体側の面の屈折力が強くなりすぎ、非点収差、歪曲収差の補正が困難となる。一方、条件式(20)の下限値を下回ると、第5レンズの物体側の面の屈折力が弱くなりすぎ、像面湾曲およびコマ収差の補正が困難になり好ましくない。条件式(20)の範囲内にすることで、コマ収差、像面湾曲、非点収差、歪曲収差の補正が容易になる。
【0047】
また、本発明の撮像レンズは、以下の条件式(21)を満足することが望ましい。
(21)f/EPD<2.40
ただし、
f:撮像レンズ全系の焦点距離
EPD:入射瞳直径
【0048】
条件式(21)は撮像レンズ系の明るさを決定するための条件であり、いわゆるF値に相当するものである。撮像素子は画素サイズが小さくなる程、撮像レンズから取り込める光量が低下する傾向になるため、明るい画像を得ることが困難になりやすい。この問題を撮像素子側で感度を上げて対応しようとすると、ノイズ等の発生により、画質の劣化が起こりやすくなる。従って、撮像レンズ側から出射する光量を増やすことが有効な手段となる。条件式(21)の範囲を満足することで、近年の高密度化された撮像素子への適応が可能になる。
【0049】
また、本発明の撮像レンズは、第1レンズから第7レンズがプラスチック材料で構成されており、全てのレンズ面には非球面が形成されていることが望ましい。全てのレンズにプラスチック材料を使用することで、安定した非球面形状を形成したレンズの大量生産が可能となり、低コスト化が望める。また、全てのレンズ面に非球面を形成することで、諸収差を良好に補正することが出来る。
【発明の効果】
【0050】
本発明により、低背化の要求に十分応え、広い画角に対応し、十分な明るさを有し、諸収差が良好に補正された、小型の撮像レンズを低コストで提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
図1】本発明の実施形態に係る実施例1の撮像レンズの概略構成を示す図である。
図2】本発明の実施形態に係る実施例1の撮像レンズの球面収差、非点収差、歪曲収差を示す図である。
図3】本発明の実施形態に係る実施例2の撮像レンズの概略構成を示す図である。
図4】本発明の実施形態に係る実施例2の撮像レンズの球面収差、非点収差、歪曲収差を示す図である。
図5】本発明の実施形態に係る実施例3の撮像レンズの概略構成を示す図である。
図6】本発明の実施形態に係る実施例3の撮像レンズの球面収差、非点収差、歪曲収差を示す図である。
図7】本発明の実施形態に係る実施例4の撮像レンズの概略構成を示す図である。
図8】本発明の実施形態に係る実施例4の撮像レンズの球面収差、非点収差、歪曲収差を示す図である。
図9】本発明の実施形態に係る実施例5の撮像レンズの概略構成を示す図である。
図10】本発明の実施形態に係る実施例5の撮像レンズの球面収差、非点収差、歪曲収差を示す図である。
図11】本発明の実施形態に係る実施例6の撮像レンズの概略構成を示す図である。
図12】本発明の実施形態に係る実施例6の撮像レンズの球面収差、非点収差、歪曲収差を示す図である。
図13】本発明の実施形態に係る実施例7の撮像レンズの概略構成を示す図である。
図14】本発明の実施形態に係る実施例7の撮像レンズの球面収差、非点収差、歪曲収差を示す図である。
図15】本発明の実施形態に係る実施例8の撮像レンズの概略構成を示す図である。
図16】本発明の実施形態に係る実施例8の撮像レンズの球面収差、非点収差、歪曲収差を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0052】
以下、本発明に係る実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。図1図3図5図7図9図11図13、および図15はそれぞれ、本実施形態の実施例1から実施例8に係る撮像レンズの概略構成図を示している。何れの実施例も基本的なレンズ構成は同様であるため、ここでは主に実施例1の概略構成図を参照しながら、本実施形態の撮像レンズの構成について説明する。
【0053】
図1に示すように、本実施の形態に係る撮像レンズは、固体撮像素子上に被写体の像を結像する7枚のレンズで構成される撮像レンズであって、物体側から像側に向かって順に、物体側に凸面を向けた正の屈折力を有する第1レンズL1と、負の屈折力を有する第2レンズL2と、正の屈折力を有する第3レンズL3と、負の屈折力を有する第4レンズL4と、正の屈折力を有する第5レンズL5と、負の屈折力を有する第6レンズL6と、像側に凹面を向けた両面が非球面の第7レンズL7とが、それぞれ間隔をおいて配置されて構成され、第3レンズL3から第6レンズL6はそれぞれ少なくとも1面に非球面が形成されており、第7レンズL7の像側の非球面上には光軸X上以外の位置に変極点が形成されている。
【0054】
また、第7レンズL7と撮像面IMGとの間には、赤外線カットフィルタ等のフィルタIRが配置されている。なお、このフィルタIRは省略することも可能である。本実施形態に係る撮像レンズの光学全長やバックフォーカスの値は、フィルタIRを除去したときの光軸X上の距離として定義する。
【0055】
また、開口絞りSTは第1レンズL1の物体側に配置されている。
【0056】
本実施形態において、第1レンズL1は物体側および像側が凸面の両凸形状であり、強い正の屈折力を与えることで低背化が図られている。なお、第1レンズL1の形状は、物体側の面が凸形状であればよく、図5図7図9図13図15に示す実施例3、実施例4、実施例5、実施例7、実施例8のように物体側に凸面を向けたメニスカス形状であっても良い。
【0057】
第2レンズL2は、物体側に凸面を向けたメニスカス形状で負の屈折力を有し、両面に非球面が形成されたレンズであり、第1レンズL1で発生する球面収差および色収差を良好に補正している。なお、第2レンズL2は負の屈折力であればよく、図7に示す実施例4のように物体側と像側に凹面を向けた両凹形状や、図9に示す実施例5のように物体側に凹面を向けたメニスカス形状であっても良い。
【0058】
第3レンズL3は、物体側および像側が凸面の両凸形状で正の屈折力を有し、両面に非球面が形成されたレンズである。なお、第3レンズL3の形状は両凸形状に限らず、図5に示す実施例3のように物体側に凹面を向けたメニスカス形状や、図9に示す実施例5のように物体側に凸面を向けたメニスカス形状や、図15に示す実施例8のように物体側と像側に凹面を向けた両凹形状であっても良い。また、第3レンズL3の屈折力は正に限定されない。図15に示す実施例8では、第3レンズL3の屈折力が負になる例である。
【0059】
第4レンズL4は、物体側に凹面を向けたメニスカス形状で負の屈折力を有し、両面に非球面が形成されたレンズである。なお、第4レンズL4の屈折力は負に限定されない。図9に示す実施例5は物体側に凸面を向けたメニスカス形状で正の屈折力を有する例であり、図15に示す実施例8は物体側と像側に凸面を向けた両凸形状で正の屈折力を有する例である。
【0060】
第5レンズL5は、物体側に凹面を向けたメニスカス形状で正の屈折力を有し、両面に非球面が形成されたレンズである。なお、第5レンズL5の屈折力は正に限定されない。図13図15に示す実施例7、実施例8は物体側に凹面を向けたメニスカス形状で負の屈折力を有する例である。
【0061】
第6レンズL6は、物体側と像側に凹面を向けた両凹形状で負の屈折力を有し、両面に非球面が形成されたレンズである。なお、第6レンズL6の屈折力は負に限定されない。図13図15に示す実施例7、実施例8は物体側に凸面を向けたメニスカス形状で正の屈折力を有する例である。
【0062】
第3レンズL3から第6レンズL6に、適切な正または負の屈折力を与え、かつそれぞれの面を非球面で形成することによって、低背化を維持しながら、非点収差、像面湾曲、歪曲収差等の軸外の諸収差を良好に補正している。
【0063】
第7レンズL7は、物体側と像側に凹面を向けた両凹形状で負の屈折力を有し、両面に非球面が形成されたレンズである。両面に形成した非球面は、球面収差や周辺部の像面湾曲と歪曲収差を補正している。また、第7レンズL7の像側の面は変極点を有する非球面形状になっているため、撮像素子IMGへの光線入射角度を適切なものとしている。なお、第7レンズL7の形状は両凹形状に限定されない。図5図13に示す実施例3、実施例7は物体側に凸面を向けたメニスカス形状になる例である。
【0064】
本実施形態の7枚レンズ構成の撮像レンズは、第1レンズL1、第2レンズL2を一つのレンズ群として見たときに、合成の屈折力が正となり、第3レンズL3、第4レンズL4、第5レンズL5を一つのレンズ群として見たときに、合成屈折力が正となり、第6レンズL6、第7レンズL7を一つのレンズ群として見たときに、合成屈折力が負となる構成を採っている。従って、物体側から順に、正、正、負で配列された、いわゆるテレフォトタイプになっており、低背化を図る上で有利な構成としている。
【0065】
また、本実施形態の撮像レンズにおいて、開口絞りSTは第1レンズL1の物体側に配置されている。そのため、射出瞳位置が撮像面IMGから遠ざかることで、テレセントリック性が確保され、画面周辺部における光量の低下を防止している。
【0066】
さらに、本実施形態の撮像レンズは、全てのレンズにプラスチック材料を採用することで製造を容易にし、低コストでの大量生産を可能にしている。また、全てのレンズの両面に適切な非球面を形成しており、諸収差をより好適に補正している。
【0067】
本実施形態における撮像レンズは、第5レンズL5が正の屈折力、第6レンズL6が負の屈折力の組合せの場合、以下の条件式(1)から(3)、条件式(6)から(10)、条件式(13)から(16)、条件式(19)、および条件式(21)を満足することにより、好ましい効果を奏し、第5レンズL5が負の屈折力、第6レンズL6が正の屈折力の組合せの場合、以下の条件式(1)、条件式(4)から(8)、条件式(11)から(14)、条件式(17)、条件式(18)、条件式(20)、および条件式(21)を満足することにより、好ましい効果を奏する。
(1)−1.0<f1/f2<−0.15
(2)0.5<f5/f<1.5
(3)−8.0<f6/f<−1.0
(4)−20<f5/f<−1.0
(5)1.0<f6/f<3.0
(6)20<νd1−νd2<40
(7)40<νd3<75
(8)40<νd7<75
(9)40<νd4<75
(10)20<|νd5−νd6|<40
(11)20<|νd4−νd5|<40
(12)40<νd6<75
(13)1.0<TTL/f<1.35
(14)TTL/2ih<1.0
(15)0.4<f345/f<1.2
(16)−1.0<f67/f<−0.3
(17)2.0<f345/f<8.0
(18)−6.0<f67/f<−2.0
(19)0.8<(r9+r10)/(r9−r10)<2.5
(20)−20.0<(r9+r10)/(r9−r10)<−4.0
(21)f/EPD<2.40
ただし、
f:撮像レンズ全系の焦点距離
f1:第1レンズL1の焦点距離
f2:第2レンズL2の焦点距離
f5:第5レンズL5の焦点距離
f6:第6レンズL6の焦点距離
f345:第3レンズL3と第4レンズL4と第5レンズL5の合成焦点距離
f67:第6レンズL6と第7レンズL7の合成焦点距離
νd1:第1レンズL1のd線に対するアッベ数
νd2:第2レンズL2のd線に対するアッベ数
νd3:第3レンズL3のd線に対するアッベ数
νd4:第4レンズL4のd線に対するアッベ数
νd5:第5レンズL5のd線に対するアッベ数
νd6:第6レンズL6のd線に対するアッベ数
νd7:第7レンズL7のd線に対するアッベ数
r9:第5レンズL5の物体側の面の曲率半径
r10:第5レンズL5の像側の面の曲率半径
TTL:フィルタIRを取り外した際の最も物体側に位置する光学素子の物体側の面から撮像面IMGまでの光軸X上の距離(光学全長)
ih:最大像高
EPD:入射瞳直径
【0068】
また、本実施形態における撮像レンズは、第5レンズL5が正の屈折力、第6レンズL6が負の屈折力の組合せの場合、以下の条件式(1a)から(3a)、条件式(6a)から(10a)、条件式(13a)から(16a)、条件式(19a)、および条件式(21a)を満足することにより、より好ましい効果を奏し、第5レンズL5が負の屈折力、第6レンズL6が正の屈折力の組合せの場合、以下の条件式(1a)、条件式(4a)から(8a)、条件式(11a)から(14a)、条件式(17a)、条件式(18a)、条件式(20a)、および条件式(21a)を満足することにより、より好ましい効果を奏する。
(1a)−0.80<f1/f2<−0.20
(2a)0.7<f5/f<1.3
(3a)−6.5<f6/f<−2.0
(4a)−19<f5/f<−2.0
(5a)1.4<f6/f<2.4
(6a)24<νd1−νd2<36
(7a)45<νd3<65
(8a)45<νd7<65
(9a)45<νd4<65
(10a)24<|νd5−νd6|<36
(11a)24<|νd4−νd5|<36
(12a)45<νd6<65
(13a)1.1<TTL/f<1.32
(14a)TTL/2ih<0.95
(15a)0.6<f345/f<1.0
(16a)−0.8<f67/f<−0.4
(17a)3.0<f345/f<7.0
(18a)−5.0<f67/f<−2.5
(19a)0.9<(r9+r10)/(r9−r10)<2.3
(20a)−19.0<(r9+r10)/(r9−r10)<−5.0
(21a)f/EPD<2.20
ただし、各条件式の符号は前の段落での説明と同様である。
【0069】
さらに、本実施形態における撮像レンズは、第5レンズL5が正の屈折力、第6レンズL6が負の屈折力の組合せの場合、以下の条件式(1b)から(3b)、条件式(6b)から(10b)、条件式(13b)から(16b)、条件式(19b)、および条件式(21b)を満足することにより、特に好ましい効果を奏し、第5レンズL5が負の屈折力、第6レンズL6が正の屈折力の組合せの場合、以下の条件式(1b)、条件式(4b)から(8b)、条件式(11b)から(14b)、条件式(17b)、条件式(18b)、条件式(20b)、および条件式(21b)を満足することにより、特に好ましい効果を奏する。
(1b)−0.63≦f1/f2≦−0.31
(2b)0.92≦f5/f≦1.14
(3b)−5.07≦f6/f≦−2.98
(4b)−17.70≦f5/f≦−3.36
(5b)1.77≦f6/f≦1.84
(6b)28<νd1−νd2<34
(7b)50<νd3<60
(8b)50<νd7<60
(9b)50<νd4<60
(10b)28<|νd5−νd6|<32
(11b)28<|νd4−νd5|<34
(12b)50<νd6<60
(13b)1.23≦TTL/f≦1.28
(14b)TTL/2ih≦0.89
(15b)0.78≦f345/f≦0.88
(16b)−0.67≦f67/f≦−0.59
(17b)4.11≦f345/f≦6.30
(18b)−4.00≦f67/f≦−3.16
(19b)0.97≦(r9+r10)/(r9−r10)≦2.10
(20b)−17.23≦(r9+r10)/(r9−r10)≦−6.98
(21b)f/EPD≦2.08
ただし、各条件式の符号は前々段落での説明と同様である。
【0070】
本実施形態では、すべてのレンズ面を非球面で形成している。これらのレンズ面に採用する非球面形状は光軸方向の軸をZ、光軸に直交する方向の高さをH、円錐係数をk、非球面係数をA4、A6、A8、A10、A12、A14、A16としたとき数式1により表わされる。
【0071】
【数1】
【0072】
次に、本実施形態に係る撮像レンズの実施例を示す。各実施例において、fは撮像レンズ全系の焦点距離を、FnoはFナンバーを、ωは半画角を、ihは最大像高を、TTLは光学全長をそれぞれ示す。また、iは物体側から数えた面番号、rは曲率半径、dは光軸X上のレンズ面間の距離(面間隔)、Ndはd線(基準波長)の屈折率、νdはd線に対するアッベ数をそれぞれ示す。なお、非球面に関しては、面番号iの後に*(アスタリスク)の符号を付加して示す。
【実施例1】
【0073】
基本的なレンズデータを以下の表1に示す。
【表1】
【0074】
実施例1の撮像レンズは、第5レンズL5が正の屈折力、第6レンズL6が負の屈折力を有し、表9に示すように条件式(1)から(3)、条件式(6)から(10)、条件式(13)から(16)、条件式(19)、および条件式(21)を全て満たしている。
【0075】
図2は実施例1の撮像レンズについて、球面収差(mm)、非点収差(mm)、歪曲収差(%)を示したものである。球面収差図は、F線(486nm)、d線(588nm)、C線(656nm)の各波長に対する収差量を示しており、非点収差図はサジタル像面S、タンジェンシャル像面Tにおけるd線の収差量をそれぞれ示している(図4図6図8図10図12図14図16においても同じ)。図2に示すように、各収差は良好に補正されていることが分かる。
【実施例2】
【0076】
基本的なレンズデータを以下の表2に示す。
【表2】
【0077】
実施例2の撮像レンズは、第5レンズL5が正の屈折力、第6レンズL6が負の屈折力を有し、表9に示すように条件式(1)から(3)、条件式(6)から(10)、条件式(13)から(16)、条件式(19)、および条件式(21)を全て満たしている。
【0078】
図4は実施例2の撮像レンズについて、球面収差(mm)、非点収差(mm)、歪曲収差(%)を示したものである。図4に示すように、各収差は良好に補正されていることが分かる。
【実施例3】
【0079】
基本的なレンズデータを以下の表3に示す。
【表3】
【0080】
実施例3の撮像レンズは、第5レンズL5が正の屈折力、第6レンズL6が負の屈折力を有し、表9に示すように条件式(1)から(3)、条件式(6)から(10)、条件式(13)から(16)、条件式(19)、および条件式(21)を全て満たしている。
【0081】
図6は実施例3の撮像レンズについて、球面収差(mm)、非点収差(mm)、歪曲収差(%)を示したものである。図6に示すように、各収差は良好に補正されていることが分かる。
【実施例4】
【0082】
基本的なレンズデータを以下の表4に示す。
【表4】
【0083】
実施例4の撮像レンズは、第5レンズL5が正の屈折力、第6レンズL6が負の屈折力を有し、表9に示すように条件式(1)から(3)、条件式(6)から(10)、条件式(13)から(16)、条件式(19)、および条件式(21)を全て満たしている。
【0084】
図8は実施例4の撮像レンズについて、球面収差(mm)、非点収差(mm)、歪曲収差(%)を示したものである。図8に示すように、各収差は良好に補正されていることが分かる。
【実施例5】
【0085】
基本的なレンズデータを以下の表5に示す。
【表5】
【0086】
実施例5の撮像レンズは、第5レンズL5が正の屈折力、第6レンズL6が負の屈折力を有し、表9に示すように条件式(1)から(3)、条件式(6)から(10)、条件式(13)から(16)、条件式(19)、および条件式(21)を全て満たしている。
【0087】
図10は実施例5の撮像レンズについて、球面収差(mm)、非点収差(mm)、歪曲収差(%)を示したものである。図10に示すように、各収差は良好に補正されていることが分かる。
【実施例6】
【0088】
基本的なレンズデータを以下の表6に示す。
【表6】
【0089】
実施例6の撮像レンズは、第5レンズL5が正の屈折力、第6レンズL6が負の屈折力を有し、表9に示すように条件式(1)から(3)、条件式(6)から(10)、条件式(13)から(16)、条件式(19)、および条件式(21)を全て満たしている。
【0090】
図12は実施例6の撮像レンズについて、球面収差(mm)、非点収差(mm)、歪曲収差(%)を示したものである。図12に示すように、各収差は良好に補正されていることが分かる。
【実施例7】
【0091】
基本的なレンズデータを以下の表7に示す。
【表7】
【0092】
実施例7の撮像レンズは、第5レンズL5が負の屈折力、第6レンズL6が正の屈折力を有し、表9に示すように条件式(1)、条件式(4)から(8)、条件式(11)から(14)、条件式(17)、条件式(18)、条件式(20)、および条件式(21)を全て満たしている。
【0093】
図14は実施例7の撮像レンズについて、球面収差(mm)、非点収差(mm)、歪曲収差(%)を示したものである。図14に示すように、各収差は良好に補正されていることが分かる。
【実施例8】
【0094】
基本的なレンズデータを以下の表8に示す。
【表8】
【0095】
実施例8の撮像レンズは、第5レンズL5が負の屈折力、第6レンズL6が正の屈折力を有し、表9に示すように条件式(1)、条件式(4)から(8)、条件式(11)から(14)、条件式(17)、条件式(18)、条件式(20)、および条件式(21)を全て満たしている。
【0096】
図16は実施例8の撮像レンズについて、球面収差(mm)、非点収差(mm)、歪曲収差(%)を示したものである。図16に示すように、各収差は良好に補正されていることが分かる。
【0097】
以下の表9に実施例1から実施例8の条件式(1)から(21)の値を示す。
【表9】
【0098】
以上、説明したように、本発明の実施形態に係る撮像レンズは、近年要求が益々強まる低背化に対して、7枚という構成枚数を採りながらも、全長対角比(TTL/2ih)は0.9以下のレベルにまで十分低背化された撮像レンズを実現するとともに、全画角で70°から75°の広い範囲の被写体を撮影可能とし、さらにF2.1以下の明るさを達成しながらも、諸収差が良好に補正され、且つ低コストの撮像レンズを可能にする。
【産業上の利用可能性】
【0099】
本発明の各実施の形態に係る7枚構成の撮像レンズを、小型化、薄型化が進むスマートフォン、携帯電話機、タブレット、PDA(Personal Digital Assistant)などの携帯端末機器等、ゲーム機やPCなどの情報端末機器等、更にはカメラ機能が付加された家電製品などの高機能製品等に搭載される撮像装置に適用した場合、当該装置の小型化への寄与とともにカメラの高性能化を図ることができる。
【符号の説明】
【0100】
ST:開口絞り
L1:第1レンズ
L2:第2レンズ
L3:第3レンズ
L4:第4レンズ
L5:第5レンズ
L6:第6レンズ
L7:第7レンズ
IR:フィルタ
ih:最大像高
IMG:撮像面
図1
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