特許第6376568号(P6376568)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6376568
(24)【登録日】2018年8月3日
(45)【発行日】2018年8月22日
(54)【発明の名称】高電圧・大電流真空集積回路
(51)【国際特許分類】
   H02H 9/02 20060101AFI20180813BHJP
   H02J 3/01 20060101ALI20180813BHJP
   H02H 9/04 20060101ALI20180813BHJP
【FI】
   H02H9/02 E
   H02J3/01
   H02H9/04 A
【請求項の数】13
【外国語出願】
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2016-60406(P2016-60406)
(22)【出願日】2016年3月24日
(62)【分割の表示】特願2013-532927(P2013-532927)の分割
【原出願日】2011年10月5日
(65)【公開番号】特開2016-146745(P2016-146745A)
(43)【公開日】2016年8月12日
【審査請求日】2016年4月22日
(31)【優先権主張番号】61/390,031
(32)【優先日】2010年10月5日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/406,792
(32)【優先日】2010年10月26日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】511186952
【氏名又は名称】アドバンスト フュージョン システムズ エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100110157
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 基司
(74)【代理人】
【識別番号】100148301
【弁理士】
【氏名又は名称】竹原 尚彦
(72)【発明者】
【氏名】カーティス・エー・バーンバック
【審査官】 猪瀬 隆広
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2010/0195256(US,A1)
【文献】 特開2000−090788(JP,A)
【文献】 特表2013−511165(JP,A)
【文献】 米国特許第04156264(US,A)
【文献】 国際公開第2010/047890(WO,A2)
【文献】 特表2012−503467(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02H 9/00−9/08
H02J 3/00−5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に共通の真空環境が形成される共通の真空筐体を有する高電圧・大電流真空集積回路であって、
前記共通の真空筐体は、
a)前記真空筺体から導電体を電気的に絶縁すると共に真空密封を維持しながら、前記導電体を前記真空筺体の外側から内側まで貫通しており、前記真空密封により電気的に絶縁されたフィードスルーと、
b)内部電気短絡を防ぐための内部電気絶縁体と、
c)それぞれの真空環境が前記共通の真空環境の一部である、少なくとも二つの冷陰極電界放出電子管であって、前記冷陰極電界放出電子管はAC400ボルトを超える高電圧かつ50アンペアを超える大電流で作動するように構成されていると共に回路機能を実施するために相互に接続されているものである、前記冷陰極電界放出電子管と、
d)前記冷陰極電界放出電子管のうちの一つ以上によって生じる磁場による前記陰極電界放出電子管内の干渉を防止するための、磁気遮蔽金属からなる一つ以上の内部磁気シールドと、
e)少なくとも一つの内部真空ポンプ手段と、
f)前記真空筐体からの排気ののち、前記真空筐体を前記真空密して、少なくとも一つの外部真空ポンプから分離する少なくとも一つの排気管と、
を封じ込めることを特徴とする高電圧・大電流真空集積回路。
【請求項2】
前記一つ以上の内部磁気シールドが、前記少なくとも二つの冷陰極電界放出電子管のうちの一方の電流が流れる電気部品によって生じる磁場による前記冷陰極電界放出電子管内の干渉を防止する、請求項1に記載の高電圧・大電流真空集積回路。
【請求項3】
前記一つ以上の内部磁気シールドは、その部分部分がそれぞれに対応する耐火性誘電体によって覆われることにより、電気的に絶縁されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の高電圧・大電流真空集積回路。
【請求項4】
前記一つ以上の内部磁気シールドは、前記真空筺体内の一つ以上の物理的要素を機械的に支持していることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の高電圧・大電流真空集積回路。
【請求項5】
前記一つ以上の物理的要素は、前記二つの冷陰極電界放出電子管のうちの少なくとも一方を前記共通の真空筐体の外部にあるそれぞれの端子と相互に接続するための電気的に絶縁されたフィードスルーを有することを特徴とする請求項4に記載の高電圧・大電流真空集積回路。
【請求項6】
前記一つ以上の内部磁気シールドは、各々薄い磁性体を有することを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の高電圧・大電流真空集積回路。
【請求項7】
前記一つ以上の内部磁気シールドは、真空伝導の向上と圧力均等化を提供するための貫通部をそれぞれ有しており、各貫通部は、磁気シールド材からなる中空管状体を有していることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の高電圧・大電流真空集積回路。
【請求項8】
a)前記中空管状体の長さに対する内径のアスペクト比が4対1以上であり、
b)前記磁気シールド材は、真空グレードの耐火性誘電体で絶縁されており、
c)前記中空管状体は、前記磁気シールド材上の前記真空グレードの耐火性誘電体により、連続的に電気的に絶縁されていることを特徴とする請求項7に記載の高電圧・大電流真空集積回路。
【請求項9】
前記一つ以上の内部磁気シールドの各々は、
関連付けられた電気絶縁材内に分散させた粒子状の磁性体を有し、完全に誘電性の耐火層で上から被覆されていることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の高電圧・大電流真空集積回路。
【請求項10】
前記少なくとも二つの冷陰極電界放出電子管は、円筒形をした電極形状を有することを特徴とする請求項1〜9のいずれか一項に記載の高電圧・大電流真空集積回路。
【請求項11】
前記真空筐体の外部磁場に起因する前記冷陰極電界放出電子管内のそれぞれの電子ビームとの干渉を防止するために、前記真空筐体が、高透磁性磁気遮蔽金属で形成され、または高透磁性磁気遮蔽金属からなるライナーを含むことを特徴とする請求項1〜10のいずれか一項に記載の高電圧・大電流真空集積回路。
【請求項12】
前記真空筐体が、一つ以上の内部ケミカルゲッターポンプを含むことを特徴とする、請求項1〜11のいずれか一項に記載の高電圧・大電流真空集積回路。
【請求項13】
請求項1に記載の高電圧・大電流真空集積回路および前記高電圧・大電流真空集積回路に接続されている作動時の真空レベルを維持するための外部真空ポンプ手段の組み合わせ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高電圧・大電流真空集積回路に関する。
【0002】
本出願は、本発明者による二つの以前の出願、2009年1月23日提出の米国出願番号12/359,198標題「高電圧インバーター」および2009年9月4日提出の米国出願番号12/554,818標題「異常電磁パルスから電力システムを防護する方法および機器」に関連する。
【背景技術】
【0003】
従来、複数の冷陰極電界放出電子管、冷陰極電界放出電子管を別々の真空筐体に収容して作製されていた。そのため、冷陰極電界放出電子管の取り付けにかかるコストの低減や、そのような冷陰極電界放出電子管を取り入れているシステムの信頼性を増やすことが求められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
好ましい実施態様においては、高電圧・大電流真空集積回路は、内部に共通の真空環境が形成される共通の真空筺体を有する。当該真空筺体は(1)少なくとも一つの内部真空ポンプ手段;(2)当該真空筺体を排気してその後当該真空筺体を密封し少なくとも一つの外部真空ポンプから分離するための少なくとも一つの排気管;(3)当該真空筺体から導電体を電気的に絶縁し当該真空密封を維持しながら、当該真空筺体の外側から当該筺体の内側まで当該導電体を通す真空密封し電気的に絶縁したフィードスルー;(4)内部電気短絡を防ぐための内部電気絶縁(5)各々の真空環境が前記した共通の真空筺体の一部であり、高電圧および大電流で作動するように構成され、回路機能実施のために相互連結する少なくとも二つの冷陰極電界放出電子管、を封じ込める
【0005】
前記の高電圧・大電流真空集積回路は、別個の真空容器内に各冷陰極電界放出電子管を格納する先行技術のプラクティスに比べて、システムの信頼性を増大させ、システムへの取り付けを簡素化する。
【0006】
図面と関連付けて本発明に関する以下の詳細な説明を読むと、本発明の更なる特徴と利点が明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、内部の部品を前面に示すように変更した、高電圧・大電流真空集積回路の中心軸に沿った簡素化した縦断面図である。
図2図2は、図1の電流調整器に使用可能な双方向冷陰極電界放出テトロード管、すなわちBi−tron管の簡単な斜視図であり部分破断図である
図3図3は、HVHC VICおよび様々な外部真空ポンプのブロック図である。
図4図4は、磁気シールドの一部の横断面図であり、当該シールドの両側真空を均等化するための貫通がある。
図5図5は、図1で図、図と示された矢印の位置で切り取った簡素化した拡大断面図である。
図6図6は、図1の高電圧・大電流真空集積回路において使用可能な集積コンデンサを備えたフェライトローパスフィルターの、一部を破断した斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
参照番号およびこれらに関連付けられた部品のリストはこの詳細な記述の終わり近くに挙げる。
【0009】
以下の定義は本文書で使用する用語に関するものである。
定義
「大電流」は本文書では50アンペアより大きい電流を意味する。
「高電圧」は本文書では交流400ボルトより高い電圧を意味する。
【0010】
高電圧・大電流真空集積回路
半導体産業の場合のように、回路機能の集積は高電圧・大電流真空管回路に利点があると本発明者は考える。電子管回路の場合には、個別部品とは反対に集積は電気回路の機能を遮断する方法を提供するが、しばしば大きく異なる電圧および電流作動領域、ならびに全く異なる物理的発現および作動原理により、半導体集積回路とは区別される。
【0011】
公開された親出願(特願2013−532927、対応米国出願公開公報US2012/0081097A1、2012年4月5日発行、表題「高電圧・大電流調整回路」)図1に関しては、例えば2010年8月5日付け公開番号US2010/0195256A1:標題「異常電磁パルスから電力システムを防護するための方法および機器」(現在は米国特許第8300378であり、2012年4月5日に公報が発行された)図6E、12、および13に示されているように、図1の高電圧電流調整器回路10が、回路中で相互接続される三つの別個の管として、一つの実施態様で実現されている。
対照的に、図1に示すように、好ましい実施態様では、高電圧・大電流真空集積回路(HVHC VIC)を形成するために、長さに沿って、または図1に示すように水平方向に、円形断面の単一ステンレス鉄鋼真空筺体180に、図1または公開された親出願の図7の冷陰極電界放出電子管を少なくとも内蔵している。
【0012】
公開された親出願図7に関しては、共通の真空筺体180(図1)に電子管140、23、35、および1135を置くことに加えて、例えば、筺体180はローパスフィルター160および170も収納する。真空筺体180内の電気部品を修復することは困難なので、通常は当該筺体の中には真空耐性で信頼できる電気部品のみを収納するのが最善の方策である。この方策は、公開された親出願図7で示した関連付けられた抵抗器およびコンデンサの一部または全てが真空筺体の外に配置されるべきであることを示すこともある。
【0013】
図1の真空筺体180の中にある部品と、公開された親出願図7の回路の対応は次の通りである。
【0014】
図2は、Bi−tron管323を示している。Bi−tron管323は、陰極と陽極として交互に機能する電流通過用主導体を意味する内部「キャサノード」326を有している。
キャサノード326は、図2に示すように、円柱状を成しており、中実の円柱の形態であってもよい。円柱形状の第2のキャサノード329は、キャサノード326を囲み、キャサノード326と同じ縦軸(図示せず)を共有している。
円筒状のグリッド328は、キャサノード326を囲み、キャサノード326に隣接すると共にこれに関連付けられている。
円柱形状のグリッド331はキャサノード329に囲まれており、キャサノード329に隣接すると共にこれに関連付けられている。
Bi−tron管の詳細については、2010年8月5日付け公開番号US2010/0195256 A1標題「異常電磁パルスから電力システムを保護するための方法および機器」(現在は米国特許第8300378 B2)に開示されている。
パルサトロン管は、陽極と、陰極と、陰極に隣接すると共に関連付けられたグリッドを有する冷陰極電界放出管である。
実際の実施態様では、陽極、陰極、グリッドは円柱形状を成している。パルサトロン管の詳細については、1990年8月21日発行の米国特許4,950,962標題「高電圧スイッチ管」に記されている。
図1に戻って言及すると、真空筺体180は、従来型の真空に密封して電気的に絶縁したフィードスルー241、243、245および247上にそれぞれ取り付けられていることが示される従来型のケミカルゲッターポンプ240、242、244、および246も含む。図示していないが、ゲッターポンプ240、242、244および246は、一つ以上の内部電気バスに取り付けられており、それを次に一つ以上の従来型の真空に密封して電気的に絶縁したフィードスルーに接続するのが好ましい。ケミカルゲッターポンプに加えて、またはケミカルゲッターポンプの代わりに、真空筺体180の内側または外側に電気真空ポンプ(図示せず)を使用することもできる。特定の真空筺体に必要な真空ポンプの能力および数は当業者には容易に決定できる。
【0015】
外部電気回路への電気接続および外部抵抗器、コンデンサ、または公開された親出願図7に示すようなその他の電気部品への電気接続ができるように、当該筺体中の他の電気部品から他の電気リード線を真空筺体180から取り出す。当該接続は、Bi−tron管200の従来型の真空に密封し電気的に絶縁したフィードスルー202、204および206であり、Bi−tron管210の同種のフィードスルー212、214、および216、パルサトロン管220の同種のフィードスルー222、224および226、パルサトロン管230の同種のフィードスルー232、234および236である。代わりに、通常は真空密封して電気的に絶縁した直前に述べた剛性のフィードスルーと比較して可撓性のあるリード線が望まれる場合には、真空筺体180中の当該電子管または他の電気部品の電極への外部接続ができるように、従来型の可撓性の「フライングリード線」を用いることができる。
【0016】
真空筺体180中の様々な電気部品は、多くの異なる方式で配置されていることがある。好ましい方法は、Bi−tron管200とBi−tron管210を図1で示したように互いをずらすのではなく、それぞれの縦軸に沿って揃えて並べるものである。さらに別の方法は、例えば公開された親出願図7の回路に示されたすべての部品よりも少ない部品を収納するために、真空筺体をそれぞれが有する複数のHVHC VICを使うことであり、これによりすべての集合回路部品の全体的な寸法における融通性が増す。
【0017】
図1は、真空筺体180から電気リード線が現れる移行領域における従来型の高真空電気フィードスルーの導体の間に電気的絶縁を提供する電気埋め込み用樹脂250および252を使用する好ましいオプションを示す。このような埋め込み用樹脂は、様々なゴム、エラストマー、プラスティック、セラミックから選択できるが、最も高い温度での使用にはセラミックが好ましい。上記のように、「フライングリード線」の代替品を用いる時には埋め込み用樹脂の使用が強く好まれる。
【0018】
図3は、作動中にHVHC VIC 400の中で必要な高真空を維持することを目的とする、外部真空ポンプ402に接続した、図1に示すようなHVHC VIC 400を示す。
【0019】
図3は、排気管404によって製造中にHVHC VIC 400を排出することを目的とする、大型外部真空ポンプシステム406に接続したHVHC VIC 400も示す。排気管404は通常、長さの短い金属管である。排出過程の終わりに、HVHC VIC 400および外部真空ポンプシステム406の両方に堅牢な真空密封を提供するために、排気管404をツール(図示なし)で「ピンチオフ」する。これは、本明細書に基づくと、当業者にとっては通常の作業になるであろう。
【0020】
図1のHVHC VIC 190に戻って言及すると、ピンチオフした排気管404は図の右下の角に示されている。
【0021】
HCHV VICで実施する複数の回路機能
上記の説明から明らかなように、共通の真空筺体内に収納した複数の電気部品は、図1のHVHC VIC 190内の複数の回路機能を可能にする。真空筺体180中の電気部品から外部電気回路または電気部品までの様々な電気接続は、単一の多重管HVHC VICが、外部電気部品を変えるだけで、異なる要件に対処することを可能にする。
【0022】
通常、図1の真空筺体180は以下に詳細に説明する内部磁気シールド260、262、264、および266やBi−tron管200の電気接地支持体275などの、様々な電気的に絶縁した機械支持構造も含む。真空コンダクタンスを向上させ真空筺体180内の圧力を均等化することを目的として、接地支持体275には通常は通気口(図示なし)を備える。
通常、筺体180は真空筺体180のみの中に、円柱形絶縁体270などの多くのセラミック絶縁体も含む。図1は、図示を明確にするために、様々な電気的絶縁をする機械支持構造およびセラミック絶縁体を省略している。このような支持構造および絶縁体の使用は、当業者にとっては通常の作業になるであろう。
【0023】
高電圧・大電流真空集積回路の有益性
複数の冷陰極電界放出電子管、および好ましくは他の電気部品を、HVHC VIC 190内の共通の真空筺体180に組み入れることにより、当該筺体に収納する電気回路の設置は簡素化し、設置に要するスペースも少なくなる。これは設置費用を軽減させ、当該HVHC VICの平均故障間隔を短縮させることによりシステムの信頼性を高める。
【0024】
同じ真空筺体の中で複数の回路機能を実施することにより、当該HVHC VICは半導体回路と幾分類似するものとなる。しかし、HVHC VICに対する理由は半導体集積回路(IC)に対する理由とは大きく異なる。半導体ICにおいては集積の主な理由は回路密度を増加させることである。VICにおいては主な理由は信頼性を高め、システムへの設置を簡素化することである。HVHC VICは主に、半導体は作動できない分野である高電圧・大電流の高電力電子回路で使うように作られている。同様に、400ボルトより低い電圧用途向けにHVHC VICを製造することは現実的ではない。400ボルトより低い場合は半導体装置の方が実用的である。400ボルトをかなり超えると、回路の電圧および電流の必要条件が増大するので、半導体の有用性は次第に失われる。26,000ボルトになると、それに対応できる半導体装置はまったく知られていない。対照的に、HVHC VIC中の冷陰極電界放出電子管は120万ボルトまたはそれ以上の電圧を含むかなり高い電圧で、また同時に数百から数千メガアンペアの電流での作動できる。さらに、電子管の極めて高いアーク抵抗および優位な熱性能が、HCHC VICへの集積には、電子管が適切なものとなる。
【0025】
上述した通り、特許請求をする本発明は、異なる外部条件に異なる応答モードで応答する高度な回路機能を実施する
【0026】
磁気シールドに関する定義
内部磁気シールドおよび外部磁気シールドに関する以下の二つの項では、この文書中では下記に掲げる意味を持つ以下に続く様々な用語を使用している。
磁気シールド」とは、(1)完全に磁気シールド金属のみから形成する、または(2)磁気シールド金属と電気的に絶縁したセラミックなどの非磁性材料の混合物として形成するか、そのいずれかで形成された磁気シールド材を含む構造を意味する。高電圧からのアーク放電を防ぐために、磁気シールドは電気的に絶縁した材料で覆ってもよい。
「磁気絶縁体」は、上記の「磁気シールド」の定義において定義された「磁気シールド材」と同じ意味で使われる。
「電気絶縁体」とは、電気的に絶縁するセラミックなどの誘電材料を意味する。
「電気および磁気絶縁体」は上記で定義された「電気絶縁体」と「磁気絶縁体」の組み合わせを意味する。
「磁気的に絶縁する」および「電気的に絶縁する」など前記の用語の変化形は前記定義と同様の意味を有する。
本文書では、「真空グレード」は、ガス放出の特性を示さない材料を意味しており、すなわち、その特性とは、圧力および温度の低減がある場合または圧力および温度両方の低減がある場合に、このような材料の原子または分子構造内にある格子間からガスが放出されるという特性のことである。
「薄い」磁気材料は、その表面面積の絶対値がその厚さの絶対値よりも相当大きい材料として本文書では定義する。
【0027】
外部磁気シールド
HVHC VICの設計において、当該HVHC VIC内の電気部品の性能に、いかなる外部磁場をも悪影響を与えないように、外部磁場が与える悪影響について考慮すべきである。その関係において、真空筺体180(図1)は高透磁性の磁気シールド金属(図示せず)から形成してもよく、そのような材料のライナー(図示せず)を金属真空筺体180と、筺体180のすぐ内側のセラミック絶縁体270の間に置くことができる。磁気シールドを向上させるためには、高透磁性および低透磁性の磁気シールド金属を交互に重ねる複数の層(図示せず)にして使うことができる;また、更なる磁気シールドの向上には、電気的および磁気的に絶縁する誘電性の材料(図示なし)を前記の交互の層の間に置くこともできる。磁気シールドの向上は、例えば同じ透磁性を有する材料層の間に前記の種類の誘電性材料を置くことによっても達成される。外部磁場からのHVHC VIC内の電気部品のシールドを備えるためのあらゆる前記技術およびその他技術の選択は、本明細書に基づくと、当業者にとっては通常の作業になるであろう。
【0028】
内部磁気シールド
例えば、図1のHVHC VIC 190の設計において考慮すべきことは、互いに比較的近くにあるかもしれない、共通の真空筺体180内の電気部品が生み出す磁場が、このような筺体内にある他の電気部品の作動に悪影響を及ぼすか否かである。例えば、強い磁場源が以下に掲げる状況から起こるかもしれない。
*真空筺体180(図1)内の電子管は、当該電子管の電極間スペースを通る間に強い磁場を作る高エネルギー電子ビームを通常有するかもしれない。このような磁場が十分な強さならば、筺体180内の隣接する電子管中の電子ビームの軌道および全体的な対称性を、このような磁場は歪める可能性がある。
*真空筺体180内のローパスフィルター193および195がフェライトの種類の場合は、このようなフィルターは、状況によっては、当該筺体内の隣接する電子管中にある電子ビームの軌道および全体的な対称性を歪める可能性がある相当な磁場も生み出し得る。
【0029】
真空筺体180の中の悪影響が出るほど高い磁場に関する前記の問題に対処するためには、一つ以上の他の部品から真空筺体180内の電気部品を分離するために、磁気シールド260、262、264、および266を使用することができる。260、262、264、および266などの磁気シールドの数、形状、および組成は、望まれるHVHC VICの具体的な構成に依存し、特に内部磁場を生み出す部品と、内部磁場によって作動が悪影響を受けるかもしれない内部電子管または他の部品との間隔に関する相互関係に依存する。
【0030】
共通の真空筐体180(図1)内に、高電圧で作動するように構成することのできる冷陰極電界放出電子管200、210、220、および230と共に磁気シールド金属を含む磁気シールドを置くと、潜在的に内部電気アーク放電や部品の故障など望ましくない問題が起こる可能性がある。従って、電気的に絶縁するセラミックまたは適切な誘電上の強度および厚さを持つ他の耐火性材料などの電気絶縁体の中に当該磁気シールドを封入することにより、それらを電気的に絶縁することが望ましい。「内部磁気シールド」と題する本項の残りの説明を簡素化するために、「セラミック」に言及する場合は、「セラミック」とセラミックの代替物を意味するものとする。
【0031】
従って、図4は、好ましくは、溶接とアニーリングによって位置286および288で互いに接合しその後電気的に絶縁したセラミック290によって封入した、垂直に延びる高透磁性磁気シールド金属282と管状の高透磁性磁気シールド金属284を有する、磁気シールド280の一部を示す。好ましくは、位置286および288のそれぞれにおいて、セラミック290は電界集中によるストレスを低減させる目的のフィレットとして形成される。
【0032】
その結果生まれる中が空洞の磁気的にシールドした管295は、真空筺体180(図1)中に通気と圧力の均等化をもたらし、好ましくは最適の真空ポンプのためのケミカルゲッター真空ポンプの近くに配置する。磁気的にシールドした管295は好ましくは長さに対する内径の比として定義されるアスペクト比が4対1かそれ以上にする。このアスペクト比は、管状構造中の開口部の周りにおける磁力線の流れ方によって生じる。この比率を維持することにより、当該管が通る当該シールド壁の磁気シールドの特性が維持される。図1に示すような真空筺体180内の均一な真空状態を確保するためには一つ以上の磁気的にシールドした管295が必要であるが、簡素化のために図1にはそれらは示していない。
【0033】
磁気シールド金属282よび284はすべて金属が好ましいが、その代わりに高密度で細かく分割した磁気シールド金属と電気的に絶縁するセラミックを混ぜて形成し、望ましい形に作り上げ、電気的に絶縁するセラミック290の中に封入し、その後当該セラミックを焼結し固くするために燃やしたものでもよい。最初の細かく分割した当該セラミック粒子および当該封入セラミックは、熱膨張のミスマッチを最小限にするために同じ化学組成を有することが好ましい。上記すべてのセラミックによる封入のシナリオでは、当該外側のセラミックおよび、オプションとしてのあらゆる内側の複合セラミックおよび磁気材料の燃焼は、その完全なシールドの可能性を向上させるために、当該磁気シールド金属のアニーリングという追加機能を果たすことが好ましい。
【0034】
「外部磁気シールド」と題する前項における、外部磁気シールドに関する前記説明には、磁気シールドのための高透磁性磁気シールド金属の単一層を用いた変型例が含まれる。このような変型例は内部磁気シールドにも同様に当てはまるので、図3高透磁性磁気シールド金属282および284は、例えば、高透磁性および低透磁性磁気シールド金属を交互に重ねた層に置き換えることができる。適切な磁気シールド金属の選択は、本明細書に基づくと、当業者には通常の作業になるであろう。
【0035】
図5図1磁気シールド266をより明確に示したものであり、字形断面を有し、上記の通り図5磁気シールド280に類似する、純粋または混合磁気金属などの磁気シールド金属268上に電気的に絶縁したセラミック267などの電気絶縁体でもよい。好ましくは、真空筺体180がステンレス鉄鋼または他の導電性金属の時は、磁気シールド金属268は溶接によって当該真空筺体に取り付け、また図1に示すように、隣接する磁気シールド262および264の磁気シールド材にも取り付ける。同様に図1では、金属クロスハッチングで示した磁気シールド260、262、264の内側磁気シールド材は、真空筺体180がステンレス鉄鋼または他の導電性金属の場合、当該真空筺体に溶接される。
【0036】
Bi−tron管210とパルサトロン管220および230は簡単な丸印で示し、他の多くの構造は明確化のために省略する。従って、図1および図4では、Bi−tron管200および210、パルサトロン管220および230、ローパスフィルター193および195は、関連付けられた電気的および磁気的に絶縁したシールド260、262、264、および266によって互いに分離されていることが示され、それぞれが内部で電気的および磁気的に絶縁したそれぞれの区画の中にあると考えてもよい。言うまでもなく、一つの部品の磁場がその他の部品の作動に悪影響を与えない状況ならば、同一の内部で電気的および磁気的に絶縁した区画または電気的に絶縁した区画内に、複数の内部電気部品が存在することができる。
【0037】
一つまたは複数の電子管を含む真空筺体180(図1)の区画または領域の何れにもケミカルゲッター真空ポンプを有することが望ましい。これは導電を最大限にし、それ故に、このような電子管の見地からすると、ケミカルゲッターポンプの効率をも最大限にする。区画間のシールドまたは分離器の電気および磁気絶縁特性を損なうことなしに達成できるのであれば、区画間に真空コンダクタンスおよび気圧の均等化の向上した開口部を提供する、電気的および磁気的に絶縁された管295(図4)を設けることによりゲッターポンプの数を最小限にすることが可能である。
【0038】
図1で現在示しているように、ローパスフィルター193および195は、磁気シールド260、262、264によって、図1のHVHC VIC 190の真空筺体180内の他の電気部品からシールドされる。ローパスフィルター193および195を磁気的にシールドする代替または追加の方法を図6に関連して以下に説明する。
【0039】
図6は結合したローパスフィルター500の好ましい構築を示す。フェライト製のフィルタースリーブ503は導体505上に置き、バイパスコンデンサの内側のプレートを形成すると共に、高周波数シグナルの遮断機能も提供する。外側の管状電極507は、バイパスコンデンサの外側のプレートを形成する。それぞれのローパスフィルター500は、公開された親出願図7の各ローパスフィルター160および170のため、上記のフィルタリングを提供する。公開された親出願図7のローパスフィルター160および170を実施する図1に示したローパスフィルター193および195の近くに、追加または代替のRFフィルター部品(図示せず)を、それぞれ組み入れてもよい。
【0040】
ローパスフィルター500は接地スポーク509を含む。図示していないが、好ましくはローパスフィルター500のために電気接地および機械的支持の両方を好都合に提供する方法で、真空筺体180(図1)または他の接地した構造に接地スポーク509を取り付けることができる。
【0041】
ローパスフィルター193および195(図1)を磁気的にシールドする代替または追加の方法に関しては、外側の管状電極507は、mu金属などの磁気シールド金属から形成できる。このような実施態様では、ローパスフィルター500は、ローパスフィルター193および195によって生成された磁場から真空筺体180(図1)内の他の電気部品を磁気的にシールドするために動作する。この関係において、外側の管状電極507の左右に示した末端はそれぞれフェライトのフィルタースリーブ503を超えて延び、外側の管状電極507の中からの磁場放出角度を制限する。
【0042】
内部磁気シールドの更なる利点
図1磁気シールド260、262、264は、電気および磁気絶縁を提供するだけでなく、様々な内部電気部品に重要な機械的支持を提供する。例えば、212および214などの電気的に絶縁した様々なフィードスルーは、260、262、264などの電気的に絶縁した様々な磁気シールドを通り抜け、このようなシールドによって機械的に支持されるという利点がある。
【0043】
以下は本明細書および図で用いられている参照番号と関連部品のリストである。
参照番号 部品
180 真空筺体
190 高電圧・大電流真空集積回路
193 ローパスフィルター
195 ローパスフィルター
200 冷陰極電界放出電子管、すなわちBi−tron管
202 電気的に絶縁したフィードスルー
204 電気的に絶縁したフィードスルー
206 電気的に絶縁したフィードスルー
210 冷陰極電界放出電子管、すなわちBi−tron管
212 電気的に絶縁したフィードスルー
214 電気的に絶縁したフィードスルー
216 電気的に絶縁したフィードスルー
220 冷陰極電界放出電子管、すなわちパルサトロン
222 電気的に絶縁したフィードスルー
224 電気的に絶縁したフィードスルー
226 電気的に絶縁したフィードスルー
230 冷陰極電界放出電子管、すなわちパルサトロン
232 電気的に絶縁したフィードスルー
234 電気的に絶縁したフィードスルー
236 電気的に絶縁したフィードスルー
240 ケミカルゲッターポンプ
241 電気的に絶縁したフィードスルー
242 ケミカルゲッターポンプ
243 電気的に絶縁したフィードスルー
244 ケミカルゲッターポンプ
245 電気的に絶縁したフィードスルー
246 ケミカルゲッターポンプ
247 電気的に絶縁したフィードスルー
250 埋め込み用樹脂
252 埋め込み用樹脂
260 磁気シールド
262 磁気シールド
264 磁気シールド
266 磁気シールド
267 セラミック
268 高透磁性磁気シールド金属
270 セラミック絶縁体
275 接地支持体
280 磁気シールド
282 高透磁性磁気シールド金属
284 高透磁性磁気シールド金属
286 位置
288 位置
290 セラミック
295 磁気的にシールドした管
323 Bi−tron管
326 キャサノード
328 グリッド
329 キャサノード
331 グリッド
400 真空集積回路
402 外部真空ポンプ
404 排気管
405 ピンチオフした排気管
406 排気真空ポンプシステム
408 ピンチオフの位置
500 ローパスフィルター
503 フェライトのフィルタースリーブ
505 導体
507 外側管状電極
509 接地スポーク
【0044】
図示によって本発明の特定の実施態様を説明してきたが、当業者に対して、多くの改良および変更を生じさせることになるだろう。例えば、本文書に説明した様々な電子管には公開された親出願図2に示した形状に類似する、または同じ円柱形の電極形状が好ましいが、例えば、平面、弓状、または球状などの他の形状を有する電子管を使用してもよい。従って、本発明の真の範囲および精神に該当するかかる改良および変更のすべてを、当該請求項が網羅しようとしていることは理解されるべきである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6