(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ほぼ同じ外形の細長い板状に形成された一対のホルダーパーツを重ね合わせて結合した替刃ホルダーに、替刃が着脱可能に取り付けられるものであり、替刃ホルダーの幅はその中央で最大であって、替刃ホルダーの両側縁は、替刃ホルダーの中央からそれぞれの端部に行くに従って互いに近づくように、替刃ホルダーの長手方向の中心線に対して傾斜しており、各ホルダーパーツに設けられた替刃保持構造が協働して替刃の一端部を保持し、保持された替刃の他端部が替刃ホルダーの端部から突出し、替刃ホルダーは、サイズ及び又は形状の異なる2種類の替刃に対応できるように、替刃ホルダーの両端部から替刃を突出させる2つの替刃保持構造を有する医療用ナイフであって、取り付けられた替刃が、細長い長方形をなし一方の長辺に刃先を有する替刃であり、その替刃の刃先は、替刃ホルダーの側縁及びその延長線と平行に沿うように突出することを特徴とする医療用ナイフ。
両ホルダーパーツの替刃保持構造間に替刃は保持され、且つ、ホルダーパーツの内面に垂直な回転軸線を中心にホルダーパーツを相対的に回転させることにより、替刃を着脱可能とすることができる請求項1記載の医療用ナイフ。
替刃ホルダーの一方の側縁に切欠凹部が形成され且つ該切欠凹部は一方のホルダーパーツに形成されており、替刃ホルダーの他方の側縁にも切欠凹部が形成され且つ該切欠凹部は他方のホルダーパーツに形成されており、これら両切欠凹部は、替刃ホルダーの回転軸線からほぼ同じ距離だけ離れた部分に形成されている請求項1又は請求項2記載の医療用ナイフ。
【背景技術】
【0002】
サイズの異なる2種類の替刃を取り付けることのできる医療用ナイフのハンドルは、例えば特許文献1に記載されているように従来から存在する。この従来のハンドルは、クリップ状に形成され、替刃をその表面両側から挟持して保持する一対の替刃挟持部がバネの弾性力により圧接されている。そして、その替刃挟持部は、ハンドルの前端部に設けられており、サイズの異なる2種類の替刃に個々に対応する2つの替刃保持構造を有し、双方の替刃保持構造は隣接するように設けられている。使用時には、1つの替刃のみを替刃保持構造に保持して使用されるものであり、その替刃保持構造に保持された替刃の突出する方向と、他方の替刃保持構造に替刃が保持された場合にその替刃の突出する方向は同じ方向である。
【0003】
前述したように、従来のハンドルは、その前端部に一対の替刃挟持部が隣接して設けられている。そして、各替刃挟持部の前端部の両側表面に指を当てて使用する指当て面が形成されている。したがって、使用時には、親指と人差し指の指先の腹部を替刃に近接した指当て面に宛がって両側からハンドルを摘み持ち、慎重に切断作業をする。また、2つの替刃保持構造は隣接するように設けられているから、ハンドルの前端部の幅は替刃2枚分の幅を有している。このため、いずれの替刃が取り付けられた場合でも、替刃はハンドルの前端部の中心から幅方向にずれた位置に取り付けられるので、指当て面に宛がった指先からも替刃は側方にずれることになる。指先と替刃がずれない場合には、替刃の中心と指当て面に宛がった指先の中心もあまりずれないので、替刃が指先の一部であるような感覚をもって切断作業をすることができる。これにより、例えば試料を細かく切断するなどの細かい作業をする場合に作業がしやすい。しかし、従来のハンドルのように指先と替刃の中心がずれていると、宛がっている指先と替刃が非常に近接していることもあって、指先の動きと替刃の動きとの違いが顕著になり、作業者に違和感を感じさせることになる。そのために、替刃に加える力具合や替刃の刃先の角度など、指先で調節する作業が作業者の意図から外れる虞がある。その虞を取り除くために、指先をハンドルの側方にずらすことが考えられるが、指先の腹部の片側がハンドルの指当て面から外れてしまうので、ハンドルを摘み持ったときに不安定となり、さらに使い勝手が悪くなる虞がある。さらに、従来のハンドルは、2つの替刃保持構造が隣り合わせにつながっているので、片方の替刃保持構造に替刃を保持させると、その替刃保持構造の替刃取付け用隙間が替刃により埋められるが、他方の替刃保持構造の隙間は開いたままであるので、替刃が確実に固定できない虞があるばかりでなく、その隙間にゴミなどが入る虞もあり、2つの替刃保持構造は隣接して設けない方がよいのである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
サイズ等の異なる2種類の替刃に対応できるように、それら2種類の替刃に個々に対応する2つの替刃保持構造を有する医療用ナイフであって、いずれの替刃を取り付けたときでも、替刃が指先の一部であるような感覚をもって切断作業をすることがきる医療用ナイフを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の発明は、ほぼ同じ外形の細長い板状に形成された一対のホルダーパーツを重ね合わせて結合した替刃ホルダーに、替刃が着脱可能に取り付けられるものであり、替刃ホルダーの幅はその中央で最大であって、替刃ホルダーの両側縁は、替刃ホルダーの中央からそれぞれの端部に行くに従って互いに近づくように、替刃ホルダーの長手方向の中心線に対して傾斜しており、各ホルダーパーツに設けられた替刃保持構造が協働して替刃の一端部を保持し、保持された替刃の他端部が替刃ホルダーの端部から突出し、替刃ホルダーは、サイズ及び又は形状の異なる2種類の替刃に対応できるように、替刃ホルダーの両端部から替刃を突出させる2つの替刃保持構造を有する医療用ナイフであって、取り付けられた替刃が、細長い長方形をなし一方の長辺に刃先を有する替刃で
あり、その替刃の刃先は、替刃ホルダーの側縁及びその延長線と平行に沿うように突出する構成である。
【0007】
請求項2記載の発明は、両ホルダーパーツの替刃保持構造間に替刃が保持され、且つ、ホルダーパーツの内面に垂直な回転軸線を中心にホルダーパーツを相対的に回転させることにより、替刃を着脱可能とすることができる構成である。
【0008】
請求項3記載の発明は、替刃ホルダーの一方の側縁に切欠凹部が形成され且つ該切欠凹部が一方のホルダーパーツに形成されており、替刃ホルダーの他方の側縁にも切欠凹部が形成され且つ該切欠凹部は他方のホルダーパーツに形成されており、これら両切欠凹部は、替刃ホルダーの回転軸線からほぼ同じ距離だけ離れた部分に形成されている構成である。
【0009】
請求項4記載の発明は、双方のホルダーパーツが分解可能である構成である。
【発明の効果】
【0010】
請求項1記載の発明は、替刃ホルダーが、サイズ及び又は形状の異なる2種類の替刃に個々に対応する2つの替刃保持構造を有し、それぞれの替刃保持構造に保持される替刃は、替刃ホルダーの周囲上の離れた異なる位置から突出するものであり、且つ一方の替刃保持構造に保持される替刃の突出する方向と、他方の替刃保持構造に保持される替刃の突出する方向とが異なっている。したがって、双方の替刃保持構造は隣接しておらず、それぞれ他の替刃保持構造に干渉されることなく分離して設けられるので、保持されている替刃と、替刃ホルダーの前端部に設けられた指当て面に宛がわれた指先とが幅方向にずれることのないように替刃ホルダーを形成することが可能となる。さらに、双方の替刃保持構造が分離して設けられるので、扱いやすく操作しやすいものとなる。この結果、替刃が指先の一部であるような感覚をもって違和感なく切断作業をすることができる使い勝手の良い医療用ナイフを提供することができる。また、異なるサイズや形状を有する替刃に適した替刃保持構造とすることにより、替刃を確実に固定することが可能となる。特許文献1のハンドルでは、2つの替刃保持構造が隣り合わせにつながっているので、片方の替刃保持構造に替刃を保持させると、その替刃保持構造の替刃取付け用隙間が替刃により埋められるが、他方の替刃保持構造の隙間は開いたままであるので、その隙間にゴミが入り込む虞があるのである。
【0011】
請求項2記載の発明は、両ホルダーパーツの替刃保持構造間に替刃が保持され、且つ、ホルダーパーツの内面に垂直な回転軸線を中心にホルダーパーツを相対的に回転させることにより、替刃を着脱可能とすることができる。すなわち、ホルダーパーツを相対的に回転させると、替刃保持構造が十分に露出して見やすく、その替刃保持構造に替刃を容易にセットすることができる。特許文献1のハンドルは、クリップ状であって薄手に形成されている。厚手に形成すると使用しづらくなるためである。薄手に形成されているので、クリップの先端を広げる範囲が制限され、替刃の着脱時にクリップ内部の替刃保持構造が目視しづらく、替刃の装着に手間がかかる虞がある。
【0012】
請求項3記載の発明は、替刃ホルダーの一方の側縁に切欠凹部が形成され且つ該切欠凹部は一方のホルダーパーツに形成されており、替刃ホルダーの他方の側縁にも切欠凹部が形成され且つ該切欠凹部は他方のホルダーパーツに形成されており、これら両切欠凹部は、替刃ホルダーの回転軸線からほぼ同じ距離だけ離れた部分に形成されている。したがって、両ホルダーパーツが全面的に重ね合わされた状態から、替刃着脱位置まで回転しようとするときに、双方の切欠凹部に親指と人差し指を宛がって圧迫すると、切欠凹部の深さの分だけホルダーパーツは少し回転する。これにより、両ホルダーパーツは回転軸線を中心に周方向に互いにずれるので、その位置から替刃着脱位置までホルダーパーツを容易に回転させることができる。また、請求項8記載の発明は、双方のホルダーパーツが分解可能であるから、使用後に十分に洗浄したり滅菌したりすることができる。
【0013】
請求項4記載の発明は、双方のホルダーパーツが分解可能であるから、使用後に十分に洗浄したり滅菌したりすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
図1に示すように、替刃ホルダー1は一方のホルダーパーツ2と他方のホルダーパーツ3とから成る。双方のホルダーパーツ2,3は、
図11に示すように、共にほぼ同じ大きさの菱形に近い板状に形成されて、それらの内面同士が重ね合わされ、
図1に示す軸部4の中心を貫く回転軸線を中心に相対的に回転可能に結合されている。替刃ホルダー1は、双方のホルダーパーツ2,3が重ね合わされたものなので、それらと同様に菱形の形状となる。
【0016】
まず、双方のホルダーパーツ2,3を回転可能に結合する構成について説明する。
図4に示すように、一方のホルダーパーツ2の中央に軸部4が形成されている。また、
図6に明確に表わされているように、軸部4の中央に凹部5が形成されているが、これは射出成形の肉盗みである。また、軸部4の先端部の周囲に一対の部分的フランジ6,6が反対向きに形成されている。部分的フランジと呼ぶのは、フランジが軸部4の全周に亘って形成されていないからである。部分的フランジ6,6は、一方のホルダーパーツ2の内面7よりも、所定の高さだけ浮き上がっている。さらに、この部分的フランジ6,6によって投影されるホルダーパーツ2の部分は、部分的フランジ6,6の形状と同じ形状の弧状の孔8,8が形成されている。この孔8,8は、射出成形時に、ホルダーパーツ2を金型から抜くために必要とされるものである。
【0017】
図5に示すように、他方のホルダーパーツ3には、軸孔9が形成されている。この軸孔9には、一対の部分的内周面10,10が形成されている。部分的内周面10,10のそれぞれの弧の長さは、一方のホルダーパーツ2の部分的フランジ6のそれぞれの弧の長さよりもわずかに長い。また、部分的内周面10,10で構成される円の直径は、部分的フランジ6,6の外周面で構成される円の直径よりもやや大きい。さらに、各部分的内周面10,10の高さは、部分的フランジ6,6の厚みのほぼ2倍のサイズに形成されている。
【0018】
さらに
図5に示すように、軸孔9には、前記部分的内周面10,10よりも縮径された部分的縮径内周面11,11が対向するように形成されている。部分的縮径内周面11,11のそれぞれの弧の長さは、一方のホルダーパーツ2の軸部4の外周面に形成されている部分的フランジ6,6の間に存在する外周面12,12のそれぞれの弧の長さと同じであるかわずかに短い。また、部分的縮径内周面11,11で構成される円の直径は、軸部4の外周面12,12で構成される円の直径よりもやや大きい。さらに、各部分的縮径内周面11,11の高さは、部分的フランジ6,6の底面と一方のホルダーパーツ2の内面7との間の間隔よりもわずかに低い。
【0019】
一方のホルダーパーツ2の軸部4と他方のホルダーパーツ3の軸孔9は、以上述べた構成に形成されている。したがって、一方のホルダーパーツ2の部分的フランジ6,6を他方のホルダーパーツ3の部分的内周面10,10に宛がいながら、双方のホルダーパーツ2,3を重ね合わせると、一方のホルダーパーツ2の内面7と、他方のホルダーパーツ3の内面13とが密接するように重ね合わせることができる。このとき、一対の部分的フランジ6,6は一方のホルダーパーツ2の長手方向に対して斜めに並ぶように形成され、一対の部分的内周面10,10は他方のホルダーパーツ3の長手方向に対して斜めに並ぶように形成されているので、部分的フランジ6,6を部分的内周面10,10に宛がって重ね合わせるときは、双方のホルダーパーツ2,3のそれぞれの長さ方向は直交させる必要がある。すなわち、まず、双方のホルダーパーツ2,3を直交させてから、一方のホルダーパーツ2の部分的フランジ6,6を他方のホルダーパーツ3の部分的内周面10,10に宛がい、次いで、両者を回転させることにより結合して替刃ホルダー1として組み立てることができる。また組み立てと逆の手順により、組み立てられている替刃ホルダー1を分解して洗浄等することができる。なお、本実施形態では、双方の部分的フランジ6,6及び双方の部分的内周面10,10が同じサイズで形成されているので、部分的フランジ6はいずれの部分的内周面10,10にも適合することになる。しかし、正しい適合は一方のみであるから、結合が不適正となる場合は適合できないようにするために、双方の部分的フランジ6,6や双方の部分的内周面10,10の弧の長さなどを異なるものとすることにより、正しい適合の場合のみ両ホルダーパーツ2,3を結合可能とすることができる。
【0020】
次に、本発明の替刃保持構造について説明する。
図1は、両ホルダーパーツ2,3を替刃取付け状態に開いて、嵌合孔20を有する幅狭の替刃19を位置決めした状態を示している。嵌合孔20は2つあるので、幅狭の替刃19の左端と右端をひっくり返して使用することもできる。同様に、
図11に示すように、幅広の替刃35も嵌合孔41を有する。
図12は、両ホルダーパーツ2,3を閉じて幅狭の替刃19を替刃ホルダー1に装着した状態を示したものである。また、
図11は、両ホルダーパーツ2,3を閉じて幅広の替刃35を替刃ホルダー1に装着した状態を示したものである。このように、替刃ホルダー1は、その両端に幅広の替刃35と幅狭の替刃19を取り付けることが可能であり、それらを取り付けるための2つの替刃保持構造を有している。2つの替刃保持構造は同じ構成であり、取り付ける替刃に対応してサイズのみが異なるだけであるから、その一方である幅広の替刃35を取り付けるための替刃保持構造について説明する。替刃保持構造は、双方のホルダーパーツ2,3がそれぞれ有しており、双方の替刃把持構造が協働して替刃の一端部を保持する構成である。そこで、まず、一方のホルダーパーツ2の替刃保持構造について説明する。
図4に示すように、替刃保持構造は、刃受け部14を有している。また、この刃受け部14は、4つの面を有する。その4つの面とは、第一の面15と、第二の面16と、第三の面17及び第四の面18である。これらの面は面一でないので、その特徴については後述する。
図4に示すように、第一の面15には幅広の替刃35用の嵌合突部21が形成されている。この嵌合突部21に幅広の替刃35の嵌合孔41が嵌合して、替刃35が位置決めされる。また、第三の面17の角(かど)には、取り付けるべき替刃の位置決めを容易にするための小さな位置決め板部22が形成されている。この位置決め板部22は、一方のホルダーパーツ2の内面7に接続するように形成されている。第3の面17は内面7よりも低い位置にあるので、内面7と位置決め板部22の内面との間に間隔があいており、この間隔に替刃が挿し込まれる構成である。この構成については、他方の替刃保持構造の位置決め板部23を見ると明確になる。ちなみに、この位置決め板部23の下側に孔24が存在するが、この孔24は、射出成形時に、ホルダーパーツ2を金型から抜くために必要とされるものである。また、前述した刃受け部14の側方には側壁25が存在し、替刃を安定させたり、他方のホルダーパーツ3の回転を所定位置で規制する壁にもなる。
【0021】
次に、前述した刃受け部14が有する各面15,16,17,18について詳述する。
図8は、
図7におけるB−B端面図である。この図から明らかなように、第一の面15は垂直面であり、替刃が完全に取り付けられたときに替刃の表面と密接する面である。第二の面16は上方に行くに従って低くなるように傾斜する傾斜面である。また、
図9は、
図7におけるC−C端面図である。この図から明らかなように、第三の面17は上方に行くに従ってやや低くなる傾斜面である。第三の面17の傾斜角度は、第二の面16の傾斜角度よりも小さい。第四の面18は、第一の面15と第二の面16と第三の面17を前述のように形成した結果として、必然的に生じた傾斜面であって、特別な意味を持つ面ではない。
図7において、刃受け部14中、最も高い位置にあるのは第一の面15と第二の面16の間の境界線である稜線26とそれに続く第一の面15である。
【0022】
第二の面16と第三の面17を傾斜面とした理由は、替刃の取り付けを容易にするためである。替刃の取り付けは、一方のホルダーパーツ2を他方のホルダーパーツ3の下側にして行い、まず、その刃受け部14に替刃を位置決めする。そこで、
図7を参照しながら替刃の位置決め手順について説明する。替刃の位置決めは、
図7において替刃の刃先を下側にして、替刃の一方の端部を第三の面17に宛がい、替刃をやや傾斜させながら、替刃の角(かど)を位置決め板部22の下側に挿し込んでいけばよい。その際、替刃の表面が嵌合突部21に当たって押圧されるが、第二の面16の傾斜が押圧された替刃の逃げ部として作用するので、円滑に挿し込むことができるのである。仮に、刃受け部14の各面が面一であると、嵌合突部21が替刃に当たったときに替刃の逃げ場がなく、替刃の角を位置決め板部22の下側に挿し込みづらい。そこで、円滑に挿し込むことができるように、傾斜面を形成したのである。なお、
図1に示したように、一方のホルダーパーツ2の替刃取付け構造は、両ホルダーパーツ2,3を開いたときにほぼ全体が目視できるので、前述した替刃の位置決め作業を容易に行うことができる。
【0023】
次に、他方のホルダーパーツ3の替刃保持構造について説明する。
図5に示すように、替刃保持構造は、他方のホルダーパーツ3の内面13に形成された刃受け面27を有する。この刃受け面27は、双方のホルダーパーツ2,3が重ね合わされたときに、一方のホルダーパーツ2の刃受け部14と対向する面である。この刃受け面27と、一方のホルダーパーツ2の第一の面15とが協働して替刃を挟んで保持する。刃受け面27には、外側の溝28と内側の溝29が形成されている。外側の溝28は、一方のホルダーパーツ2の嵌合突部21の案内溝であり、内側の溝29は、同じく位置決め板部22の案内溝である。外側の溝28と連続する細溝30は、一方のホルダーパーツ2の側面に形成された小さな突起31の案内溝である。小さな突起31は、
図4に示すように、一方のホルダーパーツ2の内面7に対してその垂直方向にやや突出している。したがって、両ホルダーパーツ2,3を閉じるときに、小さな突起31は、細溝30に案内され、次いで刃受け面27に圧接状態で乗り上げ、受け穴32に圧接状態で嵌り込んでそれと係合する。これにより、閉じられた両ホルダーパーツ2,3が自然に開くことを防止できると共に、厚み方向に反って開くことも防止できる。また、
図10に示すように、一方のホルダーパーツ2の側縁に弧状の切欠凹部33が形成され、他方のホルダーパーツ3の側縁に同じく弧状の切欠凹部34が形成されている。したがって、両ホルダーパーツ2,3を開こうとするときに、双方の切欠凹部33,34の部分に親指と人差し指とを宛がって押圧すると、小さな突起31と受け穴32との係合が外れて、両ホルダーパーツ2,3は切欠凹部33,34の深さの分だけ相対的に回転して少し広がるので、そこから両ホルダーパーツ2,3を所定の角度に容易に開くことができる。
【0024】
前述したように、本発明の替刃ホルダー1は、その両端に幅広の替刃35又は幅狭の替刃19を取り付けることにより医療用ナイフ39となる。その状態を
図11及び
図12に示した。
図11は、幅広の替刃35を取り付けた状態を示し、
図12は、幅狭の替刃19を取り付けた状態を示している。ここで、本実施形態のサイズについて説明する。替刃ホルダー1の全長は約110mmであり、最大幅は約30mmであり、最大厚みは約10mmである。幅広の替刃35の長さは約76mmであり、幅狭の替刃19の長さは約80mmであり、幅広の替刃35の幅は約14mmであり、幅狭の替刃19の幅は約8mmである。なお、本発明がこれらの数値に限定されないことは勿論である。図からも明らかなとおり替刃ホルダー1はほぼ菱形である。ただし、正規の菱形ではなく、
図11に示すように、替刃ホルダー1には所定の幅を有する端縁37,38が形成された菱形に近い形状である。一方の端縁37の幅は他方の端縁38の幅よりも広く形成されており、一方の端縁37から幅広の替刃35が突出するように取り付けられ、他方の端縁38から幅狭の替刃19が突出するように取り付けられる。一方の端縁37の幅は、そこに取り付けられる幅広の替刃35の幅よりやや長い。この長い理由は、
図4に示すように、側方に側壁25が形成されていて、その分だけ長くせざるを得ないのであるがわずかな長さである。医療用ナイフ39を使用するときは、替刃ホルダー1を手で握り、一方の端縁37に隣接する部分を両側から親指と人差し指で挟む。このとき、前述したように、一方の端縁37の幅は、そこに取り付けられる幅広の替刃35の幅よりやや長いがわずかである。したがって、替刃ホルダー1の先端部の表面に宛がわれた双方の指先と幅広の替刃35とは、ずれていないか、或いはわずかなずれに止まっている。この点で、特許文献1と異なっている。したがって、替刃35を指先と同じ感覚で操作することができ、正確な切断作業をすることができる。また、幅広の替刃35の刃先40とそれに連続する替刃ホルダー1の一辺36とがほぼ一直線上に並ぶように、替刃35は取り付けられている。したがって、
図11から明らかなように、使用時に、替刃ホルダー1の替刃を保持した側とは反対側の後半部が尻上がりに傾斜するので、替刃ホルダー1が握りやすくて試料などの切断対象物の切断も行いやすく、疲れにくいという効果を奏する。これらのことは、
図12の幅狭の替刃19を取り付けた場合についても同様である。
【0025】
なお、本発明は、前述した構成に基づいて種々の態様をとることが可能である。
例えば、本実施形態のホルダーパーツ2,3は、それぞれが熱可塑性樹脂の一体成形であるが、製品として成立可能な範囲において他の材料や製造方法を使用してもよい。例えば、金属粉末射出成形法(MIM)によって成形しても
よい。ホルダーパーツ2,3の結合方法は、実施形態以外の方法でもよく、例えば螺合や磁力による結合であってもよい。さらに、ホルダーパーツ2,3の表面に滑り止め加工などを施しても
よい。例えば、表面に多数の小さな突起を設けたり、エラストマー樹脂で覆ったりしても
よい。また、替刃装着状態で、刃を覆う鞘やキャップを取り付け可能とする構成にしてもよい。また、実施形態では、両ホルダーパーツ2,3を替刃取付け状態に開くと、両端の替刃保持構造が表われるが、これに代えて、双方の替刃保持構造が独立して別々に表わすことができる構成にしてもよい。例えば、他方のホルダーパーツ3を二部品に分け、それらの二部品がそれぞれ別の回転軸線を中心に回転する構成にする。また、本実施形態では、嵌合突部21に幅広の替刃35の嵌合孔41が嵌合して、替刃35が位置決めされるが、それに代えて、替刃が磁性材料の場合は、嵌合突部21を設けずに磁石を取り付けることによって位置決めすることもできる。