特許第6376593号(P6376593)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6376593
(24)【登録日】2018年8月3日
(45)【発行日】2018年8月22日
(54)【発明の名称】卵の選別包装システム、汚卵の検査方法
(51)【国際特許分類】
   A01K 43/00 20060101AFI20180813BHJP
   G01N 33/08 20060101ALI20180813BHJP
   G01N 21/85 20060101ALI20180813BHJP
【FI】
   A01K43/00
   G01N33/08
   G01N21/85 A
【請求項の数】5
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-143581(P2014-143581)
(22)【出願日】2014年7月11日
(65)【公開番号】特開2016-19471(P2016-19471A)
(43)【公開日】2016年2月4日
【審査請求日】2017年3月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】597017812
【氏名又は名称】株式会社ナベル
(72)【発明者】
【氏名】才田 和輝
【審査官】 坂田 誠
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−327226(JP,A)
【文献】 特開2001−37367(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01K 43/00 − 43/10
G01N 21/85
G01N 33/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長軸を第1の方向に沿わせて、複数の卵を搬送する第1の搬送部と、
第1の搬送部から卵を受け、第1の方向と交差する第2の方向に長軸を沿わせた状態に卵の姿勢を変更する姿勢変更部と、
前記姿勢変更部から卵を受け、第2の方向に長軸を沿わせて卵を搬送する第2の搬送部と、
前記第1の搬送部に設けられ卵の胴回りを観察する第1の観察手段と、
前記第2の搬送部に設けられ卵の鋭端又は鈍端を観察する第2の観察手段と、
前記第1の観察手段が取得した情報と、前記第2の観察手段が取得した情報とから卵が汚れているか否かを検査する汚卵の検査装置とを備える、卵の選別包装システム。
【請求項2】
長軸を第1の方向に沿わせて、複数の卵を搬送する第1の搬送部と、
第1の搬送部から卵を受け、第1の方向と交差する第2の方向に長軸を沿わせた状態に卵の姿勢を変更する姿勢変更部と、
前記姿勢変更部から卵を受け、第2の方向に長軸を沿わせて卵を搬送する第2の搬送部と、
前記第1の搬送部に設けられ卵の胴回りを観察する第1の観察手段と、
前記第2の搬送部に設けられ卵の鋭端又は鈍端を観察する第2の観察手段と、
前記第1の観察手段が取得した情報から卵が汚れているか否かを検査する第1の汚卵の検査装置と、
前記第2の観察手段が取得した情報から卵が汚れているか否かを検査する第2の汚卵検査装置と、
いずれかの観察手段で汚卵と検査された卵を包装部に渡すことなく廃棄ステーションにて排出させる制御部とを備える、卵の選別包装システム。
【請求項3】
長軸を第1の方向に沿わせて、複数の卵を搬送する第1の搬送部と、
第1の搬送部から卵を受け、第1の方向と交差する第2の方向に長軸を沿わせた状態に卵の姿勢を変更する姿勢変更部と、
前記姿勢変更部から卵を受け、第2の方向に長軸を沿わせて卵を搬送する第2の搬送部と、
前記第1の搬送部に設けられ卵の胴回りを観察する第1の観察手段と、
前記第2の搬送部に設けられ卵の鋭端又は鈍端を観察する第2の観察手段と、
前記第1の観察手段が取得した情報と、前記第2の観察手段が取得した情報とから卵殻のヒビを検査するヒビの検査装置とを備える、卵の選別包装システム。
【請求項4】
長軸を第1の方向に沿わせて、複数の卵を搬送する第1の搬送部と、
第1の搬送部から卵を受け、第1の方向と交差する第2の方向に長軸を沿わせた状態に卵の姿勢を変更する姿勢変更部と、
前記姿勢変更部から卵を受け、第2の方向に長軸を沿わせて卵を搬送する第2の搬送部と、
前記第1の搬送部に設けられ卵の胴回りを観察する第1の観察手段と、
前記第2の搬送部に設けられ卵の鋭端又は鈍端を観察する第2の観察手段と、
前記第1の観察手段が取得した情報から卵殻のヒビを検査する第1のヒビの検査装置と、
前記第2の観察手段が取得した情報から卵殻のヒビを検査する第2のヒビの検査装置と、
いずれかの観察手段でヒビと検査された卵を包装部に渡すことなく廃棄ステーションにて排出させる制御部とを備える、卵の選別包装システム。
【請求項5】
長軸を第1の方向に沿わせて複数の卵を搬送する第1のステップと、
前記卵を受け、第1の方向と交差する第2の方向に長軸を沿わせた状態に卵の姿勢を変更する第2のステップと、
前記姿勢を変更された卵を受け、第2の方向に長軸を沿わせた状態で卵を搬送する第3のステップを含み、
前記第1のステップは、卵の胴回りを観察することを含み、
前記第3のステップは、卵の鋭端又は鈍端を観察することを含み、
さらに、卵の胴回りを観察した卵の情報と、卵の鋭端又は鈍端を観察した卵の情報とから卵が汚れているか否かを検査する、汚卵の検査方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、卵の検査装置、これを備える卵の選別包装システム、及び卵の検査方法に関し、詳細には、卵の表面を観察する卵の検査装置、および、これを備える卵の選別包装システム、並びに卵の検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
卵は、鶏舎で生産されてから、商品として出荷されるまでに、重量計測、各種検査、充填包装等の処理がされる。このような卵の処理として、卵を重量等の物理的性状に基づいて選別し、卵パックのような卵収容器に包装する選別包装処理がある。この選別包装処理は、特許文献1に記載されたようなグレーダーと称される卵の選別包装システムにより行われる。また、卵の処理として卵を選別しないまでも、トレイのような卵収容器に卵を充填する充填処理がある。この充填処理は、特許文献2に記載されたようなファームパッカーと称される充填システムにより行われる。
【0003】
卵は、一般に、長軸を水平方向に沿わせた状態で長軸と直交する方向に搬送されることで、安定して搬送できる。一方で、卵は、長軸を鉛直方向に沿わせた状態で保存されることが望ましい。したがって、特許文献1又は特許文献2に記載したシステムでは、卵は、長軸を水平方向に沿わせた状態で搬送され、その後、長軸を鉛直方向に沿わせた状態で卵収容器等に充填又は包装される。このため、卵を処理するシステムでは、卵の搬送から包装又は充填までに卵の姿勢を変更することが要求される。
【0004】
たとえば、特許文献1に記載されたシステムでは、第1の搬送部は、卵の長軸を第1の水平方向に沿わせた状態で卵を搬送し、第1の搬送部から卵を受ける姿勢変更部は、長軸が水平方向を向いた状態の卵を受け、長軸が鉛直方向を向いた状態に卵の姿勢を変更し、姿勢変更部から卵を受ける第2の搬送部は、長軸が鉛直方向を向いた状態の卵を搬送し、第2の搬送部から卵を受ける包装部は、卵を卵収容器に包装する。同様に、特許文献2に記載されたシステムにおいても、卵は処理の途中で姿勢を変更される。
【0005】
また、上記のような処理の途中で、卵は、卵殻のヒビ、卵殻の汚れについて検査される。このような検査は自動化されており、卵殻のヒビに関する検査装置として、特許文献3に記載のヒビの検査装置があり、卵殻の汚れに関する検査装置として、特許文献4に記載の汚卵検査装置がある。これらの検査装置は、いずれもカメラのような撮像装置により卵殻表面を観察し、卵のひびや汚れを検査する。卵のひびや汚れは、卵の商品価値を下げるため、ひびや汚れを有す卵は、商品として流通する前に取り除かれる。
【0006】
ところで、卵の選別包装システム及び卵の充填システムは、大量の卵を処理する必要がある。特許文献3及び特許文献4に記載の検査装置は、選別包装システム、充填システムの第1の搬送部に設けられ、第1の搬送部を複数列で搬送される卵を上方から距離をおいて観察する。これにより、同時に複数の卵を検査することができ、大量の卵の処理に適用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−179475号公報
【特許文献2】特開2012−229043号公報
【特許文献3】特開2001−37367号公報
【特許文献4】特開2008−309678号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献3及び特許文献4に記載されたような従来の検査装置では、卵の胴回りを観察することはできるが、卵の鋭端、又は鈍端を観察することが困難であった。しかし、卵のひびや汚れは、その位置に拘わらず鋭端又は鈍端のひびや汚れであっても、卵の商品価値を下げるため、卵は胴回りに加えて、鋭端又は鈍端を観察されることが望ましい。
【0009】
本発明は、これらの問題を解決すべくなされたもので、その目的は、卵の検査を確実にすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明にかかる卵の選別包装システムは、長軸を第1の方向に沿わせて、複数の卵を搬送する第1の搬送部と、第1の搬送部から卵を受け、第1の方向と交差する第2の方向に長軸を沿わせた状態に卵の姿勢を変更する姿勢変更部と、前記姿勢変更部から卵を受け、第2の方向に長軸を沿わせて卵を搬送する第2の搬送部と、前記第1の搬送部に設けられ卵の胴回りを観察する第1の観察手段と、前記第2の搬送部に設けられ卵の鋭端又は鈍端を観察する第2の観察手段と、前記第1の観察手段が取得した情報と、前記第2の観察手段が取得した情報とから卵が汚れているか否かを検査する汚卵の検査装置とを備える。
【0012】
本発明にかかる他の卵の選別包装システムは、長軸を第1の方向に沿わせて、複数の卵を搬送する第1の搬送部と、第1の搬送部から卵を受け、第1の方向と交差する第2の方向に長軸を沿わせた状態に卵の姿勢を変更する姿勢変更部と、前記姿勢変更部から卵を受け、第2の方向に長軸を沿わせて卵を搬送する第2の搬送部と、前記第1の搬送部に設けられ卵の胴回りを観察する第1の観察手段と、前記第2の搬送部に設けられ卵の鋭端又は鈍端を観察する第2の観察手段と、前記第1の観察手段が取得した情報から卵が汚れているか否かを検査する第1の汚卵の検査装置と、前記第2の観察手段が取得した情報から卵が汚れているか否かを検査する第2の汚卵の検査装置と、いずれかの観察手段で汚卵と検査された卵を包装部に渡すことなく廃棄ステーションにて排出させる制御部とを備える。
【0014】
本発明にかかる他の卵の選別包装システムは、長軸を第1の方向に沿わせて、複数の卵を搬送する第1の搬送部と、第1の搬送部から卵を受け、第1の方向と交差する第2の方向に長軸を沿わせた状態に卵の姿勢を変更する姿勢変更部と、前記姿勢変更部から卵を受け、第2の方向に長軸を沿わせて卵を搬送する第2の搬送部と、前記第1の搬送部に設けられ卵の胴回りを観察する第1の観察手段と、前記第2の搬送部に設けられ卵の鋭端又は鈍端を観察する第2の観察手段と、前記第1の観察手段が取得した情報と、前記第2の観察手段が取得した情報とから卵殻のヒビを検査するヒビの検査装置とを備える。
【0015】
本発明にかかるさらに他の卵の選別包装システムは、長軸を第1の方向に沿わせて、複数の卵を搬送する第1の搬送部と、第1の搬送部から卵を受け、第1の方向と交差する第2の方向に長軸を沿わせた状態に卵の姿勢を変更する姿勢変更部と、前記姿勢変更部から卵を受け、第2の方向に長軸を沿わせて卵を搬送する第2の搬送部と、前記第1の搬送部に設けられ卵の胴回りを観察する第1の観察手段と、前記第2の搬送部に設けられ卵の鋭端又は鈍端を観察する第2の観察手段と、前記第1の観察手段が取得した情報から卵殻のヒビを検査する第1のヒビの検査装置と、前記第2の観察手段が取得した情報から卵殻のヒビを検査する第2のヒビの検査装置と、いずれかの観察手段でヒビと検査された卵を包装部に渡すことなく廃棄ステーションにて排出させる制御部とを備える。
【0016】
本発明に係る卵の検査方法は、長軸を第1の方向に沿わせて複数の卵を搬送する第1のステップと、前記卵を受け、第1の方向と交差する第2の方向に長軸を沿わせた状態に卵の姿勢を変更する第2のステップと、前記姿勢を変更された卵を受け、第2の方向に長軸を沿わせた状態で卵を搬送する第3のステップを含み、前記第1のステップは、卵の胴回りを観察することを含み、前記第3のステップは、卵の鋭端又は鈍端を観察することを含み、さらに、卵の胴回りを観察した卵の情報と、卵の鋭端又は鈍端を観察した卵の情報とから卵が汚れているか否かを検査する。
【0017】
この卵の検査方法によれば、第1のステップと第3のステップにおいて、第1のステップと第3のステップの間に行われる第2のステップにより搬送される卵の姿勢が変更されるため、第1のステップにて卵の胴回りが観察され、第2のステップにて卵の鋭端又は鈍端が観察される。これにより、卵の全体を観察することができるため、卵の検査を確実することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明は、卵の検査を確実にする。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の第1の実施の形態にかかる選別包装システムを示す平面図である。
図2図1における姿勢変更部を拡大して示す斜視図である。
図3図1における第2の搬送部を拡大して示し、(A)は平面図、(B)は正面図である。
図4図1における第1の検査装置の概略を拡大して示す概略正面図である。
図5図1における第2の検査装置の概略を拡大して示す概略側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の実施の形態に係る卵の検査装置(以下、単に「検査装置」という。)50及びこれを備える卵の選別包装システム(以下、単に「選別包装システム」という。)Sについて説明する。
【0021】
本発明にかかる選別包装システムSは、卵Eを搬送しながら選別する卵の搬送装置(以下、単に「搬送装置」という。)10と、選別された卵Eを搬送装置10から受け、卵パックのような卵収容器Pに包装する卵の包装装置(以下、単に「包装装置」という。)20と、選別包装システムSの各装置を制御する制御装置30とを備える。
【0022】
搬送装置10は、複数列で卵Eを搬送する第1の搬送部110と、第1の搬送部110から卵Eを受け、卵の姿勢を変更する姿勢変更部130と、姿勢変更部130から卵Eを受け、姿勢を変更された卵Eを搬送する第2の搬送部120とを備える。本実施の形態において、第1の搬送部110が6列で第1の搬送方向(X方向)に卵Eを搬送し、第2の搬送部120が1列で第2の搬送方向(Y方向)に卵Eを搬送するが、各搬送部が搬送する列数、方向は、適宜変更される。一般的には、第1の搬送部の列数より、第2の搬送部の列数が少ない。
【0023】
たとえば、特開2008−179475号公報に記載の卵の移載装置が組み込まれる搬送装置では、第1の搬送部が6列で卵Eを搬送し、第2の搬送部が2列で卵Eを搬送する。また、第1の搬送部の搬送方向と第2の搬送部の搬送方向が同一方向となる搬送装置もある。
【0024】
ところで、卵Eは、先の少し尖った鋭端と、これと反対側の鈍端とを有し、鋭端と鈍端を結ぶ仮想的な軸線が長軸と称される。また、鋭端と鈍端の間の部分は胴回りを称される。搬送装置10は、第1の搬送部110の上流側に、方向整列部(図示しない)を備え(たとえば、特開2007−222221号公報参照)、この方向整列部により、複数の卵Eは、鋭端(及び鈍端)が特定の方向に向く状態に、卵の方向(姿勢)を整列され、第1の搬送部110に渡される。本実施の形態において、第1の搬送部110は、卵の鋭端をY方向に向けた状態で搬送される。
【0025】
また、搬送装置10は、方向整列部のさらに上流側に、洗浄乾燥部(図示しない)を備え(例えば、特開2002−218859号公報参照)、この洗浄乾燥部により、卵Eは、卵殻表面を洗浄され、その後乾燥される。
【0026】
第1の搬送部110は、図2に示すように、列方向(X方向)及び行方向(Y方向)に並ぶ多数のローラ112を備える。第1の搬送部110の多数のローラ112のうち、行方向に並ぶ一行分のローラ(6つのローラ)112は軸部材114により連結され、1つのローラ群Rを構成する。多数のローラ群Rは列方向に並んで配置されており、列方向に隣り合う一対のローラ112は共同して1つの卵Eを、長軸が水平方向に向いた状態で、挟持して保持する。
【0027】
本実施の形態において、1つのローラ群Rが6個のローラ112を備え、多数のローラ群Rが列方向に並ぶことにより、卵Eは、第1の搬送部110に6列に並んだ状態に置かれる。1つのローラ群Rの6個のローラ112は、所定のピッチで軸部材114に固定されて連結されており、列方向に隣り合う一対のローラ112に挟持される卵Eも所定のピッチで保持される。
【0028】
卵Eを保持した一対のローラ112を含むローラ群Rが、卵Eを保持した状態で列方向に連続して移動することにより、卵Eが連続搬送される。これにより、多数の卵Eは、行方向に並べられて、列方向に搬送される。列方向に隣り合う一対のローラ112は、前記方向整列装置から鋭端(及び鈍端)が水平方向に向いた状態で卵Eを受け、軸部材114を中心として回転しながら列方向に移動することにより、長軸を中心として卵Eを回転させながら搬送する。
【0029】
本実施の形態において、第1の搬送部110では、卵Eは、鋭端が矢印Yの方向を向いた状態で、ローラ112に保持されている。第1の搬送部110は、従来よく知られたローラバーコンベアである。しかし、第1の搬送部110は、長軸を水平方向に沿わせて卵Eを搬送できれば、他のコンベアであってもよい。
【0030】
第1の搬送部110では、列方向に隣り合う一対のローラ112に1つの卵Eが挟持され、かつ所定の列数で搬送されるため、ローラ112の位置を特定することで、卵の位置を特定することができる。再び図1を参照するに、第1の搬送部110には、ローラ群Rの搬送方向(列方向)の動きに連動する第1のエンコーダ118が設けられており、一対のローラ群Rに挟持された卵Eが所定距離移動する毎にパルス信号が生成される。これにより、第1の搬送部110を6列で搬送される多数の卵Eは、第1の搬送部110での位置を特定される。第1のエンコーダによる卵の位置情報は制御装置30に送られる。
【0031】
搬送装置10は、第1の搬送部110の終端に接続するように、姿勢変更部130を備える。姿勢変更部130は、図1を参照するに、長軸を水平方向に沿わせた状態で搬送された卵Eを第1の搬送部110から受け、長軸を鉛直方向に沿わせた状態に姿勢を変更して第2の搬送部120に卵Eを渡す。そのような姿勢変更部130として、本実施の形態における姿勢変更部の他に、たとえば、特開2008−179475号公報に記載の卵の移載装置、特許公報2011−173714号公報に記載された卵の移し替え装置等がある。
【0032】
本実施の形態において、姿勢変更部130は、6列で第1の搬送部110を搬送される卵の一行分にあたる6つの卵Eを同時に受け、この6つの卵Eを略同時に姿勢変更して第2の搬送部120に渡す。卵Eは、鋭端をY方向に沿わせた状態で第1の搬送部110を搬送され、姿勢変更部130で鋭端を下方向に向けた状態に変更され、第2の搬送部120に渡される。
【0033】
第2の搬送部120は、姿勢変更部130の下方に位置し、姿勢を変換された一行分にあたる6個の卵Eを、自身の連続動作に同期されて受け、矢印Yの方向に卵Eを順次、連続して搬送する。したがって、第2の搬送部120は、第1の搬送部110の約6倍の速度で卵Eを連続搬送する。第2の搬送部120は、姿勢変更部130の下方に配置され、図3に示すように、姿勢変更部130から渡される卵Eを保持する多数の卵保持手段122を備える。卵保持手段122は図3には6個のみ図示されているが、実際は、多数の卵保持手段122が周回無限軌道を形成するように同一ピッチで連続して設けられる。
【0034】
すなわち、第2の搬送部120は、所定のピッチで並ぶ多数の卵保持手段122が卵Eを保持して矢印Yの方向に連続移動することにより、卵Eをバケットにより連続搬送するバケットコンベアである。第2の搬送部120は、卵保持手段122が周回無限軌道を形成し、周回運動することによりロータリー構造となる。
【0035】
卵保持手段122は、搬送において卵Eを保持できればよく、本実施の形態に示すような、卵Eを支持して保持するバケットに代えて、たとえば、卵Eを把持して保持するフィンガー(たとえば、特開平11−079345号公報参照)であってもよい。第1の搬送部110にて、第1のエンコーダにより第1の搬送部110の搬送方向(矢印Xの方向)の位置を特定された卵Eは、第1の水平方向の位置を特定されることにより、第2の搬送部120のいずれの卵保持手段122に保持されたかを特定される。
【0036】
本実施の形態において、第1の搬送部110は、水平方向に長軸を沿わせ、鋭端(及び鈍端)を特定の方向に揃えた状態の卵Eを6列で、矢印Xの方向へ搬送する。本実施の形態において、第1の水平方向(行方向)は矢印Yに沿う前後方向、第2の水平方向(列方向)は矢印Xに沿う前後方向となる。また、第1の水平方向と第2の水平方向とは略水平面内に規定されており、第1の搬送部110は6列に並んだ状態で卵Eを矢印Xの方向に搬送し、第2の搬送部120は一行に並んだ状態で卵Eを矢印Yの方向に搬送する。第1の水平方向と第2の水平方向の関係は、直交関係に限定されず、交差する関係であればよい。
【0037】
第2の搬送部120の卵保持手段122は、姿勢変更部130より下流に設けられた包装装置20に向けて卵Eを保持した状態で搬送する。第2の搬送部120には、卵保持手段122の動きに連動する第2のエンコーダ126が設けられており、所定のピッチで隣り合う卵保持手段122に保持された卵の位置が特定される。第2のエンコーダによる、卵の位置情報は、制御装置30に送られる。
【0038】
搬送装置10は、さらに、従来よく知られる、卵の重量を測定する計量部116を備える。計量部116は、図2に示すように、第1の搬送部110の終端付近(姿勢変更部130の付近)に設けられている。計量部116は、第1の搬送部110を搬送される卵の重量を計量する。本実施の形態において、計量部116は卵の重量を計測し、卵Eは、例えば、その重量に応じて、LLサイズ,Lサイズ,Mサイズ,MSサイズ,Sサイズ,SSサイズの6種類に選別される。卵の重量の情報又は選別された卵の情報は、制御装置30に送られる。
【0039】
包装装置20は、図1に示すように、選別された卵に対応する複数の包装部140を備え、第2の搬送部120を搬送される卵のうち、対応するサイズの卵Eを受け、卵パックのような卵収容器Pに充填して包装する。本実施の形態において、上流側からLLサイズ,Lサイズ,Mサイズ,MSサイズ,Sサイズ,SSサイズの卵に対応するように設定された6つの包装部140が設けられている。すなわち、本実施の形態において、包装部140は、6種類に選別された卵Eを選別結果に対応して引き取る。
【0040】
各包装部140は、選別結果に対応した卵Eを第2の搬送部120から引き受け、卵パック、卵トレイ等の卵収容器Pに充填して卵Eを包装する。第2の搬送部120から各包装部140への卵の引き取りでは、従来よく知られたキック機構121により(たとえば、特開平8−82546号公報参照)、卵保持手段122のレバー124(図3参照)が稼動されて、卵保持手段122が開く。これにより、卵Eが卵収容器Pに向けて放出される。
【0041】
各包装部140は、第2の搬送部120から放出された卵Eを、卵収容器Pに充填すべく、上流から下流(X方向)に卵収容器Pを搬送し、所定の場所にて卵収容器Pを待機させる。待機した状態の卵収容器Pに卵Eが順次充填され、所定数の卵Eを充填された卵収容器Pは、再び下流に搬送される。包装部140の下流では卵収容器Pが封緘され、段ボール箱のような集成容器に集成され流通工程に送られる。
【0042】
選別包装システムSは、さらに、搬送装置10に取り付けられる少なくとも1つの卵の検査装置(以下、単に「検査装置」という。)50を備える。卵の検査装置50は、卵の物理的性状(たとえば、重量、ヒビの有無、汚れの有無、卵内異常の有無)により卵の商品としての良否を検査する。例えば、良否を検査された卵のうち、不良と検査された卵Eは、包装装置20に受けられることなく、規格外の卵として除去される。
【0043】
本実施の形態にかかる検査装置50は、第1の搬送部110に設けられる第1の観察部150と、第2の搬送部120に設けられる第2の観察部250とを備える。
【0044】
第1の観察部150は、図4に示すように、第1の搬送部110を複列で搬送される卵Eを観察すべく、複数の観察手段152と、搬送される卵に対して光を効率的に照射する照明手段154と、観察手段が観察した画像に演算を施す画像処理手段156と、演算を施された画像から観察した卵Eが汚れているか否か、すなわち汚卵か否かを検査する検査手段158と、検査結果を表示する表示手段160を備える、いわゆる汚卵検査装置である(たとえば、特開2008−309678号公報参照)。
【0045】
本実施の形態において、第1の観察部150は、4つの観察手段152a〜152dを備える。観察手段152は、撮影装置のような、いわゆるカメラである。4つの観察手段152a〜152dは、6列で搬送される卵に対して、広範囲の視野を確保するように、それぞれが異なった方向を向くように設けられている。4つの観察手段152a〜152dは、行方向に略一列に並んで配置されており、各観察手段の搬送方向の視野角の中を第1の搬送部110を搬送される卵Eが搬送される間に長軸を中心に1回転して、卵の全周の画像を取得する。
【0046】
図4に示すように、観察手段152aは、左斜め上方から、左側3列を搬送される卵Eを観察し、観察手段152bは、左斜め上方から、右側3列を搬送される卵Eを観察し、観察手段152cは、右斜め上方から、左側3列を搬送される卵Eを観察し、観察手段152dは、右斜め上方から、右側3列を搬送される卵Eを観察する。すなわち、4つの観察手段は、それぞれ、卵の長軸に交差する方向から卵Eを観察する。
【0047】
画像処理手段156は、4つの観察手段152a〜152dにより取得された画像を処理し、検査手段158と共同して、汚卵の検査を行う。汚卵の検査結果は、表示手段160により表示されると共に、制御装置30に送られ、卵の選別に利用される。従来の選別包装装置20では、たとえば、汚卵と検査された卵Eは、卵の搬送装置10により包装装置20よりさらに下流に設けられた排除部(図示しない)に受けられて排除される。
【0048】
従来の汚卵検査装置では、4つの観察手段152a〜152dをもってしても、長軸方向に6列に並ぶ卵に対して、鈍端又は鋭端の画像を得ることは困難であり、第1の観察部150は、主に、鈍端、鋭端を除く胴回りの画像を取得し、汚卵Eを検査する。すなわち、従来の汚卵検査装置では、長軸方向に6つの卵Eが並ぶため、長軸と交差する角度の小さい方向から卵Eを観察したとしても、6列に並ぶ両側の卵の鋭端又は鈍端よりの画像が取得できるのみで、内側に配置された卵の鈍端又は鋭端の画像を得ることは困難であった。
【0049】
また、長軸に交差する方向から卵を観察するため、卵の輪郭を楕円と認識して画像が処理される。よって、輪郭を円形と認識して処理する場合に比較して、観察手段152a〜152dから画像は処理に時間を要する。
【0050】
第2の観察部250は、図1に示すように、第2の搬送部120に設けられる。また、第2の観察部250は、図5に示すように、1つの観察手段150eと、観察手段150eが観察した画像に演算を施す画像処理手段256、演算を施された画像から観察した卵Eが汚れているか否か、すなわち汚卵Eを検査する検査手段258とを備える。
【0051】
第2の観察部250は、従来よく知られる、組込用の小型カメラモジュールであり、第1の観察部150に比較して、簡易な構成である。したがって、第2の観察部250は、第1の観察部150に比較して安価に製造できるため、複数の場所に第2の観察部を設けても選別包装システム全体としての製造費は大きく増加しない。よって、本実施の形態において、検査装置50は、1つの第2の観察部250を備えるが、第2の観察部250は、第2の搬送部120の複数箇所に設けられてもよい。また、第1の観察部150に代えて、第2の観察部250を第1の搬送部110に設けてもよい。
【0052】
観察手段150eは、図5に示すように、単列で行方向に並ぶ第2の搬送部120の卵保持手段122の上方に配置される。卵保持手段122は、鈍端が上方に向くように卵Eを保持するため、観察手段150eは、Y方向に単列搬送される卵の鈍端を上方から順次観察する。観察手段150eが取得した画像は、画像処理手段256に送られ、画像処理が施される。観察手段は、1つの画像において、1つの卵Eを観察してもよいし、行方向に並ぶ複数の卵Eを観察してもよい。
【0053】
画像処理手段256は、観察手段150eが取得した画像から画像処理を施す。第2の観察部250では、長軸方向から卵Eを観察するため、円形の画像として取得される。これに対して、第1の観察部150では、長軸方向と交差する方向から卵を観察するため、略楕円の画像として取得される。円形の画像は、従来よく知られるように、楕円に比較して輪郭認識等の画像処理が容易であり、画像処理を高速化できる。第2の搬送部120を単列で搬送される卵Eは、第1の搬送部110を6列で搬送される卵に対して、約6倍の搬送速度となる。したがって、画像を高速処理ができる第2の観察部で鋭端又は鋭端の画像を処理する利点は大きい。
【0054】
検査手段258は、画像処理手段256が、卵の輪郭等を処理し、輪郭内に汚れがある場合に、認識された汚れ情報に基づいて、汚卵か否かを検査する。たとえば、卵Eは、汚れ情報が所定の基準値を超える場合に、汚卵と検査される。しかし、汚れの種類、卵殻の種類を考慮して基準値が変更されるように、汚卵の検査を行ってもよい(たとえば、特開2008−309678号公報参照)。
【0055】
第1および第2の観察部250の検査結果は制御装置30に送られ、制御部30は、いずれかの観察部150,250で汚卵と検査された卵Eを包装部140に渡すことなく、汚卵として廃棄ステーションにて排出させる。本実施の形態において、第1および第2の観察部250のそれぞれが汚卵か否かの検査をする検査手段を有するが、選別包装システムの制御部において汚卵の検査をしてもよい。このとき、第1および第2の観察部150,250は、検査手段を備えなくともよい。
【0056】
本実施の形態において、第2の観察部250は、第2の搬送部120の上方に設けられ、上方から卵の鈍端を観察するが、第2搬送部の下方に配置され、卵の鋭端を観察するようにしてもよい。このとき、卵保持手段122の形状により、下方からの観察が困難な場合もあるが、たとえば、卵保持手段122をフィンガー形状にすることにより(たとえば、特開平11−079345号公報参照)、下方からの観察が容易になる。また、第2の観察部を上方および下方に配置し、鋭端及び鈍端の両方を観察するようにしてもよい。
【0057】
従来の汚卵検査装置は、第1の搬送部110に設けられ、水平方向に長軸を沿わせた状態で搬送される卵Eを観察するため、卵の鋭端又は鈍端の汚れを検出することが困難であった。本発明にかかる汚卵検査装置は、長軸方向と交差する方向に卵Eを順次搬送し長軸方向に卵Eが並ばない搬送部に設けられ、長軸方向から卵Eを観察するため、鋭端又は鈍端の汚れを観察することができる。
【0058】
本実施の形態において、第2の搬送部は単列で卵を搬送しているため、観察手段は単列で卵を観察するが、第2の搬送部が複数列で卵を搬送する場合に、1つの観察手段を設け、これにより複数列の卵を観察してもよいし、各列に対応する観察手段を設け、一つの観察手段が対応する各列の卵を観察してもよい。
【0059】
第2の観察部250は各包装部140に設けられてもよい。このとき、包装部140は、卵Eを搬送しながら卵Eを観察する第2の搬送部120として機能する。第2の観察部250は、卵収容器Pに鈍端を上方に向けた状態で充填されて卵収容器Pと共に搬送される卵の鈍端を観察する。
【0060】
制御装置30は、搬送装置10、包装装置20を適宜制御して卵を搬送、選別、包装等するとともに、検査装置に検査結果に基づいて卵を検査する。制御部30は、CPU、メモリ等のハードウェアとプログラム等のソフトウェアとを備え、選別包装システムSの各部を適切に制御する。
【0061】
本実施の形態において、検査装置は、卵殻表面の汚れから卵の汚れを検査するように説明してきたが、卵殻のヒビを画像処理により卵のヒビを検査してもよい。画像処理によるヒビの検査装置として、たとえば、特開2008−37367号公報に記載の不良卵検出装置がある。
【0062】
本実施の形態において、検査装置は、選別包装装置に取り付けられるように説明してきたが、ファームパッカーのような卵の充填装置に取り付けられてもよい。すなわち、搬送途中に卵の姿勢を変更する搬送装置を備えるシステムであれば、姿勢を変更した前後の卵に対して、各方向からの画像を取得できる。
【0063】
今回開示された実施の形態は例示であってこれに制限されるものではない。本発明は上記で説明した範囲ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明は、卵の良否検査に利用できる。
【符号の説明】
【0065】
S 卵の選別包装システム
10 卵の搬送装置
20 卵の包装装置
30 制御装置
50 卵の検査装置
110 第1の搬送部
120 第2の搬送部
130 姿勢変更部
140 包装部
150 第1の観察部
152 観察手段
250 第2の観察部
図1
図2
図3
図4
図5