特許第6376617号(P6376617)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6376617
(24)【登録日】2018年8月3日
(45)【発行日】2018年8月22日
(54)【発明の名称】ピペット用スタンド
(51)【国際特許分類】
   B01L 9/00 20060101AFI20180813BHJP
   B01L 3/02 20060101ALI20180813BHJP
【FI】
   B01L9/00
   B01L3/02 D
【請求項の数】11
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2016-545132(P2016-545132)
(86)(22)【出願日】2014年8月27日
(86)【国際出願番号】JP2014072382
(87)【国際公開番号】WO2016030978
(87)【国際公開日】20160303
【審査請求日】2017年8月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】000127570
【氏名又は名称】株式会社エー・アンド・デイ
(74)【代理人】
【識別番号】100087826
【弁理士】
【氏名又は名称】八木 秀人
(74)【代理人】
【識別番号】100139745
【弁理士】
【氏名又は名称】丹波 真也
(74)【代理人】
【識別番号】100166327
【弁理士】
【氏名又は名称】舟瀬 芳孝
(74)【代理人】
【識別番号】100168088
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 悠
(72)【発明者】
【氏名】出雲 直人
(72)【発明者】
【氏名】小田切 努
【審査官】 ▲高▼ 美葉子
(56)【参考文献】
【文献】 特表2014−518764(JP,A)
【文献】 特開2012−115030(JP,A)
【文献】 特開2005−348600(JP,A)
【文献】 米国特許第05979675(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01L
H02J 7/00
C12M 1/00
G01N 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ピペットを保管するためのピペットスタンドであって、前方にピペットを保持するピペット保持部と、前記ピペット保持部の背面を支持する支柱部と、前記支柱部の台座部と、を有し、
前記ピペットスタンドの左右側面には、一方の側面と他方の側面とに連結手段が形成され、
前記ピペット保持部は、電動ピペットの本体外部に露呈するピペット側電極と接触し前記電動ピペットの電池を充電する充電電極と、前記充電電極に電力を供給するための電源受給ポートと、電源中継ポートを有し、
前記電源受給ポートおよび前記電源中継ポートは、前記ピペット保持部の下面に設けられ、
ある一台の前記ピペットスタンドの前記電源受給ポートを前記ある一台のピペットスタンドの前記電源中継ポートからケーブルを介して他の一台の前記ピペットスタンドの前記電源受給ポートに電気的に接続可能であることを特徴とするピペットスタンド。
【請求項2】
前記連結手段は、前記ピペットスタンドの左右側面の一方の側面に形成された凸部と、他方の側面に前記凸部と一対に形成された凹部であることを特徴とする請求項1に記載のピペットスタンド。
【請求項3】
前記台座部の底面にはスタンド足が設けられたことを特徴とする請求項1又は2に記載のピペットスタンド。
【請求項4】
前記スタンド足は前記台座部から左右方向に張り出す形状に形成されたことを特徴とする請求項3に記載のピペットスタンド。
【請求項5】
前記スタンド足は上方に突出する複数の突起部を有し、前記台座部の底面は前記突起部を挿着可能な複数の穴部を有し、前記突起部と前記穴部の組み合わせで、隣接配置された複数の前記ピペットスタンド同士を連結可能であることを特徴とする請求項4に記載のピペットスタンド。
【請求項6】
前記支柱部および前記台座部の左右幅は、前記ピペット保持部の左右幅と略同一に形成されたことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のピペットスタンド。
【請求項7】
前記台座部は前後方向に形成され、かつ前方向に張り出した形状に形成されたことを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のピペットスタンド。
【請求項8】
前記電源受給ポートおよび前記電源中継ポートは、下方に延出する囲い壁を有することを特徴とする請求項1に記載のピペットスタンド。
【請求項9】
前記支柱部の左右側面の前記ピペット保持部の支持位置よりも下方位置には、支柱部中央へ延びる溝部が形成されていることを特徴とする請求項1に記載のピペットスタンド。
【請求項10】
前記ピペット保持部は上ケースおよび下ケースの上下構造で形成され、前記下ケースは前記上ケースに収容されるよう形成されたことを特徴とする請求項1に記載のピペットスタンド。
【請求項11】
前記ピペット保持部の上面には、通電状態を示す発光インジケータ部を有することを特徴とする請求項1に記載のピペットスタンド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ピペットを保管するためのピペット用スタンドに関する。
【背景技術】
【0002】
ピペットまたはマイクロピペットと呼ばれる、手持ちで操作される液体分注装置(以下統一してピペットと称する)は、手動と電動の二種類が流通しているがいずれも、ピペット内部に備えた可動ピストンの移動による体積変化を空気のボリューム変化としてとらえ、空気のボリューム変化分相当の容積となる液体を、ピペット先端に装着されるピペットチップに吸引し吐出させる。このピペットチップを使い捨てとすることで、コンタミネーションを避けることができ、また洗浄が不要であるなどの利便さが、ピペットが多用される理由となっている。
【0003】
上記から、ピペットを実験台等に横向きに置くことは、液体がピペット本体に侵入するおそれがあり、また、実験台の汚染がピペットに移着するおそれがあるため、ピペットの保管には、ピペットを吊り下げ状態で保持するスタンド形式が採用される。このようなピペットスタンドは、ピペット保持部と支柱部と台座部を有しており、概略円柱状で、ピペット保持部を支柱部の周方向に数箇所設けてピペットを吊り下げる円形スタンド(非特許文献1参照)、または、概略直方体状で、ピペット保持部を一列に数箇所設けてピペットを保持する直線スタンド(非特許文献2参照)などの形態が知られている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】ザルトリウス・ジャパン株式会社,“製品情報/電動ピペット”,[online],[平成 26 年 7 月 24 日検索],[online],[平成 26 年 8 月 7 日検索]、インターネット〈URL:http://www.sartorius.co.jp/biohit/products/e_eline/spec/>
【非特許文献2】株式会社エー・アンド・デイ,“製品案内/試験・計測/電動マイクロピペット”,[online],[平成 26 年 8 月 7 日検索]、インターネット〈URL:http://www.aandd.co.jp/adhome/products/analytical/mpa.html>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述のような保管スタンドは、予め規定された数本のピペットしか保管することができず、任意の数のピペットを最低限のスペースで保管するには不向きである。
【0006】
本発明は、従来技術の問題点に基づいて為されたもので、その目的は、ユーザの保管状態に合わせてカスタマイズすることができ、自由度や拡張性を向上させた、ピペットスタンドを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明のある態様のピペットスタンドは、ピペットを保管するためのピペットスタンドであって、前方にピペットを保持するピペット保持部と、前記ピペット保持部を支持する支柱部と、前記支柱部の台座部と、を有し、前記ピペットスタンドの左右側面には、一方の側面と他方の側面とに連結手段が形成されていることを特徴とする。
【0008】
また、本発明の別の態様のピペットスタンドは、前方にピペットを保持するピペット保持部と、前記ピペット保持部を支持する支柱部と、前記支柱部の台座部と、を有し、前記ピペットスタンドの左右側面には、一方の側面に凸部が、他方の側面に凹部が一対に形成され、前記凸部と前記凹部は嵌合可能に構成されていることを特徴とする。
【0009】
この態様によれば、複数のピペットスタンドを、左右側面に一対に形成された凹凸構造により連結させることができる。これにより、ユーザは保管したいピペットの数だけこのピペットスタンドを購入し、ユーザの保管状態に合わせて任意に組み替えて使用することができるため、ピペットスタンドに自由度や拡張性を持たせることができる。
【0010】
上記態様において、台座部の底面にスタンド足を設けることも好ましい。これにより、スタンドの滑り止め、および台座部の底面が設置面と全面接触するのを回避させることができる。
【0011】
上記態様において、スタンド足を台座部から左右方向に張り出す形状に形成するのも好ましい。これにより、スタンドの全幅を広くとらなくても、スタンド幅方向の安定性を確保することができる。特にスタンドを1台で使用する場合に有効である。
【0012】
上記態様において、スタンド足には上方に突出する複数の突起部を、台座部の底面には上記突起部を挿着可能な複数の穴部を形成するのも好ましい。これにより、上記凹凸構造により連結させたピペットスタンドらに対して、一部のスタンド足を取り外し、一部のスタンド足の突起部を一方のスタンドの穴部と他方のスタンドの穴部に挿入して固定することで、スタンド足が架け橋となり、スタンド足を介してピペットスタンド同士の連結を強化することができる。
【0013】
上記態様において、支柱部および台座部の左右幅は、ピペット保持部の左右幅と略同一に形成するのも好ましい。これにより、支柱部および台座部の幅を、ピペットを保持するためにピペットの幅+αで設計されるピペット保持部の幅に合わせる形状となるので、左右方向において安定性を高めながらピペットスタンドを必要最小限の大きさに形成することができる。
【0014】
上記態様において、台座部を前後方向に形成し、かつ前方向に張り出した形状に形成するのも好ましい。これにより、ピペット保持部により前方に保持されるピペットに対し、台座部も前方に延出する形状となるので、前後方向において安定性を高めながらピペットスタンドを必要最小限の大きさに形成することができる。
【0015】
上記態様において、ピペット保持部は、電動ピペットの本体外部に露呈するピペット側電極と接触し該電動ピペットの電池を充電する充電電極と、該充電電極に電力を供給するための電源受給ポートを有するのも好ましい。これにより、本ピペットスタンドは、電動ピペットに対しては充電スタンドとして使用することができる。
【0016】
上記態様において、ピペット保持部は、電源受給ポートに加え電源中継ポートを有するのも好ましい。これにより、上記凹凸構造により連結させたピペットスタンドらに対して、一方のスタンドの電源中継ポートと他方のスタンドの電源受給ポートとを中継ケーブルで接続することで、ピペット保持部同士が電気的に直列接続され、同時に複数台の電動ピペットを充電することができる。
【0017】
上記態様において、電源受給ポートおよび電源中継ポート、すなわちコネクタ部をピペット保持部の下面に設定するのも好ましい。これにより、ピペット保持部の前方に保持される電動ピペットと電源系ケーブルとが干渉しないことに加え、電動ピペットに付着した試料液体が電源受給ポートおよび電源中継ポートに撥ねかかるのを位置的に防ぐことができる。
【0018】
上記態様において、上記電源受給ポートおよび上記電源中継ポートに、下方に延出する囲い壁を形成するのも好ましい。これにより、電動ピペットに付着した試料液体が電源受給ポートおよび電源中継ポートに撥ねかかるのを構造的に防ぐことができる。
【0019】
上記態様において、上記電源受給ポートおよび上記電源中継ポートはコネクタを備え、プラグ付きケーブルで接続可能とするのも好ましい。これにより、コネクタを利用し、プラグ付きケーブルで接続するだけでよいので、ユーザレベルで上記の拡張的充電が行える。
【0020】
上記態様において、上記支柱部の左右側面の上記ピペット保持部の支持位置よりも下方位置には、支柱部中央へ延びる溝部を形成するのも好ましい。これにより、電源受給ポートおよび電源中継ポートから伸びるケーブルを、溝部を通してスタンドの後方に配置することができるので、ピペットを保管する際にケーブルが干渉することもなく、またケーブルにピペットの液滴がかかることもない。そして、ピペットスタンドを連結して使用した際にも、ケーブルが邪魔になることはない。
【0021】
上記態様において、ピペット保持部は上ケースおよび下ケースの上下構造で形成し、該下ケースは該上ケースに収容されるよう形成するのも好ましい。これにより、ピペットは、ピペット保持部に対し上方から装着されるため、この動作時に仮にピペットに付着した試料液体がピペット保持部に撥ねかかっても、上ケースに付着した液体は上ケースを伝いそのまま下方に垂れ落ちるため、ピペット保持部の内部への液体の侵入を構造的に防ぐことができる。
【0022】
上記態様において、ピペット保持部の上面には、通電状態を示す発光インジケータ部を形成するのも好ましい。これにより、電動ピペットの充電スタンドとして使用する場合は、スタンドの上部の視認性の高い位置に通電状態が示される。
【発明の効果】
【0023】
ユーザの保管状態に合わせてカスタマイズすることができ、自由度や拡張性を向上させた、ピペットスタンドを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
次に、本願発明の好適な実施の形態を、図面を参照しながら説明する。本発明のピペットスタンドは、電動/手動に関わらずピペットを保管するのに使用することができるが、以下電動ピペットを対象とした実施の形態で説明する。
【0025】
(ピペットスタンドの全体構成)
図1はピペットスタンド1の右前方斜視図、図2はピペットスタンド1の左前方斜視図である。また、図13は同ピペットスタンド1に対応する電動ピペット100の一例である。
【0026】
このピペットスタンド1は、図13に示されるような、本体101の左右側面にピペット側電極102を備える電動ピペット100を充電するための装置である。電動ピペット100は、手持ちにより操作され、本体101の内部には、下方から順に、シリンダと、シリンダ内を上下方向に往復移動可能に挿入されたピストンと、ピストンに連結されピストンを上下方向に移動させるためのボールネジと、ボールネジを正逆いずれの方向にも回転駆動させるステッピングモータと、モータの上方位置(本体101の頭部)に電気ボードおよびモータや該電気ボードを駆動するための蓄電池103と、蓄電池103に接続された充電用コネクタが収容されており、この充電用コネクタがピペット側電極102に接続されている。
【0027】
ピペットスタンド1は、ピペット保持部11と、支柱部41と、台座部61と、からなる。なお、本明細書では、ピペットスタンド1の構成について、電動ピペット100を装着する側を正面視した状態を基準に、上下左右前後および正面背面を述べる。ピペットスタンド1のスタンド本体である支柱部41と台座部61は、耐薬品性を備える樹脂、例えばABSやPP等による一体成形で形成されている。ピペット保持部11は、スタンド本体から取り外すことができ、耐薬品性を備える樹脂、例えばABSやPP等による成形品から形成されている。
【0028】
(ピペット保持部)
図3(a)はピペット保持部11の前方斜視図、図3(b)はピペット保持部11の断面図(図3(a)のb−b線に沿う断面図)、図4(a)はピペット保持部11のコネクタ部115を示す図、図4(b)はピペット保持部11の分解斜視図、図5はピペット保持部11の構成ブロック図である。
【0029】
ピペット保持部11は、ピペット受け部111と、ピペット受け部111の左右から延出する左アーム部112および右アーム部113と、からなる。
【0030】
ピペット受け部111は、矩形の筐体であり、その正面111fは上から下にかけて広がるスカート状に形成され、その背面111bは鉛直面で形成されている(図3(b)参照)。ピペット受け部11の背面111bは固定部114となっており、背面111bの上部には左右二箇所にネジ穴139,139が形成されている(図3(a)参照)。
【0031】
ピペット受け部111の下面111dは、コネクタ部115となっている。コネクタ部115には、右側に電源受給ポート116、左側に電源中継ポート117が形成されている(図4(a)参照)。ピペット受け部111の上面111uには、発光インジケータ部125が形成されている(図3(a)参照)。
【0032】
左アーム部112および右アーム部113は、電動ピペット100の頭部を収容可能な程度に遠配置されている。左アーム部112および右アーム部113のいずれにも、その内側面に谷状凹部112aおよび谷状凹部113aが形成されており、谷状凹部112a,113aの底部には、電動ピペット100のピペット側電極102と接触させるための充電電極118が露呈されている。
【0033】
ピペット受け部111の筐体内には、基板120が配設されており、基板120には後述する充電部127の回路を形成する各種電子部品が実装されている。基板120には、電源入力用の電源受給用コネクタ122(USBメス側コネクタ)および電源出力用の電源中継用コネクタ123(ミニUSBメス側コネクタ)が実装されている。電源受給用コネクタ122および電源中継用コネクタ123の先端周部には、ピペット受け部下面111dから下方に延出する囲い壁119が形成されている(図3図4も参照)。電源受給用コネクタ122および電源中継用コネクタ123は、コネクタ部15に形成された、電源受給ポート116および電源中継ポート117となる。基板120にはL字型の金属配線体121(図3(b)で斜線にて図示)が圧接するように固定されており、この金属配線体121が直接上ケース131にネジ止めされて左アーム部112および右アーム部113へ延出し、充電電極18を形成している。電源受給ポート116には、電源ケーブル3または必要に応じて中継ケーブル4が接続される。電源中継ポート117には、必要に応じて中継ケーブル4が接続される。
【0034】
そして、このピペット保持部111は、上ケース131および下ケース132の上下構造で形成されている(図4(b)参照)。下ケース132は、ピペット受け部下面111dと,囲い壁119,119と、左アーム部112および右アーム部113の下面の一部となる左右フック部133,133と、背面フック部134と、を有する。下ケース132は、これらの構成要素を有するように、一体成形で形成されるのが好ましい。
【0035】
上ケース131は、ピペット受け部正面111fと、背面111bと、上面111uと、左アーム部112と、右アーム部113と、を有する。上ケース131の左アーム部112および右アーム部113の下面には、左右フック部133,133を収容・固定するためのフック溝135,135が形成されている。上ケース131のピペット受け部背面111bには、背面フック部134とランス係合する係合孔136が形成されている。上ケース131のピペット受け部上面111uには、発光インジケータ部125を形成するための、光透過孔137が形成されている。発光インジケータ部125は、後述するLED126の発光を光透過孔137から透過させ、例えばピペット受け部上面111uに透光部を有するラベル(図示せず)を貼り付けることで、光透過孔137を密封して形成される。上ケース31は、これらの構成要素を有するように、一体成形で形成されるのが好ましい。
【0036】
ピペット保持部11は、下ケース132の左右フック部133を上ケース131のフック溝135に固定して、下ケース32の背面フック部134を上ケース31の係合孔136に固定することで形成される。このとき、下ケース132の外周部132sは、周方向すべてが上ケース131の内周部131sに当接し、下ケース32は上ケース31に収容される形態となる。
【0037】
次に、図5はピペット保持部11の構成ブロック図である。ピペット保持部11は、電源受給ポート116、電源中継ポート117、充電電極118と、発光インジケータ部125を構成するためのLED126と、充電部127と、を有する。
【0038】
ピペット保持部11は、標準一般的な商用電源6に対し、AC/DCアダプタ5を有する電源ケーブル3を介して接続される。AC/DCアダプタ5は整流回路を有し、直流の電力を電源受給ポート116に供給する。電源受給ポート116は充電部127に接続され、充電部127は充電電極118に接続されている。充電電極118は、ピペット側電極102と接触することで電動ピペット100の蓄電池103と電気的に接続される。
【0039】
充電部127は、前述の直流の電力で充電されるコンデンサや充電電圧を制御するレギュレータ等を含む充電回路,ツェナーダイオード等を含む定電圧回路,出力回路を有している。また、充電部127には、LED126が並列接続されている。LED126は、基板120の所要の位置に実装されており、充電部27が充電動作中に通電して発光し、電源側からの電力供給が無いときは通電されず発光しない。また、充電部127には、電源中継ポート17が並列接続されている。電源中継ポート17には、必要に応じて、一方が電源受給用コネクタ(USBオス側コネクタ),他方が電源中継用コネクタ(ミニUSBオス側コネクタ)となった中継ケーブル4を接続することが可能である。
【0040】
(支柱部)
支柱部41は、図1図2に示されるように、その左右幅は、ピペット保持部11の左右幅と略同一に形成されている。その高さは、電動ピペット100に装着されたピペットチップ先端または電動ピペット100のチップホルダー先端が実験台等に接触するのを防ぐのに必要な空間を維持するために電動ピペット100の全長分が確保されている。支柱部41の前面41Uの上端部には、上述のピペット保持部11のネジ穴139,139に対応する位置に雌ネジ部(図示せず)が形成されており、ピペット保持部11は、支柱部の前面41Uの上方にネジ止め固定されている。また、支柱部41の上端部は、電動ピペット100をピペット保持部11に装着しやすいように、やや後方に傾斜させて形成されている。
【0041】
支柱部41の左側面41Lには、その上下二箇所に、中空円錐台状の凸部411,411が形成されている。支柱部41の右側面41Rには、その対応箇所に、凸部411,411と嵌合する凹部412,412が形成されている。凸部411と凹部412が連結手段である。なお、凸部411が右側面41R,凹部412が左側面41Lにある構成でもよい。一対の凸部411,凹部412はより複数箇所に形成されてもよいし、単数であってもよい。また、凸部411,凹部412は、容易に連結でき、また容易にその連結状態を解くことができる他の形状が採られてもよい。また、連結手段は、凹凸の嵌合構造に限らず、左右側面41L,41Rに一対の雌ねじ部,雄ねじ部を一体形成し、ねじ止めにより連結される構成が採られてもよい。
【0042】
また、支柱部41の左側面41Lおよび右側面41Rには、ピペット保持部11の固定位置よりも下方位置に、支柱部中央へ横方向に延びる横溝部413,413が形成されており、支柱部41の背面41Bには、ケーブルフック414が形成されている(図11も参照)。
【0043】
(台座部)
図6は台座部61の底面61Dを示す図、図7はスタンド足71の斜視図である。台座部61は、図1図2にも示されるように、その左右幅は、支柱部41から続きピペット保持部11の左右幅と略同一に形成されている。かつ、台座部61は、支柱部41から前方向に張り出した形状に形成されて、ピペットスタンド1は側方視L字型に形成されている。
【0044】
台座部61の底面61Dは、図6に示すように、その前端域61Dfと後端域61Dbは平面状に形成され、その中央域61Dmはやや上方に窪む湾曲形状に形成されている。中央域61Dmには、スタンドのウエイト612がネジ固定されている。前端域61Dfと後端域61Dbにはそれぞれ、下記の突起部712を挿着可能な穴部611が、左右3×前後2の計6つ形成されている。
【0045】
(スタンド足)
台座部61の底面61Dには、図7に示すスタンド足71が挿着/着脱可能である。スタンド足71は、耐薬品性、可撓性、すべり抵抗性を備える樹脂、例えばエラストマー等による平行四辺形状の成形品であり、その上面は、一方の鋭角側が下面側に欠けていく切欠部711が形成されるとともに、上方に突出する突起部712が3つ形成されている。突起部712は、頭部に球部を有する円錐状の中空ボスであり、1つは切欠部711と対角となる位置に、残りの2つはスタンド足71の中央域に一列に並んで形成されている。
【0046】
ここで、図8はピペットスタンド1を1台で使用する場合のスタンド足71の取り付けを示す図である。1台で使用する場合は、台座部底面61Dの前端域61Dfと後端域61Dbのそれぞれにおいて、スタンド足71は、左右に2つずつ、中央の穴部611を前後で分けあって挿着され、計4つが固定される。これにより、スタンド足71は、台座部61の四隅で、切欠部711が左右方向に張り出す形状で固定される。
【0047】
そして、スタンド足71の突起部712と台座部61の穴部611の組み合わせにより、左右に隣接配置されたピペットスタンド1,1を連結することができる。図9はピペットスタンド1を複数台で使用した場合のスタンド足71の取り付けを示す図である。
【0048】
左側のピペットスタンドを1A、右側のピペットスタンドを1B、ピペットスタンド1Aのスタンド足71をそれぞれ図示時計回りに71A1〜71A4、ピペットスタンド1Bのスタンド足71をそれぞれ71B1〜71B4とする。複数台で使用する場合は、台座部底面61Dの前端域61Dfで示しているように、ピペットスタンド1Bの内側に位置するスタンド足71B2を取り外し、ピペットスタンド1Aの内側に位置するスタンド足71A1の突起部712を矢印のようにスタンドB側に1穴ずらして挿入すると、スタンド足71A1により、2つのスタンドA,Bの前端が連結する。勿論、スタンド足71A1を外して、スタンド足71B2をスタンドA側にずらして挿入しても同様である。後端域61Dbでは、スタンド足71A4を外し、スタンド足71B3で後端を連結した状態を示している。
【0049】
以上の構成からなるピペットスタンド1の使用例について説明する。
【0050】
(使用例1)
使用例1は、ピペットスタンド1を1台で使用した例であり、図10はピペットスタンド1を1台で使用した場合の右前方斜視図、図11はピペットスタンド1を1台で使用した場合の右後方斜視図である。
【0051】
図10および図11に示すように、電動ピペット100を、ピペット保持部11に対し上方から装着すると、ピペット側電極102が左右アーム部112,113の谷状凹部112a,113aに懸垂する状態となり、電動ピペット100がピペット保持部11に吊り下げ保持される。ここで、電源受給ポート116に電源ケーブル3を接続すれば、電動ピペット100のピペット側電極102とピペット保持部11の充電電極118が電気的に接続され、充電が開始される。
【0052】
ピペット保持部11から伸びる電源ケーブル3は、横溝部413を通して、ピペットスタンド1の後方に収容可能である。後方にまわしたケーブルは、ケーブルフック414によりピペットスタンド1の背面41Bに固定可能である。
【0053】
ピペットスタンド1は、支柱部41および台座部61の左右幅は、ピペット保持部11の左右幅と略同一に形成し、台座部61は支柱部41から前方向に張り出した形状に形成しているので、スタンドの全幅を広くとらなくても、左右および前後方向に安定している。さらに、台座部61からはスタンド足71が左右に張り出すので、スタンド1台で使用した場合でも、左右方向の安定性が確保されている。
【0054】
また、ピペットスタンド1は、台座部底面61Dをそのまま接地面とせず、スタンド足71を装着した構成としたことで、第1にスタンド足71による滑り止め効果と、第2に台座部底面61Dと設置面の接触面積を低減させることができる。これにより、台座部底面61Dと設置面間に電動ピペット100から垂れた液体が滞留し、台座部底面61Dが設置面に吸着するのを防止することができる。この観点から、スタンド足71の下面には、より接触面積を低減するための円柱状のゴム足713が形成されるのも好ましい(図8を参照)。
【0055】
また、ピペット保持部11は、その下面111dにコネクタ部115を設定したため、ピペット受け部111の前方に保持される電動ピペット100と電源ケーブル3や中継ケーブル4が干渉しないことに加え、電動ピペット100に付着した試料液体が電源受給ポート116や電源中継ポート117に撥ねかかるのを位置的に防ぐことができる。さらに、電源受給ポート116および電源中継ポート117には囲い壁119が形成されているため、電動ピペット100に付着した試料液体が電源受給ポート116や電源中継ポート117に撥ねかかるのを構造的にも防ぐことができる。
【0056】
なお、電源ケーブル3や中継ケーブル4は横溝部413によりピペットスタンド1の後方に回すことができるので、電動ピペット100を保管する際にケーブル3,4が干渉することもなく、またケーブルにピペットの液滴がかかることもない。
【0057】
また、ピペット保持部11は、上下構造を採用し、下ケース132が上ケース131に収容されるように形成したため、電動ピペット100を装着する際に仮に試料液体がピペット保持部11に撥ねかかっても、上ケース131に付着した液体は上ケース131を伝いそのまま下方に垂れ落ちる。この点からも、電源受給ポート116や電源中継ポート117を保護することができるとともに、ピペット保持部11の内部への液体の侵入も防ぐことができる。
【0058】
また、ピペットスタンド1は、充電がなされると、ピペット保持部111の発光インジケータ部125が発光し、視認性の高い位置で、充電のON/OFF状態を知らしめることができる。
【0059】
(使用例2)
使用例2は、ピペットスタンド1を複数台連結して使用した例であり、図12はピペットスタンド1を複数台で使用した場合の右前方斜視図である。
【0060】
図12に示すように、ピペットスタンド1は、ピペットスタンド1,1同士を、左右側面41L,41Rにおいて一対に形成された凸部411と凹部412を嵌合させることにより、直線状に連結させることができる。このとき、凸部411は中空部を有しているため可撓性を有しており、凸部411と凹部412は容易に嵌合させることができ、また容易に外すことができる。この凹凸構造による連結に加え、図9で示したように、一部のスタンド足71を外し、一部のスタンド足71をずらして挿着することで、スタンド足71が架け橋となり、ピペットスタンド1,1同士の連結を強化することができる。
【0061】
これにより、ユーザは保管したいピペットの数だけこのピペットスタンド1を購入し、保管状態に合わせて任意に組み替えて使用することができる。
【0062】
また、ピペット保持部11は、電源受給ポート116に加え電源中継ポート117を有するため、上記凹凸構造により連結させたピペットスタンド1,1に対して、一方のピペットスタンド1の電源中継ポート117と他方のピペットスタンド1の電源受給ポート116とを中継ケーブル4で接続することで、ピペット保持部111,111が電気的に直列接続され、(商用電源6等の供給電源の能力に応じて)同時に複数台の電動ピペット100を充電することができる。
【0063】
すなわち、本ピペットスタンド1は、それぞれ独立して充電機能を備える上に、中継ケーブル4で接続するだけで、複数台の充電ステーションとして機能させることができる。
【0064】
また、ピペットスタンド1は、この形態とするに当り、電源受給ポート116および電源中継ポート117はコネクタ(電源受給用コネクタ122および電源中継用コネクタ123)であり、これらに中継ケーブル4のプラグを挿入するだけでよいので、ユーザレベルで簡単に充電拡張機能を利用することができる。
【0065】
なお、電源ケーブル3や中継ケーブル4は横溝部413によりピペットスタンド1の後方に回すことができるので、連結して使用した場合も、ケーブル3,4が邪魔になることはない。
【0066】
また、ピペット保持部11は、スタンド本体に対してネジ固定されているだけなので、いずれかのピペットスタンド1のピペット保持部11が故障等しても、その一台のピペット保持部11を取り外して別のものに交換すればよいため、利便性も高い。
【0067】
上述のピペットスタンド1は、電動ピペット100に限らず、手動ピペットに関しても当然に適用することができる。この場合は、手動ピペットの形状に合わせてピペット保持部11の形状を設計すればよい。また、本発明のピペットスタンド1は、構造上の連結、さらには電気的な連結も可能で、必要数だけを購入し、任意にカスタマイズできる点を特徴の一つとしている。この点を考慮した当業者の有する知識に基づいて種々の変形、改変は可能であり、それらは本発明に含まれるものである。
【図面の簡単な説明】
【0068】
図1】ピペットスタンドの右前方斜視図
図2】ピペットスタンドの左前方斜視図
図3】(a)ピペット保持部の前方斜視図、(b)ピペット保持部の断面図
図4】(a)ピペット保持部のコネクタ部を示す図、(b)ピペット保持部の分解斜視図
図5】ピペット保持部の構成ブロック図
図6】台座部の底面を示す図
図7】スタンド足の斜視図
図8】ピペットスタンドを1台で使用した場合のスタンド足の取り付けを示す図
図9】ピペットスタンドを複数台で使用した場合のスタンド足の取り付けを示す図
図10】ピペットスタンドを1台で使用した場合の右前方斜視図
図11】ピペットスタンドを1台で使用した場合の右後方斜視図
図12】ピペットスタンドを複数台で使用した場合の右前方斜視図
図13】電動ピペットの一例
【符号の説明】
【0069】
1 ピペットスタンド
11 ピペット保持部
111 ピペット受け部
112 左アーム部
113 右アーム部
114 固定部
115 コネクタ部
116 電源受給ポート
117 電源中継ポート
118 充電電極
119 囲い壁
125 発光インジケータ部
131 上ケース
132 下ケース
41 支柱部
41L 左側面
41R 右側面
411 凸部(連結手段)
412 凹部(連結手段)
61 台座部
61D 底面
611 穴部
71 スタンド足
712 突起部
100 電動ピペット
102 ピペット側電極
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13