特許第6376644号(P6376644)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6376644
(24)【登録日】2018年8月3日
(45)【発行日】2018年8月22日
(54)【発明の名称】セグメントブラシ
(51)【国際特許分類】
   B24D 11/00 20060101AFI20180813BHJP
   A46B 3/00 20060101ALI20180813BHJP
【FI】
   B24D11/00 G
   A46B3/00
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-56879(P2014-56879)
(22)【出願日】2014年3月19日
(65)【公開番号】特開2015-62989(P2015-62989A)
(43)【公開日】2015年4月9日
【審査請求日】2017年3月3日
(31)【優先権主張番号】特願2013-177541(P2013-177541)
(32)【優先日】2013年8月29日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】391044797
【氏名又は名称】株式会社コーワ
(74)【代理人】
【識別番号】100130074
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 繁元
(72)【発明者】
【氏名】足立 典隆
(72)【発明者】
【氏名】大石 司
(72)【発明者】
【氏名】木村 敬夫
(72)【発明者】
【氏名】坪島 朱美
(72)【発明者】
【氏名】吉田 知弘
【審査官】 須中 栄治
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−038328(JP,A)
【文献】 特開2003−307633(JP,A)
【文献】 特開2011−115905(JP,A)
【文献】 特開平06−031638(JP,A)
【文献】 実開平04−063356(JP,U)
【文献】 登録実用新案第3119300(JP,U)
【文献】 欧州特許出願公開第02050540(EP,A1)
【文献】 特開2005−254398(JP,A)
【文献】 特許第4942409(JP,B2)
【文献】 特開2011−148029(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24D11/00;13/14
A46B3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加工面の研削.研磨、表面処理、洗浄、バリ取り等の各種加工するために、複数本のブラシ片より形成され一端に加工部、他端に接着固定部を有するブラシ部と、該ブラシ部の外周を束ねる先端部と固定部を有する熱収縮性チューブと、前記ブラシ部の接着固定部と前記熱収縮性チューブの固定部を、接着剤を介して固定保持する有底状の容器とで構成されたセグメントブラシにおいて、前記固定部は前記接着固定部を覆わないよう形成し、前記接着固定部の外周面と前記容器の内周面との間に形成される外周隙間に前記接着剤が流入して、前記接着固定部と前記固定部とが前記容器に固着され、前記固定部の下端部の一部が前記容器の内底面に当接しているものであって、前記下端部の切断長は、前記容器の内周長よりも長いことを特徴とするセグメントブラシ。
【請求項2】
熱収縮性チューブの先端部を重合させて形成したことを特徴とする請求項1に記載のセグメントブラシ。
【請求項3】
熱収縮性チューブの固定部には、複数の接着孔が形成されたことを特徴とする請求項1又は2に記載のセグメントブラシ。
【請求項4】
容器の開口部から底面に向かい接着縦溝を形成したことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のセグメントブラシ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加工機に取り付けられ、回転しながら被加工面の研削、研磨、表面処理、洗浄、バリ取り等の各種加工をするためのセグメントブラシに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ブラシ片(モノフィラメント)を複数本束ねたブラシ部(ブラシ束)の一端側端面に熱溶着による固着部を形成し、この固着部を、接着剤を介して容器(金属カップ)に配置固定したもの(例えば特許文献1参照)や、複数本のブラシ片(ブラシ毛素材)をカバーリングにより束ねたブラシの一端部に接着剤を施し、容器(合成樹脂製筒体)に固定したもの(例えば特許文献2参照)、さらには、ブラシ片(ブラシ毛素材)が複数本束ねられたブラシ部(ブラシ毛)を、熱収縮性チューブで覆い、前記ブラシ部と前記熱収縮性チューブは、接着剤により容器(金属製金具)に固定されているもの(例えば特許文献3参照)が知られている。なお、上記特許文献3に使用されている熱収縮性チューブは、使用中に各ブラシ片(ブラシ毛)の先端部分が広がらないような役目も果たしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−254398号公報
【特許文献2】特許第4942409号公報
【特許文献3】特開2011−148029号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に記載のバリ取り機用カップブラシでは、接着剤が投入されている容器に、固着部が形成されたブラシ部を挿入すると、特に粘性の強い接着剤は、固着部の侵入を阻止すると共に、逃げ場を求めて容器の内側とブラシ部の外側との間に形成されている隙間に入り込み上昇して、容器とブラシ部の固着部及び外周部を固着する。この場合、上記隙間を確保するためには、容器の内径よりブラシ部の外径を小さくしなければならないので、組み立ての際、ブラシ部の中心と容器の中心を合わすのが難しく、偏芯状態で固着される恐れが生じ、偏芯状態で固着されると被加工物を回転加工する際、振動や異常音が発生し易い。さらに、固着部があるので、各ブラシ片間への接着剤の侵入が阻止され、接着面積が増えなく接着効率の低下となり易い。
【0005】
また、上記特許文献2に記載のブラシ毛では、ブラシ部をカバーリングで覆い、この端部に接着剤を施し容器に固定しているので、容器とブラシ部の偏芯状態の固定と、ブラシ部の先端部の回転に伴う広がりは解決されるが、接着剤はブラシ部の端部にしか施していないために、容器とブラシ部との接着面積は少なく、特に、被加工物を高速回転して加工する際には、接着剥がれが生じ易い。さらに、上記特許文献3に記載のセグメントブラシでは、ブラシ部を熱収縮性チューブで覆い、ブラシ部と熱収縮性チューブとの端部を接着剤で容器に固定しているので、上記特許文献2と同様に、容器とブラシ部との接着面積が少なくなり易い。
【0006】
本発明は、上記従来の課題を解決するもので、被加工物を押圧回転しながら加工する際、ブラシ部の広がりを防止すると共に、加工機に回転保持される容器とブラシ部を確実に接着固定できるセグメントブラシを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記従来の課題を解決する為に、請求項1の発明は、被加工面の研削.研磨、表面処理、洗浄、バリ取り等の各種加工するために、複数本のブラシ片より形成され一端に加工部、他端に接着固定部を有するブラシ部と、該ブラシ部の外周を束ねる先端部と固定部を有する熱収縮性チューブと、前記ブラシ部の接着固定部と前記熱収縮性チューブの固定部を、接着剤を介して固定保持する有底状の容器とで構成されたセグメントブラシにおいて、前記固定部は前記接着固定部を覆わないよう形成し、前記接着固定部の外周面と前記容器の内周面との間に形成される外周隙間に前記接着剤が流入して、前記接着固定部と前記固定部とが前記容器に固着され、前記固定部の下端部の一部が前記容器の内底面に当接しているものであって、前記下端部の切断長は、前記容器の内周長よりも長いことを特徴としている。これにより、熱収縮性チューブの固定部は前記ブラシ部の接着固定部を覆わないよう形成したことで、接着剤が所定量投入された容器にブラシ部の接着固定部と熱収縮性チューブの固定部を押し込むことによって、接着剤の一部は、熱収縮性チューブで覆われていない接着固定部を形成する各ブラシ片を外周隙間方向に押し広げ、内部空間を形成し、この内部空間に上昇しながら侵入すると共に、接着剤の他の一部は、接着固定部の外周と容器の内周面との間に形成される外周隙間に上昇しながら侵入して、熱収縮性チューブの固定部まで到達することができる。これにより接着剤は、ブラシ部の底面および側面は基より各ブラシ片間と熱収縮性チューブを確実に容器に立体的に直接接着固定することができる。
【0008】
さらに、容器の内径と熱収縮性チューブの外形は、隙間が生じないようほぼ同径に構成することで、組み立て時において、熱収縮性チューブに覆われていない接着固定部が最初に容器に挿入されるが、外周隙間があるので、接着固定部の端部が容器の開口部の縁に当たり、変形等が生ずるのを防止できると共に、熱収縮性チューブの外形が容器に挿入される時には、上記外周隙間が無いので、容器とブラシ体は、徐々に同心となり、偏芯を防止でき、挿入固着作業が容易で確実に行うことが出来る。
【0009】
請求項2の発明は、請求項1記載の発明において、熱収縮性チューブの先端部を重合させて形成されてあることを特徴としている。したがって、セグメントブラシの容器を、電動機等を有する加工機で回転させて、被加工品の研磨等の加工をする際、被加工品に押圧接触するブラシ部の加工部は、押圧力と回転に伴う遠心力で広がり易く、すなわち被加工品との接触力が弱まり、加工の精度が低下する恐れが生じる。このような現象を防止するために、熱収縮性チューブ等で、ブラシ部の加工部近傍を覆うが、一般的に熱収縮性チューブ部は柔らかめの樹脂性で形成されているために、伸びたり、破れやすかったりして、加工部の広がりを防止できない場合が生じやすいが、先端部を少なくとも2重以上の重合部を形成することで、強度アップを図り、これらを防止することが可能となる。
【0010】
なお、重合部は、熱収縮性チューブを折り返して形成してもよい。これにより、折り返し部は一体になる為に、単に重合した場合に比べ、端面が剥がれ難くなり、ブラシ部の広がりを確実に防止できると共に、ブラシ部に熱収縮性チューブを被せる際も、最初に熱収縮性チューブの一端部を折り返しておけばよく、内径の違う熱収縮性チューブを新たに用意することがない。また、重合の際、各端面を揃える等の作業も不要で、簡単かつ確実に作業を行うことができる。なお、重合面積すなわち重合幅寸法は必要に応じて自由に設定すればよいことは、言うまでもないことである。
【0011】
請求項3の発明は、請求項1記載の発明又は請求項2記載の発明において、熱収縮性チューブの固定部に、複数の接着孔が形成されてあることを特徴としている。したがって、接着剤が投入された容器にブラシ部の接着固定部と熱収縮性チューブの固定部を押し込むことによって、接着剤の一部は、熱収縮性チューブで覆われていない接着固定部を形成する各ブラシ片を外周方向に押し広げ、内部空間を形成し、この内部空間に上昇しながら侵入し、接着孔にも入り込み、容器とブラシ部は基より熱収縮性チューブの固定部の上方も確実に接着固定することができる。これにより、ブラシ部と熱収縮性チューブおよび容器は、よりその接着面積を増大することができ、接着剥がれを防止することができる。なお、容器にブラシ部と熱収縮性チューブを押し込む直前に、接着剤を予め接着孔に投入しておいても良いものである。
【0012】
請求項4の発明は、請求項1〜3のいずれか1項に記載の発明において、容器の開口部から底面に向かい接着縦溝を形成してあることを特徴としている。したがって、接着剤が投入された容器にブラシ部の接着固定部と熱収縮性チューブの固定部を挿入すると、本来、接着剤は、逃げ場が無くなり、ブラシ部の侵入を阻止してしまい、接着面積不足や、容器からブラシ部の加工部までの寸法がばらついてしまう。特に、粘性の強い接着剤は、上記侵入阻止が顕著である。容器に接着縦溝を設けることで、接着剤は接着縦溝に入り込み、上記侵入を容易にして、ブラシ部と熱収縮性チューブを確実に所定位置に収納させると共に、特に、熱収縮性チューブと容器との接着面積が増え、また、容器とブラシ部及び熱収縮性チューブの回り止めにもなり、より強固に接着固定ができる。さらに、接着剤の溢れ溝としても活用できるので、接着剤の容器への投入量は厳密にする必要が無く、その作業も容易である。なお、接着縦溝の数は、必要に応じて単数でも、複数でも、良いものである。
【発明の効果】
【0013】
請求項1の発明では、従来の発明と比較して、特にブラシ部の側面は基より、内部まで接着剤を浸透させることができ、容器とブラシ部が立体的に接着固定できるので、その接着面積は増大され、接着力は強固となり、被加工物とブラシ部の回転接触力に伴う容器とブラシ部等の接着剥離を確実に防止することができる。また、請求項2の発明では、被加工物と回転当接するブラシ部の加工部の広がりを、容易に、かつ確実に防止することができる。また、請求項3の発明では、ブラシ部は基より熱収縮性チューブをも、確実に容器に接着固定することができる。請求項4の発明では、ブラシ部と熱収縮性チューブの容器への接着面積を増大すると共に、被加工物の加工の際に生じる容器とブラシ部及び熱収縮性チューブとの回転剥離力の回り止めとすることもできる。さらに、容器への接着剤の投入量管理も容易となり、その作業性の向上に寄与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1の(a)は、本発明に係るセグメントブラシの外観斜視図、(b)は、本発明に係るセグメントブラシの縦断面図
図2図2の(a)は、本発明に係る複数のブラシ片を束ねた状態を示すブラシ部の正面図、(b)は、本発明に係るブラシ部を熱収縮性チューブで覆い、熱収縮させた状態を示す正面図、(c)は、本発明に係る容器に接着剤を投入した状態を示す断面図、(d)は、本発明に係る容器にブラシ部を収納した状態を示す熱収縮性チューブのみ非断面した状態を示す断面図
図3図3は、本発明に係るブラシ部を容器に収納する状態を示す一部断面図
図4図4の(a)は、本発明に係るブラシ部を熱収縮性チューブで覆った状態の他の実施例を示す断面図、(b)は、本発明に係るブラシ部を熱収縮性チューブで覆った状態を示す他の実施例を示す断面図
図5図5の(a)は、本発明に係る熱収縮性チューブの他の実施例を示す斜視図、(b)は、本発明に係る熱収縮性チューブでブラシ部を覆った状態の他の実施例を示す正面図、(c)は、本発明に係る熱収縮性チューブで覆われたブラシ部を容器に収納し、接着固定した状態の他の実施例を示す断面図
図6図6の(a)は、本発明に係る容器の他の実施例を示す平面図、(b)は、本発明に係る容器に熱収縮性チューブで覆われたブラシ部を収納固定した状態の他の実施例を示す断面図
図7図7の(a)〜(d)は、本発明に係る容器にブラシ部を収納した状態を示す熱収縮性チューブのみ非断面した熱収縮性チューブの他の実施例を示す断面図
図8図8は、本発明に係る容器にブラシ部を収納した状態を示す熱収縮性チューブのみ非断面したセグメントブラシの他の実施例を示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1(a)は、本発明に係るセグメントブラシの外観斜視図であり、図1(b)は、図1の縦断面図、図2の(a)は、本発明に係る複数のブラシ片を束ねた状態を示すブラシ部の正面図であり、図2(b)は、図2(a)に示すブラシ部を熱収縮性チューブで覆い、熱収縮させた状態を示す正面図であり、図2(c)は、本発明に係る容器に接着剤を投入した状態を示す断面図であり、図2(d)は、本発明に係る容器にブラシ部を収納した状態を示す熱収縮性チューブのみ非断面した状態を示す断面図であり、図3は、本発明に係るブラシ部を容器に収納する状態を示す一部断面図である。
【0016】
これらの図に示すように、セグメントブラシ1は、電動機(図示せず)等を駆動源とする加工機(図示せず)に、取り付けられて、被加工物に所定圧力で回転接触して加工するもので、複数のブラシ片2が束ねられて円柱状に形成されたブラシ部3があり、一端が被加工物に所定圧力で回転接触する加工部4と、他端は、後述する容器10に収納される接着固定部5とを有している。なお、接着固定部5の下端面からの高さhは、後述する容器10の深さHより小さく形成されてあり、好適には、1/4Hから3/4Hの範囲内が望ましい。ブラシ部3は、所定温度で収縮する熱収縮性チューブ6に、加工部4と接着固定部5を除く、外周囲を被覆されている。この状態で、例えば高温槽にいれて、所定温度で一定時間経過すると、熱収縮性チューブ6は、ブラシ部3の外周を収縮することで締めつけて抱合し、一体化される。なお、熱収縮性チューブ6は、加工部4側に先端部7と、接着固定部5側に固定部8をそれぞれ有していて、固定部8は後述する容器10内に接着固定部5と共に後述する容器10内に収納される。なお、ブラシ片2の材質には、金属線や樹脂線あるいは、金属線の周囲を樹脂で覆った被覆線等の単線ないし混合線等の様々な線材を用いる事ができる。また、ブラシ片2の形状は、直線形状以外にも波付け形状、多数本のブラシ片を束ねて捩りを加えた撚り糸、中央の芯線の周りに複数の線材が捩りを加えて巻き付けられた撚り線等、様々な形状の使用が可能であり、特に限定するものではない。また、セグメントブラシ1は、電動機(図示せず)等を駆動源とする加工機(図示せず)に、さまざまな方法で取り付けられて使用されるが、例えば、複数本のセグメントブラシ1の容器10を加工機の回転板に取り付けた後、加工部4を、複数の孔を有する固定板の孔に貫通させる形態を実施する場合においては、セグメントブラシ1は、ブラシ部3は熱収縮性チューブ6にて一体化されてあるので、加工部4が広がることが無く、固定板の孔に加工部4を接触させること無く、迅速に取り付け作業ができる。
【0017】
これにより、熱収縮性チューブ6の外周径寸法D1とブラシ部3の外周径寸法dとの差、すなわち、熱収縮性チューブ6の肉厚分が外周隙間9となる。また、熱収縮性チューブ6の先端部7は、ブラシ部3の加工部4を覆うように形成しても良く、被加工物への加工時における加工部4の外方向への開きを、より防止することができる。さらに、熱収縮性チューブ6は、必要に応じて、複数枚重合させても良いものである。
【0018】
容器10は、加工機(図示せず)に保持され、金属や樹脂等の材料より成り、所定深さHの有底状に形成されて、上端に開口部11と底面12を有しており、その内径寸法D2は熱収縮性チューブ6の外周径寸法D1と、略同寸法に形成されている。容器10の内部には、接着固定部5と固定部8を、収納し接着固定するための所定量の接着剤13が投入されている。この状態で、容器10に接着固定部5から押し込み挿入(図3記載の矢印)する。この時、外周隙間9が形成されているために、開口部11には、接触することなく、すなわち、接着固定部5を変形させずに挿入することができる。さらに、押し込むと、内径寸法D2は熱収縮性チューブ6の外周径寸法D1と、略同寸法に形成されているので、ブラシ部3と容器10は同芯状態で収納される。さらに押し込むと、接着剤13により、接着固定部5内の各ブラシ片2は、それぞれ外方に押し広げられて内部隙間14が形成され、この内部隙間14に接着剤13が入り込み上昇する。他の接着剤13も外周隙間9に入り込み上昇を続け、固定部8に到達して、容器10と固定部8および接着固定部5の底面と側面は基より、その内部までをそれぞれ直接固定する。
【0019】
図4は、本発明に係る熱収縮性チューブでブラシ部を包んだ状態を示す他の実施例であり、図4の(a)は、熱収縮性チューブ6の先端部7に所定長さを有する熱収縮性チューブ61を被せ、それぞれの端面16を合わせて重合させ重合部15を形成したものであり、セグメントブラシ1として、被加工品を加工の際に生じる加工部4の外方への開きを、より防止するためのものである。なお必要に応じて、重合部15は3重以上に構成しても良く、重合部15は、加工部4をも包んでも良い。これにより、加工部4の外方への開き防止はさらに良好とすることができる。図4の(b)は、熱収縮性チューブ6の先端部7を所定寸法だけ折り返し部17を有するよう折り返して重合部15を形成したもので、ブラシ部3に熱収縮性チューブ6を被せる前に、重合部15を形成しておけばよく、その作業は容易である。なお、大径の熱収縮性チューブ61を、熱収縮性チューブ6に被せる場合は、それぞれの端面16を合わせるという煩わしい作業が生じたり、端面16同士が剥がれやすくもなるが、折り返し部17を設けることで、このようなことは解消させることができる。なお、重合部15を形成する折り返し部17は、外側に折り返して形成しているが、内側に折り返して形成しても良いものである。
【0020】
図5は、本発明に係るセグメントブラシの熱収縮性チューブを示す他の実施例であり、図5の(a)は、熱収縮性チューブの斜視図、(b)は、熱収縮性チューブでブラシ部を包んだ状態の正面図、(c)は、容器に熱収縮性チューブとブラシ部を収納固定した状態を示す一部切り欠き断面図である。
【0021】
熱収縮性チューブ6の固定部8には多数の接着孔18が形成されていて、接着剤13が投入されている容器10に、接着固定部5と固定部8を押し込むと、接着剤13は外周隙間9に入り込むと共に、内部隙間14から上昇して、接着孔18に入り込み、固定部8の側面と容器10を接着固定することができる。これにより、容器10と熱収縮性チューブ6の固定部8および、ブラシ部3の接着固定部5は、より強固に接着固定することが可能となる。なお、容器10に、接着固定部5と固定部8を押し込む寸前に、接着剤13の一部を接着孔18に塗りこんでおけば、さらにその接着効果は、良くなる。
【0022】
図6は、本発明に係るセグメントブラシの容器を示す他の実施例であり、図6の(a)は、容器の平面図、(b)は、容器に熱収縮性チューブとブラシ部を収納固定した状態を示す断面図である。容器10の内壁面には、開口部11から底面12までに形成された接着縦溝19が複数形成されており、接着剤13が投入されている容器10に、接着固定部5と固定部8を押し込むと、接着剤13は、接着縦溝19にも強制侵入させられ、容器10と熱収縮性チューブ6の固定部8および、ブラシ部3の接着固定部5は、さらにより強固に接着固定することが可能となる。これにより、被加工物をセグメントブラシ1が、回転加工すると、容器10とブラシ部3の接着固定部5および熱収縮性チューブ6の固定部8との間には、接着剥離力が働くが、接着縦溝19内に入り込んでいる接着剤13が、ストッパーの役目を果たし、剥離力を確実に防止することができる。さらに、接着縦溝19は、接着剤13の溢れ用路としても活用できるので、万一、接着剤13を多めに容器10に投入しても安心で、投入作業が容易で、熟練作業者による投入量管理等が不要となる利点も生じる。また、接着縦溝19の上面を、ブラシ部2と熱収縮性チューブ6を容器10に収納した後の、接着剤13到達の適正管理ラインとすれば、管理が目視ででき容易である。なお、接着縦溝19は、複数形成してあるが、単数でも良いものである。
【0023】
図7の(a)〜(d)は、本発明に係る容器にブラシ部を収納した状態を示す熱収縮性チューブのみ非断面した熱収縮性チューブの他の実施例を示す断面図である。熱収縮性チューブは、下端部を、図(a)の如くの斜め形状に形成した熱収縮性チューブ26や、図(b)の如くの波形形状に形成した熱収縮性チューブ36や、図(c)の如くの歯切り形状に形成した熱収縮性チューブ46を採用した形態も本発明に含まれる。図(a)〜(c)の如くの形状にする事により、熱収縮性チューブ26の端部を容器10の底面に当接させる事ができるので、熱収縮性チューブ26の容器10にたいする位置決めや、熱収縮性チューブ26のブラシ片2にたいする位置決めを正確かつ迅速に実施できる。また、1本の長尺の熱収縮性チューブの中央部を、図(a)から図(c)の如くの形状に切断することにより、2本の同一形状の熱収縮性チューブを製作できる。さらにまた、図(a)〜(c)の如くの形状にする事により、図2の(d)の如く、熱収縮性チューブ6の容器10側の端部を、熱収縮性チューブ6の長手方向にたいして直交させて切断した形態に比べて、端部の切断長をより長く確保できるので、外周隙間9にたいする熱収縮性チューブ26、36、46の容器10側の端部の接着力をより強固にする事が可能となる。また、図(d)の如く、ブラシ片2の加工部4にたいしてテーパ部30が形成された熱収縮性チューブ56を採用した形態も本発明に含まれる。テーパ部30が形成される事により、加工部4に加わる被加工物からの衝撃等をより緩和できると共に、ブラシ部3の広がりをより防止できる。
【0024】
図8は、本発明に係る容器にブラシ部を収納した状態を示す熱収縮性チューブのみ非断面したセグメントブラシの他の実施例を示す断面図である。セグメントブラシ11は、熱収縮性チューブ66の上部に接着層20が形成されてある。接着層20の材質には、ゴム性接着剤、軟質樹脂製接着剤、硬質樹脂製接着剤等、目的に応じて種々な材料が使用できる。接着層20が形成される事により、加工部4に加わる被加工物からの衝撃等をより緩和できると共に、ブラシ部3の広がりをより防止できる。
【0025】
なお、本発明の主旨を逸脱しない範囲で、様々な実施形態をとることができることは言うまでもないことである。例えば、熱収縮性チューブについては、熱収縮性チューブの内面に複数の縦溝を形成した形態も採用できる。熱収縮性チューブの内面に複数の縦溝を設けることで、この縦溝内にも円形のブラシ片を保持させることができ、熱収縮性チューブは複数のブラシ片を隙間なく、すなわち、隙間によるブラシ片の移動を防止でき、その内部に確実に抱合させることができる。また、熱収縮性チューブに、磁性力を有する素材を使用する形態も採用できる。例えば、酸化鉄を主成分とするフェライト等の強磁性力を有する材料を粉末にして、熱収縮性チューブに混入させる事により、磁性化された熱収縮性チューブは、加工により被加工面から剥離した切粉等を、熱収縮性チューブの表面に吸着させる事ができ、加工機の周囲の作業環境に切粉を飛散させる事を防止、抑制できる。さらにまた、図2の(d)における、熱収縮性チューブ6の容器10側の端部を、図7の(a)〜(c)の如くの形状にする事もできる。前記の如くの形状にする事により、図2の(d)の如く、熱収縮性チューブ6の長手方向にたいして直交させて切断した形態に比べて、端部の切断長をより長く確保できるので、外周隙間9にたいする熱収縮性チューブ6の容器10側の端部の接着力をより強固にする事が可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明のセグメントブラシは、被加工面の研削、研磨、表面処理、洗浄、バリ取り等の各種加工をする為のブラシとして、広く好適に使用することができる。
【符号の説明】
【0027】
1、11 セグメントブラシ
2 ブラシ片
3 ブラシ部
4 加工部
5 接着固定部
6、26、36、46、56、61、66 熱収縮性チューブ
7 先端部
8 固定部
9 外周隙間
10 容器
11 開口部
12 底面
13 接着剤
14 内部隙間
15 重合部
16 端面
17 折り返し部
18 接着孔
19 接着縦溝
20 接着層
30 テーパ部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8