(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0018】
次に、本発明の実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。
図1に示す車両用ブレーキ液圧制御システム10は、電気信号を伝達してブレーキを作動させるバイ・ワイヤ(By Wire)式のブレーキシステムと、電源OFF及びフェイルセイフ時用として、油圧を伝達してブレーキを作動させる旧来の油圧式のブレーキシステムの双方を備えて構成される。
【0019】
このため、
図1に示すように、車両用ブレーキ液圧制御システム10は、基本的に、運転者(操作者)によるブレーキペダル(ブレーキ操作子)12の操作に応じたブレーキ液圧を発生する入力装置14と、アクチュエータの動作によりブレーキ液圧を発生するモータシリンダ装置(スレーブシリンダ)16と、車両挙動の安定化を支援する挙動安定装置18と、モータシリンダ装置16を駆動制御する制御装置(制御手段)20とを備えて構成されている。なお、入力装置14とモータシリンダ装置16とが一体的に組み付けられて構成されてもよい。また、各図中では、制御装置20に入出力される信号線を省略している。
【0020】
これらの入力装置14、モータシリンダ装置16、及び、挙動安定装置18は、例えば、ホースやチューブ等の管材で形成された液圧路によって接続されている。また、バイ・ワイヤ式のブレーキシステムとして動作するように、入力装置14とモータシリンダ装置16とは、図示しないハーネスで電気的に接続されている。
【0021】
挙動安定装置18は、
図1に示されるように、配管チューブを介して各ホイールシリンダWに接続されている。各ホイールシリンダWは、車輪を制動する車輪ブレーキを構成するものである。各ホイールシリンダWに対してブレーキ液が供給されて各ホイールシリンダWが駆動することにより、ディスクを挟持し制動力が付与される。挙動安定装置18は、車輪ブレーキの各ホイールシリンダWに付与されるブレーキ液を適宜制御することで、例えば、アンチロックブレーキ制御や挙動安定化制御等の各種液圧制御を実行可能である。挙動安定装置18は、図示しない電磁弁やポンプ等が設けられた液圧ユニット、ポンプを駆動するためのモータ、電磁弁やモータを制御するための電子制御手段等を備えている。
【0022】
なお、車両用ブレーキシステム10は、エンジン(内燃機関)のみによって駆動される自動車だけでなく、ハイブリッド自動車、電気自動車、燃料電池自動車等を含む各種車両に対して搭載可能である。
【0023】
入力装置14は、運転者によるブレーキペダル12の踏み込み操作によってブレーキ液圧を発生するタンデム式のマスタシリンダ34と、マスタシリンダ34に付設された第1リザーバ36とを有する。このマスタシリンダ34のシリンダチューブ38内には、シリンダチューブ38の軸方向に沿って所定間隔離間する2つのピストン40a、40bが摺動自在に配設される。
【0024】
一方のピストン40bは、ブレーキペダル12に近接して配置され、プッシュロッド42を介してブレーキペダル12と連結されて直動される。また、他方のピストン40aは、一方のピストン40bよりもブレーキペダル12から離間して配置される。
【0025】
シリンダチューブ38の内周面には、一対のカップシール44a、44bがそれぞれ装着される。また、一方及び他方のピストン40a、40bとの間には、ばね部材50aが配設され、他方のピストン40aとシリンダチューブ38の側端部との間には、他のばね部材50bが配設される。なお、一対のカップシール44a、44bは、一対のピストン40a、40bの外周面に装着してもよい。マスタシリンダ34のシリンダチューブ38は、2つの出力ポート54a、54bを有する。また、マスタシリンダ34のシリンダチューブ38内には、運転者がブレーキペダル12を踏み込む踏力に対応したブレーキ液圧を発生させる第1圧力室56a及び第2圧力室56bが設けられる。
【0026】
液圧路は、マスタシリンダ34とホイールシリンダWとを連通させる第1ブレーキ液流路と、接続点Sを介して第1ブレーキ液流路に接続される第2ブレーキ液流路とを有する。
【0027】
第1ブレーキ液流路は、マスタシリンダ34の第1圧力室56aから4つのホイールシリンダWのうちの2つに至る第1ブレーキ液流路70aと、マスタシリンダ34の第2圧力室56bから4つのホイールシリンダWのうちの他の2つに至る第1ブレーキ液流路70bとから構成される。
【0028】
第2ブレーキ液流路は、モータシリンダ装置16とホイールシリンダWとを連通させるために設けられた流路であり、モータシリンダ装置16の第1液圧室98aから第1ブレーキ液流路70aに至る第2ブレーキ液流路100aと、モータシリンダ装置16の第2液圧室98bから第1ブレーキ液流路70bに至る第2ブレーキ液流路100bとから構成される。
【0029】
第2ブレーキ液流路100a及び第2ブレーキ液流路100bは、具体的には、入力装置14の装置本体の接続ポートとモータシリンダ装置16の出力ポート24aとを連通接続する配管チューブと、入力装置14の装置本体内に形成された孔部とから構成される。
【0030】
一方の第1ブレーキ液流路70aと一方の第2ブレーキ液流路100aとの接続点Sには、電磁弁からなる二位置三方向弁60aが配置される。他方の第1ブレーキ液流路70bと他方の第2ブレーキ液流路100bとの接続点Sには、電磁弁からなる二位置三方向弁60bが配置される。一方の二位置三方向弁60aと他方の二位置三方向弁60bは、それぞれ同一に構成される。この二位置三方向弁60a、60bは、マスタシリンダ34とホイールシリンダWとが連通しモータシリンダ装置16とホイールシリンダWとが遮断された第一状態と、マスタシリンダ34とホイールシリンダWとが遮断されモータシリンダ装置16とホイールシリンダWとが連通した第二状態とを切り換え可能とするものである。
【0031】
一方の二位置三方向弁60aとマスタシリンダ34との間の第1ブレーキ液流路70aには、第1圧力センサP1が配設される。この第1圧力センサP1は、二位置三方向弁60aよりもマスタシリンダ34側において第1ブレーキ液流路70aの液圧を検知するものである。第1圧力センサP1で検出された検出信号は、制御装置20に出力される。
【0032】
他方の二位置三方向弁60bとホイールシリンダWとの間の第2ブレーキ液流路70bには、第2圧力センサP2が設けられる。この第2圧力センサP2は、第1ブレーキ液流路70b上において、二位置三方向弁60bよりも下流側の液圧を検知するものである。また、挙動安定装置18が作動していないときには、ホイールシリンダWのブレーキ液圧を検知する。
【0033】
なお、
図1中において、二位置三方向弁60a、60bは、ソレノイドが通電されたソレノイドオン状態をそれぞれ示し、
図2中では、ソレノイドが通電されていないソレノイドオフ状態をそれぞれ示している。
【0034】
次に、
図3(a)、(b)、及び、
図4(a)、(b)を参照して、二位置三方向弁60a、60bの構成及び作用について説明する。なお、一方の二位置三方向弁60aと他方の二位置三方向弁60bは、それぞれ同一に構成されているため、一方の二位置三方向弁60aに基づいて詳細に説明し、他方の二位置三方向弁60bの説明を省略する。
【0035】
二位置三方向弁60aは、固定コアとして機能するバルブボディ100と、弁座部材102と、弁体104を含む変位機構106と、可動コア108と、コイルユニット110とを備えて構成されている。
【0036】
弁体104は、バルブボディ100の軸方向に沿って摺動する弁ロッド134と、弁ロッド134の先端に当接するボール弁104aとを有する。
【0037】
バルブボディ100は、軸方向に沿って貫通する貫通孔112を有する略円筒体からなる。バルブボディ100には、第1〜第3ポート114a〜114cが設けられる。
図4(a)に示されるように、第1ポート114aは、バルブボディ100の軸方向に沿った一端部(図面においては下端部)に設けられていて、第1ブレーキ液流路70aを介してマスタシリンダ34に連通接続される。第2ポート114bは、バルブボディ100の周壁に設けられていて、第1ブレーキ液流路70aを介してホイールシリンダWに接続される。第3ポート114cは、バルブボディ100の周壁に設けられ、第2ブレーキ液流路100aを介してブレーキシリンダ装置16に接続される。第3ポート114cは、第2ポート114bよりも上方(可動コア108側)に位置している。バルブボディ100の貫通孔112内には、弁座部材102、弁体104を含む変位機構106、及び、第3フィルタ116が収容されている。貫通孔112は、複数の段付の孔によって形成され、バルブボディ100の下方に向うにしたがって拡径している。なお、第3フィルタ116は、第3ポート114cから貫通孔112内に異物が浸入することを阻止するものである。
【0038】
バルブボディ100の一端部の開口には、第1ポート114aを覆う第1フィルタ118が装着されている。また、バルブボディ100の中間部の外周面には、第2ポート114bを覆う第2フィルタ120が装着されている。
【0039】
弁座部材102は、第1弁座部材102aと、第1弁座部材102aから所定距離だけ離間する下側に配置された第2弁座部材102bとを有する。第1弁座部材102a及び第2弁座部材102bは、それぞれ、バルブボディ100の下端側から圧入されてバルブボディ100内に固定(保持)されている。
【0040】
第1弁座部材102aは、大径部122と小径部124とが一体的に形成された略円筒体からなる。大径部122は、バルブボディ100の貫通孔112内に圧入されている。小径部124は、大径部122よりも小径である。小径部124の外周面と貫通孔112の孔壁との間には、環状の空間が形成されている。第1弁座部材102aの内部には、第1弁座部材102aを貫通する段付き孔部126が形成されている。段付き孔部126には、弁ロッド134の先端部が挿入されている。第1弁座部材102aの小径部124の下面(段付き孔部126の下側の開口縁)には、ボール弁104aが着座するテーパ状の第1着座面(第1弁座)128が設けられている。
【0041】
第2弁座部材102bは、大径部127と小径部129とが一体的に形成された略円筒体からなる。大径部127は、バルブボディ100の貫通孔112内に圧入されている。小径部129は、大径部127よりも小径である。小径部129の外周面と貫通孔112の孔壁との間には、環状の空間が形成されている。第2弁座部材102bの内部には、第2弁座部材102bを貫通する段付き孔部130が形成されている。第2弁座部材102bの小径部129の上面(段付き孔部130の上側の開口縁)には、ボール弁104aが着座するテーパ状の第2着座面(第2弁座)132が設けられている。第1着座面128と第2着座面132とは、上下に間隔をあけて対向している。
【0042】
変位機構106は、例えば鋼球からなるボール弁104と、バルブボディ100の貫通孔112に沿って変位可能に設けられた長尺な弁ロッド134と、ボール弁104aを保持するリテーナ136と、ボール弁104aが第1着座面128に着座する方向にボール弁104aを付勢する第1ばね部材(スプリング)138とを備える。このリテーナ136は、第1ばね部材138のばね力によってボール弁104aを第1着座面128に向かって付勢(押圧)しつつ、ボール弁104aを保持する保持器として機能するものである。
【0043】
弁ロッド134は、軸部140と摺動部142とを有する。軸部140の先端部は、第1弁座部材102aの段付き孔部126内に挿入されており、軸部140の先端(下端)は、ボール弁104aに当接している。また、軸部140は、第1ばね部材138のばね力に抗してボール弁104aを第2着座面132側に向かって押圧する。弁ロッド134の摺動部142は、バルブボディ100の貫通孔112に沿って摺動する。ボール弁104aは、弁ロッド134に固定されておらず、弁ロッド134から分離(離間)可能である。
【0044】
図5(a)は、リテーナの拡大斜視図、
図5(b)は、
図5(a)に示すリテーナの一部破断拡大斜視図、
図5(c)は、リテーナの底面部に形成されたテーパ部によってボール弁が保持された状態を示す部分拡大断面図である。
【0045】
図5(a)及び
図5(b)に示されるように、リテーナ136は、略有底円筒体からなり、底面部136aと、側周部136bと、フランジ部136cとから構成されている。なお、本実施形態では、リテーナ136が、底面部136aと、側周部136bと、フランジ部136cとによって一体的に構成されているが、これに限定されるものでなく、例えば、底面部136aと、側周部136b及びフランジ部136cとを別体で構成し、例えば、溶接や加締め等によって底面部136aと側周部136bとを一体的に結合するようにしてもよい。
【0046】
リテーナ136の底面部136aの中央には、ボール弁104aを保持する保持孔144が形成されている(
図5(b)、
図5(c)参照)。保持孔144は、平面視して略円形状の貫通孔からなる。なお、保持孔144の内径は、ボール弁104aの外径よりも小さくなるように設定されている。また、リテーナ136の底面部136aには、保持孔144に向かって徐々に縮径するテーパ部137が設けられている。このテーパ部137は、
図5(c)に示されるように、リテーナ136の底面部136aから下方側に向かって僅かに突出する環状突起部によって形成されている。ボール弁104aは、リテーナ136に接合されていないものの、保持孔144の下側の開口縁は、ボール弁104aの外周面に当接しており(
図5(c)参照)、ボール弁104aの左右方向へのずれを拘束している。
【0047】
さらに、リテーナ136の底面部136aには、リテーナ136の内部と外部とを連通させる複数(
図5(a)では8個)の連通孔139が形成されている。複数の連通孔139は、保持孔144を中心として周方向に略等角度離間して配置されている。なお、本実施形態では、8つの連通孔139を例示しているが、これに限定されるものではない。
【0048】
リテーナ136の側周部136bは、底面部136aに連続し底面部136aから上方に向かって延在する略円筒状に形成されている。この側周部136bは、リテーナ136が変位するときの摺動部として機能するものであり、
図3(a)及び
図3(b)に示されるように、第1弁座部材102aの小径部124に外嵌され、小径部124の外周面に沿って摺動する。
【0049】
図4(b)に示されるように、ボール弁104aが第1着座面128に着座したとき、第1弁座部材102aの小径部124の下面124aと、リテーナ136の底面部136aとが当接しないように所定のクリアランス141が確保されている。クリアランス141を設けることで、ボール弁104aが第1着座面128に着座したしたときでも、リテーナ136と第1弁座部材102aとが非当接状態となる。このため、第1ばね部材138の付勢力をボール弁104aに伝えることができる。
【0050】
リテーナ136の上部の外周縁部には、フランジ部136cが設けられている。このフランジ部136cは、側周部136bの上端から半径外方向に突出して形成されている。フランジ部136cは、後記するように、第1ばね部材138の上端部を受けるように設けられている。
【0051】
第1ばね部材138の上端部は、リテーナ136のフランジ部136cに係着されており、第1ばね部材138の下端部は、第2弁座部材102bの環状段部129に係着されている。第1ばね部材138は、そのばね力によってリテーナ136を第1弁座部材102側に向かって付勢する。ボール弁104aは、第1ばね部材138のばね力により第1着座面128に着座する方向に押圧されている。
【0052】
可動コア108は、磁性体からなる略円柱体からなり、バルブボディ100の上に配置されている。バルブボディ100の上部には、外周面に固定された有底円筒状のキャップ部材148が設けられている。可動コア108は、キャップ部材148の内部でその軸方向に沿って摺動可能に収容されている。
【0053】
可動コア108とキャップ部材148との間には、第2ばね部材150が介装されている。この第2ばね部材150は、ソレノイドオン状態からソレノイドオフ状態に切り換えられたとき、可動コア108が外部から付与される振動等によって動くことで異音が発生することを回避するために可動コア108を押さえ付ける機能を有する。第2ばね部材150のばね力は、第1ばね部材138のばね力よりも小さくなるように設定されている。
【0054】
コイルユニット110は、バルブボディ100の一部及びキャップ部材148の一部を囲繞するように配置されている。このコイルユニット110は、図示しない略円筒状のボビンと、ボビンに巻回されたコイル(ソレノイド)とによって構成されている。
【0055】
なお、第2ポート114bと第3ポート114cとの間のバルブボディ100の外周面には、Oリング152が装着されている。Oリング152は、入力装置14を構成する基台部14aの穴部14b(
図4(a)参照)に対して二位置三方向弁60aを取り付けた際、第2ポート114bと第3ポート114cとが連通しないようにシールする。
【0056】
以上のように構成された二位置三方向弁60aの動作について概略説明する。
コイルユニット110が通電されていないソレノイドオフ状態では、
図3(a)に示されるように、第1ばね部材138のばね力によってボール弁104aが第1弁座部材102aの第1着座面128に着座し、段付き孔部126が閉塞した状態にある。この状態では、第2ポート114bと第3ポート114cとが遮断された状態となる一方、第2弁座部材102bの段付き孔部130がボール弁104aによって閉塞されておらず開口しているため、第1ポート114aと第2ポート114bとが連通した状態となる。
【0057】
すなわち、ソレノイドオフ状態では、
図4(a)に示されるように、マスタシリンダ34及びホイールシリンダW間が連通状態となり、且つ、モータシリンダ装置16及びホイールシリンダW間が非連通状態となる。この結果、二位置三方向弁60aのソレノイドオフ状態では、マスタシリンダ34のブレーキ液圧をホイールシリンダWへ伝達することが可能となる。
【0058】
一方、コイルユニット110が通電されて励磁されると、コイルユニット110内で可動コア108を通るように上下に磁束が発生し、可動コア108が第1ばね部材のばね力に抗して下方(バルブボデイ100側)に変位する。これにより可動コア108が弁ロッド134を押圧し、この押圧力によって弁ロッド134の軸部140の先端がボール弁104aを下方側に向かって押圧する。この結果、ボール弁104aは、第1ばね部材138のばね力に抗して第1着座面128から離間する。
【0059】
ボール弁104aが第1着座面128から離間し、さらに弁ロッド134の軸部40によってボール弁104aが押圧されることで、終局的にボール弁104aが第2弁座部材102bの第2着座面132に着座し、第2弁座部材102bの段付き孔部130が閉塞される。なお、ボール弁104aが弁ロッド134の軸部140によって押圧されて変位する際、ボール弁104aを保持するリテーナ136の側周部136bは、第1弁座部材102aの小径部124の外周面に沿って摺動する。
【0060】
ボール弁104aが第2弁座部材102bの第2着座面132に着座することにより、第1ポート114aと第2ポート114bとが遮断された状態となる一方、第1弁座部材102aの段付き孔部126が開口するため、第2ポート114bと第3ポート114cとが連通した状態となる。つまり、ソレノイドオン状態では、
図3(b)に示されるように、モータシリンダ装置16及びホイールシリンダW間が連通状態となり、且つ、マスタシリンダ34及びホイールシリンダW間が非連通状態となる。この結果、二位置三方向弁60aのソレノイドオン状態では、モータシリンダ装置16のブレーキ液圧をホイールシリンダWへ伝達することが可能となる。
【0061】
なお、二位置三方向弁60aのソレノイドオン状態において、コイルユニット110への通電が停止された場合には、第1ばね部材138のばね力によってボール弁104aが第2着座面132から離間し、さらにボール弁104aが第1着座面128に着座した初期状態(原位置)に復帰する。
【0062】
図1に戻り、プッシュロッド42には、ブレーキペダル12を操作してもピストン40aが変位しない図示しないピストンの無効ストローク(遊びストローク)が設けられる。このピストンの無効ストロークにより、運転者のブレーキペダル12の踏み始めを検知することができる。この無効ストロークを図示しないストロークセンサで検知すると、制御装置20は、二位置三方向弁60a、60bのソレノイドを通電し、二位置三方向弁60a、60bをソレノイドオフ状態(
図3(a)参照)からソレノイドオン状態(
図3(b)参照)に切り換える。一方、運転者がブレーキペダル12から足を離間させ、ブレーキを解除したことをストロークセンサが検知すると、制御装置20は、ソレノイドの通電を停止し、その結果、二位置三方向弁60a、60bが、ソレノイドオフ状態に復帰する。
【0063】
マスタシリンダ34と二位置三方向弁60bとの間の第1ブレーキ液流路70bには、第1ブレーキ液流路70bから分岐する分岐液圧路58cが設けられる。分岐液圧路58cには、ノーマルクローズタイプ(常閉型)のソレノイドバルブからなる遮断弁62と、ストロークシミュレータ64とが直列に接続される。この遮断弁62におけるノーマルクローズとは、ノーマル位置(通電されていないときの弁体の位置)が閉位置の状態(常時閉)となるように構成されたバルブをいう。なお、
図1中において、遮断弁62は、ソレノイドが通電されて、図示しない弁体が作動した開弁状態を示し、
図2中では、ソレノイドが通電されていない閉弁状態を示している。この遮断弁62は、図示しないイグニッションスイッチがオン状態となったときに開弁状態となり、図示しないイグニッションスイッチがオフ状態となったときに閉弁状態となる。
【0064】
ストロークシミュレータ64は、バイ・ワイヤ制御時において、ブレーキペダル12のストロークに対応する反力を発生させて、ブレーキペダル12に対する踏力で制動力を発生させているかのごとき感触を運転者に与える装置であり、第1ブレーキ液流路70b上であって、二位置三方向弁60bよりもマスタシリンダ34側に配置されている。ストロークシミュレータ64には、分岐液圧路58cに連通する液圧室65が設けられている。液圧室65には、マスタシリンダ34の第2圧力室56bから吐出されたブレーキ液(ブレーキフルード)が流入する。
【0065】
また、ストロークシミュレータ64は、互いに直列に配置されたばね定数の高い第1リターンスプリング66aとばね定数の低い第2リターンスプリング66bと、第1及び第2リターンスプリング66a、66bによって付勢されるシミュレータピストン68とを備え、ブレーキペダル12のペダルフィーリングを既存のマスタシリンダと同等となるように設けられている。
【0066】
モータシリンダ装置16は、電動モータ(電動機)72及び駆動力伝達部73を有するアクチュエータ機構74と、アクチュエータ機構74によって付勢されるシリンダ機構76とを備える。
【0067】
また、アクチュエータ機構74の駆動力伝達部73は、電動モータ72の回転駆動力を伝達するギヤ機構(減速機構)78と、この回転駆動力を直線運動(直線方向の軸力)に変換してシリンダ機構76の第1スレーブピストン88a及び第2スレーブピストン88b側に伝達するボールねじ構造体(変換機構)80とを有する。
【0068】
電動モータ72は、制御装置20からの制御信号(電気信号)に基づいて駆動制御される、例えば、サーボモータからなる。また、電動モータ72は、図示しないストロークセンサで検出されたブレーキペダル12のペダルストロークに基づいて駆動する。
【0069】
ボールねじ構造体80は、軸方向に沿った一端部がシリンダ機構76の第2スレーブピストン88bに当接するボールねじ軸(ロッド)80aと、ボールねじ軸80aの外周面に形成された螺旋状のねじ溝に沿って転動する複数のボール80bと、ギヤ機構78のリングギヤに内嵌されて該リングギヤと一体的に回動し、ボール80bに螺合される略円筒状のナット部材80cと、ナット部材80cの軸方向に沿った一端側及び他端側をそれぞれ回転自在に軸支する一対のボールベアリング80dとを備える。なお、ナット部材80cは、ギヤ機構78のリングギヤの内径面に、例えば、圧入されて固定される。
【0070】
駆動力伝達部73は、このように構成されることにより、ギヤ機構78を介して伝達される電動モータ72の回転駆動力がナット部材80cに入力された後、ボールねじ構造体80によって直線方向の軸力(直線運動)に変換され、ボールねじ軸80aを軸方向に沿って進退動作させる。
【0071】
モータシリンダ装置16は、電動モータ72の駆動力を、駆動力伝達部73を介してシリンダ機構76の第1スレーブピストン88a及び第2スレーブピストン88bに伝達し、第1スレーブピストン88a及び第2スレーブピストン88bを前進駆動させることにより、ブレーキ液圧を発生させるものである。すなわち、モータシリンダ装置16は、ペダルストロークに基づいて駆動する電動モータ72と、電動モータ72の回転に伴って進退動作し互いに連結されることなく後退変位が規制されていないプランジャタイプの2つのピストン(第1スレーブピストン88a及び第2スレーブピストン88b)とを有する。なお、以下の説明において、第1スレーブピストン88a及び第2スレーブピストン88bの矢印X1方向(
図1参照)への変位を「前進」とし、矢印X2方向(
図1参照)への変位を「後退」として説明する。また、矢印X1は、「前方」を示し、矢印X2は、「後方」を示す場合がある。
【0072】
シリンダ機構76は、有底円筒状のシリンダ本体82と、シリンダ本体82に付設された第2リザーバ84とを有する。シリンダ機構76は、シリンダ本体82内にプランジャタイプの2つのピストン(第1スレーブピストン88a及び第2スレーブピストン88b)が直列に配置されたタンデム型である。第1スレーブピストン88a及び第2スレーブピストン88bを、互いに連結されることなく後退変位が規制されていない2つのピストンとすることで、例えば、モータシリンダ装置16の内部に配置されるタンデム型のピストン構造を簡素とし、シリンダ本体82内へのピストンの組付作業を簡便に行うことができる。
【0073】
第2リザーバ84は、入力装置14のマスタシリンダ34に付設された第1リザーバ36と配管チューブ86で接続され、第1リザーバ36内に貯留されたブレーキ液が配管チューブ86を介して第2リザーバ84内に供給されるように設けられる。
【0074】
第1スレーブピストン88aは、シリンダ本体82の前方の第1液圧室98aに臨むように配設される。第1スレーブピストン88aとシリンダ本体82の側端部(底壁)との間には、第1スレーブピストン88aを後方(矢印X2方向)に向かって押圧する第1スプリング96aが配置される。
【0075】
第2スレーブピストン88bは、第1スレーブピストン88aの後方(矢印X2方向)の第2液圧室98bに臨むように配設される。第1スレーブピストン88aと第2スレーブピストン88bとの間には、第1スレーブピストン88aと第2スレーブピストン88bとを離間する方向に付勢する第2スプリング96bが配置される。
【0076】
なお、第2スレーブピストン88bは、ボールねじ構造体80側に近接して配置され、ボールねじ軸80aの一端部に当接してボールねじ軸80aと一体的に矢印X1方向、又は、矢印X2方向に変位するように設けられる。また、第1スレーブピストン88aは、第2スレーブピストン88bよりもボールねじ構造体80側から離間した位置に配置される。
【0077】
シリンダ本体82の内周面には、環状溝部を介して一対のカップシール94a、94bがそれぞれ装着される。なお、一対のカップシール94a、94bは、第1スレーブピストン88a及び第2スレーブピストン88bの外周面に環状溝を介して装着されるようにしてもよい。
【0078】
シリンダ機構76のシリンダ本体82には、2つの出力ポート24a、24bが設けられる。また、シリンダ本体82内には、出力ポート24aからホイールシリンダW側へ出力されるブレーキ液圧を制御する第1液圧室98aと、出力ポート24bからホイールシリンダW側へ出力されるブレーキ液圧を制御する第2液圧室98bとが設けられる。
【0079】
本実施形態に係る二位置三方向弁60a、60bが組み込まれた車両用ブレーキ液圧制御システム10は、基本的に以上のように構成されるものであり、次にその作用効果について説明する。
【0080】
車両用ブレーキ液圧制御システム10の起動時には、
図1に示されるように、接続点Sに配置された二位置三方向弁60a、60bが通電により励磁されてソレノイドオン状態(
図3(b)参照)となり、ノーマルクローズタイプのソレノイドバルブからなる遮断弁62が通電により励磁されて開弁状態となる。二位置三方向弁60a、60bがソレノイドオン状態となることで第2ポート114bと第3ポート114cとが連通し、第2ブレーキ液流路100a及び第2ブレーキ液流路100bを介してモータシリンダ装置16とホイールシリンダWとが連通する。一方、二位置三方向弁60a、60bによって第1ブレーキ液流路70a及び第1ブレーキ液流路70bが遮断されているため、入力装置14のマスタシリンダ34で発生したブレーキ液圧(第1のブレーキ液圧)がホイールシリンダWに伝達されることはない。
【0081】
このとき、マスタシリンダ34の第2圧力室56bで発生したブレーキ液圧は、分岐液圧路58c及び開弁状態にある遮断弁62を経由してストロークシミュレータ64の液圧室65に伝達される。この液圧室65に供給されたブレーキ液圧によってシミュレータピストン68が第1、第2リターンスプリング66a、66bのばね力に抗して変位することにより、ブレーキペダル12のストロークが許容されると共に、擬似的なペダル反力を発生させてブレーキペダル12に付与される。この結果、運転者にとって違和感のないブレーキフィーリングが得られる。
【0082】
このようなシステムの起動状態において、制御装置20は、例えば、図示しないストロークセンサからペダルストロークが出力されると、モータシリンダ装置16の電動モータ72を駆動させてアクチュエータ機構74を付勢し、第1スプリング96a及び第2スプリング96bのばね力に抗して第1スレーブピストン88a及び第2スレーブピストン88bを
図1中の矢印X1方向に向かって変位(前進)させる。この第1スレーブピストン88a及び第2スレーブピストン88bの変位によって第1液圧室98a及び第2液圧室98b内のブレーキ液圧がバランスするように加圧されてペダルストロークに対応したブレーキ液圧が発生する。
【0083】
このモータシリンダ装置16における第1液圧室98a及び第2液圧室98bのブレーキ液圧は、第2ブレーキ液流路100a、第2ブレーキ液流路100b、及び、挙動安定装置18を介してホイールシリンダWに伝達され、前記ホイールシリンダWが作動することにより各車輪に所望の制動力が付与される。
【0084】
換言すると、車両用ブレーキ液圧制御システム10では、動力液圧源として機能するモータシリンダ装置16やバイ・ワイヤ制御する図示しないECU等が作動可能な状態においては、マスタシリンダ34とホイールシリンダWとの連通を二位置三方向弁60a、60bで遮断した状態でモータシリンダ装置16が作動する。
【0085】
これに対して、例えば、モータシリンダ装置16が作動しない状況(非起動時)では、
図2に示されるように、二位置三方向弁60a、60bがそれぞれソレノイドオフ状態となって第1ポート114aと第2ポート114bとが連通し、第2ブレーキ液流路100a及び第2ブレーキ液流路100bを遮断する。この結果、モータシリンダ装置16とホイールシリンダW間の連通が遮断され、マスタシリンダ34で発生するブレーキ液圧(第1のブレーキ液圧)がホイールシリンダWに付与される。
【0086】
本実施形態では、例えば、モータシリンダ装置16の第1スレーブピストン88aが矢印X2方向の戻り側(後退側)に変位しているときにモータシリンダ装置16を駆動する電動モータ72の電源が遮断された場合、制御装置20から出力される切換信号(又は、コイルユニット110への通電停止)によって二位置三方向弁60a、60bがソレノイドオフ状態に切り換わり、第1ブレーキ液流路70a及び第1ブレーキ液流路70bが連通状態になり、且つ、第2ブレーキ液流路100a及び第2ブレーキ液流路100bが遮断された状態となる。このため、マスタシリンダ34から供給されたブレーキ液の一部がモータシリンダ装置16側へ流通することが阻止される。この結果、本実施形態では、ペダルフィーリングが変化することなく、運転者に違和感を与えることを好適に回避することができる。
【0087】
また、本実施形態において、図示しないストロークセンサによってブレーキペダル12の踏み込み操作が開始されたことを検知したとき、制御装置20は、二位置三方向弁60a、60bをソレノイドオン状態に切り換える。本実施形態では、第1ブレーキ液流路70a及び第1ブレーキ液流路70bが二位置三方向弁60a、60bによって遮断されると共に、第2ブレーキ液流路100a及び第2ブレーキ液流路100bが連通状態となり、モータシリンダ装置16によって制御されたブレーキ液圧でホイールシリンダWを作動することができる。このようにブレーキペダル12が操作されたときだけ二位置三方向弁60a、60bを作動させることで、消費電力を低減することができる。
【0088】
さらに、本実施形態において、例えば、図示しないストロークセンサを介して運転者によるブレーキペダル12の踏み込み操作が解除されたことを検知したとき(運転者がブレーキペダル12から足を離したとき)、制御装置20は、二位置三方向弁60a、60bをソレノイドオフ状態に切り換える。本実施形態では、運転者によってブレーキペダル12が操作されていないとき、第1ばね部材138のばね力によりボール弁104aが第1着座面128に着座した初期位置に容易に復帰させることができる。このため、本実施形態では、二位置三方向弁60a、60bのソレノイドに通電する消費電力を抑制することができる。
【0089】
さらにまた、本実施形態では、第1ブレーキ液流路70a及び第1ブレーキ液流路70bのうちのいずれか一方が失陥したとき(片系統失陥時)、制御装置20により、二位置三方向弁60a、60bをソレノイドオフ状態として、第2ブレーキ液流路100a及び第2ブレーキ液流路100bをそれぞれ遮断することで、モータシリンダ装置16側へ余分なブレーキ液が流入することを阻止することができる。
【0090】
さらにまた、本実施形態では、制御装置20を介して、二位置三方向弁60a、60bをそれぞれソレノイドオフ状態とすることで、第2ブレーキ液流路100a及び第2ブレーキ液流路100bをそれぞれ遮断することができる。この結果、第1スレーブピストン88a及び第2スレーブピストン88bの変位によってモータシリンダ装置16内の第1液圧室98a及び第2液圧室98bの容積が増大する状態を好適に回避することができる。
【0091】
この場合、第1スレーブピストン88a及び第2スレーブピストン88bの変位(所定位置からの戻り過ぎ)を阻止するために、例えば、シリンダ本体82に固定された連結ピンを介して第1スレーブピストン88a及び第2スレーブピストン88bの変位を規制することが考えられるが、このようにするとモータシリンダ装置16のシリンダ機構76が複雑となり製造コストが高騰する。本実施形態では、二位置三方向弁60a、60bを第1ブレーキ液流路70a、70bと第2ブレーキ液流路100a、100bとの接続点Sにそれぞれ配設することで安価に第1スレーブピストン88a及び第2スレーブピストン88bの戻り過ぎを防止することができる。
【0092】
次に、本実施形態に係る二位置三方向弁60a、60bのチェック機能について説明する。
ボール弁104aが第1着座面128に着座したソレノイドオフ状態(
図3(a)、
図4(a)参照)において、例えば、モータシリンダ装置16の第1液圧室98a、98bのブレーキ液圧が高圧となったときには、この高圧のブレーキ液圧が第3ポート114cを介して二位置三方向弁60a、60b内に流入してボール弁104aを下方に向かって押圧する。このボール弁104aを押圧する押圧力が、第1ばね部材138のばね力に打ち勝つことにより、ボール弁104aが弁ロッド134及び第1着座面128から離間する。
【0093】
従って、モータシリンダ装置16側の高いブレーキ液圧は、第1ブレーキ液流路70a、70bを介してホイールシリンダW側及び/又はマスタシリンダ34側へ流入することが可能となる。このように、例えば、モータシリンダ装置16側のブレーキ液圧が高圧となったときに二位置三方向弁60a、60のソレノイドに通電しないソレノイドオフ状態(弁ロッド134が下方向に移動していない状態)であっても、モータシリンダ装置16側からホイールシリンダW側及びマスタシリンダ34側への流入のみが許容されるチェック機能によって、モータシリンダ装置16側のブレーキ液圧をマスタシリンダ34側及びホイールシリンダW側に逃がすことができる。
【0094】
次に、本実施形態に係る二位置三方向弁60a、60bを構成するリテーナ136の作用効果について説明する。
本実施形態では、リテーナ136を設けることにより、
図3(b)のソレノイドオン状態から
図3(a)のソレノイドオフ状態となるときにボール弁104aをリテーナ136によって押圧することで、ボール弁104aを積極的に初期状態に復帰させることができる。この結果、本実施形態では、例えば、モータシリンダ装置16側のブレーキ液圧が上昇した場合であっても流路の切換動作を速やかに行うことができる。
【0095】
また、本実施形態では、例えば、ボール弁104aの上流側と下流側との間に僅かな差圧が発生した場合、リテーナ136によってボール弁104aを初期位置(第1着座面128)に保持することにより、ボール弁104aが第1着座面128から離間して浮遊することを回避することができる。
【0096】
さらに、本実施形態では、例えば、イグニッションオフ(ソレノイドオフ)の状態でブレーキ操作を行った際、マスタシリンダ34からモータシリンダ装置16にブレーキ液が流入することを防ぐことができるので、ブレーキ操作のフィーリングに違和感が生じにくい。
【0097】
さらにまた、本実施形態では、リテーナ136の底面部136aの中央に、ボール弁104aを保持する保持孔144を形成することにより、保持孔144という簡易な構成でボール弁104aを保持することができる。
【0098】
さらにまた、本実施形態では、リテーナ136に、保持孔144に向かって徐々に縮径するテーパ部137を設けている。このようにすると、ボール弁104aを閉弁させるとき、ボール弁104aがテーパ部137の傾斜面によって案内(調芯)されるため、第1着座面128及び第2着座面132のいずれか一方に対してボール弁104aを所定位置で着座させることができる。また、例えば、ボール弁104aに当接する弁ロッド134が傾動した場合であっても、ボール弁104aがテーパ部137の傾斜面に沿って転動することで、ボール弁104aを第1着座面128及び第2着座面132のいずれか一方に対して確実に着座させることができる。
【0099】
さらにまた、本実施形態では、リテーナ136の外周縁部に、第1ばね部材138の上端部を受けるフランジ部136cを設けている。このようにすると、径の大きいコイルばねを第1ばね部材138として使用することが可能になると共に、第1ばね部材138のばね力がフランジ部136cを介してリテーナ136に伝達される。このばね力によって、リテーナ136を迅速に且つ安定して初期状態に復帰(変位)させることができる。
【0100】
さらにまた、本実施形態では、リテーナ136に、第1弁座部材102aの小径部124の外周面と摺動可能な側周部136bを設けている。このようにすると、二位置三方向弁60a、60bによって流路の切換動作を行うとき、側周部136bによってボール弁104aの変位をガイドすることができる。この結果、ボール弁10aを第1着座面128に対して、確実に着座させることができる。
【0101】
さらにまた、本実施形態では、リテーナ136の底面部136aに、該リテーナ136の内部と外部とを連通させる複数の連通孔139を形成している。このようにすると、ボール弁104aに付随してリテーナ136が下方向に変位する際(第1弁座部材102aの段付き孔部126が開口した際)、複数の連通孔139をブレーキ液が流通するので、モータシリンダ装置16とホイールシリンダW間のブレーキ液の流れがスムーズになる。また、複数の連通孔139をブレーキ液が流通することによって、リテーナ136の外部と内部との差圧が無くなり、リテーナ136を円滑に変位させることができる。
【0102】
さらにまた、本実施形態では、例えば、モータシリンダ装置16側のブレーキ液圧が上昇した場合であっても、二位置三方向弁60a、60bによって、第一状態と第二状態とを速やかに切り換えることができる。この結果、車両用ブレーキ液圧制御システム10の切換弁として好適に用いることができる。
【0103】
さらにまた、本実施形態では、バルブボディ100の貫通孔112が、複数の段付の孔によって形成されてバルブボディ100の下方に向うにしたがって拡径している。これにより、貫通孔112内に対して、弁ロッド134、第3フィルタ116、第1弁座部材102a、ボール弁104a、リテーナ136、第1ばね部材138、第2弁座部材102b、及び、第1フィルタ118の順序で容易に組み付けることが可能となる。この結果、組付作業が容易となり、製造工程を簡素化することができる。