(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を実施するための形態を、添付した図面を参照しつつ詳細に説明する。
(第1実施形態)
本実施形態では、電子制御ユニットをブレーキ制御装置としてのブレーキシステム用入力装置に適用した場合を例として説明する。
図1に示すように、ブレーキシステム用入力装置(以下、「入力装置」という)1は、基体10内に、図示しないブレーキペダルの踏力によってブレーキ液圧を発生させるマスタシリンダ15を有している。この他、基体10内には、ブレーキペダルに擬似的な操作反力を付与するストロークシミュレータ等を設けることができる。
なお、以下の説明における各方向は、入力装置1を説明する上で便宜上設定したものであるが、本実施形態においては、入力装置1を車両に搭載したときの方向と概ね一致している。
【0019】
入力装置1が適用されるブレーキシステムは、例えば、通常時用として、電気信号を伝達してブレーキを作動させるバイ・ワイヤ(By Wire)式のブレーキシステムと、フェールセーフ時用として、油圧を伝達してブレーキを作動させる旧来の油圧式のブレーキシステムの双方を備えて構成されるものが挙げられる。
【0020】
ブレーキシステムは、入力装置1のほか、モータによって駆動されるシリンダによりブレーキ液圧を制御するモータシリンダ装置(不図示)や、車両挙動の安定化を支援する車両用ブレーキ液圧制御装置(不図示)を備えて構成される。入力装置1、モータシリンダ装置および車両用ブレーキ液圧制御装置は、例えば、ホースやチューブ等の管材で形成された液圧路によって接続されるとともに、バイ・ワイヤ式のブレーキシステムとして機能するように、入力装置1とモータシリンダ装置とがハーネスで電気的に接続される。
【0021】
このようなブレーキシステムは、例えば、エンジン(内燃機関)のみによって駆動される自動車、ハイブリッド自動車、電気自動車、燃料電池自動車等を含む各種車両に対して搭載可能に設けられる。
【0022】
入力装置1の基体10は、車両に搭載される金属部品(非磁性の金属部品、例えば、アルミニウム合金製)であり、
図1(a)(b)に示すように、略直方体状を呈している。基体10の内部には図示しないシリンダ穴や複数の液圧路が形成されている。基体10の後面10aには、マスタシリンダ15に連結されるプッシュロッド16が配置され、また、基体10の上面10bにはリザーバ11が取り付けられる。また、基体10の側面10cには電子制御ユニット30が取り付けられる。
【0023】
プッシュロッド16にはブーツ17が取り付けられている。プッシュロッド16の端部にはブレーキペダルに連結される連結部18が設けられている。また、後面10aの四隅には、入力装置1を車両の図示しないダッシュボード等に取り付けるためのスタッドボルド13が設けられている。
【0024】
リザーバ11は、ブレーキ液を貯溜する容器である。リザーバ11の下面には、基体10の図示しないポートに接続される給液部が設けられており、リザーバ11に貯溜されたブレーキ液は、この給液部、ポートを介して基体10内に供給される。
【0025】
電子制御ユニット30は、樹脂材料によって一体成形されたハウジング31と、ハウジング31の開口を閉塞するカバー部材31bとを有する。ハウジング31は、
図3に示すように、ハウジング31の四隅角部に設けられた取付用孔(不図示)に挿通されるボルト31aを介して、基体10の側面10cに取り付けられる。ハウジング31の取付面には、シール部材31cが装着されている。
【0026】
ハウジング31は、
図1(b)に示すように、側面視で略矩形状を呈しており、内側に中間壁部32を有している。中間壁部32は、ハウジング31に一体に設けられており、
図3(a)に示すように、ハウジング31内の空間を二つに区画している。中間壁部32の一面側32Aの空間には、制御基板37が配置されている。また、中間壁部32の他面側32Bの空間は、コイル組立体35の大部分を収容するスペースとして機能している。
【0027】
中間壁部32には、
図1(b)に示すように、3つのコイル組立体35が装着されている。各コイル組立体35は、抜け止め部材20によって中間壁部32にそれぞれ抜け止め保持されている。各コイル組立体35は、基体10側に取り付けられた電磁弁2に装着され、電磁弁2を駆動する役割をなす。電磁弁2としては、ノーマルオープンタイプ(常開型)の電磁弁や、ノーマルクローズタイプ(常閉型)の電磁弁が挙げられる。電磁弁2の仕様は、入力装置1の構成によって適宜設定される。
また、中間壁部32には、
図1(b)に示すように、2つのセンサ3が挿通配置されている。センサ3としては、例えば基体10内の液圧路を流通するブレーキ液(ブレーキフルード)の液圧を検出する圧力センサ(液圧センサ)が挙げられる。
【0028】
中間壁部32の内部には、導電性材料によって形成される複数のバスバー(不図示)が埋設(モールド)されている。各バスバーの端部は、ハウジング31に設けられた図示しないコネクタ等に電気的に接続されている。
【0029】
中間壁部32には、
図3(a)に示すように、各コイル組立体35を装着する位置に対応して開口としてのコイル装着孔33Aが形成されている。コイル装着孔33Aは、コイル組立体35を挿通可能な内径を有している。中間壁部32の他面側32Bには、円筒状のガイド部33が形成されている。ガイド部33は、コイル装着孔33Aの縁部に沿って基体10側へ向けて延在し、コイル組立体35を囲むようにして保持する。
このようなコイル装着孔33Aに対して、コイル組立体35は、中間壁部32の一面側32Aから挿入される。
【0030】
中間壁部32には、コイル装着孔33Aの周縁部に一対の係合孔34,34が形成されている。一対の係合孔34,34は、
図2に示すように、コイル装着孔33A(コイル組立体35)の軸心O1を挟んで点対称位置に形成されている。各係合孔34は、側面視で略矩形状を呈している。各係合孔34には、抜け止め部材20の係合片23がそれぞれ挿入される。他面側32Bにおける係合孔34の口縁には、
図3(b)に示すように、傾斜状の係合部32cが形成されている。係合部32cには、係合片23の先端部23cが当接して係合される。
【0031】
コイル組立体35は、
図3(a)に示すように、巻線が券回されたボビン35cと、ボビン35cを囲繞し磁路を形成するヨーク35Aとを備える。ヨーク35Aは、ヨーク本体35aと、ヨーク本体35aの上面に装着されて係止されるヨークトップ35bとから構成される。
【0032】
ヨーク本体35aの軸方向端部には、
図2に示すように、側面視で略矩形状を呈するターミナル36が設けられている。ターミナル36には、一対のターミナル端子36a,36aが設けられている。各ターミナル端子36aは、ヨーク本体35a内の巻線と電気的に接続されている。各ターミナル端子36aには、接続端子として機能するスプリングコンタクト36bがそれぞれ取り付けられている。各スプリングコンタクト36bは、制御基板37(
図3(a)参照)に向けて延在しており、制御基板37に設けられた図示しない端子に電気的に接続されている。
【0033】
ターミナル36の角部36c,36cは、
図2に示すように、側面視でコイル装着孔33Aの開口縁部に掛かるように突出している。つまり、組み付け時に、中間壁部32の一面側32Aからコイル装着孔33Aにコイル組立体35を挿入すると、コイル装着孔33Aの開口縁部にターミナル36の角部36c,36cが当接して中間壁部32にコイル組立体35が載置される。つまり、他面側32Bへの抜け落ちが防止される状態に、コイル組立体35が中間壁部32に一時的に保持される。
【0034】
中間壁部32には、
図1(b),
図3(a)に示すように、弾性を有する抜け止め部材20が装着される。抜け止め部材20は、
図3(a)に示すように、中間壁部32の一面側32Aから中間壁部32に装着され、コイル組立体35を中間壁部32に保持する機能を有している。つまり、抜け止め部材20は、コイル組立体35が一面側32Aに抜けるのを防止している。抜け止め部材20は、
図2に示すように、基部21と、コイル組立体35を中間壁部32から離れる側に弾発的に付勢する一対の付勢片22,22と、中間壁部32に係合する一対の係合片23,23とを備えている。抜け止め部材20は、例えば、背面側から正面側(他面側32Bから一面側32A)にプレスで打ち抜くことにより形成される。この場合、各係合片23の先端部23cがプレス時のダレとなってアール状に形成される。
【0035】
基部21は、一対の直線縁21a,21aと、これらに繋がる一対の円弧縁21b,21bとを備えており、側面視で略小判形(樽形)の形状を呈している。一対の円弧縁21b,21bは、コイル装着孔33Aの開口縁部に略沿う円弧状とされている。基部21の中央部には、円形の電磁弁挿通孔21cが形成されている。この電磁弁挿通孔21cを通じて抜け止め部材20の内側に電磁弁2の頭部が挿通配置される。これによって、
図3(a)に示すように、一面側32Aに電磁弁2の頭部を逃がすことができる。これによって、ハウジング31の軸方向の小型化(薄型化)が可能となる。
基部21は、抜け止め部材20を中間壁部32に装着したときに、
図3(a)に示すように、中間壁部32の一面側32Aに配置される。
【0036】
一対の付勢片22,22は、
図3(a)に示すように、中間壁部32の一面側32Aから他面側32Bにコイル組立体35を弾発的に付勢する(
図3(a)では一方の付勢片22のみを図示)。一対の付勢片22,22は、
図2に示すように、電磁弁挿通孔21cを挟んで各円弧縁21bと電磁弁挿通孔21cとの間に設けられている。つまり、一対の付勢片22,22の周りが基部21によって囲まれている。
【0037】
一対の付勢片22,22は、コイル組立体35の周方向に沿う湾曲状とされており、抜け止め部材20の中心(軸心)O1に対して点対称に設けられている。各付勢片22は、
図4(a)(b)に示すように、その基端部22aが基部21に対して折り曲げられ、抜け止め部材20の背面側(コイル組立体35側、
図3(a)参照)に向けて傾斜状に突出している(
図5各図参照)。なお、
図4,
図5では、抜け止め部材20の側面から見た図(
図2参照)を正面図として各図を表している。
【0038】
各付勢片22の先端部22bは、
図4(a)(b)に示すように、基部21と略平行となるように形成されている。各先端部22bおよびその近傍部分は、抜け止め部材20を中間壁部32に装着したときにコイル組立体35の上面(ヨークトップ35b)に付勢力をもって当接する。つまり、抜け止め部材20は、コイル組立体35を付勢する機能とコイル組立体35を保持する機能とを併せ持っている。
【0039】
各付勢片22は、先端部22bに比べて基端部22aが幅広となっており、先端部22bに比べて基端部22a付近で大きくなる応力に対応する形状とされている。
各付勢片22の基端部22aの外縁部には、
図2に示すように、応力緩和用の小孔22cが形成されている。このような小孔22cを設けることで、基端部22aの外縁部周りに発生する応力が分散され、応力の分布が改善される。
【0040】
一対の係合片23,23は、
図2に示すように、軸心O1を挟んで点対称位置に形成されている。各係合片23は、中間壁部32の各係合孔34に対応する位置に設けられており、各係合孔34に対して一面側32Aから挿入され、係合孔34の他面側の開口縁部に係合される。本実施形態では、各係合片23が、付勢片22の基端部22aの近傍である基部21の角部21eに配置されている。係合片23は、垂下部23aと、垂下部23aの端部から折り返される折返し部23bと、を備え、
図3(a)(b)に示すように、断面略レの字形状に形成されている。各係合片23は、中間壁部32の一面側32Aから他面側32Bに延在している。各係合片23の先端部23cは、他面側32Bにおいて係合孔34の係合部32cに当接される。なお、先端部23cは、プレス加工時のダレによってアール状に形成されているので、係合部32cに対する先端部23cの接触で係合部32cが削られ難い構造となっている。したがって、ハウジング31内において樹脂の削り屑の発生が好適に防止され、製品の信頼性向上を図ることができる。また、先端部23cの接触で係合部32cが削られ難い構造であるので、高温時の樹脂難化や線膨張係数が異なることによる寸法変化が生じず、抜け止め部材20の抜け強度が低下することがない。
【0041】
次に、コイル組立体35および抜け止め部材20を装着する際の作用について説明する。
まず、中間壁部32の一面側32Aからコイル組立体35をコイル装着孔33Aに挿入する。そうすると、コイル組立体35のターミナル36の角部36c,36cがコイル装着孔33Aの開口縁部に当接し、中間壁部32にコイル組立体35が一時的に保持される(
図2参照)。
【0042】
その後、
図6(a)に示すように、中間壁部32の一面側32Aからコイル組立体35に抜け止め部材20を近づけ、一対の係合片23,23を中間壁部32の一対の係合孔34,34にあてがう。なお、
図6各図では、一方の側の係合片23および係合孔34を示している。
【0043】
その後、抜け止め部材20をコイル組立体35に向けて押し込み、
図6(b)に示すように、係合片23を係合孔34に挿入する。そうすると、係合片23の垂下部23aおよび折返し部23bが、係合孔34の内面34a,34bに当接して変形し、係合孔34を通過した後に元の形状に復元する。これによって、
図6(c)に示すように、折返し片3bの先端部23cが係合孔34の口縁の係合部32cに当接して係合される。このように一面側32Aから抜け止め部材20を押し込むだけで、抜け止め部材20の装着が可能であるので、装着作業が簡単であり、製造工程におけるコストダウンを図ることができる。
【0044】
一方、抜け止め部材20を装着すると、抜け止め部材20の付勢片22がコイル組立体35の上面(ヨークトップ35b)に当接して、一面側32Aからコイル組立体35を弾発的に付勢する。このとき、付勢片22の反力が抜け止め部材20の基部21に作用し、係合片23の先端部23cが係合部32cに弾力を持って押圧される。つまり、反力を維持したまま抜け止め部材20が固定されることとなる。したがって、係合部32cに対する係合片23の係合が強まり、中間壁部32に対する抜け止め部材20の脱落が好適に防止される。
【0045】
このように中間壁部32に抜け止め部材20が装着された状態で、抜け止め部材20の付勢片22は、前記のようにコイル組立体35を一面側32Aから他面側32Bに向けて弾発的に付勢しているので、コイル組立体35が一面側32Aに抜けるのを各付勢片22で押さえることができる。
したがって、抜け止め部材20によってコイル組立体35を中間壁部32に抜け止め保持することができる。
【0046】
電子制御ユニット30を基体10に取り付ける際には、基体10に取り付けられた各電磁弁2が各コイル組立体35に挿通されるように、基体10に対して電子制御ユニット30を位置決めする。そして、ボルト31aを用いて、基体10に電子制御ユニット30を取り付ける。
【0047】
以上説明した本実施形
態では、コイル組立体35を付勢する抜け止め部材20に、コイル組立体35を保持する機能を併せ持たせることができる。これによって、ハウジング31にコイル組立体35を保持させたサブアッシーを形成できるので、組付作業性に優れる電子制御ユニット30
を備えた入力装置1が得られる。
なお、中間壁部32に抜け止め部材20が直接装着される構造であり、例えばハウジング31の側壁等を用いた装着手段を採る必要がないので、側壁等から離れた位置にコイル組立体35が配置されるレイアウトであっても、抜け止め部材20を用いて容易にコイル組立体35を抜け止め保持することができる。このことは、抜け止め構造の簡単化、小型化に繋がり、ハウジング31のサイズダウン、コストダウンに寄与する。
【0048】
また、付勢片22と係合片23とを備える簡素な構成で、抜け止め部材20に、コイル組立体35を付勢する機能とコイル組立体35を保持する機能とを併せ持たせることができる。
また、付勢片22は、中間壁部32の一面側32Aからコイル組立体35を弾発的に付勢する構成であり、付勢片22の少なくとも一部が一面側32Aに配置されることとなるので、従来のように、中間壁部とコイル組立体との間に板ばねが配置されるものに比べて、他面側32Bにおける抜け止め部材20の配置スペースを小さくすることができる。したがって、コイル組立体35の軸方向において電子制御ユニット30の小型化を図ることができる。
【0049】
また、係合片23は、付勢片22の基端部22aの近傍に設けられているので、コイル組立体35からの反力を係合片23を介して中間壁部32で効率よく受けることができる。
【0050】
また、各付勢片22は、抜け止め部材20の軸心O1に対して点対称に一対の設けられているので、コイル組立体35をバランスよく付勢することができる。
【0051】
また、各付勢片22は、コイル組立体35の周方向に沿う湾曲状に形成されているので、付勢片22の長さを大きくすることができる。したがって、安定した付勢力でコイル組立体35を押さえることができる。
【0052】
また、付勢片22の基端部22aの外縁部に、応力緩和用の小孔22cが形成されているので、付勢片22の基端部22aへの応力集中を緩和することができる。
【0053】
また、付勢片22の側方に、電磁弁挿通孔21cが形成されているので、付勢片22の側方のスペースを利用して電磁弁挿通孔21cを効率よく形成することができる。この場合、付勢片22がコイル組立体35の周方向に沿う湾曲状に形成されているので、湾曲状に形成されるスペースを利用して電磁弁挿通孔21cをより一層効率よく形成することができる。
【0054】
(第2実施形態)
図7〜
図13を参照して第2実施形態に係る電子制御ユニットが適用される車両用ブレーキ液圧制御装置について説明する。なお、第1実施形態と同様の部分については、同様の符号を付してあり、その詳細な説明については省略している。
【0055】
図7に示すように、車両用ブレーキ液圧制御装置(以下、「ブレーキ制御装置」という。)1Aは、前記した自動四輪車などの車両(例えば、エンジン(内燃機関)のみによって駆動される自動車、ハイブリッド自動車、電気自動車、燃料電池自動車等を含む)に加えて、自動二輪車、自動三輪車、オールテレーン ビークル(ATV)のブレーキシステムに好適に用いられるものであり、車両の車輪に付与する制動力(ブレーキ液圧)を適宜制御する。以下においては、ブレーキ制御装置1Aを図示しない自動四輪車に適用した例について説明するが、ブレーキ制御装置1Aが搭載される車両を限定する趣旨ではない。
ブレーキ制御装置1Aが備わるブレーキシステムは、第1実施形態で説明した入力装置1やモータシリンダ装置を備えて構成される。
【0056】
ブレーキ制御装置1Aは、基体10Aと、電動モータ40と、電子制御ユニット30Aとを備えている。基体10Aは、第1実施形態と同様に、車両に搭載される金属部品(非磁性の金属部品、例えば、アルミニウム合金製)であり、略直方体状を呈している。基体10Aの内部には図示しないシリンダ穴や複数の液圧路が形成されている。基体10Aの下面10dに電動モータ40が取り付けられ、また、基体10Aの上面10bに電子制御ユニット30Aが取り付けられる。
【0057】
電子制御ユニット30Aは、樹脂材料によって一体成形されたハウジング31と、ハウジング31の開口を閉塞する図示しないカバー部材とを有する。
【0058】
ハウジング31は、略矩形状を呈しており、内側に中間壁部32を有している。中間壁部32には、装着されるコイル組立体35の数に対応して複数のコイル装着孔33Aが形成されている。中間壁部32の一面側32Aにおいて、コイル装着孔33Aの開口縁部には円弧状の規制壁32eが立設されている。規制壁32eの周方向端部には、ターミナルスペース32fが形成されている。このターミナルスペース32fには、コイル組立体35のターミナル36が位置決めされる。ターミナルスペース32fにターミナル36が配置されることで、各コイル組立体35は、コイル装着孔33Aに対して周方向に周り止め規制された状態で係止される。
【0059】
抜け止め部材50は、
図8に示すように、中間壁部32に係止される複数のコイル組立体35を一括して抜け止め保持する。本実施形態の抜け止め部材50は、中間壁部32の一面側32Aから中間壁部32に装着され、計六つのコイル組立体35を中間壁部32に保持するように構成されている。抜け止め部材50は、前記実施形態と同様に、各コイル組立体35が一面側32Aに抜けるのを防止している。
【0060】
抜け止め部材50は、
図9に示すように、前後方向に延在する基部51と、コイル組立体35を中間壁部32から離れる側に弾発的に付勢する複数の付勢片22と、中間壁部32に係合する複数の係合片23とを備えている。抜け止め部材50は、例えば、背面側から正面側(他面側32Bから一面側32A)にプレスで打ち抜くことにより形成される。この場合、各係合片23の先端部23cがプレス時のダレとなってアール状に形成される。
【0061】
抜け止め部材50を装着する際には、中間壁部32に各コイル組立体35が一時的に保持される(
図2参照)状態で、中間壁部32の一面側32Aから各コイル組立体35に抜け止め部材50を近づけ、各係合片23を中間壁部32の対応する係合孔34にあてがう。
その後、抜け止め部材50をコイル組立体35に向けて押し込み、各係合片23を各係合孔34に挿入する。そうすると、前記と同様に、
図6(a)(b)に示すように、各係合片23の垂下部23aおよび折返し部23bが、係合孔34の内面34a,34bに当接して変形し、係合孔34を通過した後に元の形状に復元する。これによって、
図6(c)に示すように、折返し片3bの先端部23cが係合孔34の口縁の係合部32cに当接して係合される。このように一面側32Aから抜け止め部材50を押し込むだけで、抜け止め部材50の装着が可能であるので、装着作業が簡単であり、製造工程におけるコストダウンを図ることができる。
【0062】
一方、抜け止め部材50を装着すると、抜け止め部材50の各付勢片22が各コイル組立体35の上面(ヨークトップ35b)に当接して、一面側32Aから各コイル組立体35を弾発的に付勢する。このとき、各付勢片22の反力が抜け止め部材50の基部51に作用し、各係合片23の先端部23cが対応する係合部32cに弾力を持って押圧される。つまり、反力を維持したまま抜け止め部材50が固定されることとなる。したがって、係合部32cに対する係合片23の係合が強まり、中間壁部32に対する抜け止め部材50の脱落が好適に防止される。
【0063】
このように中間壁部32に抜け止め部材50が装着された状態で、抜け止め部材50の各付勢片22は、前記のようにコイル組立体35を一面側32Aから他面側32Bに向けて弾発的に付勢しているので、各コイル組立体35が一面側32Aに抜けるのを各付勢片22でそれぞれ押さえることができる。
したがって、抜け止め部材50によって各コイル組立体35を中間壁部32に抜け止め保持することができる。
【0064】
本実施形態では、
図8に示すように、中心軸線O2を対称線として各コイル組立体35が線対称の位置関係となるように中間壁部32に装着されている。これに対応して、左右の抜け止め部材50,50は、中心軸線O2を対称線として線対称の形状に形成されている。以下の説明では、左側の抜け止め部材50を例にとって説明する。抜け止め部材50は、
図9各図、
図10各図に示すように、基部51と、複数の付勢片22と、複数の係合片23とを備えている。
【0065】
基部51は、各コイル組立体35(第一コイルn1〜第六コイルn6、
図8参照)の配置に沿って延在している。具体的に、基部51は、
図8に示すように、第一コイルn1と第二コイルn2との間から第二コイルn2と第三コイルn3との間へ延在し、その後、第三コイルn3と第四コイルn4との間を通じて第四コイルn4と第五コイルn5との間へ延在し、さらに、第五コイルn5と第六コイルn6との間へ延在している。
【0066】
各付勢片22は、各コイル組立体35(第一コイルn1〜第六コイルn6)に向けて、基部51の縁部からそれぞれ延出している(
図10各図参照)。本実施形態では、第一コイルn1〜第六コイルn6に対応して付勢片22が計六つ設けられている。各付勢片22は、中間壁部32の一面側32Aから他面側32Bにコイル組立体35を弾発的に付勢している。
【0067】
各係合片23は、
図8に示すように、中間壁部32に設けられた四つの係合孔34に対応して計四つ設けられている。
図9各図に示すように、本実施形態では、基部51の前後方向の中間部分において前後方向に延在するように形成された側縁51a,51aと、基部51の前後端において左右方向に延在するように形成された端縁51b,51bとに係合片23がそれぞれ形成されている。各係合片23は、基部51から折り返された折返し部23dを有して形成されている。
なお、側縁51aと端縁51bとは、その延長線同士が直交する位置関係となっている。
【0068】
以上のような抜け止め部材50は、中間壁部32の各係合孔34に各係合片23を挿入して係合することで、中間壁部32に装着される。
各コイル組立体35は、
図11に示すように、ハウジング31にサブアッシー化された状態で、抜け止め部材50の付勢片22によって弾発的に押圧され、ハウジング31の下面31eよりも幾分下方に突出する状態に保持される。一方、各コイル組立体35は、各付勢片22の付勢力に抗して、
図12に示すように、ハウジング31の下面31eと略面一になるようにコイル装着孔33Aの軸方向に移動可能である。
【0069】
これによって、
図13に示すように、基体10Aに対して電子制御ユニット30Aを取り付けた状態で、各コイル組立体35は、基体10Aの側面10cに対して付勢力をもって当接しつつ、ハウジング31の下面31eと略面一となる状態に保持される。したがって、各電磁弁2の所定の位置に各コイル組立体35が配置されることとなる。
【0070】
以上説明した本実施形態のブレーキ制御装置1Aによれば、一つの抜け止め部材50で複数のコイル組立体35を保持することができるので、部品点数を削減することができる。また、複数のコイル組立体35を一工程で組み付けることができる。
また、組付作業性に優れたブレーキ制御装置1Aが得られる。
【0071】
前記第1実施形態の電子制御ユニット30において、前記第2実施形態と同様に、ハウジング31の中間壁部32にコイル組立体35を保持した際に、ハウジング31の下面よりも幾分下方にコイル組立体35が突出するように構成してもよい。この場合にも、基体10に対して電子制御ユニット30を取り付けた状態で、各コイル組立体35が、基体10の側面10cに対して付勢力をもって当接しつつ、ハウジング31の下面と略面一となる状態に保持されるように構成することで、各電磁弁2の作動精度が向上された電子制御ユニット30が得られる。
【0072】
また、前記第1実施形態では、抜け止め部材20に対して付勢片22を一対設けたが、これに限られることはなく、三つ以上設けてもよい。この場合にも、抜け止め部材20の中心(軸心)O1に対して点対称に付勢片22を配置することによって、コイル組立体35をバランスよく付勢することができる。
【0073】
また、前記第1,第2実施形態において、付勢片22は、湾曲状に形成したが、直線状に形成してもよい。