特許第6376656号(P6376656)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6376656
(24)【登録日】2018年8月3日
(45)【発行日】2018年8月22日
(54)【発明の名称】防煙垂壁設置用装置
(51)【国際特許分類】
   A62C 2/06 20060101AFI20180813BHJP
   E04B 2/74 20060101ALI20180813BHJP
【FI】
   A62C2/06 506
   E04B2/74 561B
【請求項の数】10
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-192063(P2014-192063)
(22)【出願日】2014年9月21日
(65)【公開番号】特開2016-59727(P2016-59727A)
(43)【公開日】2016年4月25日
【審査請求日】2017年9月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】513183407
【氏名又は名称】株式会社タナテック
(74)【代理人】
【識別番号】100104639
【弁理士】
【氏名又は名称】早坂 巧
(72)【発明者】
【氏名】田中 真司
【審査官】 首藤 崇聡
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−220453(JP,A)
【文献】 特開2012−217800(JP,A)
【文献】 特開2008−220507(JP,A)
【文献】 特開平08−071195(JP,A)
【文献】 特開平10−179834(JP,A)
【文献】 実開昭51−41317(JP,U)
【文献】 実開昭52−11816(JP,U)
【文献】 実開昭52−72314(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A62C 2/06
E04B 2/74
B42F 1/00 − 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートタイプの防煙垂壁を設置するための防煙垂壁設置用装置であって,
(a)天井面に沿って取り付けられた状態においてシートの上部を支持するための支持枠と,
(b)シートの上縁に取り付けられるシート保持具であって,シートの上縁を挟んで保持した状態で,天井面に沿って取り付けられた状態の該支持枠の内部下方から挿入し該支持枠に引掛けて該シートを吊り下げるための,シート保持具とを含んでなり,
(c)該支持枠が,内部に該保持具の収容が可能な空間を画し下側が部分的に開いた横断面を有してなるものであり,該内部の片側に,上方へ開き且つ該支持枠の長手方向に延びた溝を備えており,
(d)該保持具が,シートをばねの反発力で挟んで保持するクリップ部と,該支持枠の該溝内に引掛かって該支持枠により懸架されるための突起部とを含んでなるものである,
防煙垂壁設置用装置。
【請求項2】
該保持具のクリップ部が,ばねと,該ばねとの間にシートを挟み込んで保持する押さえ面とを含むものである,請求項1の防煙垂壁設置用装置。
【請求項3】
該ばねが板ばねである,請求項1又は2の防煙垂壁設置装置。
【請求項4】
該溝を備えた側とは反対の側において,該支持枠の少なくとも下部が他の部分に対し着脱可能なカバー部材として構成されているものである,請求項1〜3の何れかの防煙垂壁設置用装置。
【請求項5】
該カバー部材がその内側において該保持具の表面付近まで内方へと延びた突出部を有するものである,請求項4の防煙垂壁設置用装置。
【請求項6】
請求項1〜5の防煙垂壁設置用装置とこれにより懸架されたシートとを含んでなる,防煙垂壁。
【請求項7】
請求項6の防煙垂壁であって,該シートの末端とこれに対向する壁面との間に間隔があく長さのシートが支持枠から吊り下げられており,該シートの端部にはその縁に沿って端部保持部材が固定されており,該端部保持部材の上端部及び下端部がそれぞれの牽引手段により牽引されており,該牽引手段は,該シートの末端とこれに対向する壁面との間において天井面に関して固定された支持部材に一端が取り付けられ,他端がそれぞれ該端部保持部材の上端部及び下端部に取り付けられているものである,防煙垂壁。
【請求項8】
該天井面に関して固定された該支持部材が,該シートの末端を超えて延びる該支持枠の端部に固定されているものである,請求項7の防煙垂壁。
【請求項9】
請求項6の防煙垂壁であって該シートの末端とこれに対向する壁面との間に間隔があく長さの該シートが支持枠から吊り下げられたものを,該シートに張力を負荷した状態で設置する方法であって,該シートに,その端部の縁に沿った端部保持部材を固定しておくことと,該シートの末端とこれに対向する壁面との間において天井面に関して固定された支持部材を準備し,該支持部材に対し該端部保持部材のそれぞれ上端部及び下端部とを相互に牽引した状態としておくことを含む,方法。
【請求項10】
該天井面に関して固定された該支持部材が,該シートの末端を超えて延びる該支持枠の端部に固定されているものである,請求項9の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,建築物に防煙垂壁を設置するための装置,及びこれを用いた防煙垂壁に関する。
【背景技術】
【0002】
ビル等一定以上の床面積を有する建築物には,防煙区画を構成する防煙垂壁の設置が建築基準法により義務づけられている。防煙垂壁は,火災時に発生する煙から人が避難するための時間的猶予を与えるためのものであり,従来一般的には,多数のガラス板を天井から所定の高さまで下ろしたものを連ねることによって構成されていた。それらは多くの場合,天井裏の梁等の支持構造に取り付けられた上側フレーム部材の下側にある細長い開口にガラス板の上縁を挿入し,ガラス板の下縁両端の角部を,上側フレーム部材から下げられた吊り金具の受け部に載せる等の方法で,取り付けられていた。このようなタイプの防煙垂壁は,力学的にあまり安定でないものが多く,一部のガラス板の角部が受け部から外れて落下すると,その隣のガラス板がその反動で同じ状態となって次々と連鎖的に落下し,防煙垂壁全体の崩落という事態を引き起こし易い。その上,ガラス板はこれを支える構造体が歪んだ場合,応力を受けて割れ易い。このため,従来の防煙垂壁の大半は地震に弱く,ある程度の強さの地震が起こった場合,ガラス板の割れや破片の落下,あるいは防煙垂壁全体の崩落を起こし,頭上から落下してくるガラス板や床面等に衝突して飛散するガラス片による怪我等の重大な身体的危険をもたらし,避難上の障害ともなり,また地震の終息後は,大量に散乱したガラス片が,速やかな復旧作業を妨げるという問題があった。
【0003】
このため,ガラス板に較べてはるかに軽くしかも柔軟性のあるシートを用い,これに張力をかけた状態でパネル化したものを利用した防煙垂壁も,一部において用いられている(特許文献1参照)。防煙垂壁に用いられるシート(以下,「防煙垂壁用シート」ともいう。)としては,基材としてのガラスクロスに,合成樹脂(例えば,ジアリルフタレート樹脂や不飽和ポリエステル樹脂)を含浸させ,あるいは更に樹脂にケイ酸その他の無機充填剤を含ませた,不燃性シートが知られている。ガラスクロスを基材とした樹脂含浸シートは,極めて薄く且つロール状に巻いておける程柔軟ではあるが,ヤング率は非常に大きく,引張に対して伸びにくいという性質を有する。
【0004】
それらのシートを用いた別の防煙垂壁として,取り付ける場所に適した長さに切断した1枚のシートの両端を所定の保持具によりそれぞれ保持し,それらを壁面間で水平方向に引張することで垂れ壁状に維持するタイプのものが知られている(特許文献2参照)。このものでは,シートの端部を保持した部材を,壁面に固定された保持具本体にある調節ボルトを回して壁側へ強く引き寄せることによって,シートに強い張力を生じさせ,その張力でシートを垂壁状に維持する,という手段が採用されている。
【0005】
上記のような,シートの端部を引き,張力でシートを維持するシートタイプの防煙垂壁において,ある程度以上の強さの地震の際,揺れに伴う建築物の歪みが生じた時,それに起因する歪み方向の引張応力が元の張力に加わることで,シートに過度な引張応力が作用する結果となった場合,シートや保持具の破損,変形等が起こり得るという潜在的問題がある。これに対処するために,シートの端部を,スプリングを用いて張力を維持した状態で保持することによって,地震時の揺れによる構造物の歪みが生じても,それに応じてスプリングが弾性変形してシート内の引張応力を緩和し,過度な引張応力の発生を未然に防ぐ,という仕組みの防煙垂壁取り付け装置も知られている(特許文献3)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−220508号公報
【特許文献2】特開2009−060965号公報
【特許文献3】特開2013−000210号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のようなシートの端部を引張して保持するタイプの防煙垂壁では,壁面を利用してシートの両端に張力をかけることでシートを張って垂壁状に維持している。シートには自重があるため,長い程中央付近が僅かに下がり易く,これに抗してシートを直線的に張るには,かなりの大きさの張力をかける必要がある。このため,壁面にはその張力に十分対抗するだけの強度が不可欠である。即ち,シートの末端を引張しつつ固定するための壁面が,埋め込んだボルト等を介して必要な張力を支持する役割を担うに十分な強度を持たない場合には,壁面の補強工事なしには設置できず,設置には余分な手間とコストがかかることになる。
従って,シートタイプの防煙垂壁であって,設置場所の壁面の強度を実質的に問わないものに対する潜在的需要がある。特に,防災の観点から,既存の多数の建築物に既に設けられているガラス板を用いた旧タイプの膨大な量の防煙垂壁の撤去と,地震時の安全性に優れたシートタイプの防煙垂壁への置き換えとを速やかに進めて行くことが重要であり,それには,シートタイプの防煙垂壁であって,設置場所の壁面の強度を実質的に問わないタイプのものがあれば,円滑な置き換えを進め易くなり,非常に有用である。
また,設置作業が簡単な作業で行えるものであれば,設置コストの低減に直結するため,やはり円滑な置き換えを促進し,有用である。
【0008】
上記背景の下において,本発明の目的は,シートタイプの防煙垂壁であって,従来のシートタイプの防煙垂壁に比べて簡単且つ迅速な設置が可能であり,しかも設置場所において,シートに張力を加える上で,シートの末端に対向する壁面に対し従来に比べて非常に僅かの負荷しかかけずにすみ,従って設置場所の壁面の強度を実質的に問わないタイプの防煙垂壁設置用装置及びこれを用いた防煙垂壁を提供することである。
【0009】
本発明の更なる目的は,当該タイプの防煙垂壁であって,設置場所において,シートに張力を加える上で,シートの末端に対向する壁面に対し全く負荷かけないようにしたもの,及びそのような仕方で当該防煙垂壁を設置する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は,シートタイプの防煙垂壁において,建築物の天井面に沿って取り付けられる支持枠であって,内部に長手方向に延びる上方へ開いた溝を有するものと,この溝に引掛けることのできる突起部及びシートの上縁に固定できるクリップ部を備えた保持具との組合せによりシートの自重をその上縁で支持するようにすることで,上記目的が達成できることを見出し,更に検討を加えて完成させたものである。即ち本発明は以下を提供する
【0011】
1.シートタイプの防煙垂壁を設置するための防煙垂壁設置用装置であって,
(a)天井面に沿って取り付けられた状態においてシートの上部を支持するための支持枠と,
(b)天井面に沿って取り付けられた状態の該支持枠に,シートの上縁を保持した状態で引掛けて該シートを吊り下げるためのシート保持具とを含んでなり,
(c)該支持枠が,内部に該保持具の収容が可能な空間を画し下側が部分的に開いた横断面を有してなるものであり,該内部の片側に,上方へ開き且つ該支持枠の長手方向に延びた溝を備えており,
(d)該保持具が,シートをばねの反発力で挟んで保持するクリップ部と,該支持枠の該溝内に引掛かって該支持枠により懸架されるための突起部とを含んでなるものである,
防煙垂壁設置用装置。
2.該保持具のクリップ部が,ばねと,該ばねとの間にシートを挟み込んで保持する押さえ面とを含むものである,上記1の防煙垂壁設置用装置。
3.該ばねが板ばねである,上記1又は2の防煙垂壁設置装置。
4.該溝を備えた側とは反対の側において,該支持枠の少なくとも下部が他の部分に対し着脱可能なカバー部材として構成されているものである,上記1〜3の何れかの防煙垂壁設置用装置。
5.該カバー部材がその内側において該保持具の表面付近まで内方へと延びた突出部を有するものである,上記4の防煙垂壁設置用装置。
6.上記1〜5の防煙垂壁設置用装置とこれにより懸架されたシートとを含んでなる,防煙垂壁。
7.上記6の防煙垂壁であって,該シートの末端とこれに対向する壁面との間に間隔があく長さのシートが支持枠から吊り下げられており,該シートの端部にはその縁に沿って端部保持部材が固定されており,該端部保持部材の上端部及び下端部がそれぞれの牽引手段により牽引されており,該牽引手段は,該シートの末端とこれに対向する壁面との間において天井面に関して固定された支持部材に一端が取り付けられ,他端がそれぞれ該端部保持部材の上端部及び下端部に取り付けられているものである,防煙垂壁。
8.該天井面に関して固定された該支持部材が,該シートの末端を超えて延びる該支持枠の端部に固定されているものである,上記7の防煙垂壁。
9.上記6の防煙垂壁であって該シートの末端とこれに対向する壁面との間に間隔があく長さの該シートが支持枠から吊り下げられたものを,該シートに張力を負荷した状態で設置する方法であって,該シートに,その端部の縁に沿った端部保持部材を固定しておくことと,該シートの末端とこれに対向する壁面との間において天井面に関して固定された支持部材を準備し,該支持部材に対し該端部保持部材のそれぞれ上端部及び下端部とを相互に牽引した状態としておくことを含む,方法。
10.該天井面に関して固定された該支持部材が,該シートの末端を超えて延びる該支持枠の端部に固定されているものである,上記9の方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば,防煙垂壁の設置場所に合わせて必要な長さの支持枠を天井面に沿って取り付け,対応する長さの防煙垂壁用シートの上縁に適宜の間隔で保持具をクリップ式に留め,それらの保持具を支持枠内部の溝に引掛けて懸架することでシートの自重が支持さる。このため,従来と異なり,自重でシートの中央付近が下がらないように張るために要していた張力成分は,不要となる。従って,シートの末端部の壁面への固定に際しては,従来のような強い張力をかけずに済み,単にシートが波打たないようにごく弱い張力をかけるだけで足りるから,適宜の手段で固定でき,また,実質上壁面の強度への考慮が不要となり,壁面の補強工事も不要となるため,壁面の強度を問わずにシートタイプの防煙垂壁を設置することが可能となる。また,シート全長を先ず支持枠に懸架した状態にしてから,シート末端部を壁面に適宜の方法により弱い張力で固定すればよいから,取り付け作業が容易である。
このため,本発明の防煙垂壁設置用装置は,特に,既存の多数の建築物に設けられているガラス板を用いた旧タイプの膨大な量の防煙垂壁を,地震時の安全性に優れたシートタイプの防煙垂壁で迅速に置き換えることを可能にする。
【0013】
特に,シートの末端の上端部及び下端部を,天井面に関して固定された支持部材に対して牽引するようにした場合は,壁面に全く負荷をかけずにシートに張力を加えて張ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は,本発明の防煙垂壁の一実施例の一部分を短く切り取って示した斜視図である。
図2図2は,本発明の防煙垂壁の一実施例における,シートを保持した1個の保持具の斜視図である。
図3図3は,本発明の防煙垂壁の一実施例における,シートを保持した1個の保持具の端面図である。
図4図4は,本発明の防煙垂壁の一実施例における,カバー部材を外した状態の支持枠の斜視図である。
図5図5は,本発明の防煙垂壁の一実施例における,カバー部材を外した状態の支持枠の端面図である。
図6図6は,本発明の防煙垂壁の一実施例における,カバー部材を外した状態で,シートを保持した保持具によりシートを懸架した状態の斜視図。
図7図7は,図1に示した防煙垂壁の端面図である。
図8図7は,本発明の防煙垂壁の更なる実施例における,シート末端の牽引の一例を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明において,防煙垂壁用シートとしては,当該用途に適合する不燃性シートであればよく,それ以外に特段の限定はない。そのようなシートの一例として,樹脂含浸ガラス繊維シートが知られている。樹脂含浸ガラスシートは複数のものが市販されており,例えば,ガラス繊維から作った織布(ガラスクロス)に合成樹脂(ジアリルフタレート樹脂又は不飽和ポリエステル樹脂等)を含浸させ,あるいは更に含浸樹脂にケイ酸その他の無機充填剤を含ませてある,国土交通大臣認定の不燃性シートが販売されており,本発明において好適に用いることができるものの一つである。
【0016】
本発明において,支持枠は,天井面に沿って取り付けることができるよう,適宜の位置にボルト穴その他,取付け用の適宜の形状及び/又は構造を有してよい。支持枠は,内部への,シートの上縁を保持した保持具の挿入と溝内への引掛けが可能なよう,少なくとも下側が部分的に開放されている。支持枠の長さは,防煙垂壁を取付けようとする場所に対応するものであるが,複数本の支持枠を天井面に沿って一列に取り付けることで足りるから,個々の支持枠の長さは適宜であってよく,また必要に応じて適した長さに切断して用いることもできる。
【0017】
支持枠は,シートを保持した保持具を内部に収容できる十分な空間を画している。内部には,支持枠の長手方向の中心面に関して片側に,上方に開き長手方向に延びた溝を有する。この溝は,保持部の突起部が入って引掛かるものであれば足りるから,突起部との関係においてそのようなものである限り,横断面の形状には特に限定はない。
【0018】
支持枠は,内部への保持具の挿入と溝内への引掛け作業の際に開放部を一層広く確保して作業を容易化できるよう,着脱可能なカバー部材とそれ以外の部分(本体部分)とを含むように構成してもよい。その場合,支持枠のうちカバー部材以外の部分(本体部分)は,下側が保持具の挿入及び溝内への引掛け作業がし易いように十分な広さで下部が開放されており,作業完了後,支持枠の本体部分にカバー部材が取り付けられて,開放部分の少なくとも一部が塞がれた状態となる。
【0019】
支持枠がカバー部材を含んで構成されている場合は,該カバー部材と他の部分(本体部分)との結合と分離のためのボルト穴その他,容易な着脱のための適宜の形状及び/又は構造を有してよい。
【0020】
支持枠は,通常,アルミニウム,アルミニウム合金,ステンレス鋼を含む各種の鋼等の金属を適宜選択して用いて形成することができる。
【0021】
保持具は,シートを挟んで保持するクリップ部と,支持枠の内部に設けられている溝に入って引掛かる突起部とを含んだ形状,構造,寸法のものであればよく,それ以外には特に限定されない。特に,クリップ部の具体的な構成も任意であり,シート(例えば,約0.5mm厚)を挟み込んで保持できるものであればよい。これには,ばねを利用するのが便利であり好ましい。クリップ部は,例えば,ばねとその反発力に対抗する押さえ面とで構成することができる。押さえ面は,例えば,保持具の突起部と一体の部材におけるばねとの当接面であってよい。具体的には,ばねがそのような押さえ面に一定の反発力を及ぼした状態で,即ち,ばねを押さえ面に押しつけた状態で,当該部材とばねとを固定(例えば,リベット,ボルト等で)することにより行うことができる。ばねの形状は本発明における本質ではなく,特に限定されない。好ましいばねの一例としては,板ばねが挙げられる。
【0022】
支持枠の内部の溝内に引掛けるための保持具の突起部は,上述のように押さえ面を提供するのと一体の部材としてよいが,また,クリップ部のばねを延長し,その先端部として構成することもできる。
【0023】
保持具のクリップ部におけるばねと押さえ面との間にばねの反発力に抗してシートの上縁を押し込むことで,シートの上縁の表裏2面をばねと押さえ面との間に挟み付けて保持することができる。こうして,保持具は,偶発的に外れることのないよう確実な仕方でシートの上縁に取り付けられる。
【0024】
適宜の間隔でシートの上縁に保持具を取り付けた後,それらの保持具を支持枠の内部に下方から挿入し,各保持具の突起部を支持枠内部の溝の中に入れて引掛けるという非常に簡単な作業だけで,シートをその全長にわたって支持枠に懸架された状態とすることができる。シートの末端は,壁面側に予め固定しておいた,例えばスプリングで張力を維持するタイプの防煙垂壁取り付け装置(例えば,特許文献3)を用いて(但し,従来の約1/5程度等とごく弱いに張力に調整して),壁面に取り付けることができ,壁面との隙間の閉鎖は適宜な方法で行えばよい。なお,シートの末端にごく僅かしか張力をかける必要がないことから,壁面へのシートの末端の取付けは,他の適宜の装置又は方法を任意に用いて行うこともできる。
【0025】
このように,シートの全長を支持枠に懸架させた後に,シートの端部を壁面側に弱い張力で取り付ける,というだけの簡単な作業で迅速に防煙垂壁の設置を行うことができる。
【0026】
また,シートの末端の上端部及び下端部を,壁面付近において天井面に関して固定された支持部材に対して牽引するようにした場合は,壁面に全く負荷をかけずにシートに張力を加えて張ることができる。この場合,シートの端部には,その縁に沿って端部保持部材が固定される。端部保持部材は,シートの端部が撓むのを防ぐと共に且つシートの端部の上部及び下部を壁面付近の天井面側から牽引するための結合部位を提供する。従って,この目的に適する限りその具体的形態は限定されないが,板状であることができ,1枚又は複数枚を組み合わせて用いてもよい。天井面側の支持部材は,シートの端部に対する牽引力を支持できるものであればその形態に限定はない。任意の取付け金具,或いはこれに更にSカン(1個又は2個)を結合させたものが挙げられる。支持部材は,支持枠の端部(又は例えば,旧タイプの防煙垂壁の天井側に固定された枠部材に本発明の防煙垂壁の支持枠を更に固定して用いる場合は,元の枠部材の端部)に固定される。支持部材とシート端部の上部及び下部との間の牽引には,ワイヤーその他の耐久力のある牽引力伝達部材を用いることができ,支持部材とワイヤーにそれぞれ取り付けられた対をなすナット及びボルトの組合せ,ターンバックル等を適宜用いて牽引力を発生させ調節すればよい。このような方法でシート末端の上部及び下部を牽引することにより,壁面に負荷をかけることなしにシートに所望の張力を発生させることができる。なお,本発明において,そのように牽引力を発生させて維持するための手段を「牽引手段」という。
【0027】
なお本発明において,支持部材について,「天井面に関して固定」というときは,天井面に関して位置的に固定されていれば足り,天井面自体に直接固定することを必ずしも意味しない。従って,天井面に既存の旧タイプの防煙垂壁吊り下げ用の枠部材が固定されて残っている場合には,当該旧枠部材に対して,本発明における支持枠をボルト等で固定してもよく,その場合には,本発明における支持枠の長さは,シートの長さまでとし,支持枠の末端を超えて延びた旧枠部材の端部に支持部材を固定して用いることが可能である。また,本発明の防煙垂壁の支持枠を直接天井面に固定するときは,支持枠も末端を壁面まで延ばしておき,その端部に支持部材を固定してもよい。
【0028】
また,支持枠が着脱可能なカバー部材を含む場合には,カバー部材を外した状態で,支持枠の溝に保持具の突起部を目視で確認しつつ引掛けることもでき,懸架の工程が更に容易となる。カバー部材はその後に取付ければよい。
【0029】
カバー部材は,その内側に保持具の表面付近まで内方へ延びた突出部を有するように構成することができる。その場合,支持枠の内部に保持具を挿入して溝に引掛けた後カバー部材を取付けると,カバー部材の突出部と溝との間に保持具が挟まれた形となる。そのため,たとえ偶発的な外力が作用した場合でも保持具が横断方向にずれて溝から外れる可能性がなくなり,シートの懸架状態が一層安定となるため,更に好ましい。この「突出部」は,このように防煙垂壁に偶発的な外力が働いたときでも保持具の突起部が溝から反対側に外れて支持枠から脱落してしまうのを防止することを目的としたものである。従って,突出部について「保持具の表面付近まで」の語は,溝から保持部の突起部が抜け且つ溝の縁からも外れて落下する事態を防止できるよう,保持具のそのような横断方向の位置ずれを防止できるものであればよいから,保持具の表面(例えば,ばねの表面)に接している場合も含む。
【実施例】
【0030】
以下,実施例を参照して本発明を更に具体的に説明するが,本発明が当該実施例に限定されることは意図しない。
【0031】
図1は,ある幅に亘って長く延びる本発明の防煙垂壁の一部分を短く切り取って示した斜視図である。図において1は,シートを懸架するために天井面に沿って取り付けられる支持枠である。支持枠1は,天面2に間隔をあけてボルト穴が設けられており(図示せず),それらを通して下からボルトを天井面にねじ込むことにより,天井面に沿って固定できるように構成されている。支持枠1は,全長に亘って図に示すように下側が部分的に開いており,その細長く延びた開口部から,防煙垂壁用の不燃性のシート3が重力に従って垂れ下がっている。支持枠1は内部に空間を画しており,内部の片側に,支持枠1の全長に亘って長手方向に延びた溝5が形成されている。支持枠1の内部には,保持具6が収容されており,その突起部7が支持枠1の溝5に嵌った形で引掛かることによって,定位置に支持されている。保持具6は,折り曲げられた板ばね8を備えており,板ばね8は,突起部7を含む一体のコの字状に折れ曲がったプレート9の板ばね側に面した表面(押さえ面)に押しつけられ反発力をこれに加えた状態で,プレート9に固定されている。板ばね8とプレート9とは,双方の水平部においてリベット10によって相互に固定されている。本実施例の支持枠1は,着脱可能なカバー部材11を含んでおり,カバー部材11は,保持具6(の板ばね8)の表面付近にまで延びる突出部12を備えている。
【0032】
図2は,シート3を保持した1個の保持具6の斜視図,図3はその端面図である。保持具6はシート3の上縁に配置される部品であり,それらの複数が,シートの長さに亘って両端付近及びそれらの間の適宜の位置に適宜の間隔で,シートの上縁に取り付けられる。保持具6は,板ばね8とプレート9との間に,板ばね8の押圧力に抗してシート3の上縁を押し込むことで,簡単に取り付けることができ,要所々々に取り付けられたそれらの保持具6によって,脱落の恐れなくシート3を安定して吊り下げておくことができる。
【0033】
図4は,カバー部材10を外した状態の支持枠1,即ち支持枠1の本体部分の斜視図であり,図5は,その端面図である。これらの図に見られるように,この状態では,支持枠1の片側のおよそ下半分は側面及び底面部分が開放されており,この開放部分を通して,シート3を吊り下げた支持枠1内部への保持具6の挿入が容易となり,支持枠1の本体部分の内部を目で見ながらの作業となるため,支持枠1の溝5の中への保持具6の突起部7の挿入を非常に容易に行え,支持枠1へのシートの取付けが一層速やかとなる。
【0034】
図6は,カバー部材11を外した状態で,シート3を保持した保持具6の突起部7を支持枠1の溝5に挿入し支持枠1によりシート3を懸架した状態の本実施例の防煙垂壁の斜視図である。この後,カバー部材11がボルトにより支持枠1の本体部分に取り付けられる。カバー部材11の取付けにより,同部材の突出部12が,支持枠1内の保持部材6(の板ばね8の)表面付近まで延びている。それにより突出部12は,カバー部材11の方向への保持部6の側方変位を実質的に防止し,これは,保持部6が何らかの偶発的な外力(例えば,地震時の縦揺れの加速度によるシートの突き上げ)の作用を受けた場合でも,溝5に引掛かっている保持具6が溝5から外れてシート諸共脱落するという事態の発生を防止する。カバー部材11を取付けた状態は図1で示されているとおりであり,図7は,その状態の端面図である。
【0035】
図8は,本発明の防煙垂壁の更なる実施例における,シート末端の牽引の一例を示す側面図である。天井Cの表面には,旧タイプの防煙垂壁の枠部材Fが残されており,本発明の防煙垂壁はこの枠部材Fに取り付けられている。図において,15は端部保持部材であり,複数枚の金属プレートよりなり,2枚一組がシートの末端の表裏を挟み込んでボルトで固定されている。L字金具18,ボルトフック19,Sカン20は,支持部材を構成している。L字金具は枠部材Fにボルトで固定されている。22はワイヤー,23は牽引力発生し調節するためのターンバックルである。シート3の末端には,2個のターンバックル23により,上部及び下部に牽引力が負荷され,それによりシート内には水平方向の張力(牽引力の水平方向成分に相当)が生ずる。この水平方向の張力によりシートが張られるが,壁Wは,そのために負荷を受けることがない。
【0036】
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明は,防煙垂壁を設置する場所においてシートの端部に面する壁面の強度を実質上必要とせず実質的に壁面の強度を問わないから,設置場所の制限が殆どなく,既存の建築物に設けられている膨大な量の旧タイプの防煙垂壁を,地震時の安全性に優れたシートタイプの防煙垂壁で迅速に置き換えることを容易にする点で,有用である。また,シートタイプの防煙垂壁の設置作業を非常に簡単且つ迅速化するものとしても,更に有用である。
【符号の説明】
【0038】
1=支持枠
2=天面
3=シート
5=溝
6=保持具
7=突起部
8=板ばね
9=プレート
10=リベット
11=カバー部材
12=突出部
15=端部保持部材
18=L字金具
19=ボルトフック
20=Sカン
22=ワイヤー
23=ターンバックル
C=天井
F=枠部材
W=壁面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8