(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6376668
(24)【登録日】2018年8月3日
(45)【発行日】2018年8月22日
(54)【発明の名称】ロッキングディファレンシャルアセンブリ
(51)【国際特許分類】
F16H 48/24 20060101AFI20180813BHJP
F16H 48/34 20120101ALI20180813BHJP
【FI】
F16H48/24
F16H48/34
【請求項の数】23
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2015-553924(P2015-553924)
(86)(22)【出願日】2014年1月23日
(65)【公表番号】特表2016-504548(P2016-504548A)
(43)【公表日】2016年2月12日
(86)【国際出願番号】US2014012702
(87)【国際公開番号】WO2014116802
(87)【国際公開日】20140731
【審査請求日】2016年12月14日
(31)【優先権主張番号】61/755,939
(32)【優先日】2013年1月23日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】390033020
【氏名又は名称】イートン コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】EATON CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】110001999
【氏名又は名称】特許業務法人はなぶさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】コクラン、スティーブン、ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】フレージャー、ダニエル、スタンレー
(72)【発明者】
【氏名】ヒルマン、チャド、ロバート
(72)【発明者】
【氏名】ヴァンダーヴォート、ジョン、キンメル
【審査官】
藤村 聖子
(56)【参考文献】
【文献】
特開2011−033117(JP,A)
【文献】
実開昭56−065246(JP,U)
【文献】
実開平03−021816(JP,U)
【文献】
特開2004−204873(JP,A)
【文献】
特開2012−122592(JP,A)
【文献】
特開昭56−135909(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 48/00−48/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸及びギヤ室を形成するデフケースと、
該デフケースの第1端部と選択的に相対回転可能なように配置された、第1サイドギヤと、
前記デフケースと選択的に相対回転可能なように、前記第1端部の反対側の前記デフケースの第2端部に配置された、第2サイドギヤと、
前記ギヤ室内で回転可能に支持され、各々が、前記第1サイドギヤ及び前記第2サイドギヤと噛み合う、少なくとも2つのピニオンギヤと、
前記第1端部に配置されたソレノイドと、
該ソレノイドによって選択的に磁気駆動されることが可能なプランジャと、
前記第2サイドギヤが、前記デフケースと相対回転することを選択的に防止するために、前記第2サイドギヤと選択的に係合可能な、ロックリングと、
各々が前記プランジャ及び前記ロックリングに連結され、前記ロックリングに、前記プランジャから所定の距離を保持させる、少なくとも2本のリレーロッドと、
を含み、
前記ソレノイドは、ステータに直接巻回されており、前記ステータは、
前記回転軸と同軸上にある縦軸を有する、環状壁と、
該環状壁から第1外径まで半径方向に延びる、ステータ第1環状フランジと、
前記環状壁から延び、前記ステータ第1環状フランジから距離をあけて配置される、ステータ第2環状フランジと、
を含み、
前記ステータ第2環状フランジは、前記ステータ第1環状フランジに向かい合う内側基部環状面,及び,前記ステータ第1環状フランジの遠位側に位置する外側基部環状面を有する円錐台形をしており、
前記内側基部環状面は、前記第1外径と等しい縁部外径を有し、また、前記外側基部環状面は、前記第1外径より大きい第2外径を有し、
前記ステータ第1環状フランジ,前記環状壁,及び,前記ステータ第2環状フランジは、前記ソレノイド用の一体型ボビンを形成し、
前記ステータは、強磁性体から形成され、
前記デフケースは、前記回転軸まわりに前記ステータと相対回転可能であることを特徴とするロッキングディファレンシャルアセンブリ。
【請求項2】
前記回転軸と平行になるような、前記第2サイドギヤの外径に形成された、サイドギヤドッグと、
前記ロックリングの内面の周りに形成され、係合解除位置から係合位置へ前記回転軸に沿って前記ロックリングを移動させることによって、前記サイドギヤドッグと選択的に係合可能である、補助ドッグと、
前記係合解除位置の方へ前記ロックリングを付勢するために、前記デフケースと前記ロックリングとの間に配置された、スプリングと、
前記ロックリングの外面上に形成される複数の突起部と、
をさらに含み、
複数の前記突起部の各々は、前記デフケース内に形成される其々の補助溝内にすべり込ませ、前記係合位置と前記係合解除位置との間の前記ロックリングの移動をガイドし、また、前記ロックリングが前記デフケースと相対回転することを防止し、
前記第2サイドギヤは、前記ロックリングが前記係合位置にある場合、前記デフケースと相対回転することが実質的に防止され、また、前記第2サイドギヤは、前記ロックリングが前記係合解除位置にある場合、前記デフケースと自由に相対回転することができ、
前記ロックリングは、前記回転軸に平行なロックリング厚みを有する、ことを特徴とする請求項1に記載のロッキングディファレンシャルアセンブリ。
【請求項3】
前記環状壁は円筒壁であり、
前記縦軸は円筒軸であり、
前記ステータ第1環状フランジは、前記円筒壁から、前記円筒軸に対して垂直に延びており、
前記ステータ第2環状フランジは、前記円筒壁から延び、前記ステータ第1環状フランジから距離をあけて配置され、また、前記ステータ第1環状フランジと平行であり、
前記ステータ第1環状フランジ,前記円筒壁,及び,前記ステータ第2環状フランジは、前記一体型ボビンを形成する、ことを特徴とする請求項1に記載のロッキングディファレンシャルアセンブリ。
【請求項4】
前記プランジャは、
強磁性円筒体であって、
前記回転軸と一直線になる、前記強磁性円筒体によって形成される円筒体軸と、
前記強磁性円筒体の面取り端部において環状斜面を有する内壁と、
プランジャ外径を有する外壁と、
前記面取り端部の遠位側のプランジャ端部において形成され、前記プランジャ外径より小さいプランジャフランジ直径を有する、プランジャ環状フランジと、を含んだ、
強磁性円筒体と、
該強磁性円筒体,及び,前記プランジャ環状フランジによって形成された、環状ノッチと、
前記強磁性円筒体内に形成された、複数のリレーロッド取り付けボアと、
複数の該リレーロッド取り付けボアの各々に向かって、前記強磁性円筒体の前記面取り端部において、各々形成される、複数のリレーロッド受入溝と、
を含み、
前記リレーロッド取り付けボアは、前記リレーロッド受入溝の概ね中心にあり、
前記リレーロッド受入溝と前記環状ノッチとの間の最短距離は、前記回転軸と平行な方向の前記ロックリングの厚みに等しいことを特徴とする請求項1に記載のロッキングディファレンシャルアセンブリ。
【請求項5】
前記内壁の前記環状斜面が前記ステータ第2環状フランジと接触することを防止するように、前記プランジャと前記デフケースとの間に配置されたスペーサ、
をさらに含むことを特徴とする請求項4に記載のロッキングディファレンシャルアセンブリ。
【請求項6】
前記スペーサは、前記環状斜面と前記ステータ第2環状フランジとの間において所定のギャップを有するように、前記プランジャに調整可能にねじ留めされるねじ式ロッドであることを特徴とする請求項5に記載のロッキングディファレンシャルアセンブリ。
【請求項7】
前記スペーサは、前記強磁性円筒体の前記面取り端部上に、距離をあけて配置される複数の突起部であることを特徴とする請求項5に記載のロッキングディファレンシャルアセンブリ。
【請求項8】
前記少なくとも2本のリレーロッドは、各々、
2つの端部を有し、中心軸において縦ロッド軸を形成する、円筒形ロッド部と、
前記2つの端部の其々に形成される前記円筒形ロッド部よりも小さな直径を各々有し、また、前記円筒形ロッド部と同心円を各々がなす、第1支柱及び第2支柱と、
前記第1支柱及び前記第2支柱において形成された環状溝と、
を含み、
前記第1支柱及び前記第2支柱は、概ね同一のものであり、また、前記リレーロッドは、両端部において対称であり、
前記第1支柱は、前記プランジャの前記環状ノッチ内に配置されて、前記第1支柱の前記環状溝内へ突出する保持リングによって、其々の前記リレーロッド取り付けボア内で保持される、ことを特徴とする請求項4に記載のロッキングディファレンシャルアセンブリ。
【請求項9】
前記回転軸と平行になるような、前記第2サイドギヤの外径に形成された、サイドギヤドッグと、
前記ロックリングの内面の周りに形成され、係合解除位置から係合位置へ前記回転軸に沿って前記ロックリングを移動させることによって、前記サイドギヤドッグと選択的に係合可能である、補助ドッグと、
前記係合解除位置の方へ前記ロックリングを付勢するために、前記デフケースと前記ロックリングとの間に配置された、スプリングと、
前記ロックリングの外面上に形成される複数の突起部と、
をさらに含み、
複数の前記突起部の各々は、前記デフケース内に形成される其々の補助溝内にすべり込ませ、前記係合位置と前記係合解除位置との間の前記ロックリングの移動をガイドし、また、前記ロックリングが前記デフケースと相対回転することを防止し、
前記ロックリングは、さらに、前記リレーロッド数に等しい数の延長タブを含み、
複数の前記延長タブは、各々、リレーロッド取り付け穴を有し、
前記リレーロッドの各々は、其々の前記第2支柱の前記環状溝に取り付けられるクリップによって、其々の前記リレーロッド取り付け穴内で保持される、ことを特徴とする請求項8に記載のロッキングディファレンシャルアセンブリ。
【請求項10】
複数の前記突起部は、9つの突起部を有し、また、前記リレーロッドは、3本存在することを特徴とする請求項9に記載のロッキングディファレンシャルアセンブリ。
【請求項11】
前記プランジャは、前記デフケースと共転するように取り付けられ、また、
前記プランジャは、前記回転軸に沿って前記デフケースに対して選択的に相対移動可能であることを特徴とする請求項1に記載のロッキングディファレンシャルアセンブリ。
【請求項12】
前記突起部の各々は、前記回転軸と垂直である放射状直線まわりに対称に配置された2つの対向面を有し、また、
前記2つの対向面間の角度は、約28°から約32°であることを特徴とする請求項2に記載のロッキングディファレンシャルアセンブリ。
【請求項13】
複数の前記突起部は、9つの突起部を有することを特徴とする請求項12に記載のロッキングディファレンシャルアセンブリ。
【請求項14】
前記デフケース内において前記回転軸と垂直に配置されるクロスシャフトをさらに含み、
前記クロスシャフトは、前記少なくとも2つのピニオンギヤの対向一対が、前記クロスシャフトを中心に回転するように、前記少なくとも2つのピニオンギヤの前記対向一対を支持することを特徴とする請求項1に記載のロッキングディファレンシャルアセンブリ。
【請求項15】
前記クロスシャフトと垂直に、かつ、前記デフケース内に、ヨークの中を通って前記回転軸と垂直に配置される、対向一対のスタブシャフト、をさらに含み、
前記ヨークは、前記クロスシャフトの周囲に配置され、
前記ヨークは、前記スタブシャフトを受け入れるための複数の補助開口を有し、
前記対向一対のスタブシャフトは、前記少なくとも2つのピニオンギヤの他の対向一対を支持する、ことを特徴とする請求項14に記載のロッキングディファレンシャルアセンブリ。
【請求項16】
ロッキングディファレンシャルシステムであって、
請求項1に記載の前記ロッキングディファレンシャルアセンブリと、
前記プランジャの位置を検知することによって前記ロックリングの状態を判断する、プランジャ位置センサと、
回路を選択的に閉じて前記ソレノイドに電力を供給する、電気スイッチと、
電子制御式ステータスインジケータと、
前記ロッキングディファレンシャルシステムの状態を表示するための前記電子制御式ステータスインジケータに電力を供給するための電子制御式ドライバ回路と、
を含み、 前記ロッキングディファレンシャルシステムの前記状態は、少なくとも3つの状態を含む、ことを特徴とするロッキングディファレンシャルシステム。
【請求項17】
前記電子制御式ステータスインジケータは、選択的照光式インジケータであり、また、前記ロッキングディファレンシャルシステムの前記状態は、点滅信号によって表示されることを特徴とする請求項16に記載のロッキングディファレンシャルシステム。
【請求項18】
前記ロッキングディファレンシャルシステムの前記状態は、第1状態,第2状態,及び,第3状態から成るグループから1つの状態が選択され、
前記第1状態は、前記ソレノイドへの電力を遮断する開いた状態にある前記電気スイッチを有し、また、前記ロックリングが、係合解除位置にある、係合解除状態であり、
前記第2状態は、前記ソレノイドへの電力を供給する閉じた状態にある前記電気スイッチを有し、また、前記ロックリングが、係合位置にある、係合状態であり、
前記第3状態は、前記ソレノイドへの電力を遮断する開いた状態にある前記電気スイッチを有し、かつ、前記ロックリングが、前記係合位置にあるか、または、前記電気スイッチが、前記ソレノイドへの電力を供給する閉じた状態にあり、かつ、前記ロックリングが、前記係合解除位置にある、遷移状態である、ことを特徴とする請求項16に記載のロッキングディファレンシャルシステム。
【請求項19】
前記電子制御式ステータスインジケータは、選択的照光式インジケータであり、
前記少なくとも3つの状態は、第1状態,第2状態,及び,第3状態を含み、
前記第1状態が、前記電子制御式ステータスインジケータを照明しないことによって表示され、
前記第2状態が、前記電子制御式ステータスインジケータを継続的に照明することによって表示され、
前記第3状態が、1Hzから20Hzの間の周波数において約50%のデューティサイクルで、前記電子制御式ステータスインジケータを点滅させることによって表示される、ことを特徴とする請求項16に記載のロッキングディファレンシャルシステム。
【請求項20】
前記ステータの周囲に巻回され、前記プランジャの位置に応答して前記ソレノイドのインダクタンスを検知する、二次コイルをさらに含むことを特徴とする請求項16に記載のロッキングディファレンシャルシステム。
【請求項21】
前記環状壁は円筒壁であり、
前記縦軸は円筒軸であり、
前記ステータ第1環状フランジは、前記円筒壁から、前記円筒軸に対して垂直に延びており、
前記ステータ第2環状フランジは、前記円筒壁から延び、前記ステータ第1環状フランジから距離をあけて配置され、また、前記ステータ第1環状フランジと平行であり、
前記ステータ第1環状フランジ,前記円筒壁,及び,前記ステータ第2環状フランジは、前記一体型ボビンを形成する、ことを特徴とする請求項20に記載のロッキングディファレンシャルシステム。
【請求項22】
表面に直接巻回された前記ソレノイドを有するステータと、
該ステータに連結された回転防止ブラケットの上に配置される非接触位置センサと、
をさらに含み、
前記非接触位置センサは、前記プランジャの軸方向位置,または,前記プランジャに取り付けられた目標物を検知するものである、ことを特徴とする請求項16に記載のロッキングディファレンシャルシステム。
【請求項23】
前記非接触位置センサは、ホール効果位置センサであることを特徴とする請求項22に記載のロッキングディファレンシャルシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2013年1月23日に出願された米国特許仮出願第61/755,939号に対する優先権を主張し、その開示内容は、その全体を参照として本明細書に組み込む。
【背景技術】
【0002】
ロッキングディファレンシャルは、従来型の自動車用“オープン”ディファレンシャルと比較して、追加機能を有することができる。ロッキングディファレンシャルを備えた車両は、“オープン”ディファレンシャルを備えた車両と比較して、駆動輪におけるトラクションの掛かり具合の増大を体験するであろう。
【0003】
ロッキングディファレンシャルを備えた車両における、トラクションの掛かり具合は、得られているトラクション,または,各車輪における路面状況に関係なく、各車軸(アクスル)における2つの駆動輪を、同一回転速度に規制することによって、増大される。ロッキングディファレンシャルは、両輪が共通の車軸にあるかのように、車軸に取り付けられた両輪を共転させる。
【0004】
オープンディファレンシャル,または,ロックされていないロッキングディファレンシャルは、車軸に取り付けられた各車輪が、異なる速度で回転することを可能にする。車両が曲がり角を曲がる際、描く円弧がより小さい半径のほうの車輪(内側の車輪)は、描く円弧がより大きい半径のほうの車輪(外側の車輪)より遅く回転する。ロックされていないロッキングディファレンシャル,または,オープンディファレンシャルがなければ、これらのタイヤの1つ(外側の車輪)は、旋回時に摩耗するであろう。
【0005】
オープンディファレンシャルがあると、車軸の1つの車輪が滑りやすい路面上にある場合、その滑りやすい路面上にある車輪は、もう1つの車輪が車両を移動させるために加えられる十分なトルクを有さずに、空回りしてしまう傾向があろう。例えば、オープンディファレンシャルを備えた車両は、両輪のいずれかが湿った氷上に載ると、もう一方の車輪が載る舗道がどんなに乾燥していても、丘を登ることができないであろう(これは、スプリットμ路として公知である)。
【0006】
それに対して、ロックされたディファレンシャルは、同一の車軸における両側の車輪を、同一速度で共転するように強制的に回転させる。従って、各車輪は、車輪/路面のトラクション,及び,動力伝導機構の性能が許容する限り、同トルクをかけることができる。スプリットμ路を備えた丘上にある車両の例において、ロックされたディファレンシャルは、オープンディファレンシャルを備えること以外は同一の車両が登ることができないような丘を、その車両が登ることを可能にする。また、ロッキングディファレンシャルは、例えばドラッグレースまたは除雪作業のような特定の条件下において改善された車両性能を引き出す、よりよいトラクションを提供することができる。
【0007】
全体のうちの一部の車両は、固定解除状態から固定状態へ再構成されることが可能なディファレンシャルを有する。このような車両は、例えば、旋回時にタイヤが摩耗することを防ぐために、標準状態において固定解除状態のディファレンシャルによって運転され、また、車輪のスリップが生じた場合にロックされるディファレンシャルによって運転されるように、再構成されることが可能である。
【発明の概要】
【0008】
本開示におけるロッキングディファレンシャルアセンブリは、回転軸及びギヤ室を形成するデフケースを含む。第1サイドギヤが、デフケースの第1端部に存在する。第2サイドギヤが、デフケースと選択的に相対回転可能なように、第1端部の反対側のデフケースの第2端部に存在する。少なくとも2つのピニオンギヤが、第1サイドギヤ及び第2サイドギヤと噛み合うように、ギヤ室内で回転可能に支持される。ソレノイドが、第1端部に存在する。プランジャは、ソレノイドによって選択的に磁気駆動されることが可能である。ロックリングは、第2サイドギヤが、デフケースと相対回転することを選択的に防止するために、第2サイドギヤと選択的に係合可能である。少なくとも2本のリレーロッドが、各々がプランジャ及びロックリングに連結され、ロックリングに、プランジャから所定の距離を保持させる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
本開示の複数の例示における特徴及び利点は、以下の詳細な記述,及び,図面を参照することによって明らかになるであろう。本明細書において、同一の符号は、同一,または,場合によっては同一ではないが類似の構成要素に相当する。記載を簡潔にするために、符号は、それが現れた他の図面と関連して記述されるが、前述した機能を有する特徴は、記述されない。
【
図1】本開示における一例に従ったロッキングディファレンシャルシステムを備えた車両の概略図である。
【
図2】本開示における一例に従ったロッキングディファレンシャルの斜視図である。
【
図3】
図3Aは、
図2に示されているロッキングディファレンシャルの斜視断面図であり、
図3Bは、
図2に示されているロッキングディファレンシャルの立体分解図であり、また、
図3Cは、ロックリングがソレノイドと同じ側にあるロッキングディファレンシャルの断面図である。
【
図4】本開示に従ったステータの一例の縦断側面図である。
【
図5】
図5Aは、本開示に従ったプランジャの一例の縦断側面図であり、また、
図5Bは、本開示に従ったプランジャ及びリレーロッドの一例の分解側面図である。
【
図6】
図6Aは、本開示に従ったロックリングの一例の平面図であり、
図6Bは、本開示に従った、エンドカバーが取り外されたロッキングディファレンシャルの一例の斜視図であり、また、
図6Cは、
図2に示されたロッキングディファレンシャルにアセンブリされるロックリング,リレーロッド,及び,プランジャの一例の斜視図である。
【
図7】
図7Aは、本開示に従った、ロックリングが係合解除位置にあるディファレンシャルアセンブリの一例の断面図であり、また、
図7Bは、本開示に従った、ロックリングが係合位置にあるディファレンシャルアセンブリの一例の断面図である。
【
図8】
図8Aは、本開示に従ったディファレンシャルギヤセットの部分的な分解斜視図であり、また、
図8Bは、本開示に従ったクロスシャフトの一例の分解斜視図である。
【
図9】本開示に従ったクロスシャフトのもう1つの例の分解斜視図である。
【
図10】本開示に従ったステータ,プランジャ,及び,位置センサの一例の拡大断面図である。
【
図11】本開示に従った照明の点滅信号(フラッシュコード)の一例を示した時間グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本開示は、概して、ロッキングディファレンシャル、とりわけ車両の車軸に用いられる電子制御式のロッキングディファレンシャルに関するものである。ここで用いられる電子制御式のロッキングディファレンシャルは、電気信号に応答して固定解除状態と固定状態との間で切換するディファレンシャルを指す。固定状態において、ディファレンシャルに連結された両車軸は、同方向に同一速度で共転する。
【0011】
電気信号は、例えば車輪のスリップの検知のような車両状態に応じて自動的に生成されてもよい。また、電気信号は、例えば運転手が車両のコントロールパネルのボタンを押すような、運転手からの要求に応じて生成されてもよい。
【0012】
本開示における例は、ディファレンシャルが、同様のサイズの従来のロッキングディファレンシャルより高いトルクで動作することを可能にする。また、ロッキング機構を作動させるための時間が、従来の電子制御式ロッキングディファレンシャルと比較して、短縮されることが可能である。さらに、ステータスインジケータが、本開示における電子制御式ロッキングディファレンシャルシステムの動作に関する、より詳細かつ正確な情報を与えることによって、より満足感を与えるユーザー体験を提供することが可能である。
【0013】
図1を参照すると、車両70用のパワートレーン5は、モータ6と,モータ6に連結されたプロペラシャフト7と,車軸アセンブリ8とを含む。このプロペラシャフト7は、例えば、ギヤ装置(図示せず)によって連結され、車軸ハウジング9内の車軸シャフト13,13’を回転駆動する。車軸アセンブリ8は、車軸ハウジング9と,車軸ハウジング9内で支持されたロッキングディファレンシャルアセンブリ10と,第1及び第2駆動輪98,98’に其々連結された車軸シャフト13,13’とを含む。
【0014】
デフケース12内に配置されたギヤセット97は、デフケース12から車軸シャフト13,13’へ回転力を伝達し、また、車軸シャフト13,13’間の相対回転を選択的に可能にする。
図1に示されているロッキングディファレンシャルアセンブリ10は、後輪駆動の車両に適用されているが、本開示は、前輪駆動の車両に用いられるトランスアクスル,四輪駆動の車両に用いられるトランスファーケース,または,如何なる車両のパワートレーンに用いられてもよい。
【0015】
図2,3A,及び,3Bを合わせて参照すると、本開示における一例が、ロッキングディファレンシャルアセンブリ10を含んで示されている。ロッキングディファレンシャルアセンブリ10は、回転軸14,及び,ギヤ室16を形成するデフケース12を有する。デフケース12は、車軸ハウジング9内で回転軸14まわりに回転する(
図1参照)。第1サイドギヤ18は、デフケース12の第1端部19と選択的に相対回転可能なように配置されている。第2サイドギヤ20は、デフケース12と選択的に相対回転可能なように、第1端部19の反対側のデフケース12の第2端部21に配置されている。
【0016】
この第2サイドギヤ20は、回転軸14と平行になるような、第2サイドギヤ20の外径24に形成されたサイドギヤドッグ22を有する。少なくとも2つのピニオンギヤ26が、ギヤ室16内で回転可能に支持されている。これら少なくとも2つのピニオンギヤ26の各々は、第1サイドギヤ18及び第2サイドギヤ20と噛み合っている。
【0017】
ロッキングディファレンシャルアセンブリ10は、デフケース12の第1端部19に配置されたソレノイド28を含む。ステータ32は、強磁性体から形成されている。デフケース12は、回転軸14まわりにステータ32と相対回転可能である。
図4に示されているように、ステータ32は、回転軸14と同軸上にある縦軸35に対して環状の環状壁33を有する。
図4に示されている、この環状壁33は円筒壁であり、また、縦軸35は円筒軸であるが、環状壁33は、本開示における例として円筒形状から逸脱してもよい。環状壁33は、例えば、一端部または両端部においてより大きな直径を有してもよく、または、環状壁33は、弓状部を有してもよい。
【0018】
ステータ第1環状フランジ36が、環状壁33からステータ第1環状フランジ36の第1外径38まで半径方向に延びている。
図4は、縦軸35に対して垂直に延びたステータ第1環状フランジ36を示しているが、第1環状フランジ36が縦軸35となす角度は、90°でなくてもよい。例えば、この角度は、ソレノイド28のボビン31がステータ第1環状フランジ36と環状壁33との間の接合部より、第1外径38において、幅広くなるように、45°でもよい。ステータ第1環状フランジ36と環状壁33との間のこの角度は、任意の角度であってもよい。
【0019】
ステータ第2環状フランジ37が、環状壁33から延びている。このステータ第2環状フランジ37は、ステータ第1環状フランジ36から距離をあけて配置されており、また、ステータ第1環状フランジ36と平行であってもよい。ステータ第2環状フランジ37は、ステータ第1環状フランジ36に向かい合う内側基部環状面51において円錐台形をしている。外側基部環状面52は、ステータ第1環状フランジ36の遠位側に位置する。
内側基部環状面51は、第1外径38と等しい縁部外径53を有する。外側基部環状面52は、第1外径38より大きい第2外径39を有する。ステータ第1環状フランジ36,環状壁33,及び,ステータ第2環状フランジ37は、全体でソレノイド28用の一体型ボビン31を形成する。
図4は、概ね長方形の断面を有する一体型ボビン31を示しているが、この一体型ボビン31の断面は、本開示の例として、丸みを帯び、または、傾斜していてもよい。
【0020】
ソレノイド28は、ステータ32に直接巻回されている。ステータ32にソレノイド28を直接巻回することは、第1外径38と第2外径39との間に開いている一体型ボビン31を有することによって容易になる。本開示における一体型ボビン31を備えたステータ32は、軸方向に開いている他のステータとは異なる。軸方向に開くステータは、ソレノイドが別体のボビンに巻回され、そして、軸方向開口部にすべり込ませることを必要とするであろう。別体ボビンのために必要とされるスペースは、ソレノイドを巻回するために利用できないスペースである。いわゆるボビンレスコイルがたとえ用いられたとしても、別体コイルを作り出すために必要とされる追加の製造手順、そして、その後のステータへのコイルの設置は、本開示における一体型ボビン31を備えたステータ32ほど望ましくないであろう。
【0021】
図3Bは、係合解除位置44の方へロックリング40を付勢するために、デフケース12とロックリング40との間に配置されたスプリング34を示している。カバー100が、ロッキングディファレンシャルアセンブリ10の第2端部21において示されている。サイドギヤスラストワッシャ101が、カバー100と第2サイドギヤ20との間に配置されている。もう1つのサイドギヤスラストワッシャ101が、デフケース12と第1サイドギヤ18との間に配置されている。複数のスラストワッシャ104が、複数のピニオンギヤ26とデフケース12との間に配置されている。
【0022】
複数のシャフト取付けロールピン103が、デフケース12,クロスシャフト90,及び,複数のスタブシャフト92を通して挿入され、複数のピニオンギヤ26を支持するためのクロスシャフト90及び複数のスタブシャフト92を保持する。ステータ保持リング102は、ステータ32がデフケース12に対して軸方向に相対移動することができないように、デフケース12内の溝に挿入される。
【0023】
図3Cは、ソレノイド28と同側にロックリング40’を備えたロッキングディファレンシャルの断面図である。第1サイドギヤ18’は、回転軸14と平行になるように、第1サイドギヤ18’の外径24に形成されたサイドギヤドッグ22を有する。ロックリング40’は、
図3Bに示されている例におけるロックリング40と同一である。
図3Cに示されている例におけるリレーロッド50’は、
図3Bに示されている例における複数のリレーロッド50と比較して、より短い。
【0024】
図5A及び5Bを参照すると、本開示の例において、プランジャ30は、ソレノイド28(
図3A参照)によって選択的に磁気駆動されることが可能である。このプランジャ30は、強磁性の円筒体54を有する。この強磁性円筒体54は、回転軸14と一直線になる、強磁性円筒体54によって形成される円筒体軸55を有する。強磁性円筒体54は、強磁性円筒体54の面取り端部58において環状斜面57を含む内壁56を有する。
【0025】
強磁性円筒体54は、さらに、プランジャ外径61を有する外壁59を含む。プランジャ環状フランジ62が、面取り端部58の遠位側のプランジャ端部63において形成されている。このプランジャ環状フランジ62は、プランジャ外径61より小さいプランジャフランジ直径64を有する。環状ノッチ65が、強磁性円筒体54,及び,プランジャ環状フランジ62によって形成されている。
【0026】
本開示の1つの例として、プランジャ30は、デフケース12と共転するように取り付けられ、また、プランジャ30は、回転軸14に沿ってデフケース12に対して選択的に相対移動可能である(
図2,3A,7A及び7B参照)。回転するプランジャ30は、ステータ32と相対回転する。プランジャ30とステータ32との間の接触は、プランジャ30,ステータ32,または,その双方の摩耗を引き起こすであろう。
【0027】
図5A及び5Bに戻って参照すると、本開示における例として、ロッキングディファレンシャルアセンブリ10は、内壁56の環状斜面57がステータ第2環状フランジ37と接触することを防止するように、プランジャ30とデフケース12との間に配置されたスペーサ60,60’を含んでもよい。本開示の1つの例として、スペーサ60は、環状斜面57とステータ第2環状フランジ37との間において所定のギャップ72(
図7B参照)を有するように、プランジャ30に調整可能にねじ留めされるねじ式ロッド71であってもよい。本開示のもう1つの例として、スペーサ60’は、強磁性円筒体54の面取り端部58上に、距離をあけて配置される複数の突起部73であってもよい。
【0028】
複数のリレーロッド取り付けボア66が、強磁性円筒体54に形成されている。複数のリレーロッド受入溝67,69が、各々、各リレーロッド取り付けボア68に向かって、強磁性円筒体54の面取り端部58において形成されている。各リレーロッド取り付けボア68は、其々のリレーロッド受入溝69の概ね中心にある。リレーロッド受入溝69と環状ノッチ65との間の最短距離は、ロックリングの厚み41に等しい。このように寸法が等しいことは、リレーロッド50の各々が両端部において対称性を有することを可能にする。
【0029】
少なくとも2本のリレーロッド50が、各々、プランジャ30及びロックリング40に連結され、ロックリング40に、プランジャ30から所定の距離を保持させる(
図6C参照)。
【0030】
この少なくとも2本のリレーロッド50は、各々、2つの端部77を有する円筒形ロッド部74を含み、この円筒形ロッド部74は、円筒形ロッド部74の中心軸76において縦ロッド軸75を形成している。リレーロッド50は、各々、第1支柱78及び第2支柱79を有し、これらの支柱78,79は、各々、2つの端部77の其々に形成される円筒形ロッド部74よりも小さな直径80を有する。第1支柱78及び第2支柱79は、各々、円筒形ロッド部74と同心円をなしている。環状溝81が、第1支柱78及び第2支柱79において形成されている。
【0031】
第1支柱78及び第2支柱79は、概ね同一のものであり、また、リレーロッド50は、両端部において対称である。換言すると、アセンブリする間、リレーロッド50は、いずれの端部がプランジャ30に取り付けられるか、また、ロックリング40に取り付けられるかに拘わらず、装着することができる。
図5Bにおいて、第1支柱78及び第2支柱79は、
図5Bに示されているように明確にするために、異なる符号が割り当てられているが、第1支柱78は、第2支柱79と同一のものである。第1支柱78は、プランジャ30の環状ノッチ65内に配置されて、第1支柱78の環状溝81内へ突出する保持リング82によって、其々のリレーロッド取り付けボア68内で保持されているように、図示されている。
【0032】
ここで
図6A,6B,及び6Cを合わせて参照すると、本開示の例として、ロッキングディファレンシャルアセンブリ10は、ロックリング40を有する。このロックリング40は、ロックリング40の内面43の周りに形成された補助ドッグ42を含む。この補助ドッグ42は、係合解除位置44から係合位置45へ回転軸14に沿ってロックリング40を移動させることによって、第2サイドギヤ20のサイドギヤドッグ22と選択的に係合可能である。
【0033】
ロックリング40は、ロックリング40の外面47上に形成された複数の突起部46を有する。各突起部48は、デフケース12内に形成された其々の補助溝49内にすべり込ませるものであり、係合位置45と係合解除位置44との間のロックリング40の移動をガイドする(
図7A及び7B参照)。また、複数の突起部46が其々の補助溝49内に適合することは、ロックリング40がデフケース12と相対回転することを防止する。
【0034】
図7Aは、ロックリング40が係合解除位置44にある、本開示における一例を示している。
図7Bは、ロックリング40が係合位置45にあること以外は同様である、
図7Aに示されている一例を示している。本開示の例として、第2サイドギヤ20は、ロックリング40が係合位置45にある場合、デフケース12と相対回転することが実質的に防止される。第2サイドギヤ20は、ロックリング40が係合解除位置44にある場合、デフケース12に対して自由に相対回転することができる。ロックリング40は、回転軸14に平行なロックリング厚み41を有する。
【0035】
ロックリング40は、さらに、リレーロッド50の数量と等しい数量の延長タブ83を含む。この複数の延長タブ83は、各々、リレーロッド取り付け穴84を形成している。各リレーロッド50は、其々の第2支柱79の環状溝81に取り付けられるクリップ85によって、其々のリレーロッド取り付け穴84内で保持されている(環状溝81の詳細は、
図5B参照)。本開示の一例として、ロックリング40の突起部46は、9つの突起部48を有し、また、リレーロッド50は、3本存在する。
【0036】
各突起部48は、回転軸14と垂直である放射状直線87まわりに対称に配置された2つの対向面86を有してもよい。これら2つの対向面86間の角度99は、約28°から約32°である。
【0037】
ここで
図8A及び8Bを参照すると、本開示における例は、デフケース12内において回転軸14と垂直に配置されたクロスシャフト90を有することができる。このクロスシャフト90は、少なくとも2つのピニオンギヤ26の対向一対27が、クロスシャフト90を中心に回転するように、少なくとも2つのピニオンギヤ26の対向一対27を支持する。
【0038】
4つのピニオンディファレンシャルを含む本開示の例として、ディファレンシャルアセンブリ10は、対向一対のスタブシャフト92を含むことができる。各スタブシャフト92は、クロスシャフト90と垂直に、かつ、デフケース12内に、ヨーク91の中を通って回転軸14と垂直に配置されている。このヨーク91は、クロスシャフト90の周囲に配置される。ヨーク91は、これらのスタブシャフト92を受け入れるための複数の補助開口93を有する。これら対向一対のスタブシャフト92は、少なくとも2つのピニオンギヤ26の対向一対27’を支持する。
【0039】
図9に示されている本開示の一例において、クロスシャフト90’は、2つの対向する中央溝4を含んでもよい。これらの対向する中央溝4の各々は、スタブシャフト92’に形成された補助タングを受け入れるためのものである。
図9に示されている溝接合部に、この補助タングを有する例は、
図8Bに示されているヨーク91を含んでも含まなくてもよい。
【0040】
本開示における例は、上述したようにステータ32に直接巻回されたソレノイド28を備えたロッキングディファレンシャルアセンブリ10を含み、後述する制御要素を備えたロッキングディファレンシャルシステム11を含んでもよい。このロッキングディファレンシャルシステム11は、プランジャ位置センサ15を含むことができ、プランジャ30の位置を検知することによってロックリング40の状態を判断する。
【0041】
プランジャ位置センサ15の例として、二次コイル94が、ステータ32の周囲に巻回され、プランジャ30の位置に応答してソレノイド28のインダクタンスを検知することができる。
図10に示されているように、他の例として、プランジャ位置センサ15は、ステータ32に連結された回転防止ブラケット95の上に配置される非接触位置センサ89であってもよい。本開示の例として、非接触位置センサ15は、如何なる非接触位置センサ技術を用いてもよい。
【0042】
例えば、磁気ひずみ,磁気抵抗,ホール効果,または,他の磁気センシング技術に基づいた非接触位置センサが、本開示に従ったロッキングディファレンシャルシステム11に含まれるであろう。また、光学,赤外線,または,流体圧力センシングに基づいた非接触位置センサが、さらに、本開示に従って用いられてもよい。本開示の一例として、非接触位置センサ89は、プランジャ30の軸方向位置,または,プランジャ30に取り付けられた目標物96を検知する。
図10に示されているように、保持リング82が、目標物96であってもよい。目標物96として機能する保持リング82を有する、本開示のさらなる例として、保持リング82は、二重巻層状リングであってもよい。
【0043】
本開示における適切な保持リング82の一例として、イリノイ州レイクチューリッヒに本社を置くスモーリースティールリングカンパニーから入手可能な、スパイロロックス(登録商標)の部品番号WS-587があげられる。二重巻層状リングは、磁気的位置検出装置によってプランジャ30の軸方向動作として誤認識されてしまうであろう、磁気擾乱を引き起こす可能性がある円周に沿ったギャップを有さない。
【0044】
目標物96は、非接触位置センサ89によって検知可能な磁気応答性のある任意のものであってもよい。保持リング82は、磁気応答性のある低炭素鋼から形成されてもよい。
図10は、非接触位置センサ89を配置するための3つの別々の配置を示している。非接触位置センサ89は、
図10に示されている任意の単一位置に配置されてもよく、また、複数の非接触位置センサ89の如何なる組み合わせも、システム11の冗長性のために用いられてもよい。
【0045】
ここで
図1に戻ると、電気スイッチ17が、回路23を選択的に閉じてソレノイド28に電力を供給することができるように、車両70に配置されている。
図1に示されているスイッチ17は、ロッカスイッチであるが、ソレノイド28に至るまでの電力の流れを制御することができる任意のスイッチが、使用されてもよい。スイッチ17は、ソレノイド28に至るまでの電力を直接制御する継電器(リレー)またはトランジスタを、制御する弱電流用スイッチであってもよい。
【0046】
電子制御式ステータスインジケータ29が、車両70に配置されてもよい。電子制御式ドライバ回路25が、ロッキングディファレンシャルシステム11の状態を表示するための電子制御式ステータスインジケータ29に電力を供給するために、車両70に配置されてもよい。本開示の一例として、システム11の状態は、少なくとも3つの状態を含むことができる。例えば、電子制御式ステータスインジケータ29は、選択的照光式インジケータ88であってもよく、また、システム11の状態は、点滅信号(フラッシュコード)によって表示されてもよい。光で照らすために、この選択的照光式インジケータ88は、発光ダイオード,白熱電球,蛍光灯,または,他の選択的に照光可能な光源を含むことができる。
【0047】
点滅信号の例は、以下のようなものであってもよい。第1状態が、電子制御式ステータスインジケータ29を照明しないことによって表示される。第2状態が、電子制御式ステータスインジケータ29を継続的に照明することによって表示される。そして、第3状態が、1Hzから20Hzの間の周波数において約50%のデューティサイクルで、電子制御式ステータスインジケータ29を、経時的に照明したり、照明しなかったりすることによって表示される。
【0048】
図11は、約3Hzの周波数における約50%のデューティサイクルを示している。
図11において、“オン”は、電子制御式ステータスインジケータ29が照明されていることを意味し、また、“オフ”は、電子制御式ステータスインジケータ29が照明されていないことを意味する。上述した一例における3つの状態以外のシステム11の状態、例えばエラー状態が、電子制御式ステータスインジケータ29を照明したり、照明しなかったりする所定のシーケンスによって表示されてもよい。電子制御式の故障診断装置(図示せず)が、システム11がエラー状態にあるかどうかを判断するために、ロッキングディファレンシャルシステム11に接続されてもよい。
【0049】
本開示における一例として、システム11の状態は、第1状態,第2状態,及び,第3状態から成るグループから1つの状態が選択される。本開示における一例として、第1状態は、ソレノイド28への電力を遮断する開いた状態にある電気スイッチ17を有し、また、ロックリング40が、係合解除位置44にある、係合解除状態である。第2状態は、ソレノイド28への電力を供給する閉じた状態にある電気スイッチ17を有し、また、ロックリング40が、係合位置45にある、係合状態である。
【0050】
第3状態は、ソレノイド28への電力を遮断する開いた状態にある電気スイッチ17を有し、かつ、ロックリング40が、係合位置45(
図7B参照)にあるか、または、電気スイッチ17が、ソレノイド28への電力を供給する閉じた状態にあり、かつ、ロックリング40が、係合解除位置44(
図7A参照)にある、遷移状態である。
【0051】
本開示の発明者は、ロッキングディファレンシャルシステム11が、この遷移状態にある間に、遷移状態を表示することは、運転手がディファレンシャルロック制御ボタンを押し続けるか、または、このボタンをより強く押す傾向を減らすことを確信している。
【0052】
当然のことながら、“連結する/連結された/連結”,及び/または,これと同類の用語は、様々な多岐にわたる連結構造,及び,アセンブリ技術を含むように、本明細書において広く定義される。これらの構造及び技術は、
(1)1つの部品と他の部品との間に介在する部品がない、直接的な連結,及び,
(2)1つ以上の部品が介在して、1つの部品が他の部品に“連結”されることがもたらされる、1つの部品と他の部品との連結が、(1つ以上の追加の部品が介在するにもかかわらず)何らかの方法で動作可能に互いに連結されること、
を含むが、これら(1)及び(2)に限定されない。
【0053】
本発明において開示された例を、記述し、また、主張することにおいて、“1つの”及び“この”の記載を有する単数形は、明細書の文脈が単一のものであると明確に示す場合を除いて、複数形の指示対象物も含む。
【0054】
当然のことながら、本開示において定められた範囲は、所定の範囲、及び、その所定の範囲内で任意の値,または,部分的範囲を含む。例えば、約28°から約32°までの範囲は、約28°と約32°において明確に指定された限界値を含まないだけでなく、29°,30°,31°等の個別の値、及び、約28°から約31°まで等の部分的範囲を含むことを解釈されるべきである。また、“約”が数値を記述するために使用された場合、これは、所定の値からのわずかな差異(+/−10%の変動)を含むことが意図されている。
【0055】
さらに、“一例”,“もう1つの例”,“1つの例”等を通して特定される言及は、其々の例が、本明細書において記述された少なくとも一例において含まれることに関連して記述された特定の要素(例えば、特徴,構造,及び/または,特性)を含み、また、他の例が、存在しても存在しなくてもよいことを意図している。その上、当然のことながら、任意の例において記述された要素は、明細書の文脈が別段の規定を明確に示す場合を除いて、様々な例における如何なる適切な方法によって組み合わされてもよい。
【0056】
本開示においていくつかの例が、詳細に記述されてきたが、開示された例が修正可能なことは、当業者にとって明らかであろう。従って、前述の記載は、限定されないものであることが考慮されている。