特許第6376674号(P6376674)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6376674
(24)【登録日】2018年8月3日
(45)【発行日】2018年8月22日
(54)【発明の名称】衣服
(51)【国際特許分類】
   A41D 13/005 20060101AFI20180813BHJP
【FI】
   A41D13/005 103
【請求項の数】7
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2017-552521(P2017-552521)
(86)(22)【出願日】2017年6月7日
(86)【国際出願番号】JP2017021150
(87)【国際公開番号】WO2017213174
(87)【国際公開日】20171214
【審査請求日】2017年10月5日
(31)【優先権主張番号】特願2016-113738(P2016-113738)
(32)【優先日】2016年6月7日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005935
【氏名又は名称】美津濃株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000040
【氏名又は名称】特許業務法人池内・佐藤アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】櫻井 大樹
(72)【発明者】
【氏名】白石 篤史
【審査官】 ▲高▼辻 将人
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−174040(JP,A)
【文献】 特開2013−064206(JP,A)
【文献】 特開平11−302939(JP,A)
【文献】 実公昭43−026721(JP,Y1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A41D13/00−13/12
A41D20/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも肩線から腹部までの上半身の胴体を覆う衣服であって、
前記衣服には、ベンチレーション部が設けられ、前記ベンチレーション部は、少なくとも肌に近い側の表面に複数の凹凸を有し、前記複数の凹凸は、身長方向及び身幅方向のいずれの方向においても凸部と凹部が交互になるように配置されており、身長方向において隣接するように配置されている凸部と凹部の間には身幅方向に平行する方向に通気孔が形成されており、
前記ベンチレーション部は、第7頸椎から10cm下方までの首筋の一部又は全部を覆う領域に配置されており、
前記首筋の一部又は全部を覆う領域に配置されているベンチレーション部の通気孔が形成されている部分の少なくとも上端部が衣服の外部に露出していることを特徴とする衣服。
【請求項2】
前記ベンチレーション部は、更に、肩甲骨と肩甲骨の間の一部又は全部を覆う領域に配置されている請求項1に記載の衣服。
【請求項3】
前記首筋の一部又は全部を覆う領域に配置されている首筋ベンチレーション部と、肩甲骨と肩甲骨の間の一部又は全部を覆う領域に配置されている肩甲骨間ベンチレーション部は、互いに連結されている請求項1又は2に記載の衣服。
【請求項4】
前記首筋の一部又は全部を覆う領域に配置されている首筋ベンチレーション部と、肩甲骨と肩甲骨の間の一部又は全部を覆う領域に配置されている肩甲骨間ベンチレーション部は、互いに分離しており、肩甲骨間ベンチレーション部の通気孔が形成されている部分の少なくとも上端部が衣服の外部に露出している請求項1又は2に記載の衣服。
【請求項5】
前記ベンチレーション部によるゆとり量が2.5mm以上である請求項1〜4のいずれか1項に記載の衣服。
【請求項6】
前記ベンチレーション部は、樹脂で構成されており、周縁部には凹凸が形成されておらず、両方の表面に複数の凹凸が形成されており、一方の表面における凸部が他方の表面の凹部となっている請求項1〜5のいずれか1項に記載の衣服。
【請求項7】
前記ベンチレーション部は、身幅方向に平行する方向に通気孔が形成されている生地と、凹凸を有する複数のテープ状の生地で構成され、前記複数のテープ状の生地は、前記通気孔を有する生地上に身幅方向に平行するよう、且つ身長方向において凹部と凸部が交互になるように配置されている請求項1〜5のいずれか1項に記載の衣服。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも上半身の胴体を覆う衣服に関し、詳細には、ベンチレーション部が設けられている衣服に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、衣服内部の熱気を衣服の外に逃がすための検討が行われていた。例えば、特許文献1には、外衣の背面において、遊離状に重ね合せた上部布地と下部布地の間に通気孔を有するスペーサを配置することで、衣服の内面ムレを防止することが提案されている。特許文献2には、肩部の一部を二重構造とし、その二重構造の一側方にタック部を形成し、タック部の外部から隠れている部位に通気部を形成した防水用衣料が提案されている。特許文献3には、胸より上の背面及び/又は前面にテープが部分的に重なり合うことにより重畳構造を形成したシート状物を用いて、衣服内部に留まった温度の高い湿気を通気により排出することが提案されている。特許文献4には、人の背中、または腰部に下端が位置し、上端がうなじに位置できる長さを有し、通気性及び柔軟性を有る複数の管を有するクールビズタイ装置を用いることで、夏場の体温による熱気を、管を通して衣服外部に逃すことが提案されている。
【0003】
しかしながら、特許文献1〜4に記載の衣服では、衣服内の熱気を外部に放出させることが十分ではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開昭58−27311号公報
【特許文献2】実公平6−8966号公報
【特許文献3】特開平7−34304号公報
【特許文献4】特開2015−145540号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記従来の問題を解決するため、衣服内部と外部の換気を改善し、着用感を良好にした衣服を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、少なくとも肩線から腹部までの上半身の胴体を覆う衣服であって、前記衣服には、ベンチレーション部が設けられ、前記ベンチレーション部は、少なくとも肌に近い側の表面に配置された複数の凹凸を有し、前記複数の凹凸は、身長方向及び身幅方向のいずれの方向においても凸部と凹部が交互になるように配置されており、身長方向において隣接するように配置されている凸部と凹部の間には身幅方向に平行する方向に通気孔が形成されており、前記ベンチレーション部は、第7頸椎から10cm下方までの首筋の一部又は全部を覆う領域に配置されており、前記首筋の一部又は全部を覆う領域に配置されているベンチレーション部の通気孔が形成されている部分の少なくとも上端部が衣服の外部に露出していることを特徴とする衣服に関する。
【発明の効果】
【0007】
本発明は、衣服内部と外部の換気を改善し、着用感を良好にした衣服を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本発明の一実施形態の衣服(ジャケット)の模式的正面図である。
図2図2は同模式的背面図である。
図3図3Aは、本発明で用いる一例のベンチレーション部(ベンチレーション部材)の肌に近い側の表面から見た模式的正面図であり、図3Bは同、肌に遠い側の表面から見た模式的正面図である。
図4図4A図3Aのベンチレーション部(ベンチレーション部)A−A’部分の模式的部分拡大図であり、図4Bは同、B−B’線の模式的端面図であり、図4Cは同、C−C’線の模式的端面図である。
図5図5Aは本発明の他の一実施形態の衣服(シャツ)の模式的背面図であり、図5Bは本発明のさらに他の一実施形態の衣服(シャツ)の模式的背面図であり、図5Cは本発明のさらに他の一実施形態の衣服(シャツ)の模式的背面図であり、図5Dは本発明のさらに他の一実施形態の衣服(シャツ)の模式的背面図であり、図5Eは本発明のさらに他の一実施形態の衣服(シャツ)の模式的背面図であり、図5Fは本発明のさらに他の一実施形態の衣服(シャツ)の模式的背面図である。
図6図6Aは本発明で用いる一例のベンチレーション部(ベンチレーション部材)の肌に近い側の表面から見た模式的正面図であり、図6Bは同、肌に遠い側の表面から見た模式的正面図である。
図7図7Aは本発明で用いる一例のベンチレーション部(ベンチレーション部材)の肌に近い側の表面から見た模式的正面図であり、図7Bは同、肌に遠い側の表面から見た模式的正面図である。
図8図8は、図7のベンチレーション部(ベンチレーション部材)の模式的拡大斜視図である。
図9図9は、衣服を着用した状態で、人体背面側の表面温度の程度を示す説明図である。
図10図10は、衣服にベンチレーション部を設けることにより衣服内の空気が衣服の外部に放出されるメカニズムの模式的説明図である。
図11図11は、本発明の一例の衣服の後身頃のパターン図である。
図12図12Aは比較例1のシャツの模式的正面図であり、図12Bは同模式的背面図である。
図13図13A及び図13Bは、湿温度センサーの設置部位の模式的説明図である。
図14】実施例6及び比較例2を用いた場合の衣服内温度及び湿度を示すグラフである。
図15】参考実施例1及び参考比較例1を用いた場合の放熱量及び湿度を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の発明者らは、衣服内部と外部の換気を改善するため、鋭意検討した。その結果、少なくとも肌に近い側の表面に配置された複数の凹凸を有し、前記複数の凹凸は、身長方向及び身幅方向のいずれの方向においても凹部と凸部が交互になるように配置されており、身長方向において隣接するように配置されている凹部と凸部の間には身幅方向に平行する方向に通気孔を形成したベンチレーション部を、首筋(すなわち第7頸椎から始まり10cm下方までに至る)の一部又は全部を覆う領域に配置するとともに、該ベンチレーション部の通気孔が形成されている部分の少なくとも上端部を衣服の外部に露出させることで、衣服内部と外部の換気を改善し、着用感を良好にできることを見出し、本発明に至った。本発明の衣服において、第7頸椎に対応する位置は、例えば、JASPO規定のLサイズの場合、図11の衣服のパターン図に示されているように、身地の中心上端または衿と身生地の縫い合わせ部の中心301から3cm離れた箇所である302の位置となる。すなわち、身生地の中心上端または衿と身生地の縫い合わせ部の中心301と第7頸椎に対応する位置302間の距離Lsは3cmとなる。なお、図11に示されている衣服のパターン図において、ベンチレーション部400は第7頸椎から10cm下方までの首筋の全部を覆う領域に配置されることになる。また、着用者の体格や個人差により、身生地の中心上端または衿と身生地の縫い合わせ部の中心301から第7頸椎に対応する位置302の距離Lsは2〜5cmとなり得る。
【0010】
具体的には、衣服を着用した状態で、人体を赤外線カメラ(サーモグラフィ)で撮影して表面温度を測定観察した。その結果が図9に示された。図9において、尺度100のIからII方向に行くほど、表面温度が高く、衣服と肌が密着していることを意味する。図9から分かるように、肩甲骨の間の部位においては衣服と身体が密着していないが、首筋において衣服と肌が密着しているため、空気が抜けることができず、肩甲骨の間に留まる。そこで、第7頸椎から10cm下方までの首筋一部又は全部を覆う領域に、少なくとも肌に近い側の表面に配置された複数の凹凸を有し、前記複数の凹凸は、身長方向及び身幅方向のいずれの方向においても凹部と凸部が交互になるように配置されており、身長方向において隣接するように配置されている凹部と凸部の間には身幅方向に平行する方向に通気孔を形成したベンチレーション部を、該ベンチレーション部の通気孔が形成されている部分の少なくとも上端部を衣服の外部に露出するように配置することで、肌と衣服の間にスペースが生じるとともに、外部に繋がる開口部が形成され、図10Aに示されているように衣服内の留まった空気が、図10Bに示すように、煙突効果により衣服内の留まった空気を外部に放出することができる。或いは、運動時の衣服のはためきにより、開口部より衣服内の留まった空気を外部に放出することができる。少なくとも肌に近い側の表面に複数の凹凸を有するベンチレーション部を用いることで、衣服と身体の間に隙間を形成し、ベンチレーション部において、前記複数の凹凸は、身長方向及び身幅方向のいずれの方向においても凹部と凸部が交互になるように配置されていることにより、肌当たりも良好になる。ベンチレーション部において、身長方向において隣接するように配置されている凹部と凸部の間には身幅方向に平行する方向に通気孔を形成し、該ベンチレーション部の通気孔が形成されている部分の少なくとも上端部を衣服の外部に露出するように配置することで、衣服内の空気が通気孔を介して外部に放出される。
【0011】
換気効率を高め、より効果的に衣服内の熱気を外部に放出する観点から、前記ベンチレーション部は、第7頸椎から10cm下方までの首筋の全部を覆う領域に配置されていることが好ましい。前記ベンチレーション部は、更に、肩甲骨と肩甲骨の間の一部又は全部を覆う領域に配置されていることが好ましく、肩甲骨と肩甲骨の間の全部を覆う領域に配置されていることが好ましい。また、首筋と肩甲骨と肩甲骨の間を覆う領域に加えて、その他の部位を覆う領域にもベンチレーション部を設けてもよい。
【0012】
前記首筋の一部又は全部を覆う領域に配置されている首筋ベンチレーション部と、肩甲骨と肩甲骨の間の一部又は全部を覆う領域に配置されている肩甲骨間ベンチレーション部は、互いに連結されていることが好ましい。換気効率が高まり、より効果的に衣服内の熱気を外部に放出することができる。
【0013】
前記首筋ベンチレーション部と、前記肩甲骨間ベンチレーション部は、互いに分離していてもよい。首筋ベンチレーション部は、身幅方向及び/又は身長方向において二つ以上の部分に分離されていてもよい。また、肩甲骨間ベンチレーション部も、身幅方向及び/又は身長方向において二つ以上の部分に分離されていてもよい。この場合は、より効果的に衣服内の熱気を外部に放出する観点から、互いに分離しているベンチレーション部の各々において、通気孔が形成されている部分の少なくとも一部、好ましくは上端部が衣服の外部に露出していることが好ましい。
【0014】
換気効率を向上させる観点から、前記ベンチレーション部によるゆとり量は2.5mm以上であることが好ましく、5mm以上であることがより好ましく、7.5mm以上であることがさらに好ましい。一方、肌当たりを良好にする観点から、前記ベンチレーション部によるゆとり量は20mm以下であることが好ましく、10mm以下であることがより好ましい。
【0015】
ベンチレーション部によるゆとり量は、衣服を標準体型マネキンに着用させ、第7頸椎上の肌面と第7頸椎を覆う生地の肌側間の空間高さを測定することで確認することができる。なお、第7頸椎を覆う領域にベンチレーション部が配置されていない場合は、第7頸椎に最も近い部位上の肌面と該部位を覆う生地の肌側間の空間高さを測定することで確認することができる。
【0016】
前記ベンチレーション部の形状は、特に限定されず、四角形、三角形、円形等のいずれの形状であってもよい。ベンチレーション部の大きさは、特に限定されないが、換気効率及び肌当たりを良好にする観点から、幅(身幅方向)が1〜20cmであり、長さ(身長方向)が3〜20cmであることが好ましく、より好ましくは幅が2〜10cmであり、長さが5〜15cmである。ベンチレーション部は、ヨコ2段以上に配置されてもよく、タテ2段以上に配置されてもよい。
【0017】
前記ベンチレーション部(ベンチレーション部材)は、樹脂で構成されてもよく、生地で構成されてもよい。樹脂としては、特に限定されないが、肌当たりを良好にする観点から、弾性を有するものが好ましい。弾性を有する樹脂としては、例えば、ポリウレタン、塩化ビニル系樹脂、熱可塑性ポリウレタンエラストマー等が挙げられる。熱可塑性ポリウレタンエラストマーは、JIS K 7311に従って測定した硬度が60〜100Aであることが好ましく、70〜90Aであることがより好ましい。生地としては、特に限定されないが、通気性を向上させる観点から、ダブルラッセルのテープ等を用いることができる。
【0018】
前記ベンチレーション部が樹脂で構成されている場合、周縁部には凹凸が形成されていないことが好ましい。ベンチレーション部材を周縁部を介して衣服本体と一体化しやすくなる。衣服本体と、樹脂で構成されたベンチレーション部は、縫着、接着などにより一体化することができる。肌当たりを良好にする観点から、接着剤を用いて接着することで一体化することが好ましい。前記接着剤としては、衣服本体とベンチレーション部を接着できればよく、特に限定されない。接着工程が簡便という観点から、例えば、ベンチレーション部を構成する樹脂と同じ樹脂系のホットメルト接着剤を用いることができる。高周波によりホットメルト接着剤を溶かして衣服本体とベンチレーション部を接着することができる。
【0019】
前記ベンチレーション部が樹脂で構成されている場合、両方の表面に複数の凹凸が形成されており、一方の表面における凸部が他方の表面の凹部となっていることが好ましい。換気効率が高まり、効果的に衣服内の空気を外部に放出するとともに、肌当たりも良好になる。
【0020】
前記ベンチレーション部が繊維集合物からなる生地で構成されている場合、身幅方向に平行する方向に通気孔が形成されている生地(以下において、「外側ベンチレーション生地」とも記す。)と、複数のテープ状の生地で構成され、前記テープ状の生地は、複数の凹凸を有し、前記複数のテープ状の生地は、前記通気孔を有する生地上に身幅方向に平行するよう、且つ身長方向において凹部と凸部が交互になるように配置されていることが好ましい。テープ状の生地は、ダブルラッセル生地等の編物であることが好ましい。また、生地には織物等を採用してもよい。外側ベンチレーション生地は、通気性が高いことが好ましい。通気性が高い生地としては、例えば、メッシュ生地等を用いることができる。
【0021】
上記衣服は、少なくとも肩線から腹部までの上半身の胴体を覆うものであればよく、特に限定されない。例えば、シャツ、ジャケット等のいずれのものでも良い。
【0022】
衣服本体に用いる生地としては、特に限定されず、織物や編物などを用いることができる。伸縮性及び弾性に優れる観点から、織物の方が好ましい。上記織物としては、特に限定されず、一重織り組織でもよく、二重織り組織でもよい。例えば、平織、斜文織、朱子織、変化平織、変化斜文織、変化朱子織、変わり織、紋織、片重ね織、二重組織、多重組織、経パイル織、緯パイル織、絡み織などが挙げられる。上記生地を構成する繊維としては、特に限定されず、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル繊維、ポリウレタン繊維、ポリアミド繊維、アセテート繊維、コットン繊維、レーヨン繊維、エチレンビニルアルコール繊維、ナイロン繊維などを用いることができる。
【0023】
以下、図面に基づいて本発明の衣服を説明する。図1は本発明の一実施形態の衣服(ジャケット)の模式的正面図であり、図2は同模式的背面図である。図1及び2に示しているように、該実施形態の衣服1には、ベンチレーション部3が設けられている。ベンチレーション部3は、第7頸椎から10cm下方までの首筋の全部を覆うように配置されており、ベンチレーション部の凹凸部及び通気孔が形成されている部分103の全部が衣服の外部に露出されている。衣服本体2とベンチレーション部3は、衣服本体2に、ベンチレーション部3の凹凸部及び通気孔が形成されていない周縁部104を縫着することで一体化されている。4は縫製線を示す。
【0024】
図3Aは、本発明で用いる一例のベンチレーション部(ベンチレーション部)の肌に近い側の表面から見た模式的正面図であり、図3Bは同肌に遠い側の表面から見た模式的正面図である。図4A図3Aのベンチレーション部(ベンチレーション部)A−A’部分の模式的部分拡大図であり、図4Bは同B−B’線の模式的端面図であり、図4Cは同C−C’線の模式的端面図である。図3A図4A〜Cに示されているように、ベンチレーション部3は、肌に近い側の表面に複数の凹凸を有し、前記複数の凹凸は、身長方向及び身幅方向のいずれの方向においても凸部3aと凹部3bが交互になるように配置されており、身長方向において隣接するように配置されている凸部3aと凹部3bの間には身幅方向に平行する方向に通気孔5が形成されている。また、図3Bに示されているように、該ベンチレーション部3は、裏面にも複数の凹凸が形成されており、表面における凸部が裏面の凹部となっている。
【0025】
換気効率を向上させる観点から、凸部3aの高さHaは2.5mm以上であることが好ましい。凸部3aの高さHaが2.5mm以上であると、衣服の着用時におけるベンチレーション部によるゆとり量が2.5mm以上になりやすい。凸部3aの高さHaは、5mm以上であることがより好ましく、7.5mm以上であることがさらに好ましい。また、肌当たりを良好にする観点から、凸部3aの高さHaは20mm以下であることが好ましい。凸部3aの高さHaは、10mm以下であることがより好ましい。換気効率及び肌当たりを良好にする観点から、凸部3aの底辺の幅Laは1〜20mmであることが好ましく、より好ましくは2〜15mmであり、さらに好ましくは3〜10mmである。複数の凸部及び/又は凹部は、同じ形状であってもよく、異なる形状であってもよい。複数の凸部及び/又は凹部は、同じ形状である場合、同じサイズであってもよく、異なるサイズであってもよい。通気孔5の幅(身幅方向)は、凸部3aの底辺の幅Laと同じサイズとなる。本発明において、凸部の底辺の幅とは、凸部の二つの根元を結ぶ直線の長さを意味し、例えば、図4Bに示しているように、凸部の二つの根元を結ぶ直線の長さLaをいう。また、凸部の高さとは、凸部の底辺から凸部の頂点までの直線距離を意味し、例えば、図4Bに示しているように、凸部の底辺から凸部の頂点までの直線距離Haをいう。
【0026】
図5Aは本発明の他の一実施形態の衣服(シャツ)の模式的背面図である。該実施形態の衣服10は、後身頃の首筋を覆う領域の一部にベンチレーション部11が配置されており、該ベンチレーション部11の凹凸及び通気孔が形成されている部分の上端部が衣服の外部に露出している。
【0027】
図5Bは本発明のさらに他の一実施形態の衣服(シャツ)の模式的背面図である。該実施形態の衣服20は、後身頃の首筋を覆う領域の一部及び肩甲骨と肩甲骨の間を覆う領域にベンチレーション部21a、21b及び21cがタテ(長さ方向)3段に分けて配置されており、該ベンチレーション部21a、21b及び21cのそれぞれにおいて、凹凸及び通気孔が形成されている部分の上端部が外部に露出している。
【0028】
図5Cは本発明のさらに他の一実施形態の衣服(シャツ)の模式的背面図である。該実施形態の衣服30は、後身頃の首筋を覆う領域の一部を覆う領域に配置されている首筋ベンチレーション部31a、肩甲骨と肩甲骨の間を覆う領域の一部に配置されている肩甲骨間ベンチレーション部31bを有する。首筋ベンチレーション部31aと肩甲骨間ベンチレーション部31bは互いに分離しており、首筋ベンチレーション部31aと肩甲骨間ベンチレーション部31bの凹凸及び通気孔が形成されている部分の上端部が外部に露出している。
【0029】
ベンチレーション部11、ベンチレーション部21a〜c、ベンチレーション部31a及び31bは、いずれも、樹脂で構成されており、少なくとも肌に近い側の表面に複数の凹凸を有し、前記複数の凹凸は、身長方向及び身幅方向のいずれの方向においても凸部と凹部が交互になるように配置されており、身長方向において隣接するように配置されている凹部と凸部の間には身幅方向に平行する方向に通気孔が形成されている。例えば、ベンチレーション部11、ベンチレーション部21a〜c、ベンチレーション部31a及び31bは、図6に示す構造を有するベンチレーション部材で構成することができる。
【0030】
図6Aは、本発明で用いる一例のベンチレーション部(ベンチレーション部材)の肌に近い側の表面から見た模式的正面図であり、図6Bは同、肌に遠い側の表面から見た模式的正面図である。図6Aに示されているように、ベンチレーション部23は、肌に近い側の表面に複数の凹凸を有し、前記複数の凹凸は、身長方向及び身幅方向のいずれの方向においても凸部23aと凹部23bが交互になるように配置されており、身長方向において隣接するように配置されている凸部23aと凹部23bの間には身幅方向に平行する方向に通気孔25が形成されている。また、図6Bに示されているように、該ベンチレーション部23は、裏面にも複数の凹凸が形成されており、表面における凸部が裏面の凹部となっている。ベンチレーション部23は、凹凸が形成されていない周縁部26を有する。図6A及び図6Bに示されている構造を有するベンチレーション部(ベンチレーション部材)は、幅方向及び長さ方向における凸部の列の数が異なる以外は、図3及び図4に示されているベンチレーション部と同じ構造を有する。
【0031】
図5Dは本発明の他の一実施形態の衣服(シャツ)の模式的背面図である。該実施形態の衣服40は、後身頃の首筋を覆う領域の一部にベンチレーション部41が配置されており、該ベンチレーション部41の凹凸及び通気孔が形成されている部分の上端部が外部に露出している。
【0032】
図5Eは本発明のさらに他の一実施形態の衣服(シャツ)の模式的背面図である。該実施形態の衣服50は、タテ長いベンチレーション部51が首筋及び肩甲骨と肩甲骨の間を覆う領域に配置されており、凹凸及び通気孔が形成されている部分の上端部が外部に露出している。
【0033】
図5Fは本発明のさらに他の一実施形態の衣服(シャツ)の模式的背面図である。該実施形態の衣服60は、後身頃の首筋の一部を覆う領域に配置されている首筋ベンチレーション部61a、肩甲骨と肩甲骨の間を覆う領域の一部に配置されている肩甲骨間ベンチレーション部61bを有する。首筋ベンチレーション部61aと肩甲骨間ベンチレーション部61bは互いに分離しており、首筋ベンチレーション部61aと肩甲骨間ベンチレーション部61bの凹凸及び通気孔が形成されている部分の上端部が外部に露出している。
【0034】
ベンチレーション部41、ベンチレーション部51、ベンチレーション部61a及び61bは、いずれも、繊維集合物からなる生地で構成されている。具体的には、図7に示されているベンチレーション部と同じ構造を有する。図7A及び図7Bに示されているように、該ベンチレーション部13は、肌に近い側の表面に複数の凹凸を有し、前記複数の凹凸は、身長方向及び身幅方向のいずれの方向においても凸部13aと凹部13bが交互になるように配置されており、身長方向において隣接するように配置されている凸部13aと凹部13bの間には身幅方向に平行する方向に通気孔133が形成されている。図8に示されているように、該ベンチレーション部13は、身幅方向に平行する方向に通気孔133が形成されているメッシュ生地132と、該メッシュ生地132上に身幅方向に平行するよう、所定の間隔15で配置された複数のテープ状重畳物131で構成されている。テープ状重畳物131は、ダブルラッセルからなるテープ131が身長方向において凸部13aと凹部13bが交互になるように重畳されたものである。通気孔133は、所定の間隔15で離れているテープ状重畳物131同士間の隙間に対応する位置に形成されている。
【0035】
換気効率を向上させる観点から、凸部13aの高さは2.5mm以上であることが好ましい。凸部13aの高さが2.5mm以上であると、衣服の着用時におけるベンチレーション部によるゆとり量が2.5mm以上になりやすい。凸部13aの高さは、5mm以上であることがより好ましく、7.5mm以上であることがさらに好ましい。また、肌当たりを良好にする観点から、凸部13aの高さは20mm以下であることが好ましい。凸部13aの高さは、10mm以下であることがより好ましい。換気効率及び肌当たりを良好にする観点から、凸部13aの底辺の幅は1〜20mmであることが好ましく、より好ましくは2〜15mmであり、さらに好ましくは3〜10mmである。複数の凸部及び/又は凹部は、同じ形状であってもよく、異なる形状であってもよい。複数の凸部及び/又は凹部は、同じ形状である場合、同じサイズであってもよく、異なるサイズであってもよい。通気孔133の幅(身幅方向)は、凸部13aの底辺の幅と同じサイズであってもよく、凸部13aの底辺の幅より小さいサイズであってもよい。換気効率を向上させる観点から、通気孔133の幅(身幅方向)は、凸部13aの底辺の幅と同じサイズであることが好ましい。
【実施例】
【0036】
以下実施例を用いて本発明をさらに具体的に説明する。なお、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
【0037】
(実施例1)
生地(ポリエステル糸からなるダブルニット生地、目付130g/m2)を用いて図12に示すシャツ80(JASPO規定Lサイズ)を作製した。次に、後身頃において、図5Aに示すように、幅Wが6cmであり、長さLが2.5cmのベンチレーション部材11を、その上端が第七頸椎から7cm離れた部位に位置し、且つベンチレーション部材11の幅方向の中心点が後身頃の中心軸に位置するように配置するとともに、後身頃を構成する生地の所定の箇所に切れ目を入れてベンチレーション部材11の長さ方向の上端部2cmが衣服の外側に露出するように配置した。その後、ベンチレーション部材11の周縁部をポリウレタン樹脂系ホットメルト接着剤で生地に接着させた。ベンチレーション部材11は、熱可塑性ポリウレタンエラストマー(JIS K 7311に従って測定した硬度:80A)で構成され、図6に示す構造を有し、凸部の高さは2.5mm、凸部の底辺の幅は5mm、通気孔の幅が5mmであり、幅方向において凸部が30列配置され、長さ方向において凸部が9列配置されていた。シャツ80において、第七頸椎に対応する位置と、身地の中心上端または衿と身生地の縫い合わせ部の中心までの距離は3cmであった。
【0038】
(実施例2)
後身頃において、図5Bに示すように、幅が6cmであり、長さが2.5cmのベンチレーション部材21aを、その上端が第七頸椎から7cm離れた部位に位置するように配置し、幅が6cmであり、長さが2.5cmのベンチレーション部材21bを、その上端が第七頸椎から12cm離れた部位に位置するように配置し、幅が6cmであり、長さが2.5cmのベンチレーション部材21cを、その上端が第七頸椎から17cm離れた部位に位置し、且つベンチレーション部材21a、21b及び21cの幅方向の中心点が後身頃の中心軸に位置するように配置するとともに、後身頃を構成する生地の所定の箇所に切れ目を入れてベンチレーション部材21a、21b及び21cの長さ方向の上端部2cmがそれぞれ衣服の外側に露出するように配置した以外は、実施例1と同様にしてベンチレーション部を有するシャツを作製した。ベンチレーション部材21a、21b及び21cは、熱可塑性ポリウレタンエラストマー(JIS K 7311に従って測定した硬度:80A)で構成され、図6に示す構造を有する。ベンチレーション部材21a、21b及び21cは、凸部の高さは2.5mm、凸部の底辺の幅は5mm、通気孔の幅が5mmであり、幅方向において凸部が10列配置され、長さ方向において凸部が9列配置されていた。
【0039】
(実施例3)
後身頃において、図5Cに示すように、幅が6cmであり、長さが2.5cmのベンチレーション部材31aを、その上端が第七頸椎から7cm離れた部位に位置するように配置し、幅が12cmであり、長さが2.5cmのベンチレーション部材31bを、その上端が第七頸椎から12cm離れた部位に位置し、且つベンチレーション部材31a及び31bの幅方向の中心点が後身頃の中心軸に位置するように配置するとともに、後身頃を構成する生地の所定の箇所に切れ目を入れてベンチレーション部材31a及び31bの長さ方向の上端部2cmがそれぞれ衣服の外側に露出するように配置した以外は、実施例1と同様にしてベンチレーション部を有するシャツを作製した。ベンチレーション部材31a及び31bは、熱可塑性ポリウレタンエラストマー(JIS K 7311に従って測定した硬度:80A)で構成され、図6に示す構造を有する。ベンチレーション部材31a及び31bにおいて、凸部の高さは2.5mm、凸部の底辺の幅は5mm、通気孔の幅が5mmであった。ベンチレーション部材31aは、幅方向において凸部が10列配置され、長さ方向において凸部が9列配置され、ベンチレーション部材31bは、幅方向において凸部が30列配置され、長さ方向において凸部が9列配置されていた。
【0040】
(実施例4)
後身頃において、図5Eに示すように、幅が6cm、長さ15cmのベンチレーション部材51を、その上端が第七頸椎から7cm離れた部位に位置するように配置し、且つベンチレーション部材51の幅方向の中心点が後身頃の中心軸に位置するように配置するとともに、後身頃を構成する生地の所定の箇所に切れ目を入れて、第七頸椎から7cm離れた部位、第七頸椎から12cm離れた部位、及び第七頸椎から17cm離れた部位において、ベンチレーション部材51がそれぞれ2cmずつ衣服の外側に露出するように配置した以外は、実施例1と同様にしてベンチレーション部を有するシャツを作製した。ベンチレーション部材51は、図7に示す構造を有するものであった。具体的には、ベンチレーション部材51は、身幅方向に平行する方向に通気孔が形成されているメッシュ生地(ポリエステル糸、目付155g/m2)と、該メッシュ生地上に身幅方向に平行するように所定の間隔で配置された複数のテープ状重畳物で構成されており、テープ状重畳物は、ダブルラッセル(ポリエステル糸及びポリウレタン糸の交編生地、目付400g/m2)からなるテープが身長方向において凸部と凹部が交互になるように重畳されたものであった。ベンチレーション部材51は、テープ状重畳物間の間隔が20mmであり、凸部の高さが2.5mm、凸部の底辺の幅が5mm、通気孔の幅が5mmであり、幅方向において凸部が10列配置され、長さ方向において凸部が27列配置されていた。
【0041】
(実施例5)
ベンチレーション部材として、図7に示す構造を有するものを用いた以外は、実施例3と同様にしてベンチレーション部を有するシャツを作製した。ベンチレーション部材61a及び61bは、身幅方向に平行する方向に通気孔が形成されているメッシュ生地(ポリエステル糸、目付155g/m2)と、該メッシュ生地上に身幅方向に平行するように所定の間隔で配置された複数のテープ状重畳物で構成されており、テープ状重畳物は、ダブルラッセル(ポリエステル糸及びポリウレタン糸の交編生地、目付400g/m2)からなるテープが身長方向において凸部と凹部が交互になるように重畳されたものであった。ベンチレーション部材61a及び61bは、テープ状重畳物間の間隔が20mmであり、凸部の高さが2.5mm、凸部の底辺の幅が5mm、通気孔の幅が5mmであった。ベンチレーション部材61aは、幅が6cm、長さ5cmであり、幅方向において凸部が12列配置され、長さ方向において凸部が5列配置されていた。ベンチレーション部材61bは、幅が12cm、長さ5cmであり、幅方向において凸部が20列配置され、長さ方向において凸部が9列配置されていた。
【0042】
(比較例1)
生地(ポリエステル糸からなるダブルニット生地、目付130g/m2)を用いて図12に示すシャツ80を作製した。図12Aは比較例1のシャツの模式的正面図であり、図12Bは同模式的背面図である。
【0043】
実施例1〜5及び比較例1のシャツを、スチームマネキン(直元工業株式会社製「NT−26M」)に着用させて、スチームマネキンからスチームを放出して衣服内の湿度を100%に設定して衣服内外の温度変化を測定した。その結果を下記表1に示した。
【0044】
実施例3のシャツの場合は、図13に示すように、スチームマネキン200に着用させ、衣服上においてベンチレーション部材31aの直上に温湿度センサー201を設置し、衣服内部において、ベンチレーション部材31aとベンチレーション部材31bの間に温湿度センサー202を設置した。実施例1の場合は、図示はないが、衣服上においてベンチレーション部材11の直上に温湿度センサー201を設置し、衣服内部において、ベンチレーション部材11の直下に温湿度センサー202を設置した。実施例2の場合は、図示はないが、衣服上においてベンチレーション部材21aの直上に温湿度センサー201を設置し、衣服内部において、ベンチレーション部材21aとベンチレーション部材21bの間に温湿度センサー202を設置した。実施例4の場合は、図示はないが、衣服上においてベンチレーション部材51の直上に温湿度センサー201を設置し、衣服内部において、衿と身生地の縫い合わせ部の中心から約10cm下に温湿度センサー202を設置した。実施例5の場合は、図示はないが、衣服上においてベンチレーション部材61aの直上に温湿度センサー201を設置し、衣服内部において、ベンチレーション部材61aとベンチレーション部材61bの間に温湿度センサー202を設置した。
【0045】
また、実施例1〜5及び比較例1のシャツを標準マネキンに着用させて、第7頸椎上の肌面と第7頸椎を覆う生地の肌側間の空間高さ、すなわちベンチレーション部によるゆとり量を測定した。なお、第7頸椎を覆う領域にベンチレーション部が配置されていない場合は、第7頸椎に最も近い部位上の肌面と該部位を覆う生地の肌側間の空間高さを測定した。
【0046】
【表1】
【0047】
表1の結果から分かるように、ベンチレーション部を有する実施例1〜5のシャツの場合、ベンチレーション部を有しない比較例1のシャツと比べると、衣服内部の湿度が低く、衣服内部の空気(熱気)を効果的に衣服の外側に放出していた。実施例3と実施例5の対比から、ベンチレーション部が樹脂で構成された場合、より効果的に衣服内部の空気(熱気)を衣服の外側に放出することが分かった。
【0048】
(ベンチレーション部によるゆとり量の検討)
<サンプルa>
生地(ポリエステル糸からなる二重織、目付116g/m2)を30×30cmにカットして用いた。
【0049】
<サンプルb>
サンプルaと同様の生地の所定箇所を切り抜いた後、そこへ図6に示す構造を有するベンチレーション部材を接着させて、サンプルbを得た。具体的は、ベンチレーション部材の周縁部をポリウレタン樹脂系ホットメルト接着剤で生地に接着させた。ベンチレーション部材は、熱可塑性ポリウレタンエラストマー(JIS K 7311に従って測定した硬度:80A)で構成され、幅が5cm、長さが15cmであり、凸部の高さは2.5mm、凸部の底辺の幅は10mm、通気孔の幅が10mmであり、幅方向において凸部が3列配置され、長さ方向において凸部が11列配置されていた。
【0050】
<サンプルc>
ベンチレーション部材として、凸部の高さHaが5mmであるものを用いた以外は、サンプルbと同様にして、生地にベンチレーション部材を接着させて、サンプルcを得た。
【0051】
<サンプルd>
ベンチレーション部材として、凸部の高さHaが10mmであるものを用いた以外は、サンプルbと同様にして、生地にベンチレーション部材を接着させて、サンプルdを得た。
【0052】
<サンプルe>
ベンチレーション部材は、熱可塑性ポリウレタンエラストマー(JIS K 7311に従って測定した硬度:80A)で構成され、幅が15cm、長さが5cmであり、凸部の高さが2.5mm、凸部の底辺の幅が10mm、通気孔の幅が10mmであり、幅方向において凸部が11列配置され、長さ方向において凸部が3列配置されているものを用いた以外は、サンプルbと同様にして、生地にベンチレーション部材を接着させて、サンプルeを得た。
【0053】
<サンプルf>
ベンチレーション部材として、凸部の高さHaが5mmであるものを用いた以外は、サンプルeと同様にして、生地にベンチレーション部材を接着させて、サンプルfを得た。
【0054】
<サンプルg>
ベンチレーション部材として、凸部の高さHaが10mmであるものを用いた以外は、サンプルeと同様にして、生地にベンチレーション部材を接着させて、サンプルgを得た。
【0055】
サンプルa〜gを用い、下記のような発汗シミュレーターによるモデル試験により、放熱量、衣服内温度及び衣服内湿度を測定した。その結果を下記表2に示した。
【0056】
(発汗シミュレーターによるモデル試験)
定温制御及び定電力制御可能な熱板に、一定速度で水分を与える装置を使用した。軽度の発汗状態を想定して水分量(発汗量)は200g/m2/hourに設定した後、サンプルを熱板上に設置した。熱板の表面温度を40℃の定温度になるように電力を制御し、電力量によりベンチレーション効果を確認した。ベンチレーション効果が高ければ放熱量が多くなるので電力量は大きくなることになる。放熱量は、電力量に基づいて算出した。その後、サンプルと熱板の間、且つベンチレーション部材の下方に温湿度センサーを設置し、模擬衣服内部温湿度を測定した。サンプルaの場合は、サンプルb〜dと同じ位置に温度センサーを配置した場合はサンプルa−1とし、サンプルe〜gと同じ位置に温度センサーを配置した場合はサンプルa−2とした。
【0057】
【表2】
【0058】
表2の結果から分かるように、ベンチレーション部材において、肌に近い側の凸部の高さが2.5mm以上、すなわち、衣服においてベンチレーション部によるゆとり量が2.5mm以上であると、発汗した状態で、ベンチレーション部材を有しない場合と比べて、放熱量が増加し、衣服内温度及び湿度が低下しており、衣服内部の空気(熱気)を効果的に外部に排出することができた。肌に近い側の凸部の高さの値が大きいほど、すなわち、衣服においてベンチレーション部によるゆとり量が大きいほど、放熱量が増加し、衣服内温度及び湿度が低くなる傾向を示していた。
【0059】
(実施例6)
生地(ポリエステル糸からなる二重織、目付116g/m2)を用いて図1及び図2に示すようなジャケット本体2を作製した。ジャケット本体2の後身頃において、第7頸椎から10cm下方までの首筋の全部を覆う領域にベンチレーション部3を設けた。ベンチレーション部3は、図3及び図4に示す構造を有するものであり、ジャケット2の後身頃の所定箇所を切り抜き、そこへベンチレーション部3を縫製で縫い付けた。具体的には、ベンチレーション部3の周縁部6を縫製(縫製線4)でジャケット本体2に縫い付けた。図2に示しているように、ベンチレーション部3は衣服の外部に露出していた。ベンチレーション部3は、熱可塑性ポリウレタンエラストマー(JIS K 7311に従って測定した硬度:80A)で構成され、長さ方向の両端部を除いた部分の最大幅が2cmであり、最大長さが13.5cmであった。凸部の高さは2.5mmであり、幅方向において両端部の凸部の底辺の幅は7mmであり、幅方向において中央の凸部の底辺の幅は5mmであった。幅方向において、凸部が最大3列配置され、長さ方向において凸部が最大22列配置されていた。
【0060】
(比較例2)
ベンチレーション部3を設けていないジャケットを比較例2とした。
【0061】
実施例6及び比較例2のジャケットを用い、下記のような発汗マネキンによる試験により、衣服内温度及び衣服内湿度を測定した。その結果を下記表3及び図14に示した。
【0062】
(発汗マネキンによる試験)
定温制御及び定電力制御可能で、一定量の模擬発汗をおこすマネキン(メジャーメントテクノロジー製、品名「ニュートン」)を使用した。軽度の発汗状態を想定して、マネキン温度を40℃、発汗量を150g/m2/hourになるように制御した。ジャケットを同じサイズのマネキンに着用させた後、実施例6の場合は、ジャケットとマネキンの間、且つベンチレーション部の下部に温湿度センサーを設置し、衣服内部温湿度を測定した。比較例1の場合は、実施例6の場合と同じ位置になるように温湿度センサーを設置した。
【0063】
【表3】
【0064】
表3及び図14の結果から明らかなように、ベンチレーション部を有する実施例6のジャケットを着用した場合、ベンチレーション部を有しない比較例2のジャケットを着用した場合と比べると、軽度の発汗状態において、衣服内部の温度及び湿度のいずれも低下しており、衣服内部の空気(熱気)を効果的に外部に排出していた。
【0065】
(参考比較例1)
生地(ポリエステル糸からなるメッシュリバース、目付155g/m2)を30×30cmにカットして用いた。
【0066】
(参考実施例1)
参考比較例1と同様の生地の所定箇所を切り抜いた後、そこへ図7に示す構造を有するベンチレーション部材を縫製して、参考実施例1とした。該ベンチレーション部材は、身幅方向に平行する方向に通気孔が形成されているメッシュ生地(ポリエステル糸、目付155g/m2)と、該メッシュ生地上に身幅方向に平行するように所定の間隔で配置された複数のテープ状重畳物で構成されており、テープ状重畳物は、ダブルラッセル(ポリエステル糸、目付155g/m2)からなるテープが身長方向において凸部と凹部が交互になるように重畳されたものであった。該ベンチレーション部材は、幅が4cm、長さが10cmであり、テープ状重畳物間の間隔は20mmであり、凸部高さが2.5mmであり、凸部の底辺の幅が7mmであり、通気孔の幅が7mmであり、幅方向において凸部が2列配置され、長さ方向において凸部が20列配置されていた。
【0067】
参考実施例1及び参考比較例1のサンプルを用い、上記のような発汗シミュレーターによるモデル試験により、放熱量及び衣服内湿度を測定した。その結果を下記表4及び図15に示した。参考実施例1の場合は、サンプルと熱板の間、且つベンチレーション部材の下方に温湿度センサーを設置し、参考比較例1の場合は、参考実施例1と同じ位置になるように温湿度センサーを設置した。
【0068】
【表4】
【0069】
表4及び図15の結果から分かるように、ベンチレーション部を有する参考実施例1の場合、ベンチレーション部を有しない参考比較例1の場合に比べると、軽度の発汗状態において、放熱量が増加し、衣服内部の湿度が低下しており、衣服内部の空気(熱気)を効果的に外部に排出していた。
【0070】
(実施例7)
生地(ポリエステル糸からなるメッシュリバース、目付155g/m2)を用いて図1及び図2に示すようなジャケット本体2を作製した。ジャケット本体2の後身頃において、第7頸椎から10cm下方までの首筋の全部を覆う領域に、図7に示す構造を有するベンチレーション部を設けた。具体的には、ジャケット2の後身頃の所定箇所を切り抜き、そこへ図7に示す構造を有するベンチレーション部をジャケット本体2に縫い付けた。該ベンチレーション部材は、身幅方向に平行する方向に通気孔が形成されているメッシュ生地(ポリエステル糸、目付155g/m2)と、該メッシュ生地上に身幅方向に平行するように所定の間隔で配置された複数のテープ状重畳物で構成されており、テープ状重畳物は、ダブルラッセル(ポリエステル糸、目付155g/m2)からなるテープが身長方向において凸部と凹部が交互になるように重畳されたものであった。該ベンチレーション部材は、幅が4cm、長さが10cmであり、テープ状重畳物間の間隔は20mmであり、凸部高さが2.5mmであり、凸部の底辺の幅が7mmであり、通気孔の幅が7mmであり、幅方向において凸部が2列配置され、長さ方向において凸部が20列配置されていた。
【0071】
(比較例3)
生地(ポリエステル糸からなるメッシュリバース、目付155g/m2)を用いて作製した、図7に示す構造を有するベンチレーション部を設けていないジャケットを比較例2とした。
【0072】
実施例7及び比較例3のジャケットを用い、上述したような発汗マネキンによる試験により、衣服内温度及び衣服内湿度を測定した。その結果を下記表5に示した。
【0073】
【表5】
【0074】
表5の結果から明らかなように、ベンチレーション部を有する実施例7のジャケットを着用した場合、ベンチレーション部を有しない比較例3のジャケットを着用した場合と比べると、軽度の発汗状態において、衣服内部の温度及び湿度のいずれも低下しており、衣服内部の空気(熱気)を効果的に外部に排出していた。
【0075】
実施例1、2、5〜7の衣服、並びに比較例1〜3の衣服を着用し、温熱感、ムレ感及び快適感を官能評価し、0〜10点の点数を付けた。nを10とし、下記表6に平均値を示した。
温熱感:得点が低いほど涼しい
ムレ感:得点が低いほど蒸れを感じない
快適感:得点が低いほど快適に感じる
【0076】
【表6】
【0077】
表6の結果から分かるように、ベンチレーヨン部を設けた実施例1、2及び5のシャツを着用した場合、ベンチレーヨン部を有しない比較例1のシャツを着用した場合と比べて、温熱感及びムレ感をほとんど感じず、快適さを感じていた。また、ベンチレーヨン部を設けた実施例6のジャケットを着用した場合、ベンチレーヨン部を有しない比較例2のジャケットを着用した場合と比べて、温熱感及びムレ感をほとんど感じず、快適さを感じていた。また、ベンチレーヨン部を設けた実施例7のジャケットを着用した場合、ベンチレーヨン部を有しない比較例3のジャケットを着用した場合と比べて、温熱感及びムレ感をほとんど感じず、快適さを感じていた。
【符号の説明】
【0078】
1、10、20、30、40、50、60、80 衣服
2 衣服本体
3、11、13、21a〜21c、23、31a、31b、41、51、61a、61b、400 ベンチレーヨン部(ベンチレーヨン部材)
3a、13a、23a 凸部
3b、13b、23b 凹部
4 縫製線
5、25、133 通気孔
6、26、104 周縁部
15 テープ状重畳物間の間隔
103 凹凸部及び通気孔が形成されている部分
131 テープ状重畳物
132 通気孔が形成された生地
200 マネキン
201、202 湿温度センサー
300 後身頃のパターン
301 身地の中心上端または衿と身生地の縫い合わせ部の中心
302 第7頸椎に対応する位置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15