(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一例としての実施の形態について、図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための図面において、同一の構成要素には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
【0015】
図1は本発明の実施の形態のプリンタの断面図である。
【0016】
本実施の形態のプリンタ1は、例えば、連続紙(印字媒体)Pの台紙PMに仮着されたラベルPLに、文字、記号または図形の他、バーコードや二次元コード等を熱により印字するラベル印字専用の携帯型のサーマルプリンタである。
【0017】
このプリンタ1を構成する筐体2は、ハウジング部2aと、その一部に軸止された開閉カバー部2bとを有している。
【0018】
ハウジング部2aは、例えば直方体形状に形成されており、その一部には開口部が形成されている。このハウジング部2aの開口部には、その開口部を開閉可能なように開閉カバー部2bが回転軸R1を中心にして回転自在の状態で設置されている。
【0019】
また、ハウジング部2aの開口部は、筐体2内に形成された連続紙収容部3に連通されており、開閉カバー部2bを開けると、ハウジング部2aの開口部を通じて筐体2内の連続紙収容部3にロール状に巻かれた連続紙Pを収容することが可能になっている。また、開閉カバー部2bを閉じると、開閉カバー部2bの先端とこれに対向するハウジング部2aとの間に、連続紙Pを発行する発行口部(排出口)4が形成されるようになっている。
【0020】
ロール状の連続紙Pは、巻き芯R2に巻回された状態で筐体2内の連続紙収容部3に回転自在に収容される。連続紙Pを構成する台紙PMは、長尺状に形成されており、その表面には長手方向に沿って予め決められた間隔毎に複数枚のラベルPLが仮着されている。
【0021】
台紙PMにおいてラベルPLの粘着面が接触する表面には、シリコーン等のような剥離剤がコーティングされており、ラベルPLを容易に剥離することが可能になっている。また、台紙PMの裏面には、長手方向に沿って予め決められた間隔毎にラベルPLの位置を示す位置検出マークPAが形成されている。
【0022】
ラベルPLは、いわゆるサーマルラベルであり、その表面には、予め決められた温度領域に達すると特定の色(黒や赤等)に発色する感熱発色層が形成されている。
【0023】
印字処理に際して連続紙収容部3内の連続紙Pは、シート状に引き出された状態で発行口部4に向かって搬送され、その搬送途中でラベルPLに印字処理がなされた後、発行口部4からプリンタ1の外部に排出されるようになっている。
【0024】
プリンタ1の筐体2内において、連続紙収容部3の向かい側には、位置検出センサ10、サーマルヘッド(印字手段)11およびプラテンローラ(搬送手段)12が通紙ルートに沿って設置されている他、モータM、制御部MC、充電バッテリPSおよび無線通信部RCが設置されている。
【0025】
位置検出センサ10は、連続紙Pの裏面の位置検出マークPAを検出することにより連続紙PのラベルPLの位置を検出するセンサである。
【0026】
この位置検出センサ10は、開閉カバー部2bの裏面側に装着されており、開閉カバー部2bの閉止時に、位置検出センサ10のセンサ面が連続紙Pの裏面(通紙ルート側)を向くように設置されている。
【0027】
また、この位置検出センサ10は、例えば、光反射型センサにより構成されている。すなわち、位置検出センサ10は、センサ面に発光部と受光部とを備え、発光部から連続紙Pの位置検出マークPAに向けて放射した光により連続紙Pから反射された光を受光部により検出することによってラベルPLの位置を検出する。なお、発光部には、例えばLED(Light Emitting Diode)が使用され、受光部には、例えばフォトダイオードまたはフォトトランジスタが使用されている。
【0028】
また、この位置検出センサ10は、制御部MCに電気的に接続されており、検出信号を制御部MCに送信するようになっている。制御部MCでは、位置検出センサ10からの検出信号に基づいて連続紙PのラベルPLとサーマルヘッド11の印字部(印字ライン)との相対的な位置関係を算出し、その算出結果に基づいてプラテンローラ12の回転動作(回転方向や回転角度等)を制御することによりラベルPLの規定位置に印字を行うようになっている。
【0029】
サーマルヘッド11は、その印字面に配置された印字ラインの発熱抵抗体によりラベルPLに印字を行う印字手段である。
【0030】
このサーマルヘッド11の印字ラインには、通電により発熱する複数の発熱抵抗体(発熱素子)が連続紙Pの幅方向(連続紙Pの搬送方向に対して直交する方向)に沿って並んで配置されている。
【0031】
印字ラインの長手方向寸法(連続紙Pの幅方向の寸法)は、例えば、50mm程度、印字ラインの短方向寸法(連続紙Pの搬送方向の寸法)は、例えば、0.125mm程度である。発熱抵抗体は、例えば、1mmに8個配置されているので、印字ラインには、例えば、400個の発熱抵抗体が配置されている。
【0032】
このサーマルヘッド11は、その印字面を通紙ルートに向けた状態で支持部材20に固定されている。この支持部材20の背面には、ヘッド付勢用のバネ21が配置されており、開閉カバー部2bの閉止時にサーマルヘッド11の印字面がプラテンローラ12に押し付けられるようになっている。
【0033】
また、支持部材20は、その一端の回転軸R3を中心にして回転自在の状態でハウジング部2a内に軸止されている。また、支持部材20の他端は、後述の開閉カバー部2bの開放用の押しボタン22に係合されている。
【0034】
このようなサーマルヘッド11は制御部MCに電気的に接続されている。制御部MCは、プリンタ1に入力された印字データ等に応じてサーマルヘッド11の複数の発熱抵抗体に選択的に電流を流して所望の発熱抵抗体を発熱させることによりラベルPLに印字を行うようになっている。
【0035】
プラテンローラ12は、連続紙収容部3内の連続紙Pを通紙ルートを通じて発行口部4に向かって搬送する搬送手段である。このプラテンローラ12は、開閉カバー部2bの裏面側に回転軸R4を中心にして正逆双方向に回転自在の状態で装着されており、開閉カバー部2bの閉止時にサーマルヘッド11の印字面に押し付けられるように対向した状態で設置される。
【0036】
プラテンローラ12の回転軸R4の表面には、硬質ゴム等のような弾性材料が被覆されている。また、プラテンローラ12の回転軸R4の軸方向一端には、ギアG1が接続されている。このギアG1は、ハウジング部2a内の連結ギアG2を介してモータMの回転軸に係合されている。開閉カバー部2bの閉止時にプラテンローラ12側のギアG1が連結ギアG2を介してモータMの回転軸に係合されることにより、モータMの回転駆動力をプラテンローラ12に伝達することが可能になっている。
【0037】
モータMは、例えばステッピングモータにより構成されており、制御部MCに電気的に接続されている。制御部MCは、プリンタ1に入力された印字データ等に応じてモータMの回転動作(回転方向や回転角等)を制御するようになっている。
【0038】
充電バッテリPSは、上記したサーマルヘッド11やモータMはもちろんのこと、プリンタ1の電気系統全体に電力を供給する電源であり、筐体2内のバッテリ収容部23内に着脱自在の状態で収容されている。
【0039】
無線通信部RCは、赤外線や電波等の無線通信によりプリンタ1の外部からプリンタ1に送られた印字データ(命令や印字情報等)を受信する非接触の入力部であり、制御部MCに電気的に接続されている。
【0040】
一方、このようなプリンタ1のハウジング部2aの表面には、上記した開放用の押しボタン22と、カッタ24と、入力部25と、表示部26と、電源スイッチ27と、ベルト掛け部28とが設置されている。
【0041】
開放用の押しボタン22は、開閉カバー部2bを開放するためのボタンである。この押しボタン22をハウジング部2aの内包側に押し込むと、支持部材20の他端部が押され、支持部材20がバネ21の付勢力に抗して回転軸R3を中心に反時計回りの方向に回転することによりサーマルヘッド11がプラテンローラ12から離れるとともに、支持部材20に接合された止め部(図示せず)がプラテンローラ12のロックピン(図示せず)から解除されることにより開閉カバー部2bが開放される。なお、開閉カバー部2bを閉じる時は、開閉カバー部2bをバネ21の付勢力に抗してハウジング部2aの内包側に向けて押し込む。これにより、支持部材20に接合された止め部がプラテンローラ12のロックピンを挟持することにより開閉カバー部2bが閉じた状態を維持するようになっている。
【0042】
カッタ24は、印字後の連続紙Pを切断する部材であり、連続紙Pの幅方向(連続紙Pの搬送方向に直交する方向)に沿って延在した状態で、かつ、その先端の刃先を発行口部4側に僅かに突き出させた状態でハウジング部2aの外壁面に設置されている。
【0043】
このカッタ24は、例えば所定の剛性および弾性を有する合成樹脂等により形成されており、上記押しボタン22の一部と一体的に成形されている。なお、カッタ24による連続紙Pの切断処理においては、印字処理後に発行口部4から排出された連続紙PのラベルPLの隣接間の台紙PM部分を切断する。
【0044】
入力部25は、プリンタ1に対する印字データ(命令や印字情報等)を入力するための操作部分であり、データ入力用、方向指示用および実行(印字発行を含む)用の複数の操作キーが配置されている。
【0045】
表示部26は、入力部25等で入力した情報や処理モードを表示する他、各種のメッセージ等を表示する部分であり、入力部25の近傍に設置されている。この表示部26は、例えば、LCD(Liquid Crystal Display)により形成されている。
【0046】
ベルト掛け部28は、ベルトを挿入することにより、作業者の肩や腰にプリンタ1を装着するための部分であり、ハウジング部2aと一体的に成形されている。
【0047】
次に、
図2は
図1のプリンタの要部の回路ブロック図である。
【0048】
制御部MCは、プリンタ1の全体の動作を制御する部分であり、CPU(Centoral Processing Unite)30と、ROM(Read Only Memory)31と、RAM(Random Access Memory)32と、搬送制御回路33と、印字制御回路34と、ラベル検出回路35と、インタフェース36と、表示制御回路37と、通信インタフェース38と、EEPROM(Electinically Erasable Programmable ROM)39と、これらを相互に電気的に接続するバスライン40とを有している。
【0049】
CPU30は、インタフェース36および表示制御回路37を通じて入力部25および表示部26に電気的に接続されているとともに、通信インタフェース38を通じて外部の携帯端末と無線で通信可能になっている。
【0050】
ROM31には、プリンタ1の動作を制御するためのソフトウェア(制御プログラム)が格納されている。RAM32は、CPU30が動作する上で必要となる各種データを記録するとともに、入力部25または外部の携帯端末から受信した印字データ等を一時的に格納する。そして、CPU30は、ROM31内の制御プログラムに従って搬送制御回路33や印字制御回路34等の各部の動作を制御する。
【0051】
搬送制御回路33は、モータMにパルス信号を送信し、プラテンローラ12による連続紙Pの搬送動作を制御する。印字制御回路34は、CPU30から送信される印字データに対応する制御信号を生成してサーマルヘッド11に送信し、印字動作を制御する。
【0052】
ラベル検出回路35は、CPU30の制御下において、位置検出センサ10の発光部を制御し、連続紙Pに向かって光を放射するとともに、位置検出センサ10の受光部から出力される電気信号を受け取り、デジタルデータに変換してCPU30に送信する。EEPROM39は、プリンタ1の各種設定データ等を記録する。
【0053】
これら各部は、バスライン40を通じてCPU30に電気的に接続され、CPU30の管理下においてインタフェース36や通信インタフェース38から受信した印字データに従ってサーマルヘッド11により連続紙PのラベルPLに印字を行う。
【0054】
次に、
図3は1枚分のラベルに印字された印字情報の一例を示す連続紙の要部平面図である。なお、
図3中の矢印Fは連続紙Pの搬送方向を示している。
【0055】
ラベルPLには、連続紙Pの搬送方向Fに沿って、2つの印字領域SW,NWと、2つの余白領域SY,NYとが配置されている。
【0056】
印字領域(第1の印字領域)SWは、バーコードや二次元コード等のようなコード化された第1の印字情報が印字された領域を示している。コード化された印字情報は、人間が目視しただけでは内容等を確認できないデジタル処理された印字情報である。ここでは、印字領域SWにバーコードが例示されている。また、ここでは、バーコードの黒色バー部分が連続紙Pの搬送方向Fに沿って延びる、いわゆるパラレルバーコードが例示されている。
【0057】
印字領域(第2の印字領域)NWは、文字、記号、図形または絵等のような標準の印字情報が印字された領域を示している。この標準の印字情報は、コード化された印字情報以外の第2の印字情報であり、人間が目視することで内容等を確認することができる情報である。
【0058】
一方、余白領域(第1の余白領域)SYは、搬送方向Fの長さが予め決められた長さ以上であると判断された標準外の余白領域である。この予め決められた長さは、例えば3mmとされているが、これに限定されるものではない。この長さの理由については後述する。
【0059】
余白領域(第2の余白領域)NYは、搬送方向Fの長さが上記予め決められた長さよりも短いと判断された標準の余白領域である。
【0060】
次に、プリンタ1の印字方法の一例を
図4のフロー図に沿って
図1、
図2、
図6〜
図8を参照しながら説明する。
【0061】
まず、
図1および
図2に示した無線通信部RC等を通じて1枚分のラベルPLにおける印字面内の印字データを無線で受信する(
図4のステップ100)。
【0062】
印字データには、例えば、命令のほか、上記した標準の印字情報、コード化された印字情報および余白情報等が含まれている。標準の印字情報には、例えば、種類(ゴシック、明朝体等)、大きさ、印字開始位置等のような情報が記されている。コード化された印字情報には、例えば、印字開始位置、印字終了位置、搬送方向の長さ、搬送方向に交差する幅方向の長さ等のような情報が記されている。余白情報には、例えば、搬送方向の長さ等のような情報が記されている。
【0063】
続いて、受信した印字データをイメージバッファ(
図2のRAM32)に展開した後、上記したサーマルヘッド11の印字ライン(例えば、0.125mm)毎に印字の有無を解析する((
図4のステップ101)。
【0064】
図5および
図6は、1枚分のラベルPLをイメージしてRAM32内に印字データを展開した状態例を模式的に示している。なお、
図6(a)は
図5の領域A1の拡大平面図、
図6(b)は
図5の領域A2の拡大平面図を示している。
【0065】
ここでは、ラベルPLの搬送方向Fに沿って印字ラインXL毎に、印字有りの場合は、「1」または「S1」を付し、印字無しの場合は、「0」を付す(
図6参照)。これにより、「1」が付された領域を標準の印字情報が印字される印字領域NWと認識し、「S1」が付された領域をコード化された印字情報が印字される印字領域SWと認識する。また、「0」が付された領域を余白領域Yと認識する。
【0066】
続いて、各印字情報(標準の印字情報およびコード化された印字情報)の位置座標を決める。すなわち、各印字情報の印刷位置(印字開始位置および印字終了位置等)を決める。これにより、描画データを作成する(
図4のステップ102)。
【0067】
次いで、描画データの搬送方向Fの各領域についてコード化された印字情報か否かを判断し(
図4のステップ103)、コード化された印字情報ならばそのコード化された印字情報の印字開始位置や印字終了位置(すなわち、コード化された印字情報の搬送方向Fの長さ(天地))等の情報を保存する(
図4のステップ104)。
【0068】
続いて、描画データにおいて、幅方向(搬送方向Fに直交する方向)のオンドット数を取得する(
図4のステップ105)。
【0069】
続いて、描画データの搬送方向Fの各領域(印字領域SW,NWおよび余白領域Y)について搬送速度のデータを生成する(
図4のステップ106)。この搬送速度のデータの生成については後述する。
【0070】
その後、以上のようにして生成された描画データおよび搬送速度データを用いて印字処理を行う(
図4のステップ107)。
【0071】
プリンタ1の印字処理においては、
図1に示したサーマルヘッド11とプラテンローラ12との間に連続紙Pを挟持させた状態でモータMによりプラテンローラ12を回転させることにより連続紙Pを搬送する。連続紙Pの搬送においては、ラベルPLの各領域毎に、上記した搬送速度データに設定された搬送速度で搬送する。そして、この搬送途中において、位置検出センサ10からの検出信号に基づいて印字タイミングを図り、サーマルヘッド11に印字信号を送信することにより、サーマルヘッド11の所望の発熱抵抗体を発熱させて連続紙P上のラベルPLに印字情報を印字する。印字領域NW,SWでの印字に際しては、印字ライン毎に搬送と停止とを繰り返すことにより印字を行う。
【0072】
なお、位置検出センサ10からの検出信号に基づいて、印字開始のタイミングをラベルPLの搬送方向の先端とすることができる。
【0073】
次に、上記したラベルPLの搬送方向Fにおける各領域の搬送速度のデータの生成方法例について
図7のフロー図に沿って説明する。
【0074】
まず、上記した描画データにおいて搬送方向Fの全ラインについて、印字領域NW,SWの搬送速度を設定する(
図7のステップ200)。
【0075】
標準の印字情報が印字される印字領域NWの搬送速度は、基準搬送速度(第1の搬送速度)に設定する。この印字領域NWの搬送速度(基準搬送速度)は、例えば、80mm/secである。
【0076】
コード化された印字情報(ここではバーコードを例示)が印字される印字領域SWは、標準の印字領域NWの搬送速度(すなわち、基準搬送速度)よりも遅い搬送速度(第2の搬送速度)に設定する。この印字領域SWの搬送速度は、例えば、70mm/secである。
【0077】
次いで、印字領域NW,SWの搬送速度を設定した後、描画データにおいて搬送方向Fの全ラインの各領域について余白領域Yか否かについて判断する(
図7のステップ201)。
【0078】
余白領域Yと判断された場合は、その余白領域Yが標準外の余白領域か否かを判断する(
図7のステップ202)。ここでは、上記した印字ラインXLに印字無しとされたところ(すなわち、「0」が付されたところ)が24ドット以上続く場合は、標準外の余白領域と判断し、24ドットに満たないところで印字有り(すなわち、「1」が付されたところ)がある場合は標準の余白領域と判断する。なお、例えば、1ドットは、0.125mmなので、24ドットで、しきい値の3mmになる。
【0079】
余白領域Yが標準の余白領域の場合は、基準搬送速度に設定する(
図7のステップ203)。標準の余白領域の搬送速度は、例えば、80mm/secである。
【0080】
一方、余白領域Yが標準外の余白領域の場合は、標準の余白領域の搬送速度(すなわち、基準搬送速度)よりも速い搬送速度(第3の搬送速度)に設定する(
図7のステップ204)。標準外の余白領域の搬送速度は、例えば、140mm/secである。
【0081】
以上のようにしてラベルPLの描画データにおいて搬送方向Fの各領域について搬送速度を設定する。
【0082】
図8は1枚分のラベルの各領域毎に搬送速度を示した平面図である。
図8中の符号NYは標準の余白領域、符号SYは標準外の余白領域を示している。また、
図8中のかっこ内の符号Nは基準搬送速度、符号Hは基準搬送速度よりも速い搬送速度、符号Lは基準搬送速度よりも遅い搬送速度を示している。また、
図8の左側の符号X1〜X12は位置座標を示している。
【0083】
また、
図9は
図8のラベルの各領域における搬送速度をグラフにした図である。縦軸は連続紙Pの搬送速度、横軸は
図8のラベルPLの搬送方向Fの位置座標X1〜X12を示している。
【0084】
図8および
図9に示すように、コード化された印字情報の印字領域SWの搬送速度を遅くすることにより、コード化された印字情報の印字品質を向上させることができるので、コード化された印字情報の光学的な読み取り不良を低減または防止することができる。
【0085】
また、標準外の余白領域SYの搬送速度を、標準の余白領域NYおよび印字領域NW,SWよりも速くしたことにより、印字領域SWの搬送速度を遅くしても、ラベルPLの印字全面内の印字処理速度を向上させることができる。したがって、プリンタ1の印字処理のスループットを向上させることができる。
【0086】
ここで、標準外の余白領域SYの設定において搬送方向Fの長さが3mm以上としたのは、基準搬送速度よりも速い搬送速度Hに設定するには、立ち上がり時間や立ち下がり時間の分を含め、余白領域Yの搬送方向Fの長さが少なくとも3mmは必要だからである。したがって、標準外の余白領域SYの判断は、3mm以上に限定されるものではなく、そのしきい値は、モータMやプリンタ1の性能や個体差等に応じて種々変更可能である。
【0087】
さらに、標準の余白領域NYの搬送速度も基準搬送速度Nより速く、標準外の余白領域SYの搬送速度よりも遅い搬送速度に設定することもできる。しかし、そのようにすると搬送速度の設定数が増え過ぎて制御が複雑になり、かえってラベルPLの印字全面内の印字処理速度が低下してしまう。また、搬送速度が増え過ぎると制御に負担がかかり、充電バッテリPSの消費電力が増え、プリンタ1の使用時間が短くなってしまう。
【0088】
これに対して、本実施の形態においては、標準の印字領域NWおよび標準の余白領域NYの搬送速度を基準搬送速度Nに設定したことにより、これらの搬送速度を異なる搬送速度に設定した場合よりも、制御を簡単化することができ、ラベルPLの印字全面内の印字処理速度を向上させることができる。また、充電バッテリPSの消費電力を低減でき、充電バッテリPSの寿命を向上させることができるので、プリンタ1の使用時間を長くすることができる。
【0090】
図10および
図11は1枚分のラベルに印字された印字情報の他の一例を示す連続紙の要部平面図である。
図10および
図11中のかっこ内に搬送速度Lを示す。
【0091】
本実施の形態においては、
図10および
図11に示すように、標準の印字情報の中に、台紙PMの幅方向にコード化された印字情報が並んで配置されているとともに、その並んで配置されたコード化された印字情報の印字領域SWより台紙PMの長手方向の前方(
図10の搬送方向F)または後方(
図11の搬送方向Fとは反対方向)に一部はみ出している部分を有する標準の印字情報がある。なお、ここでは、コード化された印字情報として、二次元コードが例示されている。
【0092】
この場合には、その一部はみ出し部分を有する標準の印字情報の印字領域NWの搬送速度を、コード化された印字情報の印字領域SWの搬送速度、すなわち、基準搬送速度Nよりも遅い搬送速度Lに設定する。
【0093】
図10においては、その標準の印字情報の前端からコード化された印字情報の後端までの印字領域NSWを基準搬送速度Nよりも遅い搬送速度Lに設定する。また、
図11においては、コード化された印字情報の前端から標準の印字情報の後端までの印字領域NSWを基準搬送速度Nよりも遅い搬送速度Lに設定する。
【0094】
標準の印字情報の印字領域において、コード化された印字情報が重なる部分と重ならない部分とで搬送速度を変えると、その搬送速度が変わる部分において印字が途切れたり、薄くなったりして標準の印字情報の印字品質が低下する。
【0095】
これに対して、本実施の形態においては、標準の印字情報の印字領域NWの一部がコード化された印字情報の印字領域SWと重なる場合は、その標準の印字情報の印字領域NWの搬送速度を、コード化された印字情報の印字領域SWの搬送速度に設定することにより、その標準の印字情報の印字品質を確保することができる。
このように、コードを印字する印字ラインと、標準文字を印字する印字ラインが同一の印字ラインと判断した場合には、標準文字の印字ラインの印字速度を基準搬送速度Nよりも遅い搬送速度Lを優先して切り替えるように制御部が判断することができる。
【0096】
なお、上記以外の構成は前記実施の形態と同じである。特に、上記した条件以外の標準の印字情報の印字領域NWの搬送速度は前記実施の形態と同様に基準搬送速度Nに設定する。
【0097】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本明細書で開示された実施の形態はすべての点で例示であって、開示された技術に限定されるものではないと考えるべきである。すなわち、本発明の技術的な範囲は、前記の実施の形態における説明に基づいて制限的に解釈されるものでなく、あくまでも特許請求の範囲の記載に従って解釈されるべきであり、特許請求の範囲の記載技術と均等な技術および特許請求の範囲の要旨を逸脱しない限りにおけるすべての変更が含まれる。
【0098】
例えば前記実施の形態においては、用紙位置検出センサとして光反射型のセンサを用いた場合について説明したが、これに限定されるものではなく、例えば、光透過型のセンサを用いても良い。この場合、発光部と受光部とは連続紙を挟むように配置される。そして、ラベルが貼られている部分は光が透過せず、ラベルが貼られていない部分は光が透過するので、その特性を用いてラベルが貼られていない間隔部分を検出することによりラベルの位置を検出する。
【0099】
また、前記実施の形態においては、印字媒体として複数枚のラベルを台紙に仮着した連続紙を用いた場合について説明したが、これに限定されるものではなく、例えば、一方面に粘着面を有する連続状のラベル(台紙無しラベル)、粘着面を有しない連続状のシート(連続シート)あるいは紙類に限らずサーマルヘッドにより印字可能なフィルムを印字媒体として用いることもできる。台紙無しラベル、連続シートまたはフィルムは位置検出マークを有することができる。また、粘着剤が露出する台紙無しラベルなどを搬送する場合には、搬送路を非粘着コーティングするとともにシリコーンを含有したローラを設けることができる。さらに、連続紙に限定されるものではなく、例えば、単葉の紙類やフィルムに印字する場合にも適用できる。
【0100】
また、前記実施の形態においては、バーコードの黒色バー部分が搬送方向に沿って延びるパラレルバーコードに適用した場合について説明したが、これに限定されるものではなく、例えば、バーコードの黒色バー部分が台紙の幅方向に延びるシリアルバーコードに適用しても良い。
【0101】
また、前記実施の形態においては、感熱紙を使用する感熱方式のサーマルプリンタに適用した場合について説明したが、これに限定されるものではなく、インクリボンを使用する熱転写方式のサーマルプリンタに適用しても良い。
【0102】
また、前記実施の形態においては、コード化された印字情報SWを70m/secの搬送速度で、標準の印字情報NWを80m/secの搬送速度で、標準外の余白領域SYを140m/secの搬送速度でそれぞれ搬送する場合について説明したが、各搬送速度の数値は上記数値に限定されるものではなく、コード化された印字情報SWと、標準の印字情報NWと、標準外の余白領域SYと、の搬送速度の関係式が、SW<NW<SYとなる関係であれば良い。