(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記キャビティ内の底面には、前記算出回路で算出された温度に基づいて、前記加熱用ヒータへ流す電力を調整する調整回路が配置される請求項1に記載の圧電デバイス。
前記圧電振動片を発振させる発振回路、前記検出回路、前記算出回路及び前記調整回路が、一つの集積回路で構成されている請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の圧電デバイス。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、本発明の範囲は以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの形態に限られるものではない。
【0017】
(第1実施形態)
<圧電デバイス100の構成>
図1は、圧電デバイス100の概略分解斜視図である。圧電デバイス100は主に、圧電振動片110と、パッケージ120と、リッド板130と、集積回路140と、により形成されている。圧電振動片110には、例えばATカットの水晶振動片が用いられる。ATカットの水晶振動片は、主面(YZ面)が結晶軸(XYZ)のY軸に対して、X軸を中心としてZ軸からY軸方向に35度15分傾斜されている。以下の説明では、ATカットの水晶振動片の軸方向を基準とし、傾斜された新たな軸をY’軸及びZ’軸として用いる。すなわち、圧電デバイス100において、圧電デバイス100の長手方向をX軸方向、圧電デバイス100の高さ方向をY’軸方向、X軸方向及びY’軸方向に垂直な方向をZ’軸方向として説明する。
【0018】
圧電振動片110は、+Y’軸側の面及び−Y’軸側の面に励振電極111が形成されており、各励振電極111からは圧電振動片110の−X軸側の辺に引出電極112が引き出されている。+Y’軸側の面に形成されている励振電極111から引き出される引出電極112は−X軸側の辺の+Z’軸側に引き出され、+Z’軸側の側面を介して−Y’軸側の面に引き出されている。−Y’軸側の面に形成されている励振電極111から引き出されている引出電極112は、−X軸側の辺の−Z’軸側に引き出され、−Z’軸側の側面を介して+Y’軸側の面に引き出されている。
【0019】
パッケージ120の−Y’軸側の面は圧電デバイス100の実装される実装面122bとなっており、パッケージ120の+Y’軸側の面はリッド板130が載置される接合面122aとなっている。また、パッケージ120の+Y’軸側の面には、接合面122aから−Y’軸方向に凹んだ凹部121が形成されている。凹部121には、圧電振動片110及び集積回路140が載置される。圧電振動片110は、凹部121に形成される載置部123に載置される。載置部123の+Y’軸側の面には、圧電振動片110の引出電極112に導電性接着剤172(
図2参照)を介して電気的に接続される接続電極124が形成されている。
【0020】
パッケージ120は、例えばセラミックを基材としたセラミックパッケージとして形成される。パッケージ120は、第1層120a、第2層120b、第3層120c、第4層120d、及び第5層120eの5つの層が重ね合わされることにより形成されている。第1層120aは、パッケージ120の+Y’軸側に配置され、第1層120aの+Y’軸側の面には接合面122aが形成されている。第2層120bは、第1層120aの−Y’軸側の面に接合されて配置されており、凹部121に載置部123を形成している。第3層120cは、第2層120bの−Y’軸側の面に接合されて配置されており、+Y’軸側の面には集積回路140が載置される。第4層120dは、第3層120cの−Y’軸側の面に接合されて配置されており、+Y’軸側の面には加熱用ヒータ126が形成されている。第5層120eは、第4層120dの−Y’軸側の面に形成されており、第5層120eの+Y’軸側の面には温度測定用配線127が形成されており、−Y’軸側の面である実装面122bには外部電極125が形成されている。
【0021】
リッド板130は、平板状に形成されており、パッケージ120の接合面122aに封止材171(
図2参照)を介して接合されて、パッケージ120の凹部121を密封する。密封された凹部121は圧電デバイス100のキャビティ101(
図2参照)となる。リッド板130は、例えば金属材料等により形成される。
【0022】
集積回路140は、第3層120cの+Y’軸側の面に形成される配線パターン128(
図4(a)参照)に電気的に接続される。配線パターン128は、接続電極124、外部電極125、加熱用ヒータ126、及び温度測定用配線127に接続されるため、これにより、集積回路140が接続電極124、外部電極125、加熱用ヒータ126、及び温度測定用配線127に電気的に接続される。
【0023】
図2は、圧電デバイス100の概略断面図である。
図2では、圧電デバイス100を構成する部品及び電極等のY’軸方向の位置関係が概略的に示されている。圧電デバイス100では、パッケージ120の接合面122aにリッド板130が封止材171を介して載置されることにより凹部121が密封されキャビティ101が形成される。キャビティ101には圧電振動片110及び集積回路140が配置されている。圧電振動片110は、第2層120bの一部として形成される載置部123に載置される。また、圧電振動片110の引出電極112は載置部123に形成される接続電極124に導電性接着剤172を介して電気的に接続される。集積回路140は、第3層120cの+Y’軸側の面であり、キャビティ101の底面に配置される。集積回路140は、例えば集積回路140の+Y’軸側の面に複数の電極141が形成され、これらの電極141が金属ワイヤ142によるワイヤボンディングにより配線パターン128に電気的に接続される。
図2では、電極141、金属ワイヤ142、及び配線パターン128の一部が概略的に示されている。また、
図2では、配線パターン128の一部が金属ワイヤ142を介して集積回路140の電極141に接続され、さらに第2層120bを貫通する貫通電極154を介して接続電極124に電気的に接続されている状態が示されている。集積回路140は、
図2ではワイヤボンディングによりキャビティ101に載置されているが、フリップチップボンディングにより載置されても良い。温度測定用配線127及び加熱用ヒータ126は、キャビティ101の−Y’軸側に配置される。
【0024】
図3(a)は、第5層120eの平面図である。第5層120eの+Y’軸側の面には温度測定用配線127が形成されている。温度測定用配線127は、高融点金属であり抵抗率が比較的高く、抵抗値の温度係数が大きいタングステン又はモリブデン等の金属により形成される細線が第5層120eの+Y’軸側の面に配線されることにより形成される。温度測定用配線127はキャビティ101に配置される圧電振動片110の温度測定に用いられるため、温度測定用配線127はキャビティ101にY’軸方向に重なる範囲に主に形成される。
【0025】
また、
図3(a)では第5層120eを透過するように第5層120eの−Y’軸側の面に形成される外部電極125が示されている。第5層120eの−Y’軸側の面には、6つの外部電極125が形成されている。以下の説明では、第5層120eの−X軸側の−Z’軸側に形成される外部電極125を外部電極125aとし、−Z’軸側の中央に形成される外部電極125を外部電極125b、+X軸側の−Z’軸側の外部電極125を外部電極125c、−X軸側の+Z’軸側の外部電極125を外部電極125d、+Z’軸側の中央の外部電極125を外部電極125e、及び+X軸側の+Z’軸側の外部電極125を外部電極125fとして説明する。
【0026】
外部電極125aは、外部電源(不図示)に接続される端子である。外部電極125b及び外部電極125eは、温度調整用端子である。外部電極125cは、周波数の出力端子であり、外部電極125dは周波数制御端子であり、外部電極125fは接地されるアース端子である。また、第5層120eでは各外部電極125に電気的に接続されるように第5層120eを貫通する貫通電極151a〜151fが形成されている。貫通電極151aは外部電極125aに接続され、貫通電極151bは外部電極125bに接続され、貫通電極151cは外部電極125cに接続され、貫通電極151dは外部電極125dに接続され、貫通電極151eは外部電極125eに接続され、貫通電極151fは外部電極125fに接続されている。
【0027】
図3(b)は、第4層120dの平面図である。第4層120dの+Y’軸側の面には加熱用ヒータ126が形成されている。加熱用ヒータ126は、高融点金属であり抵抗率が比較的高いタングステン又はモリブデン等の金属により形成される細線が第4層120dの+Y’軸側の面に配線されることにより形成される。加熱用ヒータ126はキャビティ101に配置される圧電振動片110を加熱するために用いられるため、加熱用ヒータ126はキャビティ101にY’軸方向に重なる範囲に主に形成される。
【0028】
第4層120dには、第4層120dを貫通する複数の貫通電極152a〜152hが形成されている。貫通電極152a〜152fは、第5層120eに形成される貫通電極151a〜151fにそれぞれ電気的に接続される。また、加熱用ヒータ126の−X軸側の端は、外部電源に電気的に接続される貫通電極152aに接続されている。また、貫通電極152g及び貫通電極152hは、第5層120eに形成される温度測定用配線127の両端にそれぞれ接続される。
【0029】
図4(a)は、第3層120cの平面図である。第3層120cの+Y’軸側の面には集積回路140が載置される。また、第3層120cには第3層120cを貫通する複数の貫通電極153a〜153iが形成されており、第3層120cの+Y’軸側の面にはこれらの貫通電極153a〜153iと集積回路140とを電気的に繋ぐ配線パターン128が形成されている。また、配線パターン128は、第2層120bに形成される貫通電極154m、154n(
図4(b)参照)に接続される電極パッド153m、153nと集積回路140とを電気的に繋いでいる。貫通電極153a〜153hは、第4層120dの貫通電極152a〜152hにそれぞれ電気的に接続され、貫通電極153iは加熱用ヒータ126の+X軸側の端に電気的に接続される。各配線パターン128と集積回路140の電極141(
図2参照)とは金属ワイヤ142(
図2参照)を介して電気的に接続される。
【0030】
図4(b)は、第2層120bの平面図である。第2層120bの中央領域にはY’軸方向に貫通した貫通領域が形成されており、第1層120aの中央領域に形成される貫通領域と共にキャビティ101を形成する(
図2参照)。第2層120bには、圧電振動片110を載置する載置部123が形成されており、載置部123の+Y’軸側の面には接続電極124が形成されている。接続電極124は載置部123を貫通する貫通電極154m、154nを介して第3層120cに形成される電極パッド153m、153nにそれぞれ電気的に接続される。
【0031】
図5は、圧電デバイス100の回路図である。
図5では、圧電振動片110、加熱用ヒータ126、温度測定用配線127、集積回路140、外部電極125a〜125f、第2層120bに形成される貫通電極153a〜153i、及び電極パッド153m、153nが示されている。集積回路140は圧電振動片110を発振させる発振回路を含んでいる。また、集積回路140は、温度測定用配線127の内部抵抗値を検出する検出回路、検出回路で検出された内部抵抗値に基づいて温度測定用配線127付近の温度を算出する算出回路、及び算出回路で算出された回路に基づいて加熱用ヒータ126へ流す電力を調整する調整回路を含んでいる。
【0032】
圧電デバイス100では、外部電極125aより供給される電力が加熱用ヒータ126及び集積回路140に供給される。加熱用ヒータ126の発熱量は、温度測定用配線127において計測される温度が考慮されて調整される。これにより、圧電振動片110の温度をコントロールすることができる。また、圧電振動片110の温度は温度調整用端子である外部電極125b及び外部電極125eを介して圧電デバイス100の外部より調整することができる。圧電振動片110の周波数は、外部電極125cから出力される。
【0033】
圧電デバイス100は、加熱用ヒータ126及び温度センサである温度測定用配線127を備え、圧電振動片110の温度を調整することができる恒温槽付圧電発振器として形成される。従来、恒温槽付圧電発振器は、加熱用ヒータ及び温度センサをそれぞれ独立した部品として備えていた。そのため、恒温槽付圧電発振器の大きさが大きくなるという問題があった。圧電デバイス100では、加熱用ヒータ及び温度センサである温度測定用配線を、金属細線を用いてパッケージ120の一部として形成することにより、独立した部品としての加熱用ヒータ及び温度センサが不要になっている。そのため、恒温槽付圧電発振器の大きさを従来よりも小さくすることができる。また、恒温槽付圧電発振器が小型化されることにより、圧電振動片、加熱用ヒータ、及び温度センサの互いの距離が近くなる。これにより、これらの熱的結合が強くなり、圧電振動片の温度を一定に保つことが容易になる。これらのことは、周囲の温度変化に対して周波数安定度を高くすることを可能にする。また、小型化により圧電振動片への加熱が容易になるため、起動時に周波数が安定するまでの時間を短縮することができ、加熱用ヒータの電力を削減することができるため好ましい。また、圧電デバイス100は、従来の恒温槽付圧電発振器に比べて部品点数及び組付け工数を減らすことができるため、製造コストを抑えることができる。
【0034】
(第2実施形態)
以下に第2実施形態として、圧電デバイス100の様々な変形例を示す。また、以下の実施形態では、第1実施形態と同じ部分には第1実施形態と同じ符号を付してその説明を省略する。
【0035】
<圧電デバイス200の構成>
圧電デバイス100では、第4層120dに加熱用ヒータ126が形成され、第5層120eに温度測定用配線127が形成されたが、1つの層に加熱用ヒータ及び温度測定用配線が形成されても良い。すなわち、圧電デバイス100の第4層120d及び第5層120eの2つの層に代えて、加熱用ヒータ及び温度測定用配線が形成された第4層220dの1つの層を用いることができ、第4層220dが用いられた圧電デバイスを圧電デバイス200とする。
【0036】
図6(a)は、圧電デバイス200の概略断面図である。圧電デバイス200は主に、圧電振動片110と、パッケージ220と、リッド板130と、集積回路140と、により形成されている。圧電デバイス200のパッケージ220は、第1層120aと、第2層120bと、第3層120cと、第4層220dと、により形成されている。第4層220dは第3層120cの−Y’軸側の面に形成されており、第4層220dの+Y’軸側の面には加熱用ヒータ226及び温度測定用配線227が形成されている。
【0037】
図6(b)は、第4層220dの平面図である。第4層220dの+Y’軸側の面には、加熱用ヒータ226及び温度測定用配線227が加熱用ヒータ126及び温度測定用配線127と同様の金属細線により互いに接することなく形成されている。加熱用ヒータ226の+X軸側の端、及び温度測定用配線227の両端は、第4層220dの+Y’軸側に形成される第3層120cの貫通電極153g〜153i(
図4(a)参照)を介して集積回路140に電気的に接続される。ここで、加熱用ヒータ226の+X軸側の端及び温度測定用配線227の+X軸側の端は、圧電デバイス100の場合とは異なりそれぞれ貫通電極153h及び貫通電極153iに接続されるため、集積回路140内の配線はこれに合わせて形成される。圧電デバイス200では、1つの層に加熱用ヒータ226及び温度測定用配線227の両方を形成することにより、圧電デバイスの高さをさらに低く形成して小型化できるため好ましい。
【0038】
一方、第4層220dでは、加熱用ヒータ226及び温度測定用配線227の両方の配線がなされたが、例えば
図3(b)の第4層120dの加熱用ヒータ126に、加熱用ヒータ及び温度測定用配線の両方の役割を持たせるように形成することができる。すなわち、圧電デバイスのパッケージを第1層120a〜第4層120dの4つの層とし、第4層120dの−Y’軸側の面に外部電極125を配置することにより形成しても良い。加熱用ヒータの配線と温度測定用配線とは、共にタングステン又はモリブデン等の金属により形成されるため、1つの配線を共通して用いることができる。このとき、1つの配線は、加熱用ヒータとして圧電振動片110を加熱しながら同時に温度測定用配線として抵抗値が測定され、周辺の温度が測定されることになる。
【0039】
<圧電デバイス300の構成>
図7(a)は、圧電デバイス300の概略断面図である。圧電デバイス300は主に、圧電振動片110と、パッケージ320と、リッド板130と、集積回路140と、により形成されている。パッケージ320は、第1層120a、第2層120b、第3層120c、第4層120d、第5層120e、及び第6層320fの6つの層が重ね合わされることにより形成されている。第6層320fは、第5層120eの−Y’軸側の面に形成される層であり、外部電極125が第6層320fの−Y’軸側の面に形成されている。
【0040】
図7(b)は、第6層320fの平面図である。第6層320fの−Y’軸側の面には外部電極125a〜125fが形成されている。また、各外部電極125に対応するように貫通電極351a〜351fが形成されている。貫通電極351a〜351fは第5層120eの貫通電極151a〜151fにそれぞれ電気的に接続される。第6層320fは、セラミックよりも熱伝導率が低い樹脂材料で形成される断熱層であり、加熱用ヒータ126の熱を圧電デバイス300の−Y’軸側の面より外部に逃がしにくくしている。
【0041】
<パッケージ420の構成>
図8(a)は、パッケージ420の上面図である。圧電デバイス100では、パッケージ120の代わりにパッケージ420を用いて形成されても良い。パッケージ420は、第1層120a、第2層120b、第3層420c、及び第4層420d(不図示)により形成されている。第3層420は第3層120c(
図4(a)参照)と同様の外形形状に形成されており、第3層420の+Y’軸側の面の集積回路140の周りに加熱用ヒータ426が形成されている。また、集積回路140はフリップチップボンディングにより第3層420cに載置され、集積回路140とY’軸方向に重なる位置に貫通電極153a〜153h(不図示)が形成されている。また、加熱用ヒータ426は、集積回路140とY’軸方向に重なる第3層420cの+Y’軸側の面で、集積回路140に電気的に接続されている。第4層420dは、+Y’軸側の面に温度測定用配線(不図示)が形成され−Y’軸側の面に外部電極125が形成されている。
【0042】
パッケージ420では、パッケージ420の凹部121内に加熱用ヒータ426を配置することにより、圧電振動片110を直接的に加熱することができ、温度調整が容易になっている。
【0043】
<第2層520bの構成>
図8(b)は、第2層520bの上面図である。圧電デバイス100では、パッケージ120の代わりにパッケージ520を用いて形成されても良い。パッケージ520は、第1層120a、第2層520b、第3層520c(不図示)、第4層120d、及び第5層120eにより形成されている。
図8(b)に示される第2層520bでは、第2層120b(
図4(b)参照)の内壁に相当する箇所が鎖線521で示されている。第2層520bは、第2層120bよりも内壁がさらに凹部121の内側に形成されており、これによって生じた領域522に加熱用ヒータ526が形成されている。加熱用ヒータ526は、第1層120aが鎖線521の外側に配置されるため、キャビティ101内に露出する状態で配置される。加熱用ヒータ526の両端は第2層520bを貫通する貫通電極553a、553iに電気的に接続されており、第3層520c上に形成される配線パターンを介して集積回路140に電気的に接続される。第3層520cは、第3層120c(
図4(a)参照)と同様の外形を有するが、第2層520bに加熱用ヒータ526が配置されることに伴って配線パターンが変更されている。パッケージ520においてもパッケージ420と同様に、パッケージ420の凹部121内に加熱用ヒータ526が配置されるため、圧電振動片110を直接的に加熱することができ、温度調整が容易になっている。
【0044】
(第3実施形態)
圧電デバイスに用いられる圧電振動片には、様々な圧電振動片を用いることができる。以下に、圧電振動片の一辺と、一辺に向かい合う他辺と、にそれぞれ引出電極が引き出されている圧電振動片が用いられた圧電デバイスについて説明する。また、以下の実施形態では、第1実施形態と同じ部分には第1実施形態と同じ符号を付してその説明を省略する。
【0045】
<圧電デバイス600の構成>
図9は、圧電デバイス600の分解斜視図である。圧電デバイス600は主に、圧電振動片610と、パッケージ620と、リッド板130と、により形成されている。
【0046】
圧電振動片610は、+Y’軸側の面及び−Y’軸側の面に励振電極611が形成されており、各励振電極611からは圧電振動片610の+X軸側及び−X軸側の辺に引出電極612が引き出されている。+Y’軸側の面に形成されている励振電極611から引き出される引出電極612は+X軸側の辺の+Z’軸側に引き出され、+Z’軸側の側面を介して−Y’軸側の面に引き出されている。−Y’軸側の面に形成されている励振電極611から引き出されている引出電極612は、−X軸側の辺の−Z’軸側に引き出されている。
【0047】
パッケージ620は、−Y’軸側の面に外部電極625が形成され、+Y’軸側の面には接合面122a及び接合面122aから−Y’軸方向に凹んだ凹部621が形成されている。凹部621には圧電振動片610が載置される載置部623が形成されている。載置部623は、凹部621内の+X軸側及び−X軸側の両側に形成される。また、凹部621を密封するようにリッド板130が接合面122aに載置される。
【0048】
パッケージ620は、第1層120a、第2層620b、及び第3層620cにより形成されている。第2層620bは第1層120aの−Y’軸側の面に接合されており、凹部621に載置部623を形成する。第3層620cは、第2層620bの−Y’軸側の面に接合されており、+Y’軸側の面には金属配線626が形成され、−Y’軸側の面には外部電極625が形成される。
【0049】
図10は、
図9のA−A断面の概略断面図である。凹部621は、リッド板130で密封されることにより、圧電デバイス600内にキャビティ601が形成される。キャビティ601に形成される各載置部623の+Y’軸側の面には接続電極624が形成されており、接続電極624には導電性接着剤172を介して圧電振動片610の引出電極612が接続される。
【0050】
キャビティ601の底面には金属配線626が圧電振動片610に相対するように形成されている。金属配線626は、加熱用ヒータ及び温度測定用配線の両方を兼ねる配線であり、集積回路640に接続されている。また、金属配線626及び接続電極624は、パッケージ620を貫通する貫通電極651を介して外部電極625に電気的に接続されている。
【0051】
図11(a)は、パッケージ620の上面図である。パッケージ620の凹部621の+X軸側及び−X軸側には載置部623が形成されている。各載置部623にはそれぞれ接続電極624が形成され、接続電極624は貫通電極651を介して外部電極625に電気的に接続される。また、凹部621内には金属配線626が形成されており、金属配線626には集積回路640が接続されている。圧電デバイス600では、金属配線626が加熱用ヒータ及び温度測定用素子の役割を担っている。また、集積回路640は、検出回路及び算出回路を含んでおり、金属配線626の内部抵抗値を検出し、内部抵抗値に基づいて金属配線626付近の温度を算出する。
【0052】
図11(b)は、第3層620cの平面図である。また、
図11(b)では、第3層620cの−Y’軸側の面に形成される外部電極625が第3層620cを透過して示されている。外部電極625は、6つの外部電極625a〜625fにより形成されている。外部電極625a及び外部電極625fは、貫通電極651、接続電極624、及び導電性接着剤172を介して圧電振動片610の引出電極612に接続される。外部電極625bは、接地されるアース端子である。外部電極625c及び外部電極625dは、貫通電極651を介して金属配線626に電気的に接続される。また、外部電極625eは、集積回路640に電気的に接続される。
【0053】
図12は、圧電デバイス600の回路図である。
図12では、圧電デバイス600の構成要素として、圧電振動片610、金属配線626、外部電極625a〜625f、及び集積回路640が示されている。また、圧電デバイス600とは別に、温度を制御する温度制御回路641が示されている。
【0054】
圧電デバイス600においては、圧電振動片610の引出電極612に電気的に接続される外部電極625aと外部電極625fとの間に交番電圧をかけて圧電振動片610の周波数を検出する。また、外部電極625cから外部電極625dにかけて電流を流すことにより、金属配線626を発熱させる。また、その発熱により上昇したキャビティ601の温度を、金属配線626の内部抵抗値を検出する検出回路及び検出回路で検出された内部抵抗値に基づいて金属配線626付近の温度を算出する算出回路により検出する。
【0055】
圧電デバイス600は、温度制御回路641と共に用いられることにより、キャビティ601の温度が制御される。温度制御回路641は、算出回路で算出された回路に基づいて加熱用ヒータ626へ流す電力を調整する調整回路を含んでいる。温度制御回路641は、外部端子625c及び外部端子625eに接続されることにより、集積回路640で検出されたキャビティ601内の温度に従って金属配線626に流れる電流を調整してキャビティ601内の温度を制御する。
【0056】
圧電デバイス600は、発振回路を含まない圧電振動子として形成されているが、発振回路を含んで圧電発振器として形成されても良い。また、圧電デバイス600は調整回路を含んでいないが、集積回路640が調整回路を含むように形成されても良い。
【0057】
圧電デバイス600においても、圧電デバイス100と同様に、加熱用ヒータ及び温度センサである温度測定用配線を、金属細線を用いてパッケージ620の一部として形成することにより、独立した部品としての加熱用ヒータ及び温度センサが不要になり、圧電デバイスの大きさを従来よりも小さくすることができる。
【0058】
また、圧電デバイスでは温度変化により周波数が大きく変動するが、温度を頂点温度(ZTC)付近で一定にすることにより、周波数の変動を小さく抑えることができる。圧電デバイス600では、圧電振動片、加熱用ヒータ、及び温度センサの互いの距離が近くなるため、これらの熱的結合が強くなり、圧電振動片の温度を所定の温度に一定に保つことが容易になる。すなわち、圧電振動片の温度を頂点温度(ZTC)付近で一定にすることが容易になるため、周波数の変動をさらに小さく抑え、周波数が高安定な圧電デバイスを形成することができる。
【0059】
以上、本発明の最適な実施形態について詳細に説明したが、当業者に明らかなように、本発明はその技術的範囲内において実施形態に様々な変更・変形を加えて実施することができる。また、各実施形態の特徴を様々に組み合わせて実施することができる。
【0060】
例えば、圧電デバイス100において、第4層120dに形成される加熱用ヒータ126と第5層120eに形成される温度測定用配線127とが互いに入れ替えられて形成されても良い。すなわち、この場合、温度測定用配線127が第4層120dに形成され、加熱用ヒータ126が第5層120eに形成されることにより、温度測定用配線127が加熱用ヒータ126よりも+Y’軸側に形成されることになる。
【0061】
また、加熱用ヒータ及び温度測定用配線は、パッケージの内部ではなく、パッケージの外部に形成されていても良い。さらに、上記実施形態では発振回路、検出回路、算出回路、調整回路が1つの集積回路で構成されている例を示したが、各回路が独立に形成されてキャビティ内に設置されても良い。