【実施例】
【0046】
(実施例1)
まず、CoL1とGoxを含む混合溶液を調製した。
次に、薄膜を形成した。
図8は、薄膜形成工程図であり、薄膜形成前の電極側面図(a−1)、薄膜形成前の電極底面図(a−2)、薄膜形成後の電極側面図(b−1)、薄膜形成後の電極底面図(b−2)である。膜厚は350nmとした。
まず、
図8(a−1)、(a−2)に示すGCE電極を準備した。電極部材がグラッシーカーボン(GC)であり、カバー部材がテフロンである。
次に、
図8(b−1)、(b−2)に示すように、前記混合溶液を電極部に塗布してから、乾燥して、CoL1/GOx/GCE電極(実施例1)を作製した。
【0047】
(比較例1)
次に、CoL1のみを含む溶液を用いた他は実施例1と同様にして、CoL1/GCE電極(比較例1)を作製した。
【0048】
<特性測定>
参照電極(Ag/AgCl)と、対電極(白金)と、電解液(飽和KCl溶液:Sat‘d KCl)を用いて、作成した電極(実施例1、比較例1)を作用電極として、CV特性を測定した。
【0049】
(特性測定)
図9は、CoL1/GCE電極のCVのスキャン速度依存性を示すグラフである。20、50、100、200、300、400、500、600、700、800、900、1000、1200、1500mVs−1とスキャン速度を変えて測定した。スキャン速度を大きくするに従い電流値I
pは大きくなった。
【0050】
図10は、CV測定データを、スキャン速度を横軸、Ipを縦軸にして表したグラフである。
電流値とスキャン速度は1次線形の関係となった。
【0051】
図11は、CV測定データを、log(スキャン速度)を横軸、Epを縦軸にして表したグラフである。
log(スキャン速度)が0付近で、Epとlog(スキャン速度)は1次線形の関係となった。
【0052】
図12は、CoL1/GOx/GCE電極のCVのスキャン速度依存性を示すグラフである。20、50、100、200、300、400、500、600、700、800、900、1000、1200、1500mVs−1とスキャン速度を変えて測定した。スキャン速度を大きくするに従い電流値I
pは大きくなった。
【0053】
図13は、CV測定データを、スキャン速度を横軸、Ipを縦軸にして表したグラフである。
電流値とスキャン速度はほぼ1次線形の関係となった。
【0054】
図14は、CV測定データを、log(スキャン速度)を横軸、Epを縦軸にして表したグラフである。
Epとlog(スキャン速度)はほぼ1次線形の関係となった。
【0055】
Ipはピーク電流値であり、Ipaは還元電流値であり、Ipcは酸化電流値である。
Ipc(GOx)はGOxの還元電流値である。
Epは酸化還元電位であり、Epaは還元電位であり、Epcは酸化電位である。
式(1)は、IpとT又はνとの関係を示す式である。
【0056】
【数1】
【0057】
ここで、nは移動電子数であり、Fはファラデー定数であり、Rは気体定数であり、Tは温度であり、Aは電極面積であり、Γ
*は表面のカバレッジであり、νは掃引速度である。
CoL1のΓ
*は1.45×10
−8モル/cm
2であり、GOxのΓ
*は7.49×10
−11モル/cm
2となった。
式(2)は、Lavironの式である。
【0058】
【数2】
【0059】
ここで、k
Sは電子転送率定数であり、αは電荷輸送係数であり、Fはファラデー定数である。
CoL1のk
Sは1.17s
−1であり、αは0.34となった。CoL1のレドックス再現性はGOxでのDET(直接電子移動)に影響を受けていた。
【0060】
図15は、PBS中、100mVs−1のスキャン速度の、電極材料の違いを示すCVグラフである。CoL1/GOx/GCE電極(実施例1)の方がCoL1/GCE電極(比較例1)に比べて大きな電流値の変化を示した。
【0061】
図16は、CoL1/GOx/GCE電極のCVの電解質溶液依存性を示すグラフである。グルコース感知反応を示している。
0.5mgmL
−1CoL1、10mgmL
−1GO
xで混合溶液を調製し、グラッシーカーボン(GC)電極に薄膜を形成して、CoL1/GOx/GCE電極を作製した。
電解質溶液として、N
2飽和PBS(N
2−saturated PBS)、空気飽和PBS(air−saturated PBS)、空気飽和PBS+1mMグルコース(air−saturated PBS+1mM glucose)を用いた。
【0062】
CoL1/GOx/GCE電極では、先に記載の化学反応式(2)〜(5)に示す化学反応が行われると推察できる。
フラビンアデニンジヌクレオチドの酸化型であるFADは酸素によって再生され、約−0.55Vで、GOxの還元電流ピークを生じた。
また、フラビンアデニンジヌクレオチドの還元型であるFADH
2は、Co(II)L1へより少ないDETして、酸素によって酸化された、これにより、Co
II/Co
Iに対応する約−0.86Vで、CoL1の還元電流ピークを生じた。
【0063】
グルコースが加えられた場合、化学反応式(2)に示す、GO
xとグルコースとの間の酵素触媒反応により、GO
x(FAD)濃度を減少させた。
DETにより、FADH
2によって、酸化型であるCo(II)L1が少なくなり、還元電流ピークを減少させた。
【0064】
感知反応により、CoL1とGO
xの添加量を最適化した。最適の添加量は、10mg/mLのGO
xと、0.5mg/mLのCoL1であった。
【0065】
次に、アンペロメトリー検出(amperometric detection)実験がなされた。
0〜700sの間では、0.1mMのグルコースを一定時間ごとに滴下した。
700s〜1750sの間では、0.2mMのグルコースを一定時間ごとに滴下した。
一定時間は、100秒とした。
【0066】
図17は、アンペロメトリー検出実験結果を示すグラフである。
0.5mgmL
−1CoL1/10mgmL
−1GO
x/GCE電極を用い、0.01MのPBSを電解質溶液とし、印加電圧―0.8Vとして、一定時間ごとにグルコースを滴下して、電流値の変化を測定した。滴下ごとに電流値が階段状に上がった。
【0067】
図18は、グルコース濃度と電流値の関係を示すグラフである。
47.1μAmM
−1cm
−2の感度で、グルコース濃度0.1mMから1.4mMの範囲で1次線形の関係が得られた。バックグラウンド・ノイズ(N)と感度値(S)に基づいて、検出限界値(Limit of detection:LOD、S/N=3)は、82.8μMであった。
【0068】
次に、0.4mMのグルコース、0.04mMのアスコルビン酸(AA)と、0.04mMの尿酸(UA)の存在下、アンペロメトリー検出実験を行い、選択性確認実験を行った。
0.4mMのグルコース、0.04mMのアスコルビン酸(AA)、0.04mMの尿酸(UA)を、この順番で、一定時間ごとに滴下した。
一定時間は、150秒とした。
【0069】
図19は、アンペロメトリー選択性確認実験結果を示すグラフである。
0.5mgmL
−1CoL1/10mgmL
−1GO
x/GCE電極を用い、0.01MのPBSを電解質溶液とし、印加電圧―0.8Vとして、一定時間ごとにグルコース、AAとUAを滴下して、電流値の変化を測定した。
【0070】
グルコースを滴下したときのみ、電流値が階段状に上がった。グルコースを滴下したときの電流値(シグナル)は、約―20μAcm
−2と大きかったにもかかわらず、AAとUAを滴下したときの電流値(シグナル)は、それぞれ無視できる程度のものであった。
また、CoL1/GOx/GCE電極(実施例1)は、8.1%のRSDで、繰り返し使用の再現性が高かった。
RSDは相対標準偏差(Relative standard deviation)の略で、(標準偏差(ばらつき)÷平均値)×100%で表される。
【0071】
図20は、グルコース、AA、UAを滴下したときの電流値絶対値の比較を示す棒グラフである。
0.4mMのグルコースを滴下したとき、|ΔJ|が約16μAcm
−2となり、0.04mMのAAを滴下したとき、|ΔJ|が約3.8μAcm
−2となり、0.04mMのUAを滴下したとき、|ΔJ|が約1.8μAcm
−2となった。
選択性は高かった。
なお、糖及び各酸の添加量は、血中濃度に合わせて設定した。
【0072】
次に、蛍光スペクトル測定をした。
ITO基板(Bare ITO)、CoL1を成膜したITO基板(CoL1/ITO)、GOx/CoL1を成膜直後のITO基板(GOx/CoL1/ITO(fresh))、GOx/CoL1を成膜し、DETをした直後のITO基板(GOx/CoL1/ITO(after DET))の4種のサンプルの測定をした。
【0073】
図21は、蛍光スペクトルの測定結果である。
2990nm及び467nmの波長の光で励起しても、Bare ITO及びCoL1/ITOは、320〜620nmの波長範囲で蛍光スペクトルは得られなかった。
一方、GOx/CoL1/ITO(fresh)及びGOx/CoL1/ITO(after DET)の2種のサンプルは、ほぼ同様の蛍光スペクトルを示した。
この結果から、DETしても、酵素が壊れなかったと推察した。