(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6376686
(24)【登録日】2018年8月3日
(45)【発行日】2018年8月22日
(54)【発明の名称】生地片切断方法及び装置
(51)【国際特許分類】
A21C 11/10 20060101AFI20180813BHJP
B26D 3/24 20060101ALI20180813BHJP
B26D 3/00 20060101ALI20180813BHJP
B26D 1/15 20060101ALI20180813BHJP
B26D 1/43 20060101ALI20180813BHJP
B26D 11/00 20060101ALI20180813BHJP
【FI】
A21C11/10 A
B26D3/24 Z
B26D3/00 603Z
B26D1/15
B26D1/43
B26D11/00
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-118373(P2014-118373)
(22)【出願日】2014年6月9日
(65)【公開番号】特開2015-231332(P2015-231332A)
(43)【公開日】2015年12月24日
【審査請求日】2017年3月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000115924
【氏名又は名称】レオン自動機株式会社
(72)【発明者】
【氏名】原田 信秋
(72)【発明者】
【氏名】木野内 崇敬
【審査官】
黒田 正法
(56)【参考文献】
【文献】
実開昭63−140885(JP,U)
【文献】
特表2011−507539(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A21C 11/10
B26D 1/15
B26D 1/43
B26D 3/00
B26D 3/24
B26D 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
生地シートから生地片を切り出す生地片の切断方法であって、
前記生地シートを搬送装置にて搬送し、
該搬送装置の上方に配置されたブレードにて、前記生地シートに幅方向に沿った、あるいは、幅方向に対し傾斜した方向にスリットを形成し、
前記搬送装置の上方で且つ前記ブレードの下流側に配置され、制御モータによって制御可能に回転するサーキュラカッタにて前記生地シートを搬送方向に沿って直線に切断する際に、
切り出される前記食品生地片の側面がその他の部分と同速に移動するよう、
前記サーキュラカッタは、外周が前記生地シートの上面に接する点における搬送方向への移動速度成分V3が搬送速度V1と同速、あるいは搬送速度V1より速い速度で回転して生地片を切り出すことを特徴とする生地片切断方法。
【請求項2】
生地シートから生地片を切り出す生地片の切断装置であって、
前記生地シートを搬送する搬送装置と、
該搬送装置の上方に配置され、前記生地シートに幅方向に沿った、あるいは、幅方向に対し傾斜した方向にスリットを形成するブレードと、
前記搬送装置の上方で且つ前記ブレードの下流側に配置され、前記生地シートを搬送方向に沿って直線に切断するサーキュラカッタと、
前記サーキュラカッタを制御可能に回転駆動する制御モータを備え、
前記制御モータは、前記サーキュラカッタの外周が前記生地シートの上面に接する点における搬送方向への移動速度成分V3が搬送速度V1と同速、あるいは搬送速度V1より速い速度で前記サーキュラカッタを回転駆動し、切り出される前記食品生地片の側面がその他の部分と同速に移動する構成であることを特徴とする生地片切断装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば巻上げ前のクロワッサン生地のように、帯状の生地から略三角形の生地片を切り出すための切断方法及び装置に関するものであり、より詳しくは、生地片が切り出される際に生地片が所要形状に対し曲がって形成されることを防止することができる生地片切断方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えばクロワッサンを製造する場合、搬送手段としてのベルトコンベアによって長手方向に搬送される帯状の食品生地(積層生地)を、切断装置によって二等辺三角形に切断し、この三角形状に切断された生地片の底辺側が下流側となるように生地片の方向性を一定にする。そして、巻き上げ装置によって三角形状の前記生地片を底辺側から三角形状の頂部側へ巻き上げることによって中央部が太く両端部が細い直線状のクロワッサンに形成している(特許文献1参照)。
【0003】
従来の切断装置25について
図3を用いて説明する。生地片3は、幅広の帯状の生地シート2から略三角形状に切り出される。ここでは、説明の都合上、略三角形の頂部を3A、左右の斜辺を3B及び3C、そして、底辺を3Dと称す。切断装置25はベルトコンベア26の上方に設けられている。切断装置25は、斜辺3B及び3Cを切り出すブレード27を円筒部28の外周に備えたロータリブレード29と、その下流側に近接して配置され、頂部3A及び底辺3Dを切り出す丸刃のサーキュラカッタ31を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開平2−78082号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の切断装置25のサーキュラカッタ31は、回転軸32に軸止され、該回転軸32の両端部をコンベアフレーム26F上に回転自在に支持されている。サーキュラカッタ31は、回転軸32の両端に固定された丸形のホイール35がコンベアベルト26Bの搬送面と接触し、その摩擦により従動的に回転するものである。
【0006】
この場合、サーキュラカッタ31の周速VRは、コンベアベルト26Bの搬送速度V1と同速であるか、ホイール35がコンベアベルト26Bの表面でスリップなど生じると搬送速度V1より低速となる。このため、生地片3の頂部3A及び底辺3Dは、サーキュラカッタ31の側面と接しながら切断される際に搬送速度より遅れて移動することとなる。
【0007】
この遅れに関し
図4を用いて説明する。生地片3は、コンベアベルト26Bによって搬送されるため、生地シート2(生地片3)の下面がコンベアベルト26Bと接する点P1では、搬送速度V1にて移動するべく作用される。しかし、生地シート2(生地片3)と接するサーキュラカッタ31の側面の搬送方向への移動速度成分は、サーキュラカッタ31の周速VRより遅くなる。代表的に説明すると、生地シート2(生地片3)の上面とサーキュラカッタ31の外周が接する点P2でのサーキュラカッタ31の外周の搬送方向への移動速度成分V2は、搬送速度V1より遅くなる(
図4(a)参照)。
【0008】
このように、サーキュラカッタ31が生地シート2を直線的に切断する際には、切り出される生地片3は、搬送速度V1より遅く移動するサーキュラカッタ31の側面との接触により、生地片3の頂部3Aと底辺3Dが他の部分に対し遅れて移動する。このため、生地片3が全体として上流側に曲がって成形される(
図4(b)参照)。
【0009】
また、生地片3が搬送方向Rの上流側に向かって曲がる原因として、生地シート2を成形する際に生地内に生じる応力が影響する場合がある。積層生地である生地シート2は、生地と生地の間に油脂を挟み、この生地を幾層に折り畳み、それを公知の延展装置にて延展して所要の厚さの連続生地に成形されている。この生地シート2は、生地内に搬送方向に沿うような状態で引っ張り応力が内在する。
【0010】
この生地シート2に斜辺3B及び3Cとなるスリットを切断した後、サーキュラカッタ31で搬送方向に沿って生地シート2を切断すると、生地片3の切り出された部位が引っ張り応力の影響で縮むこととなり、その結果として、生地片3が上流側に向かって曲がって形成される。
【0011】
曲がった状態の生地片3は、公知の旋回装置により生地片3の底部3Dを下流側に配置され、公知の巻上げ装置により巻き上げ成形される。しかし、曲がって二等辺三角形状とならない生地片3を巻き上げ成形すると、生地片3の頂部3Dが巻き上げられた製品(クロワッサン)の中心位置から端部側へ片寄ってしまい、形状が対照的な紡錘形にならないという問題がる。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、生地シートから生地片を切り出す生地片の切断方法であって、前記生地シートを搬送装置にて搬送し、該搬送装置の上方に配置されたブレードにて、前記生地シートに幅方向に沿った、あるいは、幅方向に対し傾斜した方向にスリットを形成し、
前記搬送装置の上方で且つ前記ブレードの下流側に配置され、
制御モータによって制御可能に回転するサーキュラカッタにて前記生地シートを
搬送方向に沿って直線に切断
する際に、切り出される前記食品生地片の側面がその他の部分と同速に移動するよう、前記サーキュラカッタは、外周が前記生地シートの上面に接する点における搬送方向への移動速度成分V3が搬送速度V1と同速、あるいは搬送速度V1より速い速度で回転して生地片を切り出すことを特徴とする。
【0013】
また、生地シートから生地片を切り出す
生地片の切断装置であって、前記生地シートを搬送する搬送装置と、該搬送装置の上方に配置され、前記生地シートに幅方向に沿った、あるいは、幅方向に対し傾斜した方向にスリットを形成するブレードと、前記搬送
装置の上方で
且つ前記ブレードの下流側に配置され、
前記生地シートを搬送方向に沿って直線に切断するサーキュラカッタ
と、前記サーキュラカッタを制御可能に回転駆動する制御モータを備え、前記制御モータは、前記サーキュラカッタの外周が前記生地シートの上面に接する点における搬送方向への移動速度成分V3が搬送速度V1と同速、あるいは搬送速度V1より速い速度で前記サーキュラカッタを回転駆動し、切り出される前記食品生地片の側面がその他の部分と同速に移動する構成であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、帯状の生地シートから生地片を切断する際に、生地片の両端を切り出すサーキュラカッタの周速を生地を搬送する搬送装置の搬送速度より速く回転させ、かつ、その周速を調整可能に備えることにより、生地片が所望の形状に対し曲がった状態に形成されることが防止でき、上述した従来の問題を解決することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の実施形態に係る生地片切断装置の構成を示す説明図であり、(a)図は平面説明図であり、(b)図は正面説明図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る生地片切断の作用を示す説明図であり、(a)図は平面説明図であり、(b)図は正面説明図である。
【
図3】従来の生地片切断装置の構成を示す説明図であり、(a)図は平面説明図であり、(b)図は正面説明図である。
【
図4】従来の生地片切断の作用を示す説明図であり、(a)図は平面説明図であり、(b)図は正面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の実施形態に係る生地片切断装置1について、
図1及び
図2を用いて説明する。生地片切断装置1は、上述した従来の生地片切断装置25と同一の構成を含むものであり、同一の機能を有する構成については同じ符号を付する。
【0017】
生地片3は、幅広の帯状の生地シート2から切り出されるクロワッサン生地として説明する。本説明においては、生地片3は略台形状に図示してその上辺を頂部3Aと称している。しかしながら、生地片3を略三角形状に切り出し、その頂点を頂部3Aとして包含するものであるので、ここでは、生地片3の形状を略三角形状と称するものである。
【0018】
生地片切断装置1は、ベルトコンベア26の上方に設けられている。生地片切断装置1は、生地片3の斜辺3B及び3Cを切り出すブレード27を円筒部28の外周に備えたロータリブレード29と、その下流側に近接して配置され、生地片3の頂部3A及び底辺3Dを切り出す丸刃のサーキュラカッタ12を備えている。
【0019】
ロータリブレード29の回転軸30の両端は、ベルトコンベア26のコンベアフレーム26F上に回転自在に支持されている。また、ロータリブレード29の両側の回転軸30には、丸形のホイール33が固定されている。該ホイール33は、コンベアベルト26Bの搬送面と接触し、その摩擦により回転することによりロータリブレード29の周速がコンベアベルト26Bの搬送速度と同速となるよう駆動される。サーキュラカッタ12は、回転軸14に等間隔に軸止されている。該回転軸14は、一方の端部が制御モータMに連動連結され、他方の端部がコンベアフレーム26F上に回転自在に支持されている。
【0020】
この実施例では、切断装置1は、ロータリブレード29の軸方向に3組のブレード27を等間隔に備え、また、4枚のサーキュラカッタ12を回転軸14の軸方向に等間隔に備えており、生地シート2から幅方向に3列の生地片3を切断する構成である。両端のサーキュラカッタ31で切り出された生地シート2の端部2Aは、ガイド部材4に案内されベルトコンベア26の両側へ排出される。
【0021】
次に、生地片切断装置1により生地片3を切断する工程について説明する。帯状の生地シート2はベルトコンベア26により搬送速度V1にて搬送される。ロータリブレード29は、その周速を搬送速度V1と同じにして回転される。生地シート2には、ブレード27により切断された交互に傾斜したスリット18が形成される。このスリット18は、最終的に切り出される生地片3の斜面3B又は3Cとなる。生地シート2は、さらに搬送され、サーキュラカッタ12により搬送方向Rに沿って直線に切断され、生地片3が切り出される。
【0022】
サーキュラカッタ12は、その周速VRが搬送速度V1より速くに回転制御されている。代表的に説明すると、生地シート2(生地片3)の上面とサーキュラカッタ12の外周が接する点P2でのサーキュラカッタ31の外周の搬送方向への移動速度成分V3は、搬送速度V1と同じ、あるいは、速く設定している(
図2(a)参照)。
【0023】
このように、サーキュラカッタ12が生地シート2を直線的に切断する際には、切り出される生地片3は、搬送速度V1と同じ、あるいは、速く移動するサーキュラカッタ12の側面との接触により、生地片3の頂部3Aと底辺3Dが他の部分とほぼ同速に移動して、略三角形状の生地片3が成形される(
図2(b)参照)。
【0024】
サーキュラカッタ12の周速VR(回転速度)は、切断する生地の厚さや粘着の度合いなどの物性に応じて制御可能に設けられている。生地シート2から切り出される生地片3の変形の程度に応じてサーキュラカッタ12の回転速度を調節し、曲がりの少ない生地片3を切断することが可能となる。
【0025】
また、生地シート2に内在する応力により生地片3が搬送方向に曲がる場合においても、サーキュラカッタ12の側面が、その接触により生地片3の頂部3A及び底辺3Dを搬送方向Rに送りだすよう作用することができる。したがって、サーキュラカッタ12が生地片3の曲がりを矯正して略二等辺三角形状に形成することができる。
【0026】
そして、旋回装置にて切断された生地片3の底辺3D側が搬送下流側となるように旋回し、巻き上げ装置によって生地片3を底辺3D側から頂部3A側へ巻き上げることによって中央部が太く両端部が細い直線状のクロワッサンを成形することができる。
【0027】
本発明の実施の形態に係る延展装置の説明は概ね上記のとおりであるが、これに限らず特許請求の範囲において種種の変更が可能である。例えば、生地片3を略三角形状として説明したが、長方形などの形状であってもよい。本発明は、サーキュラカッタ12で生地シートを搬送方向に沿って直線的に生地片を切断する際に、切り出される生地片の側面がその他の部分より遅れて搬送されて所望の形状に形成できずに、生地片が曲がってしまうことを防止するためのものである。したがって、サーキュラカッタ12で切断される生地片の側面(辺)以外の面(辺)の形状は、斜辺に限定されるものではない。
【0028】
また、生地片3の斜辺3A及び3Bとなるスリット18を切り出す構成として、ロータリブレード29を用いるよう説明したが、例えば、ベルトコンベア26搬送面26Bに対し接近離反するギロチンカッタであってもよい。さらには、上述のように、生地片3は略三角形状に限定されるものではないので、生地シート2の幅方向に沿って形成することもできる。これらのスリットは、直線に限らず、波形などの形状であってもよい。
【符号の説明】
【0029】
1 生地片切断装置
2 生地シート
3 生地片
3A 頂部
3B,3C 斜辺
3D 底部
12 サーキュラカッタ
14 回転軸
25 (従来の)切断装置
26 搬送装置、ベルトコンベア
27 ブレード
29 ロータリブレード
31 (従来の)サーキュラカッタ
CL 中心線
M 制御モータ
R 搬送方向