特許第6376687号(P6376687)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6376687
(24)【登録日】2018年8月3日
(45)【発行日】2018年8月22日
(54)【発明の名称】加工機械
(51)【国際特許分類】
   B23Q 11/08 20060101AFI20180813BHJP
   B23Q 11/00 20060101ALI20180813BHJP
【FI】
   B23Q11/08 Z
   B23Q11/00 A
【請求項の数】2
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-127275(P2014-127275)
(22)【出願日】2014年6月20日
(65)【公開番号】特開2016-5857(P2016-5857A)
(43)【公開日】2016年1月14日
【審査請求日】2017年6月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100134544
【弁理士】
【氏名又は名称】森 隆一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100108578
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 詔男
(74)【代理人】
【識別番号】100126893
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 哲男
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(72)【発明者】
【氏名】澤田 祐一郎
(72)【発明者】
【氏名】工藤 敏文
【審査官】 久保田 信也
(56)【参考文献】
【文献】 再公表特許第2008/029485(JP,A1)
【文献】 特開2006−175527(JP,A)
【文献】 特開2006−068861(JP,A)
【文献】 特開2004−142041(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23Q 11/08
B23Q 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベッド上でワークを加工する機械であって、
平面視で前記ベッドの外側となる位置に設けられ、床面に支持された支柱と、
前記支柱に支えられて前記ベッドの上方の空間を囲む上部カバーと、
前記支柱と前記ベッドとの間を連結する制振材料製の連結部材と、を有し、
前記支柱は、前記ベッドの上方に延在する支柱上部と、前記ベッドの側面と平行に配置される支柱下部と、平面視で離間する前記支柱上部と前記支柱下部とを接続する支柱曲り部と、を有し、
前記連結部材は、前記支柱曲り部と前記ベッドとの間に配置されている加工機械。
【請求項2】
前記支柱に支えられて前記ベッドの周囲を囲む下部カバーを有する請求項の加工機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加工機械に関する。
【背景技術】
【0002】
金属等の材料に機械加工を施すための加工機械(工作機械)においては、機械の振動に起因する騒音が外部に漏れることを防止する防音装置を設けることが一般的である。騒音の伝搬を防止する防音装置としては、特許文献1に記載されているような機械の略全体をカバーで覆うことによって機械の振動源(騒音発生部)を囲う構造が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−190160号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、歯車を加工するカッター(以下、ホブカッター)を回転させながら歯切り加工を行う歯車加工機械(ホブ盤)においては、加工時間の短縮のため、ホブカッターの周速が上昇傾向にある。ホブカッターの周速上昇に伴い、発生する騒音レベルが上昇すると、オペレータの騒音暴露基準値を超える騒音が発生する可能性がある。
【0005】
ホブ盤の防音構造としては、例えばボルト等の締結部材を用いてベッドに固定された一対の板状の中空支柱と、一対の中空支柱に取り付けられた一対の板状のカバーとで、振動源を囲う構造が知られている。一対の中空支柱は、ホブ盤のベッドの上面にボルトのような締結部材によって固定されている。
【0006】
このような構造とすることによって、ホブ盤内部の音漏れを抑制できると考えられていたが、発明者らは、この構造では、歯車加工中の加工振動に伴いカバーが振動することによって騒音が放射されていることを見出した。即ち、カバーによって振動源を囲ってもカバーの振動による騒音の放射が発生するため、防音の効果が発揮されないことがわかった。
【0007】
この発明は、カバーを用いて振動源を覆う防音構造において、カバーが振動することによる騒音の放射を抑制することができる加工機械を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第の態様によれば、加工機械は、ベッド上でワークを加工する機械であって、平面視で前記ベッドの外側となる位置に設けられ、床面に支持された支柱と、前記支柱に支えられて前記ベッドの上方の空間を囲む上部カバーと、前記支柱と前記ベッドとの間を連結する制振材料製の連結部材と、を有し、前記支柱は、前記ベッドの上方に延在する支柱上部と、前記ベッドの側面と平行に配置される支柱下部と、平面視で離間する前記支柱上部と前記支柱下部とを接続する支柱曲り部と、を有し、前記連結部材は、前記支柱曲り部と前記ベッドとの間に配置されていることを特徴とする。
【0011】
このような構成によれば、上部カバーとベッドとが制振材料製の連結部材を介して接続されるため、加工機械の振動源から上部カバーへの振動の伝搬が抑制される。これにより、上部カバーが振動することによる騒音の放射を抑制することができる。
また、連結部材と床面によって、バランス良く支柱を支持することができる。
【0012】
上記加工機械において、前記支柱に支えられて前記ベッドの周囲を囲む下部カバーを有する構成としてもよい。
このような構成によれば、ベッド表面からの放射音を抑制して、加工機械の騒音の放射をより低減することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、上部カバーとベッドとが制振材料製の連結部材を介して接続されるため、振動源から上部カバーへの振動の伝搬が抑制される。これにより、上部カバーが振動することによる騒音の放射を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の第一実施形態の加工機械の斜視図である。
図2】本発明の第一実施形態の加工機械本体の斜視図である。
図3】本発明の第一実施形態の防音構造の断面図であって、中空支柱とベッドとの間に介在するボルト付防振ゴムを説明する図である。
図4】本発明の第一実施形態の防音構造の断面図であって、中空支柱とカバーとの間に介在する制振材を説明する図である。
図5】本発明の第二実施形態の加工機械の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(第一実施形態)
以下、本発明の第一実施形態の防音構造2及びこの防音構造2を備えた加工機械1について図面を参照して詳細に説明する。図1に示すように、本実施形態の加工機械1は、加工機械本体3と、加工機械本体3にて発生する騒音を抑制するための防音構造2と、を有している。
【0017】
図2に示すように、本実施形態の加工機械本体3は、歯車加工機械(ホブ盤)であり、直方体形状の支持台であるベッド5と、ベッド5上に支持されたコラム6と、コラム6の前面に支持されているサドル7と、サドル7に支持されているホブヘッド8と、ホブヘッド8に取り付けられているホブカッター9と、コラム6に対向して配置されているカウンタコラム13と、を有している。
即ち、ベッド5は、被加工対象であるワークWを加工する際に振動源となるコラム6などの構成要素(以下、単に振動源と呼ぶ)を下方から支持している。
【0018】
コラム6は、ベッド5に水平方向のX軸方向に移動可能に支持されている。サドル7はコラム6の側面に鉛直方向のZ軸方向に昇降可能に支持されている。ホブヘッド8は、水平なA軸周りに旋回可能で、かつ、水平なY軸方向に移動可能に支持されている。ホブカッター9は、ホブヘッド8に着脱可能に取り付けられており、ホブカッター9は、ホブヘッド8に取り付けられることにより、水平なB軸周りに回転可能となっている。
【0019】
ベッド5上におけるコラム6の正面には、回転テーブル10が鉛直なC軸周りに回転可能に支持されている。回転テーブル10の上面には、取付治具11が着脱可能に取り付けられており、この取付治具11には、製品となる歯車の素材であるワークWが着脱可能に取り付けられている。
【0020】
カウンタコラム13は、ベッド5上における回転テーブル10を挟んだコラム6の反対側に立設されている。カウンタコラム13の前面には、昇降ヘッド14がZ軸方向に昇降可能に支持されており、この昇降ヘッド14の先端には、サポートセンタ15が設けられている。なお、サポートセンタ15は、その軸心がC軸と一致するように配置されている。即ち、サポートセンタ15を昇降ヘッド14によって下降させることで、取付治具11とサポートセンタ15との間でワークWが回転可能に支持されることになり、この状態で、回転テーブル10を回転させることにより、ワークWがC軸周りに回転することになる。
【0021】
図1に示すように、防音構造2は、複数の中空支柱17(支柱)と、中空支柱17に取り付けられている複数の板状のカバー22(上部カバー、図1には手前側のみ示す)と、上面カバー23と、を有している。防音構造2は、ベッド5の上方の空間、即ち、コラム6(図2参照)等の構成要素が配置されている空間を水平方向の四方、及び上方から囲う構造である。
【0022】
中空支柱17は、平面視でベッド5の外側となる位置に設けられている。中空支柱17は、カバー22を支える支柱である。中空支柱17の内部には、空間が形成されている。換言すれば、ベッド5の上方の空間の四方は、振動源を挟んで対向するように配置された一対の中空板状の中空支柱17と、一対の中空支柱17の側辺同士を接続するように対向して配置された一対のカバー22とによって囲まれている。
【0023】
図3に示すように、中空支柱17は、ベッド5の上面より上方に位置する中空支柱上部18(支柱上部)と、ベッド5の上面より下方に位置する中空支柱下部20(支柱下部)と、中空支柱上部18と中空支柱下部20とを連結する中空支柱曲り部19(支柱曲り部)と、を有している。中空支柱曲り部19は、平面視で離間する中空支柱上部18と中空支柱下部20とを接続している。
【0024】
中空支柱上部18は、矩形状のベッド5の上面の一辺より上方に延在する中空板状の部材である。中空支柱上部18は、内部に空間が設けられた支柱であり、下部が開口された角筒形状をなしている。
中空支柱下部20は、ベッド5の側面と平行に配置される中空板状の部材である。中空支柱下部20は、中空支柱上部18と同様に、内部に空間が設けられた角筒形状をなしている。中空支柱下部20の下端は、床面Fに支持されている。即ち、中空支柱17は、床面Fで自重を支えている。
【0025】
中空支柱曲り部19は、中空支柱上部18と中空支柱下部20とを接続する部位であり、内部に空間を有している。
中空支柱上部18、中空支柱曲り部19、及び中空支柱下部20の内部空間は、連続して形成されている。中空支柱17の内部に空間が形成されていることによって、中空支柱17の内部にケーブルや信号線を這わせることができる。即ち、中空支柱17はケーブルダクトとしての機能を有している。
【0026】
中空支柱曲り部19は、複数(本実施形態では4個)のボルト付防振部材24(連結部材)によって支持されている。ボルト付防振部材24は、例えば、天然ゴムなどの制振材料によって形成された円柱状の防振部材であり、防振部材と同心状に設けられたボルト等の締結部材を有している。
ボルト付防振部材24は、上面と下面を有し、ボルト付防振部材24の上面を中空支柱曲り部19に固定するとともに防振部材の下面をベッド5の上面に固定することによって、中空支柱17を支持している。換言すれば、中空支柱17は、制振材料であるボルト付防振部材24を介してベッド5の上面に支持されている。
【0027】
ボルト付防振部材24を構成する制振材料は、ボルト付防振部材24を介して接続されるベッド5と中空支柱17との間で、振動・衝撃の伝達を小さくする材料である。制振材料としては、ボルト付防振部材24を介して互いに接続される二つの部材のうち一方の部材の振動の他方の部材への伝達を小さくすることができれば、天然ゴムに限ることはなく、例えば、ゲル材や、エラストマー等の樹脂材を用いることもできる。
【0028】
カバー22は、例えば、ステンレス(SUS)によって形成された板状の部材であり、複数のボルトによって、中空支柱上部18に固定されている。
図4に示すように、カバー22の内部表面と中空支柱17との間には、制振材25が介在している。制振材25は、例えば、天然ゴム等の制振材料によって形成されたシート状の部材(制振シート)であり、表面には薄い金属材料が貼り付けられている。即ち、制振材25には金属コーティングが施されている。これにより、制振材25に切削屑(切粉)等が突き刺さることを防止している。制振材25を構成する制振材料としては、ボルト付防振部材24と同様に、ゲル材や、エラストマー等の樹脂材の採用も可能である。
【0029】
以上まとめると、カバー22は、制振材25及び中空支柱17を介して床面Fに固定されている。
上面カバー23は、一対の中空支柱17及び一対のカバー22によって形成される矩形の開口を覆う板状のカバー22であり、例えば、ステンレスによって形成されている。
【0030】
加工機械1を用いてワークWに歯車加工を行う場合には、先ず、ワークWを取付治具11に装着した後、サポートセンタ15を下降させて、取付治具11とサポートセンタ15との間でワークWを回転可能に支持する。次いで、コラム6、サドル7、ホブヘッド8を駆動させることにより、ホブカッター9を、X,Y,Z軸方向に移動させると共に、ワークWのねじれ角に応じてA軸周りに旋回させる。そして、ホブカッター9をB軸周りに回転させると共に、回転テーブル10をC軸周りに回転させた後、この状態から、コラム6をZ軸方向に移動させて、ホブカッター9をワークWに切り込ませる。これにより、ワークWの外周がホブカッター9の刃部により削り取られて、ワークWに歯形が創成される。
【0031】
ここで、歯車加工中は、ホブカッター9からコラム6、コラム6からベッド5に加工振動が伝搬する。さらに、ワークWからカウンタコラム13、カウンタコラム13からベッド5にも加工振動が伝搬する。
この際、振動源が一対の中空支柱17、一対のカバー22、及び上面カバー23によって覆われていることによって、騒音は遮断される。
【0032】
上記実施形態によれば、カバー22とベッド5とが制振材料製の連結部材であるボルト付防振部材24を介して接続されるため、加工機械1の振動源からカバー22への振動の伝搬が抑制される。これにより、カバー22が振動することによる騒音の放射を抑制することができる。
【0033】
また、ボルト付防振部材24が、中空支柱曲り部19とベッド5との間に配置されていることによって、ボルト付防振部材24と床面Fによって、バランス良く中空支柱17を支持することができる。
【0034】
また、カバー22の内部表面と中空支柱17との間にシート状の制振材25が介在していることによって、カバー22からの放射音をさらに抑制することができる。また、制振材25の表面が金属コーティングされていることによって、歯車加工中の切削屑等で制振材25が劣化することを防止することができる。
【0035】
(第二実施形態)
以下、本発明の第二実施形態の加工機械1Bを図面に基づいて説明する。なお、本実施形態では、上述した第一実施形態との相違点を中心に述べ、同様の部分についてはその説明を省略する。
加工機械1Bのベッド5は、厚さ約20mm程度の鋳物で表面が形成されている。鋳物がこの程度の厚みである場合、振動が音に変換される効率(以下、音響放射効率と呼ぶ)が人間の可聴域範囲内で最もよく聞こえる周波数範囲である1kHz近くで最も大きくなる可能性がある。即ち、小さな振動であっても、この周波数範囲であれば、大きな音となって放射される。
【0036】
図5に示すように、本実施形態の防音構造2Bは、ベッド5の周囲を囲むベッド遮音板27(下部カバー)を有している。ベッド遮音板27は、ベッド5の前面及び後面に取り付けられた一対の第一ベッド遮音板27aと、ベッド5の側面に取り付けられた一対の第二ベッド遮音板27bと、を有している。
第一ベッド遮音板27aは、例えばボルト12のような締結部材によって中空支柱下部20に取り付けられている。第二ベッド遮音板27bは、中空支柱曲り部19に沿う水平部28と中空支柱下部20とに沿う鉛直部29とを有しており、中空支柱曲り部19と中空支柱下部20を覆うように取り付けられている。
【0037】
上記実施形態によれば、ベッド5の表面からの放射音を抑制して、加工機械1Bの騒音の放射をより低減することができる。即ち、音響放射効率が人間の可聴域範囲内で最もよく聞こえる周波数範囲である1kHz近くで最も大きくなった場合においても、音の放射を抑制することができる。
【0038】
なお、本発明の技術範囲は上記の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、種々の変更を加えることが可能である。
例えば、上記各実施形態では、ボルト付防振部材24は、ベッド5の上面と中空支柱曲り部19の下面との間に配置される構成としたが、ボルト付防振部材24は、中空支柱17とベッド5との間に介在する構成であればこれに限ることはない。例えば、中空支柱下部20の側面とベッド5の側面との間にボルト付防振部材24を配置してもよい。
【0039】
また、上記各実施形態では、加工機械1としてホブ盤を採用したが、振動源を有する加工機械1であればこれに限ることはない。例えば、フライス盤等の工作機械に本発明の実施形態の防音構造2を採用してもよい。
また、制振材25はベッド遮音板27と中空支柱17との間に配置してもよい。
【符号の説明】
【0040】
1,1B 加工機械
2,2B 防音構造
3 加工機械本体
5 ベッド
6 コラム
7 サドル
8 ホブヘッド
9 ホブカッター
10 回転テーブル
11 取付治具
13 カウンタコラム
14 昇降ヘッド
15 サポートセンタ
17 中空支柱(支柱)
18 中空支柱上部(支柱上部)
19 中空支柱曲り部(支柱曲り部)
20 中空支柱下部(支柱下部)
22 カバー(上部カバー)
23 上面カバー
24 ボルト付防振部材(連結部材)
25 制振材
27 ベッド遮音板(下部カバー)
28 水平部
29 鉛直部
F 床面
W ワーク
図1
図2
図3
図4
図5