(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6376698
(24)【登録日】2018年8月3日
(45)【発行日】2018年8月22日
(54)【発明の名称】X線検査装置およびX線検査装置の調整方法
(51)【国際特許分類】
G01N 23/046 20180101AFI20180813BHJP
【FI】
G01N23/046
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2015-8231(P2015-8231)
(22)【出願日】2015年1月20日
(65)【公開番号】特開2016-133397(P2016-133397A)
(43)【公開日】2016年7月25日
【審査請求日】2017年10月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】512097042
【氏名又は名称】日本装置開発株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100125690
【弁理士】
【氏名又は名称】小平 晋
(72)【発明者】
【氏名】木下 修
【審査官】
藤田 都志行
(56)【参考文献】
【文献】
特開2005−265618(JP,A)
【文献】
特開2010−169647(JP,A)
【文献】
特開2004−245685(JP,A)
【文献】
特開2004−219112(JP,A)
【文献】
特開2013−164352(JP,A)
【文献】
特開2003−202303(JP,A)
【文献】
特開2012−137315(JP,A)
【文献】
特開2004−136027(JP,A)
【文献】
特開平7−136158(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2012/0155606(US,A1)
【文献】
米国特許第8068579(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 23/04
G01N 23/046
A61B 6/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
管内が常時真空状態に保たれている密閉管型のX線発生器と、前記X線発生器との間に被検査体を挟むように配置される二次元のX線検出器と、前記X線発生器が搭載されるとともに互いに直交するX方向およびY方向の2方向へ前記X線発生器を移動させるXY移動機構と、前記XY移動機構が搭載される回動テーブルを有しX方向とY方向とに直交するZ方向を回動の軸方向として前記X線発生器および前記XY移動機構を回動させる回動機構とを備えることを特徴とするX線検査装置。
【請求項2】
請求項1に記載のX線検査装置の調整方法であって、
前記回動機構によって前記X線発生器を回動させたときに前記X線検出器で取得される前記被検査体のX線画像の位置が動かなくなるように、前記XY移動機構によってX方向および/またはY方向へ前記X線発生器を移動させて、Z方向から見たときの前記X線発生器の焦点と前記回動テーブルの回動中心とを一致させることを特徴とするX線検査装置の調整方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工業製品等の内部を非破壊で検査するためのX線検査装置およびかかるX線検査装置の調整方法に関する。
【背景技術】
【0002】
X線を発生させるX線発生器(X線管)には、開放管型のX線発生器と、密閉管型のX線発生器とがある。開放管型のX線発生器は、管内を真空にするための真空排気装置を管外に備えている。これに対して、密閉管型のX線発生器では、管内が常時真空状態に保たれているため、密閉管型のX線発生器は、管内を真空にするための真空排気装置を備えていない。開放管型のX線発生器が出射するX線の出射角は、密閉管型のX線発生器が出射するX線の出射角よりも大きくなっている。一方で、密閉管型のX線発生器が出射するX線の強度は、開放管型のX線発生器が出射するX線の強度よりも強くなっている。
【0003】
従来、工業製品等の内部を非破壊で検査するためのX線CT装置として、開放管型のX線発生器を備えるX線CT装置が知られている(たとえば、特許文献1参照)。特許文献1に記載のX線CT装置は、測定対象物が搭載されるXYテーブルと、測定対象物を透過したX線を検出する二次元のX線検出器とを備えている。このX線CT装置では、X線発生器は、固定配置されている。XYテーブルは、X線発生器の上方に配置されている。X線検出器は、XYテーブルの斜め上方に配置されるとともに、X線発生器の焦点を曲率中心とする円弧状のアームに保持されている。このX線検出器は、円弧状に形成されるアームに沿って移動可能となっている。アームには、回転機構が連結されており、アームは、X線発生器の焦点を通過する上下方向に平行な方向を回転の軸として回転可能になっている。そのため、このX線CT装置では、測定対象物に斜め方向からX線を照射して測定対象物の透視画像を各方向から取得することで測定対象物のCT画像を得る斜めCTを行うことが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012−42340号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述のように、開放管型のX線発生器が真空排気装置を備えているのに対して、密閉管型のX線発生器は真空排気装置を備えていないため、開放管型のX線発生器の取扱いと比較して、密閉管型のX線発生器の取扱いは容易である。また、密閉管型のX線発生器が出射するX線の強度は、開放管型のX線発生器が出射するX線の強度よりも強いため、密閉管型のX線発生器を用いれば、より適切なCT画像を取得することが可能になる。以上の理由から、本願発明者は、密閉管型のX線発生器を用いて斜めCTを行うことを検討している。
【0006】
ここで、上述のように、開放管型のX線発生器が出射するX線の出射角は大きいため、開放管型のX線発生器を備えるX線CT装置では、特許文献1に記載のX線CT装置のようにX線発生器が固定配置されていても、斜めCTを行うことが可能である。これに対して、密閉管型のX線発生器が出射するX線の出射角は小さいため、固定配置された密閉管型のX線発生器を用いて斜めCTを行うことは困難である。そこで、本願発明者は、測定対象物に対するX線の照射角度が変わるように密閉管型のX線発生器を回動させることで、斜めCTを行うことを検討している。
【0007】
しかしながら、密閉管型のX線発生器を回動させる場合、X線発生器の回動の軸方向から見たときにX線発生器の焦点とX線発生器の回動中心とがずれていると、密閉管型のX線発生器を回動させたときに、X線発生器とX線検出器と測定対象物との幾何学的な関係がずれてしまい、適切なCT画像を取得することが困難である。
【0008】
そこで、本発明の課題は、回動させて使用される密閉管型のX線発生器を備えるX線検査装置において、X線発生器の回動の軸方向から見たときのX線発生器の焦点とX線発生器の回動中心とを容易に一致させることが可能なX線検査装置を提供することにある。また、本発明の課題は、かかるX線検査装置の調整方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するため、本発明のX線検査装置は、管内が常時真空状態に保たれている密閉管型のX線発生器と、X線発生器との間に被検査体を挟むように配置される二次元のX線検出器と、X線発生器が搭載されるとともに互いに直交するX方向およびY方向の2方向へX線発生器を移動させるXY移動機構と、XY移動機構が搭載される回動テーブルを有しX方向とY方向とに直交するZ方向を回動の軸方向としてX線発生器およびXY移動機構を回動させる回動機構とを備えることを特徴とする。
【0010】
本発明では、互いに直交するX方向およびY方向の2方向へX線発生器を移動させるXY移動機構にX線発生器が搭載され、X線発生器を回動させる回動機構の回動テーブルにXY移動機構が搭載されている。そのため、本発明では、回動機構によってX線発生器を回動させたときにX線検出器で取得される被検査体のX線画像の位置を確認しながら、XY移動機構によってX方向およびY方向におけるX線発生器の位置を調整することで、X線発生器の回動の軸方向から見たときのX線発生器の焦点とX線発生器の回動中心とを容易に一致させることが可能になる。
【0011】
本発明のX線検査装置は、以下の調整方法で調整されることが好ましい。すなわち、本発明では、回動機構によってX線発生器を回動させたときにX線検出器で取得される被検査体のX線画像の位置が動かなくなるように、XY移動機構によってX方向および/またはY方向へX線発生器を移動させて、Z方向から見たときのX線発生器の焦点と回動テーブルの回動中心とを一致させる調整方法によって、X線検査装置が調整されることが好ましい。このように構成すると、X線発生器の回動の軸方向から見たときのX線発生器の焦点とX線発生器の回動中心とをより容易に一致させることが可能になる。
【発明の効果】
【0012】
以上のように、本発明では、回動させて使用される密閉管型のX線発生器を備えるX線検査装置において、X線発生器の回動の軸方向から見たときのX線発生器の焦点とX線発生器の回動中心とを容易に一致させることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の実施の形態にかかるX線検査装置の概略構成を説明するための側面図である。
【
図2】
図1に示すX線検査装置において、Z方向から見たときに回動テーブルの回動中心とX線発生器の焦点とが一致している状態で回動テーブルを回動させたときの被検査体のX線画像の位置を説明するための平面図である。
【
図3】
図1に示すX線検査装置において、Z方向から見たときに回動テーブルの回動中心とX線発生器の焦点とがずれている状態で回動テーブルを回動させたときの被検査体のX線画像の位置を説明するための平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態を説明する。
【0015】
図1は、本発明の実施の形態にかかるX線検査装置1の概略構成を説明するための側面図である。
図2は、
図1に示すX線検査装置1において、Z方向から見たときに回動テーブル7の回動中心C1とX線発生器3の焦点Fとが一致している状態で回動テーブル7を回動させたときの被検査体2のX線画像の位置を説明するための平面図である。
図3は、
図1に示すX線検査装置1において、Z方向から見たときに回動テーブル7の回動中心C1とX線発生器3の焦点Fとがずれている状態で回動テーブル7を回動させたときの被検査体2のX線画像の位置を説明するための平面図である。
【0016】
本形態のX線検査装置1は、工業製品等の被検査体2の内部を非破壊で検査するための装置である。このX線検査装置1は、被検査体2にX線を照射するX線発生器3と、被検査体2のX線画像を取得するための二次元のX線検出器4とを備えている。また、X線検査装置1は、被検査体2が搭載されるテーブル5と、X線発生器3が搭載されるとともに互いに直交するX方向およびY方向の2方向へX線発生器3を移動させるXY移動機構6と、XY移動機構6が搭載される回動テーブル7を有しX方向とY方向とに直交するZ方向を回動の軸方向としてX線発生器3およびXY移動機構6を回動させる回動機構8とを備えている。
【0017】
X線発生器3は、管内が常時真空状態に保たれている密閉管型のX線発生器である。X方向とY方向とから構成される平面をXY平面とすると、X線発生器3は、X線の光軸がXY平面と平行になるように配置されている。XY移動機構6は、たとえば、X線発生器3をX方向へ移動させるためのネジ部材と、X線発生器3をY方向へ移動させるためのネジ部材と、2本のネジ部材のそれぞれに係合するナット部材と、2本のネジ部材のそれぞれを回転させるモータ等の駆動源とを備えている。回動テーブル7は、たとえば、円板状に形成されている。回動機構8は、たとえば、回動テーブル7を回動させるモータ等の駆動源と、駆動源の動力を回動テーブル7に伝達する動力伝達機構とを備えている。なお、XY移動機構6は、駆動源を有しない手動式のものであっても良い。また、X線発生器3は、X線の光軸がXY平面に対して傾くように配置されても良い。
【0018】
テーブル5には、たとえば、テーブル5をX方向およびY方向へ移動させるXY移動機構と、テーブル5を回転させる回転機構とが連結されている。あるいは、テーブル5には、XY移動機構または回転機構のいずれか一方が連結されている。X線検出器4は、Y方向において、X線発生器3との間に被検査体2を挟むように配置されている。また、X線検出器4は、その受光面がX線発生器3側を向くように配置されている。X線検出器4には、たとえば、X線検出器4をY方向へ移動させるとともに、Z方向を回動の軸方向としてかつ回動テーブル7の回動中心C1を回動中心にしてX線検出器4を回動させる検出器移動機構が連結されている。あるいは、X線検出器4には、X線検出器4をX方向およびY方向へ移動させる検出器移動機構が連結されている。
【0019】
図2に示すように、X線検査装置1において、Z方向から見たときに回動テーブル7の回動中心(すなわち、X線発生器3の回動中心)C1とX線発生器3の焦点Fとが一致していれば、回動テーブル7を回動させても焦点Fの位置がずれないため、回動テーブル7を回動させたときにX線検出器4で取得される被検査体2のX線画像の位置は一定の位置Pとなる。すなわち、Z方向から見たときに回動中心C1と焦点Fとが一致していれば、回動テーブル7を回動させたときにX線検出器4で取得される被検査体2のX線画像の位置は動かない。一方で、
図3に示すように、Z方向から見たときに回動中心C1と焦点Fとがずれていると、回動テーブル7を回動させたときに焦点Fの位置がずれるため、回動テーブル7を回動させたときにX線検出器4で取得される被検査体2のX線画像の位置が、たとえば、位置P1と位置P2との間で動く。
【0020】
そこで、本形態では、回動機構8によってX線発生器3を回動させたときにX線検出器4で取得される被検査体2のX線画像の位置が動かなくなるように、XY移動機構6によってX方向および/またはY方向へX線発生器3を移動させて、Z方向から見たときの回動中心C1と焦点Fとを一致させている。具体的には、回動機構8によってX線発生器3を回動させたときの被検査体2のX線画像の位置を確認しながら、X線検出器4で取得される被検査体2のX線画像の位置が動かなくなるまでXY移動機構6によってX方向および/またはY方向へX線発生器3を移動させて、Z方向から見たときの回動中心C1と焦点Fとを一致させている。
【0021】
以上のように、本形態では、XY移動機構6にX線発生器3が搭載され、回動機構8の回動テーブル7にXY移動機構6が搭載されている。また、本形態では、回動機構8によってX線発生器3を回動させたときにX線検出器4で取得される被検査体2のX線画像の位置が動かなくなるように、XY移動機構6によってX方向および/またはY方向へX線発生器3を移動させて、X線発生器3の回動の軸方向であるZ方向から見たときの回動中心C1と焦点Fとを一致させている。そのため、本形態では、Z方向から見たときの回動中心C1と焦点Fとを容易に一致させることが可能になる。
【0022】
したがって、本形態では、被検査体2に対するX線の照射角度が変わるように密閉管型のX線発生器3を回動させた後にX線発生器3を停止させて、斜めCTを行う場合であっても、比較的容易な調整でX線検査装置1を調整して、適切なCT画像を取得することが可能になる。また、本形態では、被検査体2に対するX線の照射角度が変わるようにX線発生器3を回動させるとともにX線発生器3の回動と連動するようにX線検出器4をX方向へ移動させるいわゆる並進CTを行う場合やその他のCTを行う場合であっても、比較的容易な調整でX線検査装置1を調整して、適切なCT画像を取得することが可能になる。
【符号の説明】
【0023】
1 X線検査装置
2 被検査体
3 X線発生器
4 X線検出器
6 XY移動機構
7 回動テーブル
8 回動機構
C1 回動テーブルの回動中心
F X線発生器の焦点