特許第6376699号(P6376699)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6376699
(24)【登録日】2018年8月3日
(45)【発行日】2018年8月22日
(54)【発明の名称】自動車の見晴らし評価方法
(51)【国際特許分類】
   G01M 17/007 20060101AFI20180813BHJP
   G01B 11/00 20060101ALI20180813BHJP
【FI】
   G01M17/007 Z
   G01B11/00 H
【請求項の数】1
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2015-10225(P2015-10225)
(22)【出願日】2015年1月22日
(65)【公開番号】特開2016-133476(P2016-133476A)
(43)【公開日】2016年7月25日
【審査請求日】2017年12月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【弁理士】
【氏名又は名称】城村 邦彦
(74)【代理人】
【識別番号】100120949
【弁理士】
【氏名又は名称】熊野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100196346
【弁理士】
【氏名又は名称】吉川 貴士
(72)【発明者】
【氏名】菰渕 晶雄
(72)【発明者】
【氏名】都築 亮介
【審査官】 小野 郁磨
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−241398(JP,A)
【文献】 特開平05−280956(JP,A)
【文献】 特開2013−186830(JP,A)
【文献】 特開2008−008651(JP,A)
【文献】 特開2012−007972(JP,A)
【文献】 中国特許出願公開第102967473(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 17/00−17/007
G01B 11/00−11/03
G06F 17/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車外の所定位置と、車内に着席した乗員の眼の位置とにマーカーを配置するステップと、
前記車外の所定位置に配置したマーカーを複数のカメラで撮影すると共に、該複数のカメラで前記乗員の眼の位置に配置したマーカーを窓ガラスを介して前記車外から撮影することで、前記各マーカーの三次元座標データを取得するステップと、
前記三次元座標データに基づき、見晴らしに関する客観的評価指標を求めるステップとを備えた、自動車の見晴らし評価方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車の見晴らし評価方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の評価項目の一つに見晴らしがある。これは、車内に着席した状態の乗員(主に運転者)がフロントガラスを介して視認し得る官能的評価項目であり、ユーザーアンケートなどを通じてこの種の官能的評価を実施している。
【0003】
この種の官能的評価項目は、例えばアイポイント(運転者の眼の位置)からの視界範囲を設計段階でCADなどを利用して求めることで、間接的に評価することもできるが、場合によっては、完成車における実際の視界範囲等に基づいて見晴らしの程度を総合的に評価することが望ましいこともある。
【0004】
ここで、所定の装置を用いて運転者の視界範囲を車外から測定するための方法が特許文献1に記載されている。この方法は、測定場所の床面に対して反射面が垂直となるよう、ミラーを試験車体のフロントガラスよりも前方となるフードの上方に配置すると共に、光ビームを照射可能なレーザー光源を、そのスイング中心点がミラー面を介して予め設定しておいた車内のアイポイントと対称位置となるよう試験車体の前方に配置した状態で、ミラー面を光ビームで走査して、ミラー面で反射した光ビームがさらに試験車体で反射するか否かを確認するものである。このように、試験車体の光反射領域を求めることにより、その際の水平方向及び上下方向のスイング角、すなわちアイポイントの視野角が間接的に求められ、これにより運転者の視界範囲を測定可能としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平5−280956号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1の方法はいわば仮想アイポイント(レーザー光源のスイング中心点)を車外に配置して、本来車内に位置するべきアイポイントからの視界範囲を間接的に測定しようとするものであり、実際のアイポイントに基づいて視界範囲を測定するものではない。また、仮想アイポイントからの光ビームのミラー面及び試験車体表面の繰り返し反射の有無で視界範囲を決定するため、測定設備及び方法が複雑化する、といった問題がある。
【0007】
以上の事情に鑑み、本発明により解決すべき課題は、直接的かつ簡便に自動車の見晴らしを評価するための方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題の解決は、本発明に係る自動車の見晴らし評価方法によって達成される。すなわち、この評価方法は、車外の所定位置と、車内に着席した乗員の眼の位置とにマーカーを配置するステップと、車外の所定位置に配置したマーカーを複数のカメラで撮影すると共に、この複数のカメラで乗員の眼の位置に配置したマーカーを窓ガラスを介して車外から撮影することで、各マーカーの三次元座標データを取得するステップと、三次元座標データに基づき、見晴らしに関する客観的評価指標を算出するステップとを備えた点をもって特徴付けられる。
【0009】
このように、本発明では、車外の所定位置と、車内の所定位置、特に着席した乗員の眼の位置の三次元座標データを、マーカー及びカメラを用いて同時に測定したことを特徴とするものである。着席した乗員の眼の位置は窓ガラスを介して車外から撮影可能な位置にあるため、共通のカメラで、車外の所定位置に配置したマーカーと、乗員の眼の位置に配置したマーカーとをカメラを固定した状態で同時に撮影することができる。このような方法で各所定位置の三次元座標データを取得できるのであれば、必要な位置の三次元座標データを精度よく測定できるので、これら三次元座標データから算出される見晴らしに関する客観的評価指標(例えば上下方向の視野角)の精度、ひいては信頼性を高めることが可能となる。また、この方法によれば、所定の位置にマーカーを配置して複数のカメラで撮影することで一度に所要数の三次元座標データを取得することができるので、非常に簡便な設備で足り手間もかからない。そのため、生産性の面でも優位である。
【0010】
また、本発明に係る見晴らし評価方法は、車内の天井面の前方端にマーカーを配置して、天井面の前方端に配置したマーカーの三次元座標データを取得することで、乗員の眼の位置と天井面の前方端とのクリアランスを算出するステップと、クリアランスと見晴らしに関する客観的評価指標とに基づき、車内からの見晴らしの良否を判定するステップとをさらに備えたものであってもよい。なお、ここでいう「天井面の前方端」とは、天井面とフロントガラスとの境界部付近の領域を含む意であり、例えばこの境界部に接するフロントガラス上端も含まれる。
【0011】
本発明者らは、上述した測定方法に基づいて取得した見晴らしに関する客観的評価指標と、実際のユーザーアンケートによる見晴らしに関する官能的評価指標との比較を通じて客観的評価指標の有用性につき検証を行った結果、見晴らしの良否に大きく関係すると思われるアイポイント(乗員の眼の位置)が高いからといって、必ずしも見晴らしが良いと感じるわけではないことが判明した。具体的には、アイポイントと車内天井面の前方端とのクリアランスとの間に相関があること、つまり上記クリアランスが相対的に小さいほど、実際のアイポイントよりもアイポイントが高い印象を受ける傾向にあることが、ユーザーアンケートと上述した測定結果とから判明した。よって、上述のように、見晴らしに関する客観的評価指標を算出すると共に、乗員の眼の位置と天井面の前方端とのクリアランスを算出し、これらクリアランスと客観的評価指標とに基づき、車内からの見晴らしの良否を判定することで、乗員が実際に感じられる見晴らしの良否を適切に評価することが可能となる。
【発明の効果】
【0012】
以上のように、本発明によれば、直接的かつ簡便に自動車の見晴らしを評価することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施形態に係る自動車の見晴らし評価方法の流れを示すフローチャートである。
図2図1の見晴らしに関する客観的評価指標を算出するための三次元座標データを測定するための装置の概要を示す斜視図である。
図3図2に示す装置で測定した三次元座標データに基づいて算出すべき上下方向の視野角及びアイポイントの高さを示す自動車の側面図である。
図4図2に示す装置で測定した三次元座標データに基づいて算出すべき左右方向の視野角を示す自動車の平面図である。
図5図2に示す装置で得た測定結果の一例を示す三次元座標空間の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施形態に係る自動車の見晴らし評価方法の内容を図面に基づき説明する。なお、以下の説明における「上」方向は被試験体となる自動車の天側、「下」方向は底側を意味し、「左」方向は、自動車の前方を乗員が向いた状態における乗員の左側、及び「右」方向は乗員の右側を意味するものとする。
【0015】
図1は、本発明の一実施形態に係る自動車の見晴らし評価方法の流れを説明するためのフローチャートである。同図に示すように、この見晴らし評価方法は、(S1)車外の所定位置と車内の所定位置にマーカーを配置するステップと、(S2)車外と車内に配置したマーカーを共通のカメラで撮影するステップと、(S3)撮影して得た各マーカーの三次元座標データを取得するステップと、(S4)取得した三次元座標データに基づき見晴らしに関する客観的評価指標を算出するステップと、(S5)算出した客観的評価指標に基づき車内からの見晴らしの良否を判定するステップとを備える。本実施形態では、車内の天井面の前方端に配置したマーカーの三次元座標データと、乗員の眼の位置に配置したマーカーの三次元座標データとに基づき、アイポイントと天井面の前方端との上下方向のクリアランスを算出するステップがステップS4に含まれる。
【0016】
上記三次元座標データを測定するのに用いられる装置は、本実施形態では光学式のモーションキャプチャーシステムを利用したものであり、図2に示すように、複数のマーカー10a,10bと、これら複数のマーカー10a,10bを撮影するための複数のカメラ11と、基準となる三次元座標空間を設定するためのキャリブレーションツール12と、カメラ11で撮影した画像を取り込んで、画像中の各マーカー10a,10bの三次元座標値を算出するための三次元座標値算出部13とを備える。
【0017】
マーカー10a,10bは、例えば球状をなすものであり、その表面に反射シートを貼り付けてなる。なお、本実施形態では、特に車外の所定位置に配置されるマーカー10aと、車内の所定位置に配置されるマーカー10bとを同一色としているが、色彩でもってマーカー10a,10bの識別を要する場合には、車外用のマーカー10aと車内用のマーカー10bとを互いに異なる色としても構わない。
【0018】
カメラ11は、被試験体となる自動車1の周囲に2台以上配設される。本実施形態では、4台のカメラ11が、互いに異なる向きから自動車1の車外の所定位置(詳細は後述)に配置された全てのマーカー10aと撮影でき、かつ車内の所定位置(詳細は後述)に配置された全てのマーカー10bをフロントガラス2等を介して同時に撮影できるように、三脚14を介して所定の向き及び位置に配置される。また、図示は省略するが、各カメラ11にはライトが付設されており、当該ライトを対応するカメラ11の撮影方向に向けて照射可能に配置される。
【0019】
三次元座標値算出部13は、例えばパソコンなどのハードと、ハードにインストールされた三次元座標値算出ソフトとで構成される。また、カメラ11と有線又は無線で通信可能に構成することで、カメラ11で撮影して得たカラー画像を三次元座標値算出部13に取り込み、取り込んだ画像から、当該画像中のマーカー10a,10bを自動的に検出し、その三次元座標値(としての三次元座標データ)を算出するようになっている。
【0020】
また、三次元座標値算出部13には、三次元座標値算出ソフトに加えて、見晴らしに関する客観的評価指標を算出するためのソフト、例えばアイポイントEからの上下方向の視野角d1(図3を参照)や左右方向の視野角d2(図4を参照)を算出するための視野角算出ソフトがインストールされる。さらに、本実施形態では、図3に示すように、車内の天井面3の前方端に配置したマーカー10bと、車内の運転席に座した乗員の眼の位置、すなわちアイポイントEに配置されたマーカー10bとの上下方向のクリアランスCを算出し、算出したクリアランスCと、アイポイントEの床面からの高さHと、上下方向の視野角d1、及び左右方向の視野角d2とに基づき、運転者(乗員4)の車内からの見晴らしの良否を判定する見晴らし良否判定ソフトがインストールされる。もちろん、三次元座標値算出ソフトで算出した三次元座標値に基づいて、例えば作業者が手計算で見晴らしに関する客観的評価指標を算出でき、または見晴らしの良否を判定できるのであれば、視野角算出ソフトや見晴らし良否判定ソフトをインストールする必要はない。
【0021】
以下、本実施形態に係る見晴らし評価方法の一例を説明する。
【0022】
(S1)マーカー配置ステップ
まず被試験体となる自動車1の車外の所定位置と、車内の所定位置とにマーカー10a,10bを配置する。具体的には、図2及び図4に示すように、車外の所定位置として、フロントガラス2の上端と下端、左端、右端にマーカー10aを取付ける。また、運転席における車内からの視界下限位置がフロントガラス2ではなくフード5にある場合、フード5上面の視界下限位置に相当する位置にもマーカー10aを取付ける。本実施形態では、フロントガラス2上端の左右方向両端部とその中央位置にマーカー10aを取付けると共に、フロントガラス2下端の左右方向両端部とその中間位置にマーカー10aを取付ける。また、フロントガラス2左端の上下方向中央位置と、フロントガラス2右端の上下方向中央位置にそれぞれマーカー10aを取付ける。また、アイポイントEからの視界下限位置に相当するフード5上面の前方2ヶ所にマーカー10aを取付ける。
【0023】
また、車内の所定位置として、図3及び図4に示すように、アイポイントEに相当する位置である、運転席に着席した乗員4のまぶたにマーカー10bを取付ける。本実施形態では、車内のフロントガラス2上端のうちアイポイントEの前方位置にマーカー10bを取付ける。なお、本実施形態では、実際に運転席に着席した状態の乗員4のまぶたにマーカー10bを取付けているが、乗員4の代わりにダミーを着席させてそのまぶたにマーカー10bを取付けるようにしても構わない。
【0024】
(S2)マーカー撮影ステップ
次に、自動車1の周囲に配置した複数のカメラ11で、車外及び車内のマーカー10a,10bを撮影する。具体的には、ステップS1で車外及び車内に取付けた全てのマーカー10a,10bと、自動車1の周囲に配置したキャリブレーションツール12とが共に撮影範囲に含まれるようカメラ11を固定した状態で、上記全てのマーカー10a,10bを同時に撮影する。本実施形態では、各カメラ11に付設したライトで自動車1の車外及び車内を照射し、車外及び車内に取付けた全てのマーカー10a,10bからの反射光を複数のカメラ11で撮影する。これにより、各マーカー10a,10bからの反射光を含む複数の画像を例えば電子画像として取得する。この画像は例えば上述の如く無線通信で三次元座標値算出部13に送信される。
【0025】
(S3)三次元座標データ取得ステップ
ステップS2で取得した画像を三次元座標値算出部13に取り込んで、インストールされている三次元座標値算出ソフトにより上記画像に対して所定の処理を施すことで、上記画像中のマーカー10a,10bを検出すると共に、各マーカー10a,10bの三次元座標データを取得する。具体的には、各マーカー10a,10bの共通の三次元座標空間における三次元座標値を算出する。図5に、各マーカー10a,10bの共通の三次元座標空間における分布状態の一例を示す。この共通の三次元座標空間は、例えば各マーカー10a,10bと共にカメラ11で撮像されたキャリブレーションツール12(のマーカー)を画像から検出し、所定の解析を施すことで設定される。もちろん、まずカメラを固定してキャリブレーションツールを撮影することにより基準となる共通の三次元座標空間を設定しておき、然る後、各マーカー10a,10bを車外及び車内に取付けてカメラ11で撮影して、これらマーカー10a,10bの三次元座標データを取得する場合、マーカー撮影ステップS2においてキャリブレーションツール12は不要である。
【0026】
(S4)見晴らしに関する客観的評価指標の算出ステップ
このようにして各マーカー10a,10bの三次元座標データを求めた後、これら三次元座標データと予めインストールされている視野角算出ソフトとを用いて、所定の客観的評価指標、ここではアイポイントEを基準とした上下方向の視野角d1と左右方向の視野角d2を算出する。それぞれの視野角d1,d2につき具体的な算出方法を述べると、まず上下方向の視野角d1については、図3に示すように、乗員4の眼の位置に取付けた2個のマーカー10b,10bの三次元座標データからその中間位置となるアイポイントEの三次元座標データを算出した上で、このアイポイントEと、フード5上面の前方に配置した各マーカー10a,10aとをそれぞれ通る直線の水平方向からの傾きを算出し、その平均を見下げ角d11とする。また、アイポイントEと、フロントガラス2上端の左右方向中央位置に取付けたマーカー10aとを通る直線の水平方向からの傾きを見上げ角d12として算出する。そして、この見下げ角d11と見上げ角d12とを足し合わせることで上下方向の視野角d1を算出する。また、左右方向の視野角d2については、図4に示すように、アイポイントEと、フロントガラス2左端の上下方向中央位置に取付けたマーカー10aとを通る直線と、アイポイントEと、フロントガラス右端の上下方向中央位置に取付けたマーカー10aとを通る直線とがなす角度を左右方向の視野角d2として算出する。また、本実施形態では、車内の天井面3の前方端に配置したマーカー10bと、アイポイントEとの上下方向のクリアランスCを算出する。
【0027】
(S5)車内からの見晴らしの良否を判定するステップ
最後に、ステップS4で算出したクリアランスCと、アイポイントEの床面からの高さHと、上下方向の視野角d1及び左右方向の視野角d2とに基づき、運転者(乗員4)の車内からの見晴らしの良否を判定する。
【0028】
以上のように、本発明では、車外の所定位置と、車内の所定位置、特に着席した乗員の眼の位置、すなわちアイポイントEの三次元座標データを、マーカー10a,10b及びカメラ11を用いて測定するようにしたので、着席した乗員の眼の位置であるアイポイントEについても車外の所定位置(フロントガラス2の周縁など)と同時に共通のカメラ11で撮影することができる。このような方法で直接的に各所定位置の三次元座標データを取得できるのであれば、必要な位置の三次元座標データを精度よく測定できるので、これら三次元座標データから算出される見晴らしに関する客観的評価指標、例えば上下方向の視野角d1や左右方向の視野角d2、アイポイントEの精度、ひいては信頼性を高めることが可能となる。特に、本実施形態のように、各マーカー10a,10bの三次元座標データをモーションキャプチャーシステムを利用して測定するのであれば、キャリブレーションツール12により取得した共通の三次元座標空間を用いて車外と車内双方のマーカー10a,10bの三次元座標データを算出することができるので、非常に簡便かつ高精度に当該座標データを測定することができる。また、この方法によれば、所定の位置にマーカー10a,10bを配置して複数のカメラ11で撮影することで一度に所要数の三次元座標データを取得することができるので、非常に簡便な設備で足り手間もかからないため、生産性の面でも優位である。
【0029】
また、本実施形態では、車内のフロントガラス2上端のうちアイポイントEの前方位置、すなわち車内の天井面3の前方端にマーカー10bを配置して、このマーカー10bの三次元座標データを取得することで、アイポイントEと天井面3の前方端との上下方向のクリアランスCを算出するようにした。また、このクリアランスCと見晴らしに関する客観的評価指標、ここでは上下方向の視野角d1と左右方向の視野角d2、及びアイポイントEの床面からの高さHとに基づき、車内からの見晴らしの良否を判定するようにした。
【0030】
上記方法によれば、乗員4がより実際に感じられる見晴らしの良否を適切に評価することが可能となる。すなわち、本発明者らが得た知見である、天井面3の前方端と実際のアイポイントEとの上下方向のクリアランスCが相対的に小さい(狭い)ほど、実際のアイポイントEの高さHよりも高く感じる、との相関に基づけば、アイポイントEの高さHとクリアランスCの大きさに基づき、乗員4が実際に感じるアイポイント、いわば官能的アイポイントの高さを評価することができる。また、この官能的アイポイントの高さと、上下方向の視野角d1及び左右方向の視野角d2とに基づけば、見晴らしに関する官能的評価としてより信頼性の高い評価結果を享受することが可能となる。
【0031】
以上、本発明の一実施形態について述べたが、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲において、上記以外の構成を採ることも可能である。
【0032】
例えば、上記実施形態では、図2図4に示す車外及び車内の所定位置に、複数のマーカー10a,10bを配置した場合を例示したが、もちろん、これ以外の配置態様をとることも可能である。見晴らしに関する客観的評価指標を算出可能な三次元座標データを測定可能な限りにおいて、マーカー10a,10bの配置位置及び数は任意である。
【0033】
また、本実施形態では、4台のカメラ11を用いて所定個数のマーカー10a,10bを撮影するようにしたが、もちろんこの台数に制限される必要はない。所定位置に配置した全てのマーカー10a,10bの三次元座標データを測定可能な限りにおいて、カメラ11の台数は任意であり、2台もしくは3台、又は5台以上のカメラ11を被試験体となる自動車1の周囲に配置して撮影を行うようにしてもよい。
【0034】
また、本実施形態では、乗員4の眼の位置であるアイポイントEが一定との前提で見晴らしに関する客観的評価指標の算出、ひいては見晴らしの評価を行うようにしたが、例えば上記実施形態のように三次元座標データの測定にモーションキャプチャシステムを利用する場合であれば、アイポイントEの移動に伴う視界範囲(見晴らし)の変動を評価する際にも本発明を適用することが可能である。
【符号の説明】
【0035】
1 自動車
2 フロントガラス
3 天井面
4 乗員
5 フード
10a,10b マーカー
11 カメラ
12 キャリブレーションツール
13 三次元座標値算出部
C クリアランス
d1 上下方向の視野角
d2 水平方向の視野角
E アイポイント
図1
図2
図3
図4
図5