【実施例】
【0042】
次に本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明はかかる実施例のみに限定されるものではない。
【0043】
実施例1〜4
バインダーとしてメチルシリコーン〔信越シリコーン(株)製、品番:KR−242A〕を用い、メチルシリコーン100質量部あたり表1に示す量のガラス粒子〔旭硝子(株)製、品番:KFI0115、平均粒子径:5.0μm、軟化点:400℃〕を用い、メチルシリコーンとガラス粒子を当該ガラス粒子が均一に分散するように混合することにより、ガラス粒子を含有するバインダーを得た。
【0044】
厚さが0.15mmであり、幅が6mmである集成マイカを3枚用意した。集成マイカの表面に前記で得られたバインダーを厚さが約0.02mmとなるようにスプレーコート法によって塗布し、その塗布面に他の集成マイカを載せた後、この集成マイカの表面に前記で得られたバインダーを厚さが約0.02mmとなるようにスプレーコート法によって塗布し、その塗布面にさらに他の集成マイカを載せ、重ねられた3枚の集成マイカを軽く押圧し、積層することにより、厚さが約0.5mmのフィラー材を得た。
【0045】
次に、炭素鋼(SPCC)製のガスケット用内輪の外周面にフープ材〔厚さ0.2mm、幅5.3mmのステンレス鋼(SUS316)製の薄板からなり、ガスケット高さが4.5mmとなるように断面形状がV字状に成形されたフープ材〕の端部をスポット溶接し、当該フープ材を内輪に2周巻きつけた。その後、前記で得られたフィラー材を巻きつけられたフープ材に重ね、フィラー材とフープ材とをガスケット本体の直径が6.5cmとなるようにうず巻き状に巻きつけ、巻きつけたフープ材の端部をスポット溶接によって固定した。次に、前記で形成されたガスケット本体に炭素鋼(SPCC)製のガスケット用外輪を装着することにより、JPI 300K 2Bの規格を有する内外輪付きのうず巻形ガスケットを作製した。
【0046】
前記で得られたうず巻形ガスケットの物性として、常温シール性および高温シール性を以下の方法に基づいて調べた。その結果を表1に示す。
【0047】
(1)常温シール性
うず巻形ガスケットを2つの炭素鋼(S25C)製のフランジ(適用フランジ規格:JIS B2238)間に装着し、合金鋼(SNB7)製のボルトでガスケット締め付け面圧が70MPaとなるように段階的に締め付けることにより、供試体を作製した。
【0048】
次に、前記で得られた供試体のうず巻形ガスケットの内径側に内圧1.0MPaが加わるように窒素ガスを供試体の内部に充填した状態で水中に供試体を10分間静置し、その間に供試体から漏洩した気泡を回収し、その量を測定し、以下の評価基準に基づいて常温シール性を評価した。
【0049】
〔評価基準〕
○:回収した気泡の量が1.7×10
-5Pa・m
3/s未満(合格)
×:回収した気泡の量が1.7×10
-5Pa・m
3/s以上(不合格)
【0050】
(2)高温シール性
前記で常温シール性を測定した供試体を電気炉に入れ、大気中で600℃で24時間加熱した後、この供試体を室温になるまで放冷し、次いで内圧が1.0MPaとなるように窒素ガスを供試体内に充填し、水中に供試体を10分間静置し、その間に供試体から漏洩した気泡を回収し、その量を測定し、以下の評価基準に基づいて常温シール性を評価した。
【0051】
〔評価基準〕
○:回収した気泡の量が5.0×10
-2Pa・m
3/s未満(合格)
×:回収した気泡の量が5.0×10
-2Pa・m
3/s以上(不合格)
【0052】
比較例1
実施例1において、ガラス粒子を使用しなかったこと以外は、実施例1と同様にしてうず巻形ガスケットおよび供試体を作製し、実施例1と同様にして常温シール性および高温シール性を調べた。その結果を表1に示す。
【0053】
比較例2
実施例1において、メチルシリコーン100質量部あたりのガラス粒子の量を4質量部に変更したこと以外は、実施例1と同様にしてうず巻形ガスケットおよび供試体を作製し、実施例1と同様にして常温シール性および高温シール性を調べた。その結果を表1に示す。
【0054】
比較例3
実施例1において、メチルシリコーン100質量部あたりのガラス粒子の量を100質量部に変更したこと以外は、実施例1と同様にしてうず巻形ガスケットを作製しようとしたが、マイカ層同士をバインダーで十分に接着させることができないため、うず巻形ガスケットを作製することができなかった。
【0055】
【表1】
【0056】
表1に示された結果から、各実施例で得られたうず巻形ガスケットは、いずれも、ガラス粒子の量が特定範囲内にあることから、常温シール性のみならず高温シール性にも優れていることがわかる。
【0057】
実施例5〜7および比較例4
実施例1で用いられたガラス粒子の代わりに表2に示す平均粒子径を有するガラス粒子を用い、メチルシリコーン100質量部あたりのガラス粒子の量を30質量部に変更したこと以外は、実施例1と同様にしてうず巻形ガスケットおよび供試体を作製し、実施例1と同様にして常温シール性および高温シール性を調べた。その結果を表2に示す。
【0058】
比較例5
実施例5で用いられたガラス粒子の代わりに平均粒子径が0.6μmであるガラス粒子F〔旭硝子(株)製、品番:KF1256、軟化点:431℃〕を用いたこと以外は、実施例5と同様にしてうず巻形ガスケットを作製しようとしたが、ガラス粒子が凝集したため、うず巻形ガスケットを作製することができなかった。
【0059】
なお、表2に示すガラス粒子の種類の詳細は、以下のとおりである。
・ガラス粒子A:旭硝子(株)製、品番:DPS144、平均粒子径:1.4μm、軟化点:440℃
・ガラス粒子B:旭硝子(株)製、品番:KFI0115、平均粒子径:5.0μm、軟化点:400℃
・ガラス粒子C:旭硝子(株)製、品番:PSN−62B、平均粒子径:14μm、軟化点:394℃
・ガラス粒子D:旭硝子(株)製、品番:KP3103、平均粒子径:20μm、軟化点:315℃
・ガラス粒子E:旭硝子(株)製、品番:2452、平均粒子径:30μm、軟化点:440℃
・ガラス粒子F:旭硝子(株)製、品番:KF1256、平均粒子径:0.6μm、軟化点:431℃
【0060】
【表2】
【0061】
表2に示された結果から、各実施例で得られたうず巻形ガスケットは、いずれも、ガラス粒子の平均粒子径が特定範囲内にあることから、常温シール性のみならず高温シール性にも優れていることがわかる。
【0062】
なお、各実施例では、内外輪付きうず巻形ガスケットが用いられているが、内輪付きうず巻形ガスケットは、外輪を有しない点で相違しているだけであることから、内外輪付きうず巻形ガスケットと同様の結果が得られるものと考えられる。
【0063】
実験例1
実施例1で用いられたガラス粒子の代わりにガラス粒子〔旭硝子(株)製、品番:KP3103、平均粒子径:20μm、軟化点:315℃〕を用い、メチルシリコーン100質量部あたりのガラス粒子の量を30質量部に変更し、高温シール性を調べる際の加熱温度を500℃、600℃または650℃に調節したこと以外は、実施例1と同様にしてうず巻形ガスケットおよび供試体を作製し、実施例1と同様にして常温シール性および高温シール性を調べた。
【0064】
その結果、常温シール性における気泡の量は1.7×10
-5Pa・m
3/s未満であり、500℃の温度での高温シール性における気泡の量は3.6×10
-2Pa・m
3/sであり、600℃の温度での高温シール性における気泡の量は4.2×10
-2Pa・m
3/sであり、650℃の温度での高温シール性における気泡の量は6.3×10
-2Pa・m
3/sであった。
【0065】
実験例2
実験例1で用いられたガラス粒子の代わりにガラス粒子〔旭硝子(株)製、品番:KFI0115、平均粒子径:5.0μm、軟化点:400℃〕を用いたこと以外は、実験例1と同様にしてうず巻形ガスケットおよび供試体を作製し、実験例1と同様にして常温シール性および高温シール性を調べた。
【0066】
その結果、常温シール性における気泡の量は1.7×10
-5Pa・m
3/s未満であり、500℃の温度での高温シール性における気泡の量は9.8×10
-3Pa・m
3/sであり、600℃の温度での高温シール性における気泡の量は7.6×10
-3Pa・m
3/sであり、650℃の温度での高温シール性における気泡の量は3.4×10
-3Pa・m
3/sであった。
【0067】
実験例3
実験例1で用いられたガラス粒子の代わりにガラス粒子〔旭硝子(株)製、品番:K−834、平均粒子径:8.0μm、軟化点:587℃〕を用いたこと以外は、実験例1と同様にしてうず巻形ガスケットおよび供試体を作製し、実験例1と同様にして常温シール性および高温シール性を調べた。
【0068】
その結果、常温シール性における気泡の量は1.7×10
-5Pa・m
3/s未満であり、500℃の温度での高温シール性における気泡の量は7.2×10
-1Pa・m
3/sであり、600℃の温度での高温シール性における気泡の量は1.8×10
-2Pa・m
3/sであり、650℃の温度での高温シール性における気泡の量は1.2×10
-3Pa・m
3/sであった。
【0069】
実験例4
実験例1で用いられたガラス粒子の代わりにガラス粒子〔旭硝子(株)製、品番:K−807、平均粒子径:5.0μm、軟化点:738℃〕を用いたこと以外は、実験例1と同様にしてうず巻形ガスケットおよび供試体を作製し、実験例1と同様にして常温シール性および高温シール性を調べた。
【0070】
その結果、常温シール性における気泡の量は1.7×10
-5Pa・m
3/s未満であり、500℃の温度での高温シール性における気泡の量は8.7×10
-1Pa・m
3/sであり、600℃の温度での高温シール性における気泡の量は6.2×10
-1Pa・m
3/sであり、650℃の温度での高温シール性における気泡の量は5.8×10
-1Pa・m
3/sであった。
【0071】
実験例1〜4の結果から、当該うず巻形ガスケットが実際に使用されるときに加熱される温度に応じてうず巻形ガスケットを適宜選択し、当該うず巻形ガスケットに用いられているガラス粒子の軟化点が、うず巻形ガスケットが加熱されるときの温度よりも300℃低い温度〜うず巻形ガスケットの加熱温度の温度であることが好ましいことがわかる。