特許第6376703号(P6376703)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6376703
(24)【登録日】2018年8月3日
(45)【発行日】2018年8月22日
(54)【発明の名称】うず巻形ガスケット
(51)【国際特許分類】
   F16J 15/12 20060101AFI20180813BHJP
   F16J 15/10 20060101ALI20180813BHJP
【FI】
   F16J15/12 B
   F16J15/10 W
【請求項の数】2
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-558800(P2015-558800)
(86)(22)【出願日】2015年1月13日
(86)【国際出願番号】JP2015050588
(87)【国際公開番号】WO2015111457
(87)【国際公開日】20150730
【審査請求日】2017年12月15日
(31)【優先権主張番号】特願2014-12272(P2014-12272)
(32)【優先日】2014年1月27日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000229564
【氏名又は名称】日本バルカー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141472
【弁理士】
【氏名又は名称】赤松 善弘
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 菜央子
(72)【発明者】
【氏名】黒河 真也
【審査官】 山田 康孝
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−127178(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0082447(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16J 15/12
F16J 15/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィラー材とフープ材とが重ね合せられ、当該重ね合せられたフィラー材とフープ材とがうず巻き状に巻かれてなるガスケット本体を有するうず巻形ガスケットであって、前記フィラー材が、バインダーを介して集成マイカが積層されてなり、当該バインダーに平均粒子径が1〜25μmであるガラス粒子が配合され、当該ガラス粒子の量がバインダー100質量部あたり5〜80質量部であることを特徴とするうず巻形ガスケット。
【請求項2】
バインダーがシリコーン系バインダーである請求項1に記載のうず巻形ガスケット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、うず巻形ガスケットに関する。さらに詳しくは、例えば、配管同士の接続部などにおける配管用シール材として好適に使用することができるうず巻形ガスケットに関する。
【背景技術】
【0002】
うず巻形ガスケットは、豊かな弾性を有し、装着厚さで締付け力を規制することができることから、火力発電所、原子力発電所、スチームタービン船の蒸気機関、石油精製ラインや石油化学工業のプロセスライン、熱媒体油ラインなどの配管同士を接続する際に広く用いられている。
【0003】
うず巻形ガスケットのガスケット本体は、JIS B2404の「表1」に記載されているように、フィラー材と、断面がV字形などの形状を有する薄い金属テープからなるフープ材とを重ね合せてうず巻状に巻き、巻き始めと巻終わりにフープ材で数周空巻し、これをスポット溶接などによって固着することにより、形成されている。このようにフープ材とフィラー材とから形成されたガスケット本体からなるうず巻形ガスケットは、基本形のうず巻形ガスケットと称されている。
【0004】
また、ガスケット本体の内周縁に環状の金属板からなる内輪を嵌合することによって固定されているうず巻形ガスケットは、内輪付きうず巻形ガスケットと称され、ガスケット本体の外周縁にガイド部材として環状の金属板からなる外輪を嵌合することによって固定されているうず巻形ガスケットは、外輪付きうず巻形ガスケットと称され、内輪および外輪を有するうず巻形ガスケットは、内外輪付きうず巻形ガスケットと称されている(例えば、JIS B2404の「表1」参照)。
【0005】
従来、うず巻形ガスケットが配管同士の接続部に使用され、高温に加熱される場合には、当該うず巻形ガスケットにはマイカ片を積層させることによって形成されたフィラー材とフープ材とを有するガスケット本体が用いられている。前記ガスケット本体は、750℃の高温でも分解しないという利点を有する反面、配管に接続したときのシール性に劣る。
【0006】
そこで、機械的強度が高く、シール性および柔軟性に優れたフィラー材を有するガスケット本体が用いられたうず巻形ガスケットとして、マイカ片の平均厚さが1.0〜3.0μmであり、厚さが4.0μm以下であるマイカ片の割合がその総数の90%以上であるマイカ片が積層されたフィラー材およびフープ材を有するうず巻形ガスケットが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0007】
前記うず巻形ガスケットに用いられているフィラー材は、確かに機械的強度が高く、低温領域(420℃以下)におけるシール性および柔軟性に優れている。しかし、当該うず巻形ガスケットを配管同士の接続部に使用し、当該うず巻形ガスケットが高温(例えば、600℃以上)に加熱されたとき、フィラー材に使用されているバインダーが熱分解することによって隣接するマイカ片の間に間隙が生じ、当該うず巻形ガスケットによるシール性が低下するおそれがある。
【0008】
したがって、近年、従来のうず巻形ガスケットと同等以上の常温シール性を有し、さらに高温(例えば、600℃以上)に加熱された場合であってもシール性に優れるうず巻形ガスケットの開発が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特許第5047490号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、前記従来技術に鑑みてなされたものであり、従来のうず巻形ガスケットと同等以上の常温シール性を有し、高温シール性に優れているうず巻形ガスケットを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、
(1) フィラー材とフープ材とが重ね合せられ、当該重ね合せられたフィラー材とフープ材とがうず巻き状に巻かれてなるガスケット本体を有するうず巻形ガスケットであって、前記フィラー材が、バインダーを介して集成マイカが積層されてなり、当該バインダーに平均粒子径が1〜25μmであるガラス粒子が配合され、当該ガラス粒子の量がバインダー100質量部あたり5〜80質量部であることを特徴とするうず巻形ガスケット、および
(2) バインダーがシリコーン系バインダーである前記(1)に記載のうず巻形ガスケット
に関する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、従来のうず巻形ガスケットと同等以上の常温シール性を有し、高温シール性に優れたうず巻形ガスケットが提供される。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明のうず巻形ガスケットは、フィラー材とフープ材とが重ね合せられ、当該重ね合せられたフィラー材とフープ材とをうず巻き状に巻くことによって形成されるガスケット本体を有するうず巻形ガスケットであり、前記フィラー材がバインダーを介して集成マイカが積層され、バインダーに平均粒子径が1〜25μmであるガラス粒子が配合され、当該ガラス粒子の量がバインダー100質量部あたり5〜80質量部であることを特徴とする。
【0014】
集成マイカは、例えば、原鉱のマイカ(雲母)を粉砕し、粉砕されたマイカ粉を紙状に抄造することによってマイカペーパーを製造し、当該マイカペーパーに適量の接着剤を含浸させ、板状に加熱圧縮することによって製造することができる。集成マイカには接着剤が含まれているため、集成マイカは、純粋なマイカと対比して耐熱性に劣るが、それでも耐熱温度が600℃〜800℃程度であることから、耐熱性に優れている。集成マイカは、例えば、(株)岡部マイカ工業所などから商業的に容易に入手することができる。
【0015】
集成マイカの厚さは、フィラー材に可撓性を付与するとともにフィラー材の機械的強度を高める観点から、50〜300μmであることが好ましく、100〜200μmであることがより好ましい。
【0016】
バインダーとしては、例えば、シリコーン系バインダー、水分散性フェノール樹脂などのフェノール樹脂系バインダーなどが挙げられる。これらのバインダーのなかでは、集成マイカに対する結着性および耐薬品性に優れていることから、シリコーン系バインダーが好ましい。シリコーン系バインダーとしては、例えば、メチルシリコーン、フェニルシリコーンなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
【0017】
バインダーには、平均粒子径が1〜25μmであるガラス粒子が配合されている。バインダー100質量部あたりのガラス粒子の量は、5〜80質量部である。本発明においては、このようにバインダーに特定の平均粒子径を有するガラス粒子が特定量で含まれている点に、1つの大きな特徴がある。
【0018】
本発明のうず巻形ガスケットは、バインダーに特定の平均粒子径を有するガラス粒子が特定量で含まれているので、従来のうず巻形ガスケットと同等以上の常温シール性を有し、さらに例えば、600℃以上の高温に加熱された場合であってもシール性(高温シール性)に優れている。
【0019】
ガラス粒子を構成しているガラス粒子の形状としては、例えば、球状、楕円球状、紡錘状、多角形状、円錐状、破砕状などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
【0020】
ガラス粒子の平均粒子径は、ガラス粒子をバインダー中に均一に分散させる観点から、1μm以上、好ましくは1.2μm以上であり、集成マイカ同士を強固に結着させる観点から、25μm以下、好ましくは20μm以下である。
【0021】
本発明におけるガラス粒子の平均粒子径は、レーザー回折式粒度分布測定装置〔(株)島津製作所製、品番:SALD7000〕を用いて求められた粒度分布のD50における平均粒子径である。
【0022】
なお、ガラス粒子の平均粒子径は、集成マイカ同士を強固に結着させる観点から、バインダーの厚さ以下であることが好ましく、バインダーの厚さよりも5μm以上小さいことがより好ましい。
【0023】
バインダー100質量部あたりのガラス粒子の量は、うず巻形ガスケットの高温におけるシール性を向上させる観点から、5質量部以上、好ましくは10質量部以上であり、集成マイカ同士を強固に結着させる観点から、80質量部以下、好ましくは70質量部以下、より好ましくは60質量部以下である。
【0024】
なお、ガラス粒子を構成しているガラスの軟化点(融点)は、うず巻形ガスケットの加熱時の温度によって異なるので一概には決定することができないが、うず巻形ガスケットが加熱されたときにガラス粒子が著しく流動することを抑制する観点から、うず巻形ガスケットが加熱されるときの温度よりも300℃低い温度以上であることが好ましく、うず巻形ガスケットが加熱されるときの温度よりも200℃低い温度以上であることがより好ましく、うず巻形ガスケットの加熱時にガラス粒子を溶融させる観点から、うず巻形ガスケットの加熱温度以下の温度であることが好ましく、うず巻形ガスケットの加熱温度よりも5℃低い温度以下であることがより好ましい。なお、ガラスの軟化点は、JIS R3103−1に準拠して測定したときの値である。
【0025】
フィラー材は、ガラス粒子を含有するバインダーを集成マイカに塗布し、塗布されたバインダーの表面に他の集成マイカを載置し、積層することによって製造することができる。
【0026】
ガラス粒子を含有するバインダーを集成マイカに塗布する方法としては、例えば、スプレーコート法、ロール転写法などが挙げられるが、本発明は、かかる塗布方法によって限定されるものではない。
【0027】
ガラス粒子を含有するバインダーを集成マイカに塗布することによって形成されるバインダー層の厚さは、当該バインダーに含有されるガラス粒子の粒子径などによって異なるので一概には決定することができないが、通常、集成マイカ同士を強固に結着させるとともに、高温シール性を向上させる観点から、10〜100μmであることが好ましく、20〜80μmであることがより好ましく、30〜60μmであることがさらに好ましい。
【0028】
積層される集成マイカの枚数は、フィラー材の厚さによって異なるので一概には決定することができないが、通常、好ましくは2〜5枚、より好ましくは2〜4枚、さらに好ましくは3枚である。
【0029】
フィラー材の厚さは、うず巻形ガスケットのシール性を向上させる観点から、好ましくは0.2mm以上、より好ましくは0.3mm以上であり、フィラー材の可撓性を向上させる観点から、好ましくは1mm以下、より好ましくは0.8mm以下である。
【0030】
ガスケット本体は、例えば、フィラー材と、断面がV字形などの形状を有する薄い金属テープからなるフープ材とを重ね合せてうず巻状に巻き、巻き始めと巻終わりにフープ材で数周空巻し、これをスポット溶接などによって固着することにより、形成することができる。
【0031】
ガスケット本体に用いられるフープ材として、通常のうず巻形ガスケットに用いられるテープ状のフープ材を用いることができる。フープ材に用いられる材料としては、例えば、SUS304、SUS304L、SUS316、SUS316L、SUS317L、SUS347、SUS430などのステンレス鋼、アルミニウム、チタン、ニッケル、モネルメタル、ハステロイ、インコネルなどの金属および合金などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。フープ材の厚さは、うず巻形ガスケットの大きさ、用途などによって異なるので一概には決定することができないが、通常、0.1〜0.3mm程度である。フープ材の断面形状としては、例えば、V字形、M字形などの屈曲形状、円弧状、波形状などの曲線状、直線部分と曲線部分とが組み合わさった形状などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
【0032】
本発明のうず巻形ガスケットに用いられるガスケット本体は、フィラー材とフープ材とを従来公知の方法でうず巻状に巻回することによって形成することができる。
【0033】
ガスケット本体の厚さは、その用途などによって異なることから一概には決定することができないが、通常、フランジ面に対するガスケット本体のなじみをよくする観点から、好ましくは1.5mm以上、より好ましくは2mm以上、さらに好ましくは2.2mm以上、さらに一層好ましくは2.5mm以上であり、シール性を向上させる観点から、好ましくは5mm以下、より好ましくは4.8mm以下、さらに好ましくは4.6mm以下である。
【0034】
ガスケット本体の内周縁には、環状の金属板からなる内輪が嵌合されていてもよい。内輪は、ガスケット本体を補強する性質を有する。
【0035】
内輪に用いられる材料としては、例えば、炭素鋼、SUS304、SUS304L、SUS316、SUS316L、SUS317L、SUS321、SUS430などのステンレス鋼、チタン、モネルメタルなどの金属および合金などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
【0036】
本発明のうず巻形ガスケットは、さらにガスケット本体の外周縁にガイド部材として環状の金属板からなる外輪が嵌合されていてもよい。当該うず巻形ガスケットは、内輪および外輪を有することから、内外輪付きうず巻形ガスケットである。内外輪付きうず巻形ガスケットにおいて、外輪は、ガスケット本体を補強するとともに、位置合わせの際の目安としての役割を有する。また、内外輪付きうず巻形ガスケットでは、内輪および外輪を有することから、過度に締付けられてもガスケット本体が異常な変形をすることを防止することができる。
【0037】
外輪に用いられる材料としては、例えば、炭素鋼、SUS304、SUS304L、SUS316、SUS316L、SUS317L、SUS321、SUS430などのステンレス鋼、チタン、モネルメタルなどの金属および合金などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
【0038】
内外輪付きうず巻形ガスケットの寸法としては、例えば、JIS B2404の「付表10」に記載の寸法などが挙げられる。
【0039】
以上のようにして構成される本発明のうず巻形ガスケットは、従来のうず巻形ガスケットと同等以上の常温シール性を有し、さらに例えば600℃程度の高温に加熱された場合であってもシール性(高温シール性)に優れている。
【0040】
なお、本発明のうず巻形ガスケットを用いて配管を接続する際には、高温シール性を高める観点から、本発明のうず巻形ガスケットを用い、当該うず巻形ガスケットに用いられるガラス粒子の軟化点を配管に接続されたうず巻形ガスケットが加熱されるときの加熱温度よりも300℃低い温度以上〜当該加熱温度以下の温度範囲内となるように調整することが好ましい。
【0041】
本発明のうず巻形ガスケットは、従来のうず巻形ガスケットと同等以上の常温シール性を有し、さらに高温シール性にも優れているので、例えば、火力発電所、原子力発電所、スチームタービン船の蒸気機関、石油精製ラインおよび石油化学工業のプロセスライン、熱媒体油ラインなどの配管同士の接続部における配管用シール材などとして好適に使用することができる。
【実施例】
【0042】
次に本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明はかかる実施例のみに限定されるものではない。
【0043】
実施例1〜4
バインダーとしてメチルシリコーン〔信越シリコーン(株)製、品番:KR−242A〕を用い、メチルシリコーン100質量部あたり表1に示す量のガラス粒子〔旭硝子(株)製、品番:KFI0115、平均粒子径:5.0μm、軟化点:400℃〕を用い、メチルシリコーンとガラス粒子を当該ガラス粒子が均一に分散するように混合することにより、ガラス粒子を含有するバインダーを得た。
【0044】
厚さが0.15mmであり、幅が6mmである集成マイカを3枚用意した。集成マイカの表面に前記で得られたバインダーを厚さが約0.02mmとなるようにスプレーコート法によって塗布し、その塗布面に他の集成マイカを載せた後、この集成マイカの表面に前記で得られたバインダーを厚さが約0.02mmとなるようにスプレーコート法によって塗布し、その塗布面にさらに他の集成マイカを載せ、重ねられた3枚の集成マイカを軽く押圧し、積層することにより、厚さが約0.5mmのフィラー材を得た。
【0045】
次に、炭素鋼(SPCC)製のガスケット用内輪の外周面にフープ材〔厚さ0.2mm、幅5.3mmのステンレス鋼(SUS316)製の薄板からなり、ガスケット高さが4.5mmとなるように断面形状がV字状に成形されたフープ材〕の端部をスポット溶接し、当該フープ材を内輪に2周巻きつけた。その後、前記で得られたフィラー材を巻きつけられたフープ材に重ね、フィラー材とフープ材とをガスケット本体の直径が6.5cmとなるようにうず巻き状に巻きつけ、巻きつけたフープ材の端部をスポット溶接によって固定した。次に、前記で形成されたガスケット本体に炭素鋼(SPCC)製のガスケット用外輪を装着することにより、JPI 300K 2Bの規格を有する内外輪付きのうず巻形ガスケットを作製した。
【0046】
前記で得られたうず巻形ガスケットの物性として、常温シール性および高温シール性を以下の方法に基づいて調べた。その結果を表1に示す。
【0047】
(1)常温シール性
うず巻形ガスケットを2つの炭素鋼(S25C)製のフランジ(適用フランジ規格:JIS B2238)間に装着し、合金鋼(SNB7)製のボルトでガスケット締め付け面圧が70MPaとなるように段階的に締め付けることにより、供試体を作製した。
【0048】
次に、前記で得られた供試体のうず巻形ガスケットの内径側に内圧1.0MPaが加わるように窒素ガスを供試体の内部に充填した状態で水中に供試体を10分間静置し、その間に供試体から漏洩した気泡を回収し、その量を測定し、以下の評価基準に基づいて常温シール性を評価した。
【0049】
〔評価基準〕
○:回収した気泡の量が1.7×10-5Pa・m3/s未満(合格)
×:回収した気泡の量が1.7×10-5Pa・m3/s以上(不合格)
【0050】
(2)高温シール性
前記で常温シール性を測定した供試体を電気炉に入れ、大気中で600℃で24時間加熱した後、この供試体を室温になるまで放冷し、次いで内圧が1.0MPaとなるように窒素ガスを供試体内に充填し、水中に供試体を10分間静置し、その間に供試体から漏洩した気泡を回収し、その量を測定し、以下の評価基準に基づいて常温シール性を評価した。
【0051】
〔評価基準〕
○:回収した気泡の量が5.0×10-2Pa・m3/s未満(合格)
×:回収した気泡の量が5.0×10-2Pa・m3/s以上(不合格)
【0052】
比較例1
実施例1において、ガラス粒子を使用しなかったこと以外は、実施例1と同様にしてうず巻形ガスケットおよび供試体を作製し、実施例1と同様にして常温シール性および高温シール性を調べた。その結果を表1に示す。
【0053】
比較例2
実施例1において、メチルシリコーン100質量部あたりのガラス粒子の量を4質量部に変更したこと以外は、実施例1と同様にしてうず巻形ガスケットおよび供試体を作製し、実施例1と同様にして常温シール性および高温シール性を調べた。その結果を表1に示す。
【0054】
比較例3
実施例1において、メチルシリコーン100質量部あたりのガラス粒子の量を100質量部に変更したこと以外は、実施例1と同様にしてうず巻形ガスケットを作製しようとしたが、マイカ層同士をバインダーで十分に接着させることができないため、うず巻形ガスケットを作製することができなかった。
【0055】
【表1】
【0056】
表1に示された結果から、各実施例で得られたうず巻形ガスケットは、いずれも、ガラス粒子の量が特定範囲内にあることから、常温シール性のみならず高温シール性にも優れていることがわかる。
【0057】
実施例5〜7および比較例4
実施例1で用いられたガラス粒子の代わりに表2に示す平均粒子径を有するガラス粒子を用い、メチルシリコーン100質量部あたりのガラス粒子の量を30質量部に変更したこと以外は、実施例1と同様にしてうず巻形ガスケットおよび供試体を作製し、実施例1と同様にして常温シール性および高温シール性を調べた。その結果を表2に示す。
【0058】
比較例5
実施例5で用いられたガラス粒子の代わりに平均粒子径が0.6μmであるガラス粒子F〔旭硝子(株)製、品番:KF1256、軟化点:431℃〕を用いたこと以外は、実施例5と同様にしてうず巻形ガスケットを作製しようとしたが、ガラス粒子が凝集したため、うず巻形ガスケットを作製することができなかった。
【0059】
なお、表2に示すガラス粒子の種類の詳細は、以下のとおりである。
・ガラス粒子A:旭硝子(株)製、品番:DPS144、平均粒子径:1.4μm、軟化点:440℃
・ガラス粒子B:旭硝子(株)製、品番:KFI0115、平均粒子径:5.0μm、軟化点:400℃
・ガラス粒子C:旭硝子(株)製、品番:PSN−62B、平均粒子径:14μm、軟化点:394℃
・ガラス粒子D:旭硝子(株)製、品番:KP3103、平均粒子径:20μm、軟化点:315℃
・ガラス粒子E:旭硝子(株)製、品番:2452、平均粒子径:30μm、軟化点:440℃
・ガラス粒子F:旭硝子(株)製、品番:KF1256、平均粒子径:0.6μm、軟化点:431℃
【0060】
【表2】
【0061】
表2に示された結果から、各実施例で得られたうず巻形ガスケットは、いずれも、ガラス粒子の平均粒子径が特定範囲内にあることから、常温シール性のみならず高温シール性にも優れていることがわかる。
【0062】
なお、各実施例では、内外輪付きうず巻形ガスケットが用いられているが、内輪付きうず巻形ガスケットは、外輪を有しない点で相違しているだけであることから、内外輪付きうず巻形ガスケットと同様の結果が得られるものと考えられる。
【0063】
実験例1
実施例1で用いられたガラス粒子の代わりにガラス粒子〔旭硝子(株)製、品番:KP3103、平均粒子径:20μm、軟化点:315℃〕を用い、メチルシリコーン100質量部あたりのガラス粒子の量を30質量部に変更し、高温シール性を調べる際の加熱温度を500℃、600℃または650℃に調節したこと以外は、実施例1と同様にしてうず巻形ガスケットおよび供試体を作製し、実施例1と同様にして常温シール性および高温シール性を調べた。
【0064】
その結果、常温シール性における気泡の量は1.7×10-5Pa・m3/s未満であり、500℃の温度での高温シール性における気泡の量は3.6×10-2Pa・m3/sであり、600℃の温度での高温シール性における気泡の量は4.2×10-2Pa・m3/sであり、650℃の温度での高温シール性における気泡の量は6.3×10-2Pa・m3/sであった。
【0065】
実験例2
実験例1で用いられたガラス粒子の代わりにガラス粒子〔旭硝子(株)製、品番:KFI0115、平均粒子径:5.0μm、軟化点:400℃〕を用いたこと以外は、実験例1と同様にしてうず巻形ガスケットおよび供試体を作製し、実験例1と同様にして常温シール性および高温シール性を調べた。
【0066】
その結果、常温シール性における気泡の量は1.7×10-5Pa・m3/s未満であり、500℃の温度での高温シール性における気泡の量は9.8×10-3Pa・m3/sであり、600℃の温度での高温シール性における気泡の量は7.6×10-3Pa・m3/sであり、650℃の温度での高温シール性における気泡の量は3.4×10-3Pa・m3/sであった。
【0067】
実験例3
実験例1で用いられたガラス粒子の代わりにガラス粒子〔旭硝子(株)製、品番:K−834、平均粒子径:8.0μm、軟化点:587℃〕を用いたこと以外は、実験例1と同様にしてうず巻形ガスケットおよび供試体を作製し、実験例1と同様にして常温シール性および高温シール性を調べた。
【0068】
その結果、常温シール性における気泡の量は1.7×10-5Pa・m3/s未満であり、500℃の温度での高温シール性における気泡の量は7.2×10-1Pa・m3/sであり、600℃の温度での高温シール性における気泡の量は1.8×10-2Pa・m3/sであり、650℃の温度での高温シール性における気泡の量は1.2×10-3Pa・m3/sであった。
【0069】
実験例4
実験例1で用いられたガラス粒子の代わりにガラス粒子〔旭硝子(株)製、品番:K−807、平均粒子径:5.0μm、軟化点:738℃〕を用いたこと以外は、実験例1と同様にしてうず巻形ガスケットおよび供試体を作製し、実験例1と同様にして常温シール性および高温シール性を調べた。
【0070】
その結果、常温シール性における気泡の量は1.7×10-5Pa・m3/s未満であり、500℃の温度での高温シール性における気泡の量は8.7×10-1Pa・m3/sであり、600℃の温度での高温シール性における気泡の量は6.2×10-1Pa・m3/sであり、650℃の温度での高温シール性における気泡の量は5.8×10-1Pa・m3/sであった。
【0071】
実験例1〜4の結果から、当該うず巻形ガスケットが実際に使用されるときに加熱される温度に応じてうず巻形ガスケットを適宜選択し、当該うず巻形ガスケットに用いられているガラス粒子の軟化点が、うず巻形ガスケットが加熱されるときの温度よりも300℃低い温度〜うず巻形ガスケットの加熱温度の温度であることが好ましいことがわかる。