(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
各糸条ユニットを構成する前記第2糸条及び前記第3糸条の長さは、各糸条ユニット内において、前記第1糸条の延在方向に対して、外側に配置された糸条の長さが内側に配置された糸条の長さよりも長くなっている、請求項1又は2に記載の袋体。
各糸条ユニットを構成する前記前記第5糸条及び前記第6糸条の長さは、各糸条ユニット内において、前記第4糸条の延在方向に対して、外側に配置された糸条の長さが内側に配置された糸条の長さよりも長くなっている、請求項5又は6に記載の袋体。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、袋織によって一体形成された膨張部の膨張を制限する制限糸条を有する袋体であり、該制限糸条により袋体展開時には膨張部の過度な膨張を制限することで、インフレーターのガス量を少なくしつつ、乗員を保護する領域を広くすることができる、袋体を提供することを目的とする。また、エアバッグ膨張時の形状を制限糸条で制限することにより、エアバッグ厚みを全体に亘り均一化することによって、車両毎に異なる構造形状に左右されない汎用的なエアバッグを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明は、膨張を制限する制限糸を内部に有する袋体において、前記制限糸が、
非膨張部から別の非膨張部へ前記袋体内部に延在する第1糸条(11、31)と、
前記袋体の膨張部の一方の面の基布を組織する糸条であって、前記一方の面の基布から離れて、前記第1糸条(11、31)に引っ掛かり、又は前記第1糸条(11、31)と織り組織を構成し、再び前記一方の面の基布に戻り組織される第2糸条(12、32)と、
前記袋体の膨張部の他方の面の基布を組織する糸条であって、前記他方の面の基布から離れて、前記第1糸条(11、31)に引っ掛かり、又は前記第1糸条(11、31)と織り組織を構成し、再び前記他方の面の基布に戻り組織される第3糸条(13、33)と
を含み、
前記第1糸条(11、31)、前記第2糸条(12、32)、及び前記第3糸条(13、33)によって、第1の制限糸条群(21)が構成されており、
前記第1の制限糸条群(21)は、前記第2糸条(12、32)のみが2本以上連続して前記第1糸条(11、31)に引っ掛かり、又は織組織を構成して構成される第1の糸条ユニット(22)と、前記第3糸条(13、33)のみが2本以上連続して前記第1糸条(11、31)に引っ掛かり、又は織組織を構成して構成される第2の糸条ユニット(23)とを含み、前記第1の糸条ユニット(22)と前記第2の糸条ユニット(23)とが、前記第1糸条(11、31)の延在方向に交互に存在している。
【0008】
また、本発明の別の態様によれば、各糸条ユニットを構成する前記第2糸条及び前記第3糸条の長さが、各糸条ユニットによって異なる。
【0009】
また、本発明の別の態様によれば、各糸条ユニットを構成する前記第2糸条及び前記第3糸条の長さは、各糸条ユニット内において、前記第1糸条の延在方向に対して、外側に配置された糸条の長さが内側に配置された糸条の長さよりも長くなっている。
【0010】
また、本発明の別の態様によれば、前記第1の制限糸条群が、複数個並んで配置されている。
【0011】
また、本発明の別の態様によれば、前記制限糸が、
非膨張部から別の非膨張部へ前記袋体内部に延在し、前記第1糸条(31)と平行に延在する第4糸条(34)と、
前記袋体の膨張部の前記他方の面の基布を組織する糸条であって、前記第2糸条(32)に対向して、前記他方の面の基布から離れて、前記第4糸条(34)に引っ掛かり、又は前記第4糸条(34)と織り組織を構成し、再び前記他方の面の基布に戻り組織される第5糸条(35)と、
前記袋体の膨張部の前記一方の面の基布を組織する糸条であって、前記第3糸条(33)に対向して、前記一方の面の基布から離れて、前記第4糸条(34)に引っ掛かり、又は前記第4糸条(34)と織り組織を構成し、再び前記一方の面の基布に戻り組織される第6糸条(36)と
をさらに含み、
前記第4糸条(34)、前記第5糸条(35)、及び前記第6糸条(36)によって、第2の制限糸条群(41)が構成されており、
前記第2の制限糸条群(41)は、前記第5糸条(35)のみが2本以上連続して前記第4糸条(34)に引っ掛かり、又は織組織を構成して構成される第3の糸条ユニットと、前記第6糸条(36)のみが2本以上連続して前記第4糸条(34)に引っ掛かり、又は織組織を構成して構成される第4の糸条ユニットとを含み、前記第3の糸条ユニットと前記第4の糸条ユニットとが、前記第4糸条(34)の延在方向に交互に存在している。
【0012】
また、本発明の別の態様によれば、各糸条ユニットを構成する前記第5糸条及び前記第6糸条の長さが、各糸条ユニットによって異なる。
【0013】
また、本発明の別の態様によれば、各糸条ユニットを構成する前記前記第5糸条及び前記第6糸条の長さは、各糸条ユニット内において、前記第4糸条の延在方向に対して、外側に配置された糸条の長さが内側に配置された糸条の長さよりも長くなっている。
【0014】
また、本発明の別の態様によれば、前記第2の制限糸条群が、複数個並んで配置されている。
【0015】
また、本発明においては、制限糸条の効果的な配置によって、エアバッグ膨張時の厚みをより柔軟に制御することができ、さらに厚みが異なるエアバッグ領域においても非膨張部から別の非膨張部へ延在する制限糸条の働きにより、制限糸条にかかる応力を均一化し、高圧力時の制限糸条の破断を抑制する効果も期待できる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1は、本発明の制限糸条の配置例を示す図であり、(A)は、膨張前の制限糸条の状態を表し、(B)は、膨張時の制限糸条の状態を表している。袋体は、非膨張部から別の非膨張部へ袋体内部に延在する第1糸条11と、前記袋体の膨張部の一方の面の基布を組織する糸条であって、前記一方の面の基布から離れて、前記第1糸条に引っ掛かり、再び前記一方の面の基布に戻り組織される第2糸条12と、前記袋体の膨張部の他方の面の基布を組織する糸条であって、前記他方の面の基布から離れて、前記第1糸条に引っ掛かり、再び前記他方の面の基布に戻り組織される第3糸条13とを含む。第1糸条11、第2糸条、及び第3糸条によって、第1の制限糸条群21が構成されている。第1の制限糸条群21は、第2糸条12のみが2本以上連続して第1糸条11に引っ掛かり、又は織組織を構成して構成される第1の糸条ユニット22と、第3糸条13のみが2本以上連続して第1糸条11に引っ掛かり、又は織組織を構成して構成される第2の糸条ユニット23とを含む。第1の糸条ユニット22と第2の糸条ユニット23とが、第1糸条11の延在方向に交互に配置されている。
【0018】
図1を用いて、本発明にて袋体の膨張時厚みを制限する原理を説明する。
【0019】
非膨張部から非膨張部へ延在する第1糸条11は、袋体が膨張すると非膨張部間の距離が縮まることにより一時的にたるみを生ずるが、第1糸条11は一方の基布を組織する第2糸条12、及び、もう一方の基布を組織する第3糸条13にそれぞれ引っ掛けられているため双方の糸条から引っ張られて、袋体内部で波線型を形成し平衡する。前記波線型を形成する第1糸条11の山の数は、第2糸条12のみが連続して構成される第1の糸条ユニット22のユニット数を(N)個、第3糸条13にて構成される第2の糸条ユニット23のユニット数を(M)個とした場合、(N+M)となる。この波線型の山の数(N+M)が少なくなれば、波線型の1辺の長さが長くなり、袋体の膨張厚みは厚くなる。逆に(N+M)が多くなれば山の数が多くなり波線型の1辺の長さは短くなって膨張厚みは薄くなる。
【0020】
この波線型の1辺が10mmより短くなると、第2糸条と第3糸条の距離が近くなり、袋体の厚みはほぼ第2糸条12と第3糸条13の長さによって規定されてしまうため、第1及び第2の糸条ユニットのユニット数の総和(N+M)と第1糸条11の長さ(L)mmとの関係は下記式を満たすことが好ましい。
(N+M)≦(L/10)
【0021】
また、膨張時の厚みは、第1及び第2の糸条ユニットのユニット数の総和だけでなく、第2糸条12及び第3糸条13のそれぞれの長さを変えることでも調節できる。
【0022】
さらに、厚み及び膨張形状を制御するパラメータとしては、先に記した第1及び第2の糸条ユニットの数や第2糸条12及び第3糸条13の長さだけでなく、第1及び第2の糸条ユニットの幅や糸条ユニットを構成する糸条の本数及びその間隔、第1糸条11の端部から見て最も近い第2糸条12及び第3糸条13までの距離があり、それらを適切に組み合わせることにより、袋体の膨張時に所望の厚み及び形状を得ることができる。
【0023】
各糸条ユニット22及び23を構成する制限糸条の本数は2本以上連続していればよく、特に限定するものではないが、基布と各制限糸条に掛かる応力を小さくし、内圧維持性及び制限糸条の耐破断性を考慮すると5本以上で構成されることが好ましく、10本以上で構成されることがより好ましい。
【0024】
また、各糸条ユニットを構成する制限糸条を配置する間隔は、片側の基布について幅1mm〜5mmに対して1本程度が好ましく、2mm〜3mmに1本程度がより好ましい。制限糸条を配置する間隔が狭いと、相対的に制限糸条の本数が少なくなり、制限糸条はエアバッグ展開時の圧力に耐え切れずに破断し易くなる。
【0025】
袋部の基布を構成する制限糸条の長さは、特に限定するものではないが、エアバッグ基布として使用する場合、10mm〜200mm程度であることが好ましく、20mm〜150mm程度がより好ましい。基布を構成する制限糸条の長さが短いとそれに掛かる非膨張部から非膨張部へ渡る制限糸条の数が制限され、制限糸条全体の強度が低下する。逆に制限糸条の長さが長すぎると、非膨張部から非膨張部へ渡る制限糸条に張力が掛からなくなり厚みが制限できないことがある。
【0026】
1つの制限糸条群における第1糸条11の本数は5本以上であることが好ましく、10本以上であることがより好ましい。第1糸条11の本数が5本以下となると、膨張時の応力に第1糸条11が耐えられなくなり破断を起こす場合がある。
【0027】
第1糸条11と第2糸条12、及び第1糸条11と第3糸条13は、制限糸条同士を引っ掛けるだけでも織組織を構成してもほぼ同等の膨張形状を得ることができる。
【0028】
また、
図2に示す袋体の例では、制限糸が、非膨張部から別の非膨張部へ袋体内部に延在し、第1糸条31と平行に延在する第4糸条34と、袋体の膨張部の他方の面の基布を組織する糸条であって、第2糸条32に対向して、他方の面の基布から離れて、第4糸条34に引っ掛かり、又は第4糸条34と織り組織を構成し、再び他方の面の基布に戻り組織される第5糸条35と、袋体の膨張部の一方の面の基布を組織する糸条であって、第3糸条33に対向して、一方の面の基布から離れて、第4糸条34に引っ掛かり、又は第4糸条34と織り組織を構成し、再び一方の面の基布に戻り組織される第6糸条36とをさらに含む。そして、第4糸条34、第5糸条35、及び第6糸条36によって、第2の制限糸条群41が構成されている。第2の制限糸条群41は、第5糸条35のみが2本以上連続して第4糸条34に引っ掛かり、又は織組織を構成して構成される第3の糸条ユニットと、第6糸条36のみが2本以上連続して第4糸条34に引っ掛かり、又は織組織を構成して構成される第4の糸条ユニットとを含む。第3の糸条ユニットと第4の糸条ユニットとが、第4糸条34の延在方向に交互に存在している。この構造によって、基布を構成する制限糸条及び基布面に掛かる応力をより分散することができ、高圧時における制限糸条の破断を抑制することができる。
【0029】
図3は、
図2に示す制限糸条を袋体に並列に並べた際の図を示す。それぞれ(A)膨張前、(B)膨張時底面図、(C)膨張時側面図、(D)膨張時正面図を表す。このように本発明の制限糸条を並列に並べることにより、膨張時に全体としておおよそ均一な厚みを持った袋体を形成することが可能となる。
【0030】
糸条ユニットを構成する制限糸条の長さは、
図4に示すように所望の厚み及び膨張形状を得るために、各糸条ユニットによって異なる長さとしてもよい。
図4はそれぞれ、(A)膨張前、(B)膨張時底面図、(C)膨張時側面図、(D)膨張時正面図を表す。このように、糸条ユニット毎に制限糸条を異なる長さとした場合でも、第1糸条及び第4糸条の働きにより各糸条ユニットに掛かる応力は均一化され、特定の糸条ユニットへの応力集中を避けることができる。
【0031】
また、基布及び制限糸条に掛かる応力をより分散するためには、
図5に示すように糸条ユニットを構成する糸条の外側の糸条の長さを内側の糸条の長さよりも長く設定するとよい。
【0032】
前記袋体の織密度は特に規定するものではないが、制限糸条が存在する部分の織密度は気密性を持たせるために、制限糸条の糸本数より高い織密度を用いることが好ましい。
【0033】
本発明における制限糸条の繊度については、通常基布を構成する糸繊度と同等の糸を用いるが、特に制限糸条の破断を抑えたい場合は、制限糸条の繊度を大きくしてもよい。制限糸条の繊度を大きくする場合は、基布を組織する基布糸条よりも20%〜60%大きいことが好ましく、更には30〜50%大きいことが好ましい。上記値が20%未満であった場合、破断を抑える効果が十分に得られず、上記値が60%を超える場合は、製織時に基布を均一に織ることが難しくなりシリコーン樹脂などの被覆剤をコーティングする際に塗布ムラが発生してエアバッグとしての気密性を損なう恐れがある。また、基布糸条と同等かそれより小さい繊度の糸を2本以上束ねて基布糸条より太くした繊維糸条を制限糸条として用いても良い。
【0034】
本発明で使用する基布の経糸および緯糸の繊度は、通常、エアバッグ用基布に用いられている太さの糸条、すなわち150〜1000dtexの範囲から選定すればよく、好ましくは235〜700dtexの範囲とすればよい。繊度が150dtexより細いと、エアバッグに求められる強度が得られにくい傾向にあり、1000dtexを超えると目付けが大きくなりすぎる傾向にある。
【0035】
本発明で使用する糸条の強度は7cN/dtex以上、好ましくは8cN/dtex以上を用いればよい。また糸条の単糸太さは、例えば、0.5〜6dtexの範囲にあれば好ましい。さらに、単糸の断面形状も円形、楕円、扁平、多角形、中空、その他の異なる型など、基布の製造、基布の物性に支障のない範囲で適宜選定すればよい。また、繊度や断面形状などが異なる複数の糸条を、合糸、撚り合わせなどにより一体化したものを用いてもよい。
【0036】
本発明で使用する基布は、目付けが260g/m2以下、引張強度が650N/cm以上であることが好ましい。目付けと引張強度がこの範囲であれば、軽くて物理特性に優れているといえる。なお、目付けとは、後述する不通気材料などを付与する前の未加工の状態の基布重量をいう。
【0037】
目付けが、260g/m2を超えるとエアバッグの重量が大きくなり、所望の軽量化を達成しにくい。また、引張強度が650N/cmより小さいとエアバッグとしての必要な物理特性を達成することができない可能性がある。
【0038】
また、本発明で使用する基布はその織構造の緻密さを示す指数であるカバーファクターが700以上であることが好ましく、750以上であることがより好ましい。
【0039】
前記カバーファクター(CF)とは、基布の経糸および緯糸それぞれの織密度N(本/cm)と太さD(dtex)との積で一般的に求められ、下記式にて表される。
CF=Nw×√Dw+Nf×√Df
ここで、Nw、Nfは、経糸および緯糸の織密度(本/cm)
Dw、Dfは、経糸および緯糸の太さ(dtex)
【0040】
本発明の袋織はジャカード装置付きの織機により作製できる。緯入れ方式は通常の工業用基布を製織するのに用いられる各種織機から適宜選定すればよく、例えばシャトル織機、ウォータージェット織機、エアジェット織機、レピア織機、プロジェクタイル織機などから選定すればよい。
【0041】
また、本発明のエアバッグ用基布を構成する繊維糸条は、天然繊維、化学繊維、無機繊維などでよく、特に限定されない。なかでも、汎用性があり、基布の製造工程、基布物性などの点から、合成繊維フィラメントが好ましい。例えば、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン46、ナイロン610、ナイロン612などの単独またはこれらの共重合、混合により得られる脂肪族ポリアミド繊維、ナイロン6T、ナイロン6I、ナイロン9Tに代表される脂肪族アミンと芳香族カルボン酸の共重合ポリアミド繊維、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどの単独またはこれらの共重合、混合によって得られるポリエステル繊維、超高分子量ポリオレフィン系繊維、ビニリデン、ポリ塩化ビニルなどの含塩素系繊維、ポリテトラフルオロエチレンを含むフッ素系繊維、ポリアセタール系繊維、ポリサルフォン系繊維、ポリフェニレンサルファイド系繊維(PPS)、ポリエーテルエーテルケトン系繊維(PEEK)、全芳香族ポリアミド系繊維、全芳香族ポリエステル系繊維、ポリイミド系繊維、ポリエーテルイミド系繊維、ポリパラフェニレンベンズビスオキサゾール系繊維(PBO)、ビニロン系繊維、アクリル系繊維、セルロース系繊維、炭化珪素系繊維、アルミナ系繊維、ガラス系繊維、カーボン系繊維、スチール系繊維などから、適宜、1種または2種以上を選定すればよい。なかでも、物理特性、耐久性、耐熱性などの点から、ナイロン66繊維、ポリエステル系繊維が好ましい。また、リサイクルの観点からは、ポリエステル系繊維、ナイロン6繊維も好ましい。
【0042】
これらの繊維糸条には、紡糸性、加工性、耐久性などを改善するために、通常使用されている各種の添加剤、例えば、耐熱安定剤、酸化防止剤、耐光安定剤、老化防止剤、潤滑剤、平滑剤、顔料、撥水剤、撥油剤、酸化チタンなどの隠蔽剤、光沢付与剤、難燃剤、可塑剤などのうちの1種または2種以上を使用してもよい。また、加撚、嵩高加工、捲縮加工、捲回加工、糊付け加工などの加工を施してもよい。さらに、糸条の形態は、長繊維フィラメント以外に、短繊維の紡績糸、これらの複合糸などを用いてもよい。
【0043】
また、本発明で使用する基布は、エアバッグの気密性が確保できる点で、不通気材料を有することが好ましい。不通気材料とは、例えば以下に示すように実質的に空気を通さないようにする材料のことであり、不通気とは、JIS L1096「織物及び編物の生地試験方法」における8.27.1 A法(フラジール形法)において、測定値ゼロのことをいう。この材料を後述する方法により基布の片面あるいは両面から付与する。この不通気材料は、基布の表面、基布を構成する糸条束の交差部、または、繊維単糸の間隙部など、いずれに介在してもよい。
【0044】
前記材料としては、通常、エアバッグ用基布に使用されている材料であればよく、耐熱性、耐摩耗性、基布との密着性、難燃性、不粘着性などを満足するものであればよい。例えば、シリコーン系樹脂またはゴム、ポリウレタン系樹脂またはゴム(シリコーン変性、フッ素変性も含む)、フッ素系樹脂またはゴム、塩素系樹脂またはゴム、ポリエステル系樹脂またはゴム、ポリアミド系樹脂またはゴム、エポキシ系樹脂、ビニル系樹脂、尿素系樹脂、フェノール系樹脂、オレフィン系樹脂などのうちの1種または2種以上を用いればよい。なかでも、耐熱性および難燃性の点でシリコーン樹脂もしくはポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂などが好ましい。
【0045】
付与方法は、1)コーティング法(ナイフ、キス、リバース、コンマ、スロットダイおよびリップなど)、2)含漬法、3)印捺法(スクリーン、ロール、ロータリーおよびグラビアなど)、4)転写法(トランスファー)、5)ラミネート法、およびこれらの併用などがあげられる。なかでも、内圧を維持する効果が高い点でコーティング法もしくはラミネート法が好ましい。
【0046】
また、付与量としては、片面10〜150g/m2であることが好ましく、50〜100g/m2であることがより好ましい。また、層状となる場合は、その厚さは10μm以上であることが好ましい。付与量が片面10g/m2より少ない、または、層の厚さが10μmより薄いと、必要な気密性を得ることが難しい傾向にある。
【0047】
また、前記材料には、主たる材料の他、加工性、接着性、表面特性あるいは耐久性などを改良するために、通常使用される各種の添加剤、例えば、架橋剤、接着付与剤、反応促進剤、反応遅延剤、耐熱安定剤、酸化防止剤、耐光安定剤、老化防止剤、潤滑剤、平滑剤、粘着防止剤、顔料、撥水剤、撥油剤、酸化チタンなどの隠蔽剤、光沢付与剤、難燃剤、可塑剤などのうちの1種または2種以上を選択して、混合してもよい。
【0048】
前記材料の溶液としての性状は、塗布量、塗布法、材料の加工性や安定性、要求される特性などに応じて、無溶媒型、溶媒型、水分散型、水乳化型、水溶性型などから適宜選定すればよい。
【0049】
また、前記材料には、基布との密着性を向上させるための各種前処理剤、接着向上剤などを添加してもよいし、予め基布表面にプライマー処理などの前処理を施してもよい。さらに、前記材料の物理特性を向上させたり、耐熱性、老化防止性、耐酸化性などを付与するため、前記材料を基布に付与した後、乾燥、架橋、加硫などを熱処理、加圧熱処理、高エネルギー処理(高周波、電子線、紫外線など)などを行なってもよい。
【0050】
ラミネート加工を行う場合、ラミネートする材料については特に限定されるものではなく、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリウレタン系樹脂等のホモポリマーまたはコポリマー、及び他種材料との共重合体、変性体等既知の物質が使用可能である。また、これにあらかじめポリオレフィン系樹脂等の接着性付与材を処理するか、またはフィルムの片面に接着層を配置させて基布を処理する等、既知の方法が利用可能である。接着層に用いる熱可塑性樹脂としては例えば、ポリアミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリウレタン系樹脂のホモポリマーまたはコポリマー、及び他種材料との共重合体、変性体等で融点200℃以下のものが好ましい。
【0051】
また、ラミネート加工方法についても特に限定されるものではなく、基布またはフィルム上に接着剤を塗布・乾燥して溶剤を蒸発させた後に熱圧着するドライラミネート法、水溶性の接着剤を塗布して貼り合わせた後に乾燥させるウェットラミネート法、溶融した樹脂を基布上に押出してラミネート加工する押出しラミネート法、あらかじめフィルム状に製膜した樹脂層を作製してから積層・熱圧着させるサーマルラミネート法、など既知の方法が利用可能であるが、加工コスト及び環境面の観点からするとサーマルラミネート法が好ましい。
【0052】
ラミネート被覆材の厚みについても特に限定されることはないが、10〜100μmの間で目的に応じて適宜設定すればよい。一般的には自動車の横転を想定していないカーテンバッグでは10〜40μmが好ましく、袋織のバッグで自動車の横転時の乗員保護も想定しているタイプのカーテンバッグでは40〜100μmが好ましい。
【0053】
袋織の場合、通常、経糸はサイジングした原糸を使用して製織し、コーティング剤やラミネート材料と基布との接着性を阻害しないよう、コーティングに先立って原糸に付着している油剤、サイジング剤等を除去することを目的として、ジッガ精練機あるいは複数の精練槽などを有する連続精練機により精練することが好ましい。精練後、基布をシリンダー乾燥機などにより乾燥する。乾燥後、そのままで次のコーティング工程もしくはラミネート加工に供されることもあるが、寸法や織密度の調整のために、精練、乾燥後に、引き続いてヒートセットすることが好ましい。
【0054】
コーティングもしくはラミネート加工後、レーザー裁断機により所定の寸法、形状に裁断され、エアバッグを固定するためのストラップなどの付属品を縫い付け、車体への取り付け部の補強、などを行なって製品となる。
【0055】
本発明のエアバッグの仕様、形状および容量は、配置される部位、用途、収納スペース、乗員衝撃の吸収性能、インフレーターの出力などに応じて選定すればよい。
【0056】
また、乗員側へのエアバッグの突出抑制や膨張時の厚みの制御のために、エアバッグ内側に吊り紐またはガス流調整布、エアバッグ外側にフラップと呼ばれる帯状布または抑え布などを設けてもよい。
【0057】
本発明で使用する袋織において、膨張部との境界付近の接合部の組織は特に限定するものではないが、例えば斜子織、風通織、平織などを組合せ、これらの適切な繰返しを行なえばよい。
【0058】
また、使用するインフレーターの特性に応じて、インフレーター噴出口の周囲に、熱ガスから保護するための耐熱保護布や、力学的な補強布を設けてもよい。これらの保護布や補強布は、布自体が耐熱性の材料、例えば、全芳香族ポリアミド繊維、全芳香族ポリエステル繊維、PBO繊維、ポリイミド繊維、含フッ素系繊維などの、耐熱性繊維材料を用いてもよいし、エアバッグ本体用基布と同じか、それより太い糸を用いて別途作製した基布を用いてもよい。また、基布に耐熱性被覆剤を施したものを用いてもよい。
【0059】
エアバッグを収納する際の折り畳み方も、運転席用バッグのように中心から左右、上下対称の屏風折り、あるいは中心に向かって多方位から押し縮める折り、助手席エアバッグのようなロール折り、蛇腹折り、屏風状のつづら折り、あるいはこれらの併用や、シート内臓型サイドバッグのようなアリゲーター折り、サイドカーテンエアバッグのような、ロール折り、蛇腹折りなどを用いてもよい。
【0060】
本発明の袋体は、各種の乗員保護用バッグ、例えば運転席および助手席の前面衝突用、側面衝突用のサイドバッグおよびサイドカーテンエアバッグ、後部座席保護用、追突保護用のヘッドレストバッグ、脚部・足部保護用のニーバッグおよびフットバッグ、乳幼児保護用(チャイルドシート)のミニバッグ、エアーベルト用袋体、歩行者保護用などの乗用車、商業車、バス、二輪車などの各用途の他、機能的に満足するものであれば、船舶、列車・電車、飛行機、遊園施設など多用途に適用することができる。
【実施例】
【0061】
以下に、実施例に基づき本発明をさらに具体的に説明する。
【0062】
実施例及び比較例の評価は袋体内部の様子を分かりやすくするため、コンピュータによるシミュレーション(ESI社 PAM−Crush)により実施した。シミュレーションモデルに用いたエアバッグ基布や制限糸条の物理特性は実際のエアバッグや制限糸条から得た物性を基にしている。
【0063】
本発明の実施例1の袋体の形態を
図6に示す。
【0064】
図6に示す実施例1は、第1糸条と第2糸条により構成される糸条ユニット4個、及び、第1糸条と第3糸条により構成される糸条ユニット4個から構成される制限糸条群を4セット内在する。
【0065】
図7に示す比較例1は、第2糸条と第3糸条とをそれぞれ連続させず交互に配置した例である。
【0066】
実施例1及び比較例2においては、基布を構成する制限糸条の長さは全て40mmとしている。
【0067】
次に実施例2として使用した袋体の形態を
図8に示す。
【0068】
図8に示す実施例2は、第1糸条と第2糸条により構成される糸条ユニット2個、及び、第1糸条と第3糸条により構成される糸条ユニット2個から構成される制限糸条群と、第4糸条と第5糸条により構成される糸条ユニット2個、及び、第4糸条と第6糸条により構成される糸条ユニット2個から構成される制限糸条群とを、それぞれ7セット内在する。
【0069】
図9に示す比較例2では、第2糸条と第3糸条とをそれぞれ連続させず交互に配置した例であり、基布を構成する制限糸条の長さを120mmとした。
【0070】
評価は袋体を30kPaで膨張させた時の袋体中央部の最大厚みをTmax、テザー端部の厚みをTminとしたとき、平坦率をε=Tmin/Tmaxと定義し、袋体膨張時の平坦性の評価を行った。
その結果を表1に示す。
【0071】
表1から分かる通り、実施例1では平坦率が0.64であるのに対し、同一の40mmの制限糸条長さを有する比較例1では平坦率は0.37となっており、同一のテザー長さでも本発明の袋体の方が平坦率に優れている。
【0072】
また、膨張時の厚みを厚くするため、本発明において糸条ユニットの数を減らした実施例2と、第2糸条と第3糸条とをそれぞれ連続させず交互に配置し制限糸条の長さを120mmとした比較例2とを比べてみても、実施例2の平坦率は0.85、比較例2の平坦率は0.61となり、厚みの厚い袋体においても本発明を用いれば平坦率を上げる効果が認められた。
図8から明らかなように、本発明を用いれば、基布を構成する制限糸条の長さが短いままでも膨張厚みを厚くすることができるため、制限糸条群の数をさらに増やすことができ、膨張厚みの厚い袋体においても平坦率を大きくできることが示された。
【0073】
【表1】