特許第6376720号(P6376720)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6376720タワークレーン制振装置及びタワークレーン制振方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6376720
(24)【登録日】2018年8月3日
(45)【発行日】2018年8月22日
(54)【発明の名称】タワークレーン制振装置及びタワークレーン制振方法
(51)【国際特許分類】
   B66C 15/00 20060101AFI20180813BHJP
   B66C 23/32 20060101ALI20180813BHJP
【FI】
   B66C15/00 B
   B66C23/32 E
【請求項の数】6
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2012-204529(P2012-204529)
(22)【出願日】2012年9月18日
(65)【公開番号】特開2014-58378(P2014-58378A)
(43)【公開日】2014年4月3日
【審査請求日】2015年9月11日
【審判番号】不服2017-6163(P2017-6163/J1)
【審判請求日】2017年4月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003621
【氏名又は名称】株式会社竹中工務店
(73)【特許権者】
【識別番号】000159272
【氏名又は名称】吉永機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(74)【代理人】
【識別番号】100099025
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 浩志
(72)【発明者】
【氏名】菅田 昌宏
(72)【発明者】
【氏名】洗 光範
(72)【発明者】
【氏名】竹内 誠一
(72)【発明者】
【氏名】穐山 和生
(72)【発明者】
【氏名】西口 正人
【合議体】
【審判長】 佐々木 芳枝
【審判官】 鈴木 充
【審判官】 冨岡 和人
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−199680(JP,A)
【文献】 特開2007−308297(JP,A)
【文献】 特開2000−303695(JP,A)
【文献】 特開平5−270787(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66C 15/00
B66C 23/28-23/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タワークレーンと、
前記タワークレーンの支柱と建物を連結し、前記支柱の変位を拘束するステーと、
前記支柱の下部を支柱固定用の支持部に固定する基礎部と、
前記ステーと前記基礎部との間に設けられ、前記ステーで拘束された前記支柱の外乱が生じた際の変形が最も大きくなる位置で、前記支柱と前記建物を連結し、前記支柱の振動エネルギーを吸収するエネルギー吸収装置と、
を有するタワークレーン制振装置。
【請求項2】
前記エネルギー吸収装置は、最上部の前記ステーより低い位置に設けられ、
前記エネルギー吸収装置とは別のエネルギー吸収装置が、最上部の前記ステーより高い位置で、前記支柱に対し傾斜して取り付けられている、
請求項1に記載のタワークレーン制振装置。
【請求項3】
タワークレーンと、
前記タワークレーンの支柱と建物を連結し、前記支柱の変位を拘束するステーと、
前記ステーで拘束された前記支柱の外乱が生じた際の変形が最も大きくなる位置で、前記支柱と前記建物を連結し、前記支柱の振動エネルギーを吸収するエネルギー吸収装置と、
を有し、
前記エネルギー吸収装置は、最上部の前記ステーより低い位置に設けられている
タワークレーン制振装置。
【請求項4】
最上部の前記ステーより低い位置に設けられた前記エネルギー吸収装置は、前記支柱の高さに対応して、前記支柱、及び前記建物との連結位置を変更する請求項2又は3に記載のタワークレーン制振装置。
【請求項5】
前記エネルギー吸収装置は、外力を受けて変形し前記支柱の振動エネルギーを吸収するダンパーであり、前記ダンパーの一方の端部は前記支柱に固定されたステー枠にピン接合され、他方の端部は前記建物の躯体に固定されたブラケットにピン接合されている請求項1〜4のいずれか1項に記載のタワークレーン制振装置。
【請求項6】
タワークレーンの支柱を自立させ、前記支柱をクライミングする前記タワークレーンを稼働状態とする工程と、
建物の躯体と前記支柱を、前記支柱の変位を拘束するステーで連結する工程と、
前記建物の躯体と前記支柱を、前記支柱の下部を支柱固定用の支持部に固定する基礎部と前記ステーとの間において、前記ステーで拘束された前記支柱の外乱が生じた際の変形が最も大きくなる位置で、前記支柱の振動エネルギーを吸収するエネルギー吸収装置で連結する工程と、
を有するタワークレーン制振方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タワークレーン制振装置及びタワークレーン制振方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高層の建物を建設する場合には、タワークレーンが広く使用されている。タワークレーンは、細長く柔らかい構造であるために、比較的長周期で揺れやすい。このため、地震や強風等の外力、更には稼働時の重心位置の変化等によってタワークレーンの揺れが大きくならないように、タワークレーンの支柱を建物の躯体につなぎ梁(ステー)で連結し、タワークレーンの支柱と建物の躯体を固定している。
ここに、地震時に大きい変形量が予測される免震建物においては、タワークレーンの支柱の弾性変形のみでは建物の変形量を吸収しきれない場合が想定されるため、ダンパーを備えた水平控え装置で支柱を支持する構成が提案されている(特許文献1参照)。
【0003】
即ち、特許文献1のダンパーを備えた水平控え装置は、建物の躯体とタワークレーンの支柱を固定する従来のステーに代えて、建物の躯体とタワークレーンの支柱を、ダンパーを介して柔らかく連結している。これにより、建物の変形量が大きくても、ダンパーにより変形量が吸収される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−16101号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、建物の躯体とタワークレーンの支柱を固定するステーのすべてを、ダンパーを備えた水平控え装置で置き代えた場合、ダンパー部分が容易に変形する結果、連結部における変形量が大きくなり、十分な制振効果が得られなくなる可能性がある。また、大きな変形や荷重を許容し処理するには、大がかりなダンパーが必要となる。
【0006】
また、ダンパーを備えた水平控え装置に生じる変形量は、タワークレーンの状態(支柱の高さ)、入力地震波、及びダンパー特性によって定まる。即ち、これらの組合せ状況によって、変形量が大きく異なる。ここに、タワークレーンの支柱の高さは施工段階に応じて変化するため、支柱の変形量を算出するには、膨大な数の設計条件を満足させる必要があり、ダンパーの設計が非常に困難となる。
【0007】
また、上記の条件を網羅して設計したとしても、その結果は、当該施工条件に限定されたものであって、別の工事現場で利用できる可能性は低く、汎用性を持たせることは困難である。更に、ダンパー部分で大きな変形を許容させた場合、タワークレーンの耐荷重が低下するといった悪循環が生じ、実用的な設計に支障をきたしてしまう。
【0008】
本発明は、上記事実に鑑み、汎用性を有してタワークレーンの振動を抑制するタワークレーンの制振装置、及びタワークレーンの制振方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に記載の発明に係るタワークレーン制振装置は、タワークレーンと、前記タワークレーンの支柱と建物を連結し、前記支柱の変位を拘束するステーと、前記支柱の下部を支柱固定用の支持部に固定する基礎部と、前記ステーと前記基礎部との間に設けられ、前記ステーで拘束された前記支柱の外乱が生じた際の変形が最も大きくなる位置で、前記支柱と前記建物を連結し、前記支柱の振動エネルギーを吸収するエネルギー吸収装置と、を有することを特徴としている。
【0010】
請求項1に記載の発明によれば、タワークレーンの支柱と建物を連結するステーにより、タワークレーンの支柱の変位が拘束される。また、ステーで拘束された支柱の外乱が生じた際の変形が最も大きくなる位置で、タワークレーンの支柱と建物を連結するエネルギー吸収装置により、タワークレーンの支柱の振動エネルギーが吸収される。
即ち、ステーで建物に連結された支柱を、支柱の下部を支柱固定用の支持部に固定する基礎部とステーとの間に設けられたエネルギー吸収装置で連結することにより、タワークレーンの支柱の基礎部とステーとの間に生じる支柱の変形を、エネルギー吸収装置で抑制することができる。
【0011】
このとき、ステーにより支柱が建物に固定されるため、設計用入力地震波、ダンパー特性等の計算条件から、タワークレーンの支柱の変形量を求め、大きな変形が予測される位置にエネルギー吸収装置を取り付けることができる。
即ち、効果的にエネルギーを吸収することのできる取付け位置を容易に決定することができる。この結果、地震や強風等の外力、更には稼働時の重心位置の変化によって生じるタワークレーンの揺れを抑制することができる。
【0012】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のタワークレーン制振装置において、前記エネルギー吸収装置は、最上部の前記ステーより低い位置に設けられ、前記エネルギー吸収装置とは別のエネルギー吸収装置が、最上部の前記ステーより高い位置で、前記支柱に対し傾斜して取り付けられている。
【0013】
請求項2に記載の発明によれば、最上部のステーより低い位置に設けられたエネルギー吸収装置により、最上部のステーの下においてタワークレーンの支柱の振動エネルギーが吸収され、支柱の変位(変形)が抑制される。
また、最上部のステーより高い位置に設けられた別のエネルギー吸収装置は、支柱側を高くして、支柱に対し傾斜して取り付けることで、エネルギー吸収装置の取り付け位置を確保することができる。
【0014】
請求項3に記載の発明は、タワークレーンと、前記タワークレーンの支柱と建物を連結し、前記支柱の変位を拘束するステーと、前記ステーで拘束された前記支柱の外乱が生じた際の変形が最も大きくなる位置で、前記支柱と前記建物を連結し、前記支柱の振動エネルギーを吸収するエネルギー吸収装置と、を有し、前記エネルギー吸収装置は、最上部の前記ステーより低い位置に設けられていることを特徴としている。
【0015】
請求項3に記載の発明によれば、タワークレーンの支柱と建物を連結するステーによりタワークレーンの支柱の変位が拘束される。また、最上部のステーより低い位置に設けられたエネルギー吸収装置により、タワークレーンの支柱の振動エネルギーが吸収される。
即ち、ステーにより支柱が建物に固定され、エネルギー吸収装置は、最上部のステーの下部であり、例えば支柱の基礎部とステーとの間、若しくは、ステーとステーとの間に設けられている。このため、設計用入力地震波、及びダンパー特性から、容易に支柱の変形量を算出し、最適なエネルギー吸収装置の取り付け位置を決定することができる。
【0016】
請求項4に記載の発明は、請求項2又は3に記載のタワークレーン制振装置において、最上部の前記ステーより低い位置に設けられた前記エネルギー吸収装置は、前記支柱の高さに対応して、前記支柱、及び前記建物との連結位置を変更することを特徴としている。
【0017】
請求項4に記載の発明によれば、エネルギー吸収装置の取付け位置はタワークレーンの支柱の高さに対応して決定される。即ち、タワークレーンの支柱の高さとステーによる支柱の連結位置が決定されれば、設計用入力地震波、及びダンパー特性から、容易にエネルギー吸収装置の取付け位置を決定することができる。
具体的には、工事の進行に伴い作業階が高くなったとき、タワークレーンの支柱高さも高くなる。このとき、ステーによる連結位置及びエネルギー吸収装置の取付け位置を、タワークレーンの支柱高さに対応して高くすることで、支柱の変形を効果的に抑制することができる。
この結果、地震や強風等の外力、更には稼働時の重心位置の変化によって生じるタワークレーンの揺れを、効果的に抑制することができる。
【0018】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4のいずれか1項に記載のタワークレーン制振装置において、前記エネルギー吸収装置は、外力を受けて変形し前記支柱の振動エネルギーを吸収するダンパーであり、前記ダンパーの一方の端部は前記支柱に固定されたステー枠にピン接合され、他方の端部は前記建物の躯体に固定されたブラケットにピン接合されていることを特徴としている。
【0019】
請求項5に記載の発明によれば、両端がピン接合されたダンパーによりタワークレーンの支柱の振動エネルギーが吸収される。
即ち、タワークレーンの支柱に固定されたステー枠にダンパーの一方の端部が接合され、ダンパーの他方の端部が建物の躯体に固定されたブラケットに接合される。これにより、タワークレーンの支柱の振動エネルギーが、ダンパーの変形により吸収され、タワークレーンの揺れが抑制される。また、ピンの着脱により、容易にダンパーの取付け、取外しができる。
【0020】
請求項6に記載の発明に係るタワークレーン制振方法は、タワークレーンの支柱を自立させ、前記支柱をクライミングする前記タワークレーンを稼働状態とする工程と、建物の躯体と前記支柱を、前記支柱の変位を拘束するステーで連結する工程と、前記建物の躯体と前記支柱を、前記支柱の下部を支柱固定用の支持部に固定する基礎部と前記ステーとの間において、前記ステーで拘束された前記支柱の外乱が生じた際の変形が最も大きくなる位置で、前記支柱の振動エネルギーを吸収するエネルギー吸収装置で連結する工程と、を有することを特徴としている。
【0021】
請求項6に記載の発明のタワークレーン制振方法によれば、タワークレーンの支柱を自立可能な高さ以上に高くする場合には、先ず、自立して稼働状態とされたタワークレーンの支柱と建物がステーで連結される。更に、建物の躯体とタワークレーンの支柱が、ステーで拘束された支柱の外乱が生じた際の変形が最も大きくなる位置で、振動エネルギーを吸収するエネルギー吸収装置で連結される。続いて、ステーとエネルギー吸収装置で連結された支柱の上部に、タワークレーンが自ら継足し用支柱を継足して、継足した支柱をクライミングする。
【0022】
ここに、タワークレーンの支柱は建物の躯体にステーで固定されているため、設計用入力地震波、及びダンパー特性から、容易に、タワークレーンの支柱の基礎部とステーとの間、若しくはステーとステーとの間の変形量を求めることができ、最適なエネルギー吸収装置の取り付け位置を決定することができる。
この結果、地震や強風等の外力、更には稼働時の重心位置の変化によって生じるタワークレーンの揺れを抑制することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明は、上記構成としてあるので、汎用性を有してタワークレーンの振動を抑制するタワークレーン制振装置、及びタワークレーン制振方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の第1実施形態に係るタワークレーン制振装置の基本構成を示す側面図である。
図2】(A)は、本発明の第1実施形態に係るタワークレーン制振装置のステーの接合部を示す図1のA−A線断面図であり、(B)は、柱とステーを接合するブラケットの部分拡大図である。
図3】(A)は、本発明の第1実施形態に係るタワークレーン制振装置のダンパーステーの接合部を示す図1のB−B線断面図であり、(B)は、柱とステーを接合するブラケットの部分拡大図である。
図4】(A)〜(F)は、本発明のタワークレーン制振装置における支柱高さとステーの取付け位置とを模式的に示す側面図である。
図5】(A)〜(F)は、本発明のタワークレーン制振装置における支柱高さとダンパーステーの取付け位置とを模式的に示す側面図である。
図6】本発明の第1実施形態に係るタワークレーン制振装置における、ステーの取付け高さとダンパーステーの取付け高さにより決定される支柱の変形を模式的に示す側面図である。
図7】本発明の第1実施形態に係るタワークレーン制振装置のステーの他の接合部を示す図1のA−A線断面図である。
図8】本発明の第1実施の形態に係るタワークレーン制振部のダンパーステーの他の接合構造を示す図1のB−B線断面図である。
図9】本発明の第2実施形態に係るタワークレーン制振装置の基本構成を示す側面図である。
図10】本発明の第2実施の形態に係るタワークレーン制振装置における、2個のステーの取付け高さと2個のダンパーステーの取付け高さにより決定される、支柱の変形を模式的に示す側面図である。
図11】本発明の第3実施の形態に係るタワークレーン制振装置の基本構成を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
(第1実施形態)
図1図7を用いて、第1実施形態に係るタワークレーン制振装置10について説明する。図1の側面図、図2図3の断面図に示すように、第1実施形態に係るタワークレーン制振装置10は、タワークレーン12のマスト(支柱)14を建物16の躯体に接合するつなぎ梁(ステー)18、及びダンパーステー20を有している。また、図2図3の断面図に示すように、ステー18及びダンパーステー20の位置は、支柱14の高さに対応して変更される。
【0026】
タワークレーン12は、建設中の建物16の躯体に沿って鉛直方向へ設けられ平面視が四角形の支柱14と、支柱14に昇降可能に取り付けられ、建物16へ建設資材類を持ち上げるクレーン部24と、支柱14の下部を支柱固定用の支持部23に固定する基礎部22と、を有している。
ここに、タワークレーン12は、マストクライミング方式のタワークレーンであり、基礎部22は最初に設置した位置のまま動かさず、クレーン部24を支持する支柱14に継足し用の支柱14を自ら上部に継ぎ足して、クレーン部24が、継ぎ足された支柱14をクライミングする構成である。
【0027】
タワークレーン12の支柱14は、鉛直方向に細長い形状とされ、外力を受けたとき、ある程度柔軟に変形できる構成とされているために、比較的長周期で揺れ易い。
このため、タワークレーン12は、製品毎に予め定められている所定の高さ(自立高さ)の範囲内では、自立した状態で揚重作業が可能である。しかしながら、自立高さを超える範囲では、地震や強風等の外力、更には稼働時の重心位置の変化等によって揺れが大きくなり許容範囲を超えるため、支柱14を、建物の躯体にステー18で連結し、揺れを許容範囲に収めている。
なお、支柱14を固定する支持部23は地上面とは限らず、支柱14の基礎部22が固定可能であれば建物の中間階でもよいし、地中であってもよい。
【0028】
ステー18は、図2(A)に示すように、両端部にピン接合部32が設けられた鋼製棒であり、ピン接合部32には、図示しないピン孔が設けられている。ステー18は、支柱14を囲むステー枠30と建物16の柱26の間に設けられ、それらを連結している。
ステー枠30は、図2(A)に示すように、平面視が四角形の支柱14の周囲を囲む鋼製のフレーム枠であり、四隅にはステー18と接合されるピン接合部33が2箇所ずつ設けられている。ステー枠30のピン接合部33にも、図示しないピン接合用のピン孔が設けられている。これにより、ステー枠30のピン接合部33にステー18のピン接合部32を重ね、ピン孔に図示しないピンを挿入してピン接合することができる。
なお、ステー枠30の構成は一例であり、ステー枠としての機能を果たすことができれば、本構成に限定されない。
【0029】
ブラケット28は、図2(B)の拡大図に示すように鋼製の平板又はフレーム枠で形成され、一方の端部が建物16の柱26に溶接やボルト等で接合され、柱26から突出た他方の端部には、2箇所にピン接合部34が設けられ、ピン接合部34にはそれぞれピン孔35が設けられている。これにより、ブラケット28のピン接合部34にステー18のピン接合部32を重ね、ピン孔35に図示しないピンを挿入してピン接合することができる。
なお、ブラケット28の構成は一例であり、ブラケットとしての機能を果たすことができれば、本構成に限定されない。
【0030】
ステー18は4本が1セットとして使用され、一方の端部のピン接合部32が、支柱14を囲むステー枠30の四隅のピン接合部32とピン接合され、他方の端部のピン接合部32が、建物16の2本の柱26に固定されたブラケット28と2本ずつピン接合されている。これにより、支柱14の水平方向の移動を拘束することができる。
なお、ステー18の接合方法は、両端をピン接合する方法について説明したが、これに限定されることはなく、両端を溶接等による固定接合としてもよいし、一端がピン接合、他端が溶接等による固定接合でもよい。
【0031】
ダンパーステー20は、高さ方向がステー18の下方(ステー18と基礎部22の間)に設けられ、タワークレーン12の支柱14と建物16の躯体を接合している。
図3(A)に示すように、ダンパーステー20は、鋼製棒38の一端に、軸線を一致させてエネルギー吸収装置としてのダンパー(オイルダンパー)36が接続された構成である。オイルダンパー36の一方の端部、及び鋼製棒38の一方の端部には、ステー18と同じ構成のピン接合部32が設けられている。
【0032】
ダンパーステー20は、ステー18と同じように4本が1セットとして使用され、一端が支柱14を囲むステー枠30の四隅のピン接合部33と、それぞれを重ね合わせてピン接合され、他端が建物16の2本の柱26に固定されたブラケット28のピン接合部33と、それぞれを重ね合わせてピン孔35を利用して2本ずつピン接合されている。
これにより、地震時等の支柱14の振動エネルギーがオイルダンパー36で吸収され、支柱14の振動(変形)が抑制される。
【0033】
なお、エネルギー吸収装置として使用可能なダンパーは、オイルダンパー36に限定されることはなく、金属系履歴エネルギー吸収型ダンパー(鋼材系ダンパー)、粘弾性体を用いたダンパー、及び摩擦ダンパー、及び回転摩擦ダンパーなど、タワークレーン12の支柱14と建物16の躯体との変形差を利用してエネルギー吸収を行うことが出来るダンパーであれば、オイルダンパー36以外の方式のダンパーでも使用することが出来る。
【0034】
また、建物16の躯体側の接合部は、柱26に固定されたブラケット28を利用する例で説明した。しかし、この例に限定されることはなく、躯体の梁等他の部材を利用してもよい。更に、ステー枠30が囲む支柱14の断面形状は、平面視で四角形でなく丸形等の他の形状であってもよい。
【0035】
次に、ステー18及びダンパーステー20の取付け位置(高さ)について説明する。
図4の側面図の(A)〜(F)は、作業ステップ毎の支柱14の高さを示し、建物16の工事の進行(作業階の上昇)に対応して、支柱14の高さを高くしている。図4(B)〜(F)は、支柱14へのステー18の取付け位置を模式的に示している。ここに、実線の三角形はステー18を取付けている状態を、破線の三角形はステー18を取外している状態を示している。
図5の側面図の(A)〜(F)は、同じく作業ステップ毎の支柱14の高さを示し、図5(B)〜(F)は、支柱14へのダンパーステー20の取付け位置を模式的に示している。ここに、実黒塗りの三角形はダンパーステー20が取付けられている状態を、実線の三角形はステー18を取り付けている状態を、破線の三角形はステー18及びダンパーステー20のいずれも取り外している状態を示している。
【0036】
先ず、図4(A)及び図5(A)に示すように、タワークレーン12の支柱14の先端位置hA(支持部23からの高さL1)がタワークレーン12の製品として定められた自立可能な高さL1以下の場合においては、本実施形態で説明したステー18やダンパーステー20は使用しない。支柱14の高さがL1と低いため変形量が少なく、基礎部22の支持による自立で作業に支障がないためである。
【0037】
次に、図4(B)及び図5(B)に示すように、支柱14の先端位置hBが、自立可能な高さL1を高さL2だけ超えたときには、ステー18、及びダンパーステー20を用いて支柱14を建物16の躯体に固定する。ここに、ステー18は連結位置S1(支持部23からの高さh1)に取付け、ダンパーステー20は、ステー18より下方、即ちステー18と基礎部22の間の連結位置S0(支持部23からの高さh0)に取り付ける。
【0038】
ここで、図6を用いて、ステー18及びダンパーステー20により支柱14の振動を抑制する仕組みについて説明する。
タワークレーン12に外力等が作用していないときは、支柱14は実線で示すように直線状に直立した状態で、図示しない建物の躯体と連結されている。ステー18の連結位置S1は、想定される地震時等における支柱14の変形時の許容量や、変形時に支柱14に発生する応力、タワークレーン12の設置高さ(基礎部22の地表面からの高さ)等を考慮して決定される。
【0039】
即ち、連結位置S1において、ステー18で支柱14を図示しない柱や梁等の躯体に連結した場合、地震等の外力や作業時の重心位置の移動などが作用したときには、支柱14の変形量は容易に計算で求めることができ、例えば破線14Aで示す形状に変形する。即ち、基礎部22とステー18の位置を固定することにより、基礎部22とステー18の間、及びステー18の上部の支柱の変形を容易に算出できる。ここに、破線14Aの形状は、説明のため誇張して描いている。
【0040】
次に、ステー18と基礎部22の間であり、破線14Aの撓みが最も大きくなる連結位置S0に、ダンパーステー20を連結させた状態の支柱14の変形量を計算で求める。ここに、ダンパーステー20のエネルギー吸収効果は、その変形が大きい程より大きな効果を発揮するので、基礎部22とステー18の間等の変形が大となる位置に設置するのが好ましい。
ダンパーステー20を連結位置S0に連結させ、支柱14の変形エネルギーをダンパーステー20に吸収させた支柱14の形状を、図6に重ねて一点鎖線14Bで示す。支柱14の撓み量が小さくなり、変形が抑制されているのが分かる。
【0041】
以上説明した位置にステー18及びダンパーステー20を連結した後、タワークレーン12は自分で継足し用の支柱14を上部に継足し、クレーン部24が支柱14を登る(クライミングする)。
ここに、1回当たりのクライミング高さL2の目安は、建物16の高さ方向の作業区切りとなる節(例えば3層分等)、若しくは節の倍数とするのが望ましい。
【0042】
なお、クレーン部24の支柱14のクライミングは、ステー18の取り付け前に一部前倒しで行ってもよい。即ち、支柱14の上部に、継足し用の支柱14を1本又は2本程度継足して、継足した分だけクレーン部24にクライミングさせておいてもよい。これにより、クレーン部24が上方へ移動するため、支柱へのステー18の取り付け作業が容易になる。後述する他の工程においても同様に、一部のクライミングを、ステー18及びダンパーステー20との連結前に行っておいてもよい。
【0043】
これにより、タワークレーン12の支柱14と建物16を連結するステー18により、タワークレーン12の支柱14の変位が拘束される。また、ステー18より低い位置で、タワークレーン12の支柱14と建物16を連結するダンパーステー20により、タワークレーン12の支柱14の振動エネルギーが吸収される。
これにより、先端位置hBの支柱14の振動を効果的に抑制することができる。
【0044】
続いて、タワークレーン12を更に高くする場合について説明する。
図4(C)及び図5(C)に示すように、タワークレーン12を更に高さL3だけ高くする場合には、ステー18の位置及びダンパーステー20の位置も、支柱14の高さに対応させて高くする。
【0045】
具体的には、ステー18を、連結位置S2(支持部23からの高さh1+h2)に移動させ、ダンパーステー20を連結位置S1(支持部23からの高さh1)に移動させる。
ステー18の連結位置S2やダンパーステー20の連結位置S1は、上述したように、想定される地震時等における支柱14の変形の許容量や、変形時に支柱14に発生する応力、作業高さ(基礎部22の地表面からの高さ)等を考慮して決定される。
【0046】
このとき、ステー18は、連結位置S1に取り付けたステー18を、連結位置S1から取り外し、連結位置S2に取付けてもよいし、別の新たなステー18を用いてもよい。別のステー18を用いる場合には、連結位置S1のステー18は、ピンを抜いてピン接合部を切り離しておく。これは、連結位置S1のステー18をそのまま残せば、建物16と支柱14の接合強度が高くなり過ぎて、支柱14の柔軟性が失われ、地震時に支柱14に発生する応力が大きくなり過ぎるためである。
また、ブラケット28及びステー枠30は、工事の終了までそのまま残しておく。
なお、本実施形態では、ブラケット28及びステー枠30は、工事の終了までそのまま残しておく方式で説明するが、これに限定されるものではなく、工事の状況に応じて随時撤去する方法でもよい。
【0047】
ダンパーステー20を連結位置S1に移動させるに際しては、ステー18が使用した連結位置S1のブラケット28及びステー枠30を、そのまま利用することができる。また、ダンパーステー20は、連結位置S0に取り付けたダンパーステー20を、連結位置S0から取り外し、連結位置S1に取付けてもよいし、別の新たなダンパーステー20を用いてもよい。別のダンパーステー20を用いる場合には、連結位置S0のダンパーステー20は、ピンを抜いてピン接合部を切り離しておくのが望ましい。これは、ステー18と同様に、連結位置S0のステー18をそのまま残せば、建物16と支柱14の接合強度が高くなり過ぎて、支柱14の柔軟性が失われ、地震時に支柱14に発生する応力が大きくなり過ぎるためである。なお、設置条件により柔軟性が失われない場合には、そのまま継続して使用してもよい。
これにより、先端位置hCの支柱14の振動を効果的に抑制することができる。
【0048】
続いて、タワークレーン12を更に高くする場合について説明する。
図4(D)及び図5(D)に示すように、タワークレーン12を更に高さL4だけ高くする場合には、ステー18の位置及びダンパーステー20の位置も、支柱14の高さに対応させて高くする。
【0049】
具体的には、ステー18を連結位置S3(支持部23からの高さh1+h2+h3)に移動させ、ダンパーステー20を連結位置S2(支持部23からの高さh1+h2)に移動させる。
ステー18の連結位置S3やダンパーステー20の連結位置S2は、上述したように、想定される地震時等における支柱14の変形の許容量や、変形時に支柱14に発生する応力、作業高さ(基礎部22の地表面からの高さ)等を考慮して決定される。
【0050】
このとき、ステー18は、連結位置S2に取り付けたステー18を、連結位置S2から取り外し、連結位置S3に取付けてもよいし、別の新たなステー18を用いてもよい。別のステー18を用いる場合には、上述したように、連結位置S2のステー18は、ピンを抜いてピン接合部を切り離しておく。
【0051】
ダンパーステー20を連結位置S2に移動させるに際しては、ステー18が使用した連結位置S2のブラケット28及びステー枠30を、そのまま利用することができる。また、ダンパーステー20は、連結位置S1に取り付けたダンパーステー20を、連結位置S1から取り外し、連結位置S2に取付けてもよいし、別の新たなダンパーステー20を用いてもよい。別のダンパーステー20を用いる場合には、上述したように、連結位置S1のダンパーステー20は、ピンを抜いてピン接合部を切り離しておく。
これにより、先端位置hDの支柱14の振動を効果的に抑制することができる。
【0052】
次に、タワークレーン制振方法について説明する。
図1図5に示すように、タワークレーン制振方法は、先ず、最初の工程でタワークレーン12の支柱14を、支柱14の基礎部22を用いて支持部23に自立させ、継足し用の支柱14を自ら上部に継足してクライミングする機能を備えたタワークレーン12を稼働状態とする。
【0053】
次の工程では、タワークレーン12が支柱14をクライミングする前に、建物16の躯体と支柱14を、支柱14の変位を拘束するステー18で連結する。ステー18の連結方法については既に説明済みであり、詳細な説明は省略する。これにより、自立して稼働状態とされたタワークレーン12の支柱14と建物16がステー18で連結される。
【0054】
最後の工程では、ステー18の下方において、建物16の躯体と支柱14を、支柱14の振動エネルギーを吸収するダンパーステー20で連結する。ダンパーステー20の連結方法については既に説明済みであり、詳細な説明は省略する。これにより、支柱14の振動エネルギーがダンパーステー20で吸収され、支柱14の振動が抑制される。
なお、支柱14をステー18及びダンパーステー20で連結する前に、継足し用の支柱14の一部を上部に継足して、予めクレーン部24を所定高さだけクライミングさせておいてもよい。
【0055】
以上説明したように、タワークレーン12の支柱14を、支柱14の高さに応じた適切な位置でステー18及びステー18の下方のダンパーステー20で連結することにより、地震や強風等の外力、更には稼働時の重心位置の変化によって支柱14に揺れが生じても、ステー18及びオイルダンパー36により、支柱14の揺れを効果的に抑制することができる。
【0056】
なお、本実施形態では、ステー18及びダンパーステー20を、それぞれ4本を1セットとして使用しる構成について説明した。しかし、これに限定されることはなく、4本を超えて1セットとしても良いし、4本未満で1セットとしても良い。
図7図8を用いて、ステー18及びダンパーステー20の3本を1セットとして使用した例について説明する。
【0057】
図7のステー取付け図に示すように、ステー46は直状の鋼製棒(例えば中空の鋼管等)とされ、第1実施形態で説明したステー18と同じ構成である。
ステー枠44は、平面視が四角形の支柱14の周囲を囲む鋼製のフレーム枠であり、建物側の2つの角部には、ステー46と接合されるピン接合部33が設けられている。ステー枠44のピン接合部33にも、ピン接合用のピン孔が設けられている。これにより、ステー枠44のピン接合部33にステー46のピン接合部32を重ね、ピン孔に図示しないピンを挿入してピン接合することができる。
なお、ステー46の構成は一例であり、ステーとしての機能を果たすことができれば、本構成に限定されない。
【0058】
ブラケット42は、第1実施形態で説明したブラケット28と同じ鋼製の平板又はフレーム枠であり、一方の端部が建物16の柱26に溶接やボルト等で接合され、柱26から突出た他方の端部には、2箇所にピン接合部34が設けられ、ピン接合部34にはそれぞれピン孔が設けられている。これにより、ブラケット42のピン接合部34にステー18のピン接合部32を重ね、ピン孔35に図示しないピンを挿入してピン接合することができる。
なお、ブラケット42の構成は一例であり、ブラケットとしての機能を果たすことができれば、本構成に限定されない。
【0059】
3本のステー46は、一方の端部のピン接合部32が、支柱14を囲むステー枠44の2つの角部のピン接合部33とピン接合され、他方の端部のピン接合部32が、建物16の2本の柱26に固定されたブラケット42とピン接合されている。これにより、支柱14の移動を拘束することができる。
【0060】
図8のダンパーステー取付け図に示すように、ダンパーステー48は、第1実施形態で説明したダンパーステー20と同じように、直状の鋼製棒38の一端に、軸線を一致させてオイルダンパー36が接続された構成である。ダンパーステー48の両端部にはピン接合部32が設けられている。
【0061】
ダンパーステー48は、ステー46と同様に3本が1セットとして使用され、一端が支柱14を囲むステー枠44の2つの角部のピン接合部33と重ね合わせてピン接合され、他端が建物16の2本の柱26に固定されたブラケット42のピン接合部34と重ね合わせ、ピン孔を利用して2本と1本がピン接合されている。
これにより、支柱14の水平方向の移動を制限し、支柱14の振動を効果的に抑制することができる。
【0062】
(第2実施形態)
図4図5図9図10を用いて、本発明の第2実施形態に係るタワークレーン制振装置50について説明する。タワークレーン制振装置50は、最上部のステー18の下方に別のステー52を設けた点において、第1実施形態に係るタワークレーン制振装置10と相違する。相違点を中心に説明する。
【0063】
図4(E)、図5(E)及び図9に示すように、タワークレーン12の支柱14を更にL5だけ高くし、支柱14が1箇所のステー18で支持できる範囲を超えた場合には、ステーの数を増やす必要がある。
具体的には、ステー18を連結位置S4(支持部23からの高さh1+h2+h3+h4)に固定するのみでなく、ステー18の下方の連結位置S1(支持部23からの高さh1)にステー52を追加する。
ここに、連結位置S1及び連結位置S4は、上述したように、想定される地震時等における支柱14の変形(変位)の許容量や、変形時に支柱14に発生する応力、タワークレーン12の設置高さ(基礎部22の地表面からの高さ)等を考慮して決定される。
【0064】
このとき、ステー18は、連結位置S3に取付けたステー18を取り外して、連結位置S4で使用してもよいし、別の新たなステー18を連結位置S4に取付けてもよい。別のステー18を取付ける場合には、連結位置S3点のステー18は、上述したようにピンを抜いてピン接合部を切り離しておく。
【0065】
また、ステー52は、ステー18と同じ構成である。連結位置S1において当初使用したステー18がピンを抜いた状態で残してあれば、再度ピンを挿入してステー52として使用することができる。当初使用したステー18が残されていてない場合には、新たなステー52を、連結位置S1のブラケット28及びステー枠30を利用して取付ける。
これにより、支柱14の上下方向の2箇所が、ステー18とステー52で連結される。
【0066】
次に、ダンパーステー20を、連結位置S3(支持部23からの高さh1+h2+h3)に取付ける。このとき、ダンパーステー20の高さ方向は、ステー18とステー52の間に設けられる。
連結位置S3のブラケット28及びステー枠30は、ステー18で使用したものを再使用することができる。このとき、ダンパーステー20は、連結位置S2に取付けたダンパーステー20を取り外して、連結位置S3に取付けてもよいし、別の新たなダンパーステー20を取付けてもよい。別のダンパーステー20を用いる場合には、連結位置S2のダンパーステー20は、上述したように、ピンを抜いてピン接合部を切り離しておく。
これにより、先端位置hEの支柱14の振動を効果的に抑制することができる。
【0067】
次に、図4(F)、図5(F)及び図10を用いて、タワークレーン12を更にL6だけ高くした場合について説明する。
支柱14の先端位置hFまでの高さを更に高くした場合には、2箇所のステー18、52の位置を変更するのみでなく、ダンパーステー20も2個に増やす必要がある。即ち、ダンパーステー20を連結位置S4(支持部23からの高さh1+h2+h3+h4)に固定するのみでなく、2個目のダンパーステー54を連結位置S4の下方向の連結位置S1に連結する。
【0068】
2箇所のステー18、52の連結位置S5、S2、及び2箇所のダンパーステー20の連結位置S4、S1は、想定される地震時等における支柱14の変形の許容量や、変形時に支柱14に発生する応力、タワークレーン12の設置高さ(基礎部22の地表面からの高さ)等を考慮して決定される。
【0069】
このとき、2箇所のステー18、52は、連結位置S4、S1のステー18、52を取り外して、連結位置S5、S2で使用してもよいし、別の新たなステー18、52を連結位置S5に使用してもよい。別のステー18、52を用いる場合には、連結位置S4、S1のステー18は、上述したように両端部のピンを抜いてピン接合部を切り離しておく。
【0070】
次に、ダンパーステー20を、連結位置S4に連結させる。更に、ダンパーステー54を連結位置S1(高さh1)に連結させる。このとき、連結位置S4のブラケット28及びステー枠30は、ステー18を取外したものが使用できる。また、連結位置S4のダンパーステー20は、連結位置S3から取外して使用してもよいし、別の新たなダンパーステー20を使用してもよい。別のダンパーステー20を使用する場合には、連結位置S3のダンパーステー20はピンを抜いておけばよい。なお、設置条件により支柱14の柔軟性が失われない場合には、そのまま継続して使用してもよい。
【0071】
次に、図10を用いて、2箇所のステー18、52、及び2箇所のダンパーステー20、54により支柱14の振動を抑制する仕組みを説明する。
図10に示すように、支柱14がステー18、52で建物16の躯体に連結され、支柱14の振動エネルギーがダンパーステー20、54で吸収され、支柱14の変形が抑制される。
【0072】
即ち、タワークレーン12に外力等が作用していないときは、支柱14は実線で示すように直線状に直立した状態で、図示しない建物の躯体と連結されている。支柱14が2箇所のステー18、52のみで連結され、ダンパーステー20、54が連結されていない場合には、地震等の外力を受けたとき、支柱14は実線で示す状態からから破線15Aで示すように変形する。この変形を抑制するため、ダンパーステー20、54を支柱14の変形が大きい連結位置S4、S1に連結する。これにより、支柱14の変形が、オイルダンパー36でエネルギーが吸収され、一点鎖線15Bで示すように、変形量を小さくすることができる。
【0073】
即ち、基礎部22とステー52の間が極値となるように曲げられる連結位置S1点において、ダンパーステー54で支柱14を図示しない柱に連結した場合、円弧状に大きく撓んだ支柱15Aは、ダンパーステー54でエネルギーが吸収され、一点鎖線15Bで示すように、撓み量が小さくなり変形が抑制される。同様に、ステー18とステー52の間が極値となるように曲げられる連結位置S4点において、ダンパーステー20で支柱14を図示しない柱に連結した場合、円弧状に大きく撓んだ支柱15Aは、ダンパーステー20でエネルギーが吸収され、一点鎖線15Bで示すように、撓み量が小さくなり変形が抑制される。
【0074】
上述したように、ダンパーステー20、54は、支柱14の高さに対応して、支柱14、及び建物16との連結位置を変更する。このとき、タワークレーン12の支柱14の高さとステー18、52による固定点の位置が決定されれば、設計用入力地震波、及びダンパー特性から、容易に、エネルギー吸収装置の取付け位置を算出することができる。
【0075】
具体的には、タワークレーン12の支柱高さとステー18、52による固定点の位置が高いときは、ダンパーステー20、54の取付け位置を高くし、タワークレーン12の支柱14の高さとステー18による固定点の位置が低いときは、ダンパーステー20、54の取付け位置を低くする。
この結果、地震や強風等の外力、更には稼働時の重心位置の変化によって生じるタワークレーン12の揺れを低減することができる。
【0076】
また、ダンパーステー20、54は、外力を受けて変形し振動エネルギーを吸収するダンパーを有している。ダンパーステー20、54の一方の端部は支柱に固定されたステー枠にピン接合され、他方の端部は建物の躯体に固定されたブラケットにピン接合されている。これにより、タワークレーン12の支柱14の振動エネルギーが吸収される。
これにより、先端位置hFの支柱14の振動を効果的に抑制することができる。
【0077】
以上説明したように、ステー18、52とダンパーステー20、54を併用し、ステー18、52による適度な変形拘束効果を活用することで、ダンパーステー20、54に入力される変形が、どのような地震波に対しても、想定される範囲に納まるようにすることが出来る。よって、ダンパーステー20、54の設計条件を単純化することが可能となり、ダンパーステー20、54の実用的な設計が可能となる。更に、設計条件を単純化出来るため、他の種々の工事条件でも使用可能な汎用システムとすることが可能となる。
【0078】
また、ステー18、52間の間隔を調整することで、その中間部に生じるタワークレーン12の支柱14の変形量をコントロールできる。エネルギー吸収を大きく取りたい場合は、複数のダンパーステーをステー18、52間に配置したり、ステー18、52の間隔を構造上許容できる範囲内で大きくして、その中間部に生じるタワークレーン12の支柱14の変形量を大きくすればよい。
【0079】
なお、ステー18、52、及びダンパーステー20、54の数は、それぞれ2個までについて記載した。しかし、これに限定されることはなく、支柱14の高さ、支柱14の構成等により、それぞれの数を3個以上としてもよい。
【0080】
(第3実施形態)
図11を用いて、本発明の第3実施形態に係るタワークレーン制振装置60ついて説明する。タワークレーン制振装置60は、最上部のステー18の上方に、ダンパーステー54を設けた点において、第1実施形態に係るタワークレーン制振装置10と相違する。相違点を中心に説明する。
【0081】
図11に示すように、ステー18の上方に設けられたダンパーステー62は、一端が建物16の躯体に取り付けられたブラケット56の接合部とピン接合され、他端が支柱14の上部でありクレーン部24の下方に取り付けられたステー枠58の接合部とピン接合されている。また、ステー18の下方には、ダンパーステー20が設けられている。ステー18とダンパーステー20は、いずれも第1実施形態で説明済みであり、詳細な説明は省略する。
【0082】
エネルギー吸収装置としてのダンパーステー62は、第1実施形態に係るダンパーステー20と同じ構成である。即ち、直状の鋼製棒の一端に外力を受けて変形し振動エネルギーを吸収するダンパーが接続され、両端部にピン接合部が設けられている。ダンパーステー62の一方の端部は支柱14に固定されたステー枠58にピン接合され、鋼製棒の他方の端部は建物16の躯体に固定されたブラケット56にピン接合されている。
【0083】
ブラケット56とステー枠58は、いずれもダンパーステー62とピン接合する接合部が傾斜して設けられている点を除いて、第1実施形態で説明したブラケット28及びステー枠30と同じ構成であり、詳細な説明は省略する。
【0084】
ダンパーステー62は、支柱14側を躯体側より高くして、支柱14に対して傾斜させ、端部をブラケット56とステー枠58に連結している。これにより、支柱14上部の変形を抑制することができる。この結果、クレーン部24の揺れが抑制される。ここに、支柱14上部の変形を効果的に抑制するには、支柱14に対するダンパーステー54の傾斜角度は45度程度とするのが望ましい。
【0085】
上述したように、最上部のステー18の上部にダンパーステー62を設けることで、支柱14上部の変形を効果的に抑制することができる。また、最上部のステー18の下方にはダンパーステー20が水平方向に取り付けられている。
これにより、タワークレーン12の変形(変位)を、ステー18を挟んで設けられたダンパーステー20、及びダンパーステー62で抑制することができる。
【0086】
なお、本実施形態では、ダンパーステー62を第1実施形態に係るタワークレーン制振装置10に取付ける例について記載した。しかし、これに限定されることはなく、第2実施形態に係るタワークレーン制振装置50の最上部のステー18の上部に設けてもよい。
【符号の説明】
【0087】
10 タワークレーン制振装置
12 タワークレーン
14 支柱(タワークレーン)
16 建物
18 ステー
20 ダンパーステー(エネルギー吸収装置)
26 柱(建物の躯体)
28 ブラケット
30 ステー枠
36 オイルダンパー(ダンパー)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11