特許第6376722号(P6376722)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6376722
(24)【登録日】2018年8月3日
(45)【発行日】2018年8月22日
(54)【発明の名称】電池電圧検出回路
(51)【国際特許分類】
   G01R 19/00 20060101AFI20180813BHJP
【FI】
   G01R19/00 B
【請求項の数】2
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-28212(P2013-28212)
(22)【出願日】2013年2月15日
(65)【公開番号】特開2014-157084(P2014-157084A)
(43)【公開日】2014年8月28日
【審査請求日】2015年12月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】715010864
【氏名又は名称】エイブリック株式会社
(72)【発明者】
【氏名】佐野 和亮
【審査官】 小川 浩史
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2010/0134132(US,A1)
【文献】 特開2001−178008(JP,A)
【文献】 特開2001−201522(JP,A)
【文献】 特開2010−78390(JP,A)
【文献】 特開2002−357624(JP,A)
【文献】 特開2007−40842(JP,A)
【文献】 特開2007−218672(JP,A)
【文献】 特開2012−132852(JP,A)
【文献】 欧州特許出願公開第2306626(EP,A1)
【文献】 特開2009−150867(JP,A)
【文献】 特開2010−181168(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 19/00−19/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
直列に接続された複数の電池の電圧を監視するための電池電圧検出回路であって、
フライングキャパシタと、
前記フライングキャパシタを前記複数の電池に順次接続するマルチプレクサスイッチと、
前記フライングキャパシタの電圧を比較電圧と比較する電圧検知手段と、
前記フライングキャパシタの一方の端子と基準電位端子の間に接続される第一の基準電位接続手段と、
前記フライングキャパシタの他方の端子と前記基準電位端子の間に接続される第二の基準電位接続手段と、
前記マルチプレクサスイッチと前記第一の基準電位接続手段と前記第二の基準電位接続手段を制御する制御回路と、
を備え、
前記制御回路は、前記マルチプレクサスイッチをオフにした後、前記第一の基準電位接続手段と前記第二の基準電位接続手段をオンし、
前記第一の基準電位接続手段が接続された前記フライングキャパシタの端子電位が基準電位と同電位になると、前記第二の基準電位接続手段をオフするように制御する事を特徴とする電池電圧検出回路。
【請求項2】
前記フライングキャパシタと前記電圧検知手段の間に、前記制御回路で制御される第一のスイッチを、さらに備えた事を特徴とする請求項1に記載の電池電圧検出回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウム電池などの二次電池の保護回路に関し、特にマルチプレクサを用いた保護回路の電池電圧検出回路に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、リチウム電池などの2次電池には、過充電や過放電などから保護するために保護回路が用いられる。保護回路は電池の電圧を検知するための電圧検知手段を備えるが、直列に接続された複数の電池を保護する場合には、それぞれの電池に対応する複数の電圧検知手段が必要となり、回路の大規模化・高耐圧化が行われている。
【0003】
図2に従来のマルチプレクサを用いた電池電圧検出回路の回路図を示す。従来のマルチプレクサを用いた電池電圧検出回路は、電池電源装置11と、電池11aと、スイッチ21、22、23、24と、フライングキャパシタ28、29と、アンプ25と、A/D変換機26と、制御装置30を備えている。スイッチ21は常開接点21a、21bで、スイッチ23は常開接点23a、23bで、スイッチ24は常開接点24a、24bで構成される。
【0004】
電池11aの電圧を検出するに際して、スイッチ21〜24がオフ(開)状態とされる。このような状態で、まず、スイッチ21がオン状態とされ、常開接点21a、21bがそれぞれ閉状態とされる。これにより、電池11aにおける電圧が、直列接続されたフライングキャパシタ28、29に印加され電荷が蓄積される。
【0005】
スイッチ21が、所定時間にわたってオンされた後、スイッチ21はオフ状態とされ、常開接点21a、21bが、それぞれ開状態になる。これにより、フライングキャパシタ28、29には、電池11aの電圧に相当する電荷が蓄積される。
【0006】
その後、スイッチ22とスイッチ24がオンされ、スイッチ22のオンによりフライングキャパシタ28、29の接続点がグラウンドに接続された状態になり0Vに固定される。また、スイッチ24がオンされて、常開接点24a、24bがそれぞれ閉状態になることにより、アンプ25の反転入力端子がアンプ25の出力と同電位(0V)に固定され、非反転入力端子の電圧がグラウンド(0V)に固定される。
【0007】
その後、スイッチ23がオンされ、常開接点23a、23bがそれぞれ閉状態になる。これにより、フライングキャパシタ28、29が、それぞれ、アンプ25の反転入力端子および非反転入力端子にそれぞれ接続された状態になるが、スイッチ24がオンした状態になっているために、それぞれの端子の電圧が固定されており、アンプ25の各端子には、フライングキャパシタ28、29の電圧が印加されない。
【0008】
その後、スイッチ24がオフされ、アンプ25の各端子における電圧の固定が解除されることで、アンプ25にフライングキャパシタ28、29にて蓄積された電圧が印加される。アンプ25の各入力端子における電圧が0Vに固定された状態で、フライングキャパシタ28、29の電圧が印加されるために、各入力端子の電圧が許容範囲を超えるおそれや、アンプ25の出力が飽和するおそれがなく、フライングキャパシタ28、29から印加される電圧を正確に検出することができる。しかも、アンプ25に入力される電圧が許容範囲を超えるおそれがないために、アンプ25の劣化および破壊が防止される。(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2001−201548号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、従来技術では、スイッチ22がオンした瞬間にスイッチ22とフライングキャパシタ28、29の間に発生する寄生容量へ電荷が移動し、フライングキャパシタ28、29の保持電圧が変化して電圧検出精度が悪化するという課題があった。
【0011】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、マルチプレクサ方式を用いた電池電圧検出回路において、寄生容量による検知電圧ズレの影響を低減し検知電圧精度を向上させる事を実現するものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
従来の課題を解決するために、本発明の電池電圧検出回路は以下のような構成とした。
直列に接続された複数の電池の電圧を監視するための電池電圧検出回路であって、フライングキャパシタと、フライングキャパシタを複数の電池に順次接続するマルチプレクサスイッチと、フライングキャパシタの電圧を検知する電圧検知手段と、フライングキャパシタの一方の端子に接続される第一の基準電位接続手段と、フライングキャパシタの他方の端子に接続される第二の基準電位接続手段と、マルチプレクサスイッチと第一の基準電位接続手段と第二の基準電位接続手段を制御する制御回路を備える。
【発明の効果】
【0013】
本発明の電池電圧検出回路によれば、寄生容量による電池の検知電圧の影響を低減して、検知電圧の精度を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】第一の実施形態の電池電圧検出回路の回路図である。
図2】第二の実施形態の電池電圧検出回路の回路図である。
図3】従来の電池電圧検出回路の回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本実施形態について図面を参照して説明する。
【実施例】
【0016】
<第一の実施形態>
図1は第一の実施形態の電池電圧検出回路の回路図である。本実施形態の電池電圧検出回路は、電池列100と、電池電圧検出回路200で構成されている。電池列100は、電池100_1、100_2、100_3、100_4で構成されている。電池電圧検出回路200は、マルチプレクサスイッチ210と、フライングキャパシタ240と、スイッチ280、281と、定電流回路290、291と、アンプ250と、コンパレータ260と、基準電圧回路270と、制御回路220と、抵抗271と、VDD端子と、VSS端子で構成されている。マルチプレクサスイッチ210は、スイッチ210_1と、210_2と、210_3と、210_4と、210_5と、210_6と、210_7と、210_8で構成されている。フライングキャパシタ240の一端をノードA、他端をノードBとする。
【0017】
電池100_1の正極はVDD端子及びスイッチ210_1の一方の端子に接続され、負極は電池100_2の正極及びスイッチ210_2とスイッチ210_3の一方の端子
に接続される。スイッチ210_1とスイッチ210_2のもう一方の端子はノードAに接続され、スイッチ210_3のもう一方の端子はノードBに接続される。電池100_3の正極は電池100_2の負極及びスイッチ210_4とスイッチ210_5の一方の端子に接続され、負極は電池100_4の正極及びスイッチ210_6とスイッチ210_7の一方の端子に接続される。スイッチ210_4とスイッチ210_6のもう一方の端子はノードAに接続され、スイッチ210_5とスイッチ210_7のもう一方の端子はノードBに接続される。
【0018】
スイッチ210_8の一方の端子はVSS端子及び電池100_4の負極に接続され、もう一方の端子はノードBに接続される。スイッチ280の一方の端子は定電流回路290に接続され、もう一方の端子はノードAに接続される。定電流回路290のもう一方の端子はVDD端子に接続される。スイッチ281の一方の端子は定電流回路291に接続され、もう一方の端子はノードBに接続される。定電流回路291のもう一方の端子はVDD端子に接続される。アンプ250は、反転入力端子は抵抗271に接続され、非反転入力端子はノードBに接続され、出力は抵抗271のもう一方の端子とコンパレータ260の反転入力端子に接続される。コンパレータ260の非反転入力端子は基準電圧回路270の負極に接続され、基準電圧回路270の正極はVDD端子に接続される。アンプ250とコンパレータ260と基準電圧回路270と抵抗271は、電圧検知手段を構成する。スイッチ280、281、およびマルチプレクサスイッチ210は制御回路220によってオンオフを制御される。ノードBには寄生容量230が存在している。
【0019】
動作について説明する。フライングキャパシタ240は電池列100の中のいずれかの電池と並列になるように制御回路220の信号で制御される。制御回路220の信号により、スイッチ210_1とスイッチ210_3がオン、他のスイッチがオフされ電池100_1とフライングキャパシタ240が接続される。フライングキャパシタ240は電池100_1と同じ電圧(V0)まで充電され、その後、制御回路220の信号によって、スイッチ210_1とスイッチ210_3がオフとなり電池100_1とフライングキャパシタ240は切り離される。
【0020】
次に制御回路220の信号によって、スイッチ280がオンされるとノードAは定電流回路290によってプルアップされ、VDD端子の電圧(VDD)となる。ノードBの電圧はVDD−V0となり、アンプ250の非反転入力端子にVDD−V0の電圧が印加される。アンプ250の出力にはVDD−V0の電圧が出力されるため、コンパレータ260にて基準電圧回路270の電圧(比較電圧)とVDD−V0の電圧を比較することでフライングキャパシタ240の電圧が比較電圧より高いか低いかを検出することができる。すなわち、電池100_1の電圧と比較電圧とを比較し高いか低いかを検出することができる。ここまでの動作を他の電池にも行うことですべての電池の電圧を監視することができる。
【0021】
ノードBに寄生容量230が存在する場合について考える。電池列100の電池はいずれもV0であるとし、フライングキャパシタ240を最下端の電池100_4に接続する。この時、ノードBの電圧はVSSであり寄生容量230の電圧は0Vになる。マルチプレクサスイッチ210のすべてのスイッチをオフしてフライングキャパシタ240をオープンにした後、スイッチ280をオンすると、ノードAは定電流回路290によりプルアップされる。寄生容量230は定電流回路290により充電され、この充電電流はフライングキャパシタ240を経由して流れるため、フライングキャパシタ240の保持電圧はV0よりも高くなる。最終的にノードAの電圧がVDDと等しくなった時のフライングキャパシタ240の電圧は次の式の通りとなる。
【0022】
V0+Cx/(C+Cx)×3V0
ここで、Cはフライングキャパシタ240の容量値、Cxは寄生容量230の容量値を示す。フライングキャパシタ240の電圧のズレ幅は第二項のCx/(C+Cx)×3V0となる。ここでCx/(C+Cx)はフライングキャパシタ240と寄生容量230の容量比であり、3V0はノードAが最下端の電池100に接続されている状態からVDDへプルアップされるまでの電圧移動幅を表す。
【0023】
従ってフライングキャパシタ240の容量値と比較して寄生容量230の容量値が大きいほどズレ量は大きく、また電圧を監視する電池が基準電位から遠いほどズレ量は大きくなることがわかる。
【0024】
電池電圧監視回路がIC上に集積されている場合を想定し、フライングキャパシタ240の容量値として10pF、寄生容量230の容量値として100fFと仮定する。電池電圧はすべて4.0Vであり、図1の通り4直列に接続されているとする。このときの最下端の電池電圧を検知する際に生じるズレ量は、
100fF/(100pF+100fF)×3×4.0=12mV
となる。一般的なリチウム電池の過充電検出電圧には±20mV程度の精度が要求されるため、上記のズレ量は電池電圧検出回路の精度性能に著しい悪影響を及ぼす。
【0025】
寄生容量230の影響を低減させるため、マルチプレクサスイッチ210のすべてのスイッチをオフしてフライングキャパシタ240をオープンにした後、スイッチ280、281を同時にオンする。こうすることで定電流回路290だけでなく定電流回路291も寄生容量230の充電に寄与することができる。ノードAの電位がVDDになると、制御回路220により、スイッチ281はオフされるように制御される。すると定電流回路291はフライングキャパシタ240を充電しないため、フライングキャパシタ240の電圧ズレを引き起こさない。
【0026】
ノードAがVDDに到達するまでに、定電流回路290ではなく、定電流回路291が寄生容量230を充電する割合が大きいほど、フライングキャパシタ240に生じるズレは小さくなる。従って、電圧検出精度を上げるためには定電流回路290よりも定電流回路291の電流量が大きい方が望ましい。定電流回路290、291の電流値が同じだった場合、フライングキャパシタ240の電圧のズレ幅はCx/(2C+Cx)×3V0となり、等価的にフライングキャパシタ240の容量値を大きくすることと同じ効果を得ることができる。
【0027】
なお、フライングキャパシタ240の電圧を検出するためにアンプ250を用いて説明したが、アンプにこだわることなくフライングキャパシタ240の電圧を検出できる構成であればどのような構成であってもよい。
【0028】
また、フライングキャパシタ240をプルアップし、寄生容量230を充電するために定電流回路290、291を用いて説明したが、定電流回路にこだわることなく抵抗や、VDDに直接接続するなど、フライングキャパシタ240をプルアップし、寄生容量230を充電できる構成であればどのようなものであってもよい。
【0029】
以上により、第一の実施形態の電池電圧検出回路は定電流回路291を用いて寄生容量230を充電することで電圧検出精度を向上させることができる。また、フライングキャパシタ240を大きくすることなく実現できるため、レイアウト面積を小さくすることもできる。
【0030】
<第二の実施形態>
図2は第二の実施形態の電池電圧検出回路の回路図である。図1との違いはスイッチ300を追加した点である。接続に関しては、スイッチ300は、一方の端子はスイッチ281とフライングキャパシタ240の接続点に接続され、もう一方はアンプ250の非反転入力端子に接続され、制御回路220によってオンオフを制御される。
【0031】
動作について説明する。フライングキャパシタ240は電池列100の中のいずれかの電池と並列になるように制御回路220の信号で制御される。制御回路220の信号により、スイッチ210_1とスイッチ210_3がオン、他のスイッチがオフされ電池100_1とフライングキャパシタ240が接続される。フライングキャパシタ240は電池100_1と同じ電圧(V0)まで充電され、その後、制御回路220の信号によって、スイッチ210_1とスイッチ210_3がオフとなり電池100_1とフライングキャパシタ240は切り離される。
【0032】
次に制御回路220の信号によって、スイッチ280がオンされるとノードAは定電流回路290によってプルアップされ、VDD端子の電圧(VDD)となる。ノードBの電圧はVDD−V0となり、制御回路220の信号によってスイッチ回路300をオンさせると、アンプ250の非反転入力端子にVDD−V0の電圧が印加される。アンプ250の出力にはVDD−V0の電圧が出力されるため、コンパレータ260にて基準電圧回路270の電圧(比較電圧)とVDD−V0の電圧を比較することでフライングキャパシタ240の電圧が比較電圧より高いか低いかを検出することができる。すなわち、電池100_1の電圧と比較電圧とを比較し高いか低いかを検出することができる。ここまでの動作を他の電池にも行うことですべての電池の電圧を監視することができる。
【0033】
ノードBに寄生容量230が存在する場合について考える。電池列100の電池はいずれもV0であるとし、フライングキャパシタ240を最下端の電池100_4に接続する。この時、ノードBの電圧はVSSであり寄生容量230の電圧は0Vになる。マルチプレクサスイッチ210のすべてのスイッチをオフしてフライングキャパシタ240をオープンにした後、スイッチ280をオンすると、ノードAは定電流回路290によりプルアップされる。寄生容量230は定電流回路290により充電され、この充電電流はフライングキャパシタ240を経由して流れるため、フライングキャパシタ240の保持電圧はV0よりも高くなる。最終的にノードAの電圧がVDDと等しくなった時のフライングキャパシタ240の電圧は次の式の通りとなる。
【0034】
V0+Cx/(C+Cx)×3V0
ここで、Cはフライングキャパシタ240の容量値、Cxは寄生容量230の容量値を示す。フライングキャパシタ240の電圧のズレ幅は第二項のCx/(C+Cx)×3V0となる。ここでCx/(C+Cx)はフライングキャパシタ240と寄生容量230の容量比であり、3V0はノードAが最下端の電池101に接続されている状態からVDDへプルアップされるまでの電圧移動幅を表す。
【0035】
従ってフライングキャパシタ240の容量値と比較して寄生容量230の容量値が大きいほどズレ量は大きく、また電圧を監視する電池が基準電位から遠いほどズレ量は大きくなることがわかる。
【0036】
電池電圧監視回路がIC上に集積されている場合を想定し、フライングキャパシタ240の容量値として10pF、寄生容量230の容量値として100fFと仮定する。電池電圧はすべて4.0Vであり、図1の通り4直列に接続されているとする。このときの最下端の電池電圧を検知する際に生じるズレ量は、
100fF/(100pF+100fF)×3×4.0=12mV
となる。一般的なリチウム電池の過充電検出電圧には±20mV程度の精度が要求されるため、上記のズレ量は電池電圧検出回路の精度性能に著しい悪影響を及ぼす。
【0037】
寄生容量230の影響を低減させるため、マルチプレクサスイッチ210のすべてのスイッチとスイッチ300をオフしてフライングキャパシタ240をオープンにした後、スイッチ280、281を同時にオンする。こうすることで定電流回路290だけでなく定電流回路291も用いて寄生容量230を充電することができる。定電流回路291はフライングキャパシタ240を充電しないため、フライングキャパシタ240の電圧ズレを引き起こさない。また、制御回路220により、スイッチ281はノードAがVDDに到達したとき、または到達する前にオフされる。
【0038】
ノードAがVDDに到達するまでに、定電流回路290ではなく、定電流回路291が寄生容量230を充電する割合が大きいほど、フライングキャパシタ240に生じるズレは小さくなる。従って、電圧検出精度を上げるためには定電流回路290よりも定電流回路291の電流量が大きい方が望ましい。定電流回路290、291の電流値が同じだった場合、フライングキャパシタ240の電圧のズレ幅はCx/(2C+Cx)×3V0となり、等価的にフライングキャパシタ240の容量値を大きくすることと同じ効果を得ることができる。
【0039】
フライングキャパシタ240をプルアップ中、スイッチ300をオフすることでスイッチ281からアンプ250の入力端子までに存在する寄生容量やアンプ250の入力トランジスタのゲート容量の影響を除去することができる。このため、スイッチ300を用いることで寄生容量230の影響が低減され、電圧検出精度を向上させることができるようになる。
【0040】
なお、フライングキャパシタ240の電圧を検出するためにアンプ250を用いて説明したが、アンプにこだわることなくフライングキャパシタ240の電圧を検出できる構成であればどのような構成であってもよい。
【0041】
また、フライングキャパシタ240をプルアップし、寄生容量230を充電するために定電流回路290、291を用いて説明したが、定電流回路にこだわることなく、VDDに直接あるいは抵抗を介して接続する等フライングキャパシタ240をプルアップし、寄生容量230を充電できる構成であればどのようなものであってもよい。
【0042】
以上により、本実施形態の電池電圧検出回路は定電流回路291を用いて寄生容量230を充電することで電圧検出精度を向上させることができる。また、フライングキャパシタ240を大きくすることなく実現できるため、レイアウト面積を小さくすることもできる。さらに、アンプやその他の寄生容量やゲート容量の影響を除去できさらに電圧検出精度を向上させることができる。
【符号の説明】
【0043】
11 電池電源装置
11a 電池
21、22、23、24 スイッチ
28、29 フライングキャパシタ
25 アンプ
26 A/D変換機
30 制御装置
21a、21b、23a、23b、24a、24b 常開接点
100 電池列
100_1〜100_4 電池
200 電池電圧検出回路
210 マルチプレクサスイッチ
210_1〜210_8、280、281、300 スイッチ
220 制御回路
230 寄生容量
240 フライングキャパシタ
250 アンプ
260 コンパレータ
270 比較電圧発生回路
290、291 定電流
図1
図2
図3