【実施例】
【0016】
<第一の実施形態>
図1は第一の実施形態の電池電圧検出回路の回路図である。本実施形態の電池電圧検出回路は、電池列100と、電池電圧検出回路200で構成されている。電池列100は、電池100_1、100_2、100_3、100_4で構成されている。電池電圧検出回路200は、マルチプレクサスイッチ210と、フライングキャパシタ240と、スイッチ280、281と、定電流回路290、291と、アンプ250と、コンパレータ260と、基準電圧回路270と、制御回路220と、抵抗271と、VDD端子と、VSS端子で構成されている。マルチプレクサスイッチ210は、スイッチ210_1と、210_2と、210_3と、210_4と、210_5と、210_6と、210_7と、210_8で構成されている。フライングキャパシタ240の一端をノードA、他端をノードBとする。
【0017】
電池100_1の正極はVDD端子及びスイッチ210_1の一方の端子に接続され、負極は電池100_2の正極及びスイッチ210_2とスイッチ210_3の一方の端子
に接続される。スイッチ210_1とスイッチ210_2のもう一方の端子はノードAに接続され、スイッチ210_3のもう一方の端子はノードBに接続される。電池
100_3の正極は電池
100_2の負極及びスイッチ210_4とスイッチ210_5の一方の端子に接続され、負極は電池
100_4の正極及びスイッチ210_6とスイッチ210_7の一方の端子に接続される。スイッチ210_4とスイッチ210_6のもう一方の端子はノードAに接続され、スイッチ210_5とスイッチ210_7のもう一方の端子はノードBに接続される。
【0018】
スイッチ210_8の一方の端子はVSS端子及び電池
100_4の負極に接続され、もう一方の端子はノードBに接続される。スイッチ280の一方の端子は定電流回路290に接続され、もう一方の端子はノードAに接続される。定電流回路290のもう一方の端子はVDD端子に接続される。スイッチ281の一方の端子は定電流回路291に接続され、もう一方の端子はノードBに接続される。定電流回路291のもう一方の端子はVDD端子に接続される。アンプ250は、反転入力端子は抵抗271に接続され、非反転入力端子はノードBに接続され、出力は抵抗271のもう一方の端子とコンパレータ260の反転入力端子に接続される。コンパレータ260の非反転入力端子は基準電圧回路270の負極に接続され、基準電圧回路270の正極はVDD端子に接続される。アンプ250とコンパレータ260と基準電圧回路270と抵抗271は、電圧検知手段を構成する。スイッチ280、281、およびマルチプレクサスイッチ210は制御回路220によってオンオフを制御される。ノードBには寄生容量230が存在している。
【0019】
動作について説明する。フライングキャパシタ240は電池列100の中のいずれかの電池と並列になるように制御回路220の信号で制御される。制御回路220の信号により、スイッチ210_1とスイッチ210_3がオン、他のスイッチがオフされ電池100_1とフライングキャパシタ240が接続される。フライングキャパシタ240は電池100_1と同じ電圧(V0)まで充電され、その後、制御回路220の信号によって、スイッチ210_1とスイッチ210_3がオフとなり電池100_1とフライングキャパシタ240は切り離される。
【0020】
次に制御回路220の信号によって、スイッチ280がオンされるとノードAは定電流回路290によってプルアップされ、VDD端子の電圧(VDD)となる。ノードBの電圧はVDD−V0となり、アンプ250の非反転入力端子にVDD−V0の電圧が印加される。アンプ250の出力にはVDD−V0の電圧が出力されるため、コンパレータ260にて基準電圧回路270の電圧(比較電圧)とVDD−V0の電圧を比較することでフライングキャパシタ240の電圧が比較電圧より高いか低いかを検出することができる。すなわち、電池100_1の電圧と比較電圧とを比較し高いか低いかを検出することができる。ここまでの動作を他の電池にも行うことですべての電池の電圧を監視することができる。
【0021】
ノードBに寄生容量230が存在する場合について考える。電池列100の電池はいずれもV0であるとし、フライングキャパシタ240を最下端の
電池100_4に接続する。この時、
ノードBの電圧はVSSであり寄生容量230の電圧は0Vになる。マルチプレクサスイッチ210のすべてのスイッチをオフしてフライングキャパシタ240をオープンにした後、スイッチ280をオンすると、ノードAは定電流回路290によりプルアップされる。寄生容量230は定電流回路290により充電され、この充電電流はフライングキャパシタ240を経由して流れるため、フライングキャパシタ240の保持電圧はV0よりも高くなる。最終的にノードAの電圧がVDDと等しくなった時のフライングキャパシタ240の電圧は次の式の通りとなる。
【0022】
V0+Cx/(C+Cx)×3V0
ここで、Cはフライングキャパシタ240の容量値、Cxは寄生容量230の容量値を示す。フライングキャパシタ240の電圧のズレ幅は第二項のCx/(C+Cx)×3V0となる。ここでCx/(C+Cx)はフライングキャパシタ240と寄生容量230の容量比であり、3V0はノードAが最下端の電池
100に接続されている状態からVDDへプルアップされるまでの電圧移動幅を表す。
【0023】
従ってフライングキャパシタ240の容量値と比較して寄生容量230の容量値が大きいほどズレ量は大きく、また電圧を監視する電池が基準電位から遠いほどズレ量は大きくなることがわかる。
【0024】
電池電圧監視回路がIC上に集積されている場合を想定し、フライングキャパシタ240の容量値として10pF、寄生容量230の容量値として100fFと仮定する。電池電圧はすべて4.0Vであり、
図1の通り4直列に接続されているとする。このときの最下端の電池電圧を検知する際に生じるズレ量は、
100fF/(100pF+100fF)×3×4.0=12mV
となる。一般的なリチウム電池の過充電検出電圧には±20mV程度の精度が要求されるため、上記のズレ量は電池電圧検出回路の精度性能に著しい悪影響を及ぼす。
【0025】
寄生容量230の影響を低減させるため、マルチプレクサスイッチ210のすべてのスイッチをオフしてフライングキャパシタ240をオープンにした後、スイッチ280、281を同時にオンする。こうすることで定電流回路290だけでなく定電流回路291も寄生容量230の充電に寄与することができる。ノードAの電位がVDDになると、制御回路220により、スイッチ281はオフされるように制御される。すると定電流回路291はフライングキャパシタ240を充電しないため、フライングキャパシタ240の電圧ズレを引き起こさない。
【0026】
ノードAがVDDに到達するまでに、定電流回路290ではなく、定電流回路291が寄生容量230を充電する割合が大きいほど、フライングキャパシタ240に生じるズレは小さくなる。従って、電圧検出精度を上げるためには定電流回路290よりも定電流回路291の電流量が大きい方が望ましい。定電流回路290、291の電流値が同じだった場合、フライングキャパシタ240の電圧のズレ幅はCx/(2C+Cx)×3V0となり、等価的にフライングキャパシタ240の容量値を大きくすることと同じ効果を得ることができる。
【0027】
なお、フライングキャパシタ240の電圧を検出するためにアンプ250を用いて説明したが、アンプにこだわることなくフライングキャパシタ240の電圧を検出できる構成であればどのような構成であってもよい。
【0028】
また、フライングキャパシタ
240をプルアップし、寄生容量230を充電するために定電流回路290、291を用いて説明したが、定電流回路にこだわることなく抵抗や、VDDに直接接続するなど、フライングキャパシタ
240をプルアップし、寄生容量230を充電できる構成であればどのようなものであってもよい。
【0029】
以上により、第一の実施形態の電池電圧検出回路は定電流回路291を用いて寄生容量230を充電することで電圧検出精度を向上させることができる。また、フライングキャパシタ240を大きくすることなく実現できるため、レイアウト面積を小さくすることもできる。
【0030】
<第二の実施形態>
図2は第二の実施形態の電池電圧検出回路の回路図である。
図1との違いはスイッチ300を追加した点である。接続に関しては、スイッチ300は、一方の端子はスイッチ281とフライングキャパシタ240の接続点に接続され、もう一方はアンプ250の非反転入力端子に接続され、制御回路220によってオンオフを制御される。
【0031】
動作について説明する。フライングキャパシタ240は電池列100の中のいずれかの電池と並列になるように制御回路220の信号で制御される。制御回路220の信号により、スイッチ210_1とスイッチ210_3がオン、他のスイッチがオフされ電池100_1とフライングキャパシタ240が接続される。フライングキャパシタ240は電池100_1と同じ電圧(V0)まで充電され、その後、制御回路220の信号によって、スイッチ210_1とスイッチ210_3がオフとなり電池100_1とフライングキャパシタ240は切り離される。
【0032】
次に制御回路220の信号によって、スイッチ280がオンされるとノードAは定電流回路290によってプルアップされ、VDD端子の電圧(VDD)となる。ノードBの電圧はVDD−V0となり、制御回路220の信号によってスイッチ回路300をオンさせると、アンプ250の非反転入力端子にVDD−V0の電圧が印加される。アンプ250の出力にはVDD−V0の電圧が出力されるため、コンパレータ260にて基準電圧回路270の電圧(比較電圧)とVDD−V0の電圧を比較することでフライングキャパシタ240の電圧が比較電圧より高いか低いかを検出することができる。すなわち、電池100_1の電圧と比較電圧とを比較し高いか低いかを検出することができる。ここまでの動作を他の電池にも行うことですべての電池の電圧を監視することができる。
【0033】
ノードBに寄生容量230が存在する場合について考える。電池列100の電池はいずれもV0であるとし、フライングキャパシタ240を最下端の電池
100_4に接続する。この時、
ノードBの電圧はVSSであり寄生容量230の電圧は0Vになる。マルチプレクサスイッチ210のすべてのスイッチをオフしてフライングキャパシタ240をオープンにした後、スイッチ280をオンすると、ノードAは定電流回路290によりプルアップされる。寄生容量230は定電流回路290により充電され、この充電電流はフライングキャパシタ240を経由して流れるため、フライングキャパシタ240の保持電圧はV0よりも高くなる。最終的にノードAの電圧がVDDと等しくなった時のフライングキャパシタ240の電圧は次の式の通りとなる。
【0034】
V0+Cx/(C+Cx)×3V0
ここで、Cはフライングキャパシタ240の容量値、Cxは寄生容量230の容量値を示す。フライングキャパシタ240の電圧のズレ幅は第二項のCx/(C+Cx)×3V0となる。ここでCx/(C+Cx)はフライングキャパシタ240と寄生容量230の容量比であり、3V0はノードAが最下端の電池101に接続されている状態からVDDへプルアップされるまでの電圧移動幅を表す。
【0035】
従ってフライングキャパシタ240の容量値と比較して寄生容量230の容量値が大きいほどズレ量は大きく、また電圧を監視する電池が基準電位から遠いほどズレ量は大きくなることがわかる。
【0036】
電池電圧監視回路がIC上に集積されている場合を想定し、フライングキャパシタ240の容量値として10pF、寄生容量230の容量値として100fFと仮定する。電池電圧はすべて4.0Vであり、
図1の通り4直列に接続されているとする。このときの最下端の電池電圧を検知する際に生じるズレ量は、
100fF/(100pF+100fF)×3×4.0=12mV
となる。一般的なリチウム電池の過充電検出電圧には±20mV程度の精度が要求されるため、上記のズレ量は電池電圧検出回路の精度性能に著しい悪影響を及ぼす。
【0037】
寄生容量230の影響を低減させるため、マルチプレクサスイッチ210のすべてのスイッチとスイッチ300をオフしてフライングキャパシタ240をオープンにした後、スイッチ280、281を同時にオンする。こうすることで定電流回路290だけでなく定電流回路291も用いて寄生容量230を充電することができる。定電流回路291はフライングキャパシタ240を充電しないため、フライングキャパシタ240の電圧ズレを引き起こさない。また、制御回路220により、スイッチ281はノードAがVDDに到達したとき、または到達する前にオフされる。
【0038】
ノードAがVDDに到達するまでに、定電流回路290ではなく、定電流回路291が寄生容量230を充電する割合が大きいほど、フライングキャパシタ240に生じるズレは小さくなる。従って、電圧検出精度を上げるためには定電流回路290よりも定電流回路291の電流量が大きい方が望ましい。定電流回路290、291の電流値が同じだった場合、フライングキャパシタ240の電圧のズレ幅はCx/(2C+Cx)×3V0となり、等価的にフライングキャパシタ240の容量値を大きくすることと同じ効果を得ることができる。
【0039】
フライングキャパシタ240をプルアップ中、スイッチ300をオフすることでスイッチ281からアンプ250の入力端子までに存在する寄生容量やアンプ250の入力トランジスタのゲート容量の影響を除去することができる。このため、スイッチ300を用いることで寄生容量230の影響が低減され、電圧検出精度を向上させることができるようになる。
【0040】
なお、フライングキャパシタ240の電圧を検出するためにアンプ250を用いて説明したが、アンプにこだわることなくフライングキャパシタ240の電圧を検出できる構成であればどのような構成であってもよい。
【0041】
また、フライングキャパシタ
240をプルアップし、寄生容量230を充電するために定電流回路290、291を用いて説明したが、定電流回路にこだわることなく、VDDに直接あるいは抵抗を介して接続する等フライングキャパシタ
240をプルアップし、寄生容量230を充電できる構成であればどのようなものであってもよい。
【0042】
以上により、本実施形態の電池電圧検出回路は定電流回路291を用いて寄生容量230を充電することで電圧検出精度を向上させることができる。また、フライングキャパシタ240を大きくすることなく実現できるため、レイアウト面積を小さくすることもできる。さらに、アンプやその他の寄生容量やゲート容量の影響を除去できさらに電圧検出精度を向上させることができる。