(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載された住戸では、家族が浴室等の水回りを使用する際に、外部の介護者が移動する際に使用する廊下を通る必要がある。このため、家族と外部の介護者とが頻繁に顔を合わせることとなり、外部の介護者は家族に気兼ねなく介護作業を行うことができず、また、家族は気兼ねなく生活をすることができない。このように、家族のみが使用する領域であるリビングルーム等に外部の介護者が入り込まなくても介護をすることができる間取とすることのみならず、家族と外部の介護者とが互いに気兼ねすることがない間取りとすることがより一層望まれている。
【0006】
そこで、本発明は、家族と外部の介護者とが互いに気兼ねすることがない住戸を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一側面に係る住戸は、通路ゾーンと、介護対応ゾーンと、家族専用ゾーンとを備える。通路ゾーンは、玄関ホール及び玄関土間を含む。介護対応ゾーン(「第一のゾーン」。以下同じ。)は、介護対応室(「居室」。以下同じ。)及び水回り用スペース、を含む。介護対応室は、実際に介護のために使用している部屋、或は、将来の介護のために使用できる部屋である。水回り用スペースは、トイレ及び洗面台が設けられている、或は、トイレ及び洗面台を設置可能な、スペースである。家族専用ゾーン(「第二のゾーン」。以下同じ。)は、居間、食堂及び台所を有するLDK、寝室、並びに、水回り、を含む。介護対応ゾーンは、通路ゾーンに隣接し、通路ゾーンとの間に第一建具を備える。家族専用ゾーンは、通路ゾーンに隣接し、通路ゾーンとの間に第二建具を備える。
【0008】
この住戸では、第一建具及び第二建具が設けられているので、外部の介護者が出入りする介護対応ゾーンと、家族の生活空間である家族専用ゾーンとを明確に区別でき、互いのプライバシーを確保することができる。また、外部の介護者は、家族専用ゾーンを通ることなく、通路ゾーンから介護対応ゾーンに入ることができる。また、家族は、通路ゾーンを通ることなく家族専用ゾーン内で生活をすることができる。このように、外部の介護者は、介護対応ゾーンに来て介護作業を行う際に、家族専用ゾーンで生活する家族と顔を合わすことがない。このため、外部の介護者は家族に気兼ねなく介護作業を行うことができ、家族は外部の介護者に気兼ねすることなく生活することができる。
【0009】
第二建具には錠が設けられていてもよい。このように、家族専用ゾーンと通路ゾーンとの間の第二建具に錠を設けることで、外部の介護者が誤って家族専用ゾーンに入り込むことを防止できる。これにより、外部の介護者が出入り可能な空間を確実に限定することができ、家族のプライバシーがより確実に確保される。
【0010】
介護対応室と水回り用スペースとは、三枚引戸によって仕切られていてもよい。この場合には、二枚引戸等に比べて開口幅を広くすることができる。これにより、例えば、車椅子に乗る要介護者と介護者とが容易に水回り用スペース内に入ることができる。
【0011】
介護対応室と水回り用スペースとは、開放時に1m以上の開口幅を有する開閉形式の建具によって仕切られていてもよい。このように、開口幅を1m以上とすることで、例えば、車椅子に乗る要と介護者とが容易に水回り用スペース内に入ることができる。
【0012】
介護対応室は、LDKに隣接し、LDKとの間に第三建具を備えていてもよい。この場合には、第三建具を開放することで、LDKと介護対応室とが連通し、介護対応室が孤立した空間となることを防止できる。また、外部の介護者が介護対応ゾーンに入る場合には第三建具を閉じることで、介護対応ゾーンと家族専用ゾーンとを明確に区別することができる。
【0013】
第三建具には錠が設けられていてもよい。このように、LDKと介護対応室との間の第三建具に錠を設けることで、外部の介護者が誤ってLDKに入り込むことを防止できる。これにより、外部の介護者が出入り可能な空間を確実に限定することができ、家族のプライバシーがより確実に確保される。
【0014】
介護対応室と寝室との間には部屋が設けられていてもよい。これにより、例えば、夜間に外部の介護者が介護作業を行う場合に、介護作業によって生じる音が寝室に直接伝わることを防止できる。これにより、寝室における静けさを保つことができる。
【0015】
家族専用ゾーンは、予備室と、予備室と通路ゾーンとを接続する廊下と、を更に含んでいてもよい。この場合には、例えば、予備室を、別居している兄弟姉妹等の親族が介護のために宿泊する部屋として利用することができる。また、宿泊者は、LDK及び寝室等を通ることなく、予備室に入ることができる。これにより、宿泊者は、LDK等を使用する家族に気兼ねすることなく予備室を利用することができる。
【0016】
水回りは、予備室と寝室との間に設けられ、予備室は、廊下を経由して寝室と接続されていてもよい。この場合には、予備室を利用する宿泊者が夜間に水回りを利用する際にも、家族が就寝している寝室を通る等の必要が無く、家族の睡眠を妨げることがない。
【0017】
住戸は、屋内から行き来可能な他住戸と介護対応ゾーンとを家族専用ゾーンを介さずに接続する通路部を更に備えていてもよい。この場合には、例えば、他住戸に子世帯等の親族家族が住み、子世帯等が介護の手助けをする際に、他住戸から介護対応室への出入りがし易くなる。
【0018】
通路ゾーンは、他住戸に隣接し、他住戸との間に第四建具を備えていてもよい。この場合には、通路ゾーンと他住戸とを第四建具によって明確に区別できる。これにより、外部の介護者が通路ゾーンから他住戸側へ入り込むことを防止できる。
【0019】
第四建具に錠を設けてもよい。このように、他住戸と通路ゾーンとの間の第四建具に錠を設けることで、外部の介護者が誤って他住戸に入り込むことをより一層確実に防止できる。
【0020】
通路ゾーンは、複数階にそれぞれ設けられたエレベータ室と、複数階にそれぞれ設けられたエレベータホールとを更に含んでいてもよい。この場合、介護対応室は、二階以上に設けられ、通路ゾーンのエレベータホールとの間に第一建具を備えていてもよい。また、家族専用ゾーンは、通路ゾーンのエレベータホールとの間に第二建具を備えていてもよい。このように、日照や通風等の環境が良い二階以上に介護対応室を設けた場合であっても、外部の介護者が出入りする介護対応ゾーンと、家族専用ゾーンとを明確に区別することができる。
【0021】
家族専用ゾーンは、複数階に亘って設けられた階段を更に含んでいてもよい。この場合には、家族が上下階を移動するときに、エレベータを利用する必要がないので、意図せずして外部の介護者と顔を合わせることがない。
【0022】
住戸は、エレベータ室に設けられたエレベータの動作を制御する制御部を更に備えていてもよい。この場合、介護対応室は、玄関土間とは異なる階に設けられていてもよい。また、制御部は、玄関土間が設けられる階、及び、介護対応室が設けられる階のみにエレベータを停止させる制御モードを有していてもよい。この場合には、外部の介護者が、エレベータを経由して、誤って介護対応室以外のゾーンに立ち入ることを防止できる。
【発明の効果】
【0023】
本発明の一側面によれば、家族と外部の介護者とが互いに気兼ねすることがない住戸となる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0026】
(第1の実施形態)
まず、第1の実施形態について説明する。
図1及び
図2に示されるように、住宅Aは、2階建構造となっている。なお、本実施形態では、部屋の配置説明を容易にするため、
図1及び
図2中の方位記号が示す通り、上方向を北側として説明する。
【0027】
住宅Aは、親世帯が居住する住戸と、子世帯が居住する住戸(他住戸)とを備える二世帯住宅である。親世帯は、夫婦からなり、子世帯は、親世帯の夫婦の子とその配偶者からなる子世帯の夫婦と、子世帯の夫婦の子(以下「孫」という)と、からなる。住宅Aには、親世帯が1階、子世帯が2階に居住することを想定している。両世帯間は、住宅A内から行き来可能となっている。親世帯の夫婦のうちの夫は、現在、介護を要する要介護者とする。このため、親世帯の住戸の介護対応ゾーン20に外部の介護者(ヘルパー)が入り、要介護者の介護をするものとする。
【0028】
(住宅の1階の全体構成)
住宅Aの1階は、
図1に示すように、平面視で略矩形状を有する。住宅Aの1階には、親世帯玄関部(通路ゾーン)10、介護対応ゾーン20、親世帯の居間・食堂・台所を備える部屋(以下「親世帯LDK」という)30、親世帯寝室40、書斎50、親世帯水回り60、予備室70、納戸80、廊下90、及び、子世帯玄関部110が設けられている。親世帯は、親世帯玄関部10を経由して住宅Aに出入りし、子世帯の家族は、子世帯玄関部110を経由して住宅Aに出入りする。親世帯LDK30、親世帯寝室40、書斎50、親世帯水回り60、納戸80、及び、廊下90を含む領域が、親世帯の家族専用ゾーンとなる。この家族専用ゾーンは、外部の介護者が入り込まない領域とする。
【0029】
子世帯玄関部110は、住宅Aの南西の角部に設けられている。子世帯玄関部110は、子世帯玄関扉111、子世帯玄関土間112、及び、子世帯玄関ホール113を備える。子世帯玄関扉111は、住宅Aの南側の壁に取り付けられている。子世帯玄関土間112は、子世帯玄関扉111を経由して住宅Aの外部と出入り可能に連通する。子世帯玄関土間112には、下駄箱等が設けられている。子世帯玄関ホール113は、子世帯玄関土間112の北側に設けられている。子世帯玄関ホール113には、住宅Aの1階と2階とをつなぐ階段120が接続される。階段120の下(階段下)には、収納等を設けてもよい。
【0030】
親世帯玄関部10は、子世帯玄関部110の東側に隣接して設けられている。親世帯玄関部10は、親世帯玄関扉11、親世帯玄関土間12、及び、親世帯玄関ホール13を備える。親世帯玄関扉11は、住宅Aの南側の壁に取り付けられている。親世帯玄関土間12は、親世帯玄関扉11を経由して住宅Aの外部と出入り可能に連通する。親世帯玄関土間12には、下駄箱等が設けられている。親世帯玄関ホール13は、親世帯玄関土間12の北側に設けられている。
【0031】
親世帯玄関ホール13と子世帯玄関ホール113との間の間仕切り壁には第四建具14が設けられている。第四建具14には、錠が設けられている。第四建具14に設けられる錠は、親世帯側の住戸から第四建具14を経由して子世帯の住戸に外部の介護者が入り込むことを防止するためのものである。第四建具14としては、親世帯玄関ホール13側から外部の介護者が開錠することができない構造であれば種々の錠を用いることができる。例えば、子世帯玄関ホール113側からのみ開錠可能な錠を用いることができる。或いは、親世帯玄関ホール13側から鍵を用いて施錠する構造の錠である場合、鍵を外部の介護者に渡さないことにより、親世帯玄関ホール13から子世帯玄関ホール113へ外部の介護者が入り込むことができないようにしてもよい。
【0032】
介護対応ゾーン20は、住宅Aの南側、且つ、親世帯玄関部10の東側に隣接して設けられている。介護対応ゾーン20は、親世帯の夫が使用する。介護対応ゾーン20には、介護対応室21、及び、水回り用スペース22が設けられている。介護対応室21は、住宅Aの南側に位置し、要介護者用のベッド及びテレビ等が設置される。介護対応室21と親世帯玄関ホール13との間の間仕切り壁には第一建具23が設けられている。介護対応室21の東側の位置において、介護対応室21と親世帯LDK30との間の間仕切り壁には第三建具25が設けられている。第三建具25として、例えば、一枚引戸を用いることができる。第三建具25には、錠が設けられている。第三建具25に設けられる錠は、介護対応室21から第三建具25を経由して親世帯LDK30に外部の介護者が入り込むことを防止するためのものである。第三建具25に設けられる錠としては、第四建具14に設けられている錠と同様に、介護対応室21側から外部の介護者が開錠することができない構造であれば種々の錠を用いることができる。
【0033】
水回り用スペース22は、介護対応室21の北側に設けられている。水回り用スペース22には、トイレ22a及び洗面台22bが設けられている。介護対応室21と水回り用スペース22とは、建具24によって仕切られている。建具24として、三枚引戸を用いる。三枚引戸以外にも、建具24として、開放時に1m以上の開口幅を有する開閉形式の建具を用いることができる。介護対応室21及び水回り用スペース22の床は、フローリングによって形成されている。これにより、要介護者を載せた車椅子の移動が容易となる。
【0034】
親世帯LDK30は、住宅Aの南東の角部に設けられている。親世帯LDK30は、家事室31、居間32、及び、食堂・台所33を備える。家事室31は、住宅Aの南東の角部に設けられている。家事室31は、収納として用いられている。更に、家事室31内にテーブル等を設置することで、家事室31を親世帯の妻が使用する専用スペースとしてもよい。居間32は、家事室31と介護対応室21との間に設けられている。居間32には、テレビ、ソファー等が設置される。居間32は、例えば、3畳程度の大きさとすることができる。これにより、居間32を、テレビを見てくつろぐのに適した空間とすることができる。
【0035】
食堂・台所33には、テーブル33a、カウンター33b、及び、キッチン33c等が設置される。テーブル33aは、長方形状を有する、例えば、幅2m以上を有するテーブルである。テーブル33aは、長手方向が東西方向となるように配置される。カウンター33bは、食堂・台所33の北側の壁面に沿って設置される。即ち、カウンター33bは、テーブル33aの長辺側に設置される。カウンター33bは、食器棚として利用され、更に、トースター等の家電製品を置く棚として利用される。キッチン33cは、食堂・台所33の東側の壁面に沿って設置される。即ち、キッチン33cは、テーブル33aの短辺側に設置される。このような配置とすることで、食堂・台所33には、テーブル33aの全周に亘って通路が確保される。また、テーブル33aからキッチン33cへ向かう動線と、テーブル33aからカウンター33bへ向かう動線とが交差しない。このため、複数人で配膳作業等を行う場合であっても、作業がし易い。また、配膳作業等を行う際の動線も短くなり、効率良く作業を行うことができる。このため、子世帯、或は、別居の親族が訪問してきた場合等、多人数に対応した親世帯LDK30とすることができる。
【0036】
親世帯LDK30の北側の位置において、親世帯LDK30と親世帯寝室40との間の間仕切り壁には建具34が設けられている。これにより、親世帯LDK30と親世帯寝室40との間を、廊下90を経由せずに直接行き来することができる。また、親世帯LDK30の北側の位置であって、建具34よりも西側の位置において、廊下90と親世帯LDK30との間の間仕切壁には、廊下90から親世帯LDK30へ出入りするための出入り口35aが設けられている。出入り口35aには、建具35が設けられている。建具35は、開放状態が維持できるものであり、例えば、一枚引戸を用いることができる。
【0037】
親世帯寝室40は、住宅Aの北東の位置に設けられている。親世帯寝室40は、親世帯の妻が使用する部屋であり、ベッド、テレビ、及び、クローゼット等が設置される。介護が必要となる前の夫も、親世帯の妻と共に親世帯寝室40を使用することができる。親世帯寝室40の西側の位置において、親世帯寝室40と廊下90との間の間仕切り壁には建具41が設けられている。親世帯寝室40は、介護対応ゾーン20と隣接しておらず、親世帯寝室40と介護対応ゾーン20との間に親世帯LDK30等が設けられている。
【0038】
書斎50は、住宅Aの北側、且つ、親世帯寝室40の西側に隣接して設けられている。書斎50は、介護が必要となる前の親世帯の夫が使用する専用スペースである。書斎50は、平面視で矩形状を有するとともに、例えば、一辺の内寸が2000mm以下の空間を有する。書斎50の南側の位置において、書斎50と廊下90との間の間仕切り壁には、廊下90から書斎50へ出入りするための出入り口51aが設けられている。出入り口51aには、施錠可能な腰高建具51が設けられている。腰高建具51は、例えば、大人であれば建具の上方から書斎50側に手を入れて開錠することができるが、幼児は書斎50側に手を入れて開錠することができない高さを有する。或いは、幼児が容易に開錠できない構造の錠を設けてもよい。
【0039】
書斎50の出入り口51aと、親世帯LDK30の出入り口35aとは、廊下90を挟んで対向する。書斎50の北側の壁、即ち、書斎50の出入り口51aと対向する位置には、採光、通風が可能な窓52が設けられている。
【0040】
書斎50内には、椅子50a、カウンター50b、及び、棚50cが設けられている。カウンター50bは、L型形状を有し、出入り口51aが設けられていない壁面である北側の壁面から東側の壁面に沿って設けられている。カウンター50b上には、パソコンやプリンター等が設置され、パソコンを用いた作業や読書など各種の作業を行うことができる。棚50cは、書斎50の壁面のうちカウンター50bが設けられていない壁面、即ち、西側の壁面に設けられている。棚50cには、書籍等を収納することができる。なお、カウンター50b及び棚50cは、書斎50の中央部に椅子一脚を配置可能なスペースが確保されるように設置される。椅子50aは、書斎50の中央部に配置される。椅子50aを書斎50の中央部に配置することにより、カウンター50bから棚50cの全体に亘って手が届くため、作業性の良い書斎50となる。
【0041】
親世帯水回り60は、洗面室61、浴室62、及び、トイレ63を備える。洗面室61は、住宅Aの北側、且つ、書斎50の西側に隣接して設けられている。即ち、書斎50は、親世帯水回り60の洗面室61と、親世帯寝室40との間に設けられている。洗面室61には、洗面台及び洗濯機等が設置される。洗面室61の南側の位置において、洗面室61と廊下90との間の間仕切り壁には建具が設けられている。浴室62は、住宅Aの北側、且つ、洗面室61の西側に隣接して設けられている。浴室62の東側の位置において、浴室62と洗面室61との間の間仕切り壁には建具が設けられている。トイレ63は、廊下90の南側に隣接し、且つ、納戸80の西側に隣接して設けられている。トイレ63の北側の位置において、トイレ63と廊下90との間の間仕切り壁には建具が設けられている。
【0042】
予備室70は、住宅Aの北西の角部、且つ、浴室62の西側に隣接して設けられている。予備室70には、机、及び、ベッド等が設置される。予備室70の東側の位置において、予備室70と廊下90との間の間仕切り壁には建具71が設けられている。これにより、予備室70から、建具71を経由して廊下90へ行き来することができる。また、予備室70の南側の位置において、予備室70と子世帯玄関ホール113との間の間仕切り壁には建具72が設けられている。これにより、予備室70から、建具72を経由して子世帯玄関ホール113へ行き来することができる。予備室70と親世帯寝室40との間に親世帯水回り60が設けられている。
【0043】
予備室70は、主に別居の親族等の訪問者が使用する部屋である。親世帯への訪問者が使用する場合には、建具72を施錠し、建具71を経由して親世帯の各部屋へ出入りできる状態にする。これにより、予備室70を親世帯に属する部屋とすることができる。反対に、子世帯への訪問者が使用する場合には、建具71を施錠し、建具72を経由して子世帯の各部屋へ出入りできる状態にする。これにより、予備室70を子世帯に属する部屋とすることができる。以上のように、予備室70は、親世帯及び子世帯のどちらの世帯に属する部屋であるかを切り替えることができる。
【0044】
廊下90は、書斎50、洗面室61及び浴室62の南側に隣接すると共に東西方向に沿って延在し、親世帯寝室40と予備室70とを接続する。廊下90の西側の端部の南側の位置において、廊下90と親世帯玄関ホール13との間の間仕切り壁には第二建具91が設けられている。これにより、廊下90から第二建具91を経由して親世帯玄関部10へ行き来することができる。第二建具91には、錠が設けられている。第二建具91に設けられる錠は、親世帯玄関部10から第二建具91を経由して廊下90に外部の介護者が入り込むことを防止するためのものである。第二建具91に設けられる錠としては、第四建具14に設けられる錠と同様に、親世帯玄関部10側から外部の介護者が開錠することができない構造であれば種々の錠を用いることができる。
【0045】
納戸80は、廊下90の南側に隣接し、且つ、親世帯LDK30の西側に隣接して設けられている。納戸80の北側の位置において、納戸80と廊下90との間の間仕切り壁には建具が設けられている。
【0046】
(住宅の2階の全体構成)
住宅Aの2階は、
図2に示すように、平面視で略矩形状を有する。住宅Aの2階には、孫居室130、孫居室140、子世帯LDK150、子世帯寝室160、子世帯水回り170、クローゼット180、及び、廊下190等が設けられている。子世帯水回り170には、トイレ171、浴室172、及び、洗面室173が含まれる。2階の各部屋の配置については、
図2に示したものに限定されず、適宜の配置とすることができる。また、住宅Aの2階に子世帯の夫婦と孫とが生活することができるものであれば、
図2に示すもの以外の間取り構成とすることができる。
【0047】
(住宅の1階の動線)
次に、住宅の1階の動線について説明する。ここでは、親世帯の夫が要介護者となって主に介護対応ゾーン20で生活をする状態での動線を説明する。
【0048】
要介護者である夫の介護のために、介護対応ゾーン20に外部の介護者が訪れるものとする。親世帯玄関土間12と親世帯玄関ホール13とにより、親世帯玄関扉11と介護対応ゾーン20とをつなぐ通路部が形成される。この通路部により、親世帯玄関扉11と介護対応ゾーン20とをつなぐ動線X1が形成される。この動線X1は、家族専用ゾーンとなる親世帯LDK30、親世帯寝室40、書斎50、親世帯水回り60、納戸80、及び、廊下90を通らない。
【0049】
また、親世帯玄関ホール13により、子世帯の住戸である子世帯玄関部110と介護対応ゾーン20とをつなぐ通路部が形成される。この通路部により、子世帯の住戸と介護対応ゾーン20とをつなぐ動線X5が形成される。この動線X5は、家族専用ゾーンとなる親世帯LDK30、親世帯寝室40、書斎50、親世帯水回り60、納戸80、及び、廊下90を通らない。
【0050】
以下、本実施形態の作用効果について説明する。ここでは、親世帯の夫が要介護者となっている場合における住宅Aの作用効果を説明する。本実施形態に係る住宅Aでは、親世帯玄関部10と介護対応ゾーン20とを区画する第一建具23、及び、家族専用ゾーンである廊下90と親世帯玄関部10とを区画する第二建具91が設けられている。このため、外部の介護者が出入りする介護対応ゾーン20と、親世帯の生活空間である家族専用ゾーンとを明確に区別でき、互いのプライバシーを確保することができる。また、外部の介護者は、親世帯LDK30等を含む家族専用ゾーンを通ることなく、親世帯玄関部10から介護対応ゾーン20に入ることができる。また、親世帯の妻は、親世帯玄関部10を通ることなく親世帯LDK30及び親世帯水回り60等を含む家族専用ゾーン内で生活をすることができる。このように、外部の介護者は、介護対応ゾーン20に来て介護作業を行う際に、親世帯LDK30等を含む家族専用ゾーンで生活する親世帯の妻と顔を合わすことがない。このため、外部の介護者は親世帯の妻に気兼ねなく介護作業を行うことができ、親世帯の妻は外部の介護者に気兼ねすることなく生活することができる。
【0051】
家族専用ゾーンである廊下90と親世帯玄関部10との間の第二建具91に錠を設けることで、介護対応ゾーン20を訪問する外部の介護者が誤って家族専用ゾーンに入ることを防止できる。これにより、外部の介護者が出入り可能な空間を確実に限定することができ、親世帯のプライバシーがより確実に確保される。
【0052】
介護対応室21と水回り用スペース22とを仕切る建具24として、三枚引戸、或は、1m以上の開口幅を有する建具を用いる。これにより、例えば、車椅子に乗る要介護者と介護者とが容易に水回り用スペース22に入ることができる。
【0053】
介護対応ゾーン20と親世帯LDK30との間の間仕切り壁には第三建具25が設けられている。この場合には、第三建具25を開放することで、親世帯LDK30と介護対応室21とが連通し、介護対応室21が孤立した空間となることを防止できる。また、外部の介護者が介護対応ゾーン20に入る場合には第三建具25を閉じることで、介護対応ゾーン20と家族専用ゾーンである親世帯LDK30とを明確に区別することができる。
【0054】
第三建具25に錠を設けることで、外部の介護者が誤って介護対応ゾーン20から親世帯LDK30に入り込むことを防止できる。これにより、外部の介護者が出入り可能な空間を確実に限定することができ、親世帯のプライバシーがより確実に確保される。
【0055】
介護対応室21と親世帯寝室40との間に親世帯LDK30等の部屋を設ける。この場合には、例えば、夜間に外部の介護者が介護対応室21で介護作業を行う場合に、介護作業によって生じる音が親世帯寝室40に直接伝わることを防止できる。これにより、親世帯寝室40における静けさを保つことができる。
【0056】
住宅Aに予備室70を設けることで、予備室70を、別居している兄弟姉妹等の親族が介護のために宿泊する部屋として利用することができる。また、宿泊者は、親世帯LDK30及び親世帯寝室40等を通ることなく、親世帯玄関部10或は子世帯玄関部110から予備室70に入ることができる。これにより、宿泊者は、親世帯や子世帯に気兼ねすることなく予備室70を利用することができる。
【0057】
親世帯水回り60は、予備室70と親世帯寝室40との間に設けられている。この場合には、予備室70を利用する宿泊者が夜間に親世帯水回り60を利用する際にも、親世帯の妻が就寝している親世帯寝室40を通る等の必要が無く、親世帯の妻の睡眠を妨げることがない。
【0058】
親世帯が居住する住戸(1階)には、子世帯が居住する住戸(2階)と介護対応ゾーン20とを、親世帯の家族専用ゾーン(親世帯LDK30等)を経由せずに接続する親世帯玄関ホール13を備える。この場合には、親世帯の家族専用ゾーン(親世帯LDK30等)を経由せずに子世帯の住戸と介護対応ゾーン20とをつなぐ動線X5が確保される。これにより、例えば、2階に住む子世帯が介護をする際に、2階から介護対応ゾーン20への出入りがし易くなる。
【0059】
親世帯玄関ホール13と子世帯玄関ホール113との間の間仕切り壁に第四建具14を設けることで、親世帯側の住戸と子世帯側の住戸とを明確に区別できる。これにより、外部の介護者と子世帯の家族とが互い顔を合わせないで済む。
【0060】
第四建具14に錠を設けることで、外部の介護者が誤って子世帯の住戸に入り込むことより一層確実に防止できる。
【0061】
上記住宅Aにおける介護対応ゾーン20の構成は、リフォームにより実現することができる。
図3に、リフォーム前の住宅Aの1階の構成を示す。リフォーム前において、住宅Aの1階の介護対応ゾーン20には、将来の介護のために使用できる介護対応室として、客間21Aを備える。また水回り用スペース22として、押し入れ22Aは、トイレ及び洗面台を設置可能なスペースである。住宅Aにおいて、客間21A以外の居室は、
図1を用いて説明した間取りと同じであり、同一符号を付して説明を省略する。
【0062】
客間21Aの床は、畳敷きとなっている。客間21Aと親世帯LDK30との間には、二枚引戸25Aが設けられている。
【0063】
次に、リフォーム前の住宅Aにおける動線について説明する。親世帯の夫は、健常であり、自由に移動できる状態である。廊下90により、書斎50と親世帯寝室40とを、書斎50と親世帯水回り60とを、及び、書斎50と親世帯玄関部10とをそれぞれ親世帯LDK30を経由せずに接続する第一通路部が形成される。この第一通路部により、親世帯玄関部10、親世帯寝室40、書斎50及び親世帯水回り60を互いにつなぐ動線X2が形成される。動線X2を通ることで、書斎50を使用する親世帯の夫は、親世帯LDK30を経由せずに書斎50から親世帯玄関部10、親世帯寝室40、及び、親世帯水回り60へ行き来することができる。
【0064】
また、介護対応室21、親世帯玄関ホール13及び廊下90の一部により、親世帯LDK30と親世帯玄関部10とを、及び、親世帯LDK30と親世帯水回り60とをそれぞれ書斎50の出入り口51a前を経由せずに接続する第二通路部が形成される。この第二通路部により、親世帯LDK30と親世帯玄関部10とを、及び、親世帯LDK30と親世帯水回り60とをそれぞれ書斎50の出入り口51a前を経由せずに接続する動線X3が形成される。動線X3を通ることで、親世帯LDK30を使用する来客等は、書斎50の出入り口51a前の廊下90を通ることなく、親世帯玄関部10及び親世帯水回り60へ行き来することができる。
【0065】
また、親世帯玄関ホール13及び廊下90により、子世帯玄関部110と書斎50とを親世帯LDK30を経由せずに接続する第三通路部が形成される。この第三通路部により、子世帯玄関部110と書斎50とを親世帯LDK30を経由せずに接続する動線X4が形成される。動線X4を通ることで、書斎50を使用する親世帯の夫は、親世帯LDK30を通ることなく子世帯玄関部110へ行き来することができる。
【0066】
親世帯の夫が要介護者となり、リフォームを行う場合、客間21Aの床に設置された畳を取り除き、フローリングにより床を形成する。押し入れ22Aにトイレ22a及び洗面台22bを設置する。また、二枚引戸25Aを、一枚引戸の第三建具25にリフォームする。
【0067】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態について説明する。
図4から
図6に示されるように、住宅Bは、3階建構造となっている。なお、本実施形態では、部屋の配置説明を容易にするため、
図4から
図6中の方位記号が示す通り、上方向を北側として説明する。また、第1の実施形態と同様の構成要素については、同一符号を付して詳細な説明を省略する。
【0068】
住宅Bは、親世帯が居住する住戸と、子世帯が居住する住戸(他住戸)とを備える二世帯住宅である。親世帯は、夫婦からなり、子世帯は、親世帯の夫婦の子とその配偶者からなる子世帯の夫婦と、子世帯の夫婦の子(以下「孫という」)と、からなる。住宅Bには、親世帯が3階、子世帯が1階及び2階に居住することを想定している。両世帯間は、住宅B内から行き来可能となっている。親世帯の夫婦のうちの夫は、現在、介護を要する要介護者とする。このため、親世帯の住戸の介護対応ゾーン20に外部の介護者(ヘルパー)が入り、要介護者の介護をするものとする。
【0069】
(住宅の1階の全体構成)
住宅Bの1階は、
図4に示すように、平面視で、親世帯玄関部10Aが東側に突出した形状を有する。住宅Bの1階には、親世帯玄関部(通路ゾーン)10A、共用廊下200、予備室70、子世帯玄関部110、及び、子世帯寝室160が設けられている。親世帯は親世帯玄関部10Aを経由して住宅Bに出入りし、子世帯の家族は、子世帯玄関部110を経由して住宅Bに出入りする。
【0070】
親世帯玄関部10Aは、住宅Bの東側に突出して設けられている。住宅Bの外部において、親世帯玄関部10Aの南側には、例えば、駐車スペースが設けられている。親世帯玄関部10Aの北側には、子世帯玄関部110への屋外通路が設けられている。親世帯玄関部10Aは、住宅Bの1階から3階に亘って設けられている。住宅Bの1階において親世帯玄関部10Aは、親世帯玄関扉11、親世帯玄関土間12、親世帯玄関ホール13、1階から3階に亘るエレベータ室310を備える。親世帯玄関扉11は、住宅Bの東側の壁に取り付けられている。親世帯玄関土間12は、親世帯玄関扉11を経由して住宅Bの外部と出入り可能に連通する。親世帯玄関ホール13は、親世帯玄関土間12の西側に設けられている。親世帯玄関ホール13は、エレベータ室310に設置されたエレベータ300へ乗り降りするためのエレベータホールとしての機能も兼ねる。エレベータ室310は、親世帯玄関ホール13の西側に隣接して設けられている。
【0071】
エレベータ室310内には、エレベータ300が設けられている。エレベータ室310は、住宅Bの1階から3階に亘って設けられている。エレベータ300は、住宅Bの1階から3階の各階に停止可能となっている。エレベータ300は、制御部350によって動作が制御される。なお、制御部350を設ける位置は、
図4に示した位置に限定されず、適宜の位置に設けることができる。
【0072】
制御部350は、外部の介護者が住宅Bの3階に設けられた介護対応ゾーン20を訪問する場合、1階と3階のみにエレベータを停止させる制御モードによってエレベータ300の動作を制御する。これにより、外部の介護者は、エレベータ300を経由して、親世帯玄関扉11が設けられた1階と、介護対応ゾーン20が設けられた3階とにのみ立ち入ることができる。制御部350は、外部の介護者が訪問しない場合、各階にエレベータを停止させる制御モードによってエレベータ300の動作を制御する。
【0073】
共用廊下200は、1階におけるエレベータ室310の南側に隣接して設けられている。共用廊下200の東側の位置において、共用廊下200と親世帯玄関ホール13との間の間仕切り壁には建具220が設けられている。共用廊下200の西側の位置において、共用廊下200と子世帯玄関部110の子世帯玄関ホール113との間の間仕切り壁には建具230が設けられている。
【0074】
予備室70は、共用廊下200の南側に設けられている。予備室70と共用廊下200との間の間仕切り壁には、建具が設けられている。予備室70は、主に訪問者が使用する部屋である。親世帯への訪問者が使用する場合には、建具230を施錠し、建具220を経由して親世帯の各部屋へ出入りできる状態にする。これにより、予備室70を親世帯に属する部屋とすることができる。反対に、子世帯への訪問者が使用する場合には、建具220を施錠し、建具230を経由して子世帯の各部屋へ出入りできる状態にする。これにより、予備室70を子世帯に属する部屋とすることができる。以上のように、予備室70は、親世帯及び子世帯のどちらの世帯に属する部屋であるかを切り替えることができる。
【0075】
予備室70の北側には、共用トイレ210が設けられている。共用トイレ210は、建具を経由して共用廊下200に接続される。
【0076】
子世帯寝室160は、住宅Bの西側に設けられている。子世帯寝室160は、建具を経由して子世帯玄関部110の子世帯玄関ホール113に接続される。
【0077】
子世帯玄関部110は、住宅Bの東西方向の略中央部において、北側の位置から略中央部に亘って設けられている。子世帯玄関部110は、北側から順に、子世帯玄関土間112及び子世帯玄関ホール113を備える。子世帯玄関土間112の東側の壁には、子世帯玄関扉111が設けられている。子世帯玄関ホール113は、建具を経由して子世帯寝室160に接続され、建具230を経由して共用廊下200に接続される。子世帯玄関ホール113には、住宅Bの1階から3階をつなぐ階段120が接続される。
【0078】
(住宅の2階の全体構成)
住宅Bの2階は、
図5に示すように、平面視で略矩形状を有する。住宅Bの2階には、階段120、エレベータ室310、孫居室130、子世帯LDK150、子世帯水回り170、及び、廊下190が設けられている。2階の各部屋の配置については、
図5に示したものに限定されず、適宜の配置とすることができる。また、住宅Bの2階に子世帯の夫婦と孫とが生活することができるものであれば、
図5に示すもの以外の間取り構成とすることができる。
【0079】
(住宅の3階の全体構成)
住宅Bの3階は、
図6に示すように、平面視で略矩形状を有する。住宅Bの3階には、親世帯玄関部10Aのエレベータ室310及びエレベータホール320と、介護対応ゾーン20と、親世帯LDK30と、親世帯水回り60と、書斎50と、親世帯寝室40と、廊下90と、階段120とが設けられている。親世帯LDK30、親世帯水回り60、廊下90、書斎50、及び、親世帯寝室40を含む領域が、親世帯の家族専用ゾーンとなる。この家族専用ゾーンは、親世帯の夫の介護をする外部の介護者が入らない領域とする。
【0080】
エレベータホール320は、エレベータ室310の東側に設けられている。エレベータホール320の南側の位置において、エレベータホール320と親世帯LDK30との間の間仕切り壁には第二建具420が設けられている。第二建具420には、錠が設けられている。第二建具420に設けられている錠は、エレベータホール320から第二建具420を経由して親世帯LDK30に外部の介護者が入り込むことを防止するためのものである。第二建具420に設けられている錠としては、エレベータホール320側から外部の介護者が開錠することができない構造であれば種々の錠を用いることができる。
【0081】
介護対応ゾーン20は、住宅Bの東側、且つ、エレベータホール320の東側に隣接して設けられている。介護対応ゾーン20は、親世帯の夫が使用する。介護対応ゾーン20には、介護対応室21、及び、水回り用スペース22が設けられている。水回り用スペース22は、住宅Bの東側に位置する。水回り用スペース22には、トイレ22a及び洗面台22bが設けられている。介護対応室21は、水回り用スペース22の西側に隣接して設けられている。介護対応室21と水回り用スペース22とは、建具24によって仕切られている。介護対応室21の西側の位置において、介護対応室21とエレベータホール320との間の間仕切り壁には第一建具410が設けられている。
【0082】
親世帯LDK30は、エレベータ室310及びエレベータホール320の南側に隣接して設けられている。親世帯LDK30には、居間、及び、食堂・台所が設けられている。
【0083】
住宅Bの西側の位置には、北側から順に、親世帯寝室40、書斎50、及び、親世帯水回り60が設けられている。親世帯寝室40とエレベータ室310との間には、階段120が設けられている。書斎50及び親世帯水回り60のトイレ63と、親世帯LDK30との間には廊下90が設けられている。
【0084】
廊下90は、それぞれ、建具を経由して親世帯寝室40、トイレ63及び洗面室61に接続される。階段120の降り口は、廊下90に接続される。階段120が設けられている階段室と廊下90との間の間仕切り壁には、建具121が設けられている。廊下90と親世帯LDK30とは、出入り口35aを経由して接続される。なお、出入り口35aには、開放状態を維持できる建具を設けてもよい。
【0085】
書斎50の東側の位置において、書斎50と廊下90との間の間仕切り壁には、廊下90から書斎50へ出入りするための出入り口51aが設けられている。書斎50の出入り口51aと、親世帯LDK30の出入り口35aとは、廊下90を挟んで対向している。出入り口51aには、施錠可能な腰高建具51が設けられている。書斎50には、第1の実施形態と同様に、椅子50a、L型のカウンター50b、棚50c及び採光、通風が可能な窓52が設けられている。
【0086】
(住宅の動線)
次に、住宅B内での動線について説明する。ここでは、親世帯の夫が要介護者となって主に介護対応ゾーン20で生活をする状態での動線を説明する。
【0087】
要介護者である夫の介護のために、外部の介護者はエレベータ300を使用して介護対応ゾーン20に訪れるものとする。1階に設けられた親世帯玄関土間12及び親世帯玄関ホール13と、1階と3階とをつなぐエレベータ室310と、3階に設けられたエレベータホール320とにより、親世帯玄関扉11と介護対応ゾーン20とをつなぐ通路部が形成される。この通路部により、親世帯玄関扉11と介護対応ゾーン20とをつなぐ動線X1が形成される。この動線X1は、親世帯の家族専用ゾーンとなる親世帯LDK30、親世帯寝室40、書斎50、親世帯水回り60、及び、廊下90を通らない。
【0088】
2階から3階に亘るエレベータ室310、及び、3階のエレベータホール320により、子世帯の住戸である子世帯LDK150等と介護対応ゾーン20とをつなぐ通路部が形成される。この通路部により、子世帯の住戸と介護対応ゾーン20とをつなぐ動線X5が形成される。この動線X5は、家族専用ゾーンとなる親世帯LDK30、親世帯寝室40、書斎50、親世帯水回り60、及び、廊下90を通らない。
【0089】
以下、本実施形態の作用効果について説明する。ここでは、親世帯の夫が要介護者となっている場合における住宅Bの作用効果を説明する。本実施形態に係る住宅Bでは、3階における親世帯玄関部10Aのエレベータホール320と介護対応ゾーン20とを区画する第一建具410、及び、家族専用ゾーンである親世帯LDK30と3階における親世帯玄関部10Aのエレベータホール320とを区画する第二建具420が設けられている。このため、日照や通風等の環境が良い二階以上に介護対応室21を設けた場合であっても、外部の介護者が出入りする介護対応ゾーン20と、親世帯の生活空間である家族専用ゾーンとを明確に区別でき、互いのプライバシーを確保することができる。また、外部の介護者は、親世帯LDK30等を含む家族専用ゾーンを通ることなく、親世帯玄関部10Aに設けられたエレベータ300を用いて1階及び3階まで移動して介護対応ゾーン20に入ることができる。また、親世帯の妻は、親世帯玄関部10Aを通ることなく親世帯LDK30及び親世帯水回り60等を含む家族専用ゾーン内で生活をすることができる。このように、外部の介護者は、介護対応ゾーン20に来て介護作業を行う際に、親世帯LDK30等を含む家族専用ゾーンで生活する親世帯の妻と顔を合わすことがない。このため、外部の介護者は親世帯の妻に気兼ねなく介護作業を行うことができ、親世帯の妻は外部の介護者に気兼ねすることなく生活することができる。
【0090】
家族専用ゾーンである親世帯LDK30と親世帯玄関部10Aのエレベータホール320との間の第二建具420に錠を設けることで、介護対応ゾーン20を訪問する外部の介護者が誤って家族専用ゾーンに入ることを防止できる。これにより、外部の介護者が出入り可能な空間を確実に限定することができ、親世帯のプライバシーがより確実に確保される。
【0091】
介護対応室21と親世帯寝室40との間に親世帯LDK30等の部屋を設ける。この場合には、例えば、夜間に外部の介護者が介護対応室21で介護作業を行う場合に、介護作業によって生じる音が親世帯寝室40に直接伝わることを防止できる。これにより、親世帯寝室40における静けさを保つことができる。
【0092】
住宅Bに予備室70を設けることで、予備室70を、別居している兄弟姉妹等の親族が介護のために宿泊する部屋として利用することができる。また、宿泊者は、親世帯LDK30及び親世帯寝室40等を通ることなく、親世帯玄関部10A或は子世帯玄関部110から予備室70に入ることができる。これにより、宿泊者は、親世帯や子世帯に気兼ねすることなく予備室70を利用することができる。
【0093】
エレベータ室310及びエレベータホール320は、子世帯の住戸である2階の子世帯LDK150等と3階の介護対応ゾーン20とを、親世帯の家族専用ゾーン(親世帯LDK30等)を経由せずに接続する。この場合、親世帯の家族専用ゾーン(親世帯LDK30等)を経由せずに子世帯の住戸と介護対応ゾーン20とをつなぐ動線X5が確保される。これにより、例えば、子世帯が介護をする際に、子世帯の住戸である子世帯LDK150等から介護対応ゾーン20への出入りがし易くなる。
【0094】
親世帯玄関ホール13と子世帯玄関ホール113との間に建具220及び建具230を設けることで、親世帯側の住戸と子世帯側の住戸とを明確に区別できる。これにより、外部の介護者が親世帯玄関ホール13から子世帯の住戸側へ入り込むことを防止できる。
【0095】
建具220或は建具230に錠を設けることで、外部の介護者が誤って子世帯の住戸に入り込むことより一層確実に防止できる。
【0096】
親世帯の家族専用ゾーン内に階段120を設けることで、親世帯の妻が上下階を移動するときに、エレベータを利用する必要がなくなり、意図せずして外部の介護者と顔を合わせることがない。
【0097】
外部の介護者が介護対応ゾーン20を訪問する場合、制御部350は、1階と3階のみにエレベータを停止させる制御モードによってエレベータ300の動作を制御する。この場合には、外部の介護者が、エレベータ300を経由して、誤って介護対応室21以外のゾーンに立ち入り込むことを防止できる。
【0098】
上記住宅Bにおける介護対応ゾーン20の構成は、リフォームにより実現することができる。
図7に、リフォーム前の住宅Bの3階の構成を示す。リフォーム前において、住宅Aの1階の介護対応ゾーン20には、将来の介護のために使用できる介護対応室として、客間21Aを備える。また水回り用スペース22として、押し入れ22Aは、トイレ及び洗面台を設置可能なスペースである。住宅Bにおいて、客間21A以外の居室は、
図6を用いて説明した間取りと同じであり、同一符号を付して説明を省略する。
【0099】
客間21Aの床は、畳敷きとなっている。客間21Aと親世帯LDK30及びエレベータホール320との間には、三枚引戸の第一建具410Aが設けられている。なお、リフォーム前の状態では、
図6に示す第二建具420は設けられていない。
【0100】
次に、リフォーム前の住宅Bにおける動線について説明する。親世帯の夫は、健常であり、自由に移動できる状態である。廊下90等を含む領域により、書斎50と親世帯寝室40とを、書斎50と親世帯水回り60とを、及び、書斎50と親世帯玄関部10Aとをそれぞれ親世帯LDK30を経由せずに接続する第一通路部が形成される。より詳細には、書斎50と親世帯玄関部10Aとを接続する第一通路部は、廊下90と、3階と1階とをつなぐ階段120と、1階の子世帯玄関ホール113及び共用廊下200とにより形成される。この第一通路部により、親世帯玄関部10A、親世帯寝室40、書斎50及び親世帯水回り60を互いにつなぐ動線X2が形成される。動線X2を通ることで、書斎50を使用する親世帯の夫は、親世帯LDK30を経由せずに書斎50から親世帯玄関部10A、親世帯寝室40、及び、親世帯水回り60へ行き来することができる。
【0101】
また、3階のエレベータホール320と、3階と1階とをつなぐエレベータ室310とにより、親世帯LDK30と親世帯玄関部10Aとを書斎50の出入り口51a前を経由せずに接続する第二通路部が形成される。この第二通路部により、親世帯LDK30と親世帯玄関部10Aとを書斎50の出入り口51a前を経由せずに接続する動線X3が形成される。動線X3を通ることで、親世帯LDK30を使用する来客等は、書斎50の出入り口51a前の廊下90を通ることなく、親世帯玄関部10Aへ行き来することができる。
【0102】
また、廊下90及び階段120により、子世帯の住戸である子世帯LDK150等と書斎50とを親世帯LDK30を経由せずに接続する第三通路部が形成される。この第三通路部により、子世帯の住戸である子世帯LDK150等と書斎50とを親世帯LDK30を経由せずに接続する動線X4が形成される。動線X4を通ることで、書斎50を使用する親世帯の夫は、親世帯LDK30を通ることなく子世帯LDK150等へ行き来することができる。
【0103】
親世帯の夫が要介護者となり、リフォームする場合、客間21Aの床に設置された畳を取り除き、フローリングにより床を形成する。押し入れ22Aにトイレ22a及び洗面台22bを設置する。また、三枚引戸の第一建具410Aを、二枚引戸の第一建具410にリフォームする。また、エレベータホール320と親世帯LDK30との間に第二建具420を取り付ける。
【0104】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。例えば、図を用いて説明した間取りの各構成要素は、一例であり、建具の種類や部屋の大きさなどは適宜変更可能である。また、水回り用スペースには、洗面台にかえて、洗濯流し等を設けても良い。また、第2の実施形態に係る住宅Bは、4階建て以上の建物であってもよい。