特許第6376735号(P6376735)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6376735
(24)【登録日】2018年8月3日
(45)【発行日】2018年8月22日
(54)【発明の名称】医療用接続装置
(51)【国際特許分類】
   A61M 39/10 20060101AFI20180813BHJP
   F16L 37/091 20060101ALI20180813BHJP
【FI】
   A61M39/10 110
   F16L37/091
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-167949(P2013-167949)
(22)【出願日】2013年8月13日
(65)【公開番号】特開2015-36046(P2015-36046A)
(43)【公開日】2015年2月23日
【審査請求日】2016年7月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000167325
【氏名又は名称】光陽産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085556
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 昇
(74)【代理人】
【識別番号】100115211
【弁理士】
【氏名又は名称】原田 三十義
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 貴幸
【審査官】 田中 玲子
(56)【参考文献】
【文献】 英国特許出願公開第01555640(GB,A)
【文献】 特開昭58−081293(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 39/10
F16L 37/091
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
接続孔を有し、医療用の管体が上記接続孔にその一端開口部から挿入される装置本体と、リング状に形成され、上記接続孔の内部に上記管体の挿入方向と逆方向へ抜け止め状態で設けられた係合部材とを備え、
上記係合部材の外周部には、環状板部が形成され、上記係合部材の内周部には、上記管体の挿入方向前方へ向かうにしたがって径方向内側へ向かうように傾斜する複数の食い込み歯が形成され、上記係合部材を貫通した状態で上記接続孔に挿入された上記管体が挿入方向と逆方向へ移動させられると、上記食い込み歯が上記管体の外周部に食い込み、それによって上記管体が上記接続孔から抜け止めされる医療用接続装置において、
上記装置本体には、係合解除部材が待機位置とこの待機位置より上記管体の挿入方向前方である解除位置との間を上記管体の挿脱方向へ移動可能に設けられ、
上記係合解除部材には、上記接続孔の内周面と上記管体の外周面との間に上記接続孔の上記一端開口部から挿入可能な解除部が設けられ
記係合解除部材が、上記装置本体の外周部に上記待機位置と上記解除位置との間を移動可能に外挿されるとともに待機位置側の一端部が上記装置本体から上記管体の挿入方向後方に向かって突出させられた大径筒部と、この大径筒部の上記一端部内周面に設けられ、径方向内側へ向かって突出する環状突出部と、この環状突出部の内周部に設けられ、上記環状突出部から上記管体の挿入方向前方へ向かって延びる小径筒部とを有し、
上記小径筒部の内部を上記管体が挿脱可能とされ、上記小径筒部の先端部には、径方向の外側部分に当接部が形成され、径方向の内側部分に上記解除部が上記当接部から上記管体の挿入方向前方へ向かって延びるように形成されており、
上記係合解除部材が上記待機位置に位置しているときには、上記解除部は、上記管体が上記接続孔に挿入されることを許容し、上記係合解除部材が上記待機位置から上記解除位置に移動させられると、上記当接部は上記係合部材の環状板部に突き当たり、上記解除部は上記食い込み歯に突き当たって上記管体から径方向外側へ離間させ、それによって上記管体が上記接続孔から抜け出ることが可能な状態にすることを特徴とする医療用接続装置。
【請求項2】
上記解除部が、上記小径筒部の先端部に環状に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の医療用接続装置。
【請求項3】
上記接続孔の内部に設けられ、上記接続孔の内周面と上記管体の外周面との間を封止する環状のシール部材をさらに備え、
上記シール部材が、上記管体の上記接続孔への挿入方向において上記係合部材より前方に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の医療用接続装置。
【請求項4】
上記接続孔の内部には、上記接続孔の内周面と上記管体の外周面との間を封止する環状のシール部材が設けられ、
上記接続孔の内周面には、上記接続孔に挿入された上記管体の先端部に突き当たることによって上記管体の上記接続孔への挿入位置を定める位置決め突出部が形成され、この位置決め突出部は、上記管体が上記シール部材を貫通した後に上記管体の先端部に突き当たるように、上記シール部材より上記管体の挿入方向前方に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の医療用接続装置。
【請求項5】
上記係合解除部材の大径筒部の内周面には、係合突出部が形成され、
上記装置本体の外周面には、上記係合突出部と係合する係合凹部が形成され、
上記係合突出部が、上記係合凹部における上記装置本体の軸線方向の端面に突き当たることにより、上記係合解除部材が上記装置本体に対し抜け止めされていることを特徴とする請求項1に記載の医療用接続装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、医療用の管体を他の管体や医療機器あるいは人体に接続する際に用いられる医療用接続装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、この種の接続装置は、下記特許文献1に記載されているように、装置本体を有している。装置本体には、医療用の管体が挿入される接続孔が形成されている。この接続孔の内部には、シール部材及び係合部材が設けられている。接続孔に管体を挿入すると、接続孔の内周面と管体の外周面との間をシール部材が封止する。また、係合部材が管体に係合する。それによって、管体が接続孔に対して抜け止めされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−209390号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
係合部材による管体の抜け止めは、次のようにして行われる。すなわち、係合部材は、リング状をなしており、その内周部には、管体の挿入方向前方へ向かうにしたがって径方向内側へ向かうように傾斜する食い込み歯が形成されている。各食い込み歯は、管体の挿入時には各食い込み歯の先端部に接する内接円の内径が大径になるように弾性変形して管体の挿入を許容するが、管体を抜き出そうとすると、内接円が小さくなるように変形して管体の外周部に食い込む。このため、管体を接続孔に一旦挿入すると、管体を抜き出すことができず、接続装置全体を管体と一緒に廃棄せざるを得ないという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明は、上記の問題を解決するために、接続孔を有し、医療用の管体が上記接続孔にその一端開口部から挿入される装置本体と、リング状に形成され、上記接続孔の内部に上記管体の挿入方向と逆方向へ抜け止め状態で設けられた係合部材とを備え、上記係合部材の内周部には、上記管体の挿入方向前方へ向かうにしたがって径方向内側へ向かうように傾斜する複数の食い込み歯が形成され、上記係合部材を貫通した状態で上記接続孔に挿入された上記管体が挿入方向と逆方向へ移動させられると、上記食い込み歯が上記管体の外周部に食い込み、それによって上記管体が上記接続孔から抜け止めされる医療用接続装置において、上記装置本体には、係合解除部材が待機位置とこの待機位置より上記管体の挿入方向前方である解除位置との間を上記管体の挿脱方向へ移動可能に設けられ、上記係合解除部材には、上記接続孔の内周面と上記管体の外周面との間に上記接続孔の上記一端開口部から挿入可能な解除部が設けられ、この解除部は、上記係合解除部材が上記待機位置に位置しているときには、上記管体が上記接続孔に挿入されることを許容し、上記係合解除部材が上記待機位置から上記解除位置に移動させられると、上記食い込み歯に突き当たって上記管体から径方向外側へ離間させ、それによって上記管体が上記接続孔から抜け出ることが可能な状態にすることを特徴としている。
この場合、上記係合解除部材が、上記装置本体の外周部に上記待機位置と上記解除位置との間を移動可能に外挿され、待機位置側の一端部が上記装置本体から上記管体の挿入方向後方に向かって突出させられた大径筒部と、この大径筒部の上記一端部内周面に設けられ、径方向内側へ向かって突出する環状突出部と、この環状突出部の内周部に設けられ、上記環状突出部から上記管体の挿入方向前方へ向かって延びる小径筒部とを有し、上記小径筒部の内部を上記管体が挿脱可能とされ、上記小径筒部の先端部に上記解除部が設けられていることが望ましい。特に、上記解除部が、上記小径筒部の先端部に環状に形成されていることが望ましい。
また、第2の発明は、接続孔を有し、医療用の管体が上記接続孔にその一端開口部から挿入される装置本体と、上記接続孔の内部に設けられ、上記管体の上記接続孔への挿入を許容し、かつ上記接続孔からの脱出を阻止する係合部材と、上記接続孔の内部に設けられ、上記接続孔の内周面と上記管体の外周面との間を封止する環状のシール部材とを備えた医療用接続装置において、上記シール部材が、上記管体の上記接続孔への挿入方向において上記係合部材より前方に配置されていることを特徴としている。
この場合、上記接続孔の内周面には、上記接続孔に挿入された上記管体の先端部に突き当たることによって上記管体の上記接続孔への挿入位置を定める位置決め突出部が形成され、この位置決め突出部は、上記管体が上記シール部材を貫通した後に上記管体の先端部に突き当たるように、上記シール部材より上記管体の挿入方向前方に配置されていることが望ましい。
【発明の効果】
【0006】
上記特徴構成を有するこの発明によれば、接続孔に管体が挿入された状態において、係合解除部材を待機位置から解除位置まで移動させると、食い込み歯が管体の外周部からその径方向外側へ離間させられる。したがって、係合部材を接続孔から抜き出すことができる。よって、接続装置を再使用することができる。
また、第2の発明によれば、シール部材が係合部材に対し、管体の上記接続孔への挿入方向において前方に配置されているから、例えば造影剤が管体から接続孔内に流入した場合、その造影剤は、接続孔の内周面と管体の外周面との間を係合部材側に向かったとしても、係合部材に達する前にシール部材によって係合部材側へ移動することが阻止される。したがって、係合部材が管体に固着されることがない。よって、管体が装置本体から抜き出すことができなくなるような事態を未然に防止することができる。このような作用効果は、接続孔から管体へ造影剤等が供給される場合も同様に得られる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、この発明に係る医療用接続装置の一実施の形態を管体が接続される前の状態で示す断面図である。
図2図2は、同実施の形態を、管体が接続された状態で示す断面図である。
図3図3は、同実施の形態を、係合解除部材を解除位置に移動させた状態で示す図2と同様の断面図である。
図4図4は、同実施の形態の分解斜視図である。
図5図5は、同実施の形態に接続されるべき管体としてのルアーテーパ状の管部を先端部に有するシリンジを示す断面図である。
図6図6は、同実施の形態にシリンジの管部を接続した状態で示す断面図である。
図7図7は、同実施の形態を、係合解除部材を解除位置に移動させた状態で示す図6と同様の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、この発明を実施するための最良の形態を、図面を参照して説明する。
図1図4は、この発明の第1実施の形態たる医療用接続装置1及びこの接続装置1を介して他の医療機器や人体に接続される管体Tを示す。なお、管体Tは、樹脂からなるものであり、内外径が一定であるストレートな管として形成されている。
【0009】
接続装置1は、装置本体2、シール部材3、保持部材4、係合部材5及び係合解除部材6を有している。
【0010】
装置本体2は、その一端側(図1において左側)に形成された大径部2a及び他端側に形成された小径部2bを有している。大径部2a及び小径部2bは、互いに軸線を一致させて形成されており、それらの軸線を図1の左右方向に向けて配置されている。大径部2a及び小径部2bは、いずれも断面円形に形成されているが、他の形状、例えば六角形状に形成してもよい。また、装置本体2は、その外径を全長にわたって一定にしてもよい。なお、装置本体2を含む接続装置1の各構成部材については、説明の便宜上、図1の左右を用いて説明することとする。勿論、接続装置1は、そのような方向に限定されるものではない。
【0011】
装置本体2には、その軸線上を左端面から右端面まで貫通する断面円形の接続孔2cが形成されている。接続孔2cの内周面の中間部には、環状突出部(位置決め突出部)2dが形成されている。環状突出部2dに代えて、周方向に不連続な複数の突出部を形成してもよい。環状突出部2dにより、接続孔2cが左側の下流側孔部2eと右側の上流側孔部2fとに区分されている。下流側孔部2eと上流側孔部2fとは、互いの軸線を若干ずらして配置してもよい。また、下流側孔部2eをその長手方向の中間部において屈曲させ、大径部2aの外周面に開口させてもよい。
【0012】
下流側孔部2eには、接続管7の一端部が挿入されている。接続管7の外周面は、下流側孔部2eの内周面に接着等によって固着されている。これによって、接続管7が装置本体2に固定されるとともに、接続管7の外周面と下流側孔部2eの内周面との間が封止されている。接続管7は、下流側孔部2eに挿脱可能に挿入してもよい。その場合には、接続管7の外周面と下流側孔部2eの内周面との間をOリング等のシール部材によって封止することが望ましい。また、接続管7は、その先端面が環状突出部2dに突き当たるまで下流側孔部2eに挿入されているが、必ずしも接続管7の先端面を環状突出部2dに突き当てる必要がない。なお、この実施の形態では、接続管7として管体Tと同一構成の管が採用されているが、他の構成の管を採用してもよい。接続管7の他端部は、医療機器や人体等に接続されている。
【0013】
上流側孔部2fは、環状突出部2dから右側へ向かって順次形成された小径孔部2g、中径孔部2h及び大径孔部2iを有している。これらの孔部2g,2h,2iは、互いの軸線を一致させて配置されている。
【0014】
小径孔部2gは、その内径が管体Tの外径より若干大径になっているが、管体Tを挿入し得る限り、管体Tとほぼ同一内径にしてもよい。また、ストレートな孔とすることなく、左方へ向かって小径になるようなテーパ孔としてもよい。
【0015】
中径孔部2hは、小径孔部2gより大径である。中径孔部2hには、Oリング等の弾性材からなる環状のシール部材3が収容されている。シール部材3の外径は、中径孔部2hの内径より若干大径であり、シール部材3の外周部は、シール部材3自体の弾性によって中径孔部2hの内周面に押圧接触している。一方、シール部材3の内径は、シール部材3の内周部が弾性的に拡径して管体Tを通すことができる範囲において管体Tの外径より小径になっている。したがって、管体Tをシール部材3に挿通すると、シール部材3の内周部が管体Tの外周面に押圧接触し、管体Tの外周面とシール部材3の内周面との間が封止される。しかも、管体Tをシール部材3に挿通すると、シール部材3が弾性的に押し潰されて、シール部材3の外周部が中径孔部2hの内周面により一層強く押圧接触し、シール部材3の外周部と中径孔部2hの内周面との間がより一層高度に封止される。このようにして、中径孔部2hの内周面と管体Tの外周面との間がシール部材3によって封止されている。
【0016】
大径孔部2iは、中径孔部2hより大径である。大径孔部2iの右端部は、装置本体2の右端面に開口しており、それが接続孔2cの右側の開口部になっている。この開口部から管体Tが上流側孔部2fに挿入される。
【0017】
大径孔部2iには、保持部材4が収容されている。保持部材4は、筒状に形成されており、その軸線を大径孔部2iの軸線と一致させて配置されている。保持部材4の左端部は、大径孔部2iの底面に突き当たっており、それによって保持部材4の左方への移動が阻止されている。保持部材4の外周面には、係合突出部4aが形成されている。この係合突出部4aが大径孔部2iの内周面に形成された係合凹部2jの右側の側面に突き当たることにより、保持部材4の右方への移動が阻止されている。したがって、保持部材4は、大径孔部2iに左右方向へ移動不能に収容されている。なお、係合突出部4aの外径は、大径孔部2iの内径より若干大径であるが、装置本体2の小径部2bが弾性変形して大径孔部2iが拡径するとともに、保持部材4が弾性的に縮径することにより、係合突出部4aが大径孔部2i内にその開口部から係合凹部2jまで挿入可能になっている。
【0018】
保持部材4の内周面の左端部には、環状突出部4bが形成されている。この環状突出部4bの内径は、管体Tの外径より大径に設定されている。したがって、管体Tは、環状突出部4bの内部を挿通可能である。その一方、環状突出部4bの内径は、中径孔部2hの内径より小径であり、小径孔部2gの内径とほぼ同一に設定されている。したがって、シール部材3が右方へ移動しようとすると、環状突出部4bに突き当たる。これにより、シール部材3が中径孔部2hから右方へ抜け出ることが阻止されている。しかも、シール部材3は、中径孔部2hの底面に突き当たることにより、左方への移動が阻止されている。したがって、シール部材3は、中径孔部2hに左右方向へほとんど移動不能な状態で装着されている。
【0019】
大径孔部2iの開口部側の内部には、係合部材5が収容されている。係合部材5は、鋼等の金属製の薄い板材からなるものであり、環状に形成されている。そして、その軸線を大径孔部2iの軸線とほぼ一致させて配置されている。係合部材5の外周部には、周方向に連続した環状板部5aが形成されている。この環状板部5aの内周部には、複数の食い込み歯5bが周方向に並んで形成されている。
【0020】
環状板部5aの外径は、大径孔部2iの内径より若干小径に設定されている。したがって環状板部5a、ひいては係合部材5は、大径孔部2iの内径と環状板部5aの外径との差の分だけ大径孔部2iの径方向へ移動可能である。係合部材5を大径孔部2iの径方向へ移動可能にした理由については後述する。係合部材5は、必ずしも大径孔部2iの径方向へ移動可能にする必要が無く、保持部材4の右端面に固定してもよい。その場合には、係合部材5(環状板部5a)の軸線を大径孔部2iの軸線と一致させる。環状板部5aの内径は、管体Tの外径より大径に設定されている。
【0021】
食い込み歯5bは、左方へ向かうにしたがって係合部材5の径方向内側へ向かうように傾斜させられている。しかも、各食い込み歯5bは、隣接するものどうしが周方向に分離されているので、傾斜角が変化するように弾性変形可能である。各食い込み歯5bの先端部に接する内接円の直径は、管体Tの外径より所定の寸法だけ小径に設定されている。したがって、管体Tを大径孔部2iにその右端開口部から挿入すると、管体Tの先端面と外周面との交差部が食い込み歯5bの基端部と先端部との間の中間部に突き当たる。管体Tを大径孔部2iにさらに挿入すると、係合部材5が左方へ移動させられる。係合部材5は、環状板部5aが保持部材4の右端面に突き当たると、それ以上左方へ移動することができなくなる。その状態で管体Tを左方へ押すと、各食い込み歯5bが傾斜しているので、食い込み歯5bと管体Tとの間に自動調芯作用が働き、係合部材5がその径方向(大径孔部2iの径方向)へ移動させられる。そして、係合部材5の軸線が管体Tの軸線と一致させられる。これが、係合部材5を大径孔部2iの径方向へ移動可能にした理由である。管体Tをさらに挿入すると、食い込み歯5bが管体Tによって左方へ押されて弾性変形し、各食い込み歯5bに内接する内接円の直径が大きくなる。そして、各食い込み歯5bの内接円の直径が管体Tの外径と同一になるまで大きくなると、管体Tが各係合歯5bの先端部(内周側の端部)に接触した状態で左方へ移動する。その後、管体Tは、図2に示すように、保持部材4及びシール部材3を貫通して小径孔部2gに入り込み、環状突出部2dに突き当たる。すると、管体Tは、それ以上左方へ移動することができなくなる。その状態において、管体Tを接続孔2cから引き抜くように右方へ移動させると、各食い込み歯5bが管体Tの外周部に食い込み、管体Tが右方へ移動することを阻止する。これにより、管体Tが装置本体2の上流側孔部2f(接続孔2c)に抜き出し不能に接続される。勿論、管体Tの外周面と接続孔2c(中径孔部2h)の内周面との間は、シール部材3によって封止されている。
【0022】
装置本体2の小径部2bの外周部には、係合解除部材6が装着されている。係合解除部材6は、断面円形の大径筒部6aを有している。大径筒部6aは、断面非円形に形成してもよい。大径筒部6aは、小径部2bに左右方向へ移動可能に外挿されている。大径筒部6aの内周面には、係合突出部6bが形成されている。一方、小径部2bの外周面には、係合凹部2kが形成されている。係合突出部6bが係合凹部2kの右側の端面に突き当たると、大径筒部6aがそれ以上右方へ移動することができなくなる。これにより、係合解除部材6が小径部2bに対し右方へ抜け止めされている。以下、係合突出部6bが係合凹部2kの右側の端面に突き当たったときの係合解除部材6の位置を待機位置という。なお、係合突出部6bの内径は、小径部2bの外径より小径であるが、大径筒部6aが弾性的に拡径するとともに、小径部2bが弾性的に縮径することにより、係合突出部6bが係合凹部2k内に入り込むまで大径筒部6aを小径部2bに外挿することができる。
【0023】
大径筒部6aの外周面の左端部には、操作部6cが環状に形成されている。操作部6cは、その外周部を手で持って係合解除部材6を左右方向へ移動させるためのものである。係合解除部材6は、上記のように、右方へは係合突出部6bが係合凹部2kの右端面に突き当たるまで、つまり待機位置まで移動可能であり、左方へは操作部6cが大径部2aの右端面に突き当たるまで移動可能である。ただし、実際には、操作部6cが大径部2aに突き当たるまで係合解除部材6が左方へ移動することはなく、その手前で止まる。この点については、後述する。
【0024】
大径筒部6aの内周面の右端部には、径方向内側へ突出する環状突出部6dが形成されている。環状突出部6dは、係合解除部材6がその移動可能範囲内のいずれの位置に位置しているときでも小径部2bの右端面に突き当たることがないように、小径部2bから右方へ離間して配置されている。環状突出部6dの内径は、管体Tの外径より若干大径になっている。したがって、環状突出部6dの内部には、管体Tが挿通可能である。
【0025】
環状突出部6dの小径部2bと対向する端面の内周部には、小径部2b側に向かって延びる小径筒部6eが形成されている。小径筒部6eは、その軸線を接続孔2cの軸線と一致させて配置されている。小径筒部6eの内径は、環状突出部6dの内径と同一である。したがって、小径筒部6e内に管体Tが挿入可能である。
【0026】
小径筒部6eの左端面のうち、径方向の外側の部分には、当接面6fが環状に形成されている。この当接面6fの内径は、係合部材5の環状板部5aの内径より小径であるが、外径は環状板部5aの内径より大径で、かつ環状板部5aの外径より小径に設定されている。当接面6fは、係合解除部材6が左方へ移動させられると、係合部材5の環状板部5aに突き当たり、環状板部5aを介して保持部材4の右端面に突き当たる。しかも、当接面6fは、操作部6cが大径部2aの右端面に突き当たる前に環状板部5aに突き当たるように配置されている。したがって、当接面6fが環状板部5aに突き当たることにより、係合解除部材6の左方への移動限界位置が定められている。以下、係合解除部材6の左方への移動限界位置を解除位置という。
【0027】
小径筒部6eの左端面のうち、径方向の内側の部分には、左方へ向かって延びる環状突出部(解除部)6gが形成されている。環状突出部6gは、小径筒部6eと同軸に形成されている。環状突出部6gは、係合解除部材6が待機位置に位置しているときには、環状突出部6gの先端部が係合部材5の食い込み歯5bから右方に離間し、係合解除部材6が待機位置と解除位置との間の中間位置まで左方へ移動すると、環状突出部6gの先端部が食い込み歯5bの径方向の中間部に突き当たるように配置されている。
【0028】
環状突出部6gの内径は、内側筒部6eの内径と同一に設定されている。したがって、環状突出部6g内を管体Tが挿通可能である。環状突出部6gの外周面は、左方へ向かうにしたがって小径になるようなテーパ面として形成されている。このテーパ面の傾斜角度は、係合部材5の食い込み歯5bの傾斜角度より小さい角度に設定されている。環状突出部6gの外周面は、一定の外径を有する円筒面としてもよい。環状突出部6gの先端縁の外径、つまり環状突出部6gの最小外径は、食い込み歯5bの内接円の直径より大径であり、環状板部5aの内径より小径である。したがって、係合解除部材6を待機位置から左方へ移動させると、環状突出部6gの先端面と外周面との交差部が食い込み歯5bに突き当たり、食い込み歯5bをその内接円の直径が大きくなるように弾性変形させる。つまり、接続孔2cの軸線に対する食い込み歯5bの傾斜角度が小さくなるように、食い込み歯5bを弾性変形させる。係合解除部材6を解除位置まで移動させると、食い込み歯5bの内接円の直径が管体Tの外径より大径になり、食い込み歯5bが管体Tの外周面からその径方向へ離間する。その結果、管体Tを接続孔2cから右方へ引き抜くことができるようになる。
【0029】
次に、上記構成の医療用接続装置1に管体Tを接続する場合について説明する。管体Tを接続装置1に接続するに際しては、図1に示すように、係合解除部材6を待機位置に位置させておくとともに、管体Tの左端部(先端部)の軸線を接続孔2cの軸線とほぼ一致させる。そして、管体Tを内側筒部6eに挿通し、さらに大径孔部2iに挿入する。すると、管体Tの先端部が食い込み歯5bに突き当たり、係合部材5を左方へ移動させる。係合部材5は、環状板部5aが保持部材4に突き当たるとそれ以上左方へ移動することができなくなる。その状態で管体Tをさらに左方へ移動させると、管体Tが食い込み歯5bを弾性変形させる。そして、管体Tは、食い込み歯5bの先端面(内周面)に接した状態で係合部材5を貫通する。その後、管体Tは、保持部材4及びシール部材3を順次貫通して小径孔部2gに入り込み、環状突出部2dに突き当たって停止する。その状態において、管体Tを右方へ移動させると、食い込み歯5bが管体Tの外周部に食い込み、管体Tの右方への移動を阻止する。これによって、管体Tが接続装置1に接続され、ひいては管体Tが他の医療機器や人体に接続装置1を介して接続される。したがって、管体Tから造影剤等が供給されると、その造影剤が接続管7を通って他の医療機器や人体に供給される。
【0030】
管体Tを接続装置1から抜き出すときには、係合解除部材6を待機位置から解除位置まで移動させる。すると、各食い込み歯5bが環状突出部6gによって左方へ押され、各食い込み歯5bに対する内接円の直径が大きくなるように食い込み歯5bが弾性変形させられる。その結果、各食い込み歯5bの先端部が管体Tの外周面から径方向外側へ離間し、係合部材5の管体Tに対する係合状態が解除される。したがって、管体Tが接続孔2cから抜き出し可能になる。管体Tを接続孔2cから抜き出した後、係合解除部材6を待機位置に戻しておく。
【0031】
このように、上記構成の接続装置1においては、係合部材6を待機位置から解除位置まで移動させることにより、管体Tを接続孔2cから抜き出すことができる。したがって、接続装置1を管体Tと一緒に廃棄する必要がなく、他の管体の接続に再度利用することができる。
【0032】
また、シール部材3が係合部材5に対し、管体Tの接続孔2cへの挿入方向において前方に配置されているから、管体Tから環状突出部2dの内側の部分(接続孔2c)に造影剤等が供給されたとき、その造影剤は、上流側孔部2fの内周面と管体Tの外周面との間を通って後方へ向かうが、係合部材5まで達することがない。したがって、食い込み歯5bが管体Tの外周部に食い込んだまま固定されるような状況になることを未然に防止することができる。よって、管体Tを接続装置1から確実に抜き出すことができる。
【0033】
上記構成の接続装置1は、上記管体T以外の他の管体の接続にも用いることができる。図5図7は、接続装置1にシリンジCを接続するようにしたものである。シリンジCは、樹脂からなるものであり、その先端部には管部(管体)Caが形成されている。管部Caは、その先端が基端より小径になるようにルアーテーパ状に形成されている。管部Caの先端縁の外径、つまり最小外径は、小径孔部2gの内径より若干小径であるが、シール部材3及び係合部材5の食い込み歯5bの内接円の内径より大径に設定されている。なお、小径孔部2gは、管部Caと同一のテーパ角度をもってテーパ状に形成してもよい。管部Caの基端縁の外径、つまり最大外径は、内側筒部6eの内径より若干小径に設定されている。したがって、管部Caは、内側筒部6eを通して上流側孔部2fに挿入可能である。
【0034】
管部Caの全長は、環状突出部2dから待機位置に位置している係合解除部材6の右端面までの距離より若干長く設定されている。したがって、図6に示すように、管部Caは、その先端面が環状突出部2dに突き当たるまで上流側孔部2fに挿入することができ、それにより上記管体Tと同様にして、管部Caを接続装置1に接続することができる。また、図7に示すように、係合解除部材6を待機位置から解除位置まで移動させることにより、管部Caを接続装置1から抜き出すことができる。
【0035】
なお、この発明は、上記の実施の形態に限定されるものでなく、その要旨を逸脱しない範囲において各種の変形例を採用することができる。
例えば、上記の実施の形態においては、接続孔2cのうちの管体Tが接続される部分を上流側孔部2fとしているが、これを下流側孔部としてもよい。すなわち、造影剤等を接続管7から接続孔2cに流入させ、接続孔2cから管体Tに流入させるようにしてもよい。その場合にも、造影剤等が係合部材5に達することを防止することができる。
【符号の説明】
【0036】
Ca 管部(管体)
T 管体
1 医療用接続装置
2 装置本体
2c 接続孔
2d 環状突出部(位置決め突出部)
3 シール部材
5 係合部材
5b 食い込み歯
6 係合解除部材
6a 大径筒部
6d 環状突出部
6e 小径筒部
6g 環状突出部(解除部)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7