(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6376770
(24)【登録日】2018年8月3日
(45)【発行日】2018年8月22日
(54)【発明の名称】圧縮機又は真空機
(51)【国際特許分類】
F04B 27/053 20060101AFI20180813BHJP
F04B 27/04 20060101ALI20180813BHJP
F04B 39/12 20060101ALI20180813BHJP
【FI】
F04B27/053
F04B27/04 G
F04B39/12 C
【請求項の数】2
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-35468(P2014-35468)
(22)【出願日】2014年2月26日
(65)【公開番号】特開2015-161187(P2015-161187A)
(43)【公開日】2015年9月7日
【審査請求日】2016年10月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000106944
【氏名又は名称】シナノケンシ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087480
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 修平
(74)【代理人】
【識別番号】100135622
【弁理士】
【氏名又は名称】菊地 挙人
(72)【発明者】
【氏名】小池 貴晃
【審査官】
岩田 健一
(56)【参考文献】
【文献】
特開2014−029132(JP,A)
【文献】
特開昭57−131877(JP,A)
【文献】
特開昭60−085279(JP,A)
【文献】
特開2000−192879(JP,A)
【文献】
米国特許第05033940(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04B 27/053
F04B 27/04
F04B 39/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1及び第2シリンダ及びクランクケースと、
前記第1シリンダ及びクランクケース内に配置された第1ピストンと、
前記第2シリンダ及びクランクケース内に配置された第2ピストンと、
前記第1及び第2ピストンを往復動させるモータと、
を備え、
前記第1シリンダは、前記クランクケースに固定された第1シリンダ本体、前記第1シリンダ本体に固定された第1シリンダヘッド、を含み、
前記第2シリンダは、前記クランクケースに固定された第2シリンダ本体、前記第2シリンダ本体に固定された第2シリンダヘッド、を含み、
前記第1シリンダ本体は、前記第1ピストンの先端部が内部を往復する第1筒部、前記第1筒部の開口端を塞ぐように前記第1筒部に一体形成され前記第1シリンダヘッドが固定される第1平板部、を含み、
前記第2シリンダ本体は、前記第2ピストンの先端部が内部を往復する第2筒部、前記第2筒部の開口端を塞ぐように前記第2筒部に一体形成され前記第2シリンダヘッドが固定される第2平板部、を含み、
前記第1及び第2筒部は、内径が同一であり、
前記第1ピストンの先端部は、前記第2ピストンの先端部よりも小型であり、
前記第1筒部内に嵌合し、前記第1ピストンの先端部が内部を往復する筒状であり、前記第1ピストンの往復動によって容積が増減するチャンバを前記第1平板部とともに画定するスペーサを備えた、圧縮機又は真空機。
【請求項2】
前記スペーサの外周部と前記第1シリンダ本体の内周部との間にシール部材が設けられている、請求項1の圧縮機又は真空機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧縮機又は真空機に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ピストンがクランクケース及びシリンダ内で往復動する圧縮機が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許5373155号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ピストンが往復動することによって容積が増減するチャンバは、一般的に、ピストンとシリンダ本体とシリンダヘッドにより画定される。ピストンの先端部がシリンダ本体の内部を往復動する。従って、ピストンの大きさに応じて、内径の大きさが異なるシリンダ本体を製造する必要がある。このため、製造コストが増大する恐れがある。
【0005】
そこで本発明は、製造コストが抑制された圧縮機又は真空機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的は、シリンダ及びクランクケースと、前記シリンダ及びクランクケース内に配置されたピストンと、前記ピストンを往復動させるモータと、を備え、前記シリンダは、前記クランクケースに固定されたシリンダ本体、前記シリンダ本体に固定されたシリンダヘッド、を含み、前記シリンダ本体は、前記ピストンの先端部が内部を往復する筒部、前記筒部の開口端を塞ぐように前記筒部に一体形成され前記シリンダヘッドが固定される平板部、を含み、前記筒部内に嵌合し、前記ピストンの先端部が内部を往復する筒状であり、前記ピストンの往復動によって容積が増減するチャンバを前記平板部とともに画定するスペーサを備えた、圧縮機又は真空機によって達成できる。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、製造コストが抑制された圧縮機又は真空機を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図6】
図6A、6Bは、シリンダ本体の外観図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1〜4は、圧縮機Aの外観図である。圧縮機Aは、4つのシリンダ10a〜10d、4つのシリンダ10a〜10dが接続されたクランクケース20、クランクケース20の上部に配置されたモータM、を含む。ファンFは、モータMの回転に伴って回転する。シリンダ10a〜10dは、クランクケース20の周囲に固定されている。シリンダ10a〜10dは、モータMの回転軸心周りに放射状に等間隔に配置されている。シリンダ10aは、クランクケース20に固定されたシリンダ本体12a、シリンダ本体12aに固定されたシリンダヘッド15aを含む。尚、詳しくは後述するがシリンダ本体12aの大部分はクランクケース20内に挿入されている。シリンダ本体12aとシリンダヘッド15aとの間には仕切板14aが介在している。同様に、シリンダ10b〜10dもそれぞれシリンダ本体12b〜12d、シリンダヘッド15b〜15dを含む。シリンダ本体12b〜12dのそれぞれと、シリンダヘッド15b〜15dのそれぞれとの間には、仕切板14b〜14dが介在している。シリンダ10a等やクランクケース20は金属製であり、具体的には放熱性がよいアルミ製である。
【0010】
シリンダ10a、10b間であってクランクケース20の外側には連通部材80abが設けられている。
図3に示すように、連通部材80ab内には、隣接するシリンダ10a、10b間での空気の流通可能に連通する流路88abが形成されている。同様に、シリンダ10b、10c間、シリンダ10c、10d間、シリンダ10a、10d間には、それぞれ連通部材80bc、80cd、80adが設けられている。連通部材80bc、80cd、80adにもそれぞれ流路88bc、88cd、88adが形成されている。連通部材80bc、80cd、80adについても連通部材80adと同様である。連通部材80cdの底部にはノズルNが設けられている。シリンダ10a〜10dで圧縮された空気は、これら連通部材80ab等を介してノズルNから排出される。連通部材80ab等は、クランクケース20の外面との間に隙間がない状態で固定されている。このため、圧縮機Aが大型化することが抑制されている。
【0011】
次にシリンダ10aの内部構造について説明する。
図5は
図4のA−A断面図である。シリンダ本体12aは、詳しくは後述するが筒部121a、平板部123aを含む。筒部121aはクランクケース20の外周壁に形成された孔から内部に挿入されている。シリンダ本体12a内にはチャンバ13aが形成されている。チャンバ13aは、シリンダ本体12a内に形成された空間によって画定される。モータMの回転に伴ってピストン25aが往復動することにより、チャンバ13aの容積が増減する。ピストン25aの根元部はクランクケース20内に位置しており、モータMから回転動力を受ける回転軸42に軸受を介して連結されている。詳細には、回転軸42の中心位置に対して偏心した位置でピストン25aの根元部が連結されており、回転軸42の一方向の回転に伴ってピストン25aは往復動する。他のシリンダ10b〜10d、シリンダ10b〜10d内をそれぞれ移動する他のピストン25b〜25dも、同様の構造である。ピストン25a〜25dは、それぞれ位置位相が90度毎にずれている。回転軸42は、クランクケース20内に固定された転がり軸受BR1、BR2により回転可能に支持されている。
【0012】
図5に示すように、クランクケース20の底部には、複数の通気口22が形成されている。通気口22には、各部材の隙間を介して空気が流れることが可能である。また、
図5に示すように、クランクケース20の内部に連通部材80abの内面が露出し、この連通部材80abの内面には、流路88abとクランクケース20内とを連通する通気口85が形成されている。ピストン25a〜25dが往復動することにより、通気口22、85を介して、外部から連通部材80abの流路88ab内に空気が導入される。流路88ab内に導入された空気はシリンダ10a、10b側に流れて圧縮され、連通部材80ad、80bcのそれぞれ流路88ad、88bcを介してシリンダ10c、10d側に流れて更に圧縮され、連通部材88cdに設けられたノズルNから排出される。
【0013】
具体的には、以下のように空気が流れる。ピストン25aの往復動によりチャンバ13aの容積が変化する。これに伴い、連通部材80abからシリンダ10aのチャンバ13a内に空気が導入されてピストン25aにより圧縮される。チャンバ13a内で圧縮された空気は、シリンダ本体12a、仕切板14aに形成された孔を介して、仕切板14aとシリンダヘッド15aと間で画定される流路18aに流れる。流路18aは、シリンダヘッド15a内の空間に相当する。流路18aは連通部材80adの流路88adと連通している。連通部材80ad側に流れた空気は、更にシリンダ10dで圧縮されて連通部材80cdに設けられたノズルNから排出される。シリンダ10b、10cについても同様である。
【0014】
図5に示すように、シリンダ10c側のシリンダ本体12c、仕切板14c、シリンダヘッド15c、流路18cについては、シリンダ10aと同様であるが、以下の相違点がある。ピストン25cの先端部は、ピストン25aの先端部よりも小型である。シリンダ本体12c内には金属製であり筒状のスペーサ90が嵌合している。ピストン25cの先端部はスペーサ90内を往復動する。シリンダ本体12c、スペーサ90、及びピストン25cの先端部によりチャンバ13cが画定されており、ピストン25cの往復動によりチャンバ13cの容積が増減する。尚、ピストン25a、25bの先端部は同じ大きさであり、ピストン25c、25dの先端部は同じ大きさである。このため、シリンダ本体12d内にも同様のスペーサ90が嵌合している。スペーサ90については詳しくは後述する。
【0015】
図6A、6Bは、シリンダ本体12aの外観図である。尚、シリンダ本体12aは、その他のシリンダ本体12b〜
12dと同一のものである。シリンダ本体12aは、円筒状の筒部121a、121aの開口端を塞ぐように筒部121aに一体形成された平板部123aを含む。平板部123aは筒部121aの外径よりも大きく、
図5に示すように、筒部121aはクランクケース20内に挿入され、平板部123aはクランクケース20から外部に露出してクランクケース20の外面に固定されている。平板部123aの外側に仕切板14a、シリンダヘッド15aが固定される。平板部123aには、固定用のネジ孔が複数設けられている。
【0016】
筒部121aに囲まれた平板部123aの部分には連通孔125a、126aが形成されている。連通孔125aには弁部材15aVが設けられている。平板部123aの外側には連通孔125a、126aを囲むように、シール部材用の溝部124aが形成されている。また、連通孔125a、126a間にもシール部材用の溝部127aが形成されている。連通孔125a、126aは、チャンバ13aと流路18aとを連通する第1連通孔の一例である。尚、平板部123aとシリンダヘッド15aとの間に配置された仕切板14aにも、連通孔125a、126aのそれぞれに対応した連通孔が設けられている。
【0017】
また、平板部123aには、連通孔128ab、128adが設けられている。連通孔128abは、流路18aと連通部材80abの流路88abとを連通する。同様に、連通孔128adは、流路18aと連通部材80adの流路88adとを連通する。連通孔128ab、128adは第2連通孔の一例である。尚、仕切板14aにも、連通孔128ad、128bdのそれぞれに対応した連通孔が設けられている。
【0018】
シリンダ本体12a等をクランクケース20に組付ける際には、平板部123aがクランクケース20の外面に当接するまで筒部121aをクランクケース20に挿入すればよい。このため、平板部123aはシリンダ本体12aのクランクケース20への挿入位置を規定する位置決め部として機能する。このため、シリンダ本体12a〜12dのクランクケース20への組付け作業性が向上している。
【0019】
チャンバ13aは、単体の部材であるシリンダ本体12aによって画定される。筒部121a、平板部123aが一体形成されているからである。このため、例えば、筒部121a、平板部123aを別部品で形成した場合、筒部121aと平板部123aとの隙間から圧縮された空気が漏れる恐れがある。また、従来の構造のように、別部材であるシリンダ本体とシリンダヘッドによってチャンバを画定する場合にも、この2つの部材の隙間から空気が漏れる恐れがある。このように空気が漏れることにより騒音も増大する恐れがある。本実施例では、単一の部材であるシリンダ本体12aによってチャンバ13aを画定しているため、このような空気も漏れが抑制され、騒音も抑制されている。
【0020】
次に、スペーサ90について説明する。
図7は、
図5の部分拡大図である。
図8は、スペーサ90の外観図である。スペーサ90の外周部にはシール部材用の溝部92が形成され、スペーサ90の溝部92にはリング状のシール部材Sが配置され、スペーサ90の外周部と筒部121cの内周部と隙間からの空気が漏れることを抑制している。
【0021】
スペーサ90は、ピストン25cの大きさに合わせて内径の大きさが設定されている。このように、ピストン25cの大きさに応じたスペーサ90を用意することにより、先端部の大きさが互いに異なるピストン25a、25cを同じ圧縮機Aに用いる場合であっても、同一のシリンダ本体12a、12cを用いることができる。これにより、大きさが異なるピストン毎に大きさが異なるシリンダ本体を製造する必要がなくなり、製造コストの増大を抑制することができる。
【0022】
平板部123cと対向するスペーサ90の面には、外周縁面94、退避面95が形成されている。外周縁面94はスペーサ90の外周縁に円状に形成されている。退避面95は、外周縁面94の内側に形成され外周縁面94よりも僅かに低い位置に形成されている。スペーサ90の外周縁面94は、平板部123cに形成された連通孔125c、126cから離れた位置で平板部123cに当接する。退避面95は平板部123cから退避しており当接しない。
図7の例では、連通孔125c、126cは、スペーサ90の内側に位置している。例えば内径が更に小さいスペーサを採用した場合であっても、外周縁面が連通孔125c、126cから離れており退避面が平板部123cに当接しない限り、連通孔125c、126cをスペーサが塞ぐことを防止できる。また、連通孔125c、126cの位置や大きさを変更したとしても、スペーサ90の外周縁面94が連通孔125c、126cから離れている限り、連通孔125c、126cを塞ぐことが防止される。このように、スペーサ90が連通孔125c、126cを塞ぐことを防止しているので、連通孔125c、126cを介した、チャンバ13cとシリンダヘッド15c側に形成された空間である流路18cとの間での空気の流通が確保されている。外周縁面94は、当接面の一例である。当接面は、スペーサの外周縁以外にある面であってもよい。
【0023】
尚、本実施例ではシリンダ本体12aとシリンダヘッド15aとの間に仕切板14aを設けたが、仕切板14aを設けることなくシリンダ本体12aとシリンダヘッド15aとを直接的に固定してもよい。
【0024】
また、圧縮機Aを真空機として使用する他の場合としては、対象機器を通気口22側に接続することで真空機として機能する。
【0025】
以上本発明の好ましい実施形態について詳述したが、本発明は係る特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0026】
A 圧縮機
M モータ
10a〜10d シリンダ
12a〜12d シリンダ本体
15a〜15d シリンダヘッド
18a、18c 流路
20 クランクケース
25a〜25d ピストン
80ab、80bc、80cd、80ad 連通部材
88ab、88bc、88cd、88ad 流路
90 スペーサ
94 外周縁面
95 退避面
121a、121c 筒部
123a、123c 平板部
125a、126a、連通孔