特許第6376781号(P6376781)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ YKK AP株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6376781-引戸 図000002
  • 特許6376781-引戸 図000003
  • 特許6376781-引戸 図000004
  • 特許6376781-引戸 図000005
  • 特許6376781-引戸 図000006
  • 特許6376781-引戸 図000007
  • 特許6376781-引戸 図000008
  • 特許6376781-引戸 図000009
  • 特許6376781-引戸 図000010
  • 特許6376781-引戸 図000011
  • 特許6376781-引戸 図000012
  • 特許6376781-引戸 図000013
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6376781
(24)【登録日】2018年8月3日
(45)【発行日】2018年8月22日
(54)【発明の名称】引戸
(51)【国際特許分類】
   E05B 15/02 20060101AFI20180813BHJP
   E05B 65/08 20060101ALI20180813BHJP
   E05B 17/00 20060101ALI20180813BHJP
   E05B 17/20 20060101ALI20180813BHJP
【FI】
   E05B15/02 D
   E05B65/08 G
   E05B17/00 B
   E05B17/20 F
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-45186(P2014-45186)
(22)【出願日】2014年3月7日
(65)【公開番号】特開2015-169007(P2015-169007A)
(43)【公開日】2015年9月28日
【審査請求日】2017年2月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】390005267
【氏名又は名称】YKK AP株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110319
【弁理士】
【氏名又は名称】根本 恵司
(74)【代理人】
【識別番号】100096448
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 嘉明
(72)【発明者】
【氏名】田嶌 英之
(72)【発明者】
【氏名】村山 徳和
【審査官】 鳥井 俊輔
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−057178(JP,A)
【文献】 特開2013−019156(JP,A)
【文献】 実開昭62−009657(JP,U)
【文献】 米国特許第05584517(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05B 15/02
E05B 17/20
E05B 65/08
E05C 3/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
枠体の縦枠に取り付けた錠受と、障子の縦框に取り付けた錠とより成る錠装置を備えた引戸であって、
前記錠受は、ねじ挿通孔と係合穴を有した面外方向に向かう縦壁と、面外方向に対向した一側縦壁、他側縦壁と、上下方向に対向した上側横壁、下側横壁とで、面内方向外側に開口した箱型形状とし、
前記錠受を、開口端面が縦枠の内側面に接するように、前記ねじ挿通孔を挿通したねじで縦枠に取り付け
前記縦枠は、内側面に内向片を有し、
前記錠受は、上側横壁と下側横壁に、開口端面に開口した溝を有し、
前記錠受は、溝を内向片に嵌め合わせることで開口端面を縦枠の内側面に接して取り付けたことを特徴とする引戸。
【請求項2】
前記縦枠の内向片の室外側面と錠受の溝との間に、排水用空間を形成した請求項1記載の引戸。
【請求項3】
前記錠受の上側横壁、下側横壁の面外方向両側に溝をそれぞれ有し、
前記錠受のねじ挿通孔は、縦壁の面外方向中心と面外方向にずれている請求項2記載の引戸。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、引違い窓、片引き窓、引違い戸、片引き戸などの引戸に関する。
【背景技術】
【0002】
引違い戸が特許文献1に開示されている。
この引違い戸は、枠体と、枠体に閉じ位置と開き位置に面内方向に移動自在に装着した障子とを備えている。障子の縦框に錠を取り付けると共に、枠体の縦枠に錠受を取り付け、錠の錠杆を錠受に係合することで障子を閉じ位置で施錠するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開昭63−186869号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前述した従来の引違い戸の錠受は、縦枠の内側面に取り付ける縦片と、孔を有する横片とで鉤形状である。
錠受の横片の孔に錠の錠杆を係合することで施錠する。
このようであるから、枠体の縦枠の内側面と障子の縦框の外側面との間に、バール等の金属棒を押し込み、金属棒で錠受の横片を変形して錠杆との係合を故意に外したり、錠受を縦枠から故意に取り外すことが容易であるから、防犯性に劣る。
【0005】
本発明の目的は、錠受を変形して錠杆との係合を故意に外したり、錠受を故意に取り外すことが困難で、防犯性が向上した引戸とすることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、枠体の縦枠に取り付けた錠受と、障子の縦框に取り付けた錠とより成る錠装置を備えた引戸であって、
前記錠受は、ねじ挿通孔と係合穴を有した面外方向に向かう縦壁と、面外方向に対向した一側縦壁、他側縦壁と、上下方向に対向した上側横壁、下側横壁とで、面内方向外側に開口した箱型形状とし、
前記錠受を、開口端面が縦枠の内側面に接するように、前記ねじ挿通孔を挿通したねじで縦枠に取り付けしたことを特徴とする引戸である。
【0007】
本発明の引戸においては、前記縦枠は、内側面に内向片を有し、
前記錠受は、上側横壁と下側横壁に、開口端面に開口した溝を有し、
前記錠受は、溝を内向片に嵌め合わせることで開口端面を縦枠の内側面に接して取り付けることができる。
このようにすれば、内側面に内向片を有した縦枠に錠受を、内向片を切断せずに取り付けできるので、内向片を水受けとして利用できる。
【0008】
本発明の引戸においては、前記縦枠の内向片の室外側面と錠受の溝との間に、排水用空間を形成することができる。
このようにすれば、縦枠の内向片の室外側面に沿って流れ、錠受の上部に溜まった水は排水用空間を通って流れ落ちるので、錠受の上部に溜まった水が室内側に流れることがない。
【0009】
本発明の引戸においては、前記錠受の上側横壁、下側横壁の面外方向両側に溝をそれぞれ有し、
前記錠受のねじ挿通孔は、縦壁の面外方向中心と面外方向にずれているようにできる。
このようにすれば、錠受を面外方向に反転してねじ挿通孔が室内側寄り、室外側寄りとして取り付けできるので、種々の形状の縦枠に錠受を取り付けできる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、縦枠の内側面と縦框との間から金属棒を挿入し、その金属棒により錠受を変形して錠の錠杆との係合を故意に外したり、錠受を故意に取り外すことが困難であるから、防犯性が向上した引戸とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】引違い戸の内観図である。
図2図1のA−A拡大断面図である。
図3】錠受の正面図である。
図4】錠受の平面図である。
図5】錠受の底面図である。
図6図3のB−B拡大断面図である。
図7図3のC−C拡大断面図である。
図8】錠受の斜視図である。
図9図2の錠受取付部分の拡大図である。
図10】縦枠と下枠の錠受取付部分を室外側から見た斜視図である。
図11】縦枠と錠受の分解斜視図である。
図12】錠受を面外方向に反転して取り付けた状態の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1は引違い戸の内観図で、引違い戸1は枠体2と、枠体2に閉じ位置と開き位置に面内方向に移動自在に装着した室外側の外障子3と室内側の内障子4を備えている。
枠体2は、上枠2aと下枠2bと左右の縦枠2c,2cを方形枠状に連結してある。
内障子4の戸当り框である縦框5と左右一方の縦枠2cとに渡って錠装置6が取り付けてある。
【0013】
錠装置6は、図2に示すように錠6aと錠受6bを有する。錠6aは縦框5に取り付けてある。錠受6bは縦枠2cに取り付けてある。
【0014】
縦框5は、面内方向に向かう室内側の室内側壁50、室外側の室外側壁51と、面外方向に向かう面内方向内側の内側壁52、面内方向外側の外側壁53で、中空部54と凹部55を有する。凹部55は面内方向の外側に開口している。
縦框5の面内方向外側とは縦枠2cに向かう側で、面内方向内側とは縦枠2cと反対側に向かう側である。
【0015】
縦枠2cは、面外方向に向かう本体20と、本体20の室内側端に設けた面内方向の内側に向かう室内側内向壁21と、本体20の室外側端に設けた面内方向の内側に向かう室外側内向壁22と、本体20の内側面20aに面内方向の内側に向けて設けた内向片(縦枠レール)23とを有する。
内向壁21,22は縦框5に向けて突出している。
内側面20aとは縦框5に向かう面である。
本体20の外側面20bには一対のアンカー取付片24が設けてある。
一対のアンカー取付片24にアンカー25を係止して取り付けてある。アンカー25は、縦枠2cを建物躯体に取り付けるものである。
【0016】
縦枠2cの内向片23は、本体20の長さ方向に連続して設けてある。内障子4を閉じ位置としたときに、内向片23は縦框5の凹部55内に突出する。
内障子4を閉じ位置とした状態で、縦框5の室外側壁51の面内方向外側端51aと縦枠2cの本体20の内側面20aとの間に隙間Sが生じる。
室外から吹きつけられた水が前述の隙間Sから室内側に向けて浸入する。この水は内向片23の室外側面23aに衝突して室内側に向けて流れることを抑制する。つまり、内向片23は水受けとして機能する。
【0017】
錠6aは錠本体10と錠杆11を備え、錠本体10は縦框5の室内側壁50と室外側壁51に固着して取り付けられる。
錠杆11は外側壁53の穴(図示せず)から凹部55に突出している。
錠本体10の室外側部10aのキー溝にキーを挿入して操作、錠本体10の室内側部10bに設けたサムターン12を操作することで、錠杆11を錠受6bに係合して施錠し、錠杆11を錠杆6bから外すことで解錠する。
【0018】
錠受6bは、図3図8に示すように、面外方向に向かう縦壁60と、縦壁60の面外方向一側縁に面内方向外側に向けて設けた一側縦壁61と、縦壁60の面外方向他側縁に面内方向外側に向けて設けた他側縦壁62と、縦壁60の上下方向上端縁に面内方向外側に向けて設けた上側横壁63と、縦壁60の上下方向下端縁に面内方向外側に向けて設けた下側横壁64とで、面内方向外側に開口した箱型形状である。実施形態の錠受6bは板材を折り曲げ加工したものである。
【0019】
錠受6bは、縦壁60の上下方向中間部に係合穴65を有し、縦壁60の上部と下部にねじ挿通孔66を有している。ねじ挿通孔66は縦壁60、つまり錠受6bの面外方向中心aから面外方向一側方にずれた位置に形成してある。
上側横壁63と下側横壁64の面外方向両側に一側溝67と他側溝68を有する。一側溝67、他側溝68は、面外方向一側の面内方向に向かう一側面67a,68aと、面外方向他側の面内方向に向かう他側面67b,68bと、面外方向に向かう底面67c,68cとを有した面内方向の長溝状で、上側横壁63、下側横壁64の上下面及び面外方向外側端面63a,64aに開口している。
【0020】
錠受6bは、図9図10図11に示すように、縦枠2cの本体20の内側面20aに、次のようにして取り付ける。
錠受6bの一側縦壁61を室内側で、他側縦壁62を室外側とすると共に、一側溝67を内向片23に嵌め合わせる。
そして、一側縦壁61、他側縦壁62の面内方向外側端面61a,62aと上側横壁63、下側横壁64の面内方向外側端面63a,64a(つまり、錠受6bの開口端面)を、縦枠2cの本体20の内側面20aに接する。
この状態で、上下のねじ挿通孔66からねじ69を縦枠2cの本体20に螺合し、錠受6bを本体20の内側面20aに取り付ける。
実施形態では、縦枠2cの本体20の外側面20bに裏板7をねじ8で固着して取り付ける。ねじ69を縦枠2cの本体20の孔26を挿通して裏板7のねじ穴7aに螺合している。
【0021】
図2に示すように、内障子4を閉じ位置とした状態で、錠杆11を錠受6の係合穴65に係合し、施錠する。実施形態では錠杆11は図11に示すように鉤形状である。
【0022】
このようであるから、錠受6bは箱型形状で、開口端面が縦枠2cの本体20の内側面20aに接しているから、縦框5の室外側壁51の面内方向外側端51aと本体20の内側面20aとの間の隙間Sよりバール等の金属棒を挿入し、金属棒で錠受6bを変形して錠杆11との係合を故意に外したり、錠受6bを故意に縦枠2cの本体20から取り外すことは困難である。
したがって、防犯性が向上した引違い戸である。
【0023】
また、錠受6bの上側横壁63、下側横壁64の一側溝67を縦枠2cの内向片23を嵌め合わせてあるので、内向片23は縦枠2cの長さ方向に連続している。
これにより、前述の隙間Sから浸入した水は内向片23により室内側に入り込むことが抑制され、内向片23の室外側面23aに沿って流れ落ちる。つまり、内向片23は水受けとしての機能を損なうことがない。
【0024】
しかも、図9に示すように、一側溝67の他側面(室外側面)67bと内向片23の室外側面23aとの間にスリット状の排水空間bを形成している。一側溝67の一側面(室内側面)67aと内向片23の室内側面23bは接している。
これにより、内向片23の上部から流れ落ち、錠受6bの上部(上側横壁63)に溜まった水は、排水空間bから流下し、内向片23の室外側面23aに沿って流れ落ちる。したがって、錠受6bの上部に溜まった水が室内に流れることがない。
実施形態では、内向片23の室外側面23aの先端部に室外側に向かう突片23cを有している。突片23cは、内向片23の室外側面23aから室内側面23bに水が回り込むことを抑制する。
【0025】
内向片23の室外側面23aに沿って流れ落ちた水は、図10に矢印で示すように、下枠2bの室外側下レール27の排水口27a、室外側縦片28の排水口28aから排水される。
【0026】
図2に示す縦枠2cは、縦枠2cの本体20がアンカー取付片24を有しているがアンカー取付片24が内向片23と面外方向に離隔しているので、錠受6bは、ねじ挿通孔66が錠受6bの面外方向中心aよりも室内側寄りとして取り付けることができる。
【0027】
これに対して図12に示す縦枠2cは、本体20の外側面20bにアンカー取付片24を有し、アンカー取付片24は内向片23と面外方向に接近しているので、図2に示すように錠受6bを取り付けようとするとねじ69がアンカー取付片24と干渉する。この場合には、錠受6bは、ねじ挿通孔66が錠受6bの面外方向中心aよりも室外側寄りとして取り付け、ねじ69がアンカー取付片24と干渉しないようにしている。
すなわち、錠受6bは、ねじ挿通孔66が錠受6bの面外方向中心aとずれていると共に、面外方向の両側に一側溝67、他側溝68を有しているので、錠受6bは面外方向に反転することで、ねじ挿通孔66を室内側寄りとしたり、室外側寄りとすることができる。
したがって、錠受6bは種々の形状の縦枠に取り付けることができる。
【0028】
前述の実施の形態は引違い戸であるが、片引き戸、引違い窓、片引き窓などとすることができる。
【符号の説明】
【0029】
2…枠体、2c…縦枠、5…縦框、6…錠装置、6a…錠、6b…錠受、20…本体、20a…内側面、23…内向片、23a…室外側面、60…縦壁、61…一側縦壁、62…他側縦壁、63…上側横壁、64…下側横壁、65…係合穴、66…ねじ挿通孔、67…一側溝、68…他側溝、69…ねじ、b…排水空間。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12