(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6376786
(24)【登録日】2018年8月3日
(45)【発行日】2018年8月22日
(54)【発明の名称】燃料電池システム
(51)【国際特許分類】
H01M 8/04 20160101AFI20180813BHJP
H01M 8/04029 20160101ALI20180813BHJP
H01M 8/04701 20160101ALI20180813BHJP
H01M 8/0612 20160101ALI20180813BHJP
H01M 8/12 20160101ALI20180813BHJP
H01M 8/00 20160101ALI20180813BHJP
【FI】
H01M8/04 N
H01M8/04029
H01M8/04701
H01M8/04 Z
H01M8/0612
H01M8/12
H01M8/00 Z
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-53887(P2014-53887)
(22)【出願日】2014年3月17日
(65)【公開番号】特開2015-176818(P2015-176818A)
(43)【公開日】2015年10月5日
【審査請求日】2016年12月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000284
【氏名又は名称】大阪瓦斯株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】特許業務法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】岩見 潤
(72)【発明者】
【氏名】細川 沙奈
【審査官】
清水 康
(56)【参考文献】
【文献】
特開2014−006973(JP,A)
【文献】
特開2007−242327(JP,A)
【文献】
国際公開第2013/073498(WO,A1)
【文献】
特開2012−009208(JP,A)
【文献】
特開平11−242962(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/00 − 8/0668
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料ガスと空気とを反応させて発電する燃料電池部を内部に収容してなり当該燃料電池部の排ガスを排出する燃料電池モジュールと、
前記燃料電池モジュールから排出された排ガスに含まれる水蒸気を凝縮させて凝縮水を生成し当該凝縮水を下方に排出する凝縮水生成部と、
前記凝縮水生成部から排出された凝縮水を貯留し当該貯留されている水の排水を行うタンク排水部を有する水タンクとを、筐体内に配置してなる燃料電池システムであって、
前記水タンクが、前記燃料電池モジュールの上方に配置され、
前記凝縮水生成部から排出された凝縮水を前記水タンクに送出する水ポンプを備え、
前記水ポンプによる前記水タンクへの送水管路が、前記筐体の周側面の少なくとも一部の冷却対象部を送水との熱交換により水冷する水冷部として構成され、
燃料ガスを水蒸気改質させて前記燃料電池部に供給する改質器と、給水を加熱して前記改質器に供給される水蒸気を生成する水蒸気生成器とが、前記燃料電池モジュールの内部に収容され、
前記水タンクに貯留されている水を自重により前記水蒸気生成器に導く給水管路を備え、
前記燃料電池モジュールの下方に配置され、前記凝縮水生成部から排出された凝縮水を一時的に貯留して精製処理を行う水精製器を備え、
前記水精製器に満水状態を検出する水位センサが設けられ、
前記筐体の前面の内側には、当該前面の温度を検出する温度センサが設けられ、
前記水ポンプが、前記燃料電池モジュールの下方に配置され、前記水位センサが満水状態を検出してから一定時間作動し、及び、前記温度センサが設定温度範囲の上限値に達した時点で作動を開始かつ前記設定温度範囲の下限値まで低下した時点で停止することにより、前記水精製器から受け入れた水を間欠的に前記水タンクに送出する燃料電池システム。
【請求項2】
前記燃料電池部が、固体酸化物形である請求項1に記載の燃料電池システム。
【請求項3】
前記水冷部が、前記筐体において前記燃料電池モジュールの前面に配置されている請求項1又は2に記載の燃料電池システム。
【請求項4】
前記水タンクに貯留されている水を前記水ポンプの一次側に還流させる還水管路を備えた請求項1〜3の何れか1項に記載の燃料電池システム。
【請求項5】
前記凝縮水生成部が、前記排ガスとの熱交換により給水を加熱して温水を生成する排熱回収熱交換器である請求項1〜4の何れか1項に記載の燃料電池システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料ガスと空気とを反応させて発電する燃料電池部を内部に収容してなり当該燃料電池部の排ガスを排出する燃料電池モジュールと、
前記燃料電池モジュールから排出された排ガスに含まれる水蒸気を凝縮させて凝縮水を生成し当該凝縮水を下方に排出する凝縮水生成部と、
前記凝縮水生成部から排出された凝縮水を貯留し当該貯留されている水の排水を行うタンク排水部を有する水タンクとを、筐体内に配置してなる燃料電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の燃料電池システムとして、筐体内において、凝縮水生成部から排出された凝縮水を貯留する水タンクを、燃料ガスと空気とを反応させて発電する燃料電池部を内部に収容してなる燃料電池モジュールの下方に配置したものが知られている(例えば特許文献1を参照。)。
このように水タンクを燃料電池モジュールの下方に配置した燃料電池システムでは、水タンクの排水を行うタンク排水部が、筐体の底部付近に配置されることになる。
また、このような従来の燃料電池システム、特に高温で作動する固体酸化物形の燃料電池部を備えた燃料電池システムでは、燃料電池モジュールが比較的高温に保たれることで、筐体が過剰に昇温して、利用者による取扱いや内部の機器の作動等において不都合が生じる場合がある。そこで、このような筐体の過剰昇温を抑制するために、筐体内を換気する換気ファンを設ける場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−272305号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような従来の燃料電池システムでは、水タンクが燃料電池モジュールの下方に配置されていることから、当該燃料電池システムの設置個所に設けられた排水口に対して、筐体の底部付近に配置されたタンク排水部の高さが低くなり、結果、良好な排水に必要な水頭圧を得ることができない場合があった。
このような場合には、燃料電池システムを専用架台上に載置する形態で設置して、タンク排水部の高さの嵩上げが行われるが、専用架台を追加することによるコストアップや意匠性の悪化等の問題があった。
また、燃料電池システムの筐体内の過剰な温度上昇を抑制するために換気ファンを設ける場合には、この換気ファンの作動音による騒音の問題が生じる。特に、換気ファンを熱の影響を受けにくい筐体外部に外付けした場合や、夏季の猛暑時において換気ファンを最大出力で作動させた場合には、騒音が増大する。
【0005】
そこで、本発明は、かかる点に着目してなされたものであり、その目的は、燃料電池システムにおいて、凝縮水を貯留する水タンクの排水を行うタンク排水部からの排水を良好なものとしながら筐体内の過剰昇温を抑制することができる技術を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的を達成するための本発明に係る燃料電池システムは、
燃料ガスと空気とを反応させて発電する燃料電池部を内部に収容してなり当該燃料電池
部の排ガスを排出する燃料電池モジュールと、
前記燃料電池モジュールから排出された排ガスに含まれる水蒸気を凝縮させて凝縮水を
生成し当該凝縮水を下方に排出する凝縮水生成部と、
前記凝縮水生成部から排出された凝縮水を貯留し当該貯留されている水の排水を行うタ
ンク排水部を有する水タンクとを、筐体内に配置してなる燃料電池システムであって、
その特徴構成は、
前記水タンクが、前記燃料電池モジュールの上方に配置され、
前記凝縮水生成部から排出された凝縮水を前記水タンクに送出する水ポンプを備え、
前記水ポンプによる前記水タンクへの送水管路が、前記筐体の周側面の少なくとも一部
の冷却対象部を送水との熱交換により水冷する水冷部として構成され
、
燃料ガスを水蒸気改質させて前記燃料電池部に供給する改質器と、給水を加熱して前記改質器に供給される水蒸気を生成する水蒸気生成器とが、前記燃料電池モジュールの内部に収容され、
前記水タンクに貯留されている水を自重により前記水蒸気生成器に導く給水管路を備え
、
前記燃料電池モジュールの下方に配置され、前記凝縮水生成部から排出された凝縮水を一時的に貯留して精製処理を行う水精製器を備え、
前記水精製器に満水状態を検出する水位センサが設けられ、
前記筐体の前面の内側には、当該前面の温度を検出する温度センサが設けられ、
前記水ポンプが、前記燃料電池モジュールの下方に配置され、前記水位センサが満水状態を検出してから一定時間作動し、及び、前記温度センサが設定温度範囲の上限値に達した時点で作動を開始かつ前記設定温度範囲の下限値まで低下した時点で停止することにより、前記水精製器から受け入れた水を間欠的に前記水タンクに送出する点にある。
【0007】
本特徴構成によれば、燃料電池モジュールからの排ガスに含まれる水蒸気を凝縮させて生成された凝縮水を貯留する水タンクが、比較的高温となる燃料電池モジュールの上方に配置されるので、燃料電池モジュールから筐体の天井面への伝熱を水タンクで遮断して、筐体における利用者等が触れる頻度が比較的高い天井面の過剰昇温を抑制することができる。
更に、凝縮水生成部から下方に排出された凝縮水が、水ポンプにより送水管路を通じて、燃料電池モジュールの上方に配置された水タンクに汲み上げられることになるが、その送水管路が、例えば送水管路を構成する筐体の冷却対象部の内面側に沿って巡らせるなどの形態で、筐体の周側面(前面、背面、及び、両側面からなる面)少なくとも一部の冷却対象部を送水との熱交換により水冷する水冷部として機能させて、筐体の周側面の過剰昇温を抑制することができる。
また、水タンクが燃料電池モジュールの上方に配置されているので、例えば水タンクにおける一定水位以上の水をオーバーフローさせる形態で水タンクの排水を行うタンク排水部が、筐体の天井付近に配置されることになる。よって、燃料電池システムの設置個所に設けられた排水口に対して、筐体の天井付近に配置されたタンク排水部の高さが高くなり、結果、比較的大きな水頭圧を確保して良好な排水を行うことができる。
従って、本発明により、燃料電池システムにおいて、凝縮水を貯留する水タンクの排水を行うタンク排水部からの排水を良好なものとしながら筐体内の天井面並びに周側面の過剰昇温を抑制することができる技術を提供することができる。
また、本特徴構成によれば、水タンクの下方に配置されている燃料電池モジュールの内部に改質器と水蒸気生成器とが収容されているので、水タンクに貯留されている水を水蒸気生成器に導く給水管路にポンプ等を設ける必要がなく、水タンクに貯留されている水を自重により水蒸気生成器へ供給することができる。
また、本特徴構成によれば、燃料電池モジュールの下方に凝縮水の精製処理を行う水精製器を配置することで、凝縮水生成部から下方に排出された凝縮水を水精製器で受容して一時的に貯留することができる。よって、水精製器が所謂バッファタンクとして機能することで、水ポンプの作動状態を比較的自由に設定することができる。
そこで、水ポンプの作動状態については、常時作動させるのではなく、例えば水精製器の満水時や冷却対象部の温度上昇時にのみ作動させるなどのように、間欠的に作動させて、水精製器から受け入れた水を間欠的に水タンクに送出するようにすれば、水ポンプの作動のための一次エネルギの消費量を削減すると共に、水ポンプの耐久性を向上することができる。
【0008】
本発明に係る燃料電池システムの更なる特徴構成は、
前記燃料電池部が、固体酸化物形である点にある。
【0009】
本特徴構成によれば、燃料電池モジュールの内部に収容される燃料電池部が、反応温度が700℃〜1000℃程度と非常に高温な固体酸化物形に構成した場合においても、燃料電池モジュールの上方への水タンクの配置並びに水冷部による筐体の周側面に対する水冷により、筐体の天井面並びに周側面の過剰昇温を有効に抑制することができる。
【0010】
本発明に係る燃料電池システムの更なる特徴構成は、
前記水冷部が、前記筐体において前記燃料電池モジュールの前面に配置されている点にある。
【0011】
通常の燃料電池システムでは、奥行き寸法を低減させるべく、筐体の前面と高温に保たれる燃料電池モジュールとの隙間が比較的狭く、燃料電池モジュールからの伝熱により筐体の前面が比較的高温になり易い。また、筐体の前面は、他の面と比べて、利用者等が触れる頻度が比較的高い部分であることから、過剰な昇温を抑制することが望ましい。
そこで、本特徴構成によれば、水冷部を燃料電池モジュールの前面に配置し、比較的高温になり易い筐体の前面を冷却対象部として冷却部により冷却することで、当該筐体の前面の過剰昇温を抑制し、利用者の取扱い等における不都合を良好に回避することができる。
【0012】
本発明に係る燃料電池システムの更なる特徴構成は、
前記水タンクに貯留されている水を前記水ポンプの一次側に還流させる還水管路を備えた点にある。
【0013】
本特徴構成によれば、水タンクに貯留されている水を水ポンプの一次側(吸込み側)に還流させる還水管路を設けることで、水ポンプから送水管路を介して水タンクへ水を供給する経路と水タンクから還水管路を介して水ポンプへ水を供給する経路とからなる循環経路が形成されることになる。よって、凝縮水生成部における凝縮水の生成量が少ない場合でも、当該循環経路における水の循環量を多く設定して、送水管路が機能する水冷部による筐体の周側面への冷却能力を高い状態に維持することができ、結果、筐体の周側面の過剰昇温を好適に抑制することができる。
【0018】
本発明に係る燃料電池システムの更なる特徴構成は、
前記凝縮水生成部が、前記排ガスとの熱交換により給水を加熱して温水を生成する排熱回収熱交換器である点にある。
【0019】
本特徴構成によれば、凝縮水生成部を排熱回収熱交換器として構成すれば、当該排熱回収熱交換器で排ガスの潜熱をも回収して好適に加熱された温水を給湯用途で利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本実施形態の燃料電池システムの概略構成を示す立面図
【
図2】本実施形態の燃料電池システムの概略構成を示す斜視図
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明にかかる燃料電池システムの実施形態について図面に基づいて説明する。
本実施形態の燃料電池システム1は、
図1に示すように、燃料電池モジュール3と、凝縮水生成部4と、水タンク8とを、筐体2内に配置してなる。
筐体2は、金属板からなる直方体の箱状体として形成されており、
図2も参照して、前面2f(
図1の手前側)、両側面2s(
図1の左右側)、背面2b(
図1の奥側)、天井面2t(
図1の上側)、底面2g(
図1の下側)で構成されており、外部との間で、燃料ガスF、空気A、給水S、排ガスE、及び、その他流体、電気、制御信号等の授受を行うためのインターフェースが設けられている。
【0022】
燃料電池モジュール3は、外部から取り込んだ燃料ガスFとファン10により供給された空気Aとを反応させて発電する燃料電池部32を内部に収容する矩形の筐体で構成されており、当該燃料電池部32の排ガスEを、燃料電池モジュール3の下方に配置された凝縮水生成部4に排出する。
燃料電池部32は、固体酸化物形燃料電池(SOFC)として構成されており、詳しくは、複数のセル33を積層してなるSOFCスタックとして構成されている。そして、各セル33では、改質器35で改質された燃料ガスFと空気Aとを700℃〜1000℃程度の高温環境下で電気化学反応させて発電し、発電した電気は、図示しないインバーターに送られて利用に供される。未反応の燃料ガス(電気化学反応において生成される中間体を含む)は、燃料電池部32の上方出口の燃焼空間34で完全燃焼する。
燃料電池モジュール3の外表面は、内部の燃料電池部32が非常に高温で作動することから高温に保たれ、その輻射熱が筐体2に向けて放射されることになる。
【0023】
燃料電池モジュール3の内部において、燃焼空間34の上方には、燃料ガスFを水蒸気改質させて燃料電池部32に供給する改質器35と、給水Sを加熱して改質器35に供給される水蒸気を生成する水蒸気生成器36とが配置されている。
そして、これら改質器35及び水蒸気生成器36は、燃焼空間34における燃焼により加熱され、また、当該燃焼により生成された排ガスEは、燃料電池モジュール3の内部を通流した後に、凝縮水生成部4に供給される。
【0024】
凝縮水生成部4は、燃料電池モジュール3の底面から排出される排ガスEを取り込み、当該排ガスに含まれる水蒸気を凝縮させて凝縮水W’を生成する。
具体的には、凝縮水生成部4は、排ガスとの熱交換により給水Sを加熱して温水Hを生成する排熱回収熱交換器として構成されている。即ち、凝縮水生成部4を構成する排熱回収熱交換器は、燃料電池モジュール3の底面から下向きに排出された排ガスEを受け入れる排ガス受容空間41と、当該排ガス受容空間41の側面に接続され当該排ガス受容空間41から取り込んだ排ガスEを外部に排出する排気路42とを備え、その排ガス受容空間41に、内部に給水Sが通流する伝熱管43が配置されている。そして、この排ガス受容空間41では、高温の排ガスEと低温の給水Sとの熱交換が行われる。よって、伝熱管43の内部に通流する給水Sは、高温の排ガスEとの熱交換により加熱されることで温水Hとして排出され、例えばその温水Hが外部に設けられた貯湯タンク(図示省略)に一旦貯留された後に給湯部等に供給されて利用される。一方、排ガス受容空間41を通流する排ガスEは、冷温の給水Sとの熱交換により冷却されることで、当該排ガスEに含まれる水蒸気が凝縮して凝縮水が生成され、その凝縮水W’が排ガス受容空間41の底部の凝縮水受け部44に滴下して外部に排出される。
更に、凝縮水生成部4の下方には、凝縮水生成部4から排出された凝縮水W’を、一時的に貯留してイオン交換樹脂等の精製材に通過させる形態で精製処理を行って、精製処理後の水Wを排出する水精製器5が配置されている。
【0025】
水タンク8は、凝縮水生成部4から排出された凝縮水W’を貯留する開放型のタンクとして構成されている。
詳しくは、水タンク8は、燃料電池モジュール3の上方に配置されており、水精製器5から排出された水Wを受け入れて貯留する。
この水タンク8の上部側面には、貯留されている水Wの排水を行うタンク排水部として、水タンク8における一定水位以上の水Wをオーバーフローさせる形態で排水するオーバーフロー排水管83が接続されている。
そして、このオーバーフロー排水管83は、筐体2の天井部付近に配置されることになるので、燃料電池システム1の設置個所に設けられた排水口(図示省略)に対して、筐体2の天井付近に配置されたオーバーフロー排水管83の高さが高くなり、結果、比較的大きな水頭圧を確保して良好な排水を行うことができるようになる。
また、水タンク8に給水Sを補充する管路81と、当該管路81に配置され水タンク8の水位低下に伴って自動的に開放される給水弁82とが設けられている。即ち、水タンク8の水位が低下した場合、給水弁82が開放されて管路81を介して給水Wが補充されることで、水タンク8の水位が所定の水位に維持される。
【0026】
水ポンプ6は、凝縮水生成部から排出された凝縮水W’を水タンク8に送出するものであり、詳しくは、燃料電池モジュール3の下方に配置され、水精製器5から排出された水Wを、送水管路7を通じて、上方に配置された水タンク8に送出する。
また、この水タンク8の下部側面には、水タンク8に貯留されている水Wを、その水タンク8の下方側に配置された燃料電池モジュール3の内部に収容されている水蒸気生成器36に導く給水管路85が接続されている。この給水管路85により水タンク8に貯留されている水Wを自重により水蒸気生成器36へ供給することができるので、この給水管路85には、送水用のポンプが必要ない。
【0027】
更に、水タンク8の下部側面には、上記給水管路85に加えて還水管路9が接続されており、この還水管路9は、開閉弁91の開弁操作を伴って、水タンク8に貯留されている水Wを水ポンプ6の一次側、具体的には水精製器5の入口側に還流させる。このように水タンク8に貯留されている水Wが水精製器5の入口側に還流されるので、燃料電池モジュール3の下方に配置された水精製器5がその水Wを一時的に貯留する所謂バッファタンクとして機能する。よって、凝縮水生成部4における凝縮水W’の生成量に関係なく、水ポンプ6の送水量や作動状態等を比較的自由に設定し、送水管路7における水Wの流量及び流通状態を比較的自由に設定することができる。
【0028】
以上のような燃料電池システム1では、燃料電池モジュール3が比較的高温に保たれることから、筐体2の過剰昇温が懸念される。特に、筐体2の周側面の一部である前面2fと、筐体2の天井面2tとについては、利用者等が触れる頻度が比較的高いことから、このような過剰昇温を抑制することが望まれる。
そこで、本実施形態の燃料電池システム1では、水タンク8の配置箇所及び水タンク8へ水Wを供給する送水管路7について、かかる筐体2の過剰昇温を抑制するための特徴を有しており、その特徴について以下に説明を加える。
【0029】
水タンク8は、前述したように燃料電池モジュール3の上方に配置されている。従って、燃料電池モジュール3の天井面から筐体2の天井面2tへの伝熱が水タンク8により遮断され、結果、筐体2において利用者等が触れる頻度が比較的高い天井面2tの過剰昇温が抑制されている。
【0030】
筐体2の内部において、底部付近に配置された水ポンプ6から天井部付近に配置された水タンク8へ水Wを導く送水管路7が、筐体の周側面の少なくとも一部の前面2fを冷却対象部として、当該冷却対象部を送水Wとの熱交換により水冷する水冷部Xとして機能する。
即ち、この送水管路7は、筐体2の前面2fの内面側に沿って水平方向で蛇行しながら上方に向かう形態で配置された伝熱管で構成されている。そして、送水管路7を構成する伝熱管内に水Wが通流することにより、燃料電池モジュール3の輻射熱を受ける筐体2の前面2fが水Wとの熱交換により水冷され、結果、筐体2において利用者等が触れる頻度が比較的高い前面2fの過剰昇温が抑制される。
【0031】
更に、水ポンプ6は、常時作動するのではなく、水精製器5の満水時や筐体2の前面2fの温度上昇時にのみ作動する形態で、水精製器5から受け入れた水を間欠的に水タンク8に送出する。
具体的に、水精製器5には満水状態を検出する水位センサ51が設けられており、その水位センサ51で水精製器5が満水状態となったことを検出し、水精製器5に貯留されている水がオーバーフローする直前の時点で、水ポンプ6が一定時間作動されて、水精製器5に貯留されている水Wが水タンク8に送出される。
【0032】
また、筐体2の前面2fの内側には、当該前面2fの温度を検出する温度センサ11が設けられており、温度センサ11で検出された筐体2の前面2fの温度が設定温度範囲の上限値に到達した時点で水ポンプ6が作動されて当該前面2fの水冷が開始され、温度センサ11で検出された前面2fの温度が設定温度範囲の下限値まで低下した時点で水ポンプ6が停止されて当該前面2fの水冷が停止される。
このとき、水精製器5に貯留されている水Wが不足する場合には、開閉弁91を開弁操作して、水タンク8に貯留されている水Wを還水管路9を通じて水精製器5に還流させるので、水冷部Xとして機能する送水管路7に比較的大量の水Wを通流させることができ、結果、水冷部Xは筐体2の前面2fに対して比較的高い冷却能力を発揮することができる。
尚、温度センサ11については、筐体2自身の温度を検出するのではなく、当該筐体2に対して輻射熱を放出する燃料電池モジュール3の外表面の温度を検出するように配置しても構わない。
また、水ポンプ6を間欠的に作動させるのではなく、例えば凝縮水W’の生成量に応じて連続的に作動させても構わない。
【0033】
〔その他の実施形態〕
最後に、本発明のその他の実施形態について説明する。尚、以下に説明する各実施形態の構成は、それぞれ単独で適用されるものに限られず、矛盾が生じない限り、他の実施形態の構成と組み合わせて適用することも可能である。
【0034】
(1)上記実施形態では、筐体2の周側面2f、2s、2bのうち、水冷部Xにより水冷する対象となる冷却対象部を前面2fとしたが、他の両側面2sや背面2bを冷却対象部として水冷部Xにより水冷しても構わない。
【0035】
(2)上記実施形態では、水タンク8の排水を行うタンク排水部を、水タンク8の上部側面に接続されたオーバーフロー排水管83で構成したが、別の構成のタンク排水部を設けても構わず、例えば水タンク8の下部側面に排水管を接続し、当該排水管に設けられた排水弁の開閉操作により排水を行うように構成しても構わない。
【0036】
(3)上記実施形態では、燃料電池部32を固体酸化物形燃料電池として構成したが、別の形式の燃料電池として構成しても構わない。
【0037】
(4)上記実施形態では、還水管路9や水精製器5等を設けたが、これらは適宜省略しても構わない。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明は、燃料ガスと空気とを反応させて発電する燃料電池部を内部に収容してなり当該燃料電池部の排ガスを排出する燃料電池モジュールと、前記燃料電池モジュールから排出された排ガスに含まれる水蒸気を凝縮させて凝縮水を生成し当該凝縮水を下方に排出する凝縮水生成部と、前記凝縮水生成部から排出された凝縮水を貯留し当該貯留されている水の排水を行うタンク排水部を有する水タンクとを、筐体内に配置してなる燃料電池システとして好適に利用可能である。
【符号の説明】
【0039】
1 :燃料電池システム
2 :筐体
2f :前面(周側面)
3 :燃料電池モジュール
4 :凝縮水生成部
5 :水精製器
6 :水ポンプ
7 :送水管路
8 :水タンク
9 :還水管路
32 :燃料電池部
35 :改質器
36 :水蒸気生成器
83 :オーバーフロー排水管(タンク排水部)
85 :給水管路
32 :燃料電池部
A :空気
E :排ガス
F :燃料ガス
H :温水
S :給水
W,W’ :水(凝縮水)
X :水冷部