【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成25年度、独立行政法人情報通信研究機構「高度通信・放送研究開発委託研究/光・量子情報通信用超伝導単一光子検出システムの小型化技術の研究開発 副題;小型2K冷凍システム」、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【文献】
増山新二、鈴木雄文、長尾望宏、沼澤健則,4K-GM冷凍機の2段目蓄冷器の等価的形状変化,第88回 2013年度秋季低温工学・超電導学会,日本,公益社団法人 低温工学・超電導学会,2013年12月 4日,71頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
一般に、磁性材からなる蓄冷材は、非磁性材からなる蓄冷材よりもコストがかかる。このため、蓄冷器およびその蓄冷器を備える蓄冷器式冷凍機のコスト削減の観点から、本発明の実施の形態に係る蓄冷器式冷凍機は、蓄冷器のうち磁性蓄冷材を収容する部分の断面積は、非磁性蓄冷材を収容する部分の断面積と比較して小さい。
【0010】
以下、本発明を実施するための形態について、添付図面を参照しながら説明する。
【0011】
図1は、実施の形態に係る蓄冷器式冷凍機1の一例を模式的に示す図である。実施の形態に係る蓄冷器式冷凍機1は、例えば冷媒ガスとしてヘリウムガスを用いるギフォードマクマホン(Gifford-McMahon; GM)タイプの極低温冷凍機である。
図1に示すように、蓄冷器式冷凍機1は、第1ディスプレーサ2と、第1ディスプレーサ2に長手方向に連結される第2ディスプレーサ3とを備える。第1ディスプレーサ2と第2ディスプレーサ3とは、例えば、ピン4、コネクタ5、ピン6を介して接続される。
【0012】
第1シリンダ7と第2シリンダ8とは一体に形成されており、それぞれ高温端と低温端とを備える。第1シリンダ7の低温端と第2シリンダ8の高温端とが第1シリンダ7の底部にて接続されている。第2シリンダ8は第1シリンダ7と同一の軸方向に延在する形態にて形成されており、第1シリンダ7よりも小径の円筒部材である。第1シリンダ7は第1ディスプレーサ2を長手方向に往復移動可能に収容する容器である。また第2シリンダ8は第2ディスプレーサ3を長手方向に往復移動可能に収容する容器である。
【0013】
第1シリンダ7、第2シリンダ8には、強度、熱伝導率、ヘリウム遮断能などを考慮して、例えばステンレス鋼が用いられる。第2ディスプレーサ3の外周部は、ステンレス鋼などの金属製の筒である。第2ディスプレーサ3の外周面上には、フッ素樹脂などの耐摩耗性樹脂の皮膜を形成してもよい。
【0014】
第1シリンダ7の高温端には、第1ディスプレーサ2および第2ディスプレーサ3を往復駆動するスコッチヨーク機構(図示せず)が設けられている。第1ディスプレーサ2、第2ディスプレーサ3は、それぞれ第1シリンダ7、第2シリンダ8にそって往復移動する。第1ディスプレーサ2および第2ディスプレーサ3は、それぞれ高温端と低温端とを備える。
【0015】
第1ディスプレーサ2は円筒状の外周面を有しており、第1ディスプレーサ2の内部には、第1蓄冷材が充填されている。第1ディスプレーサ2の内部容積は第1蓄冷器9として機能する。第1蓄冷器9の上部には整流器10が、下部には整流器11が設置される。第1ディスプレーサ2の高温端には、室温室12から第1ディスプレーサ2に冷媒ガスを流通する第1開口13が形成されている。
【0016】
室温室12は、第1シリンダ7と第1ディスプレーサ2の高温端により形成される空間である。室温室12は、第1ディスプレーサ2の往復移動に伴い容積が変化する。室温室12には、圧縮機14、サプライバルブ15、リターンバルブ16からなる吸排気系統を相互に接続する配管のうち、給排共通配管が接続されている。また、第1ディスプレーサ2の高温端よりの部分と第1シリンダ7との間にはシール17が装着されている。
【0017】
第1ディスプレーサ2の低温端には、第1膨張空間18に第1クリアランスC1を介して冷媒ガスを導入する第2開口19が形成されている。第1膨張空間18は、第1シリンダ7と第1ディスプレーサ2により形成される空間である。第1膨張空間18は、第1ディスプレーサ2の往復移動に伴い容積が変化する。第1シリンダ7の外周のうち、第1膨張空間18に対応する位置には、図示しない冷却対象物に熱的に接続された第1冷却ステージ20が配置されている。第1冷却ステージ20は、第1クリアランスC1を通る冷媒ガスにより冷却される。
【0018】
第2ディスプレーサ3は円筒状の外周面を有している。第2ディスプレーサ3の内部は、上端の整流器21、下端の整流器22、上下中間に位置する仕切り材23を挟んで軸方向に二段に分かれている。第2ディスプレーサ3の内部容積のうち、仕切り材23よりも高温側の高温側領域24には、例えば鉛やビスマスなどの非磁性材からなる第2蓄冷材が充填される。仕切り材23の低温(下段)側の低温側領域25には、高温側領域24とは異なる蓄冷材、例えばHoCu
2やGd
2O
2S(GOS)などの磁性材からなる第3蓄冷材が充填される。低温側領域25にはさらに、磁性蓄冷材とは異なる挿入部材35も収容されている。挿入部材35の詳細は後述する。
【0019】
鉛やビスマス、HoCu
2やGOS等は球状に形成されており、複数の球状の形成物が集まって蓄冷材が構成されている。仕切り材23は、高温側領域24の蓄冷材と低温側領域25の蓄冷材とが混合するのを防止する。この第2ディスプレーサ3の内部容積である高温側領域24と低温側領域25とが第2蓄冷器34として機能する。第1膨張空間18と第2ディスプレーサ3の高温端とは、コネクタ5周りの連通路で連通されている。この連通路を介して第1膨張空間18から第2蓄冷器34に冷媒ガスが流通する。
【0020】
第2ディスプレーサ3の低温端には、第2膨張空間26に第2クリアランスC2を介して冷媒ガスを流通させるための第3開口27が形成されている。第2膨張空間26は、第2シリンダ8と第2ディスプレーサ3により形成される空間である。第2膨張空間26は、第2ディスプレーサ3の往復移動に伴い容積が変化する。第2クリアランスC2は、第2シリンダ8の低温端と第2ディスプレーサ3により形成される。
【0021】
第2シリンダ8の外周の第2膨張空間26に対応する位置には、冷却対象物に熱的に接続された第2冷却ステージ28が配置されている。第2冷却ステージ28は、第2クリアランスC2を通る冷媒ガスにより冷却される。
【0022】
第1ディスプレーサ2には、比重、強度、熱伝導率などの観点から、例えば布入りフェノール樹脂等が用いられる。第1蓄冷材は例えば金網等により構成される。また、第2ディスプレーサ3は、例えば鉛、ビスマスなどの球状の第2蓄冷材をフェルトおよび金網により軸方向に挟持することにより構成される。なお、上述のように、第2ディスプレーサ3の内部容積を、仕切り材により複数の領域に分割してもよい。
【0023】
第1ディスプレーサ2および第2ディスプレーサ3は、それぞれ低温端に蓋部29および蓋部30を備えてもよい。蓋部29および蓋部30は、ディスプレーサ本体との接合の観点から、二段状の円柱形状を有している。蓋部29は圧入ピン31により第1ディスプレーサ2に固定され、蓋部30は圧入ピン32により第2ディスプレーサ3に固定される。
【0024】
次に、実施の形態に係る蓄冷器式冷凍機1の動作を説明する。冷媒ガス供給工程のある時点においては、第1ディスプレーサ2および第2ディスプレーサ3は、第1シリンダ7および第2シリンダ8の下死点に位置する。それと同時、またはわずかにずれたタイミングでサプライバルブ15を開とすると、サプライバルブ15を介して高圧のヘリウムガス(例えば2.2MPaのヘリウムガス)が給排共通配管から第1シリンダ7内に供給され、第1ディスプレーサ2の上部に位置する第1開口13から第1ディスプレーサ2の内部の第1蓄冷器9に流入する。第1蓄冷器9に流入した高圧のヘリウムガスは、第1蓄冷材により冷却されながら第1ディスプレーサ2の下部に位置する第2開口19および第1クリアランスC1を介して、第1膨張空間18に供給される。
【0025】
第1膨張空間18に供給された高圧のヘリウムガスは、コネクタ5周りの連通路を介して、第2ディスプレーサ3の内部の第2蓄冷器34に流入する。第2蓄冷器34に流入した高圧のヘリウムガスは、第2蓄冷材により冷却されながら第2ディスプレーサ3の下部に位置する第3開口27および第2クリアランスを介して、第2膨張空間26に供給される。
【0026】
このようにして、第1膨張空間18および第2膨張空間26は、高圧のヘリウムガスで満たされ、サプライバルブ15は閉とされる。このとき、第1ディスプレーサ2および第2ディスプレーサ3は、第1シリンダ7および第2シリンダ8内の上死点に位置する。それと同時、またはわずかにずれたタイミングでリターンバルブ16を開とすると、第1膨張空間18、第2膨張空間26内の冷媒ガスは減圧され膨張し、低圧のヘリウムガス(例えば0.8MPaのヘリウムガス)となる。このとき、冷媒ガスの膨張により、寒冷が発生する。膨張により低温になった第1膨張空間18のヘリウムガスは第1クリアランスC1を介して第1冷却ステージ20の熱を吸収する。また、第2膨張空間26のヘリウムガスは第2クリアランスC2を介して第2冷却ステージ28の熱を吸収する。
【0027】
第1ディスプレーサ2および第2ディスプレーサ3は下死点に向けて移動し、第1膨張空間18および第2膨張空間26の容積は減少する。第2膨張空間26内のヘリウムガスは、第2クリアランスC2、第3開口27、第2蓄冷器34、および連通路を介して第1膨張空間18に戻される。さらに、第1膨張空間18内のヘリウムガスは、第2開口19、第1蓄冷器9、および第1開口13を介して、圧縮機14の吸入側に戻される。その際、第1蓄冷材、第2蓄冷材、および第3蓄冷材は、冷媒ガスにより冷却される。すなわち、第1蓄冷材、第2蓄冷材、および第3蓄冷材は、冷媒ガスの膨張により生じた寒冷を蓄積する。この工程を1サイクルとし、蓄冷器式冷凍機1はこの冷却サイクルを繰り返すことで、第1冷却ステージ20および第2冷却ステージ28を冷却する。
【0028】
次に、実施の形態に係る第2蓄冷器34の内部構成についてより詳細に説明する。以下では、まず第2蓄冷器34の温度プロファイル(温度勾配)、および磁性蓄冷材の比熱の温度変化について説明する。
【0029】
図2は、実施の形態に係る第2蓄冷器34の温度プロファイルの一例を示す図であり、第2蓄冷器の高温端から低温端に至るまでの距離を1として正規化した場合における第2蓄冷器34の温度プロファイルを示すグラフである。
図2に示すように、蓄冷器式冷凍機1が動作中に、第2蓄冷器34の高温端(正規化距離が0)は、温度が40K程度となり、低温端(正規化距離が1)は温度が5K程度となる。
【0030】
上述したように、第2蓄冷器34の低温側領域25には、高温側領域24とは異なる蓄冷材、例えばHoCu
2やGd
2O
2S(GOS)などの磁性材からなる第3蓄冷材が充填される。ここで低温側領域25は、第2蓄冷器34のうち、温度が4K程度〜10K程度の範囲となる領域である。
【0031】
図3は、磁性蓄冷材の比熱の温度変化を示す図であり、より具体的には、極低温領域におけるHoCu
2およびGOSの比熱の温度変化を示すグラフである。
図3に示すように、HoCu
2およびGOSは、温度が4K程度〜10K程度の範囲、すなわち、第2蓄冷器34のうちHoCu
2やGOSが収容される領域の温度範囲に、比熱が極大となるピークを持つ。例えば、HoCu
2の比熱は、温度が約6Kおよび約9Kの2箇所において比熱が極大となる。またGOSの比熱は約5Kにおいて、非常に先鋭なピークを持つ。
【0032】
磁性蓄冷材が充填された領域を冷媒ガスが流れると、冷媒ガスと磁性蓄冷材との間で熱交換が行われる。ここで、磁性蓄冷材の熱浸透の深さLは、蓄冷材の比熱Cが大きくなるほど、小さな値となる。また磁性蓄冷材の熱浸透の深さLは、磁性蓄冷材の表面の温度T
oと磁性蓄冷材の内部の温度T
iとの差ΔTが大きいほど、大きな値となる。
【0033】
磁性蓄冷材の表面は、冷媒ガスとの間の熱交換によって冷却される。ここで磁性蓄冷材と冷媒ガスとの間の熱伝達係数hは冷媒ガスの流速Vに依存し、冷媒ガスの流速Vが早いほど、熱伝達係数hが大きくなる。
【0034】
一般に、第2蓄冷器34は円筒形状の容器でありその断面積Sは容器の軸方向の位置によらず一定である。また、磁性蓄冷材は、半径がほぼ一定となるように加工された球形状の粒子である。したがって、第2蓄冷器34は、断面積Sが一定な容器に一様な球形状部材が充填されたものであるといえる。また、第2蓄冷器34の低温側領域25は軸方向の温度勾配が緩やかである。このため、第2蓄冷器34の低温側領域25の冷媒ガスの粘度は、軸方向の位置によらずほぼ等しいといえる。したがって、低温側領域25の冷媒ガスの流路抵抗Rは、容器の軸方向の位置によらずほぼ一定とみなすことができる。結果として、第2蓄冷器34の低温側領域25を流れる冷媒ガスの流速Vも低温側領域25の位置によらず一定となる。
【0035】
冷媒ガスの流速Vが第2蓄冷器34の低温側領域25の位置によらず一定の場合、磁性蓄冷材と冷媒ガスとの間の熱伝達係数hも低温側領域25の位置によらずほぼ一定となる。磁性蓄冷材と冷媒ガスとの間の熱伝達係数hが一定の場合、磁性蓄冷材の表面の温度T
oと磁性蓄冷材の内部の温度T
iとの差ΔTも容器の位置によらず一定となる。したがって、磁性蓄冷材の熱浸透の深さLも、低温側領域25の位置によらず、ほぼ一定となる。
【0036】
熱浸透が浅い場合は、熱浸透が深い場合と比較して、磁性蓄冷材の全体の体積に対して蓄冷に寄与する部分の体積が小さくなる。特に、比熱がピークとなる温度範囲にある磁性蓄冷材は、他の領域と比較して比熱Cが大きい。そのため、第2蓄冷器34の低温側領域25に収容される磁性蓄冷材は、一様に熱浸透の深さLが浅く、磁性蓄冷材粒子の表層のみが蓄冷に寄与していると考えられる。
【0037】
そこで実施の形態に係る第2蓄冷器34の低温側領域25は、蓄冷器式冷凍機1の動作中に磁性蓄冷材の比熱が極大となる温度範囲を含む領域における容器の断面積S
1が、他の温度範囲における容器の断面積S
2と比較して、小さくなるように構成されている。以下説明の便宜上、第2蓄冷器34を構成する容器のうち、蓄冷器式冷凍機1が動作中において磁性蓄冷材の比熱が極大となる温度範囲とを含む領域を「第1領域36」という。また、第2蓄冷器34を構成する容器のうち、蓄冷器式冷凍機1が動作中において磁性蓄冷材の比熱が極大となる温度範囲以外の領域を「第2領域37」という。すなわち、第1領域36における容器の断面積がS
1であり、第2領域37における容器の断面積がS
2である。
【0038】
図1において、第2蓄冷器34のうち挿入部材35が収容されている領域が第1領域36である。挿入部材35は、例えばフェノール樹脂や金属等の冷媒ガスを通過させない物質で構成されている。このため、第1領域36に挿入部材35を挿入することにより、第1領域36における容器の断面積S
1を実質的に小さくすることができる。第2蓄冷器34を流れる冷媒ガスの流量は容器の位置によらず一定であるため、冷媒ガスの流速Vは、容器の断面積Sに反比例する。したがって、第1領域36を流れる冷媒ガスの流速V
1は、第2領域37を流れる冷媒ガスの流速V
2よりも早くなる。
【0039】
第1領域36において冷媒ガスの流速V
1が早くなると、第1領域36における磁性蓄冷材と冷媒ガスとの間の熱伝達係数h
1も大きくなる。磁性蓄冷材と冷媒ガスとの間の熱伝達係数h
1が大きいほど、磁性蓄冷材の表面は冷媒ガスによってより冷やされる。したがって、第1領域36における磁性蓄冷材粒子の表面温度T
o1は、挿入部材35を挿入する前と比較して低くなる。このため、第1領域36における磁性蓄冷材粒子の表面の温度T
o1と磁性蓄冷材粒子の内部の温度T
i1との差ΔT
1は、挿入部材35を挿入する前と比較して大きくなる。結果として、第1領域36における磁性蓄冷材粒子の熱浸透の深さL
1は、挿入部材35を挿入する前と比較して大きくなる。つまり、挿入部材35を挿入することにより、第1領域36における磁性蓄冷材粒子の蓄冷に寄与する部分の体積を増加することができる。
【0040】
ここで、第1領域36に挿入部材35を挿入すると、挿入部材35の体積の分だけ、第1領域36に充填できる磁性蓄冷材の体積が減ることになる。一般に、蓄冷器式冷凍機1において磁性蓄冷材の体積を減らすことは、蓄冷器式冷凍機1の冷凍性能低下に帰着する。しかしながら、上述したように磁性蓄冷材の比熱Cがピークとなる温度範囲に収容されている磁性蓄冷材は、比熱Cが大きい分だけ熱浸透の深さLの値が小さいため、その蓄冷性能を十分に発揮していないと考えられる。これはつまり、磁性蓄冷材の比熱Cがピークとなる温度範囲に収容されている磁性蓄冷材の蓄冷能力を十分に発揮させることができれば、磁性蓄冷材の体積が減ったとしても、蓄冷器式冷凍機1
が性能を維持できることを示している。
【0041】
実施の形態に係る第2蓄冷器34は、第1領域36に挿入部材35を挿入することで第1領域36を流れる冷媒ガスの流速V
1を早くすることにより、磁性蓄冷材の蓄冷能力を向上している。結果として、蓄冷器式冷凍機1の冷凍性能を維持しつつ、磁性蓄冷材の使用量を抑えることができる。また、第1領域36に挿入部材35を挿入することで第1領域36における容器の断面積S
1を小さくするので、第2蓄冷器34自体の形状を変える必要はない。このため従来の第2蓄冷器34を流用することができ、蓄冷器式冷凍機1の製造コストの増加を抑制できる。
【0042】
図1は、第2蓄冷器34の低温側領域25に収容する磁性蓄冷材が、HoCu
2である場合を図示している。
図3に示すように、HoCu
2は約6Kおよび約9Kの2箇所において比熱Cが極大となる。したがって、第1領域36は、第2蓄冷器34の低温側領域25のうち、蓄冷器式冷凍機1の動作中において5〜10Kの温度範囲とするのが好ましい。これにより、第1領域36には挿入部材35が挿入されるため充填できるHoCu
2の量は減るが、HoCu
2の熱浸透の深さLが深くなるので、結果として冷凍性能は維持される。ゆえに、磁性蓄冷材の量を削減しつつ蓄冷器式冷凍機1の冷凍性能を維持することができる。
【0043】
図4は、第2蓄冷器34の低温側領域25に収容する磁性蓄冷材が、HoCu
2とGOSとの2種類である場合を示す図である。
図1に示す場合と比較して磁性蓄冷材の種類が増えるため、低温側領域25には仕切り材23’が挿入され、第1低温側領域25aと第2低温側領域25bとに分割されている。
図4において、HoCu
2は、第1低温側領域25aに充填され、GOSは第2低温側領域25bに充填される。HoCu
2は約6Kおよび約9Kの2箇所において比熱Cが極大となるので、第1低温側領域25aは蓄冷器式冷凍機1の動作中において5〜10Kの温度範囲とするのが好ましい。
【0044】
図3に示すように、GOSは約5Kのときに比熱Cが極大となる。そこで、GOSは、5Kを含むように、例えば蓄冷器式冷凍機1の動作中において4.5K〜5.5Kの温度範囲とするのが好ましい。以上より、第1領域36は、4.5K〜10Kの温度範囲とするのが好ましい。これにより、磁性蓄冷材がHoCu
2とGOSとを含む場合に、第1領域36においてそれらの比熱Cが極大となる。第1領域36は挿入部材35の影響で冷媒ガスの流速V
1が早くなるため、HoCu
2とGOSとの熱浸透の深さLが深くなり、結果として磁性蓄冷材の体積が減っても冷凍性能は維持される。なお、第1領域36は、第1低温側領域25aと、第2低温側領域25bの一部とを含む。
【0045】
以上説明したように、本発明の蓄冷器式冷凍機1によれば、冷凍性能を維持しつつ、蓄冷材の使用量を抑えることができる。
【0046】
以上本発明の好ましい実施例について詳細に説明したが、本発明は上述した実施例に制限されることなく、本発明の範囲を逸脱することなく、上述した実施例に種々の変形および置換を加えることができる。
【0047】
上記では、蓄冷器式冷凍機1の第2蓄冷器34における第1領域36に、挿入部材35を挿入することでその断面積S
1を小さくする場合について説明した。しかしながら、第1領域36の断面積S
1を小さくする方法は上記の場合に限られない。
【0048】
図5は、第1の変形例に係る蓄冷器式冷凍機1の一例を模式的に示す図であり、第2蓄冷器34の低温側領域25に収容する磁性蓄冷材がHoCu
2である場合を示す図である。
図5に示すように、第1の変形例に係る蓄冷器式冷凍機1の第2蓄冷器34は、挿入部材35が挿入されていない。その代わり、第1の変形例に係る第2蓄冷器34は、第1領域36に相当する部分の側壁が肉厚となり、その分だけ容器の断面積S
1が小さくなっている。これにより、第1領域36に充填できるHoCu
2の量は減るが、第1領域36を流れる冷媒ガスの流速V
1が早くなるため、HoCu
2の熱浸透の深さLが深くなる。結果として、磁性蓄冷材の量を削減しても蓄冷器式冷凍機1の冷凍性能は維持される。
【0049】
図6は、第2の変形例に係る蓄冷器式冷凍機1の一例を模式的に示す図であり、第2蓄冷器34の低温側領域25に収容する磁性蓄冷材がHoCu
2とGOSとの2種類である場合を示す図である。
図6に示す例も、
図4に示す例と同様に、仕切り材23’によって低温側領域25が第1低温側領域25aと第2低温側領域25bとに分割されている。
【0050】
第1低温側領域25aにはHoCu
2が充填される。また、第2低温側領域25bにはGOSが充填される。ここで第1低温側領域25aと、第2低温側領域25bのうち、仕切り材23’に隣接する領域の一部が第1領域に相当する。
図6に示す蓄冷器式冷凍機1の第2蓄冷器34は、
図5に示す例と同様に、第1領域36に相当する部分の側壁が肉厚となり、その分だけ容器の断面積S
1が小さくなっている。これにより、第1領域36に充填できるHoCu
2およびGOSの量は減るが、第1領域36を流れる冷媒ガスの流速V
1が早くなるため、HoCu
2およびGOSの熱浸透の深さLが深くなる。結果として、磁性蓄冷材の量を削減しても蓄冷器式冷凍機1の冷凍性能は維持される。
【0051】
上述した蓄冷器式冷凍機1においては段数が二段である場合を示したが、この段数は三段以上に適宜選択することが可能である。また、実施の形態では、蓄冷器式冷凍機1がディスプレーサ式のGM冷凍機である例について説明したが、これに限られない。例えば、本発明は、パルスチューブ型のGM冷凍機、スターリング冷凍機、ソルベイ冷凍機などにも適用することができる。